特許第6006985号(P6006985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006985
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】吐出器
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20160929BHJP
   B65D 47/20 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   B65D83/00 G
   B65D47/20 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-123962(P2012-123962)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-249081(P2013-249081A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2014年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝之
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−062752(JP,U)
【文献】 特開平08−268456(JP,A)
【文献】 実開平01−002756(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体の口部に装着される装着筒と、
前記装着筒内に着脱自在に嵌合されると共に、内部と前記容器本体内とを連通可能な吸込口が形成された充填筒と、
前記充填筒内に液密状態で上下摺動自在に嵌合されたプランジャと、
前記プランジャを前記充填筒に対して上方に付勢する付勢部材と、を備え、
前記充填筒が、前記装着筒内に、前記装着筒から上方に突出した状態で、下降移動自在に装着され、
前記プランジャが、径方向に弾性変形自在に形成された係合片部を有し、
前記充填筒のうち前記装着筒から上方に突出した部分には、前記係合片部が前記充填筒における径方向内側から外側に向けて挿通されて係合する係合窓部が形成されており、
前記係合片部が、前記充填筒の押し込みにしたがって前記装着筒の上端縁に当接することによって径方向内側に変位可能であることを特徴とする吐出器。
【請求項2】
前記充填筒の内周面には、前記プランジャが該充填筒に対して上昇端位置に到達したときに前記プランジャと係合してそれ以上の上昇を規制する規制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の吐出器。
【請求項3】
前記装着筒の下端が、前記充填筒の前記吸込口よりも下方に位置し、
前記装着筒のうち前記吸込口よりも下方に位置する部分には、弁座が形成され、
前記装着筒内には、前記弁座に離間自在に配置された弁体が着座され、
前記充填筒の下端部内の空間と、前記充填筒の下端部の外周面と前記装着筒の内周面との間の空間と、が前記吸込口を通して連通していることを特徴とする請求項1または2に記載の吐出器。
【請求項4】
前記充填筒のうち前記係合窓部の上方に位置する部分には、径方向の外側に向けて押下突部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の吐出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の吐出器として、従来、内容物が収容される容器体の口部に装着される鞘管と、鞘管に着脱自在に嵌合される摺動筒と、外側に摺動筒が液密状態で上下摺動自在に嵌合され、内部と容器体とを連通可能な口部が形成された口筒と、を備える吐出器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この吐出器では、摺動筒を口筒に対して下降移動させることによって摺動筒の内圧を負圧にし、口筒の口部及び口部の内部と摺動筒の内部とを連通させる通液孔を通して摺動筒内に内容物を吸い込む。そして、摺動筒内の内容物は、摺動筒及び口筒を鞘管から離脱させた後に、摺動筒を口筒に対して上昇移動させることによって、口筒の口部及び通液孔を通して口部から吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−72050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の吐出器では、内容物の吸い込みを行うために、摺動筒を口筒に対して手動で上下動させる必要がある。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、操作性を向上させた吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明の吐出器は、内容物が収容される容器本体の口部に装着される装着筒と、前記装着筒内に着脱自在に嵌合されると共に、内部と前記容器本体内とを連通可能な吸込口が形成された充填筒と、前記充填筒内に液密状態で上下摺動自在に嵌合されたプランジャと、前記プランジャを前記充填筒に対して上方に付勢する付勢部材と、を備え、前記充填筒が、前記装着筒内に、前記装着筒から上方に突出した状態で、下降移動自在に装着され、前記プランジャが、径方向に弾性変形自在に形成された係合片部を有し、前記充填筒のうち前記装着筒から上方に突出した部分には、前記係合片部が前記充填筒における径方向内側から外側に向けて挿通されて係合する係合窓部が形成されており、前記係合片部が、前記充填筒の押し込みにしたがって前記装着筒の上端縁に当接することによって径方向内側に変位可能であることを特徴とする。
【0008】
この発明では、充填筒を装着筒に対して押し下げると、充填筒の係合窓部の開口縁に係合片部が係合しているので、充填筒と共にプランジャが押し下げられる。この際、係合片部のうち係合窓部から充填筒の外側に突出している部分が、装着筒の上端縁によって径方向内側に押し込められ、係合片部と係合窓部の開口縁との係合が解除される。これにより、プランジャに付与されている付勢部材の上方付勢力によって、プランジャが充填筒に対して上昇し、充填筒の内容積が増大する。そして、充填筒の内圧が負圧になることによって、容器本体内の内容物が充填筒の吸込口を通って充填筒の内部に吸い込まれる。その後、充填筒をプランジャと共に装着筒から離脱させた後に、プランジャを充填筒の内部に向けて押し込み、充填筒内に吸い込まれた内容物を吸込口から吐出させる。
このように、充填筒を装着筒に対して押し下げるだけで、プランジャも充填筒と共に押し下げられ、係合片部と係合窓部の開口縁との係合が解除して充填筒の内部に内容物が吸い込まれるので、内容物を吸い込むためにプランジャを手動で上下動させる必要がなくなり、吐出器の操作性が向上する。
【0009】
また、本発明の吐出器では、前記充填筒の内周面には、前記プランジャが該充填筒に対して上昇端位置に到達したときに前記プランジャと係合してそれ以上の上昇を規制する規制部が設けられてもよい。
この場合では、係合片部の係合窓部の開口縁に対する係合が解除され、プランジャが付勢部材によって充填筒に対して上昇して上昇端位置に到達したときに、プランジャが規制部に係合してプランジャのそれ以上の上昇が規制されるので、プランジャの上昇移動量を制御することができ、充填筒内に定量の内容物を精度良く充填することができる。
【0010】
また、本発明の吐出器では、前記装着筒の下端が、前記充填筒の前記吸込口よりも下方に位置し、前記装着筒のうち前記吸込口よりも下方に位置する部分には、弁座が形成され、前記装着筒内には、前記弁座に離間自在に配置された弁体が着座され、前記充填筒の下端部内の空間と、前記充填筒の下端部の外周面と前記装着筒の内周面との間の空間と、が前記吸込口を通して連通してもよい。
この発明では、充填筒内の内容物を吐出した後で、この充填筒を装着筒内に嵌合して装着するときに、装着筒の内部のうち、弁体よりも上方で充填筒の下端部が位置する部分の内圧が過度に高くなることを抑制できる。これにより、充填筒の装着が容易になる。
【0011】
また、本発明の吐出器では、前記充填筒のうち前記係合窓部の上方に位置する部分には、径方向の外側に向けて押下突部が設けられてもよい。
この発明では、押下突部を下方に向けて押し下げることで充填筒及びプランジャが押し下げられるので、吐出器の操作性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかる吐出器によれば、充填筒を装着筒に対して押し下げることによって、プランジャが充填筒と共に装着筒内に押し込まれ、係合片部と係合窓部の開口縁との係合が解除し、プランジャが充填筒に対して上昇して充填筒の内部に内容物が吸い込まれるので、内容物を吸い込むためにプランジャを手動で上下動させる必要がなくなり、吐出器の操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における吐出器を示す軸方向断面図である。
図2図1の装着筒及び充填筒を示す部分拡大図である。
図3図1の吐出器の使用方法を説明する軸方向断面図である。
図4図1の吐出器の使用方法を説明する軸方向断面図である。
図5図4の部分拡大図である。
図6図1の吐出器の使用方法を説明する軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明における吐出器の一実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0015】
本実施形態における吐出器1は、図1に示すように、内容物が収容される容器本体2の口部3に装着される円筒状の装着筒11と、装着筒11内に着脱自在に嵌合される円筒状の充填筒12と、充填筒12内に液密状態で上下摺動自在に嵌合されたプランジャ13と、プランジャ13を充填筒12に対して上方に付勢する付勢部材14と、を備える。
容器本体2内に収容される内容物は、例えば液体石鹸や液体洗剤、液体シャンプー、液体リンス、液体トリートメントなど比較的粘性が高い液体であるが、これに限られない。
これら装着筒11及び充填筒12は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置する状態で配設されている。以下、この共通軸を中心軸Oと称し、中心軸Oに直交する方向を径方向とし、中心軸O回りの方向を周方向と称する。
【0016】
装着筒11は、図1に示すように、中央に円形の開口部が形成された平面視で円環状をなす天壁部21と、天壁部21の外周縁から下方に向けて延設された外筒部22と、天壁部21の内周縁から上下両方向に向けて延設された内筒部23と、を有する。これら外筒部22及び内筒部23は、中心軸Oと同軸に配設されている。
外筒部22の内周面には、容器本体2の口部3の外周面に形成された雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が形成されている。
【0017】
内筒部23は、上下方向に延在し、上側から順に連設された第1から第4案内筒部31〜34を有する。
第1案内筒部31の下端には、径方向内側に突出して第2案内筒部32の上端に接続されている第1環状接続部35が設けられている。また、第1案内筒部31の内周面には、図1及び図2に示すように、上下方向に延在する通気溝部31Aが第1案内筒部31の全長にわたって形成されている。
第2案内筒部32は、図1に示すように、内径及び外径が第1案内筒部31よりも小径の円筒状をなしており、第2案内筒部32の下部は、内径及び外径が下方に向かうにしたがって漸次縮径するテーパ状に形成されている。
【0018】
第3案内筒部33は、内径及び外径が第2案内筒部32よりも小径の円筒状をなしており、第3案内筒部33の下部は、内径及び外径が下方に向かうにしたがって漸次縮径するテーパ状に形成されている。第3案内筒部33のうちテーパ状に形成された下部には、径方向内側に向けて円環状の弁座部33Aが突設されている。
第4案内筒部34は、内径及び外径が第3案内筒部33よりも小径の円筒状をなしており、第4案内筒部34の外側には、下端開口部が容器本体2内の底部に位置するパイプ36の上端部が嵌合されている。
【0019】
また、第3及び第4案内筒部33、34内には、弁座部33Aに離間自在に配置された弁体37が着座されている。
弁体37は、第3案内筒部33内に配設される有底円筒状の上側部分38と、第4案内筒部34内に配設される円柱状の下側部分39と、を有する。下側部分39の下端部には、弁座部33Aに対して下方から係合可能な円環状の規制突出部39Aが径方向外側に向けて突設されている。規制突出部39Aは、第4案内筒部34の内周面に沿って上下方向に案内される。なお、規制突出部39Aは、第4案内筒部34の内周面に対して液密には摺接していない。
【0020】
充填筒12は、上下方向に延在し、上側から順に連設された第1から第3収容筒部41〜43を有する。
第1収容筒部41は、第1案内筒部31の内周面に沿って上下方向に摺動し、第1収容筒部41の下端には、第1案内筒部31と同様に、径方向内側に突出して第2収容筒部42の上端に接続される第2環状接続部44が設けられている。第2環状接続部44上には、付勢部材14の下端が載置されている。
第1収容筒部41の上端部は、図1及び図2に示すように、第1案内筒部31よりも上方に向けて突出しており、第1収容筒部41の上端には、径方向外側に向けて突出する押下突部45が全周にわたって形成されている。押下突部45は、平面視で円環状なす板状部材であり、充填筒12を装着筒11内に押し込む際に指などで押圧される。押下突部45の内縁部には、平面視で円環状をなす収容凹部45Aが形成されている。
【0021】
また、第1収容筒部41の上端部には、プランジャ13の後述する係合片部54Bを径方向内側から外側に向けて挿通させる複数(本実施形態では4つ)の第1係合窓部41Aが形成されている。第1係合窓部41Aは、プランジャ13の後述する突リブ部54の周方向位置に合わせて周方向に等間隔をあけて形成されている。
さらに、第1収容筒部41の上端部内には、規制筒部(規制部)46が嵌合されている。
【0022】
規制筒部46は、第1収容筒部41の上端部内に嵌合される円筒状の筒状部47と、筒状部47の上端から径方向外側に向けて全周にわたって突設された平面視で円環状のフランジ部48と、を有する。
規制筒部46の上端部には、筒状部47の上端部からフランジ部48の内周縁部にわたって、第1収容筒部41と同様に、後述する係合片部54Bを径方向内側から外側に向けて挿通させる複数(本実施形態では4つ)の第2係合窓部46Aが周方向に等間隔をあけて形成されている。また、筒状部47には、プランジャ13の後述する突リブ部54の上下動を案内する複数(本実施形態では4つ)の案内溝部47Aが形成されている。案内溝部47Aは、第2係合窓部46Aと同様に、プランジャ13の後述する突リブ部54の周方向位置に合わせて周方向に等間隔をあけて形成されており、第2係合窓部46Aの下端縁から筒状部47の下端縁まで延在する。
フランジ部48は、押下突部45の内縁部に形成された収容凹部45A内に収容されている。
【0023】
第2収容筒部42は、図1に示すように、第2案内筒部32と同様に、内径及び外径が第1収容筒部41よりも小径の円筒状をなしており、第2収容筒部42の下部は、内径及び外径が下方に向かうにしたがって漸次縮径するテーパ状に形成されている。
第3収容筒部43は、第3案内筒部33の内側を上下方向に摺動可能となっている。第3収容筒部43は、第3案内筒部33と同様に、内径及び外径が第2収容筒部42よりも小径の円筒状をなしており、第3収容筒部43の下端開口は、充填筒12の内部と容器本体2の内部とを連通可能な吸込口43Aとなっている。吸込口43Aは、第3案内筒部33の上端よりも上方に位置しており、これにより、弁座部33Aは、吸込口43Aよりも下方に位置している。そのため、充填筒12の下端部内の内側空間Aと、充填筒12の下端部の外周面と装着筒11の内周面との間の外側空間Bと、は吸込口43Aを通して連通している。なお、上記外側空間Bは、第1案内筒部31の通気溝部31Aを通して吐出器1の外部と連通している。
【0024】
プランジャ13は、充填筒12の内側にその上端側から挿入されており、充填筒12に対して相対的に上下方向に往復移動する。プランジャ13は、上下方向に延在するプランジャ本体部51と、プランジャ本体部51の上端部に設けられた操作部52と、プランジャ本体部51の下端部に装着された摺動部53と、を有する。
【0025】
プランジャ本体部51は、上下方向に延在する4つの板状の突リブ部54を横断面十字状に配設した形状をなしており、充填筒12の内側において上下方向に往復移動可能に挿入されている。
突リブ部54の上端部には、径方向外側から径方向内側に向けて窪む凹部54Aと、凹部54Aの上端縁から下方に向けて延設された係合片部54Bと、が形成されている。また、突リブ部54の下端部には、径方向外側から径方向内側に向けて窪む切欠部54Cが形成されている。
【0026】
係合片部54Bは、上端を支点として凹部54A内で径方向に弾性変形自在に形成されており、上下方向に間隔をあけて配設された2つの係合突出部55A、55Bを有する。
上側に配設されている係合突出部55Aは、第1及び第2係合窓部41A、46Aを通って押下突部45と係合している。
係合突出部55A、55Bは、周方向から見てほぼ三角形状をなしており、それぞれの上端縁は、径方向に沿って延在し、それぞれの下端縁は、径方向内側に向かうにしたがって漸次下方に向かうように傾斜している。
また、プランジャ本体部51の下端部には、摺動部53が装着されている。
【0027】
操作部52は、プランジャ本体部51の上端部から全周にわたって径方向外側に向けて突出しており、プランジャ13を充填筒12内に押し込む際に指などで押圧される。
摺動部53は、有底円筒状をなしており、平面視で円形の底板部56と、底板部56の中央から上方に向けて延設された円筒状の嵌合筒部57と、底板部56の外縁部から上方に向けて延設された円筒状の摺接筒部58と、を有する。
嵌合筒部57の内側には、プランジャ本体部51の下端部が嵌合されている。
摺接筒部58は、上端部同士が連結されて互いの間に付勢部材14を収容する二重筒状とされており、その上端部は、突リブ部54における切欠部54Cの上端縁部に当接している。また、摺接筒部58の下端部の外周面には、充填筒12の第1収容筒部41の内周面と全周にわたって液密に当接する円筒状の当接筒部58Aが配設されている。当接筒部58Aの上端部は、上側に向かうにしたがって漸次拡径すると共に、当接筒部58Aの下端部は、下側に向かうにしたがって漸次拡径している。
【0028】
付勢部材14は、コイルバネなどで形成されており、プランジャ13を充填筒12に対して上方付勢する。
【0029】
次に、以上のような構成の吐出器1を用いた内容物の吐出方法について説明する。
まず、充填筒12の押下突部45を装着筒11に対して下方に向けて押し込む。押下突部45を押し込むと、係合突出部55Aが第1及び第2係合窓部41A、46Aを通って押下突部45と係合しているため、プランジャ13は、充填筒12と共に装着筒11に対して下方に向けて押し込まれる。
【0030】
押下突部45を押し込んでいくと、係合突出部55Bの下端縁は、第1案内筒部31の上端に当接する。その後、係合突出部55Bは、下端縁が径方向内側に向かうにしたがって漸次下方に向かうように傾斜しているので、押下突部45の押し込みにしたがって径方向内側に変位する。同様に、係合突出部55Aは、第1案内筒部31の上端に当接した後、押下突部45の押し込みにしたがって第1案内筒部31の上端によって径方向内側に変位する。これにより、係合片部54Bは、径方向内側に弾性変形し、図3に示すように、係合突出部55Aと押下突部45との係合が解除される。
【0031】
このとき、第2収容筒部42のうちテーパ状をなす下部は、第2案内筒部32のうち同じくテーパ状をなす下部に当接し、第3収容筒部43の外周面は、第3案内筒部33の内周面に摺接する。そのため、上記内側空間Aと上記外側空間Bとの吸込口43Aを通した連通が遮断される。なお、上記外側空間Bは、充填筒12の押し下げに伴って収縮するが、第1案内筒部31の通気溝部31Aを通して吐出器1の外部と連通しているので、充填筒12の下降移動に対する空気抵抗が生じない。
【0032】
係合突出部55A押下突部45との係合が解除されると、図4に示すように、プランジャ13を上方に向けて付勢する付勢部材14の上方付勢力によって、プランジャ13は、充填筒12に対して上方に摺動して充填筒12から引き上げられる。付勢部材14によるプランジャ13の上昇移動は、図5に示すように、当接筒部58Aの上端が規制筒部46の下端に対して下方から係合するので、プランジャ13の上昇端位置で規制される。
プランジャ13を充填筒12に対して引き上げると、充填筒12内が負圧化し、弁体37は、上方に移動して弁座部33Aから離間する。なお、弁体37は、規制突出部39Aが第3案内筒部33の第1係合突出部55Aに対して下方から係合することによってそれ以上の上昇移動が規制される。
【0033】
容器本体2内の内容物は、規制突出部39Aの外周縁と第4案内筒部34の外周面との間の間隙を通り、第3案内筒部33の内部に流入し、吸込口43Aを通って充填筒12の内部に吸い込まれる。このとき、第3収容筒部43の外周面が第3案内筒部33の内周面に摺接しているため、内容物は、上記外側空間Bに流入しない。
充填筒12内に内容物を充填した後、押下突部45を引き上げることによって充填筒12をプランジャ13と共に装着筒11から引き抜く。なお、上述のように、内容物は、比較的粘性が高い液体であるため、充填筒12をプランジャ13と共に引き抜いても、吸込口43Aから漏れ出ない。充填筒12を装着筒11から引き抜いた後、弁体37は、自重によって弁座部33Aに着座する。
充填筒12をプランジャ13と共に引き抜いた後、プランジャ13を充填筒12の内部に押し込むことにより、吸込口43Aから内容物を吐出させる。
【0034】
プランジャ13を充填筒12の内部に押し込んでいくと、係合突出部55Bは、下端縁が第1収容筒部41の押下突部45の内周縁に当接して案内されるため、径方向内側に向けて変位する。同様に、係合突出部55Aは、プランジャ13の押し込みにしたがって径方向内側に向けて変位する。これにより、係合片部54Bは、径方向内側に弾性変形し、係合突出部55A、55Bは、押下突部45の内周縁を乗り越える。係合突出部55A、55Bが押下突部45を乗り越えると、係合片部54Bが径方向外側に復元変形し、係合突出部55A、55Bは、図6に示すように、第1及び第2係合窓部41A、46Aに挿通され、係合突出部55Aは、押下突部45に係合する。
【0035】
このとき、突リブ部54が規制筒部46の案内溝部47Aによって案内されており、プランジャ13が充填筒12に対して周方向で位置決めされているので、プランジャ13を押し込む際にプランジャ13が充填筒12に対して回転することが抑制される。そのため、係合片部54Bは、第1及び第2係合窓部41A、46Aに向けて安定して案内される。
【0036】
プランジャ13を充填筒12に係合させた後、充填筒12を装着筒11内に装着する。充填筒12を装着筒11内に嵌合する際、内側空間Aが充填筒12を装着筒11に対して押し込むにしたがって収縮する。しかし、装着筒11の内部のうち弁体37よりも上方であって充填筒12の下端部が位置する空間の内圧が過度に高くならない。特に、上記内側空間Aと上記外側空間Bと吸込口43Aを通して連通しているので、充填筒12の下降移動に対する空気抵抗が生じない。このようにして、図1に示すように、プランジャ13及び充填筒12を装着筒11内に装着する。
以上のようにして、吐出器1内の内容液を吐出する。
【0037】
以上のような構成の吐出器1によれば、充填筒12を装着筒11内に押し込むだけで、プランジャ13も押し込まれて係合片部54Bと押下突部45との係合が解除され、そして、プランジャ13が充填筒12に対して上昇して充填筒12の内部に内容物が吸い込まれるので、内容物を吸い込むためにプランジャ13を手動で上下動させる必要がなくなり、吐出器1の操作性が向上する。
また、付勢部材14によるプランジャ13の上昇が当接筒部58Aの上端と規制筒部46の下端との係合によって規制され、充填筒12に対するプランジャ13の上昇移動量が一定となるように制御されるので、充填筒12内に定量の内容物を精度良く充填することができる。
さらに、上記内側空間Aと上記外側空間Bとが吸込口43Aを通して連通しているので、充填筒12をプランジャ13と共に装着筒11内に嵌合して装着するときに、装着筒11の内部のうち弁体37よりも上方であって充填筒12の下端部が位置する空間の内圧が過度に高くなることを抑制できる。特に、外側空間Bが第1案内筒部31の通気溝部31Aを通して吐出器1の外部と連通しているので、充填筒12の押し下げに対する空気抵抗が発生することを防止できる。このため、充填筒12の装着筒11への装着が容易になる。
そして、押下突部45を下方に押し下げることで充填筒12及びプランジャ13を装着筒11に対して押し下げられるので、吐出器1の操作性がさらに向上する。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、規制部は、第1収容筒部内に嵌合される規制筒部によって構成しているが、上昇端位置に到達しているプランジャのそれ以上の上昇を規制できれば、例えば充填筒と一体に構成されるなど、他の構成であってもよい。また、規制部を設けなくてもよい。
弁座が装着筒に形成されると共に弁体が装着筒内に配設されているが、弁座及び弁体を設けなくてもよい。
通気溝部は、第1案内筒部の内周面に形成されているが、第1収容筒部の外周面に形成されていてもよく、通気溝部が形成されていなくてもよい。通気溝部が形成されていなくても、第2及び第3収容筒部の内側の空間がこれら第2及び第3収容筒部の外周面と第1案内筒部の下端部及び第2案内筒部の外周面との間の空間と吸込口を通して連通することで、充填筒を装着筒に対して装着する際に第2及び第3収容筒部の内側の空間の内圧が過度に高まることを防止できる。また、第2及び第3収容筒部の内側の空間は、これら第2及び第3収容筒部の外周面と第1案内筒部の下端部及び第2案内筒部の外周面との間の空間と吸込口を通しているが、例えば第3収容筒部の下端部が第3案内筒部の内周面に当接する構成など、吸込口を通して連通しない構成であってもよい
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明によれば、操作性を向上させた吐出器に関して、産業上の利用可能性が認められる。
【符号の説明】
【0040】
1 吐出器、2 容器本体、3 口部、11 装着筒、12 充填筒、13 プランジャ、14 付勢部材、33A 弁座部、37 弁体、41A 第1係合窓部(係合窓部)、43A 吸込口、45 押下突部、46 規制筒部(規制部)、46A 第2係合窓部(係合窓部)、54B 係合片部、55A、55B 係合突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6