特許第6006987号(P6006987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6006987
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】インペラ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/22 20060101AFI20160929BHJP
【FI】
   F04D29/22 A
   F04D29/22 H
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-125356(P2012-125356)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-249778(P2013-249778A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】後藤 透
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】飯見 一真
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利造
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−303740(JP,A)
【文献】 特開2010−236495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の裏シュラウド、及び、前記裏シュラウドの一方の主面に一体に形成された複数の羽根を具備するインペラ本体と、
その中心に液体を吸い込む開口を有し、前記インペラ本体を覆うインペラカバーと、
前記羽根の前記インペラカバーと対向する端面に設けられた係合部と、
前記インペラカバーに前記係合部と対向して設けられ、前記羽根を挿入可能、且つ、前記係合部と係合可能に形成され、前記係合部と係合し、且つ、前記係合部とともに溶着部を構成する被係合部と、
を備え
前記係合部は、前記羽根の前記端面に前記羽根の延設方向に沿って形成された溝部である第1係合部、前記羽根の延設方向に沿って前記羽根の前記端面の前記裏シュラウドの中心側に位置する端部に形成され、前記第1係合部よりも深く構成された溝部である第2係合部、及び、前記羽根の前記端面から突出して複数形成された突起である第3係合部を有し、
前記被係合部は、前記羽根を挿入可能に形成され、前記羽根の側面と所定の隙間を形成可能な幅に形成された案内部、前記案内部に設けられ、前記羽根の延設方向に沿って形成された前記第1係合部と係合する突起である第1被係合部、前記羽根の延設方向に沿って形成された前記第2係合部よりも幅が小さく形成された突起である前記第2係合部と嵌合する第2被係合部、及び、前記第3係合部と係合する開口である第3被係合部を有することを特徴とするインペラ。
【請求項2】
前記第1係合部は、その幅が前記第1被係合部の幅よりも大きく形成されるとともに、その容積が前記第1被係合部の体積よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインペラ。
【請求項3】
前記所定の隙間は、前記係合部及び前記被係合部の溶着時に、溶融した前記第1被係合部のうち、前記第1係合部から移動した前記第1被係合部を配置可能な容積に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のインペラ。
【請求項4】
前記第2係合部の容積は、前記第2被係合部の体積よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインペラ。
【請求項5】
前記第2係合部は、その稜部が曲面状に形成され、
前記第2被係合部は、その稜部が前記第2係合部の前記稜部と嵌合可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインペラ。
【請求項6】
前記第3係合部は、前記羽根の前記端面に設けられた円柱状の突起であり、
前記第3被係合部は、前記第3係合部を挿入可能な円筒状の開口であることを特徴とする請求項2に記載のインペラ。
【請求項7】
前記第3被係合部は、前記インペラカバーに設けられ、前記第3係合部の外径よりもその内径が大径に形成されるとともに、前記第3係合部の体積よりもその容積が小さく形成された第1開口部、及び、前記第1開口部と連続して形成され、前記第1開口部よりもその内径が大径に形成される第2開口部を具備することを特徴とする請求項6に記載のインペラ。
【請求項8】
前記所定の隙間は、前記係合部及び前記被係合部の溶着時に、前記溶融した前記第1被係合部、前記第2被係合部及び前記第3係合部のうち、前記第1係合部、前記第2係合部及び前記第3被係合部から移動した前記第1被係合部、前記第2被係合部及び前記第3係合部を配置可能な容積に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のインペラ。
【請求項9】
前記第1係合部、前記第2係合部及び前記第3係合部は、前記羽根の延設方向の中心上に設けられ、
前記第1被係合部、前記第2被係合部及び前記第3被係合部は、前記案内部の延設方向の中心上に設けられることを特徴とする請求項1に記載のインペラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに用いられるインペラに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、その二次側に水等の液体を供給するポンプに用いられるインペラとして、周方向に沿って複数枚配置されるとともに、軸心線に対して傾斜を有する羽根を、軸心方向に円板状の一対のシュラウドで挟み込む形状に一体成型されたものが知られている。
【0003】
このようなインペラは、その製造方法として、羽根形状及びシュラウド形状の型として、主型及び中子を用いて一体成型する技術が知られている。このような一体成型によりインペラを形成すると、羽根が軸心方向に対して傾斜している部分があり、さらに羽根とシュラウドとが一体に形成されているため、中子は、軸心線方向には取り外せない。また、インペラは一体成型されている形状であるため、外周方向からであっても中子は取り出し難い。
【0004】
このような問題を解決するために、中子を水溶性の樹脂材により形成し、インペラ成型後に中子を水溶させることで、インペラから中子を除去する技術が知られている。また、インペラの製造方法として、インペラ内の流路を形成する型をスライドさせることで成型する技術が知られている。
【0005】
また、表シュラウド及び複数の羽根が形成された裏シュラウドを別々に成型するとともに、表シュラウド及び裏シュラウドを機械的に固定する技術も知られている。この機械的にシュラウドを固定する方法としては、表シュラウド及び裏シュラウドにねじを形成し、互いに締結する技術や、ボルト等により表シュラウド及び裏シュラウドを締結する構成等が知られている。
【0006】
さらに、インペラの製造方法として、合成樹脂を射出成型により形成した表シュラウド及び裏シュラウドの羽根を溶着することで、表シュラウド及び裏シュラウドを固定する技術も知られている。(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−303740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したようなインペラでは、次のような問題があった。即ち、中子に水溶性の樹脂材料を用いたインペラの製造方法では、中子をインペラの製造毎に水溶させて除去する必要がある。また、中子は、一度水溶させると再利用することができない。このように、中子に水溶性の樹脂材料を用いたインペラの製造方法では、中子の製造コストが高くなる。
【0009】
また、流路を形成する型をスライドさせるインペラの製造方法では、成型可能な流路の形状が限定される。
【0010】
さらに、表シュラウド及び裏シュラウドを別体とするインペラの製造方法では、機械的に接続すると、インペラ内部にて、シュラウド及び羽根により形成される一の流路から他の流路への漏れが発生する虞がある。インペラは、その内部に漏れが発生すると、ポンプ効率が低下する、という問題がある。
【0011】
例えば、表シュラウドを羽根に溶着により接続すると、当該溶着部が密着することから、インペラ内部での漏れを防止することが可能となる。しかし、羽根は、インペラの中心側から外周側に向かって傾斜するとともに、インペラの中心側でその傾斜角度が大きくなる構成である。
【0012】
このため、表シュラウド及び羽根を溶着すると、インペラの中心側の溶着が難しく、インペラ中心側において、インペラ内部での漏れの発生となる未溶着部及び溶着不足の発生や、溶着時に樹脂の一部が流路上に流れる虞がある。この未溶着部は、インペラ内部での漏れの要因となる。また、流路上に樹脂が流れ、当該樹脂が硬化すると、流路上の液体の流れの障害となり、ポンプ効率が低下する虞がある。
【0013】
そこで本発明は、ポンプ効率の低下を防止可能なインペラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のインペラは、次のように構成されている。
【0015】
本発明の一態様として、円板状の裏シュラウド、及び、前記裏シュラウドの一方の主面に一体に形成された複数の羽根を具備するインペラ本体と、その中心に液体を吸い込む開口を有し、前記インペラ本体を覆うインペラカバーと、前記羽根の前記インペラカバーと対向する端面に設けられた係合部と、前記インペラカバーに前記係合部と対向して設けられ、前記羽根を挿入可能、且つ、前記係合部と係合可能に形成され、前記係合部と係合し、且つ、前記係合部とともに溶着部を構成する被係合部と、を備え、前記係合部は、前記羽根の前記端面に前記羽根の延設方向に沿って形成された溝部である第1係合部、前記羽根の延設方向に沿って前記羽根の前記端面の前記裏シュラウドの中心側に位置する端部に形成され、前記第1係合部よりも深く構成された溝部である第2係合部、及び、前記羽根の前記端面から突出して複数形成された突起である第3係合部を有し、前記被係合部は、前記羽根を挿入可能に形成され、前記羽根の側面と所定の隙間を形成可能な幅に形成された案内部、前記案内部に設けられ、前記羽根の延設方向に沿って形成された前記第1係合部と係合する突起である第1被係合部、前記羽根の延設方向に沿って形成された前記第2係合部よりも幅が小さく形成された突起である前記第2係合部と嵌合する第2被係合部、及び、前記第3係合部と係合する開口である第3被係合部を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポンプ効率の低下を防止可能なインペラを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るインペラの構成を示す平面図。
図2】同インペラの構成を分解して示す断面図。
図3】同インペラの要部構成を分解して模式的に示す断面図。
図4】同インペラの要部構成を分解して模式的に示す断面図。
図5】同インペラに用いられるインペラ本体部の構成を示す平面図。
図6】同インペラに用いられるインペラカバーの構成を示す平面図。
図7】同インペラに用いられるインペラカバーの構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係るインペラ1を、図1乃至図7を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るインペラ1の構成を示す平面図、図2はインペラ1の構成を分解して示す断面図、図3図2中III−III断面であって、インペラ1の要部構成を分解して模式的に示す断面図、図4図2中IV−IV断面であって、インペラ1の要部構成を分解して模式的に示す断面図、図5はインペラ1に用いられるインペラ本体部3の構成を示す平面図、図6はインペラ1に用いられるインペラカバー4の構成を示す平面図、図7はインペラ1に用いられるインペラカバー4の構成を示す平面図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、インペラ1は、樹脂材料で形成されたインペラ本体3と、樹脂材料で形成されたインペラカバー4と、を備えている。インペラ1は、インペラ本体3及びインペラカバー4が別体に形成されるとともに、溶着部5において溶着されることで、一体に形成される。
【0020】
このようなインペラ1は、その外周側に吐出口が、インペラカバー4の中心部に吸込口が形成される。インペラ1は、ポンプに用いられる。例えば、インペラ1は、ポンプのポンプケーシング内に配置されるとともに、モータに接続された回転軸に固定される。このようなインペラ1は、回転軸がモータにより回転することで、その吸込口から水等の液体を吸込むとともに、その内部を通過する水を増圧して吐出口から吐出することで、二次側へ圧送することが可能に形成されている。
【0021】
インペラ本体3は、裏シュラウド11と、裏シュラウド11の一方の主面に設けられ、複数、例えば5枚が一定間隔で配置された羽根12と、これら羽根12のインペラカバー4と対向する端面12aにそれぞれ設けられた係合部13と、を備えている。インペラ本体3は、裏シュラウド11、羽根12及び係合部13が、射出成型により、一体に形成されている。
【0022】
裏シュラウド11は、円板状に形成されたベース部14と、ベース部14の一方の主面の中央に形成され、その先端に向かって漸次縮径するとともに、その中心が開口する、略円錐台形状の突起部15と、突起部15の内周面に嵌合されたインサート16と、を備えている。
【0023】
インサート16は、金属材料により形成されている。インサート16は、その中心に孔部17が形成されている。孔部17は、ポンプの回転軸を挿入可能に形成されている。
【0024】
羽根12は、裏シュラウド11の一方の主面に等間隔に複数(5枚)配置される。羽根12は、裏シュラウド11の外周縁及び裏シュラウド11の中心側に渡って、円弧状に湾曲して延設される。
【0025】
羽根12は、裏シュラウド11の外周側から中心側に向かってその高さが前記高くなるように傾斜して形成されている。羽根12は、裏シュラウド11の中心側に位置する端部が、他部よりも傾斜角度が大きく形成される。また、羽根12は、その厚みが略同一又は中心側から外周側につれて漸次厚くなるように形成されている。
【0026】
図2乃至図4に示すように、係合部13は、羽根12の端面12aに形成された第1係合部21、第2係合部22及び第3係合部23を備えている。係合部13は、第1係合部22、第2、第2係合部22及び第3係合部23が、後述する被係合部33と係合可能に形成されるとともに、被係合部33と溶着することで、溶着部5を構成する。
【0027】
図2図3及び図5に示すように、第1係合部21は、羽根12の端面12aに設けられ、羽根12の両端部側間であって、羽根12の延設方向の略中心に沿って延設された溝部である。図3に示すように、第1係合部21は、その長手方向に直交する方向の断面視で円弧状に形成されている。換言すると、第1係合部21は、湾曲する半円柱状に形成された溝部である。
【0028】
図2図4及び図5に示すように、第2係合部22は、羽根12の端面12aに設けられ、羽根12の一方の端部側、具体的には、裏シュラウド11の中心側に位置する羽根12の端部側に、羽根12の延設方向の略中心に沿って延設された湾曲する方体状の溝部である。第2係合部22は、第1係合部21よりもその深さが深く形成されている。
【0029】
第2係合部22は、裏シュラウド11の中心側の端部の内面が円弧状に形成されるとともに、裏シュラウド11の外周側の端部の内面が、羽根12の延設方向の中心に対して傾斜する平面状に形成されている。また、第2係合部22は、図4に示すように、その側面と下面との稜部が曲面状に面取りされて形成されている。
【0030】
図2及び図5に示すように、第3係合部23は、羽根12の端面12aに設けられ、羽根12の中央側であって、羽根12の延設方向の略中心に沿って等間隔に複数、本実施形態においては3つ配置された円柱状の突起である。
【0031】
インペラカバー4は、表シュラウド31と、表シュラウド31の一方の主面、具体的にはインペラ本体3と対向する主面に設けられた被係合部33と、を備えている。インペラカバー4は、表シュラウド31及び被係合部33が射出成型により一体に形成されている。
【0032】
表シュラウド31は、円板状に形成されたベース部34と、ベース部34の他方の主面の中央に形成され、その中心が開口する円筒状の突起部35と、を備えている。表シュラウド31は、その一方の主面が、外周側から中心側に向かって、対向する裏シュラウド11から離間する方向に漸次傾斜して形成されている。突起部35は、その開口がインペラ1の吸込口を構成する。
【0033】
図2乃至図4図6及び図7に示すように、被係合部33は、表シュラウド31の一方の主面に形成された、案内部40、第1被係合部41、第2被係合部42及び第3被係合部43を備えている。被係合部33は、案内部40が羽根12と係合可能、且つ、第1被係合部41、第2被係合部42及び第3被係合部43が第1係合部22、第2、第2係合部22及び第3係合部23と係合可能に形成される。また、被係合部33は、係合部13と溶着することで、溶着部5を構成する。
【0034】
図2乃至図4及び図6に示すように、案内部40は、表シュラウド31の一方の主面に形成された羽根12の端面12aと略同一形状の溝部である。図3及び図4に示すように、案内部40は、その幅が、羽根12と所定の隙間を形成可能に、羽根12の幅よりも若干長く形成されている。案内部40は、ベース部34の一方の主面であって、突起部35の下方が、他部よりも傾斜角度が大きく形成される。
【0035】
なお、羽根12及び案内部40により形成される所定の隙間は、羽根12及び案内部40の延設方向に対して直交する方向に形成される隙間である。この所定の隙間は、溶融した第1被係合部41、第2被係合部42及び第3係合部23のうち、第1係合部21、第2係合部22及び第3被係合部43から移動した第1被係合部41、第2被係合部42及び第3係合部23を配置可能な容積に形成される。
【0036】
図2図3及び図6に示すように、第1被係合部41は、表シュラウド31の一方の主面であって、且つ、案内部40の主面、換言すると、案内部40の羽根12の端面12aと対向する面に形成され第1係合部21の形状に沿って延設された突起部である。第1被係合部41は、案内部40の延設方向の略中心に沿って延設される。図3に示すように、第1被係合部41は、その長手方向に直交する方向の断面視でその先端が円弧状に形成されている。
【0037】
図3に示すように、第1被係合部41は、その幅が、第1係合部21の幅よりも小さく形成されている。また、図3に示すように、第1被係合部41は、その案内部40の主面からの高さが、第1係合部21の羽根12の端面12aからの深さよりも長く形成されている。さらに、図3に示すように、第1被係合部41は、その体積が、第1係合部21の容積よりも大きく形成されている。
【0038】
図2図4及び図6に示すように、第2被係合部42は、表シュラウド31の一方の主面であって、且つ、案内部40の主面に形成され、第2係合部21の形状に沿って延設される。第2被係合部42は、案内部40の延設方向の略中心に沿って延設される。
【0039】
また、第2被係合部42は、案内部40の表シュラウド31の中心側から外周側に向かって漸次高さが低くなる形状に形成された方体状の突起である。具体的には、第2被係合部42は、その第2係合部22と対向する面が、インペラ1の軸心方向と直交する方向に延設されて形成される。
【0040】
図4に示すように、第2被係合部42は、その幅が、第2係合部22の幅よりも小さく形成されている。図4に示すように、第2被係合部42は、その第2係合部22と対向する主面及びその側面の稜部が、断面視で直角状に形成されている。第2被係合部42は、第2係合部22の側面及び下面の曲面状の稜部に線で、さらに言えば、その長手方向に直交する方向の断面視で点により接触可能に形成されている。
【0041】
この第2係合部22との接触により、第2被係合部42の稜部は、第2係合部22の曲面状の稜部に当接することで変形可能、換言すると、第2係合部22の稜部に当接することで、第2係合部22の稜部の幅と同一幅につぶれることが可能に形成されている。第2被係合部22は、第2係合部22との接触による変形によって、第2係合部22と嵌合可能に形成されている。
【0042】
また、図4に示すように、第2被係合部42は、その案内部40の主面からの高さが、第2係合部22の羽根12の端面12aからの深さよりも短く形成されている。さらに、図4に示すように、第2被係合部42は、その体積が、第2係合部22の容積よりも小さく形成されている。
【0043】
また、第2被係合部42は、第2係合部22と形成される幅方向の隙間が、第1係合部21及び第1被係合部41による幅方向の隙間よりも小さく形成される。換言すると、第2係合部22及び第2被係合部42は、第1係合部21及び第1被係合部41よりも、そのクリアランスが小さく形成されている。
【0044】
図2図6及び図7に示すように、第3被係合部43は、表シュラウド31であって、且つ、案内部40の主面に形成され、第3係合部23の形状に沿って形成された円筒状の開口である。第3被係合部43は、表シュラウド31が、裏シュラウド11に組み合わされた際に、第3係合部23と対向する位置、具体的には、案内部40の中心側であって、案内部40の延設方向の略中心に沿って等間隔に複数、本実施形態においては3つ配置される。
【0045】
図2図6及び図7に示すように、第3係合部23は、表シュラウド31の一方の主面から他方の主面に向かって、2つの異なる内径の円筒状の開口により形成される。
【0046】
具体的には、第3係合部23は、表シュラウド31の一方の主面側、且つ、案内部40の主面側に形成された第1開口部46と、表シュラウド31の他方の主面側、且つ、ベース部34の他方の主面に形成され、第1開口部46と連続して形成された第2開口部47と、を備えている。
【0047】
第3被係合部43は、第1開口部46及び第2開口部47の容積が、第3係合部23の体積と略同一、又は、大きく形成されている。第1開口部46は、その内径が、第2開口部47の内径よりも小径に形成されている。第1開口部46は、その内径が、第3係合部23の外径よりも大径に形成され、第3係合部23を挿入可能に形成されている。また、第1開口部46は、その容積が、第1係合部23の体積よりも小さく形成されている。
【0048】
このように構成されたインペラ1は、インペラ本体3及びインペラカバー4を組み合わせ、係合部13及び被係合部33を係合させて溶着させることで形成される。具体的には、先ず、インペラ本体3及びインペラカバー4を対向させるとともに、各羽根12の端面12aを案内部40内にそれぞれ配置させて係合させる。
【0049】
また、第1係合部21及び第1被係合部41、第2係合部22及び第2被係合部42、並びに、第3係合部23及び第3被係合部43をそれぞれ係合させる。これらの係合により、インペラ本体3及びインペラカバー4は、羽根12の端面12aと、案内部40の主面とが、若干離間した状態で一体に組み合わせる。
【0050】
この状態で、係合部13及び被係合部33を溶融し、固着させる。具体的には、係合部13及び被係合部33を、超音波加熱により加熱させる。この加熱により、第1被係合部41が溶融し、当該溶融した第1被係合部41が第1係合部21に移動し、第1係合部22を充填する。同加熱により、第2被係合部42が溶融し、当該溶融した第2被係合部42が第2係合部22に移動し、第2係合部22を充填する。同加熱により、第3係合部23が溶融し、当該溶融した第3係合部23が第3被係合部43に移動し、第3被係合部43を充填する。
【0051】
また、第1係合部21及び第2係合部22が溶融することで、羽根12の端面12a及び案内部40の主面が当接する。また、第1係合部21は、その体積が、第1被係合部41の容積よりも大きく形成されていることから、溶融した第1係合部21の一部は、羽根12の端面12a及び案内部40の主面間、及び、羽根12の側面及び案内部40の側面間に移動する。
【0052】
また、第3係合部23は、その体積が、第3被係合部43の容積と同一又は小さく形成されていることから、溶融した第3係合部23が、第3被係合部43内に移動し、第3被係合部43を充填することとなる。具体的には、第3被係合部43は、二つの異なる内径の第1開口部46及び第2開口部47を有する構成であり、第1開口部46の容積が、第3係合部23の体積よりも小さく形成されている。このため、溶融した第3係合部23は、第1開口部46に充填されるとともに、第2開口部47の全部又は少なくとも一部に充填される。これにより、溶融した第3係合部23は、その一部が、第2開口部47の主面と当接する。
【0053】
このように、係合部13及び被係合部33が溶着されることで、インペラ本体3及びインペラカバー4が一体に固定されたインペラ1が形成される。
【0054】
このように構成されたインペラ1によれば、係合部13及び被係合部33を係合させて溶着させることで、インペラ本体3及びインペラカバー4を一体に固定することが可能となる。また、インペラ1は、羽根12及び係合部13と、被係合部33とを係合させることで位置合わせが可能となり、インペラ本体3及びインペラカバー4の溶着時における位置精度を向上させることが可能となる。
【0055】
また、インペラ1は、第1係合部21、第2係合部22及び第3係合部23、並びに、第1被係合部41、第2被係合部42及び第3被係合部43が、それぞれ羽根12及び案内部40に沿って配置される。この構成により、係合部13及び被係合部33は、いずれかで溶融した第1被係合部41、第2被係合部42及び第3係合部23が、第1係合部21、第2係合部22及び第3被係合部43から移動したとしても、羽根12及び案内部40間に形成される隙間に移動する。
【0056】
特に、第1係合部21、第2係合部22及び第3係合部23、並びに、第1被係合部41、第2被係合部42及び第3被係合部43は、それぞれ羽根12及び案内部40の延設方向の略中心に配置されることから、溶融して移動した場合に、羽根12及び案内部40間に、当該延設方向の中心から均一に移動する。
【0057】
このため、インペラ1は、羽根12及び案内部40間の隙間により、溶融した第1被係合部41、第2被係合部42及び第3係合部23が、裏シュラウド11、羽根12及び表シュラウド31により形成される液体の流路上に移動することを防止できる。これにより、インペラ1は、当該裏シュラウド11、羽根12及び表シュラウド31により形成される流路上に移動することで、流路上の水の流れを阻害し、又は、流路抵抗となる障害物となることを防止可能となる。
【0058】
このように、インペラ1は、当該裏シュラウド11、羽根12及び表シュラウド31により形成される流路上に、障害物が発生することを防止可能となり、ポンプ効率の低下を防止可能、且つ、インペラ本体3及びインペラカバー4の溶着後の修正作業である、流路上の障害物の除去作業が不要となる。
【0059】
また、第2係合部22及び第2被係合部42は、互いに嵌合可能な構成とすることで、第2係合部22及び第2被係合部42の溶着不足が発生しても、当該嵌合により、インペラ1の性能の低下を防止することが可能となる。
【0060】
具体的に説明すると、第2係合部22及び第2被係合部42は、溶着だけでなく、第2係合部22の曲面状に形成された稜部と、第2被係合部42の稜部とが嵌合することにより係合させる構成であることから、強固にインペラ本体3及びインペラカバー4を固定することが可能となる。また、当該第2係合部22及び第2被係合部42は、嵌合による係合を行うことで、溶着時間を短縮することも可能となる。
【0061】
これらのように、インペラ1は、溶着後の修正作業の低減、及び、溶着時間の短縮により、製造コストを低減することも可能となる。
【0062】
さらに、第3係合部23は、第3被係合部43に溶着すると、その一部が第3被係合部43の第2開口部47の主面と係合することで、インペラ本体3及びインペラカバー4が離間する方向に力が印加されても、当該係合により、強固にインペラ本体3及びインペラカバー4を固定することが可能となる。
【0063】
上述したように、本発明の一実施の形態に係るインペラ1によれば、係合部13及び被係合部33を係合させてインペラ本体3及びインペラカバー4を溶着させることで、確実にインペラ本体3及びインペラカバー4を溶着し、ポンプ効率の低下を防止することが可能となる。
【0064】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述したインペラ1は、羽根12の端面12aの中央側に3つの第3係合部23を設ける構成を説明したがこれに限定されない。第3係合部23は、1又は2つ設ける構成であってもよく、また、羽根12の延設方向に沿って、等間隔に3以上設けられる構成であってもよく、設けられる位置は、羽根12の中央側だけでなくてもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 円板状の裏シュラウド、及び、前記裏シュラウドの一方の主面に一体に形成された複数の羽根を具備するインペラ本体と、
その中心に液体を吸い込む開口を有し、前記インペラ本体を覆うインペラカバーと、
前記羽根の前記インペラカバーと対向する端面に設けられた係合部と、
前記インペラカバーに前記係合部と対向して設けられ、前記羽根を挿入可能、且つ、前記係合部と係合可能に形成され、前記係合部と係合後に溶着される被係合部と、
を備えることを特徴とするインペラ。
[2] 前記係合部は、前記羽根の前記端面に前記羽根の延設方向に沿って形成された第1係合部、前記羽根の前記端面であって前記裏シュラウドの中心側に形成された第2係合部、及び、前記羽根の前記端面から突出して複数形成された第3係合部を有し、
前記被係合部は、前記羽根を挿入可能に形成され、前記羽根の側面と所定の隙間を形成可能な幅に形成された案内部、前記案内部に設けられ、前記第1係合部と係合する第1被係合部、前記第2係合部と係合する第2被係合部、及び、前記第3係合部と係合する第3被係合部を有することを特徴とする[1]に記載のインペラ。
[3] 前記第1係合部は、前記羽根の前記端面に、前記羽根の延設方向に沿って形成された溝部であり、
前記第1被係合部は、前記案内部に形成され、前記第1係合部に配置可能な突起であることを特徴とする[2]に記載のインペラ。
[4] 前記第1係合部は、その幅が前記第1被係合部の幅よりも大きく形成されるとともに、その容積が前記第1被係合部の体積よりも小さく形成されていることを特徴とする[3]に記載のインペラ。
[5] 前記所定の隙間は、前記係合部及び前記被係合部の溶着時に、前記溶融した前記第1被係合部のうち、前記第1係合部から移動した前記第1被係合部を配置可能な容積に形成されていることを特徴とする[4]に記載のインペラ。
[6] 前記第2係合部は、前記羽根の前記端面に、前記羽根の延設方向に沿って形成された溝部であり、
前記第2被係合部は、前記案内部に形成され、前記第2係合部に配置可能な突起であることを特徴とする[2]に記載のインペラ。
[7] 前記第2係合部は、その幅が前記第2被係合部の幅よりも大きく形成されるとともに、その容積が前記第2被係合部の体積よりも大きく形成されていることを特徴とする[6]に記載のインペラ。
[8] 前記第2係合部は、その幅が前記第2被係合部の幅と同一又は小さく形成されるとともに、その容積が前記第2被係合部の体積よりも大きく形成され、前記第2被係合部と嵌合可能に形成されていることを特徴とする[6]に記載のインペラ。
[9] 前記第2係合部は、その稜部が曲面状に形成され、
前記第2被係合部は、その稜部が前記第2係合部の前記稜部と嵌合可能に形成されていることを特徴とする[8]に記載のインペラ。
[10]
前記第3係合部は、前記羽根の前記端面に設けられた円柱状の突起であり、
前記第3被係合部は、前記第3係合部を挿入可能な開口であることを特徴とする[2]に記載のインペラ。
[11] 前記第3被係合部は、前記インペラカバーに設けられ、前記第3係合部の外径よりもその内径が大径に形成されるとともに、前記第3係合部の体積よりもその容積が小さく形成された第1開口部、及び、前記第1開口部と連続して形成され、前記第1開口部よりもその内径が大径に形成される第2開口部を具備することを特徴とする[10]に記載のインペラ。
[12] 前記第1係合部は、前記羽根の前記端面に、前記羽根の延設方向に沿って形成された溝部であり、
前記第1被係合部は、前記案内部に形成され、前記第1係合部に配置可能な突起であり、
前記第2係合部は、前記羽根の前記端面に、前記羽根の延設方向に沿って形成された溝部であり、
前記第2被係合部は、前記案内部に形成され、前記第2係合部に配置可能な突起であり、
前記第3係合部は、前記羽根の前記端面に設けられた円柱状の突起であり、
前記第3被係合部は、前記第3係合部を挿入可能な開口であることを特徴とする[2]に記載のインペラ。
[13] 前記第1係合部は、その幅が前記第1被係合部の幅よりも大きく形成されるとともに、その容積が前記第1被係合部の体積よりも小さく形成され、
前記第2係合部は、その幅が前記第2被係合部の幅よりも大きく形成されるとともに、その容積が前記第2被係合部の体積よりも大きく形成され、
前記第3被係合部は、前記インペラカバーに設けられ、前記第3係合部の外径よりもその内径が大径に形成されるとともに、前記第3係合部の体積よりもその容積が小さく形成された第1開口部、及び、前記第1開口部と連続して形成され、前記第1開口部よりもその内径が大径に形成される第2開口部を具備することを特徴とする[12]に記載のインペラ。
[14] 前記第1係合部は、その幅が前記第1被係合部の幅よりも大きく形成されるとともに、その容積が前記第1被係合部の体積よりも小さく形成され、
前記第2係合部は、その幅が前記第2被係合部の幅と同一又は小さく形成されるとともに、その容積が前記第2被係合部の体積よりも大きく形成され、前記第2被係合部と嵌合可能に形成され、
前記第3被係合部は、前記インペラカバーに設けられ、前記第3係合部の外径よりもその内径が大径に形成されるとともに、前記第3係合部の体積よりもその容積が小さく形成された第1開口部、及び、前記第1開口部と連続して形成され、前記第1開口部よりもその内径が大径に形成される第2開口部を具備することを特徴とする[12]に記載のインペラ。
[15] 前記所定の隙間は、前記係合部及び前記被係合部の溶着時に、前記溶融した前記第1被係合部、前記第2被係合部及び前記第3係合部のうち、前記第1係合部、前記第2係合部及び前記第3被係合部から移動した前記第1被係合部、前記第2被係合部及び前記第3係合部を配置可能な容積に形成されていることを特徴とする[13]又は[14]に記載のインペラ。
[16] 前記第1係合部、前記第2係合部及び前記第3係合部は、前記羽根の延設方向の中心上に設けられ、
前記第1被係合部、前記第2被係合部及び前記第3被係合部は、前記案内部の延設方向の中心上に設けられることを特徴とする[15]に記載のインペラ。
【符号の説明】
【0065】
1…インペラ、3…インペラ本体、4…インペラカバー、5…溶着部、11…裏シュラウド、12…羽根、12a…端面、13…係合部、14…ベース部、15…突起部、16…インサート、17…孔部、21…第1係合部、22…第2係合部、23…第3係合部、31…表シュラウド、33…被係合部、34…ベース部、35…突起部、40…案内部、41…第1被係合部、42…第2被係合部、43…第3被係合部、46…第1開口部、47…第2開口部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7