【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1であるブラシレスモータ1の構成を示す断面図、
図2は、
図1のブラシレスモータに使用されるステータ(固定子)2の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、ブラシレスモータ1(以下、モータ1と略記する)は、外側にステータ2、内側にロータ(回転子)3を配し、ステータ2の図示しないティース部に複数相(本実施例では3相)の巻線が施された界磁用のコイルを備えたインナーロータ型のブラシレスモータであり、自動車のオイルポンプ等の駆動源として使用される。
【0022】
ステータ2は、電磁鋼板を積層して形成したステータコア4と、ステータコア4に巻装された界磁コイル5(以下、コイル5と略記する)とから構成されている。ステータコア4には合成樹脂製のインシュレータ6が取り付けられており、ティース部におけるインシュレータ6の外側にコイル5が巻装されている。モータ1のステータ2は、いわゆる分割コア型の構成となっており、
図2に示すように、コイル5を巻装した分割コア7を環状に複数個連設した形態となっている。このような分割コア構造を採用することにより、各分割コア7を環状に連結する前に、ティース部に予め界磁用のコイルを巻線することが可能となって、ステータ巻線の占積率が向上し、モータ効率が向上すると共に、巻線に要する工数を削減することが可能となる。また、本実施例のブラシレスモータ1の界磁用のコイルは、U相・V相・W相の3相からなり、各相が3組、周方向に順番に、U→V→W→U→V→W→U→V→Wの配列となるよう9つのティース部に巻線されている。
【0023】
上述のように、各分割コア7に予め界磁用のコイルを巻線しているため、各分割コア7のコイル5の一対の端部(始線と終線)5a,5bは、インシュレータ6にインサート成形された接続端子8(第1接続端子)と接続端子9(第2接続端子)に、それぞれ接続(仮固定)されている。接続端子9の一部(9u,9v,9w)は、軸方向に延びる外部接続突起10を備えており、この外部接続突起10は回路基板11に接続されている。インシュレータ6には、このような外部接続用の端子(9u,9v,9w)が設けられているため、回路基板11との電気的な接続も容易に行うことができる。ステータ2は、合成樹脂にて形成されたモータケース12内に収容されており、その両端にはそれぞれ、ケースカバー13とエンドブラケット14が取り付けられている。回路基板11は、ケースカバー13に覆われる形で、モータケース12内に配置される。なお、符号20は、本ブラシレスモータ1と車体側ハーネスとを電気的に接続するために、モータケース12と一体成形されたコネクタである。
【0024】
ステータ2の内側にはロータ3が挿入されている。ロータ3は、モータ回転軸となるシャフト15を有している。シャフト15は、エンドブラケット14に取り付けられたボールベアリング16によって回転自在に支持されている。エンドブラケット14にはオイルシール17が取り付けられており、シャフト15は、オイルシール17に摺接している。シャフト15には、電磁鋼板を積層して形成したロータコア18が固定されている。ロータコア18の外周には、励磁用の複数極のマグネット19(本実施例においては、6極のマグネット)が取り付けられている。このように、本実施例のブラシレスモータ1は、6極9ティース部(スロット)のモータとして構成されている。
【0025】
ここで、従来のブラシレスモータでは、コイル5の端末結線と回路基板への電気的接続のため、
図7のようなバスバーユニットが使用されており、
図1のX部分に収容配置される。ところが、部品仕様の関係から、X部分の寸法が小さくそこにバスバーユニットを配置できない場合がある。このような仕様の場合、バスバーユニットは、反対側(エンドブラケット14側)に配置せざるを得ず、回路基板との間に長い配線とそのためのスペースが必要となる。また、軸方向の許容寸法が小さく、バスバーユニット自体を設けるスペースが捻出できない場合もある。
【0026】
そこで、本発明によるモータ1では、銅板を利用したバスバーではなく、コイルを利用して各コイル端末を電気的に結線することにより、バスバーユニットを廃し、モータの小型化、低コスト化を図っている。
図3は、モータ1のステータ2におけるコイル端末結線の状態を示す説明図である。ステータ2では、端子結線21(導線)によって、各接続端子8,9を、一筆書きの要領で、中断なく連続的に結線(仮配線)し、それを中性点用の共通結線(第1結線)と各相結線(第2結線)とに切り分け、3相のY結線を実現している。なお、端子結線21には3相分の電流が流れるため、コイル5に比して3倍の断面積を有する導線が使用される(例えば、コイル5:φ0.5mmに対して、端子結線21:最大φ1.5mm)。
【0027】
ここではまず、共通結線を形成すべく、端子結線21を、接続端子8aから、周方向に沿って1つ飛ばしに、各接続端子8b〜8i(第1接続端子)に、
図3の番号1〜9の順にて引っ掛けて行く(中性点結線工程)。端子結線21は、巻線機のノズルを径方向に移動させつつ、ステータ2を適宜周方向に回転させながら行われる。この場合、端子結線21を隣接相の接続端子8(例えば、8aと8b)同士に引っ掛ける際は、インシュレータ6の内端側に立設された絶縁材料(例えば、インシュレータ6と同じ合成樹脂製)からなるガイドポール(ガイド部材)22を経由させる形で、一旦内径側に端子結線21を引き回して両接続端子8(8a,8b)を接続する。これは、ガイドポール22を経由させずに隣接相の端子同士を接続(仮配線)すると、端子結線21が当該端子間の他の端子に接触するおそれがあり、ヒュージングの際もこの結線が作業の妨げとなるためである。
【0028】
図4は、ガイドポール22の構成を示す説明図である。ガイドポール22は、合成樹脂にてインシュレータ6と一体に成形されており、
図4(a)に示すように、その外周部には、外径を一部切り欠く形でコイル掛止部23が設けられている。コイル掛止部23の上端には、段状の返し部23aが形成されている。
図4(b)に示すように、端子結線21は、このコイル掛止部23にテンションを掛けた状態で掛け回され、その際、端子結線21は返し部23aに係合し、外れ止めされた形でガイドポール22に保持される。
【0029】
このように、端子結線21は、ガイドポール22によって、配線・端子間の干渉を防ぎ絶縁性を確保しつつ、返し部23aにより確実にガイドポール22に保持され、製品信頼性の向上が図られる。また、ガイドポール22は、インシュレータ6と一体に形成可能なため、部品点数や組立工数の増大を招くこともない。なお、
図3では、端子結線21の経路をわかりやすく示すため、端子結線21は、ガイドポール22に接触していない形で記載されているが、実際は、巻線機によってテンションが掛けられた状態で端子結線21はガイドポール22に掛け回される。
【0030】
このようにして、端子結線21によって各接続端子8b〜8iを接続(仮配線)して共通結線を形成した後、残りの各接続端子9u,9v,9w,9a〜9f(第2接続端子)を接続し各相の結線(仮配線)を行う(各相結線工程)。ここでは、U相(
図3の番号10〜12)→V相(同、13〜15)→W相(同、16〜18)の順に結線を行う。すなわち、端子結線21を接続端子8iまで掛け回した後、ガイドポール22を経由させ、隣接する接続端子9uに端子結線21を掛け回す。そして、接続端子9uから5つずつ端子を飛ばして(巻線機にてコア3個分ステップ移動させて)、他のU相端子である接続端子9a,9bに引っ掛ける。これにより、U相の接続端子9同士が接続(仮配線)される。次に、接続端子9bから、ガイドポール22を経由させ、V相の接続端子9cに端子結線21を掛け回し、U相の場合と同様に、5つずつ端子を飛ばして、他のV相の接続端子9v,9dに引っ掛ける。これにより、V相の接続端子9同士が接続(仮配線)される。さらに、接続端子9dから、ガイドポール22を経由させ、W相の接続端子9eに端子結線21を掛け回し、前述同様、5つずつ端子を飛ばして、他のW相の接続端子9f,9wに引っ掛けてW相の接続端子9同士を接続(仮配線)する。
【0031】
図3のように共通結線と各相結線の仮配線を行った後、一筆書き配線された端子結線21を切断して共通結線と各相結線を切り離す(切断工程)。モータ1では、
図3のA〜C部(CUT(A)〜CUT(C))にて、それらを個々に分離する。この場合、A部では、中性点用の共通結線N(第1結線)が各相結線(第2結線、ここでは、U相結線Lu)と切り離される。また、B部ではU相結線LuとV相結線Lv、C部ではV相結線LvとW相結線Lwがそれぞれ切り離される。そして、これにより、従来バスバーにて接続されていた各端子が、共通結線N(実線)と各相結線Lu(一点鎖線),Lv(二点鎖線),Lw(長い破線)にて接続(仮配線)される。
【0032】
共通結線と各相結線を切り離した後、ヒュージングにより、接続端子8,9に端子結線21を電気的に接合する(ヒュージング工程)。
図5は、接続端子8,9の構成を示す説明図である。接続端子8,9にはコイル掛止片24が設けられており、コイル掛止片24と接続端子本体25との間にはコイル収容接続部26が形成されている。コイル5の両端部5aと端子結線21は、このコイル収容接続部26内に配線(仮配線)され、コイル掛止片24と共にヒュージングにて溶融溶接される(
図1の破線→実線)。コイル5や端子結線21には、エナメル被覆が施された導線が使用されるが、エナメル被覆はヒュージングの際に溶け、各コイル5,21と接続端子8,9は電気的に接続される。
【0033】
このように、本発明のモータ1では、バスバーに代えて端子結線21を使用し、これを一筆書きの要領で接続端子8,9に連続的に結線(仮配線)し、ヒュージングの後、それを共通結線Nと各相結線Lu,Lv,Lwに切り分けるようにしたので、ステータ巻線の端末の結線に、結線用ユニットが不要となり、部品点数の削減や、加工工数の削減が図られる。また、モータ内にバスバーユニットのためのスペースが不要となるため、軸方向の寸法を短縮することができ、モータの小型化を図ることが可能となる。特に、自動車用オイルポンプなどのように、狭い空間内に厳しい寸法仕様にて配置される部品では、軸方向寸法の短縮により、設計の自由度が増大し、幅広い設計ニーズに応えることが可能となる。
【実施例2】
【0034】
次に、本発明の実施例2として、端子結線の切断をより容易化した構成について説明する。
図6は、本発明の実施例2であるモータにおけるコイル端末結線の状態を示す説明図である。なお、以下の実施例では、実施例1と同様の部材、部分については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0035】
図6に示すように、本発明の実施例2のステータ31では、端子結線21の一部が、巻線機の金型に立設されたガイドピン32に掛け回され、ステータ外に引き回されている。このガイドピン32に掛け回されている部分は、共通結線と各相結線の境目の部分であり、
図6のA〜C部(CUT(A)〜CUT(C))にて端子結線21を切断することにより、共通結線Nと各相結線Lu,Lv,Lwを分離することができる。つまり、ステータ31では、
図3のA〜C部に相当する部分が、ガイドピン32に掛け回されて外に引き回されている。このように、切断部分をステータ外に引き回すことにより、
図3のようにステータ内にて端子結線21を切断する場合に比して、切断作業が容易であり、結線作業の工数削減が図られる。また、切断作業の際に、他の線を切ってしまうような切断ミスも減らすことができ、不良品の発生を抑え、製品信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0036】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、本発明は、ステータの一端側に各スロット巻線の端子が2本(始線と終線)配されているモータであれば、コア形状を問わず適用できる。従って、前述の実施例では、分割コア型のステータを用いたブラシレスモータに本発明を適用した例を示したが、一体型のコアを使用するタイプのモータにも本発明は適用可能である。また、前述の実施例では、ガイドポール22を合成樹脂製である旨説明したが、ガイドポール22には、端子結線21を掛け回す際にテンションが加わるため、その補強用に、ポール内に金属ピンをインサートしても良い。さらに、前述の実施例では、3相のブラシレスモータに本発明を適用した例を示したが、これに限定されず、本発明は、複数相からなるブラシレスモータに広く適用することができる。