(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、複数の操作対象部位を有し、夫々の操作対象部位毎に様々な位置に操作端が設けられている大型の生産設備を、無線端末を介して操作する設備操作システムについて説明する。
図1は、本実施形態に係る設備操作システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る設備操作システムは、複数の無線操作端末100、複数のアクセスポイント200、制御用ネットワーク300、操作用画面301、データベース302、制御用コントローラ400及び制御対象である生産設備500を含む。
【0014】
無線操作端末100は、スマートフォンやPDA(Personal Digital Assistant)、タブレット端末等の可搬型情報処理端末であり、生産設備500を操作するためのGUI(Graphical User Interface)を表示することによって生産設備500の操作端として機能する。
【0015】
無線操作端末100は、無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)等の無線通信インタフェースを介して複数のアクセスポイント200のいずれかと通信することにより、GUIを介して入力された操作の内容を操作情報である操作コマンドとして送信する。このため、本実施形態に係る設備操作システムにおいては、固定式の操作端である操作用画面301の位置以外であっても、無線操作端末100を介して生産設備500を操作することが可能である。
【0016】
アクセスポイント200は、上述したように、無線LANやBluetooth(登録商標)等の無線通信インタフェースのアクセスポイントである。アクセスポイント200は、生産設備500周辺の各所に設置され、近傍の無線操作端末100と無線通信を行う。アクセスポイント200は、設備操作システムの稼働範囲を複数の領域に分割した夫々のエリア毎に設けられている。
【0017】
これにより、夫々のアクセスポイント200を介して送信された操作コマンドは、生産設備500の操作対象部位のうち夫々のエリアに含まれる操作対象部位に対してのみ機能する。これが、本実施形態に係る要旨の1つである。これを実現するため、無線操作端末100は、ユーザの操作に応じて操作コマンドを送信する際、自身が属しているエリアが操作コマンドの送信先と対応しているか否かを判断する機能を有する。
【0018】
図2は、本実施形態に係る設備操作システムにおけるエリア分割の概念を示す図である。
図2に示すように、夫々のアクセスポイント200は夫々のエリアに対応して配置されている。そして、夫々のエリアに対応するアクセスポイント200と無線通信して操作コマンドを送信する無線操作端末100は、夫々のエリアに対応する生産設備の操作対象部位に対して操作コマンドを送信することができる。
【0019】
制御用ネットワーク300は、設備操作システムにおいて各部を接続する有線のネットワークであり、アクセスポイント200、操作用画面301、データベース302及び制御用コントローラ400を相互に接続する。制御用ネットワーク300としては、例えばEthernet(登録商標)、Devicenet及びProfibus(登録商標)等が用いられる。
【0020】
操作用画面301は、制御用ネットワーク300を介して制御用コントローラ400に接続された操作端であり、生産設備500に対して予め定められた位置に固定されて配置されている。操作用画面301は、従来から用いられている生産設備500の操作用ユーザインタフェースであり、従来、ユーザは操作用画面301が配置された位置においてのみ生産設備500を操作することが可能であった。
【0021】
データベース302は、本実施形態に係る設備操作システムにおいて、上述したようなエリア毎の操作対象部位の絞りこみを実現するために必要な情報が記憶されている。制御用コントローラ400は、無線操作端末100及び操作用画面301から送信される操作コマンドに基づいて生産設備500を制御する制御用情報処理装置である。また、制御用コントローラ400は、無線操作端末100から送信された操作コマンドに基づいて生産設備500を制御する場合、無線操作端末100が属しているエリアに応じて、操作コマンドの有効性を判断する。
【0022】
次に、本実施形態に係る制御用コントローラ400の機能構成について説明する。
図3に示すように、本実施形態に係る制御用コントローラ400は、設備制御部401、操作可否判断部402、無線端末正常監視部403、コマンド受信部404、表示情報送信部405及びネットワークI/F406を含む。
【0023】
設備制御部401は、制御用コントローラ400において、無線操作端末100から送信された操作コマンドに基づいて生産設備500を制御するための制御信号を出力する。また、設備制御部401は、操作コマンドの送信元である無線操作端末100が属するエリアに基づく操作可否の判断結果を適用し、制御信号出力の絞り込みを実行する。
【0024】
操作可否判断部402は、上述した設備制御部401による制御信号出力の絞り込みを実現するために、操作コマンドの送信元である無線操作端末100が属しているエリアと操作コマンドによる操作対象部位とが対応しているか否かを判断する。無線端末正常監視部403は、無線操作端末100と定的に定期的に通信することにより、無線操作端末100が正常に動作しているか否かを定期的に確認する。また、無線端末正常監視部403は、無線操作端末100の動作状態の確認において、無線端末100が属しているエリアの情報も取得する。
【0025】
コマンド受信部404は、無線操作端末100からネットワークを介して操作コマンドを受信する。コマンド受信部404は、受信した操作コマンドを設備制御部401に入力する。表示情報送信部405は、設備制御部401による生産設備500の制御状態に応じて、無線操作端末100に表示されるGUIを更新するための情報をネットワークを介して送信する。ネットワークI/F406は、制御用コントローラ400が制御用ネットワーク300を介して通信するためのインタフェースである。
【0026】
次に、無線操作端末100の機能構成について説明する。
図4に示すように、本実施形態に係る無線操作端末100は、端末制御部101、操作可否判断部102、端末機能正常監視部103、コマンド送信部104、表示情報受信部105、ネットワークI/F106及びエリア認識部107を含む。
【0027】
端末制御部101は、無線操作端末100において、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部に情報を表示させると共に、タッチパネル等の操作部に対するユーザによる操作を取得し、無線操作端末100全体の動作を制御する。無線操作端末100の表示部には、ユーザによって選択された生産設備500の操作対象部位に対応するGUIが表示される。これにより、ユーザは、無線操作端末100を生産設備500の操作端末として用いることが可能となる。
【0028】
また、端末制御部101は、ユーザによる操作に基づき、ネットワークを介して操作コマンドを送信する機能を有する。その際、端末制御部101は、自身の無線操作端末100が属するエリアに基づく操作可否の判断結果を適用し、操作コマンド送信の絞り込みを実行する。操作可否判断部102は、上述した端末制御部101による制御信号出力の絞り込みを実現するために、自身の無線操作端末100が属しているエリアと操作コマンドを送信する操作対象部位とが対応しているか否かを判断する。即ち、端末制御部101及び操作可否判断部102が、連動して操作情報制限部として機能する。
【0029】
端末機能正常監視部103は、端末制御部101の状態を定期的に確認することにより、無線操作端末100が正常に動作していることを確認して定期的に制御用コントローラ400に送信する。また、端末機能正常監視部103は、エリア認識部107によって認識されたエリアの情報を制御用コントローラ400に送信する。即ち、端末機能正常監視部103が、エリア通知部としても機能する。
【0030】
コマンド送信部104は、端末制御部101の制御に従い、操作コマンドをネットワークを介して制御用コントローラ400に送信する。表示情報受信部105は、無線操作端末100の表示部に表示される生産設備500のGUIのうち、生産設備500の状態に応じて変化する部分を表示するための情報、または生産設備500の状態を表示するための全ての情報、または現在表示しているGUIのための生産設備500の状態情報(以降、表示更新情報とする)を、ネットワークを介して制御用コントローラ400から受信する。表示情報受信部105は、受信した表示更新情報を端末制御部101に入力する。このように取得した表示更新情報に基づき、端末制御部101は、無線端末100の表示部に表示されるGUIを更新する。
【0031】
ネットワークI/F106は、無線操作端末100がアクセスポイント200と通信するための無線通信インタフェースである。また、ネットワークI/F106は、アクセスポイント200との無線通信を介して、制御用ネットワーク300に接続された機器と通信可能に構成される。これにより、アクセスポイント200との間で無線通信可能な無線操作端末100は、制御用ネットワーク300に接続された機器とも通信可能となる。
【0032】
ネットワークI/F106は、電波を受信した複数のアクセスポイント200のうち、もっとも電波の強いアクセスポイント200に接続する。尚、ネットワークI/F106は、アクセスポイント200との無線通信を介して、制御用ネットワーク300に接続する。そのため、ネットワークI/F106は、アクセスポイント200に接続すると、アクセスポイント200からIP(Internet Protocol)アドレス等の制御用ネットワーク300におけるアドレス情報を取得する。
【0033】
エリア認識部107は、無線操作端末100が属するエリアを認識する。本実施形態に係るエリア認識部107は、無線通信インタフェースであるネットワークI/F106が認識する複数のアクセスポイント200の電波強度に基づき、自身の無線操作端末100が属するエリアを認識する。
【0034】
次に、本実施形態に係るデータベース302に記憶されている情報の例について説明する。
図5は、データベース302に格納されている情報のうち、操作対象部位とエリアとの対応関係を示すエリア対応情報を示す図である。
図5に示すように、エリア対応情報においては、
図2に示すような夫々のエリアを識別するための“エリア”の情報と、夫々のエリアに属する無線操作端末100が操作可能な生産設備500の操作対象部位を示す“操作可能部位”の情報とが関連付けられている。
図5の例においては、“エリア001”に属する無線操作端末100が操作可能な生産設備500の操作対象部位は、“部位001”、“部位002”である。
【0035】
制御用コントローラ400の操作可否判断部402は、
図5に示すエリア対応情報に基づき、操作コマンドの送信元である無線操作端末100が属しているエリアと操作コマンドによる操作対象部位とが対応しているか否かを判断する。また、無線操作端末100の操作可否判断部102は、
図5に示すエリア対応情報に基づき、自身の無線操作端末100が属しているエリアと操作コマンドを送信する操作対象部位とが対応しているか否かを判断する。
【0036】
図6は、データベース302に格納されている情報のうち、無線操作端末100のエリア認識部107が無線操作端末100が属するエリアを認識するために用いるエリア認識情報を示す図である。また、
図7は、データベース302に格納されている情報のうち、無線操作端末100のエリア認識部107が無線操作端末100が属するエリアを認識して確定するために用いるエリア認識閾値情報を示す図である。
【0037】
図6に示すように、エリア認識情報は、
図2に示すような夫々のエリアを識別するための“エリア”の情報と、夫々のエリアにおいて無線操作端末100のネットワークI/F106が電波を検知可能なアクセスポイント200を識別する“アクセスポイント”の情報とが関連付けられている。例えば、
図2において“エリア1”に属している無線操作端末100は、エリア1に対応するアクセスポイント200の電波の他、エリア2に対応するアクセスポイント200の電波も検知し得る。
【0038】
従って、
図6に示すように、エリア認識情報においては、1つのエリアに複数のアクセスポイントが関連付けられている。エリア認識部107は、電波が検知されたアクセスポイント200の識別情報をネットワークI/F106から取得し、
図6に示すように情報を参照することにより、自身が属しているエリアを認識する。
【0039】
エリア認識閾値情報は、上述したようにエリア認識情報に基づいて認識されたエリアを、各アクセスポイントの電波強度に基づいて確定するための情報であり、
図7に示すように、エリア認識閾値情報は、
図2に示すような夫々のエリアを識別するための“エリア”の情報と、夫々のエリアにおいて検知されるべきアクセスポイントの電波の閾値を示す“電波強度閾値”の情報とが関連付けられている。
【0040】
エリア認識部107は、検知された電波の強度を夫々のアクセスポイント毎にネットワークI/F106から取得し、エリア認識情報に基づいて認識されたエリアに関連付けられている電波強度閾値が満たされるか否かを確認することによって、認識されたエリアを確定する。
【0041】
次に、本実施形態に係る無線操作端末100が、ユーザの操作に応じて操作コマンドを送信する際の動作について
図8のフローチャートを参照して説明する。
図8に示すように、無線操作端末100の端末制御部101は、まず、無線操作端末100のタッチパネルなどの操作部から操作を受け付ける(S801)。この際、端末制御部101は、操作内容の情報に加えて、生産設備500の各部のうち操作を行う対象の部位を示す情報を取得する。
【0042】
操作を受け付けた端末制御部101は、次に、エリア認識部107からエリア情報を取得する(S802)。エリア認識部107によるエリア情報の取得処理については後述する。エリア認識部107からエリア情報を取得すると、端末制御部101は、操作可否判断部102に対して、操作可否の判断を指示する(S803)。この際、端末制御部101は、操作可否判断部102に対してエリア認識部107から取得したエリア情報及びS801において取得した操作対象部位の情報を入力する。
【0043】
端末制御部101からの指示及び端末制御部101から取得した情報に基づき、操作可否判断部102は、
図5において説明したエリア対応情報を参照して、ユーザによる操作の可否を判断する。操作可否判断部102は、
図5に示す情報のうち“エリア”の情報を参照し、端末制御部101から取得したエリア情報に対応するエリアのレコードを抽出する。そして、抽出したレコードの“操作可能部位”を参照し、端末制御部101から取得した操作対象部位の情報が“操作可能部位”に含まれていれば、操作可能であると判断すると共に、含まれていなければ操作不可能であると判断する。操作可否判断部102は、判断結果の情報を端末制御部101に入力する。
【0044】
操作可否判断部102から操作可能の判断結果を取得した場合(S804/YES)、端末制御部101は、S801において取得した操作内容の情報及び操作対象部位を特定する情報を含む操作コマンドを、コマンド送信部104に送信させ(S805)、処理を終了する。ここで、送信される操作コマンドに含まれる情報の例を
図9に示す。
【0045】
図9に示すように、S805において送信される操作コマンドには、操作コマンドであることを示す“ヘッダ情報”、“操作内容”、送信元である無線操作端末100を識別する“送信元識別子”及び“操作対象部位”の情報が含まれる。ここで、“送信元識別子”としては、例えばIP(Internet Protocol)アドレスやMAC(Media Access Control)アドレス、または操作用端末個々に予め割り振られた番号やID、文字列等が用いられる。
【0046】
他方、操作可否判断部102から操作不可の判断結果を取得した場合(S804/NO)、端末制御部101は、操作コマンドの送信を禁止して操作をキャンセルし、無線操作端末100の表示部にアラートを表示させ(S806)、処理を終了する。
【0047】
このような処理により、無線操作端末100は、自身が属しているエリアに対応する操作部位に対してのみ操作コマンドを送信可能であるため、無線操作端末100の操作者であるユーザが視認していない部位に対する操作や、誤った対象に対する誤操作等を防止し、無線を介した操作であっても信頼性の高い操作を実現することが可能となる。
【0048】
次に、エリア認識部107によるエリア情報の取得動作について
図10のフローチャートを参照して説明する。
図10に示すように、エリア認識部107は、無線通信インタフェースであるネットワークI/F106の機能により、夫々のアクセスポイント200から受信している電波の強度を測定する(S1001)。
【0049】
夫々のアクセスポイント200から受信している電波の強度を取得すると、エリア認識部107は、電波が受信されているアクセスポイント200の組み合わせに基づき、
図6において説明したエリア認識情報を参照して、自身が属しているエリアを認識する(S1002)。そして、エリア認識部107は、認識エリアを決定すると、
図7において説明したエリア認識閾値情報を参照し、認識されたエリアを確定するために定められているアクセスポイントの電波強度が満たされているか否かを確認する(S1003)。
【0050】
S1003の判断の結果、電波強度が満たされていた場合(S1004/YES)、エリア認識部107は、S902において認識したエリアを確定し(S1005)、処理を終了する。このようにして確定されたエリアが、例えば、
図8のS802において、端末制御部101の要求に応じて通知される。このように、本実施形態に係るエリア認識部107は、複数のアクセスポイントの電波に基づいてエリアを認識する。
【0051】
他方、S1003の判断の結果、電波強度が満たされていなかった場合(S1004/NO)、エリア認識部107は、S902において認識したエリアを破棄し、エリア認識不能であるとして、無線操作端末100の表示部にアラートを表示させる。この場合、例えば、
図8のS802において、端末制御部101からエリア情報が要求されたとしても、アラートが出力される。
【0052】
次に、制御用コントローラ400が無線操作端末100から操作コマンドを受信した場合の動作について、
図11のフローチャートを参照して説明する。
図11に示すように、設備制御部401は、コマンド受信部404を介して操作コマンドを受信すると(S1101)、操作可否判断部402に、操作可否の判断指示を行う(S1102)。
【0053】
S1102において、設備制御部401は、受信した操作コマンドの情報の他、無線端末正常監視部403が無線操作端末100と定期的に通信することにより取得している無線操作端末100のステータス情報を操作可否判断部402に入力する。
図12に、ステータス情報の例を示す。
【0054】
図12に示すように、ステータス情報には、ステータス情報であることを示す“ヘッダ情報”、無線操作端末100の状態を示す“状態情報”、無線操作端末100においてエリア認識部107が認識したエリアを示す“エリア情報”及び無線操作端末100を識別する“送信元識別子”が含まれる。
図12に示す“送信元識別子”は、
図9において説明した操作コマンドに含まれる送信元識別子と同種の情報が用いられる。即ち、操作コマンドの送信元識別子としてIPアドレスを用いる場合、ステータス情報の送信元識別子としてもIPアドレスが用いられる。
【0055】
S1102において、設備制御部401は、操作コマンドに含まれている“送信元識別子”と、ステータス情報に含まれている“送信元識別子”戸に基づき、同一の無線操作端末のステータス情報を無線端末正常監視部403から取得して、操作可否判断部402に入力する。
【0056】
操作可否判断部402は、操作可否の判断指示を受けると、操作コマンドに含まれている“操作対象部位”及びステータス情報に含まれている“エリア情報”に基づき、
図5において説明したエリア対応情報を参照して、ユーザによる操作の可否を判断する。操作可否判断部402は、
図5に示す情報のうち“エリア”の情報を参照し、ステータス情報に含まれる“エリア情報”に対応するエリアのレコードを抽出する。そして、抽出したレコードの“操作可能部位”を参照し、操作コマンドに含まれる“操作対象部位”が“操作可能部位”に含まれていれば、操作可能であると判断すると共に、含まれていなければ操作不可能であると判断する。操作可否判断部402は、判断結果の情報を設備制御部401に入力する。
【0057】
操作可否判断部402から操作可能の判断結果を取得した場合(S1103/YES)、設備制御部401は、S1101において取得した操作コマンドに基づき、操作対象部位に対して操作情報に従った操作制御を行う(S1104)。他方、操作可否判断部402から操作不可の判断結果を取得した場合(S1103/NO)、設備制御部401は、操作制御を行わずにエラー処理を行って(S1105)、処理を終了する。
【0058】
S1105において、設備制御部401は、例えば操作不可能であることを示すアラート通知を、ネットワークを介して無線操作端末100に対して送信する。これにより、操作コマンドを送信した無線操作端末100の操作者は、操作が禁止されたことを認識することができる。
【0059】
このように、本実施形態に係る設備操作システムにおいては、無線操作端末100による操作を可能とするため、操作用画面301が配置されている位置以外からでも生産設備500を操作することが可能となる。その上で、
図2に概念的に示すように、生産設備500を複数のエリア毎に分割し、夫々のエリアに属している無線操作端末100からの操作コマンドのみを有効に処理するため、無線通信を介することによる操作の信頼性の低下を回避することができる。
【0060】
更に、本実施形態に係る設備操作システムにおいては、
図8に示すように、無線操作端末100が操作コマンドを発信する際にエリアに基づいた送信可否の判断をすると共に、操作コマンドを受信した制御用コントローラ400が、操作コマンドの送信元である無線操作端末100が属しているエリアに基づいて制御可否の判断を行うため、信頼性の低下をより確実に回避することが可能である。
【0061】
以上、説明したように、本実施形態に係る設備操作システムにおいては、無線通信を介した機器操作における操作の信頼性を向上することができる。
【0062】
尚、上記実施形態においては、
図1、2に示すように、1つの生産設備500に含まれる夫々の操作対象部位を例としたが、工場内に配置されている複数の設備夫々を操作対象とし、設備夫々とエリアとを関連付けて操作可否を判断しても良い。
【0063】
また、上記実施形態においては、
図10において説明したように、ネットワークI/F106が電波を受信している複数のアクセスポイント200の電波強度に基づいてエリアを認識する場合を例として説明したが、GPS(Global Positioning System)等の測位システムを利用しても良い。この場合、エリア認識部107は、
図13に示すように、GPSによって即位される位置情報の範囲とエリアの識別情報とが関連付けられた情報に基づいてエリアを認識する。また、
図5において説明したエリア対応情報が、GPSによる測位結果の範囲を示す情報と“操作可能部位”とが関連付けられた情報であれば、GPSによる測位結果をそのままそう可否の判断に用いることが可能となる。
【0064】
また、無線操作端末100にカメラまたはRFID(Radio Frequency IDentification)などのタグリーダーを内蔵するこどて、コードや画像、タグによるエリアの認識を実現できる。
図14は、生産設備500の夫々の操作対象部位毎に、操作対象部位を示す情報が符号化された情報が添付された形態を示す図である。
図14の例においては、エリアを示す情報が符号化されたQRコード(登録商標)303が貼り付けられている。
【0065】
図14の例において、無線操作端末100の操作者は、無線操作端末100を介して生産設備500を操作する際、まず生産設備500に貼り付けられているQRコード(登録商標)303を無線操作端末100に搭載されているカメラによって読み取る。そして、エリア認識部107は、読み取られたQRコード(登録商標)303の画像を復号することにより、無線操作端末100が属しているエリアを認識する。
【0066】
図14の例の場合、無線操作端末100は、該当するエリアにおいてQRコード(登録商標)303を読み取らない限り、そのエリアを認識することはできないため、このような態様によっても、上記と同様の効果を得ることが可能である。このような態様の場合、
図1の例のようにアクセスポイントを複数に分けることなく、広範囲にアクセス範囲を提供可能な強度の強い電波を発信するアクセスポイント200が最低限1つあれば、上記と同様の効果を実現することができる。
【0067】
尚、生産設備500の対象部位毎に符号化して添付する情報は、上述したエリアを示す情報の他、生産設備500の操作対象部位を示す情報であっても良い。この場合、無線操作端末100及び制御用コンピュータ100は、認識したエリアと操作可能部位とを、
図5のような情報を用いて付き合わせることなく、QRコード(登録商標)やRFIDによって読み取られた情報に基づいて直接操作可否を判断することができる。
【0068】
また、上述したような符号化された情報を読み取ってエリアを認識する場合の他、生産設備500の操作対象部位や、工場内の場所を撮影することにより生成された画像情報に基づいて、無線操作端末100が属しているエリアを認識することも可能である。この場合、データベース302には、生産設備500の操作対象部位、工場内の夫々のエリア等を撮影した画像や、その画像から算出された特徴値と、
図5に示す“操作可能部位”とが関連付けられた情報が格納されている。
【0069】
そして、端末制御部101は、無線操作端末100に搭載されたカメラによって撮影されて生成された画像や、その画像から算出された特徴値に基づき、上述したデータベース302の情報を参照して操作可能部位を判断する。また、制御用コントローラ400においては、無線端末正常監視部403が、無線操作端末100の端末機能正常監視部103から、上述した画像や特徴値を受信し、データベース302の情報を参照して操作コマンドの有効性を判断する。このような態様によっても、上記と同様の効果を得ることが可能である。
【0070】
尚、無線通信の電波は、金属による反射や、水蒸気などの環境に影響されるため、電波強度の最も高いアクセスポイント200に接続されるという前提において、複数のアクセスポイント200が配置されている場合、1つのアクセスポイントの電波強度や、接続されたアクセスポイントのみに基づいて、その無線操作端末100が属しているエリアを正確に確定することは困難である。
【0071】
これに対して、上記実施形態においては、
図6、
図7及び
図10において説明したように、電波が検知された複数のアクセスポイントの組み合わせや、電波強度に対する閾値により属するエリアを判断するため、エリア認識情報及びエリア認識閾値情報の設定によって、属するエリアを正確に判断することが可能となる。
【0072】
但し、
図1、2において説明したように複数のアクセスポイントを用いる場合において、無線操作端末100があるエリアに属する場合に、そのエリアに設置されたアクセスポイント200に接続されることが保障される場合には、接続されたアクセスポイント200に基づいて無線操作端末100が属するエリアを判断することも可能である。
【0073】
この場合、エリア認識部107は、ネットワークI/F106から、接続されたアクセスポイント200を識別する情報を取得し、
図15に示すようなエリアとアクセスポイント200とが関連付けられた情報に基づいてエリアを認識する。この他、夫々アクセスポイント200ごとに、無線操作端末100に与えられるIPアドレスの範囲が設定されるため、エリア認識部107は、ネットワークI/F106がアクセスポイント200に接続した際に割り当てられたIPアドレスに基づいてエリアを認識することも可能である。
【0074】
この場合、制御用コントローラ400においては、上述したように、無線端末正常監視部403が取得したステータス情報に含まれる“エリア情報”に基づいて制御可否を判断する他、操作コマンドの送信元を示すIPアドレスに基づき、
図15に示すような情報を参照して無線操作端末100が属するエリアを判断することにより、制御可否を判断することも可能である。
【0075】
また、無線操作端末100においては、
図8において説明したような処理により操作コマンドを送信する際、ユーザが端末を操作することにより、端末にインストールされたアプリケーション・ソフトウェアの機能によってユーザによって指定された操作対象部位のGUIが表示される。この際、無線操作端末100の表示情報受信部105は、GUIにおいて生産設備500の最新の情報を表示するため、制御用コントローラ400の表示情報送信部406から指定された操作対象部位の状態に関する情報を受信する。これにより、端末制御部101は、操作対象部位のGUIにおいて、ユーザによって指定された操作対象部位の最新の情報を表示させる。
【0076】
ここで、端末制御部101は、ユーザによって指定された操作対象部位のGUIの表示の際に、エリア認識部107によって認識されているエリアに応じたGUI表示の可否判断結果に基づき、GUI表示を制限することができる。これにより、操作コマンドの送信可否の前段階において更に制限をかけることができ、誤操作回避の信頼性を更に向上することができる。
【0077】
図16は、このように端末制御部101がユーザの操作に応じて操作対象部位のGUIを表示する際の動作を示すフローチャートである。
図16に示すように、端末制御部101は、ユーザの操作により操作対象部位の指定を受けると(1601)、エリア認識部107からエリア情報を取得し(S1602)、操作可否判断部102に対して操作可否の判断指示を行う(S1603)。
【0078】
操作可否判断部102は、
図8において説明した処理と同様の処理により、指定された操作対象部位に対する操作の可否を判断し、その判断結果を端末制御部101に通知する。端末制御部101は、操作可能の判断結果を取得した場合(S1604/YES)、表示情報受信部105を介して制御用コントローラ400から情報を受信し、指定された操作対象部位のGUIを表示する(S1605)。
【0079】
他方、操作不可の判断結果を取得した場合(S1604/NO)、端末制御部101は、指定された操作対象部位のGUIの表示を禁止してアラート表示を行い(S1606)、処理を終了する。このようにGUI表示の段階で判断を行う場合、
図8において説明したような操作コマンドの送信可否の判断は省略しても良い。この場合、GUI表示の可否判断を行う端末制御部101及び操作可否判断部102が、操作情報制限部として機能する。
【0080】
図16のように、ユーザが操作対象部位を選択した後にエリアを認識してGUIの表示可否を判断する態様の他、無線操作端末100においてエリア認識部107がエリアを認識すると、その認識結果に従って端末制御部101が自動的に判定した操作対象部位のGUIを表示するようにしても良い。また、GUIを表示させるための操作対象部位の選択肢を、エリアの認識結果に応じて予め絞り込んでも良い。このように、エリアの認識結果に応じて表示可能なGUIを絞り込むことにより、上述した効果を得ることが可能となる。
【0081】
また、上記実施形態においては、ユーザの操作によって操作対象部位のGUIが表示される場合を例として説明したが、GUIの表示の際にユーザのIDによる認証処理を行い、権限を有する者のみに操作を許可するような構成も可能である。この場合、無線操作端末100は、ユーザを識別するIDと
図5に示す“操作可能部位”とが関連付けられた情報に従い、ユーザによって指定された操作対象部位のGUIの表示可否を判断する。
【0082】
尚、ユーザIDの認証機能としては、指紋や声、顔、虹彩などの照合による生体認証でも良いし、RFIDやQRコード(登録商標)、バーコードなどのタグの照合による認証でも良い。またはパスワード入力による認証でも良い。
【0083】
まあ、上記実施形態においては、無線操作端末100がアクセスポイント200との間で無線通信を行うことを前提として説明した。これに限らず、可搬型の情報処理装置を操作端末として用いる場合であれば、同様の課題が生じ得る。従って、無線操作端末100とアクセスポイント200との間の通信形態に限らず、可搬型の操作端末を、生産設備500の夫々の操作対象部位毎に設けられたアクセスポイントに有線で接続するような場合であっても、上記実施形態を適用することにより、同様の効果を得ることが可能である。
【0084】
このような場合、操作端末が属しているエリアの認識態様としては、有線で接続されたアクセスポイントに基づいて判断する方法、GPS等の測位システムによって判断する方法、上述したコードやRFIDの読み取り又は画像によって判断する方法等を用いることが可能である。
【0085】
尚、
図3、4に示すような制御用コントローラ400、無線操作端末100の機能は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって実現される。
図17を参照して、本実施形態に係る制御用コントローラ400、無線操作端末100のハードウェア構成について説明する。
【0086】
図17は、
図3、4において説明した本実施形態に係る制御用コントローラ400、無線操作端末100の機能構成を実現するためのハードウェア構成を示す図である。
図7に示すように、本実施形態に係る制御用コントローラ400、無線操作端末100は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等と同様の情報処理機能の構成を含む。即ち、本実施形態に係る制御用コントローラ400、無線操作端末100は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、HDD(Hard Disk Drive)40及びI/F50がバス60を介して接続されている。
【0087】
CPU10は演算手段であり、制御用コントローラ400、無線操作端末100全体の動作を制御する。またCPU10は、バス60を介して複数実装されていても良い。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD40は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納される。尚、HDD40は、読み書き可能な不揮発性メモリ、揮発性のRAM、電源供給された不揮発性のRAM等、他の記憶媒体であっても良い。あるいは、電源投入または起動時、初期立上げ時に、他の計算機、記憶媒体またはROM30から、OSや各種プログラムやデータをRAM20へ読み込む方式とし、HDD40は実装しない構成でも良い。
【0088】
I/F50は、バス60と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。本実施形態に係る無線操作端末100においては、生産設備500の夫々の部位のGUIを表示するための表示部や、ユーザが操作を行うためのタッチパネル等の操作部等のユーザインタフェースデバイスが、I/F50を介して接続されている。また、ネットワークI/F106、406は、I/F105によって実現される。
【0089】
このようなハードウェア構成において、ROM30やHDD40若しくは図示しない光学ディスク等の記憶媒体に格納されたプログラムがRAM20に読み出され、あるいは、RAM20内に予めOSや各種プログラムが記憶され、CPU10がそれらのプログラムに従って演算を行うことによりソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る伝送制御用コントローラ400、無線操作端末100の機能を実現する機能ブロックが構成される。また、制御用コントローラ400は、
図17のようなハードウェア構成の計算機を、ネットワーク、その他インターフェース、またはバスを介して接続した複数の計算機の集合体であっても良い。