特許第6006937号(P6006937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6006937ブラシレスモータ及びブラシレスモータ製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006937
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ及びブラシレスモータ製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20160929BHJP
   H02K 3/52 20060101ALI20160929BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   H02K3/46 C
   H02K3/52 E
   H02K15/04 E
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-284900(P2011-284900)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-135547(P2013-135547A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】先山 孝洋
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−531485(JP,A)
【文献】 特開平09−163654(JP,A)
【文献】 特開2005−341640(JP,A)
【文献】 特開2002−330565(JP,A)
【文献】 特開2002−247792(JP,A)
【文献】 米国特許第02688103(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/30−3/52
H02K 15/00−15/02
H02K 15/04−15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数相の界磁用のコイルを備えたステータと、前記ステータの内側に回転自在に配置されたロータと、を有してなるブラシレスモータであって、
前記ステータは、
径方向内側に向かって延びるティースが周方向に沿って複数個形成されたステータコアと、
前記ステータコアに取り付けられた絶縁性材料からなるインシュレータと、
前記インシュレータに巻装された前記コイルと、
共に前記インシュレータの径方向外端側に形成され、前記コイルの一端側が接続される第1接続端子と、前記コイルの他端側が接続される第2接続端子と、
前記インシュレータの径方向内端側に形成されたガイド部材と、
前記各第1接続端子を全て接続する第1結線と、
前記第2接続端子のうち同相のもの同士を接続する、各相ごとに設けられた複数本の第2結線と、を有し、
前記第2接続端子は、前記第1接続端子間に配置され、
前記第1結線は、隣接する第1接続端子同士を接続するよう、前記第1接続端子間に設けられ径方向内端側に配置された前記ガイド部材を経由して配線されることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項2】
請求項1記載のブラシレスモータにおいて、
前記ステータは、
前記ステータコアを前記各ティースごとに分割し、前記インシュレータを装着すると共に、該インシュレータに前記コイルを巻装させた分割コアを複数個環状に連設してなることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のブラシレスモータにおいて、
前記ガイド部材は、前記インシュレータ上に立設されることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のブラシレスモータにおいて、
前記ガイド部材は、前記第1及び第2結線が掛け回されるコイル掛止部を有し、
前記コイル掛止部は、前記第1及び第2結線の移動を規制する段状の返し部を有することを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のブラシレスモータにおいて、
各相の前記第2接続端子のうちそれぞれ1個は、外部との電気的接続用の接続突起を有することを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項6】
径方向内側に向かって延びるティースが周方向に沿って複数個形成されたステータコアと、前記ステータコアに取り付けられた絶縁性材料からなるインシュレータと、前記インシュレータに巻装された複数相の界磁用のコイルと、を備えるステータと、
前記ステータの内側に回転自在に配置されたロータと、を有してなるブラシレスモータの製造方法であって、
前記インシュレータに形成され、前記コイルの一端側が接続される各第1接続端子を全て接続する中性点結線工程と、
前記インシュレータに形成され、前記コイルの他端側が接続される第2接続端子のうち同相のもの同士をそれぞれ接続する各相結線工程と、を有し、
前記中性点結線工程と前記各相結線工程は、同一導線を用いて順次連続して実施され、
前記中性点結線工程及び前記各相結線工程の後、前記導線を、前記第1接続端子を全て接続する第1結線と、同相のもの同士をそれぞれ接続する複数本の第2結線とに切断する切断工程を実施することを特徴とするブラシレスモータの製造方法。
【請求項7】
請求項記載のブラシレスモータの製造方法において、
前記切断工程の後、前記第1結線と前記第1接続端子、及び、前記第2結線と前記第2接続端子をそれぞれヒュージングにて接合するヒュージング工程を実施することを特徴とするブラシレスモータの製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載のブラシレスモータの製造方法において、
前記ステータは、
前記ステータコアを前記各ティースごとに分割し、前記インシュレータを装着すると共に、該インシュレータに前記コイルを巻装させた分割コアを複数個環状に連設して形成されることを特徴とするブラシレスモータの製造方法。
【請求項9】
請求項6又は7記載のブラシレスモータの製造方法において、
前記ステータは、絶縁材料にて形成されたガイド部材を有し、
前記中性点結線工程及び前記各相結線工程では、前記ガイド部材に導線を掛け回しつつ各端子間が接続されることを特徴とするブラシレスモータの製造方法。
【請求項10】
請求項9記載のブラシレスモータの製造方法において、
前記ガイド部材は、前記導線が掛け回されるコイル掛止部を備え、
前記コイル掛止部は、前記導線の移動を規制する段状の返し部を有し、
前記導線は、前記返し部に係合した状態で、前記コイル掛止部に掛け回されることを特徴とするブラシレスモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータの結線構造に関し、特に、従来より各スロット巻線の端末結線に使用されている金属製導電部材(バスバー)を省き、部品点数の削減やモータサイズの小型化を図ったブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
Y結線タイプの3相ブラシレスモータでは、ステータ巻線後、各スロット巻線の始線および終線は、各相巻線の一端側が一括接続された中性点と、各相巻線の他端側にそれぞれ接続される。従来より、この各相巻線の結線には、バスバーと呼ばれる金属製導電部材を使用した結線用ユニット(バスバーユニット)が使用されている。図7は、バスバーユニットの構成を示す説明図である。図7に示すように、バスバーユニット50は、各相ごとの相別バスバー51(51U,51V,51W)と、中性点用の中点リングバスバー52、及び、合成樹脂製のバスバーボディ(絶縁部材)53とから構成されている。各バスバー51,52は、合成樹脂製のバスバーボディ53にインサートモールドされている。バスバーユニット50はモータのステータ端部に取り付けられ、各相巻線の端末は、各バスバー51,52それぞれ結線される。バスバーユニット50は、各相巻線の端末が接続された状態で、ステータと共にモータハウジング等に収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−233483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このようなバスバーは、金属板をプレス加工にて打ち抜いた後、結線用の端末片を曲げ加工にて形成するため、加工時間が掛かるという問題があった。また、各バスバーは、大きさ、形状が似ているため、部品管理が煩雑であり、部品間違いによる不良品発生のおそれがあった。さらに、バスバーユニット自体も、4個のバスバーと絶縁部材からなるため部品点数が多く、しかも、それらを一体成形する構成のため、加工工数が掛かり、製造コストが高いという問題があった。加えて、インサートモールドの際、バスバーが少しでも曲がっているとバスバーを金型にうまくセットできず、その分、作業時間が余分に掛かるという問題もあった。また、バスバーを金型にセットする際、金型が熱くなっているため作業性が悪く、作業環境や製造コストの面でも問題があった。
【0005】
さらに、成形圧力に耐えるべくバスバーの板厚を厚くする必要があったり、バスバー間に絶縁隙間を確保する必要があったりするため、バスバーユニットが大型化し、製品小型化の要請に反するという問題があった。また、バスバーユニットは、バスバーと絶縁体を積層した構成となっているため、その分だけ軸方向の長さが必要であり、バスバーを使用することにより、モータの軸方向長が増大し、この点においても小型化の製品要請に反するという問題が生じていた。
【0006】
本発明の目的は、ブラシレスモータにおいて、結線用ユニットを使用することなく、ステータ巻線のコイル端末を結線可能にし、もって、部品点数の削減や、加工工数の削減、モータサイズの小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のブラシレスモータは、複数相の界磁用のコイルを備えたステータと、前記ステータの内側に回転自在に配置されたロータと、を有してなるブラシレスモータであって、前記ステータは、径方向内側に向かって延びるティースが周方向に沿って複数個形成されたステータコアと、前記ステータコアに取り付けられた絶縁性材料からなるインシュレータと、前記インシュレータに巻装された前記コイルと、共に前記インシュレータの径方向外端側に形成され、前記コイルの一端側が接続される第1接続端子と、前記コイルの他端側が接続される第2接続端子と、前記インシュレータの径方向内端側に形成されたガイド部材と、前記各第1接続端子を全て接続する第1結線と、前記第2接続端子のうち同相のもの同士を接続する、各相ごとに設けられた複数本の第2結線と、を有し、前記第2接続端子は、前記第1接続端子間に配置され、前記第1結線は、隣接する第1接続端子同士を接続するよう、前記第1接続端子間に設けられ径方向内端側に配置された前記ガイド部材を経由して配線されることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、ステータコアに取り付けられるインシュレータに、コイルの一端側が接続される第1接続端子と、コイルの他端側が接続される第2接続端子とを設け、各第1接続端子を第1結線にて、また、第2接続端子のうち同相のもの同士を第2結線にて接続するようにしたので、ステータ巻線の端末の結線に、結線用ユニット(バスバーユニット)が不要となり、部品点数の削減や、加工工数の削減が図られる。また、モータ内にバスバーユニットのためのスペースが不要となるため、軸方向の寸法を短縮することができ、モータの小型化を図ることが可能となる。
【0009】
前記ブラシレスモータにおいて、前記ステータを分割コアによって形成しても良い。すなわち、各ティースへのステータ巻線の占積率を向上させるために前記ステータコアを前記各ティースごとに分割したものであっても、ステータ巻線の端末の結線に、結線用ユニット(バスバーユニット)が不要となり、部品点数の削減や、加工工数の削減が図られる。さらに、前記インシュレータを装着すると共に、該インシュレータに前記コイルを巻装させた分割コアを形成し、これを複数個環状に連設して前記ステータを形成しても良い。
【0010】
また、前記ステータに、前記第1及び第2結線が掛け回されるガイド部材を設けても良い。この場合、前記ガイド部材を、前記インシュレータ上に立設しても良い。また、前記ガイド部材に、前記第1及び第2結線が掛け回されるコイル掛止部を設けると共に、前記コイル掛止部に、前記第1及び第2結線の移動を規制する段状の返し部を形成しても良い。
【0011】
さらに、各相の前記第2接続端子のうちそれぞれ1個に、外部との電気的接続用の接続突起を設けても良い。接続突起を設けることにより、外部との電気的接続を容易に行うことができ、モータ組付工数の削減が図られる。
【0012】
一方、本発明のブラシレスモータ製造方法は、径方向内側に向かって延びるティースが周方向に沿って複数個形成されたステータコアと、前記ステータコアに取り付けられた絶縁性材料からなるインシュレータと、前記インシュレータに巻装された複数相の界磁用のコイルと、を備えるステータと、前記ステータの内側に回転自在に配置されたロータと、を有してなるブラシレスモータの製造方法であって、前記インシュレータに形成され、前記コイルの一端側が接続される各第1接続端子を全て接続する中性点結線工程と、前記インシュレータに形成され、前記コイルの他端側が接続される第2接続端子のうち同相のもの同士をそれぞれ接続する各相結線工程と、を有し、前記中性点結線工程と前記各相結線工程は、同一導線を用いて順次連続して実施され、前記中性点結線工程及び前記各相結線工程の後、前記導線を、前記第1接続端子を全て接続する第1結線と、同相のもの同士をそれぞれ接続する複数本の第2結線とに切断する切断工程を実施することを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、ステータコアに取り付けられるインシュレータに、コイルの一端側が接続される第1接続端子と、コイルの他端側が接続される第2接続端子とを設け、各第1接続端子を第1結線にて接続する中性点結線工程と、第2接続端子のうち同相のもの同士を第2結線にて接続する各相結線工程と、を設けたので、結線用ユニット(バスバーユニット)を用いることなく、ステータ巻線の端末の結線を容易に行うことができ、部品点数の削減や、加工工数の削減が図られる。また、モータ内にバスバーユニットのためのスペースが不要となるため、軸方向の寸法を短縮することができ、モータの小型化を図ることが可能となる。
【0014】
前記ブラシレスモータの製造方法において、前記切断工程の後、前記第1結線と前記第1接続端子、及び、前記第2結線と前記第2接続端子をそれぞれヒュージングにて接合するヒュージング工程を実施しても良い。
【0015】
さらに、前記ステータを分割コアによって形成しても良い。すなわち、前記ステータコアを前記各ティースごとに分割し、前記インシュレータを装着すると共に、該インシュレータに前記コイルを巻装させた分割コアを形成し、これを複数個環状に連設して前記ステータを形成しても良い。
【0016】
加えて、前記ステータに、絶縁材料にて形成されたガイド部材を設け、前記中性点結線工程及び前記各相結線工程では、前記ガイド部材に導線を掛け回しつつ各端子間を接続するようにしても良い。この場合、前記ガイド部材に、前記導線が掛け回されるコイル掛止部を設けると共に、前記コイル掛止部に、前記導線の移動を規制する段状の返し部を形成し、前記導線を、前記返し部に係合させつつ前記コイル掛止部に掛け回しても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明のブラシレスモータによれば、ステータコアに取り付けられるインシュレータに、コイルの一端側が接続される第1接続端子と、コイルの他端側が接続される第2接続端子とを設け、各第1接続端子を第1結線にて、また、第2接続端子のうち同相のもの同士を第2結線にて接続するようにしたので、結線用ユニットを用いることなく、ステータ巻線の端末の結線が可能となる。従って、部品点数の削減や、加工工数の削減が図られると共に、モータ内にバスバーユニットのためのスペースが不要となるため、軸方向の寸法を短縮することができ、モータの小型化を図ることが可能となる。
【0018】
本発明のブラシレスモータ製造方法によれば、ステータコアに取り付けられるインシュレータに、コイルの一端側が接続される第1接続端子と、コイルの他端側が接続される第2接続端子とを設け、各第1接続端子を第1結線にて接続する中性点結線工程と、第2接続端子のうち同相のもの同士を第2結線にて接続する各相結線工程と、を設けたので、結線用ユニットを用いることなく、ステータ巻線の端末の結線が可能となる。従って、部品点数の削減や、加工工数の削減が図られると共に、モータ内にバスバーユニットのためのスペースが不要となるため、軸方向の寸法を短縮することができ、モータの小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1であるブラシレスモータ1の構成を示す断面図である。
図2図1のブラシレスモータに使用されるステータの構成を示す斜視図である。
図3図1のブラシレスモータにおけるステータのコイル端末結線の状態を示す説明図である。
図4】ガイドポールの構成を示す説明図である。
図5】接続端子の構成を示す説明図である。
図6】本発明の実施例2であるモータにおけるコイル端末結線の状態を示す説明図である。
図7】バスバーユニットの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1であるブラシレスモータ1の構成を示す断面図、図2は、図1のブラシレスモータに使用されるステータ(固定子)2の構成を示す斜視図である。図1に示すように、ブラシレスモータ1(以下、モータ1と略記する)は、外側にステータ2、内側にロータ(回転子)3を配し、ステータ2の図示しないティース部に複数相(本実施例では3相)の巻線が施された界磁用のコイルを備えたインナーロータ型のブラシレスモータであり、自動車のオイルポンプ等の駆動源として使用される。
【0022】
ステータ2は、電磁鋼板を積層して形成したステータコア4と、ステータコア4に巻装された界磁コイル5(以下、コイル5と略記する)とから構成されている。ステータコア4には合成樹脂製のインシュレータ6が取り付けられており、ティース部におけるインシュレータ6の外側にコイル5が巻装されている。モータ1のステータ2は、いわゆる分割コア型の構成となっており、図2に示すように、コイル5を巻装した分割コア7を環状に複数個連設した形態となっている。このような分割コア構造を採用することにより、各分割コア7を環状に連結する前に、ティース部に予め界磁用のコイルを巻線することが可能となって、ステータ巻線の占積率が向上し、モータ効率が向上すると共に、巻線に要する工数を削減することが可能となる。また、本実施例のブラシレスモータ1の界磁用のコイルは、U相・V相・W相の3相からなり、各相が3組、周方向に順番に、U→V→W→U→V→W→U→V→Wの配列となるよう9つのティース部に巻線されている。
【0023】
上述のように、各分割コア7に予め界磁用のコイルを巻線しているため、各分割コア7のコイル5の一対の端部(始線と終線)5a,5bは、インシュレータ6にインサート成形された接続端子8(第1接続端子)と接続端子9(第2接続端子)に、それぞれ接続(仮固定)されている。接続端子9の一部(9u,9v,9w)は、軸方向に延びる外部接続突起10を備えており、この外部接続突起10は回路基板11に接続されている。インシュレータ6には、このような外部接続用の端子(9u,9v,9w)が設けられているため、回路基板11との電気的な接続も容易に行うことができる。ステータ2は、合成樹脂にて形成されたモータケース12内に収容されており、その両端にはそれぞれ、ケースカバー13とエンドブラケット14が取り付けられている。回路基板11は、ケースカバー13に覆われる形で、モータケース12内に配置される。なお、符号20は、本ブラシレスモータ1と車体側ハーネスとを電気的に接続するために、モータケース12と一体成形されたコネクタである。
【0024】
ステータ2の内側にはロータ3が挿入されている。ロータ3は、モータ回転軸となるシャフト15を有している。シャフト15は、エンドブラケット14に取り付けられたボールベアリング16によって回転自在に支持されている。エンドブラケット14にはオイルシール17が取り付けられており、シャフト15は、オイルシール17に摺接している。シャフト15には、電磁鋼板を積層して形成したロータコア18が固定されている。ロータコア18の外周には、励磁用の複数極のマグネット19(本実施例においては、6極のマグネット)が取り付けられている。このように、本実施例のブラシレスモータ1は、6極9ティース部(スロット)のモータとして構成されている。
【0025】
ここで、従来のブラシレスモータでは、コイル5の端末結線と回路基板への電気的接続のため、図7のようなバスバーユニットが使用されており、図1のX部分に収容配置される。ところが、部品仕様の関係から、X部分の寸法が小さくそこにバスバーユニットを配置できない場合がある。このような仕様の場合、バスバーユニットは、反対側(エンドブラケット14側)に配置せざるを得ず、回路基板との間に長い配線とそのためのスペースが必要となる。また、軸方向の許容寸法が小さく、バスバーユニット自体を設けるスペースが捻出できない場合もある。
【0026】
そこで、本発明によるモータ1では、銅板を利用したバスバーではなく、コイルを利用して各コイル端末を電気的に結線することにより、バスバーユニットを廃し、モータの小型化、低コスト化を図っている。図3は、モータ1のステータ2におけるコイル端末結線の状態を示す説明図である。ステータ2では、端子結線21(導線)によって、各接続端子8,9を、一筆書きの要領で、中断なく連続的に結線(仮配線)し、それを中性点用の共通結線(第1結線)と各相結線(第2結線)とに切り分け、3相のY結線を実現している。なお、端子結線21には3相分の電流が流れるため、コイル5に比して3倍の断面積を有する導線が使用される(例えば、コイル5:φ0.5mmに対して、端子結線21:最大φ1.5mm)。
【0027】
ここではまず、共通結線を形成すべく、端子結線21を、接続端子8aから、周方向に沿って1つ飛ばしに、各接続端子8b〜8i(第1接続端子)に、図3の番号1〜9の順にて引っ掛けて行く(中性点結線工程)。端子結線21は、巻線機のノズルを径方向に移動させつつ、ステータ2を適宜周方向に回転させながら行われる。この場合、端子結線21を隣接相の接続端子8(例えば、8aと8b)同士に引っ掛ける際は、インシュレータ6の内端側に立設された絶縁材料(例えば、インシュレータ6と同じ合成樹脂製)からなるガイドポール(ガイド部材)22を経由させる形で、一旦内径側に端子結線21を引き回して両接続端子8(8a,8b)を接続する。これは、ガイドポール22を経由させずに隣接相の端子同士を接続(仮配線)すると、端子結線21が当該端子間の他の端子に接触するおそれがあり、ヒュージングの際もこの結線が作業の妨げとなるためである。
【0028】
図4は、ガイドポール22の構成を示す説明図である。ガイドポール22は、合成樹脂にてインシュレータ6と一体に成形されており、図4(a)に示すように、その外周部には、外径を一部切り欠く形でコイル掛止部23が設けられている。コイル掛止部23の上端には、段状の返し部23aが形成されている。図4(b)に示すように、端子結線21は、このコイル掛止部23にテンションを掛けた状態で掛け回され、その際、端子結線21は返し部23aに係合し、外れ止めされた形でガイドポール22に保持される。
【0029】
このように、端子結線21は、ガイドポール22によって、配線・端子間の干渉を防ぎ絶縁性を確保しつつ、返し部23aにより確実にガイドポール22に保持され、製品信頼性の向上が図られる。また、ガイドポール22は、インシュレータ6と一体に形成可能なため、部品点数や組立工数の増大を招くこともない。なお、図3では、端子結線21の経路をわかりやすく示すため、端子結線21は、ガイドポール22に接触していない形で記載されているが、実際は、巻線機によってテンションが掛けられた状態で端子結線21はガイドポール22に掛け回される。
【0030】
このようにして、端子結線21によって各接続端子8b〜8iを接続(仮配線)して共通結線を形成した後、残りの各接続端子9u,9v,9w,9a〜9f(第2接続端子)を接続し各相の結線(仮配線)を行う(各相結線工程)。ここでは、U相(図3の番号10〜12)→V相(同、13〜15)→W相(同、16〜18)の順に結線を行う。すなわち、端子結線21を接続端子8iまで掛け回した後、ガイドポール22を経由させ、隣接する接続端子9uに端子結線21を掛け回す。そして、接続端子9uから5つずつ端子を飛ばして(巻線機にてコア3個分ステップ移動させて)、他のU相端子である接続端子9a,9bに引っ掛ける。これにより、U相の接続端子9同士が接続(仮配線)される。次に、接続端子9bから、ガイドポール22を経由させ、V相の接続端子9cに端子結線21を掛け回し、U相の場合と同様に、5つずつ端子を飛ばして、他のV相の接続端子9v,9dに引っ掛ける。これにより、V相の接続端子9同士が接続(仮配線)される。さらに、接続端子9dから、ガイドポール22を経由させ、W相の接続端子9eに端子結線21を掛け回し、前述同様、5つずつ端子を飛ばして、他のW相の接続端子9f,9wに引っ掛けてW相の接続端子9同士を接続(仮配線)する。
【0031】
図3のように共通結線と各相結線の仮配線を行った後、一筆書き配線された端子結線21を切断して共通結線と各相結線を切り離す(切断工程)。モータ1では、図3のA〜C部(CUT(A)〜CUT(C))にて、それらを個々に分離する。この場合、A部では、中性点用の共通結線N(第1結線)が各相結線(第2結線、ここでは、U相結線Lu)と切り離される。また、B部ではU相結線LuとV相結線Lv、C部ではV相結線LvとW相結線Lwがそれぞれ切り離される。そして、これにより、従来バスバーにて接続されていた各端子が、共通結線N(実線)と各相結線Lu(一点鎖線),Lv(二点鎖線),Lw(長い破線)にて接続(仮配線)される。
【0032】
共通結線と各相結線を切り離した後、ヒュージングにより、接続端子8,9に端子結線21を電気的に接合する(ヒュージング工程)。図5は、接続端子8,9の構成を示す説明図である。接続端子8,9にはコイル掛止片24が設けられており、コイル掛止片24と接続端子本体25との間にはコイル収容接続部26が形成されている。コイル5の両端部5aと端子結線21は、このコイル収容接続部26内に配線(仮配線)され、コイル掛止片24と共にヒュージングにて溶融溶接される(図1の破線→実線)。コイル5や端子結線21には、エナメル被覆が施された導線が使用されるが、エナメル被覆はヒュージングの際に溶け、各コイル5,21と接続端子8,9は電気的に接続される。
【0033】
このように、本発明のモータ1では、バスバーに代えて端子結線21を使用し、これを一筆書きの要領で接続端子8,9に連続的に結線(仮配線)し、ヒュージングの後、それを共通結線Nと各相結線Lu,Lv,Lwに切り分けるようにしたので、ステータ巻線の端末の結線に、結線用ユニットが不要となり、部品点数の削減や、加工工数の削減が図られる。また、モータ内にバスバーユニットのためのスペースが不要となるため、軸方向の寸法を短縮することができ、モータの小型化を図ることが可能となる。特に、自動車用オイルポンプなどのように、狭い空間内に厳しい寸法仕様にて配置される部品では、軸方向寸法の短縮により、設計の自由度が増大し、幅広い設計ニーズに応えることが可能となる。
【実施例2】
【0034】
次に、本発明の実施例2として、端子結線の切断をより容易化した構成について説明する。図6は、本発明の実施例2であるモータにおけるコイル端末結線の状態を示す説明図である。なお、以下の実施例では、実施例1と同様の部材、部分については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0035】
図6に示すように、本発明の実施例2のステータ31では、端子結線21の一部が、巻線機の金型に立設されたガイドピン32に掛け回され、ステータ外に引き回されている。このガイドピン32に掛け回されている部分は、共通結線と各相結線の境目の部分であり、図6のA〜C部(CUT(A)〜CUT(C))にて端子結線21を切断することにより、共通結線Nと各相結線Lu,Lv,Lwを分離することができる。つまり、ステータ31では、図3のA〜C部に相当する部分が、ガイドピン32に掛け回されて外に引き回されている。このように、切断部分をステータ外に引き回すことにより、図3のようにステータ内にて端子結線21を切断する場合に比して、切断作業が容易であり、結線作業の工数削減が図られる。また、切断作業の際に、他の線を切ってしまうような切断ミスも減らすことができ、不良品の発生を抑え、製品信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0036】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、本発明は、ステータの一端側に各スロット巻線の端子が2本(始線と終線)配されているモータであれば、コア形状を問わず適用できる。従って、前述の実施例では、分割コア型のステータを用いたブラシレスモータに本発明を適用した例を示したが、一体型のコアを使用するタイプのモータにも本発明は適用可能である。また、前述の実施例では、ガイドポール22を合成樹脂製である旨説明したが、ガイドポール22には、端子結線21を掛け回す際にテンションが加わるため、その補強用に、ポール内に金属ピンをインサートしても良い。さらに、前述の実施例では、3相のブラシレスモータに本発明を適用した例を示したが、これに限定されず、本発明は、複数相からなるブラシレスモータに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ブラシレスモータ
2 ステータ
3 ロータ
4 ステータコア
5 界磁コイル
5a,5b 端部
6 インシュレータ
7 分割コア
8 接続端子(第1接続端子)
8a〜8i 接続端子
9 接続端子(第2接続端子)
9u,9v,9w,9a〜9f 接続端子
10 外部接続突起
11 回路基板
12 モータケース
13 ケースカバー
14 エンドブラケット
15 シャフト
16 ボールベアリング
17 オイルシール
18 ロータコア
19 マグネット
20 コネクタ
21 端子結線
22 ガイドポール(ガイド部材)
23 コイル掛止部
23a 返し部
24 コイル掛止片
25 接続端子本体
26 コイル収容接続部
31 ステータ
32 ガイドピン
50 バスバーユニット
51 相別バスバー
52 中点リングバスバー
53 バスバーボディ
N 共通結線(第1結線)
Lu U相結線(第2結線)
Lv V相結線(第2結線)
Lw W相結線(第2結線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7