特許第6006906号(P6006906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6006906皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤の評価又は選択方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6006906
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤の評価又は選択方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20160929BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20160929BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20160929BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20160929BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20160929BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20160929BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20160929BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20160929BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20160929BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20160929BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   C12Q1/02
   C12Q1/68 A
   C12N15/00 G
   C12N15/00 AZNA
   G01N33/15 Z
   G01N33/50 Z
   A61K31/713
   A61K48/00
   A61P17/08
   A61P17/10
   A61P17/14
【請求項の数】18
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-545390(P2016-545390)
(86)(22)【出願日】2016年3月25日
(86)【国際出願番号】JP2016059553
【審査請求日】2016年7月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】井上 高良
(72)【発明者】
【氏名】八谷 輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亜里沙
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 GILTAY. E.J.et al.,Effects of sex steroid deprivation/administration on hair growth and skin sebum production in transs,Journal of clinical endocrinology and metabolism,2000年,Vol.85,p.2913-2921,全文、特にresults
【文献】 RANDALL. Valerie Anne,Androgens and hair growth,Dermatology therapy,2008年,Vol.21,p.314-328,全文、特に要約、p.325
【文献】 三谷塁一他,低酸素シグナルによるアンドロゲン受容体シグナルの調節,生化学,2009年 9月25日,4P-247,要約全文
【文献】 ROGENBERGER Christian.et al.,Upregulation of hypoxia-inducible factors in normal and psoriatic skin,Journal of Investigative Dermatology,2007年,Vol.127,p.2445-2452,全文、特に要約、Fig.1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/02
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤の評価又は選択方法。
(A)皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞に、低酸素条件下で被験物質を適用すること;
(B)該細胞におけるHIF1αの活性を測定すること;
(C)該(B)で測定した活性を、対照群におけるHIF1αの活性と比較すること;及び、
(D)該(C)の結果に基づいて、被験物質のHIF1αの活性を制御する効果を評価すること
【請求項2】
(E)前記(D)にてHIF1αの活性を減少させる効果を有すると評価された被験物質を、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制剤、皮脂分泌抑制剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、あるいは多毛症予防又は改善剤として選択すること、
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
(E)前記(D)にてHIF1αの活性を増加させる効果を有すると評価された被験物質を、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性促進剤、皮脂分泌促進剤、あるいは老人性乾皮症予防又は改善剤として選択すること、
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記HIF1αの活性の測定が、Hypoxia Response ElementへのHIF1αの結合レベルの測定、HIF1α遺伝子の発現レベルの測定、又はHIF1αのタンパク質発現レベルの測定である、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記HIF1αが、配列番号2で示されるアミノ酸配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞がヒト由来の細胞である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記低酸素条件が、細胞培養雰囲気中の酸素濃度が5%以下の条件である、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
以下を含む皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤の評価又は選択方法。
(A)皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞に、低酸素条件下で被験物質を適用すること;
(B’)該細胞におけるHIF1αに誘導される因子の活性を測定すること;
(C’)該(B’)で測定した活性を、対照群における該因子の活性と比較すること;及び、
(D’)該(C’)の結果に基づいて、被験物質の該因子の活性を制御する効果を評価すること
【請求項9】
(E’)前記(D’)にてHIF1αに誘導される因子の活性を減少させる効果を有すると評価された被験物質を、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制剤、皮脂分泌抑制剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、あるいは多毛症予防又は改善剤として選択すること、
をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
(E’)前記(D’)にてHIF1αに誘導される因子の活性を増加させる効果を有すると評価された被験物質を、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性促進剤、皮脂分泌促進剤、あるいは老人性乾皮症予防又は改善剤として選択すること、
をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記HIF1αに誘導される因子の活性の測定が、ENO1、LDHA、PGK1、GPI及びHK1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子の発現レベル、又はこれらの遺伝子にコードされる酵素からなる群より選択される少なくとも1種の酵素の発現若しくは酵素活性のレベルの測定である、請求項8〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞がヒト由来の細胞である、請求項8〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記低酸素条件が、培養雰囲気中の酸素濃度が5%以下の条件である、請求項8〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制剤。
【請求項15】
HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、皮脂分泌抑制剤。
【請求項16】
HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、ニキビ予防又は改善剤。
【請求項17】
HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、脱毛症予防又は改善剤。
【請求項18】
HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、多毛症予防又は改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮脂腺又は毛包選択的にアンドロゲン受容体の活性を制御するための物質を探索する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンドロゲン受容体(AR)は、ミネラルコルチコイド(mineralocortocoid)受容体(MR)、プロゲステロン受容体(PR)、エストロゲン受容体(ER)、およびグルココルチコイド受容体(GR)を含むステロイドホルモン受容体サブファミリーの一部である。内因性ステロイド性アンドロゲン(例、テストステロン及び5α−ジヒドロテストステロン(DHT))は、主要な循環性ホルモンであり、二次性徴を促すほか、様々な生理学的プロセスの調節に重要な役割を果たす。アンドロゲンの皮膚における役割については、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の経口投与が高齢者の皮膚の状態を改善したこと、及び皮膚へのDHEA局所投与により、通常は皮脂量が減少する閉経後女性で皮脂量が増加したことが報告されている(非特許文献1)。さらに、アンドロゲン受容体阻害剤を摂取した場合に、頭頂部の毛髪の成長は促進する一方で、それ以外の体毛の成長は阻害され、さらに皮脂分泌量は減少すること、他方、アンドロゲンを摂取した場合では、頭頂部の毛髪の成長は阻害される一方で、それ以外の体毛の成長は促進され、さらに皮脂分泌量は増加することが報告されており、これらのことから、アンドロゲンは皮脂腺と毛に関する特性を包括的に制御していると考えられている(非特許文献2、3)。これまでに、アンドロゲン受容体活性の阻害によりニキビ、脱毛症、又は多毛症を改善するための物質が開発されてきた(非特許文献4、5)。
【0003】
しかしながら、アンドロゲン受容体活性の阻害は、性腺機能低下による副作用、例えば月経不順、男性の乳房肥大化、精巣萎縮症、性機能不全(精巣、乳腺、子宮、卵巣などの性腺の機能不全)などを生じ得ることから、米国においては、上記皮脂腺と毛の症状の改善のためのアンドロゲン受容体活性阻害剤の使用は認められていない。このため、性腺機能低下による副作用のない、皮脂腺及び毛包組織に選択的なアンドロゲン受容体活性制御剤が望まれている。
【0004】
HIF1α(hypoxia inducible factor 1,alpha subunit)は、低酸素により発現誘導される分子であり、エネルギー代謝、血管新生、アポトーシスなどに関与する多くの遺伝子の転写を活性化することで、細胞の低酸素応答のマスター調節因子として機能している。免疫系において、HIF1αが好中球のアポトーシスによる細胞死を抑制する効果を有することが報告されている(非特許文献6)。皮膚において、HIF1αが創傷治癒やバリア機能を制御していることも報告されている(非特許文献7)。また、低酸素環境下での解糖系酵素群の発現上昇をHIF1αが誘導することが報告されている(非特許文献8)。さらにヒトの皮脂腺は、酸素濃度が0.1%〜1.3%と著しく低く、HIF1αが発現していることが報告されている(非特許文献9、10)。しかしながら、皮脂腺及び毛包におけるアンドロゲン受容体と、HIF1α又は解糖系酵素との関係は知られていない。
(非特許文献1)Maturitas, 2008, 59:174-181
(非特許文献2)Dermatol Ther, 2008, 21:314-328
(非特許文献3)J Clin Endocrinol Metab, 2000, 85:2913-2921
(非特許文献4)Cochrane database of systematic reviews, 2001, CD000194
(非特許文献5)Br J Dermatol, 2005, 152:466-473
(非特許文献6)J Exp Med, 2005, 201:105-115
(非特許文献7)J invest Dermatol, 2011, 131:1793-1805
(非特許文献8)Mol Cell, 2010, 40:294-309
(非特許文献9)J Invest Dermatol, 2006, 126:2596-2606
(非特許文献10)J Invest Dermatol, 2007, 127:2445-2452
【発明の概要】
【0005】
本発明は、以下を含む皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤の評価又は選択方法を提供する。
(A)皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞に、低酸素条件下で被験物質を適用すること;
(B)該細胞におけるHIF1αの活性を測定すること;
(C)該(B)で測定した活性を、対照群におけるHIF1αの活性と比較すること;及び、
(D)該(C)の結果に基づいて、被験物質のHIF1α活性を制御する効果を評価すること
【0006】
また本発明は、以下を含む皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤の評価又は選択方法を提供する。
(A)皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞に、低酸素条件下で被験物質を適用すること;
(B’)該細胞におけるHIF1αに誘導される因子の活性を測定すること;
(C’)該(B’)で測定した活性を、対照群における該因子の活性と比較すること;及び、
(D’)該(C’)の結果に基づいて、被験物質の該因子の活性を制御する効果を評価すること
【0007】
また本発明は、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制剤、皮脂分泌抑制剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、あるいは多毛症予防又は改善剤を提供する。
【0008】
また本発明は、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制剤、皮脂分泌抑制剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、あるいは多毛症予防又は改善剤の製造のための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種の使用を提供する。
【0009】
また本発明は、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制、皮脂分泌抑制、ニキビ予防又は改善、脱毛症予防又は改善、あるいは多毛症予防又は改善のための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種の非治療的使用を提供する。
【0010】
また本発明は、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制、皮脂分泌抑制、ニキビ予防又は改善、脱毛症予防又は改善、あるいは多毛症予防又は改善に使用するための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を提供する。
【0011】
また本発明は、対象の皮脂腺細胞又は毛包細胞に、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を投与することを含む、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制方法、皮脂分泌抑制方法、ニキビ予防又は改善方法、脱毛症予防又は改善方法、あるいは多毛症予防又は改善方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】解糖系酵素の発現がAR活性に及ぼす影響。
図2】解糖系酵素群の発現に対するHIF1αの影響。
図3】皮脂腺細胞(SZ95)におけるAR活性に対するHIF1αの影響。
図4】前立腺癌細胞(LNCaP)におけるAR活性に対するHIF1αの影響。
図5】レチノイン酸添加によるHIF1α活性変化。
【発明の詳細な説明】
【0013】
本明細書において、「HIF1α(hypoxia inducible factor 1,alpha subunit)」とは、OMIMに603348、GenbankにNG_029470.1として登録されているタンパク質、そのホモログ、パラログ又はオルソログをいう。好ましくは、本明細書における「HIF1α」とは、配列番号2で示されるアミノ酸配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、低酸素により発現誘導されて転写因子として機能するタンパク質をいう。HIF1αは、核内へ移行した後に他のタンパク質とのヘテロ複合体を形成し、DNA上のHypoxia Response Element(HRE)と呼ばれる部位に結合することによって、細胞における様々な低酸素応答を誘導する。HIF1αにより誘導される因子としては、解糖系酵素が挙げられる。解糖系酵素の例としては、enolase 1、lactate dehydrogenase A、phosphoglycerate kinase 1、glucose−6−phosphate isomerase、及びhexokinase 1が挙げられ、これらはそれぞれ遺伝子ENO1、LDHA、PGK1、GPI及びHK1にコードされている。
【0014】
したがって本明細書において、「HIF1αの活性」とは、HIF1αによる転写活性をいう。HIF1αによる転写活性は、HIF1αのHREへの結合レベル、HIF1α遺伝子の発現レベル、又はHIF1αタンパク質の発現レベルを検出することで測定することができる。
【0015】
本明細書における「HIF1α遺伝子」とは、上記「HIF1α」をコードする遺伝子である。本明細書における「HIF1α遺伝子」とは、好ましくは、GenbankにNG_029470.1として登録されている遺伝子、そのホモログ、パラログ又はオルソログをいい、より好ましくは、配列番号1で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつ低酸素により発現誘導され、かつ転写因子として機能するタンパク質をコードするポリヌクレオチドをいう。
【0016】
本明細書における「HIF1αに誘導される因子」(以下の本明細書において、「HIF1α誘導性因子」ともいう)とは、HIF1αによってその発現又は活性化が誘導される因子をいい、好ましくはenolase 1、lactate dehydrogenase A、phosphoglycerate kinase 1、glucose−6−phosphate isomerase、及びhexokinase 1からなる群より選択される解糖系酵素の少なくとも1種をいう。これらの解糖系酵素をコードする遺伝子としては、ENO1、LDHA、PGK1、GPI、及びHK1が挙げられる。
ENO1は、OMIM 172430、GenBank Accession No.NG_029470.1として登録されている遺伝子である。好ましくは、本明細書における「ENO1」とは、配列番号3で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつ2−ホスホグリセリン酸をホスホエノールピルビン酸に変換する酵素をコードするポリヌクレオチドをいう。
LDHAは、OMIM 150000、GenBank Accession No.NG_008185.1として登録されている遺伝子である。好ましくは、本明細書における「LDHA」とは、配列番号4で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつL−lactateとNADをpyruvateとNADHに変換する酵素をコードするポリヌクレオチドをいう。
PGK1は、OMIM 311800、GenBank Accession No.NG_008862.1として登録されている遺伝子である。好ましくは、本明細書における「PGK1」とは、配列番号5で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつ1,3−diphosphoglycerateを3−phosphoglycerateに変換する酵素をコードするポリヌクレオチドをいう。
GPIは、OMIM 172400、GenBank Accession No.NG_012838.2として登録されている遺伝子である。好ましくは、本明細書における「GPI」とは、配列番号6で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつglucose−6−phosphateをfructose−6−phosphateに変換する酵素をコードするポリヌクレオチドをいう。
HK1は、OMIM 142600、GenBank Accession No.NG_012077.1として登録されている遺伝子である。好ましくは、本明細書における「HK1」とは、配列番号7で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつglucoseをglucose−6−phosphateに変換する酵素をコードするポリヌクレオチドをいう。
【0017】
本明細書において、「HIF1αに誘導される因子(又はHIF1α誘導性因子)の活性」とは、好ましくはenolase 1、lactate dehydrogenase A、phosphoglycerate kinase 1、glucose−6−phosphate isomerase、及びhexokinase 1からなる群より選択される解糖系酵素の少なくとも1種の活性をいう。
【0018】
本明細書において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列に関する「少なくとも90%の同一性」とは、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の同一性をいう。
【0019】
本明細書において、ヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の同一性は、リップマン−パーソン法(Lipman−Pearson法;Science,1985,227:1435−1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(Ver.5.1.1;ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
【0020】
本明細書において、「脱毛症」とは、頭髪の減少や薄毛を特徴とする症状をいい、「多毛症」とは、ひげ、手足、体幹部などの毛が太く又は長くなることによる毛量の増加を特徴とする症状をいう。
【0021】
本明細書において、「予防」とは、個体における疾患もしくは状態の発症の防止、抑制または遅延、あるいは個体の疾患もしくは状態の発症の危険性を低下させることをいう。本明細書において、「改善」とは、疾患もしくは状態の好転、疾患もしくは状態の悪化の防止、抑制または遅延、あるいは疾患もしくは状態の進行の逆転、防止、抑制または遅延をいう。
【0022】
本明細書において、「非治療的」とは、医療行為を含まない、すなわち人間を手術、治治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には、医師、又は医療従事者若しくは医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
【0023】
本発明は、性腺のアンドロゲン受容体を介した副作用の心配がない、皮脂腺及び毛包選択的にアンドロゲン受容体の活性を制御するための物質を探索する方法の提供に関する。
【0024】
本発明者らは、皮脂腺及び毛包において選択的にアンドロゲン受容体活性に寄与する分子を探索すべく、鋭意検討を行った。その結果、本発明者らは、HIF1αが皮脂腺及び毛包において、性腺と比較して顕著に発現が高いこと、及びHIF1αが皮脂腺細胞及び毛包において、低酸素条件下でアンドロゲン受容体活性を正に制御することを見出した。すなわち、低酸素条件下での細胞のHIF1α活性レベルを指標とすることにより、皮脂腺及び毛包選択的にアンドロゲン受容体活性を制御することができるアンドロゲン受容体活性制御剤を評価又は選択できることを見出した。
【0025】
本発明によれば、皮脂腺及び毛包選択的にアンドロゲン受容体の活性を制御する物質を探索することが可能である。本発明の方法により探索されたアンドロゲン受容体活性制御剤は、皮脂腺及び毛に関する症状の制御、例えば、皮脂分泌制御、ニキビ予防又は改善、脱毛症予防又は改善、多毛症予防又は改善、老人性乾皮症予防又は改善などに使用することができる。本発明の方法により探索されたアンドロゲン受容体活性制御剤は、性腺のアンドロゲン受容体を介した副作用を引き起こす危険性が低く、安全に使用することができる。
【0026】
後述の実施例に示すとおり、HIF1αの発現レベルは、性腺と比較して皮脂腺及び毛包において顕著に高かった(実施例1)。本発明者らは、HIF1αが、低酸素条件下で皮脂腺のアンドロゲン受容体活性を正に制御することを見出した(実施例4)。また本発明者らは、HIF1α活性化によって発現誘導される因子が、皮脂腺のアンドロゲン受容体活性を正に制御することを見出した(実施例2)。一方、アンドロゲンが皮脂腺や毛包に作用して皮脂分泌や毛成長に関与していることはよく知られている(例えば、非特許文献1、2)。したがって、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を変化させる物質は、皮脂腺細胞や毛包細胞選択的にアンドロゲン受容体の活性を変化させ、ひいては、皮脂腺又は毛包細胞におけるアンドロゲン受容体の活性化又は抑制によってもたらされる種々の状態、例えば、皮脂の過剰分泌や分泌減少、ニキビ、脱毛、多毛などを予防又は改善することができる。
【0027】
本発明は、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を指標として、各種物質のアンドロゲン受容体活性制御作用を評価し、あるいはさらに当該評価に基づいて、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤、又は皮脂腺及び毛に関する症状の制御剤、例えば皮脂分泌制御剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、多毛症予防又は改善剤、老人性乾皮症予防又は改善剤などを選択する方法を提供する。本発明の評価又は選択方法は、in vitro又はex vivoで行われ得る。
【0028】
したがって、本発明の一実施形態は、以下:
(A)皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞に、低酸素条件下で被験物質を適用すること;
(B)該細胞におけるHIF1αの活性を測定すること;
(C)該(B)で測定した活性を、対照群におけるHIF1αの活性と比較すること;及び、
(D)該(C)の結果に基づいて、被験物質のHIF1αの活性を制御する効果を評価すること、
を含む皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤の評価又は選択方法である。
【0029】
また、本発明の別の一実施形態は、上記(A)〜(D)を含む、皮脂分泌制御剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、多毛症予防又は改善剤、あるいは老人性乾皮症予防又は改善剤の評価又は選択方法である。
【0030】
本発明のさらなる実施形態は、以下:
(A)皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞に、低酸素条件下で被験物質を適用すること;
(B’)該細胞におけるHIF1αに誘導される因子の活性を測定すること;
(C’)該(B’)で測定した活性を、対照群における該因子の活性と比較すること;及び、
(D’)該(C’)の結果に基づいて、被験物質の該因子の活性を制御する効果を評価すること、
を含む皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤の評価又は選択方法である。好ましい実施形態において、該HIF1αに誘導される因子は、enolase 1、lactate dehydrogenase A、phosphoglycerate kinase 1、glucose−6−phosphate isomerase、及びhexokinase 1からなる群から選択される解糖系酵素の少なくとも1種である。
【0031】
また、本発明のなお別の実施形態は、上記(A)及び(B’)〜(D’)を含む、皮脂分泌制御剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、多毛症予防又は改善剤、あるいは老人性乾皮症予防又は改善剤の評価又は選択方法である。
【0032】
本発明の方法において使用される被験物質は、アンドロゲン受容体活性制御剤、皮脂分泌制御剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、多毛症予防又は改善剤、あるいは老人性乾皮症予防又は改善剤として使用することを所望する物質であれば、特に制限されない。該被験物質は、天然に存在する物質であっても、化学的又は生物学的方法等で人工的に合成した物質であってもよく、また化合物であっても、組成物若しくは混合物であってもよい。
【0033】
本発明の方法で使用される「皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞」としては、哺乳動物から単離された皮脂腺細胞若しくは毛包細胞、又はそれらの培養物が挙げられる。当該皮脂腺細胞若しくは毛包細胞の培養物としては、皮脂腺細胞株、毛包細胞株、皮膚や毛包の組織若しくは器官培養物(単離毛包培養物、器官培養毛包、三次元培養皮膚等)などが挙げられ、好ましくは、確立されたヒト皮脂腺細胞株である。ヒト皮脂腺細胞株の例としては、不死化ヒト由来セボサイト細胞株(例えばDSM ACC2383又はSZ95、及びSEB−1)(特表2002−535984号公報、J Invest Dermatol,1999,113:1011−1120、及びJ Invest Dermatol,2003,120:905−914を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
上記皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞が由来する哺乳動物としては、例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、サルなどが挙げられ、ヒトが好ましいが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の方法においては、上記皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞に低酸素条件下で被験物質を適用する。その具体的な手順の例としては:被験物質を予め添加した培地に該細胞を播種し、低酸素条件下で培養する;該細胞を低酸素条件下で培養している培地に被験物質を添加し、さらに低酸素条件下で培養する;該細胞を通常酸素濃度下で培養している培地に被験物質を添加した後、低酸素条件下でさらに培養する、などを挙げることができる。該細胞が器官培養又は組織培養の細胞である場合、被験物質を、培地に添加する代わりに、該器官や組織に直接投与してもよい。
【0036】
本発明の方法においては、上記皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞を低酸素条件下で培養することによって、該細胞におけるHIF1α又はHIF1α誘導性因子の発現を誘導する。したがって、本発明における「低酸素条件」とは、細胞におけるHIF1αの発現を誘導できる酸素濃度条件であればよいが、好ましくは細胞培養雰囲気中の酸素濃度が約5%以下、より好ましくは約0.1%〜約5%の条件である。低酸素条件は、酸素濃度コントローラーを備えた培養器によって達成することができる。このような培養器は公知であり、様々なタイプが市販されている(例えば、BIONIX低酸素培養キット;株式会社スギヤマゲン、アネロパック・ケンキ;三菱ガス化学株式会社)。
【0037】
次いで、本発明の方法においては、上記皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞におけるHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を測定する。好ましくは、HIF1αの活性の測定は、HIF1αのHREへの結合レベル、HIF1α遺伝子の発現レベル、又はHIF1αのタンパク質発現レベルの測定によって行われる。このうち、HREへの結合レベルを測定する方法が簡便かつ迅速で好ましい。HIF1α誘導性因子の活性の測定は、該因子の遺伝子又はそれにコードされるタンパク質の発現レベルの測定によって行われる。好ましくは、HIF1α誘導性因子の活性の測定は、ENO1、LDHA、PGK1、GPI及びHK1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子の発現レベル、又はこれらの遺伝子にコードされる酵素からなる群より選択される少なくとも1種の酵素の発現若しくは酵素活性のレベルの測定によって行われる。
【0038】
HREへのHIF1α結合活性レベルの測定は、当該分野で公知の方法に従って行えばよい。例えば、HREの下流にマーカー遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ遺伝子)を作動可能に連結したものを導入した細胞における当該マーカー遺伝子の発現(例えば、ルシフェラーゼ活性)を測定すればよい。HIF1α又はHIF1α誘導性因子の発現量は、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の遺伝子の発現量又はタンパク質の発現量を測定することにより求めることができる。HIF1α又はHIF1α誘導性因子の遺伝子の発現量は、該遺伝子から転写されたmRNAを定量することにより測定することができる。mRNAの定量は、リアルタイムRT−PCR法、RNA分解酵素プロテクションアッセイ法、あるいはノーザンブロット解析法によって行うことができる。HIF1α又はHIF1α誘導性因子のタンパク質発現量の測定は、通常の免疫測定法、例えばRIA法、EIA法、ELISA、バイオアッセイ法、プロテオーム、ウェスタンブロットなどにより行うことができる。このうち、リアルタイムRT−PCR法が安価かつ簡便である。
【0039】
本発明の方法において、測定対象の皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞(試験群)におけるHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性は、対照群における活性と比較される。対照群としては、試験群と同じ皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞であって、被験物質に接触させなかったものが挙げられる。対照群におけるHIF1α活性又はHIF1α誘導性因子の発現量の測定手順は上述したとおりである。
【0040】
上記比較の結果、対照群と比べて、試験群でのHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性が増加又は減少していれば、上記被験物質は、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を制御する効果があると評価される。
【0041】
例えば、対照群と比べて、試験群でのHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性が減少していれば、上記被験物質は、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を減少させる効果があると評価される。好ましい実施形態において、試験群におけるHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性が、対照群におけるHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性に対して統計学的に有意に減少していた場合には、被験物質は、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を減少させる効果があると評価される。別の好ましい実施形態において、対照群におけるHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を100%としたときに、試験群におけるHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性が95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下であれば、被験物質は、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を減少する効果があると評価される。
【0042】
一方、対照群と比べて、試験群でのHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性が増加していれば、上記被験物質は、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を増加させる効果があると評価される。好ましい実施形態において、試験群におけるHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性が、対照群におけるHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性に対して統計学的に有意に増加していた場合には、被験物質は、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を増加させる効果があると評価される。別の好ましい実施形態において、対照群におけるHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を100%としたときに、試験群におけるHIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性が105%以上、好ましくは110%以上、より好ましくは115%以上、さらに好ましくは120%以上である場合に、被験物質は、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を増加する効果があると評価される。
【0043】
上記評価の結果、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を制御する効果があると評価された被験物質は、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤として選択される。より詳細には、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を減少させる効果があると評価された被験物質は、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制剤、皮脂分泌抑制剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、あるいは多毛症予防又は改善剤として選択される。一方、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を増加させる効果があると評価された被験物質は、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性促進剤、皮脂分泌促進剤、あるいは老人性乾皮症予防又は改善剤として選択される。
【0044】
HIF1α又はHIF1α誘導性因子の活性を減少させる効果がある物質の例としては、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の遺伝子に対するsiRNAなどが挙げられる。したがって、HIF1α又はHIF1α誘導性因子の遺伝子に対するsiRNAは、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制、皮脂分泌抑制、ニキビ予防又は改善、脱毛症予防又は改善、あるいは多毛症予防又は改善のために使用することができる。
【0045】
本発明による上記siRNAの使用は、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。治療的使用の例としては、脱毛症又は多毛症に罹患したヒト及び非ヒト哺乳動物に対する使用が挙げられる。非治療使用の例としては、美容目的での皮脂分泌抑制、脂性肌の改善、又はニキビ防止のための使用、ならびに美容目的での頭髪の脱毛防止又は体毛低減のための使用が挙げられる。
【0046】
したがって、本発明のなお別の実施形態は、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制剤、皮脂分泌抑制方法剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、あるいは多毛症予防又は改善剤である。
【0047】
本発明のなお別の実施形態は、対象の皮脂腺細胞又は毛包細胞に、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を投与することを含む、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制方法、皮脂分泌抑制方法、ニキビ予防又は改善方法、脱毛症予防又は改善方法、あるいは多毛症予防又は改善方法である。これらの方法における対象としては、ヒト及び非ヒト哺乳動物が挙げられる。好ましくは、該対象としては、皮脂腺又は毛包選択的なアンドロゲン受容体活性抑制を必要とするかそれを所望する対象が挙げられる。より詳細には、皮脂分泌抑制、ニキビ予防又は改善、脱毛症予防又は改善、あるいは多毛症予防又は改善を必要とするかそれを所望する対象が挙げられる。
【0048】
上記皮脂分泌抑制方法及びニキビ予防又は改善方法においては、好ましくは、該siRNAは皮脂腺細胞に投与される。上記脱毛症予防又は改善方法においては、好ましくは、該siRNAは頭部の毛包細胞に投与される。上記多毛症予防又は改善方法においては、好ましくは、該siRNAは頭部、又は頭部以外の部位(例えば顔、首、腕、手、脚部、足、体幹など)の毛包細胞に投与される。
【0049】
好ましい実施形態において、上記siRNAは、経皮投与されるか、又は皮膚へ局所投与される。
【0050】
好ましい実施形態において、上記非ヒト哺乳動物としては、マウス、ラットなどが挙げられる。
【0051】
HIF1α又はHIF1α誘導性因子の遺伝子に対するsiRNAは、公知のソフトウェア(例えば、siDirect)、又は合成受託サービス(Life technologies、シグマアルドリッチなどより提供)などを利用して設計又は合成することができる。一般に、siRNAは、21〜30塩基、好ましくは21〜25塩基程度の短い二本鎖RNA(あるいはRNA/DNA)として設計される。siRNAは、平滑末端を有していてもよいが、通常、二本鎖の各3’末端に2塩基程度の突出部(オーバーハング)を有する。突出部位はTTとして設計されることが多いが、これに限定されない。
【0052】
本発明で使用され得るsiRNAの好ましい例としては、以下の配列のRNA及びその相補鎖からなる二本鎖RNA又はRNA/DNA二重鎖が挙げられる。これらは、HIF1α遺伝子に対するsiRNAである。
5’−CCAGCCGCUGGAGACACAAUCAUAU−3’(配列番号8)
5’−GGGAUUAACUCAGUUUGAACUAACU−3’(配列番号9)
5’−GAAAUUCCUUUAGAUAGCAAGACUU−3’(配列番号10)
配列番号8のRNAは、配列番号1の1204〜1228番塩基に対応している。配列番号9のRNAは、配列番号1の360〜384番塩基に対応している。配列番号9のRNAは、配列番号1の700〜724番塩基に対応している。
【0053】
本発明で使用され得るsiRNAのさらなる例としては、配列番号1の1204〜1228番塩基、配列番号1の360〜384番塩基、又は配列番号1の700〜724番塩基に特異的に結合するRNAとその相補鎖からなる二本鎖RNA又はRNA/DNA二重鎖が挙げられる。当該siRNAの好ましい例としては、配列番号8、配列番号9又は配列番号10のRNAのいずれかと90%以上、好ましくは95%以上配列同一なRNAとその相補鎖からなる二本鎖RNA又はRNA/DNA二重鎖が挙げられる。
【0054】
本発明の例示的実施形態として、さらに以下の物質、製造方法、用途あるいは方法を本明細書に開示する。ただし、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0055】
<1>以下を含む皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤の評価又は選択方法。
(A)皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞に、低酸素条件下で被験物質を適用すること;
(B)該細胞におけるHIF1αの活性を測定すること;
(C)該(B)で測定した活性を、対照群におけるHIF1αの活性と比較すること;及び、
(D)該(C)の結果に基づいて、被験物質のHIF1αの活性を制御する効果を評価すること
【0056】
<2>好ましくは、さらに以下:
(E)上記(D)にてHIF1αの活性を減少させる効果を有すると評価された被験物質を、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制剤、皮脂分泌抑制剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、あるいは多毛症予防又は改善剤として選択すること、
を含む、<1>記載の方法。
【0057】
<3>好ましくは、さらに以下:
(E)上記(D)にてHIF1αの活性を増加させる効果を有すると評価された被験物質を、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性促進剤、皮脂分泌促進剤、あるいは老人性乾皮症予防又は改善剤として選択すること、
を含む、<1>記載の方法。
【0058】
<4>以下を含む、皮脂分泌制御剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、多毛症予防又は改善剤、あるいは老人性乾皮症予防又は改善剤の評価又は選択方法。
(A)皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞に、低酸素条件下で被験物質を適用すること;
(B)該細胞におけるHIF1αの活性を測定すること;
(C)該(B)で測定した活性を、対照群におけるHIF1αの活性と比較すること;及び、
(D)該(C)の結果に基づいて、被験物質のHIF1αの活性を制御する効果を評価すること
【0059】
<5>好ましくは、さらに以下:
(E)上記(D)にてHIF1αの活性を減少させる効果を有すると評価された被験物質を、皮脂分泌抑制剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、あるいは多毛症予防又は改善剤として選択すること、
を含む、<4>記載の方法。
【0060】
<6>好ましくは、さらに以下:
(E)上記(D)にてHIF1αの活性を増加させる効果を有すると評価された被験物質を、皮脂分泌促進剤、あるいは老人性乾皮症予防又は改善剤として選択すること、
を含む、<4>記載の方法。
【0061】
<7>好ましくは、上記皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞がヒト由来の細胞である、<1>〜<6>のいずれか1項記載の方法。
【0062】
<8>好ましくは、上記皮脂腺由来細胞が確立されたヒト皮脂腺細胞株である、<1>〜<6>のいずれか1項記載の方法。
【0063】
<9>上記低酸素条件が、培養雰囲気中の酸素濃度が、好ましくは約5%以下、より好ましくは約0.1%〜約5%の条件である、<1>〜<8>のいずれか1項記載の方法。
【0064】
<10>好ましくは、上記HIF1αの活性の測定が、Hypoxia Response ElementへのHIF1αの結合レベルの測定である、<1>〜<9>のいずれか1項記載の方法。
【0065】
<11>好ましくは、上記HIF1αの活性の測定が、HIF1α遺伝子の発現レベル又はHIF1αのタンパク質発現レベルの測定である、<1>〜<9>のいずれか1項記載の方法。
【0066】
<12>好ましくは、上記HIF1α遺伝子が、配列番号1で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドである、<11>記載の方法。
【0067】
<13>好ましくは、上記HIF1αが、配列番号2で示されるアミノ酸配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質である、<1>〜<12>のいずれか1項記載の方法。
【0068】
<14>好ましくは、上記(B)で測定した活性が、上記対照群における活性に対して統計学的に有意に減少していた場合に、上記被験物質はHIF1αの活性を減少させる効果があると評価される、<1>〜<13>のいずれか1項記載の方法。
【0069】
<15>好ましくは、上記(B)で測定した活性が、上記対照群における活性に対して統計学的に有意に増加していた場合に、上記被験物質はHIF1αの活性を増加させる効果があると評価される、<1>〜<13>のいずれか1項記載の方法。
【0070】
<16>好ましくは、上記対照群におけるHIF1αの活性を100%としたときに、上記(B)で測定した活性が95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である場合に、上記被験物質はHIF1αの活性を減少する効果があると評価される、<1>〜<13>のいずれか1項記載の方法。
【0071】
<17>好ましくは、上記対照群におけるHIF1αの活性を100%としたときに、上記(B)で測定した活性が105%以上、好ましくは110%以上、より好ましくは115%以上、さらに好ましくは120%以上である場合に、上記被験物質はHIF1αの活性を増加する効果があると評価される、<1>〜<13>のいずれか1項記載の方法。
【0072】
<18>以下を含む皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤の評価又は選択方法。
(A)皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞に、低酸素条件下で被験物質を適用すること;
(B’)該細胞におけるHIF1αに誘導される因子の活性を測定すること;
(C’)該(B’)で測定した活性を、対照群における該因子の活性と比較すること;及び、
(D’)該(C’)の結果に基づいて、被験物質の該因子の活性を制御する効果を評価すること
【0073】
<19>好ましくは、さらに以下:
(E’)上記(D’)にてHIF1αに誘導される因子の活性を減少させる効果を有すると評価された被験物質を、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制剤、皮脂分泌抑制剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、あるいは多毛症予防又は改善剤として選択すること、
を含む、<18>記載の方法。
【0074】
<20>好ましくは、さらに以下:
(E’)上記(D’)にてHIF1αに誘導される因子の活性を増加させる効果を有すると評価された被験物質を、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性促進剤、皮脂分泌促進剤、あるいは老人性乾皮症予防又は改善剤として選択すること、
を含む、<18>記載の方法。
【0075】
<21>以下を含む、皮脂分泌制御剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、多毛症予防又は改善剤、あるいは老人性乾皮症予防又は改善剤の評価又は選択方法。
(A)皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞に、低酸素条件下で被験物質を適用すること;
(B’)該細胞におけるHIF1αに誘導される因子の活性を測定すること;
(C’)該(B’)で測定した活性を、対照群における該因子の活性と比較すること;及び、
(D’)該(C’)の結果に基づいて、被験物質の該因子の活性を制御する効果を評価すること
【0076】
<22>好ましくは、さらに以下:
(E’)上記(D’)にてHIF1αに誘導される因子の活性を減少させる効果を有すると評価された被験物質を、皮脂分泌抑制剤、ニキビ予防又は改善剤、脱毛症予防又は改善剤、あるいは多毛症予防又は改善剤として選択すること、
を含む、<21>記載の方法。
【0077】
<23>好ましくは、さらに以下:
(E’)上記(D’)にてHIF1αに誘導される因子の活性を増加させる効果を有すると評価された被験物質を、皮脂分泌促進剤、あるいは老人性乾皮症予防又は改善剤として選択すること、
を含む、<21>記載の方法。
【0078】
<24>好ましくは、上記皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞がヒト由来の細胞である、<18>〜<23>のいずれか1項記載の方法。
【0079】
<25>好ましくは、上記皮脂腺由来細胞が確立されたヒト皮脂腺細胞株である、<18>〜<23>のいずれか1項記載の方法。
【0080】
<26>上記低酸素条件が、培養雰囲気中の酸素濃度が、好ましくは約5%以下、より好ましくは約0.1%〜約5%の条件である、<18>〜<25>のいずれか1項記載の方法。
【0081】
<27>上記HIF1αに誘導される因子の活性の測定が、
好ましくは、ENO1、LDHA、PGK1、GPI、及びHK1からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子の発現レベル、又は該遺伝子にコードされる酵素からなる群より選択される少なくとも1種の酵素の発現レベル、又は該遺伝子にコードされる酵素からなる群より選択される少なくとも1種の酵素の酵素活性レベルの測定である、<18>〜<26>のいずれか1項記載の方法。
【0082】
<28>好ましくは、
上記ENO1遺伝子が、配列番号3で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであり、
上記LDHA遺伝子が、配列番号4で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであり、
上記PGK1遺伝子が、配列番号5で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであり、
上記GPI遺伝子が、配列番号6で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであり、
上記HK1遺伝子が、配列番号7で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドである、
<27>記載の方法。
【0083】
<29>好ましくは、上記(B’)で測定した活性が、上記対照群における活性に対して統計学的に有意に減少していた場合に、上記被験物質はHIF1αに誘導される因子の活性を減少させる効果があると評価される、<18>〜<28>のいずれか1項記載の方法。
【0084】
<30>好ましくは、上記(B’)で測定した活性が、上記対照群における活性に対して統計学的に有意に増加していた場合に、上記被験物質はHIF1αに誘導される因子の活性を増加させる効果があると評価される、<18>〜<28>のいずれか1項記載の方法。
【0085】
<31>好ましくは、上記対照群におけるHIF1αの活性を100%としたときに、上記(B’)で測定した活性が95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である場合に、上記被験物質はHIF1αに誘導される因子の活性を減少する効果があると評価される、<18>〜<28>のいずれか1項記載の方法。
【0086】
<32>好ましくは、上記対照群におけるHIF1αの活性を100%としたときに、上記(B’)で測定した活性が105%以上、好ましくは110%以上、より好ましくは115%以上、さらに好ましくは120%以上である場合に、上記被験物質はHIF1αに誘導される因子の活性を増加する効果があると評価される、<18>〜<28>のいずれか1項記載の方法。
【0087】
<33>HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制剤。
【0088】
<34>HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、皮脂分泌抑制剤。
【0089】
<35>HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、ニキビ予防又は改善剤。
【0090】
<36>HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、脱毛症予防又は改善剤。
【0091】
<37>HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、多毛症予防又は改善剤。
【0092】
<38>皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制剤の製造のための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種の使用。
【0093】
<39>皮脂分泌抑制剤の製造のための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種の使用。
【0094】
<40>ニキビ予防又は改善剤の製造のための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種の使用。
【0095】
<41>脱毛症予防又は改善剤の製造のための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種の使用。
【0096】
<42>多毛症予防又は改善剤の製造のための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種の使用。
【0097】
<43>皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制のための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種の使用。
【0098】
<44>皮脂分泌抑制のための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種の使用。
【0099】
<45>ニキビ予防又は改善のための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種の使用。
【0100】
<46>脱毛症予防又は改善のための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種の使用。
【0101】
<47>多毛症予防又は改善のための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種の使用。
【0102】
<48>上記<43>〜<47>のいずれか1項において、好ましくは、上記使用は非治療的使用である。
【0103】
<49>皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制に使用するための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種。
【0104】
<50>皮脂分泌抑制に使用するための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種。
【0105】
<51>ニキビ予防又は改善に使用するための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種。
【0106】
<52>脱毛症予防又は改善に使用するための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種。
【0107】
<53>多毛症予防又は改善に使用するための、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種。
【0108】
<54>対象の皮脂腺細胞又は毛包細胞に、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を投与することを含む、皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性抑制方法。
【0109】
<55>対象の皮脂腺細胞に、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を投与することを含む、皮脂分泌抑制方法。
【0110】
<56>対象の皮脂腺細胞に、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を投与することを含む、ニキビ予防又は改善方法。
【0111】
<57>対象の頭部の毛包細胞に、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を投与することを含む、脱毛症予防又は改善方法。
【0112】
<58>対象の毛包細胞に、HIF1α遺伝子、ENO1遺伝子、LDHA遺伝子、PGK1遺伝子、GPI遺伝子及びHK1遺伝子の各々に対するsiRNAからなる群より選択される少なくとも1種を投与することを含む、多毛症予防又は改善方法。
【0113】
<59>好ましくは、上記対象がヒト又は非ヒト哺乳動物である、<54>〜<58>のいずれか1項記載の方法。
【0114】
<60>好ましくは、上記投与が経皮投与又は皮膚への局所投与である、<54>〜<59>のいずれか1項記載の方法。
【0115】
<61>上記<33>〜<60>のいずれか1項において、好ましくは、
上記HIF1α遺伝子が、配列番号1で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであり、
上記ENO1遺伝子が、配列番号3で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであり、
上記LDHA遺伝子が、配列番号4で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであり、
上記PGK1遺伝子が、配列番号5で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであり、
上記GPI遺伝子が、配列番号6で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドであり、
上記HK1遺伝子が、配列番号7で示されるヌクレオチド配列、又は当該配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドである。
【0116】
<62>上記<33>〜<61>のいずれか1項において、好ましくは、上記siRNAは、
配列番号8、配列番号9又は配列番号10のRNA及びその相補鎖からなる、二本鎖RNA又はRNA/DNA二重鎖であるか、あるいは、
配列番号8、配列番号9又は配列番号10のRNAのいずれかと90%以上、好ましくは95%以上配列同一なRNA及びその相補鎖からなる、二本鎖RNA又はRNA/DNA二重鎖である。
【実施例】
【0117】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
【0118】
<方法>
参考例1.細胞
ヒト皮脂腺細胞株(SZ95)は、10%FBS、5ng/mL Epidermal Growth Factorを含むSebomedTM basal medium(Biochrom)中で培養した。ヒト前立腺癌細胞株(LNCaP)は、10%FBSを含むRPMI1640(Life technologies)中で培養した。通常酸素濃度下での培養は、大気中(酸素濃度20.9%)で行った。低酸素条件下での培養は、アネロパック・ケンキ5%(三菱ガス化学株式会社)、及び角型ジャー(株式会社スギヤマゲン)を用いて、酸素濃度0.1%、5%CO2、37℃の条件下で培養した。SZ95は、Prof.Dr.Prof.h.c.Dr.h.c.Christos C.Zouboulisより供与された。LNCaPはATCCより購入した。
【0119】
参考例2.プラスミドDNAの作製
(1)アンドロゲン受容体遺伝子
ヒトアンドロゲン受容体(androgen reseptor;AR)をコードする遺伝子のOpen Reading Flame(ORF)領域を、PrimeSTAR(登録商標)GXL DNA Polymerase(Takara bio)を用いてPCRで増幅し、次いでIn−Fusion HD Cloning Kit(Takara Bio)を用いてEcoRIで処理したpcDNA3.1(Life technologies)に挿入した。目的のプラスミドDNAで形質転換された大腸菌から、EndoFree Plasmid Purification Kit(Qiagen)を用いてプラスミドDNAを精製した。精製したプラスミドDNAをpcDNA3.1−ARと名付けた。
【0120】
(2)解糖系酵素遺伝子
解糖系に関わる酵素enolase 1、lactate dehydrogenase A、glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase、phosphoglycerate kinase 1、aldolase A、Hexokinase 1、glucose−6−phosphate isomerase、及びTriosephosphate isomeraseをコードする遺伝子(それぞれ、ENO1、LDHA、GAPDH、PGK1、ALDOA、HK1、GPI及びTPI)のOpen Reading Flame(ORF)領域を、(1)と同様の手順でpcDNA3.1(Life technologies)に挿入した。目的のプラスミドDNAで形質転換された大腸菌から、EndoFree Plasmid Purification Kit(Qiagen)を用いてプラスミドDNAを精製した。
【0121】
(3)HIF1α活性マーカー遺伝子
HIF1α活性測定用のプラスミドDNAであるpGL4.42(Promega)は、HREの制御下でホタルルシフェラーゼを発現する。pGL4.42中でホタルルシフェラーゼ遺伝子の下流に存在するCytomegalovirus enhance/early promoterとhygromycin耐性遺伝子をSal1とBamH1で切り出し、そこに、SV40 promoterと連結したRenilla luciferase遺伝子をIn−Fusion HD Cloning Kit(Takara Bio)を用いて挿入した。目的のプラスミドDNAが形質転換された大腸菌から、EndoFree Plasmid Purification Kit(Qiagen)を用いてプラスミドDNAを精製した。精製したプラスミドDNAをpGL4.42(Rluc)と名付けた。
【0122】
参考例3.RNA抽出、cDNA合成、リアルタイムPCR
細胞から、RNeasy(登録商標)Mini kitを用いて、添付のプロトコールに従ってtotal RNAを抽出した。抽出したtotal RNAからのcDNA合成には、QuantiTect(登録商標)reverse transcription kit(QIAGEN)を用いた。リアルタイムPCRでは、TaqMan(登録商標)Universal master Mix(Life technologies)、およびTaqMan(登録商標)プローブ(Life technologies)を用いて、各遺伝子のmRNA発現量を定量した。定量した発現量はRPLP0の発現量で補正した。
【0123】
参考例4.HIF1α免疫組織化学染色
免疫組織化学染色に用いる組織標本は、凍結切片を作製した後、−20℃で冷やしたアセトン中で10分間固定した。その後、ヒストファインキット(ニチレイ)を用いて、添付のプロトコールに従い染色を実施した。抗HIF1α抗体(Novus Biologicals)は、1/300に希釈して使用した。発色にはDAB溶液(1mM DAB、50mM Tris−HCL buffer(pH7.6)、0.006%過酸化水素)を用い、カウンター染色にはヘマトキシリン溶液を用いた。組織標本におけるHIF1αの発現強度を半定量的に解析するために、顕微鏡下でHIF1α陽性(茶色で染色された細胞)及び陰性(紫色で染色された細胞)の細胞数をカウントした。HIF1α陽性/陰性の評価対象とした細胞は、皮脂腺、毛包、卵巣及び精巣におけるAR陽性細胞である、皮脂腺構成細胞、毛包構成細胞、卵巣の卵胞細胞、及び精巣の精細管構成細胞とした。
【0124】
実施例1.皮脂腺におけるHIF1αの発現
皮脂腺及び毛包(35歳男性1名)、精巣組織(33歳男性1名)、ならびに卵巣組織(30歳女性1名)の標本を調製した。各組織標本のHIF1α免疫組織化学染色の結果、皮脂腺及び毛包では、精巣及び卵巣と比較して、HIF1αの発現(陽性率)が顕著に高いことが判明した(表1)。
【0125】
【表1】
【0126】
実施例2.解糖系酵素の発現がAR活性に及ぼす影響
J Steroid Biochem & Mol Biol,123:58−64,2011)に記載の手順に従って、ARを過剰発現する細胞を作製し、そのAR活性に対する解糖系酵素発現の影響を調べた。
SZ95細胞を96−wellプレートに播種し、5%チャコール処理血清を含むSebomedTM basal medium(Biochrom)に置換した。ホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流にARの結合配列(MMTV)を含むpGL4.36(Promega)から、薬剤耐性遺伝子Hygroを制限酵素で除去し、そこにRenillaルシフェラーゼ遺伝子をクローニングした。上記SZ95細胞に、該改変pGL4.36と、参考例2(1)で作製したpcDNA3.1−ARと、参考例2(2)で作製した各種解糖系酵素のいずれかのORFがpcDNA3.1に組み込まれたプラスミドDNAとを、ViaFect(Promega)を用いて製品添付のプロトコールに従い導入した。コントロールとしては、pcDNA3.1のマルチプルクローニングサイトに何の配列も含まないプラスミドDNAを導入した。導入から24時間後に、DHT(ジヒドロテストステロン;終濃度1nM)を含む培地に置換して6時間培養した後、細胞のAR活性を測定した。AR活性の測定では、細胞のホタルルシフェラーゼ(ARのMMTVを介した転写活性化の指標)及びRenillaルシフェラーゼ(プラスミド導入効率の指標)の発光強度を、Dual−Glo Luciferase Assay System(Promega社)を用いて添付のプロトコールに従って測定した。ホタルルシフェラーゼの発光強度をRenillaルシフェラーゼの発光強度で除した値を、Relative Light Unit(RLU)として算出した。コントロールのRLU値に対する相対RLU値を、各細胞のAR活性として取得した。
結果を図1及び表2に示す。コントロールプラスミドを導入した細胞と比較して、ENO1、LDHA、PGK1、GPI又はHK1を過剰発現させた細胞では有意にAR活性が上昇した。これまでに解糖系の酵素がAR活性を制御することは報告されておらず、今回初めて皮脂腺細胞においていくつかの解糖系酵素群がAR活性を制御することが明らかにされた。
【0127】
【表2】
【0128】
実施例3.解糖系酵素群の発現に対するHIF1αの影響
皮脂腺細胞におけるHIF1αを介した解糖系酵素群発現制御の可能性を検討した。
SZ95細胞を96−wellプレートに播種し、5%チャコール処理血清を含む培地に置換した。該細胞に、Control siRNA(Stealth RNAiTM shiRNA Negative Controls、12935−400と12935−200、Life technologies)又はHIF1αのsiRNA(Stealth Select RNAiTM shiRNA、HSS104774とHSS104775とHSS179231、Life technologies)を、LipofectamineTM RNAiMAX Transfection Reagent(Life technologies)を用いて、製品添付のプロトコールに従い導入した。該細胞を、低酸素条件下(酸素濃度約0.1%)で24時間培養した。参考例3の手順に従って、細胞からRNAを回収し、実施例2でAR活性を向上させた遺伝子であるENO1、LDHA、PGK1、GPI及びHK1の発現をリアルタイムPCRで定量した。
結果を図2及び表3に示す。HIF1αの発現を抑制することで、ENO1、LDHA、PGK1、GPI及びHK1の発現は有意に減少した。
【0129】
【表3】
【0130】
実施例4.皮脂腺細胞におけるAR活性に対するHIF1αの影響
SZ95細胞を96−wellプレートに播種し、5%チャコール処理血清を含む培地に置換した。該細胞に、Control siRNA又はHIF1αのsiRNA(Life technologies)を、LipofectamineTM RNAiMAX Transfection Reagent(Life technologies)を用いて、製品添付のプロトコールに従い導入した。細胞を24時間培養した後に、参考例2(1)で作製したpcDNA3.1−AR、及び実施例2で用いたものと同じRenillaルシフェラーゼ遺伝子をクローニングした改変pGL4.36を、ViaFect(Promega)を用いて製品添付のプロトコールに従い導入した。24時間後、細胞をDHT(終濃度0.1、1、10nM)を含む培地に置換し、低酸素条件下(酸素濃度0.1%)において培養した。コントロールとしては、100%エタノールを含む培地に置換し、低酸素条件下(酸素濃度0.1%)において培養した。24時間後、実施例2と同様の手順でRelative Light Unit(RLU)を算出し、各細胞のAR活性として取得した。
結果を図3及び表4に示す。HIF1αの発現を抑制した細胞では、0.1〜10nMのDHT濃度全てにおいて、AR活性が有意に低下した。
【0131】
【表4】
【0132】
比較例1.前立腺癌細胞におけるAR活性に対するHIF1αの影響
前立腺癌細胞LNCaPでは、0.1nM以下の低DHT濃度域でHIF1αがARの活性を制御することが報告されている(J Steroid Biochem & Mol Biol,123:58−64,2011)。しかしながら、通常の生体内におけるDHT及びテストステロンは、より高濃度で存在すると考えられる(J Clin Endocrinol Metab,1994,79:703−706;J Clin Endocrinol Metab,1998,83:2266−2274)。本発明者らは、高DHT濃度下のLNCaPにおけるHIF1αのAR活性に対する寄与を解析するため、実施例4と同様の実験を行った。その結果、LNCaPでは過去の報告同様に、0.1nMのDHT濃度ではHIF1αの発現抑制によりAR活性が有意に低下したが、1〜10nMのDHT濃度域ではHIF1αの発現抑制による有意なAR活性の変化は確認されなかった(図4及び表5)。これらの結果より、皮脂腺細胞に発現するHIF1αは、前立腺癌細胞と比較して広範囲なDHT濃度域でAR活性を制御することが明らかとなった。一方、通常のDHT濃度域下では、HIF1αは前立腺癌のAR活性を制御しないことが示唆された。
【0133】
【表5】
【0134】
実施例5.皮脂腺細胞におけるHIF1α活性に対するレチノイン酸の影響
皮脂腺細胞にニキビの改善薬として知られているレチノイン酸(Br J Dermatol,107:583―590,1982)を添加し、HIF1α活性に対する影響を調べた。
SZ95細胞に、参考例2(3)で作製したHIF1α活性測定用のプラスミドDNApGL4.42(Rluc)を導入した。24時間後、培地にレチノイン酸を添加し、低酸素条件下での培養を実施した。コントロールとしては、100%エタノール溶媒を添加した培地を使用した。15時間後、実施例2と同様の手順でRelative Light Unit(RLU)を算出し、細胞のHIF1αの活性として取得した。
結果を図5及び表6に示す。コントロールの細胞と比較して、レチノイン酸を添加した細胞においては濃度依存的にHIF1αの活性が抑制された。
【0135】
【表6】
【要約】
迅速かつ精度よく、しかも皮脂腺及び毛包選択的にアンドロゲン受容体の活性を制御するための物質を探索する方法の提供。(A)皮脂腺由来細胞又は毛包由来細胞に、低酸素条件下で被験物質を適用すること;(B)該細胞におけるHIF1αの活性を測定すること;(C)該(B)で測定した活性を、対照群におけるHIF1αの活性と比較すること;及び、(D)該(C)の結果に基づいて、被験物質のHIF1αの活性を制御する効果を評価すること、を含む皮脂腺又は毛包選択的アンドロゲン受容体活性制御剤の評価又は選択方法。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]