特許第6006784号(P6006784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006784
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】車両のエネルギー管理システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20160929BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20160929BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20160929BHJP
   B60W 10/00 20060101ALI20160929BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20160929BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20160929BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   F02D29/02 L
   F02D29/06 E
   F02D29/06 H
   F02D29/04 B
   B60W10/00 148
   B60W10/06
   B60W10/30
   B60W10/26
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-510662(P2014-510662)
(86)(22)【出願日】2011年5月16日
(65)【公表番号】特表2014-517193(P2014-517193A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】EP2011002406
(87)【国際公開番号】WO2012155927
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2014年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】500277711
【氏名又は名称】ボルボ ラストバグナー アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】オースボゴード,マティアス
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−280335(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008007119(DE,A1)
【文献】 特開2008−279829(JP,A)
【文献】 特開2010−098794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00 〜 29/06
B60W 10/00 〜 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエネルギーの流れを制御する方法であって、
該車両が、エネルギーメインシステム(CE)及び複数のエネルギー補助システム(GEN、B、C)を有し、
前記エネルギーメインシステム(CE)は前記車両にエネルギーを提供し、前記エネルギー補助システム(GEN、B、C)は、少なくともエネルギーバッファ(B)及びエネルギー変換器(GEN、C)からなり、
これによって、
前記エネルギーメインシステム(CE)から提供されるエネルギーの、エネルギーメインシステム(CE)の固有パラメータに依存する、第1の価格(Pm)を設定し、
各補助システム(GEN、B、C)から提供されるエネルギーの、前記各補助システム(GEN、B、C)のパラメータに依存する、各価格(PB1、PBn、P2)を設定し、
エネルギーは、最低価格(Pm、P2、PB1、PBn)が設定された前記メインシステム(CE)あるいは前記補助システム(GEN、B、C)のいずれかから前記各補助システム(GEN、B、C)へと提供され、
前記エネルギーバッファ(B)及び前記エネルギー変換器(C)はエネルギーを得るための個別価格制限を有し、
前記エネルギーバッファ(B)及び前記エネルギー変換器(C)の前記個別価格制限よりも低い価格(Pm、P2、PB1、PBn)でエネルギーを得ることができる場合、前記エネルギーバッファ(B)及び前記エネルギー変換器(C)のみがエネルギーを得る、方法。
【請求項2】
前記バッファの固有パラメータは、前記エネルギーバッファ(B)が有するエネルギー価格の平均値と、バッファ効率からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記個別価格制限は、前記エネルギー変換器(C)に対しては固定され、前記エネルギーバッファ(B)に対しては変動する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギーバッファ(B)はバッテリである場合、前記エネルギーバッファ(B)の可変の個別価格制限は、前記エネルギーバッファ(B)の充電状態と、前記エネルギーバッファ(B)を構成するbエージェントによって設定されたエネルギーの第2の価格に依存する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
追加のエネルギー補助システムが、変換器及び/又はバッファとして前記車両に含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記車両がトラベルコンピュータを有することによって、近づいている走行ルートが前記設定価格に影響する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1の価格の低下に影響する状態が予測されると、前記第1の価格に税を付加する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の価格の上昇に影響する状態が予測されると、前記第1の価格を助成する、先行する請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記エネルギーメインシステムがエンジン又は燃料タンクである、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記エネルギーメインシステムが複数のエネルギー源からなる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記複数のエネルギー源は、ディーゼルエンジン等の、少なくとも1つの内燃エンジンからなる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記エネルギーバッファはバッテリである、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記エネルギー変換器は、油ポンプ及び/又はラジオ及び/又は暖房装置及び/又はステアリングサーボ及び/又はブレーキサーボ及び/又は車両内のその他の補助システムである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
内燃エンジンと複数の補助システムとエネルギー管理システム(EMS)とからなる車両であって、
前記内燃エンジンから前記補助システムへのエネルギー分布が、請求項1〜13の方法に従った前記EMSによって処理される、
車両。
【請求項15】
前記内燃エンジンがエネルギーメインシステムであり、前記補助システムは、少なくともオルタネータ、バッテリ、及びステアリングサーボからなる、請求項14に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエネルギー管理システムの分野に関し、特に燃焼エンジンと複数の補助システムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
補助システムは、現代の車両の全てにおいて使用されている。補助システムはエネルギーを変換(又は消費)するものであり、その第一目的は車両を推進することではない。補助システムの例には、冷却液ポンプ、油ポンプ、空調システム、及びファンがある。補助システムの作動は、車両用途や操作環境に応じて、車両燃料消費の約3〜30%に相当する。
【0003】
今日、商用大型車で見られる補助システムの多くは、エネルギー効率の良い方法で使用されていない。様々な補助システムの制御は、通常分離されて最大限に利用できず、これが必要以上に高い燃料消費につながる。更に、補助システムの個々の最適化によって、全体的性能が貧弱になり、異なるシステム間のインターフェースの問題が起こる。
【0004】
特許文献1は、先行技術であるシステムに供給されるエネルギーを管理するためのエネルギー管理システムの実施例を示す。
【0005】
従って、エネルギー補助システムをエネルギー効率の良い方法で制御する改良型システムが必要である。更に、そのようなシステムは、開発及び実施費用が低いことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0312425号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、システム制御を変更する必要なく、車両の燃料消費を削減し、簡単に使え、補助システムを容易に接続及び分離することができる、車両のエネルギー管理用の発明的システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載のエネルギー管理システム(EMS)によって達成される。
【0009】
本発明は、車両のエネルギーの流れをエネルギーシステムにおけるエネルギーの瞬時の需要と供給に応じて制御することができるという考えに基づいている。エネルギーメインシステムから補助システム及び補助システム間へとエネルギーをどのように分配するかという簡単なルールを定めることにより、簡単且つ効率的なエネルギー管理システムを実現することができる。本発明のEMSでは、エネルギーがそれによってエネルギーメインシステムと補助システムの間で交換されるが、一次エネルギー源、即ち、燃焼エンジンが主要な価格設定源である。基本的に、燃焼エンジンが高効率で作動している場合又は制動中は価格が低くなり、燃焼エンジンが低効率で作動している場合は価格が高くなる。従って、補助システムは、エネルギー需要がある場合、燃焼エンジンからエネルギーを購入するが、そのために補助システムにはそれ以上はエネルギーを購入しない個別価格制限がある。
【0010】
本発明のEMSは、価格設定ルールを適応させることによって車両におけるエネルギーの流れを制御する。EMSにおいて、エネルギーの価格は、全体的なエネルギーシステム、即ち、車両の瞬時のエネルギー供給に応じて変動する。全体的なエネルギーシステムにおける各々の補助システムには、それ以上は補助システムがエネルギーを購入しない個別価格制限がある。一部の補助システムには、それらの補助システムのパラメータに応じて変動する価格制限がある。補助システムは、EMS内で起動エージェントによって構成され、この起動エージェントは、それらがどんな種類の補助システムを構成するかによって異なる作用を有する。上記起動エージェントは、全体的なエネルギーシステムにおけるエネルギーの流れを制御する。EMSにおいて、補助システムは2つのカテゴリー(エネルギーバッファとエネルギー変換器)に分けられる。
【0011】
エネルギーメインシステムは、車両にエネルギーを提供する。エネルギーメインシステムは、燃料タンク、燃焼エンジン、或いは、冷却ファンや発電機又は電気機械等の1つ以上の補助システムを含む燃焼エンジンであってもよく、電気機械は、発電機又はモータとして機能することができる。
【0012】
エネルギー補助システムは、2つのサブカテゴリ(エネルギーバッファとエネルギー変換器)に定義される。エネルギーバッファは、車両においてエネルギーを貯蔵することができる任意のシステムであり、最も明らかなものはバッテリである。考えられるその他のエネルギーバッファには、冷却水、圧力タンク、又は車室がある。しかしながら、全てのバッファが他の補助システムにエネルギーを提供することができる訳ではないが、バッファ自体の将来的なエネルギー需要を減らすことはできる。例えば、乗客が気づかない範囲内で車室内の温度を変動させることができる。エネルギーの価格が低い期間に、温度を理想的な温度以上に上昇させて、後で、エネルギーの価格が高い期間に温度をゆっくり低下させることができるようにすることができる。エネルギー変換器は、ある形態から別の形態にエネルギーを変換するものであり、例えば、パワーステアリング装置(電気エネルギーを運動エネルギーへ)、発電機(運動エネルギーを電気エネルギーへ)、ヒータ(電気エネルギーを熱へ)、冷却ファン(電気エネルギーを運動エネルギーへ)、及び/又はあらゆる種類のアクチュエータ(電気エネルギーを運動エネルギーへ)などである。
【0013】
本発明のEMSの最小限の設定には、エネルギーメインシステム、エネルギーバッファ、及びエネルギー変換器が含まれる。しかしながら、任意の数のサブシステムをEMSに追加してもよく、最小限の設定に追加したサブシステムの数と関係なく、同じ原則でシステム内のエネルギーの流れを管理することができるようになる。簡単にするため、エネルギーメインシステム、エネルギーバッファ、及びエネルギー変換器がある最小限の要件を備えたシステムであって、エネルギーメインシステムが、燃焼エンジンと、発電機とを備えているシステムを説明することにする。
【0014】
エネルギーメインシステムは、EMS内でエネルギーメインシステム起動エージェント(msエージェント)によって構成される。エネルギーバッファは、EMS内でエネルギーバッファ起動エージェント(bエージェント)によって構成され、エネルギー変換器は、EMS内でエネルギー変換器起動エージェント(cエージェント)によって構成される。起動エージェントは、それらの各補助システムを起動及び停止すると共に、それらのエネルギー需要がEMSを介して要求され、且つエネルギーが価格設定の低いエネルギー源(即ち、エネルギーメインシステム又はエネルギーバッファ)から要求されるように制御する。
【0015】
msエージェントは、エネルギーメインシステムから提供されるエネルギーの第1の価格を設定するものであり、第1の価格は、エネルギーメインシステムの固有パラメータに依存する。これらのパラメータはエネルギーメインシステムがどのように定義されているかによって決まるが、エネルギーメインシステムとして燃焼エンジンを備えていると、パラメータが燃焼エンジンの効率となり得るため、通貨が必要な燃料の量となることになり、エネルギーメインシステムとして燃焼エンジン及び発電機を備えていると、パラメータがこれらの2つの構成部品の総合効率となることになる。
【0016】
bエージェントは、上記第1の価格のmsエージェント、又は上記第1の価格よりも低い価格で販売している別のbエージェントのどちらかからエネルギーを購入するため、エネルギーバッファは、価格が最も低いエネルギー源からエネルギーを提供される。
【0017】
bエージェントは、エネルギーバッファから提供されるエネルギーの第2の価格を設定するものであり、第二の価格は、エネルギーバッファの固有パラメータに依存する。上記エネルギーバッファの固有パラメータは、好ましくは、バッファで購入されたエネルギーの購入価格の平均値と、バッファ効率からなる。
【0018】
cエージェントは、第1の価格と第2の価格のどちらが最低価格であるかによって、msエージェント又はbエージェントのどちらかからエネルギーを購入する。それ以上のエネルギーバッファがシステムに接続されている場合、これらがより低い価格を提供するのであれば、cエージェントはそれらから購入することを選択することもできることが明らかである。
【0019】
bエージェント及びcエージェントには、エネルギー購入の個別価格制限があり、bエージェント及びcエージェントは、bエージェント及びcエージェントそれぞれの個別価格制限よりも低い価格がある場合だけエネルギーを購入する。
【0020】
本発明のEMSにより、確実に、需要が最も高い構成部品が常にエネルギーを供給され、そのエネルギーが最も有益なエネルギー源から得られることになる。即ち、燃焼エンジンが低効率のモードで駆動されている場合、動力を必要としている構成部品は、システム内のエネルギーバッファのうちの1つから、エネルギーバッファが充電状態であって、非効率的に機能している燃焼エンジンよりも低い価格でエネルギーを販売することができるような状態で、動力を供給される。燃焼エンジンとエネルギーバッファの両方の価格設定が高い期間、一部のシステムは、それらの個別価格制限がEMS内の全てのエネルギー価格よりも低い場合、エネルギーが供給されないことがある。
【0021】
起動エージェント間で必要とされる全ての情報は、価格と要求されるエネルギーの購入とに盛り込まれている。価格が上昇すると、購入が減少し、個々のシステムはそれらのバッファの内容を使用することになる。主要な価格設定源は燃焼エンジンであり、高効率で作動している場合又は制動操作中は価格が低くなり、それ以外は高くなる。
【0022】
本発明のEMSは、更に、様々な補助システムの動作を全体的なレベルで調整及び最適化する。本発明のEMSによって、補助システムは、車両の運転サイクルに自動的且つ継続的に適合される。更なる補助システムを車両及びEMSに追加することが簡単にできるが、これは、個々の補助システムが既存の補助システムと同じ状態にしてEMS内で作動する必要があり、追加された補助システムの手動調整の必要性が最小限になるからである。新たに追加された補助システムはEMSにおける起動エージェントになり、一般的に構造化された制御設計への接続及び適合が簡単なため、全体的なエネルギーシステムに更なる補助システムを追加する開発費を削減することができる。
【0023】
更に、本発明のEMSによって、様々な補助システムが全体的に調整及び最適化され、補助システムが最も効率的な方法でエネルギー資源を利用するため、車両の燃料消費を削減することができる。
【0024】
エネルギーメインシステムがどのように定義されているかによって、一部のbエージェント及びcエージェントは、msエージェントから直接それらの補助システムのためのエネルギーを要求することができ、一部は決してそこから直接には要求しない。例えば、発電機がエネルギーメインシステムに含まれている場合、エネルギーメインシステムが電気エネルギーを供給することができ、複数のbエージェント及び/又はcエージェントがmsエージェントから直接エネルギーを購入することができる。しかしながら、発電機がエネルギーメインシステムに含まれていない場合、これらのbエージェント及びcエージェントは、EMS内で発電機を構成するcエージェントからそれらの補助システムに必要なエネルギーを購入しなければならない。
【0025】
本発明の好適な実施形態では、起動エージェントがエネルギー購入を中止する個別価格制限が、cエージェントに対しては固定され、bエージェントに対しては変動する。従って、それらのcエージェントによって構成されるエネルギー変換器は、それらの個別価格制限に反映される優先順位を有しており、エネルギー変換器の価格制限が高ければ高いほど、この補助システムにエネルギーが供給されることが車両にとってより重要になる。例えば、車室の暖房には、パワーステアリングよりも低い個別価格制限がある。エネルギー変換器の固定の個別価格制限によって確実に、車両の優先機能に常にエネルギーを供給することができる。
【0026】
エネルギーバッファに関しては、個別価格制限が変動し、好ましくはエネルギーバッファの充電状態に依存して、エネルギーバッファが高充電状態の場合はその個別価格制限が低下し、エネルギーバッファが低充電状態の場合はその個別価格制限が上昇するようになっている。エネルギーバッファの可変の個別価格制限によって確実に、エネルギーバッファが常に適切な充電状態に保たれて、常にエネルギーシステム内にエネルギーバッファが存在するようになる。
【0027】
bエージェントで定められた可変の価格制限は、エネルギーバッファの充電状態と、bエージェントで定められた外部価格とに依存することが好ましい。エネルギーバッファからのエネルギーの外部価格をエネルギーバッファの可変の購入価格制限に盛り込むことによって、エネルギーバッファからの恒常的な外部価格の増減が回避される。
【0028】
前述のように、車両のエネルギー補助システムを更に本発明のEMSに接続することができ、追加のエネルギー補助システムは、変換器及び/又はバッファとしてEMSに接続される。全てのバッファが他の補助システムにエネルギーを供給できなければならない必要はなく、エネルギーを貯蔵し、そのエネルギーをそれ自体の機能に使用する能力がありさえすればよく、例えば、その機能とは運転室/車室の暖房だが、安価なエネルギーの期間は過熱、即ち、設定温度よりも高い温度になる可能性があり、高価なエネルギーの期間は設定温度よりも低い温度になる可能性がある。過熱や熱不足は、運転者及び/又は同乗者の快適さに干渉しないように設定されることが明らかである。
【0029】
本発明のEMSの変形例では、EMSが車両のトラベルコンピュータと通信して、近づいている走行ルートを予測することができるようになっている。トラベルコンピュータは、車両の運転者が利用できる衛星ナビゲーションシステムや車両のECUが利用可能なブラックボックスシステム等の、あらゆる種類のトラベルコンピュータであってよい。衛星ナビゲーションシステムが最も一般的なナビゲーションシステムだが、その他の技術に基づいた他の種類のナビゲーションシステムも可能である。トラベルコンピュータからの情報を用いることにより、EMSは、近づいているルートのデータにアクセスすることができ、そのようなデータは地形データであってよい。それによって、EMSは、将来的なエネルギー不足又はエネルギー余剰を予測することができる。
【0030】
EMSが将来的なエネルギー余剰を予測した状況(例えば、長い下り斜面)では、EMSは第1の価格に税を付加することができ、それによって第1の価格が上昇する。上記税を付加することによって、税が付加されている期間は、エネルギーメインシステムから直接購入されるエネルギーが減り、その間補助システムは、エネルギーバッファからのエネルギーを使用するか、又は全くエネルギーを購入しない。それによって、エネルギーバッファの充電状態が結果的に低くなるので、エネルギー消費が減ることになる。エネルギーメインシステムからの総エネルギー需要はゆっくり上昇することになり、車両がエネルギー余剰の状態にあると、安価なエネルギーが入手できるので、全てのシステムがエネルギーを購入することができるようになり、エネルギーバッファの充電状態が向上することになる。
【0031】
これらのエネルギーの不足期間中、EMSは、エネルギーバッファの装填を促進するために、第1の価格を助成することができる。エネルギーの助成は、第1の価格の上昇に影響する状態が予測される場合にも有益となり得るものであり、それによってエネルギー不足に達する前にエネルギーバッファを充填することができる。
【0032】
エネルギーメインシステムの境界は、燃焼エンジンとして、或いは燃焼エンジンと発電機又は燃料タンクとして定義することができる。その他の境界定義もまた可能である。例えば、燃料タンクがエネルギーメインシステムである場合、第1のエネルギー変換器が、燃料タンクからのエネルギーを第1の価格で購入し、発電機へのエネルギーを第2の価格で購入する燃焼エンジンとなり、第2の価格は、燃焼エンジンの効率に依存する。発電機は、燃焼エンジンからのエネルギーを第2の価格で購入し、その他の補助システムへのエネルギーを、発電機の効率に依存する第3の価格で購入する。しかしながら、好適な実施形態では、エネルギーメインシステムは、燃焼エンジン及び発電機として定義されるが、これは燃料タンクから発電機へのエネルギーの流れに分岐がなく、一方向にのみ流れるからである。従って、例えば、エネルギーメインシステムから設定された第1の価格は、エネルギーメインシステムの総合効率に依存する。
【0033】
エネルギーメインシステムは、複数のエネルギー源からなっていてもよく、エネルギーメインシステムの総合効率に応じた1つの共通価格でエネルギーを供給する。しかしながら、EMSは、燃焼エンジンを備えた車両に適合されており、そのような複数のエネルギー源は、ディーゼルエンジン等の、少なくとも1つの内燃エンジンを備えている。
【0034】
わかりやすいエネルギーバッファには、バッテリ又はバッテリパックがあり、複数のバッテリ及び/又はその他のエネルギーバッファをEMSに接続することができる。
【0035】
車両に適合されたEMSにおける共通のエネルギー変換器は、油ポンプ及び/又はラジオ及び/又は暖房装置及び/又はステアリングサーボ及び/又はブレーキサーボであり、車両の他の全ての言及されていないエネルギー変換器も本発明のEMSに接続するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
次に、図面を参照して本発明を詳述する。
【0037】
図1】本発明のEMSの第1の実施形態の概略図を示す。
図2】本発明のEMSの第2の実施形態の概略図を示す。
図3】本発明のEMSの制御アーキテクチャの概観を示す。
図4】本発明のEMSにおけるエネルギーバッファの個別価格制限曲線の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下において、本発明を実施するための幾つかの形態の単なる例証として、本発明の選択された実施形態のみを図示及び説明する。
【0039】
図1は、燃焼エンジンCE、発電機GEN、エネルギーバッファ、及びエネルギー変換器からなるエネルギーシステムを制御する、本発明のEMSの第1の実施形態を示しており、上記燃焼エンジンCEと上記発電機GENが共にエネルギーメインシステムを構成するものである。更に、補助装置を燃焼エンジンCEに直接接続してもよく、そのことにより補助装置がエネルギーメインシステムからの外部価格Pmに影響するが、それは、補助装置がエネルギーメインシステムの効率を低下させるからである。
【0040】
エネルギーシステムは、更なるエネルギーメインシステム又は更なるエネルギー補助装置を備えるように拡張することができる。
【0041】
エネルギーメインシステムは、EMS内でエネルギーメインシステムエージェント(msエージェント)MSAによって構成され、エネルギーバッファは、EMS内でエネルギーバッファエージェント(bエージェント)BA1によって構成され、エネルギー変換器は、EMS内でエネルギー変換器エージェント(cエージェント)CA1によって構成される。追加の補助装置をエネルギーシステムに接続してもよく、これらは、EMS内でそれらの個々の起動エージェントBAn、CAnによって構成されるものであり、図において破線で示されている。EMSに対する追加の補助装置の数nは制限されていない。しかしながら、説明は、1つのエネルギーバッファと1つのエネルギー変換器だけを備えた小規模のシステムに重点を置くことにするが、そのためにEMSは更なる装置機能を同様に制御することになる。
【0042】
図1において、ボックスMSA、BA1、CA1、BAn、CAnは取引エージェントを表しており、ボックス間の矢印はエネルギーの取引経路を表している。ボックスから出入りする矢印「I」、「is」及び「set」は、取引エージェントMSA、BA1、CA1、BAn、CAnへ/から送信される情報を表している。
【0043】
msエージェントMSAは、情報i(車両の位置、近づいているルートに関する情報、又はその他の関連情報であってよい)を受信し、エネルギーメインシステムから、エネルギーメインシステムの瞬間的な作業状態を含む情報isを更に受信する。それにより、msエージェントは受信した情報i、isを利用して、エネルギーメインシステムが補助システムに供給するエネルギーの第1の価格Pmを計算する。第1の価格Pmは、エネルギーメインシステム全体の効率に基づいている。msエージェントはまた、エネルギーメインシステムのローカル制御装置に情報setを送信するが、この情報は補助システムからのエネルギー需要を含んでいる。それによって、ローカル制御装置は、要求されたエネルギーを供給することができるようにエネルギーメインシステムを制御する。図1に示す例におけるエネルギーメインシステムでは、補助システムがエネルギーメインシステムに含まれる燃焼エンジンからのエネルギーを直接使用するため、損失と見られ、それによってエネルギーメインシステムの効率が低下する。図2において、EMSの別の実施形態が示されているが、それらの補助システムはEMS内で同様に作用する。
【0044】
bエージェントBA1は、エネルギーバッファの状態に関する、充電状態(SoC)やその効率等の情報isを受信し、bエージェントは更に、エネルギー(即ち、エネルギーバッファに貯蔵されたエネルギー)を購入した、エネルギー価格を記録し、貯蔵されたエネルギーの平均値を計算する。エネルギーバッファに貯蔵されたエネルギー価の平均値と、エネルギーバッファの効率と、エネルギーバッファのSoCとに基づいて、bエージェントは、エネルギーバッファから購入するエネルギーの第2の価格PB1を設定する。bエージェントBA1はまた、エネルギーバッファのローカル制御装置に情報setを送信して、bエージェントBA1によって注文されたエネルギー購入を実現するようにエネルギーバッファを制御するようになっている。
【0045】
cエージェントCA1は、エネルギー変換器の状態(即ち、そのエネルギー需要)に関する情報isを受信する。エネルギー変換器からのエネルギー需要がある場合、cエージェントは、最低価格Pm、PB1があって、エネルギー変換器の個別最高購入価格よりも低い、有効なエネルギー源(エネルギーバッファ及びエネルギーメインシステム)からエネルギーを購入する。cエージェントは、エネルギー変換器のローカル制御装置に情報setを送信し、ローカル制御装置は、必要なエネルギーを適切なエネルギー源から要求する。
【0046】
複数のn個のエネルギー変換器及びエネルギーバッファを備えたEMSも同様に機能するが、起動エージェントBA1、CA1、BAn、CAnが、それらの各補助システムのうちエネルギーをどこから購入又はどこへ販売するかの選択肢がより多いという点だけ異なっている。
【0047】
図2において、本発明のEMSの第2の実施形態が開示されている。図1のEMSと図2のEMSの違いは、図2のEMSでは、燃焼エンジンのみが、msエージェントMSAによって構成されるエネルギーメインシステムであり、そのために燃焼エンジンから直接エネルギーを受信する補助システムにはエネルギー損失が見られず、エネルギーメインシステムの効率低下によってエネルギーの価格Pmが上昇する点である。その代わりにまた、これらの補助システムは、他の補助システムと同じ価格Pmでエネルギーメインシステムからエネルギーを購入する。これらの補助システムは、他の構成部品と同じ状態にしてEMS内で作用するものであり、それらの起動エージェントCAE1、CAEnによって構成される。しかしながら、これらの補助システムは、燃焼エンジンからの運動エネルギーを使用するので、通常はエネルギーバッファにアクセスしないが、それら自体がバッファであってもよく、自らの目的のためにエネルギーを貯蔵することができるものであり、燃焼エンジンによって直接駆動され、圧縮機タンクに接続される圧縮機がその例である。
【0048】
更に、図2に示すEMSでは、第1のエネルギー変換器が、cエージェントCA1によってEMS内で構成される発電機であり、そのためcエージェントCA1がmsエージェントMSAからエネルギーを購入する。発電機は、そのエネルギーを電気エネルギーに変換し、cエージェント及びbエージェントの各補助システムに対する購入に応じて、この電気エネルギーがエネルギーシステム内の他の補助システムに分配される。発電機からの第2のエネルギー価格P2は、エネルギーメインシステムからの第1のエネルギー価格Pmよりも明らかに高いが、これは第2のエネルギー価格P2では、変換における損失が価格P2に追加されるからである。発電機のcエージェントCA1は、EMS内でどのように作用するかを知り、購入したエネルギーをそこへ供給するように発電機をどのように制御するかをローカル制御装置に命令するために、発電機のローカル制御装置から情報isを受信し、発電機のローカル制御装置に情報setを送信する。
【0049】
図3において、本発明のEMSの実施態様の全体図が開示されており、その中でEMSは最上層であり、起動エージェントMSA、CA1、BA1、CAE1、CA2間でエネルギーの価格設定、販売及び購入が行われている。取引エージェントは、ECUによって制御され、車両のCANシステム上で互いに、且つそれらの各構成部品CE、GEN、B、Cのローカル制御装置LCと通信する。取引エージェントは、そこにかかる負荷を拡散するために、実際に幾つかのECUの間で分配することができ、取引エージェント間の通信は車両のCANバスを用いて行われる。これは、取引エージェントのコンパクトで明確に定義されたインターフェースによって実行できる。各々の構成部品CE、GEN、B、Cのローカル制御装置LCは、その制限内で機能するように構成部品CE、GEN、B、Cを制御し、それらの各取引エージェントMSA、CA1、BA1、CAE1、CA2からの要求によって構成部品CE、GEN、B、Cを起動及び停止する。ローカル制御装置LCは、EMS内の各取引エージェントに状態に関する情報を送信し、EMS内の各取引エージェントからの購入に関する情報を受信する。
【0050】
bエージェントは、EMS内で唯一の取引エージェントであって、エネルギーの購入を停止する可変の価格制限がある。bエージェントの可変価格制限曲線の例を図4に示す。図4の図において、低SoCでは、bエージェントがエネルギーバッファBのためのエネルギーを購入する価格制限が増加していることがわかる。SoCが最小値Min SoCに達すると、最高個別価格制限に到達する。エネルギーバッファBが完全に装填されると、bエージェントはエネルギーを全く購入しなくなる。エネルギーバッファBは、エネルギーバッファBで購入したエネルギーの価格の流動的な平均Aを有し、この平均は、エネルギーバッファBから購入したエネルギーの価格の変数である。エネルギーバッファBで購入したエネルギーの平均価格Aは、エネルギーバッファBから購入したエネルギーの瞬間的な販売価格でもある。
【0051】
本発明のEMSは、補助システムの制御の全体的な最適化を促進し、これが燃料消費の削減につながる。更に、制御機能の設計に要する作業が減るが、これは新たな構成部品をEMSの全体的規則に容易に適合することができるからである。更に、本発明のEMSは、エネルギーの価格が燃焼エンジンの効率に依存するので、車両の運転サイクルの瞬間的な状態に自動的且つ継続的に適合する。エネルギーの価格への税の付加又は助成によって、EMSは車両のこれから起きる状況に適合して、車両の燃料消費の更に大きな削減が達成されるようになっている。
【0052】
本発明は、提示した特定の実施形態及び図に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲の技術的範囲内の全ての変形例を含む。従って、それに対する図面及び説明は、限定的ではなく、本質的に例証的であると考えられるべきである。
図1
図2
図3
図4