【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1に記載のエネルギー管理システム(EMS)によって達成される。
【0009】
本発明は、車両のエネルギーの流れをエネルギーシステムにおけるエネルギーの瞬時の需要と供給に応じて制御することができるという考えに基づいている。エネルギーメインシステムから補助システム及び補助システム間へとエネルギーをどのように分配するかという簡単なルールを定めることにより、簡単且つ効率的なエネルギー管理システムを実現することができる。本発明のEMSでは、エネルギーがそれによってエネルギーメインシステムと補助システムの間で交換されるが、一次エネルギー源、即ち、燃焼エンジンが主要な価格設定源である。基本的に、燃焼エンジンが高効率で作動している場合又は制動中は価格が低くなり、燃焼エンジンが低効率で作動している場合は価格が高くなる。従って、補助システムは、エネルギー需要がある場合、燃焼エンジンからエネルギーを購入するが、そのために補助システムにはそれ以上はエネルギーを購入しない個別価格制限がある。
【0010】
本発明のEMSは、価格設定ルールを適応させることによって車両におけるエネルギーの流れを制御する。EMSにおいて、エネルギーの価格は、全体的なエネルギーシステム、即ち、車両の瞬時のエネルギー供給に応じて変動する。全体的なエネルギーシステムにおける各々の補助システムには、それ以上は補助システムがエネルギーを購入しない個別価格制限がある。一部の補助システムには、それらの補助システムのパラメータに応じて変動する価格制限がある。補助システムは、EMS内で起動エージェントによって構成され、この起動エージェントは、それらがどんな種類の補助システムを構成するかによって異なる作用を有する。上記起動エージェントは、全体的なエネルギーシステムにおけるエネルギーの流れを制御する。EMSにおいて、補助システムは2つのカテゴリー(エネルギーバッファとエネルギー変換器)に分けられる。
【0011】
エネルギーメインシステムは、車両にエネルギーを提供する。エネルギーメインシステムは、燃料タンク、燃焼エンジン、或いは、冷却ファンや発電機又は電気機械等の1つ以上の補助システムを含む燃焼エンジンであってもよく、電気機械は、発電機又はモータとして機能することができる。
【0012】
エネルギー補助システムは、2つのサブカテゴリ(エネルギーバッファとエネルギー変換器)に定義される。エネルギーバッファは、車両においてエネルギーを貯蔵することができる任意のシステムであり、最も明らかなものはバッテリである。考えられるその他のエネルギーバッファには、冷却水、圧力タンク、又は車室がある。しかしながら、全てのバッファが他の補助システムにエネルギーを提供することができる訳ではないが、バッファ自体の将来的なエネルギー需要を減らすことはできる。例えば、乗客が気づかない範囲内で車室内の温度を変動させることができる。エネルギーの価格が低い期間に、温度を理想的な温度以上に上昇させて、後で、エネルギーの価格が高い期間に温度をゆっくり低下させることができるようにすることができる。エネルギー変換器は、ある形態から別の形態にエネルギーを変換するものであり、例えば、パワーステアリング装置(電気エネルギーを運動エネルギーへ)、発電機(運動エネルギーを電気エネルギーへ)、ヒータ(電気エネルギーを熱へ)、冷却ファン(電気エネルギーを運動エネルギーへ)、及び/又はあらゆる種類のアクチュエータ(電気エネルギーを運動エネルギーへ)などである。
【0013】
本発明のEMSの最小限の設定には、エネルギーメインシステム、エネルギーバッファ、及びエネルギー変換器が含まれる。しかしながら、任意の数のサブシステムをEMSに追加してもよく、最小限の設定に追加したサブシステムの数と関係なく、同じ原則でシステム内のエネルギーの流れを管理することができるようになる。簡単にするため、エネルギーメインシステム、エネルギーバッファ、及びエネルギー変換器がある最小限の要件を備えたシステムであって、エネルギーメインシステムが、燃焼エンジンと、発電機とを備えているシステムを説明することにする。
【0014】
エネルギーメインシステムは、EMS内でエネルギーメインシステム起動エージェント(msエージェント)によって構成される。エネルギーバッファは、EMS内でエネルギーバッファ起動エージェント(bエージェント)によって構成され、エネルギー変換器は、EMS内でエネルギー変換器起動エージェント(cエージェント)によって構成される。起動エージェントは、それらの各補助システムを起動及び停止すると共に、それらのエネルギー需要がEMSを介して要求され、且つエネルギーが価格設定の低いエネルギー源(即ち、エネルギーメインシステム又はエネルギーバッファ)から要求されるように制御する。
【0015】
msエージェントは、エネルギーメインシステムから提供されるエネルギーの第1の価格を設定するものであり、第1の価格は、エネルギーメインシステムの固有パラメータに依存する。これらのパラメータはエネルギーメインシステムがどのように定義されているかによって決まるが、エネルギーメインシステムとして燃焼エンジンを備えていると、パラメータが燃焼エンジンの効率となり得るため、通貨が必要な燃料の量となることになり、エネルギーメインシステムとして燃焼エンジン及び発電機を備えていると、パラメータがこれらの2つの構成部品の総合効率となることになる。
【0016】
bエージェントは、上記第1の価格のmsエージェント、又は上記第1の価格よりも低い価格で販売している別のbエージェントのどちらかからエネルギーを購入するため、エネルギーバッファは、価格が最も低いエネルギー源からエネルギーを提供される。
【0017】
bエージェントは、エネルギーバッファから提供されるエネルギーの第2の価格を設定するものであり、第二の価格は、エネルギーバッファの固有パラメータに依存する。上記エネルギーバッファの固有パラメータは、好ましくは、バッファで購入されたエネルギーの購入価格の平均値と、バッファ効率からなる。
【0018】
cエージェントは、第1の価格と第2の価格のどちらが最低価格であるかによって、msエージェント又はbエージェントのどちらかからエネルギーを購入する。それ以上のエネルギーバッファがシステムに接続されている場合、これらがより低い価格を提供するのであれば、cエージェントはそれらから購入することを選択することもできることが明らかである。
【0019】
bエージェント及びcエージェントには、エネルギー購入の個別価格制限があり、bエージェント及びcエージェントは、bエージェント及びcエージェントそれぞれの個別価格制限よりも低い価格がある場合だけエネルギーを購入する。
【0020】
本発明のEMSにより、確実に、需要が最も高い構成部品が常にエネルギーを供給され、そのエネルギーが最も有益なエネルギー源から得られることになる。即ち、燃焼エンジンが低効率のモードで駆動されている場合、動力を必要としている構成部品は、システム内のエネルギーバッファのうちの1つから、エネルギーバッファが充電状態であって、非効率的に機能している燃焼エンジンよりも低い価格でエネルギーを販売することができるような状態で、動力を供給される。燃焼エンジンとエネルギーバッファの両方の価格設定が高い期間、一部のシステムは、それらの個別価格制限がEMS内の全てのエネルギー価格よりも低い場合、エネルギーが供給されないことがある。
【0021】
起動エージェント間で必要とされる全ての情報は、価格と要求されるエネルギーの購入とに盛り込まれている。価格が上昇すると、購入が減少し、個々のシステムはそれらのバッファの内容を使用することになる。主要な価格設定源は燃焼エンジンであり、高効率で作動している場合又は制動操作中は価格が低くなり、それ以外は高くなる。
【0022】
本発明のEMSは、更に、様々な補助システムの動作を全体的なレベルで調整及び最適化する。本発明のEMSによって、補助システムは、車両の運転サイクルに自動的且つ継続的に適合される。更なる補助システムを車両及びEMSに追加することが簡単にできるが、これは、個々の補助システムが既存の補助システムと同じ状態にしてEMS内で作動する必要があり、追加された補助システムの手動調整の必要性が最小限になるからである。新たに追加された補助システムはEMSにおける起動エージェントになり、一般的に構造化された制御設計への接続及び適合が簡単なため、全体的なエネルギーシステムに更なる補助システムを追加する開発費を削減することができる。
【0023】
更に、本発明のEMSによって、様々な補助システムが全体的に調整及び最適化され、補助システムが最も効率的な方法でエネルギー資源を利用するため、車両の燃料消費を削減することができる。
【0024】
エネルギーメインシステムがどのように定義されているかによって、一部のbエージェント及びcエージェントは、msエージェントから直接それらの補助システムのためのエネルギーを要求することができ、一部は決してそこから直接には要求しない。例えば、発電機がエネルギーメインシステムに含まれている場合、エネルギーメインシステムが電気エネルギーを供給することができ、複数のbエージェント及び/又はcエージェントがmsエージェントから直接エネルギーを購入することができる。しかしながら、発電機がエネルギーメインシステムに含まれていない場合、これらのbエージェント及びcエージェントは、EMS内で発電機を構成するcエージェントからそれらの補助システムに必要なエネルギーを購入しなければならない。
【0025】
本発明の好適な実施形態では、起動エージェントがエネルギー購入を中止する個別価格制限が、cエージェントに対しては固定され、bエージェントに対しては変動する。従って、それらのcエージェントによって構成されるエネルギー変換器は、それらの個別価格制限に反映される優先順位を有しており、エネルギー変換器の価格制限が高ければ高いほど、この補助システムにエネルギーが供給されることが車両にとってより重要になる。例えば、車室の暖房には、パワーステアリングよりも低い個別価格制限がある。エネルギー変換器の固定の個別価格制限によって確実に、車両の優先機能に常にエネルギーを供給することができる。
【0026】
エネルギーバッファに関しては、個別価格制限が変動し、好ましくはエネルギーバッファの充電状態に依存して、エネルギーバッファが高充電状態の場合はその個別価格制限が低下し、エネルギーバッファが低充電状態の場合はその個別価格制限が上昇するようになっている。エネルギーバッファの可変の個別価格制限によって確実に、エネルギーバッファが常に適切な充電状態に保たれて、常にエネルギーシステム内にエネルギーバッファが存在するようになる。
【0027】
bエージェントで定められた可変の価格制限は、エネルギーバッファの充電状態と、bエージェントで定められた外部価格とに依存することが好ましい。エネルギーバッファからのエネルギーの外部価格をエネルギーバッファの可変の購入価格制限に盛り込むことによって、エネルギーバッファからの恒常的な外部価格の増減が回避される。
【0028】
前述のように、車両のエネルギー補助システムを更に本発明のEMSに接続することができ、追加のエネルギー補助システムは、変換器及び/又はバッファとしてEMSに接続される。全てのバッファが他の補助システムにエネルギーを供給できなければならない必要はなく、エネルギーを貯蔵し、そのエネルギーをそれ自体の機能に使用する能力がありさえすればよく、例えば、その機能とは運転室/車室の暖房だが、安価なエネルギーの期間は過熱、即ち、設定温度よりも高い温度になる可能性があり、高価なエネルギーの期間は設定温度よりも低い温度になる可能性がある。過熱や熱不足は、運転者及び/又は同乗者の快適さに干渉しないように設定されることが明らかである。
【0029】
本発明のEMSの変形例では、EMSが車両のトラベルコンピュータと通信して、近づいている走行ルートを予測することができるようになっている。トラベルコンピュータは、車両の運転者が利用できる衛星ナビゲーションシステムや車両のECUが利用可能なブラックボックスシステム等の、あらゆる種類のトラベルコンピュータであってよい。衛星ナビゲーションシステムが最も一般的なナビゲーションシステムだが、その他の技術に基づいた他の種類のナビゲーションシステムも可能である。トラベルコンピュータからの情報を用いることにより、EMSは、近づいているルートのデータにアクセスすることができ、そのようなデータは地形データであってよい。それによって、EMSは、将来的なエネルギー不足又はエネルギー余剰を予測することができる。
【0030】
EMSが将来的なエネルギー余剰を予測した状況(例えば、長い下り斜面)では、EMSは第1の価格に税を付加することができ、それによって第1の価格が上昇する。上記税を付加することによって、税が付加されている期間は、エネルギーメインシステムから直接購入されるエネルギーが減り、その間補助システムは、エネルギーバッファからのエネルギーを使用するか、又は全くエネルギーを購入しない。それによって、エネルギーバッファの充電状態が結果的に低くなるので、エネルギー消費が減ることになる。エネルギーメインシステムからの総エネルギー需要はゆっくり上昇することになり、車両がエネルギー余剰の状態にあると、安価なエネルギーが入手できるので、全てのシステムがエネルギーを購入することができるようになり、エネルギーバッファの充電状態が向上することになる。
【0031】
これらのエネルギーの不足期間中、EMSは、エネルギーバッファの装填を促進するために、第1の価格を助成することができる。エネルギーの助成は、第1の価格の上昇に影響する状態が予測される場合にも有益となり得るものであり、それによってエネルギー不足に達する前にエネルギーバッファを充填することができる。
【0032】
エネルギーメインシステムの境界は、燃焼エンジンとして、或いは燃焼エンジンと発電機又は燃料タンクとして定義することができる。その他の境界定義もまた可能である。例えば、燃料タンクがエネルギーメインシステムである場合、第1のエネルギー変換器が、燃料タンクからのエネルギーを第1の価格で購入し、発電機へのエネルギーを第2の価格で購入する燃焼エンジンとなり、第2の価格は、燃焼エンジンの効率に依存する。発電機は、燃焼エンジンからのエネルギーを第2の価格で購入し、その他の補助システムへのエネルギーを、発電機の効率に依存する第3の価格で購入する。しかしながら、好適な実施形態では、エネルギーメインシステムは、燃焼エンジン及び発電機として定義されるが、これは燃料タンクから発電機へのエネルギーの流れに分岐がなく、一方向にのみ流れるからである。従って、例えば、エネルギーメインシステムから設定された第1の価格は、エネルギーメインシステムの総合効率に依存する。
【0033】
エネルギーメインシステムは、複数のエネルギー源からなっていてもよく、エネルギーメインシステムの総合効率に応じた1つの共通価格でエネルギーを供給する。しかしながら、EMSは、燃焼エンジンを備えた車両に適合されており、そのような複数のエネルギー源は、ディーゼルエンジン等の、少なくとも1つの内燃エンジンを備えている。
【0034】
わかりやすいエネルギーバッファには、バッテリ又はバッテリパックがあり、複数のバッテリ及び/又はその他のエネルギーバッファをEMSに接続することができる。
【0035】
車両に適合されたEMSにおける共通のエネルギー変換器は、油ポンプ及び/又はラジオ及び/又は暖房装置及び/又はステアリングサーボ及び/又はブレーキサーボであり、車両の他の全ての言及されていないエネルギー変換器も本発明のEMSに接続するのに適している。