(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006799
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】最小二乗サポートベクターマシンを用いた貯留層特性予測
(51)【国際特許分類】
G01V 1/28 20060101AFI20160929BHJP
G01V 1/00 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
G01V1/28
G01V1/00 C
【請求項の数】27
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-533595(P2014-533595)
(86)(22)【出願日】2012年9月17日
(65)【公表番号】特表2014-535044(P2014-535044A)
(43)【公表日】2014年12月25日
(86)【国際出願番号】US2012055711
(87)【国際公開番号】WO2013048798
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年8月25日
(31)【優先権主張番号】61/540,263
(32)【優先日】2011年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】アル―ドッサリー,サレハ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジンソン
(72)【発明者】
【氏名】アルビンハッサン,ナシェル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ,フサム
【審査官】
田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2004/104637(WO,A1)
【文献】
YE DUAN-NAN,APPLICATION OF SUPPORT VECTOR MACHINE IN PREDICTION OF RESERVOIR PARAMETERS,2010 IEEE 10TH INTERNATIONAL CONFERENCE ON SIGNAL PROCESSING (ICSP),米国,IEEE,2010年10月24日,P2539-2542
【文献】
AL-ANAZI A F,COMPUTERS AND GEOSCIENCES,英国,PERGAMON PRESS,2010年12月 1日,V36 N12,P1494-1503
【文献】
MARK A HALL,CORRELATION-BASED FEATURE SELECTION FOR MACHINE LEARNING,PHD THESIS [ONLINE],NZ,1999年 4月 1日,P4, 51-74,URL,http://www.cs.waikato.ac.nz/~mhall/thesis.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−13/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下貯留層構造の貯留層特性を、前記貯留層から利用可能な入力データのコンピュータにおけるサポートベクターマシン処理によってモデリングし、前記利用可能な入力データの回帰分析によって、前記地下貯留層中の対象となる領域での前記貯留層特性の尺度を形成するための、コンピュータ実施方法であって、
(a)前記貯留層の地震調査から得られる地震調査データから、地下属性に関するトレーニング入力データを受信するステップと、
(b)前記貯留層中の井戸から得られるデータから、形成岩特徴に関するトレーニングターゲットデータを受信するステップと、
(c)地下属性トレーニングデータ及び形成岩特徴トレーニングターゲットデータを複数のサブセットに区分するステップと、
(d)サポートベクターマシンモデリングに対する形成属性パラメータを選択するステップであり、
(1)カーネルパラメーター値とペナルティーパラメータ値の対を有する動径基底カーネル関数対に対して、地下属性トレーニングデータの各サブセットを、前記複数のサブセットの他のサブセットと相互検証するステップと、
(2)相互検証した各サブセットの誤差関数を形成するステップと、
(3)前記地下属性トレーニングデータのサブセットを前記相互検証するステップを繰り返し、複数の異なる動径基底カーネル関数対に対して誤差関数を形成するステップと、
を実行することによって、選択するステップと、
(e)前記複数の異なる動径基底カーネル関数対に対して前記形成された誤差関数の最小誤差関数を決定することによって、前記選択された形成属性パラメータを最適化するステップと、
(f)前記トレーニングターゲットデータ、前記選択された形成属性パラメータ、地下属性トレーニングデータの前記相互検証されたサブセット、および前記複数の動径基底カーネル関数対に対する前記誤差関数を、サポートベクターマシンモデリングに対するトレーニング入力として提供するステップと、
(g)前記提供されたトレーニング入力の前記誤差関数の最小誤差関数を決定するための回帰分析により、サポートベクターマシンモデリングを実行するステップと、
(h)前記トレーニング入力の前記サポートベクターモデリングに基づいて前記貯留層特性を予測するステップと、
(i)前記予測された貯留層特性の出力表示を形成するステップと、
の前記コンピュータ処理ステップを含む、方法。
【請求項2】
前記コンピュータは、グラフ表示デバイスを含み、さらに、
前記予測された貯留層特性の記録の記憶
を含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記貯留層特性は、前記貯留層中の対象となる領域の空隙率を含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記貯留層特性は、前記貯留層中の対象となる領域の音響インピーダンスを含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記トレーニング入力データの前記地下属性は、振幅、周波数、第1のエンベロープデータ、第2のエンベロープデータ、位相、コヒーレンス、帯域幅、および音響インピーダンスを含む群から選択される、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記トレーニングターゲットデータの前記形成岩特徴は、空隙率および音響インピーダンスを含む群から選択される、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記予測された貯留層特性は、空隙率を含む、請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
地下貯留層構造の貯留層特性を、前記貯留層から利用可能な入力データのコンピュータにおけるサポートベクターマシン処理によってモデリングし、前記利用可能な入力データの回帰分析によって、前記地下貯留層中の対象となる領域での前記貯留層特性の尺度を形成するための、データ処理システムであって、
(a)
(1)前記貯留層の地震調査から得られる地震調査データから、地下属性に関するトレーニング入力データを受信するステップと、
(2)前記貯留層中の井戸から得られるデータから、形成岩特徴に関するトレーニングターゲットデータを受信するステップと、
(3)地下属性トレーニングデータ及び形成岩特徴トレーニングターゲットデータを複数のサブセットに区分するステップと、
(4)前記トレーニング入力データの前記トレーニングターゲットデータとの相互相関によってサポートベクターマシンモデリングに対する形成属性パラメータを選択するステップであり、
(i)カーネルパラメーター値とペナルティーパラメータ値の対を有する動径基底カーネル関数対に対して、前記地下属性トレーニングデータの各サブセットを、前記複数のサブセットの他のサブセットと相互検証することと、
(ii)前記相互検証した各サブセットの誤差関数を形成することと、
(iii)前記地下属性トレーニングデータのサブセットを前記相互検証するステップを繰り返し、複数の異なる動径基底カーネル関数対に対する誤差関数を形成することと、
によって、選択するステップと、
(5)前記複数の異なる動径基底カーネル関数対に対する前記形成された誤差関数の最小誤差関数を決定することにより、前記選択された形成属性パラメータを最適化するステップと、
(6)前記トレーニングターゲットデータ、前記選択された形成属性パラメータ、地下属性トレーニングデータの前記相互検証されたサブセット、および複数の動径基底カーネル関数対に対する前記誤差関数を、サポートベクターマシンモデリングに対するトレーニング入力として提供するステップと、
(7)前記提供されたトレーニング入力の前記誤差関数の最小誤差関数を決定するための回帰分析により、サポートベクターマシンモデリングを実行するステップと、
(8)前記トレーニング入力の前記サポートベクターマシンモデリングに基づき、前記貯留層特性を予測するステップと、
を実行するためのプロセッサと、
(b)
前記予測された貯留層特性の出力表示を形成するステップ
を実行するための表示部と、
を備える、データ処理システム。
【請求項9】
さらに、
前記予測された貯留層特性の記録を記憶する、データメモリ
を含む、請求項8に記載のデータ処理システム。
【請求項10】
前記貯留層特性は、前記貯留層中の対象となる領域の空隙率を含む、請求項8に記載のデータ処理システム。
【請求項11】
前記貯留層特性は、前記貯留層中の対象となる領域の音響インピーダンスを含む、請求項8に記載のデータ処理システム。
【請求項12】
前記トレーニング入力データの前記地下属性は、振幅、周波数、第1のエンベロープデータ、第2のエンベロープデータ、位相、コヒーレンス、帯域幅、および音響インピーダンスを含む群から選択される、請求項8に記載のデータ処理システム。
【請求項13】
前記トレーニングターゲットデータの前記形成岩特徴は、空隙率および音響インピーダンスを含む群から選択される、請求項8に記載のデータ処理システム。
【請求項14】
前記予測された貯留層特性は、空隙率を含む、請求項8に記載のデータ処理システム。
【請求項15】
データ処理システムに、地下貯留層構造の貯留層特性を、前記貯留層から利用可能な入力データのコンピュータにおけるサポートベクターマシン処理によってモデリングさせ、前記利用可能な入力データの回帰分析によって、前記地下貯留層中の対象となる領域での前記貯留層特性の尺度を形成させるための、動作可能な命令を、コンピュータ可読媒体コンピュータ中に記憶している、データ記憶デバイスであって、前記データ記憶デバイス中に記憶された前記命令は、前記データ処理システムに以下の:
(a)前記貯留層の地震調査から得られる地震調査データから、地下属性に関するトレーニング入力データを受信するステップと、
(b)前記貯留層中の井戸から得られるデータから、形成岩特徴に関するトレーニングターゲットデータを受信するステップと、
(c)地下属性トレーニングデータ及び形成岩特徴トレーニングターゲットデータを複数のサブセットに区分するステップと、
(d)サポートベクターマシンモデリングに対する形成属性パラメータを選択するステップであり、
(1)カーネルパラメーター値とペナルティーパラメーター値の対を有する動径基底カーネル関数対に対して、前記地下属性トレーニングデータの各サブセットを、前記複数のサブセットの他のサブセットと相互検証するステップと、
(2)前記相互検証した各サブセットの誤差関数を形成するステップと、
(3)前記地下属性トレーニングデータのサブセットを前記相互検証するステップを繰り返し、複数の異なる動径基底カーネル関数対に対する誤差関数を形成するステップと、
を実行することによって、選択するステップと、
(e)前記複数の異なる動径基底カーネル関数対に対する前記形成された誤差関数の最小誤差関数を決定することによって、前記選択された形成属性パラメータを最適化するステップと、
(f)前記トレーニングターゲットデータ、前記選択された形成属性パラメータ、地下属性トレーニングデータの前記相互検証されたサブセット、および前記複数の動径基底カーネル関数対に対する前記誤差関数を、サポートベクターマシンモデリングに対するトレーニング入力として提供するステップと、
(g)前記提供されたトレーニング入力の前記誤差関数の最小誤差関数を決定するための回帰分析により、サポートベクターマシンモデリングを実行するステップと、
(h)前記トレーニング入力の前記サポートベクターマシンモデリングに基づき、前記貯留層特性を予測するステップと、
(i)前記予測された貯留層特性の出力表示を形成するステップと、
を実行させる、データ記憶デバイス。
【請求項16】
前記データ処理システムは、データメモリを含み、前記命令はさらに、前記データ処理システムに、
前記予測された貯留層特性の記録を記憶するステップ
を実行させる命令を含む、請求項15に記載のデータ記憶デバイス。
【請求項17】
前記貯留層特性は、前記貯留層中の対象となる領域の空隙率を含む、請求項15に記載のデータ記憶デバイス。
【請求項18】
前記貯留層特性は、前記貯留層中の対象となる領域の音響インピーダンスを含む、請求項15に記載のデータ記憶デバイス。
【請求項19】
前記トレーニング入力データの前記地下属性は、振幅、周波数、第1のエンベロープデータ、第2のエンベロープデータ、位相、コヒーレンス、帯域幅、および音響インピーダンスを含む群から選択される、請求項15に記載のデータ記憶デバイス。
【請求項20】
前記トレーニングターゲットデータの前記形成岩特徴は、空隙率および音響インピーダンスを含む群から選択される、請求項15に記載のデータ記憶デバイス。
【請求項21】
前記予測された貯留層特性は、空隙率を含む、請求項15に記載のデータ記憶デバイス。
【請求項22】
前記カーネル対を、前記地下属性トレーニングデータのサブセットに適用するステップを更に含む請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項23】
前記選択された形成属性パラメータを最適化するステップが、
各属性に対する前記トレーニングデータセット及び試験データセットを、同一のスケールで定義された範囲の値にスケーリングするステップを含む請求項1に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項24】
前記プロセッサは、前記カーネル対を、前記地下属性トレーニングデータのサブセットに適用するステップを更に実行する請求項8に記載のデータ処理システム。
【請求項25】
前記選択された形成属性パラメータを最適化する前記プロセッサは、
各属性に対する前記トレーニングデータセット及び試験データセットを、同一のスケールで定義された範囲の値にスケーリングするステップを実行する請求項8に記載のデータ処理システム。
【請求項26】
前記命令は、前記カーネル対を、前記地下属性トレーニングデータのサブセットに適用するステップを実行するための命令を更に含む請求項15に記載のデータ記憶デバイス。
【請求項27】
前記選択された形成属性パラメータを最適化する命令が、
各属性に対する前記トレーニングデータセット及び試験データセットを、同一のスケールで定義された範囲の値にスケーリングするステップを実行するための命令を更に含む請求項15に記載のデータ記憶デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2011年9月28日出願の米国仮出願第61/540,263号からの優先権を主張する。米国特許実務の目的で、本願は、参照により全体にこの仮出願の内容を組み込んでいる。
【0002】
本発明は、地中の炭化水素貯留層のコンピュータ化シミュレーションに関し、具体的には、利用可能な限られた量の検層データがあるときの、貯留層モデルとしての貯留層属性または特性の決定に関する。
【背景技術】
【0003】
ほんの数個の井戸しか貯留層中に存在しない場合、地震属性から貯留層特性を予測することは、貯留層モデリングおよび評価のための初期の貯留層特性化を提供するための石油産業における共通の課題である。従来、地球統計学およびニューラルネットワークは、種々の地震属性の組み合わせから検層特性を予測するために使用されてきた。既知の井戸と地震との結び付きは、地震データと井戸の値との間の関係を学習するために使用されてきた。近年、多重地震属性は、井戸と地震属性との間の関係の学習に基づき、モデリング技術によって、検層特性を予測するために使用されてきた。しかしながら、小さい母集団(すなわち、ほんの数個の井戸と地震属性との対)に対して、統計的有意性は、場合によっては達成することが不可能であった。しかしながら、この技術の使用は、貯留層中に実際に存在する井戸の数によって決まったか、またはそれによって制限された。
【0004】
掘削された井戸の限られた利用可能性のため、貯留層石油物理学的特徴モデリングは典型的に、不確実性に悩まされてきた。ニューラルネットワーク方法は、地震属性を使用した貯留層予測のために開発されてきた。かかる方法は、貯留層炭化水素を予測するために、例えば、誤差逆伝搬またはBPニューラルネットワークおよび自己組織化マップまたはSOMニューラルネットワークに基づいてきた。しかしながら、ニューラルネットワークモデリング方法に基づき、貯留層特性を予測するという試みは、容易に「過学習」として知られているネットワークをもたらし、それが次に「オーバーフィッティング」をもたらし、このように検証試験において不十分な予測を提供してきた。
【0005】
地震属性は、地中の特定の間隔または形成層にわたる地震派トレースの特徴の定量的尺度である。地震属性は、地下構造の統合ならびに炭化水素の存在および位置の予測に対して、可能な限りの情報を提供することができる。地震属性は、炭化水素探査識別およびリスク、炭化水素挙動評価、貯留層特性化等に一般的に使用されてきた。地震属性の利点は、それらが井戸においておよび井戸から離れて予測することができ、その上なお井戸データを評価できることである。しばしば、予測は、単純に井戸データを補間するよりも詳細である。地震データおよびそれらの変換の両方から計算されている、多くの異なる地震属性がある。しかしながら、地下構造を統合し、貯留層を予測するためのこれらの属性の使用は、今までに知られている限り、適切に対処されていない問題である。
【発明の概要】
【0006】
簡潔に、本発明は、地下貯留層構造の貯留層特性を、貯留層から利用可能な入力データのコンピュータにおけるサポートベクターマシン処理によってモデリングし、利用可能な入力データの回帰分析によって、地下貯留層中の対象となる領域での貯留層特性の尺度を形成するための、新しいかつ改良されたコンピュータ実施方法を提供し、方法は、(a)貯留層の地震調査から得られる地震調査データから、地下属性に関するトレーニング入力データを受信するステップ、(b)貯留層中の井戸から得られるデータから、形成岩特徴に関するトレーニングターゲットデータを受信するステップ、トレーニング入力データのトレーニングターゲットデータとの相互相関によって、サポートベクターマシンモデリングに対する形成属性パラメータを選択するステップ、選択された形成属性パラメータを最適化するステップ、トレーニング入力データおよび最適化された選択された形成属性パラメータを、サポートベクターマシンモデリングに対する入力として提供するステップ、最適化された選択された形成属性パラメータに基づき、貯留層特性を予測するために、サポートベクターマシンモデリングを実行するステップ、ならびに予測された貯留層特性の出力表示を形成するステップのコンピュータ処理ステップを含む。
【0007】
本発明はまた、地下貯留層構造の貯留層特性を、貯留層から利用可能な入力データのコンピュータにおけるサポートベクターマシン処理によってモデリングし、利用可能な入力データの回帰分析によって、地下貯留層中の対象となる領域での貯留層特性の尺度を形成する、新しいかつ改良されたデータ処理システムを提供し、データ処理システムは、貯留層の地震調査から得られる地震調査データから、地下属性に関するトレーニング入力データを受信するステップ、貯留層中の井戸から得られるデータから、形成岩特徴に関するトレーニングターゲットデータを受信するステップ、トレーニング入力データのトレーニングターゲットデータとの相互相関によって、サポートベクターマシンモデリングに対する形成属性パラメータを選択するステップ、選択された形成属性パラメータを最適化するステップ、トレーニング入力データおよび最適化された選択された形成属性パラメータを、サポートベクターマシンモデリングに対する入力として提供するステップ、最適化された選択された形成属性パラメータに基づき、貯留層特性を予測するために、サポートベクターマシンモデリングを実行するステップを実行するためのプロセッサと、予測された貯留層特性の出力表示を形成するステップを実行するための表示部とを備える。
【0008】
本発明はさらに、データ処理システムに、地下貯留層構造の貯留層特性を、貯留層から利用可能な入力データのコンピュータにおけるサポートベクターマシン処理によってモデリングさせ、利用可能な入力データの回帰分析によって、地下貯留層中の対象となる領域での貯留層特性の尺度を形成させるための、動作可能な命令を、コンピュータ可読媒体コンピュータ中に記憶している、新しいかつ改良されたデータ記憶デバイスを提供し、データ記憶デバイス中に記憶された命令は、データ処理システムに以下のステップを実行させる:貯留層の地震調査から得られる地震調査データから、地下属性に関するトレーニング入力データを受信するステップ、貯留層中の井戸から得られるデータから、形成岩特徴に関するトレーニングターゲットデータを受信するステップ、トレーニング入力データのトレーニングターゲットデータとの相互相関によって、サポートベクターマシンモデリングに対する形成属性パラメータを選択するステップ、選択された形成属性パラメータを最適化するステップ、トレーニング入力データおよび最適化された選択された形成属性パラメータを、サポートベクターマシンモデリングに対する入力として提供するステップ、最適化された選択された形成属性パラメータに基づき、貯留層特性を予測するために、サポートベクターマシンモデリングを実行するステップ、ならびに予測された貯留層特性の出力表示を形成するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る、地下地中形成の貯留層特性予測のためのデータ処理システムで実行される一連のデータ処理ステップの機能ブロック図である。
【0010】
【
図2】本発明に係る、地下地中形成の貯留層特性予測のためのデータ処理システムの概略ブロック図である。
【0011】
【
図3】本発明に係る、地下地中形成の貯留層特性予測中の合成データから得られる試験結果のプロットである。
【0012】
【
図4】本発明に係る、地下地中形成の貯留層特性予測中の合成データから得られる試験結果のプロットである。
【0013】
【
図5】本発明に係る、地下地中形成の貯留層特性予測中に得られる井戸に対する空隙率予測のプロットである。
【0014】
【
図6】本発明に係る、地下地中形成の貯留層特性予測中に得られる別の井戸に対する空隙率予測のプロットである。
【0015】
【
図7】本発明に係る、地下地中形成の貯留層特性予測中に得られる別の井戸に対する空隙率予測のプロットである。
【0016】
【
図8】本発明に係る、地下地中形成の貯留層特性予測中に得られる地下地中形成の縦断面上に重ね合わせた音響インピーダンスのプロットである。
【0017】
【
図9】本発明に係る、地下地中形成の貯留層特性予測中に得られ、かつ
図8と同一の地下地中形成の縦断面上に重ね合わせた空隙率のプロットである。
【0018】
【
図10】本発明に係る、地下地中形成の貯留層特性予測に対し、かつ地下地中形成の縦断面上に重ね合わせた入力周波数属性地震データのプロットである。
【0019】
【
図11】本発明に係る、地下地中形成の貯留層特性予測中に得られ、かつ
図10と同一の地下地中形成の縦断面上に重ね合わせた空隙率のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では、本発明に係るある特定の処理方法もまた実行されるという条件で、サポートベクターマシン(SVM)として知られるコンピュータ化モデリング方法が貯留層属性または特性予測に使用され得ることがわかっている。サポートベクターマシンは、教科書「Statistics Learning Theory」(1998年)に記載されるように、V.Vapnikによって考案された統計的学習理論に基づく。サポートベクターマシンは、機械学習モデルの間で既知の技術である。本発明では、一形態のSVM回帰が実行される。本発明によるSVM回帰はまた、処理のための種々のカーネルの適切な形態のうちの選択された一形態を用いた処理、余剰属性またはターゲットに対してほとんど寄与しない可能性がある属性の除去、各属性が均等に寄与することを定めるための属性正規化、ならびにカーネルパラメータおよびペナルティパラメータの自動決定を組み込む。
【0021】
サポートベクターマシンは、スパースな決定関数展開を作成し、サポートベクターとして知られる選択された数のトレーニング点のみを選択することによって、コンピュータ中に形成される。カーネルの使用により、入力空間中のデータ点間の明示的な内積を伴う線形関数近似アルゴリズムは、それらの非線形一般化に便利にかつ効率的に変換され得る。SVMは、経験的エラー(リスク)とモデル複雑度との間のバランスのとれたトレードオフを通して、Vapnikの構造的リスク最小化原理をほぼ実施する(VC次元として既知であるものを用いた、可能性の高いモデル試験エラーバウンドの予測を通して測定される)。
【0022】
まず、最大マージン分類子が、以下のように2クラス分類線形問題を示すことによって確立される:
【数1】
式中、φ(χ)は、固定した特徴空間変換を示し、バイアスパラメータbは、明示的にされている。Wは、カーネル関数を示し、ここで、ガウス型動径基底関数カーネルが使用される。
【0023】
トレーニングデータセットは、N入力ベクトルx
1,...x
nを含み、対応するターゲット値は、t
1,...t
nであり、
であり、新しいデータ点xは、y(x)の記号に従って分類される。
【0024】
線形分離可能な特徴空間に対して、パラメータWおよびbの少なくとも1つの選択があり、以下を満たす。t
n=+1を有する点に対して、
であり、t
n=−1を有する点に対して、y(x
n)<0であり、全てのトレーニングデータ点に対してy(x
n)t
n>0になるようにする。y(x)の新しいデータ点xを予測するためのベクターマシンを表すために使用されるように、最適なWおよびbを探す。
【0025】
回帰モデリング
本発明では、サポートベクターマシン方法は、回帰問題まで及ぶと同時に、スパースネスの特性を維持する。方程式(1)と同一の形態のSVM回帰モデリングの問題を考慮すると、トレーニングデータセットはさらに、N入力ベクトルx
1,...x
nを含み、対応するターゲット値は、t
1,...t
n,であり、ここで、t
nは、任意のターゲット数列であり得る。サポートベクターマシンは、
【数2】
によって与えられる正規化誤差関数を最小化することによって、入力と出力との間の関係をモデリングしようとする。
【0026】
スパースな解を得るために、上記の二次誤差関数は、以下のように許容誤差関数Eに置き換えられる。
【数3】
【0027】
次いで、
【数4】
によって与えられる誤差関数等、正規化誤差関数が最小化され得、ここで、y(x)は、方程式(1)によって与えられ、Cは、ペナルティパラメータとしても知られる逆正規化パラメータを表す。
【0028】
次いで、上記で考察された最適化問題は、スラック変数を導入することによって言い換えられ得る。各データ点x
nに対して、2つのスラック変数が導入される。
【0029】
ここで、回帰に対する解は、
になるように、ほとんどのターゲット点が∈チューブの内にあることを確実にするために、最適なパラメータを見つけることであり、一方で、スラック変数の導入は、スラック変数が非ゼロであるという条件で、点のうちのいくつかがフィッティングの柔軟性のためにチューブの外にあることを可能にする。
【0030】
次いで、サポートベクター回帰に対する誤差関数は、最終的に、
として表され得る。
【0031】
そのため、
および
である。ラグランジュ乗数およびカルーシュ・キューン・タッカー(KKT)条件として知られるものを使用して、方程式(5)は、バイアス項bを計算するためのトレーニングデータ点に使用され得る。非スパースネス最小二乗法に対して、方程式(5)は、
【数6】
として表され得る。
【0032】
したがって、動径基底関数(RBF)カーネルを有する最小二乗法は、線形および非線形回帰の両方に対して、方程式(6)の誤差関数を最小化するために組み込まれる。本発明に係る最小二乗SVMモデリングは、大域的および一意的な解を提供するが、それは、スパースネスおよびサポートベクターの解釈に欠ける。
【0033】
管理されたトレーニングの前に、自動属性選択が、線形係数重み付け理論の代わりに相互相関によって適用される。相互検証およびグリッド検索技術の2つのパスは、オーバーフィッティングを回避するために、最適なRBFパラメータを達成するように開発される。最小二乗法は、回帰誤差を最小化するために適用される。本発明に係る貯留層特性の予測は、ロバストかつ確実である。
【0034】
貯留層特性予測のためのコンピュータ処理
図面中、
図1に示されるフローチャートFは、本発明に係る、最小二乗回帰サポートベクターマシンモデリング空隙率を用いて、対象となる地下貯留層の予測された貯留層特性のモデルを形成するために、本発明の基本的なコンピュータ処理シーケンスを示す。フローチャートFの処理シーケンスは、貯留層中の井戸から得られるデータ、および貯留層を覆う領域中の地震調査の処理から得られる地震属性データに基づく。予測された貯留層特性のモデルを取得するための
図1に係るデータの処理は、同様に説明されるデータ処理システムD(
図2)で実施される。
【0035】
図1を参照すると、データ処理システムDにおける処理は、本発明に係る処理のために、入力パラメータまたはデータのデータメモリからの転送によって、ステップ10(
図1)中に開始する。ステップ10に示されるように、対象となる貯留層を覆う領域の地震調査データの従来の処理から得られる地震属性の形態の入力パラメータまたはデータは、トレーニング入力データとして提供される。トレーニング入力として提供される地震属性データの実施例としては、例えば、振幅、周波数、第1のエンベロープデータ、第2のエンベロープデータ、位相、コヒーレンス、帯域幅、および音響インピーダンスである。他の種類の地震属性データもまた使用され得ることを理解されたい。
【0036】
ステップ12に示されるように、サポートベクターマシンモデリングに対するトレーニングターゲットデータの形態の入力データは、データメモリから転送される。ステップ12中に提供されるトレーニングターゲットデータは、空隙率、音響インピーダンス等、属性の石油物理学的尺度またはパラメータおよび値である。トレーニングターゲットデータは、貯留層中に実際に存在している井戸の検層から得られるデータの従来の処理から得られる。場合によっては、利用可能な場合、コアサンプルデータの処理から得られるトレーニングターゲットデータもまた、利用され得る。
【0037】
データ処理システムDにおける処理のステップ14中、記憶された入力データは、本発明に係る、属性選択を受ける。ステップ14中の属性選択は、さらなる処理の前に、ステップ10からのトレーニング入力データの利用可能な地震属性間の選択を提供する。属性選択は、計算作業負荷を最小限に抑えるために、かつ処理効率を高めるために、関連した属性を取得するように実行される。ステップ14中の属性選択はまた、不適切なデータの悪影響のリスクを低減する。
【0038】
本発明に係るSVMモデリングの形態を用いて、属性選択に対する相互相関アプローチがステップ14中に提供される。相互相関アプローチは、費用効率が高く、貯留層予測のためのそれらの関連した属性を選択することがわかっている。ステップ14中、データ処理は、トレーニング入力データ中の各利用可能な属性と、貯留層中の利用可能な井戸の各トレーニングターゲット入力との間の相関係数を決定する。次いで、指定された閾値よりも低い絶対相関係数を有する属性を除外するために、ユーザ指定の閾値が使用される。
【0039】
処理は次に、パラメータ最適化のためのステップ16に進む。パラメータ最適化ステップ16中、閾値要件を満たすステップからのそれらの選択された属性は、データまたは振幅スケーリングを受ける。データスケーリングは、より小さい数値範囲内の属性より優位である、より大きい数値範囲を有する属性を回避するために実行される。データスケーリングの別の利点は、処理計算中の数値的な問題を回避することである。カーネル値が通常、例えば、線形カーネルおよび多項式カーネル等、特徴ベクトルの内積によるため、大きい属性値は、数値的な問題を引き起こす可能性がある。本発明では、各属性に対するトレーニングおよび試験データセットの両方の線形スケーリングが、同一のスケールで、かつ[−1,1]または[0,1]のいずれかである定義された範囲内の値に提供するように実行される。
【0040】
SVMモデリングステップ24中、データ処理システムDは、サポートベクターマシン方法に従って動作し、入力データとターゲットデータとの間の関係のモデルを形成する。モデリングは、上記で考察されたように、回帰によって行われ、誤差関数を最小化する。回帰処理中のデータ処理システムDは、カーネルパラメータγおよびペナルティパラメータCを有する動径基底関数(RBF)カーネルを使用する。
【0041】
サポートベクターマシンモデリングステップ24中、かかるSVM回帰を実行するために、ある特定の生成要件が満たされる必要がある。これらは、種々のカーネルからの適切な処理カーネルの選択、余剰かつターゲットにほとんど寄与しない可能性がある属性の除去、ならびにステップ24中の使用に選択された各属性が均等に寄与することの確認、ならびにカーネルパラメータγおよびペナルティパラメータCの自動決定を含む。
【0042】
以下は、本発明に係る、コンピュータ化貯留層特性予測のためのシーケンスの例示的なリストである。
【0043】
方程式(7)に係る動径基底関数(RBF)パラメータは、本発明に係るSVMモデリングステップ24に好ましいことがわかった。
【数7】
【0044】
動径基底関数(RBF)カーネルが使用される1つの理由は、それが、サンプルをより高い次元空間に非線形的にマッピングし、そのため、線形カーネルとは違い、クラスラベルと属性との間の関係が非線形である場合に対処することができるからである。さらに、RBFカーネルは、より単純な線形またはシグモイドカーネルとしての結果を得ることができ、それらは、非線形関係に適合されない。別の理由は、モデル選択の複雑性に影響を与えるハイパーパラメータの数である。多項式カーネルは、RBFカーネルよりも多くのハイパーパラメータを有する。最終的に、RBFカーネルは、数値的問題が少ない。
【0045】
2つのパラメータ、カーネルパラメータγおよびペナルティパラメータCは、SVM予測精度において重要な役割を果たす。実際には、ユーザは、特定のデータセットに対して、最適なパラメータ対(C,γ)が何なのか前もって知らない。不確実性およびユーザの試行の負担を低減するために、SVMステップ24の前に、パラメータグリッド検索ステップ20および相互検証ステップ22が、(C,γ)の最適な対を得るために実行され、その一方で、SVMが過学習およびオーバーフィッティングされるのを回避する。
【0046】
ステップ22中の相互検証は、トレーニングセットがステップ20中にn個のサブセットに分割または区分されるため、n重である。n個のサブセットは必ずしも同一サイズである必要はなく、n重は、n個の検層であり得る。連続的に、トレーニングセット全体の各インスタンスが一度予測されるまで、1個のサブセットが、残りのn−1個のサブセットに対してトレーニングされる(C,γ)の所与のパラメータ対に対して試験される。次いで、最小平均二乗誤差Eが、(C,γ)のこの試験パラメータ対に対して計算および記録される。
【0047】
ステップ24中、グリッド検索フレームワークは、(C,γ)のパラメータ対にわたってループするように提供される。最小誤差Eを有する最適なフィッティングパラメータ対(C,γ)は、次いで、ステップ26中の生成試験予測として使用される。
【0048】
計算時間を節約し、なおかなり正確な(C,γ)パラメータ対を得るために、Cの指数関数的に増加しているシーケンスを試すことは、良好なパラメータを識別するための実用的な方法であることがわかっている(例えば、
、および
)
。
【0049】
また、2回の検索がステップ24中に実行されることが推奨される。1回目は、e
1の指数因子による粗検索であり、2回目のより精細な検索は、e
0,1の検索間隔で、1回目の(C,γ)の周囲で実行される。粗いおよび精細な検索間隔の両方が特定の計算要求を満たすように調節され得ると考えられることを理解されたい。この技術は、最適な(C,γ)パラメータ対を提供することがわかっている。次いで、ステップ24中に決定された最適なパラメータ対は、試験データセット全体で対象となる貯留層特性を予測するために、ステップ26中に、トレーニングデータセット全体に適用される。次いで、予測された貯留層特性は、ステップ28中に、データ処理Dのメモリへの出力として提供され、出力表示を形成するために利用可能である。
【0050】
データ処理システム
図2に示されるように、本発明に係るデータ処理システムDは、プロセッサ40と、その中に動作命令、制御情報、およびデータベース記録を記憶するための、プロセッサ40に連結されたメモリ42とを有する、コンピュータ30を含む。コンピュータ30は、望みであれば、ラップトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータの形態のパーソナルコンピュータ等の携帯デジタルプロセッサ、またはデスクトップコンピュータ等の他の好適なプログラム化もしくはプログラム可能デジタルデータ処理装置であってもよい。また、コンピュータ30は、Intel CorporationもしくはAdvanced Micro Devices(AMD)等からのノードを有するマルチコアプロセッサ、HPC Linuxクラスタコンピュータ、もしくはArmonk,N.Y.のInternational Business Machines(IBM)から入手可能なもの等、任意の従来の種類の好適な処理能力のメインフレームコンピュータ、または他のソースであってもよいことを理解されたい。
【0051】
コンピュータ30は、本発明に係る、岩相および貯留層属性の出力データまたは記録を表示するためのユーザインターフェース46および出力データ表示部48を有する。出力表示部48は、印刷された出力情報を提供することが可能なプリンタおよび出力表示スクリーン、または出力記録もしくは画像としてグラフ、データシート、グラフィックイメージ、データプロット等の形態の可視表示部等のコンポーネントを含む。
【0052】
コンピュータ30のユーザインターフェース46はまた、情報およびデータベース記録を制御し、またはそれらにアクセスし、コンピュータ30を操作するためのアクセスをユーザに提供するために、好適なユーザ入力デバイスまたは入力/出力制御ユニット50を含む。データ処理システムDはさらに、コンピュータメモリ中に記憶されるデータベース52を含み、それは、内部メモリ42、または関連データベースサーバ58中の56で示されるような外部、ネットワーク化、もしくは非ネットワーク化メモリであってもよい。
【0053】
データ処理システムDは、コンピュータ30のメモリ54中に記憶されるプログラムコード60を含む。本発明に係るプログラムコード60は、データプロセッサ40に、上記のおよび
図1に示される方法で、本発明のコンピュータ実施方法を実施させる、コンピュータで動作可能な命令の形態である。
【0054】
プログラムコード60は、データ処理システムDの機能を制御し、その動作を指示する、順序付けられた動作の特定のセットを提供する、マイクロコード、プログラム、ルーチン、またはコンピュータで動作可能な記号言語の形態であってもよいことに留意されたい。プログラムコード60の命令は、コンピュータ30のメモリ54中、またはコンピュータディスケット、磁気テープ、従来のハードディスクドライブ、電子読み取り専用メモリ、光記憶デバイス、もしくはその上に記憶されるコンピュータ可用媒体を有する他の適切なデータ記憶デバイス上に記憶されてもよい。プログラムコード60はまた、示されるように、コンピュータ可読媒体として、サーバ58等のデータ記憶デバイス上に含まれてもよい。
【0055】
コンピュータ30で実行される本発明の方法は、メモリ54中に記憶され、コンピュータ30のシステムプロセッサ40によって実行可能である、
図1のコンピュータプログラムステップを利用して実施され得る。処理システムDへの入力データは、検層データおよび上記の貯留層に関する他のデータである。
【0056】
処理試験データの結果
Xが0.1の間隔でサンプルされる理論関数
【数8】
を所与として、対応するy数列が、
図3に対する凡例によって識別されるように、理論値に対して
図3にプロットされる。
【0057】
数学的に定義されるが非線形である、方程式(8)で表される関数に係る合成データを使用した試験モデルにおいて、関数中4回に1回のx点を使用して、SVMをトレーニングした。次いで、SVMは、残りのx点を予測しようと試みた。次いで、その一致がどれほど正確であるかを決定するために、予測された点と理論点との間の比較を行った。
【0058】
図3は、0〜4πの4x点ごとのトレーニングデータを用いた、第1のかかるSVM合成試験のプロットである。
図3中、理論データ点は、上記のように凡例が示され、トレーニングサブセットは、凡例において識別されるように示され、予測されたSVM回帰点もまた、凡例において識別されるように示される。
【0059】
明らかなように、相当数の場所におけるSVM回帰点が、理論データ点との実質的に正確な重なりのため見えない。SVM回帰点のほとんどが理論データ点と実質的に重なり合うため、SVM予測の有効性は推定され得ることに留意されたい。
【0060】
第1の試験と同一の方法で、同一のデータセットに対して、第2の試験を行った。しかしながら、SVM回帰のロバスト性をチェックするために、その中のトレーニングデータ点を0〜2πと範囲を半分に減少させた。
図4は、0〜2πの4x点ごとのトレーニングデータを用いた、第2のSVM合成試験のプロットである。
図4において、理論データ点は、
図4に対する凡例において識別されるように示され、トレーニングサブセットおよび予測されたSVM回帰点もまた、識別されるように示される。この場合もやはり、相当数の場合における予測されたSVM回帰点が、理論データ点との実質的に正確な重なりのため見えない。
【0061】
試験範囲内の予測は、理論データに十分良好に適合したことが観察される。しかしながら、トレーニング範囲外の点に対して、その予測は、十分に近似してはいなかった。これは、方程式(8)の式が線形関係ではないため、予想外ではない。かかる非線形関係は、より完全なトレーニングデータセットを必要とすることが予想され得る。さらに、両方の試験において入力される特徴はたった1つ、すなわちxであった。貯留層特性予測において、SVMモデリングに対して複数の属性(特徴)空間が存在した。第1および第2の合成データ試験の結果は、多重地震属性を用いた実用的な貯留層特性予測試験を実行するための実証および十分な基礎を提供した。
【0062】
実際の貯留層データの処理結果
既知の油田における8つの地震属性の3次元ボリュームをトレーニングデータ入力として提供した。トレーニング井戸ターゲット入力のソースとして使用した、掘削された井戸は3つであった。各井戸は、異なる深度で貯留層空隙率特性を記録した。9つの属性から、適切に十分な数の地震属性を選択し、次いで、SVMモデルを本発明に従ってトレーニングし、次いで、井戸が存在しない場所でさえ、貯留層の全体積にわたって、本発明に従って、予測された貯留層特性(空隙率)を決定した。
【0063】
属性は、振幅、周波数、第1のエンベロープおよび第2のエンベロープ、位相、コヒーレンス、帯域幅、ならびに音響インピーダンスであった。最初に、3つの井戸の位置で属性を選択した。属性と空隙率との間の相互相関係数を計算した。具体的には、すなわち、相互相関係数は、0.051、0.0067、0.0994、0.0124、0.0442、0.1819、0.082、および0.709であった。0.05の拒否閾値を選択し、その結果、5つの属性が、トレーニングおよび試験に対する相互相関閾値に達した。5つの属性は、振幅、周波数、コヒーレンス、帯域幅、および音響インピーダンスであった。
【0064】
相互検証に対して、各井戸をサブセットとして扱った。2回の検索および検証の後、最終γは42.2であり、最終Cは4194304であった。0.25〜0.35の空隙率範囲と比較して、選択されたγおよびCを用いた最小相互検証フィッティング誤差は、0.000472であった。予測の検証をチェックするために、3つの井戸の位置で予測された空隙率を比較し、
図5、
図6、および
図7に示した。
【0065】
図5は、貯留層中の既知の貯留層位置における井戸に対する予測された空隙率予測のプロットである。
図5のプロットにおける、井戸データから得られる測定された空隙率に対するデータ点は、凡例によって示されるように識別され、本発明に係るSVMモデリングから予測された空隙率を表すデータ点もまた、その図に対する凡例に従って示される。
【0066】
図6は、
図5の井戸とは異なるが、同一の貯留層中の井戸に対する、予測された空隙率予測のプロットである。この場合もやはり、
図6の井戸データからの測定された空隙率に対するデータ点は、凡例によって識別されるように示され、本発明に係るSVMモデリングから予測された空隙率を表すデータ点も、凡例に従って示される。
【0067】
図7は、
図5および6の井戸とは異なるが、同一の貯留層中の井戸に対する、予測された空隙率予測のプロットである。この場合もやはり、井戸データから得られる測定された空隙率に対するデータ点は、凡例に従って示され、本発明に係るSVMモデリングから予測された空隙率に対するデータ点もまた、凡例に従って示される。
【0068】
図5、6、および7の予測された空隙率点が、実際の空隙率と正確に一致はしないが、測定された空隙率と自然に適合することに留意されたい。本発明では、正確な一致はしないが、かかる自然な適合においてこれらの例と比較できる予測結果を得ることが予想される。このように、井戸が存在しない位置での貯留層特性値を結果として予測し損なうことなく、オーバーフィッティングが回避され得る。
【0069】
図8は、
図5、6、および7に示される結果を得るために、地震調査中に得られ、上記の処理中に5つの属性のうちの1つとして使用される、音響インピーダンスの地震属性入力データの値の表示部である。
図8の音響インピーダンスデータは、実際の貯留層にわたる断面の地震測線に沿ってプロットされる。音響インピーダンスデータはまた、地震測線の約一千のトレースにわたる時間/深度の関数としてプロットされ、実際の表示部における属性値は、色の変化によって示されるように、色で示される。
図8の最上部分80は、より高い音響インピーダンスの下部分82に向かって下方に延在する、より低い音響インピーダンスの領域を表す。
【0070】
図9は、貯留層にわたる
図8と同一の断面の測線に沿って、
図5、6、および7に示される結果を得るために使用される他の4つの属性と共に、
図8の音響インピーダンス属性データを使用して、本発明に係るSVMモデリングの結果として得られる貯留層特性としての、空隙率の予測された値の表示部である。
図9の予測された空隙率はまた、
図8と同一のトレースにわたる時間/深度の関数としてプロットされ、実際の実行における予測された空隙率値は、色の変化によって示されるように、色で示される。
図9の上部分90は、高い空隙率の領域を表し、一方で、
図9の下部分92は、より低い空隙率の領域を示す。
【0071】
本発明に係るSVMモデリングにおける相関処理の間、音響インピーダンスが空隙率との非常に強い逆相関を有し、それが、より低い音響インピーダンスが、より高い空隙率に対応し、逆もまた同様であることを意味することに留意された。
図9の予測された空隙率が、予想されたように、
図8の音響インピーダンスと同様の逆相関関係を示すことに留意されたい。本発明に従って得られる、貯留層の一部分に対する
図9に示される空隙率等、貯留層に対する最終的な完全な予測された貯留層特性データは、データメモリに記憶され、
図9のようなプロットは、貯留層特徴のさらなる研究および評価のために、貯留層分析者に利用可能である。
【0072】
第2の実施例として、11個の地震属性が既知の油田から得られた別の実際の貯留層3次元ボリュームが、本発明に係るSVMモデリングの対象であった。11個の属性はすなわち、瞬間振幅、瞬間帯域幅、第1のエンベロープトレース導関数、瞬間周波数、周波数加重エンベロープ、正規化振幅、瞬間位相、瞬間Qファクタ、第2のエンベロープトレース導関数、地震振幅、および薄層であった。11個の属性からの地震データをトレーニング入力として提供した。この貯留層に対する空隙率値を有する井戸はまた、10個あった。音響インピーダンス属性データは利用可能ではなく、したがって、3つの他の属性が相互相関選択後に選択された。選択された属性は、周波数、正規化振幅、および位相であった。0.1の係数閾値を拒否閾値として使用した。10個の井戸を相互検証のための4つのサブセットに割り当てた。SVMモデリングに対して、最終γカーネルパラメータは1024であり、最終ペナルティパラメータCは1825677であった。0.09〜0.11の正常な空隙率値に対して、選択されたγおよびCを用いた最小相互検証フィッティング誤差は0.0049であった。空隙率の予測された空隙率貯留層特性が、実際の貯留層にわたる断面の地震測線に沿って
図11に示される一方で、同一線に沿った周波数の地震属性は、
図10に示される。
図11の空隙率表示部が、
図9の周波数の入力属性と同様の構造詳細を示すことに留意されたい。予測のさらなる検証は、貯留層シミュレーションまたは追加の検層データによって確認され得る。
本発明では、SVMモデリングは、貯留層特性予測の目的で回帰を含むように修正されている。記載されたように、本発明に係るコンピュータ処理は、相互相関による属性選択、データ再スケーリングおよび単一化、RBFカーネルに対するグリッド検索および相互検証の方法によるパラメータ最適化、ならびにSVMモデリングおよび予測を含む。
【0073】
炭化水素貯留層予測の管理された回帰の問題に対して、ニューラルネットワーク等の従来の学習方法と比較して、SVMには3つの利点がある。
【0074】
SVMは、それにオーバーフィッティングを回避させる構造リスク最小化の原理に基づき、またSVMは、それに優れた一般化能力を有させる経験的リスクおよび信頼限界を考慮に入れる。SVMは、局所的最適解の代わりに、大域的最適解を与えることができる。
【0075】
SVMは、非線形問題を解決するためにカーネルマシンを使用する。低次元特徴空間における非線形問題は常に、何らかの高次元特徴空間における線形問題に変換され得る。また、その一般化能力は、入力空間の次元性ではなく、トレーニングデータの数による。
【0076】
本発明は、当該分野の平均的な知識を有する者が、本発明において言及された結果を再現および獲得できるように十分に説明されている。それにもかかわらず、本発明の当業者は、本出願において記載されていない修正を行ってもよく、決定された構造にこれらの修正を適用するために、またはその製造プロセスにおいて、以下の特許請求の範囲の請求された事項を必要とし、かかる構造が、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0077】
添付の特許請求の範囲に記載される発明の精神または範囲から逸脱することなく、改良および修正が上記に詳述される本発明に行われ得ることが、留意および理解されるべきである。