特許第6007002号(P6007002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6007002貫通孔形成方法及び貫通孔付きガラス基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6007002
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】貫通孔形成方法及び貫通孔付きガラス基板
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20160929BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   C03C15/00 D
   B81C1/00
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-142050(P2012-142050)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-5172(P2014-5172A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101710
【氏名又は名称】アルバック成膜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】小島 智明
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−035478(JP,A)
【文献】 特開2008−156200(JP,A)
【文献】 特開平09−221339(JP,A)
【文献】 特開昭63−040734(JP,A)
【文献】 特開昭47−009418(JP,A)
【文献】 特開2003−020257(JP,A)
【文献】 特開2001−226142(JP,A)
【文献】 特開昭54−110219(JP,A)
【文献】 特開昭48−052811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00
C03B 33/02
H01L 21/306 − 21/308
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板にその厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成方法において、
ガラス基板の一方の面及び他方の面に金属膜を形成する第1工程と、
前記一方の面に形成された金属膜をパターニングして金属マスクとする第2工程と、
前記金属マスク側を上とし、前記金属マスク越しに前記ガラス基板をその上面側からウェットエッチングして、ガラス基板上面から下面に向かって先細りのテーパ状の周壁部を有する貫通孔を形成する第3工程と、を含み、
前記ガラス基板のウェットエッチングに先立ち、前記ガラス基板下側に形成された金属膜を保護部材で覆う工程を更に含み、前記保護部材によりウェットエッチング時に前記貫通孔の下部に露出する当該金属膜の破断を防止することを特徴とする貫通孔形成方法。
【請求項2】
前記保護部材は、樹脂製の粘着保護フィルムを含むことを特徴とする請求項1記載のガラス基板への貫通孔形成方法。
【請求項3】
ガラス基板にその厚さ方向に貫通する少なくとも1個の貫通孔が形成された貫通孔付きガラス基板において、
前記ガラス基板の一方の面にパターニングされた金属膜が形成され、前記ガラス基板の他方の面に金属膜とこの金属膜を覆う保護部材とが積層され、
前記貫通孔は、前記ガラス基板の一方の面から他方の面に向かって先細りのテーパ状の周壁部を有し、この周壁部をなす線が変曲点を持つことなく前記他方の面に達していることを特徴とする貫通孔付きガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔形成方法及び貫通孔付きガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオチップの製造工程において、ガラス基板にその厚さ方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔の内部にDNA、タンパク質等のバイオ分子やこのバイオ分子を有する細胞が固定することが知られている。
【0003】
また、半導体デバイスの製造工程において、半導体チップと実装基板とを電気的に接続するために、半導体チップと実装基板との間にインターポーザを配置することが知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、インターポーザには、その厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられており、この貫通孔に金属材料を充填したり、貫通孔内面に金属膜を形成したりしてビアコンタクトが形成され、このビアコンタクトを介して半導体チップと実装基板とが電気的に接続される。この場合、上記従来例では、インターポーザを構成する基板としてガラス基板を用いることが開示されている。ガラス基板は、特定用途向けまたはデバイスの微細化に対応するために好ましく用いられる。
【0004】
ガラス基板に上記貫通孔を形成する方法は特許文献2で知られている。このものでは、ガラス基板の一方の面にレジストパターンを形成し、ガラス基板の他方の面に保護膜を形成し、レジストパターン越しにガラス基板をその一方の面側からウェットエッチングすることにより、ガラス基板の一方の面側から略中間位置まで先細りのテーパ状の孔を形成する。そして、同様の方法を用いて、ガラス基板の他方の面側から略中間位置まで先細りのテーパ状の孔を形成する。このようにガラス基板の両面から形成された孔が連通して貫通孔が形成されるが、ガラス基板の上面から中間位置までは貫通孔の孔径が次第に小さくなり、この中間位置から下面までは貫通孔の孔径が次第に大きくなるため、貫通孔の中間位置には内方に延出する庇部が形成される。この庇部は、貫通孔形成後のガラス基板の下面に所定の加工が施された他の基板を接合しても残存するため、この接合時の小さな衝撃により容易に欠けてしまいパーティクルの原因となる。
【0005】
そこで、ガラス基板下面に保護膜を形成し、ガラス基板上面にレジストパターンを形成し、ガラス基板をその上面からのみウェットエッチングし、ガラス基板の上面から下面に向かって先細りのテーパ面を有する貫通孔を形成して、その貫通孔の中間位置に庇部が形成されないようにすることが考えられる。
【0006】
然し、上記特許文献2に記載の如く保護膜はゴムや樹脂により構成されるのが一般的であり、ゴム製や樹脂製の保護膜はガラス基板との密着性が低い。このため、図6に示すように、貫通孔10の底部に保護膜12が露出したときに、露出した保護膜12とガラス基板1の下面1bとの間にエッチング液が染み込み、この下面1bが面方向(厚さ方向に直交する方向)にエッチングされてしまう。これにより、ガラス基板1に形成された貫通孔10の周壁部10bをなす線が変曲点11を持ち、その変曲点11よりも下側では孔径が次第に拡径される逆テーパ状となる。そして、貫通孔10が形成されたガラス基板1の下面1bに上記他の基板を接合すると、変曲点11の部分が庇となる。この庇部も例えば接合時の小さな衝撃により欠けてしまいパーティクルの原因となる。しかも、ガラス基板下面に他の基板を接合した後、貫通孔内面に配線用の金属膜を形成する際、上記庇部によって陰となる部分(上記逆テーパ状部分)に金属膜をカバレッジ良く形成できず、断線の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−258654号公報
【特許文献2】特開2010−70415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、ガラス基板に他の基板を接合しても庇部が生じない貫通孔をガラス基板に形成できる貫通孔形成方法及び貫通孔付きガラス基板を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、ガラス基板にその厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する本発明の貫通孔形成方法は、ガラス基板の一方の面及び他方の面に金属膜を形成する第1工程と、前記一方の面に形成された金属膜をパターニングして金属マスクとする第2工程と、前記金属マスク側を上とし、前記金属マスク越しに前記ガラス基板をその上面側からウェットエッチングして、ガラス基板上面から下面に向かって先細りのテーパ状の周壁部を有する貫通孔を形成する第3工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、ガラス基板にその厚さ方向に貫通する少なくとも1個の貫通孔が形成された本発明の貫通孔付きガラス基板において、前記貫通孔は、前記ガラス基板の一方の面から他方の面に向かって先細りのテーパ状の周壁部を有し、この周壁部をなす線が変曲点を持つことなく前記他方の面に達していることを特徴とする。
【0011】
上記によれば、第1工程にて、ガラス基板の一方の面及び他方の面に金属膜として、例えば、クロム膜をスパッタリング法により形成する。次いで、第2工程にて、ガラス基板の一方の面に形成された金属膜上に例えばレジストパターンを形成し、このレジストパターン越しに金属膜をウェットエッチングすることによりパターニングして金属マスクとする。次いで、第3工程にて、金属マスク越しにガラス基板をその上面側からウェットエッチングすることにより、ガラス基板の上面から下面に向かって先細りのテーパ状の周壁部を有する貫通孔が形成される。このように貫通孔が形成されると、その下部に金属膜が露出するが、露出した金属膜はガラス基板に対する密着性がよいため、金属膜とガラス基板との間にエッチング液が染み込み難く、ガラス基板下面はその面方向にエッチングされない。このため、貫通孔の周壁部をなす線が変曲点を持つことなくガラス基板下面に達することとなる。従って、貫通孔の断面の途中に庇部を発生させることなくガラス基板に貫通孔を形成できる。そして、このような貫通孔付きのガラス基板の下面に所定の加工が施された他の基板に接合しても、庇部が生じることはない。さらに、基板接合後に配線用の金属膜を貫通孔の周壁部(内面)にカバレッジ良く形成できるため、断線を起こさない。
【0012】
本発明において、ガラス基板下側の金属膜を保護する保護部材を設けることが好ましい。これによれば、ガラス基板下面での貫通孔の孔径が大きい場合でも、貫通孔の下部に露出する金属膜が破断してガラス基板下面がその面方向にエッチングされることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)〜(c)は、本発明の実施形態の貫通孔形成方法を説明する模式断面図。
図2】ガラス基板に形成された貫通孔の断面を拡大して示す写真。
図3】貫通孔が形成されたガラス基板に実装基板を装着した状態を拡大して示す模式断面図。
図4】ガラス基板下側の金属膜が破断した状態を示す模式断面図。
図5】ガラス基板下側の金属膜を保護する保護部材を設けた状態を示す模式断面図。
図6】ガラス基板下面が面方向にエッチングされた状態を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の貫通孔形成方法について、ガラス基板の一方の面を上面とし、この上面に金属マスクを形成し、この金属マスク越しにガラス基板をその上面側からウェットエッチングして貫通孔を形成する場合を例に説明する。
【0015】
図1(a)に示すように、ガラス基板1の上面1a及び下面1bにクロム膜2,3を例えば100〜300nmの厚さで夫々成膜する(第1工程)。ガラス基板1の材料としては、特に限定されず、例えば、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス(Schott製のテンパックスフロート)、低温陽極接合用ガラス(旭硝子株式会社製のSWシリーズ)が挙げられる。クロム膜2,3の成膜方法としては、量産性等を考慮して、スパッタリング法を用いることが好ましい。この場合、スパッタガスとしては、アルゴンガス、窒素ガス及び二酸化炭素ガスの混合ガスを用いることが好ましく、所望の応力、反射率が得られるように、流量比を設定できる。尚、スッパッタリング装置としては、公知の構造を有するものを用いることができるため、ここでは装置構成や条件についての詳細な説明を省略する。
【0016】
次いで、クロム膜2の表面にレジスト4を例えば1〜3μmの厚さでスピンコート法により塗布し、この塗布したレジスト4に貫通孔形成用のパターンを露光し、現像液で現像することにより、レジストパターン4aを形成する。そして、このレジストパターン4a越しにクロム膜2をウェットエッチングしてパターニングすることにより、クロムマスク2aを形成する(第2工程)。クロム膜2のエッチング液としては、例えば、硝酸セリウムアンモニウムを含むものを用いることができ、硝酸や過塩素酸等の酸を添加してもよい。
【0017】
次いで、図1(b)に示すように、クロムマスク2a越しにガラス基板1をウェットエッチングする。エッチング液としては、フッ酸系のものを用いることができ、ガラス基板1の材料や所望するエッチングレートに合わせて、希釈したフッ酸、バッファードフッ酸(BHF)及び無機酸の混合液を用いることができる。ウェットエッチングを所定時間行うと、図1(c)に示すように、ガラス基板1の厚さ方向に貫通する貫通孔10が形成される。エッチング時間を調整することにより、ガラス基板下面1bでの貫通孔10の孔径dを制御できる。貫通孔10が形成されると、その下部にクロム膜3が露出する。ここで、クロム膜3はガラス基板1に対する密着性がよいため、上記露出したクロム膜3とガラス基板1との間にエッチング液が染み込み難く、ガラス基板1の下面1bはその面方向(図中の横方向)にエッチングされない。このため、貫通孔10はガラス基板1の上面1aから下面1bに向かって先細りのテーパ状の周壁部10aを有し、この周壁部10aをなす線が変曲点を持つことなく下面1bに達する。即ち、ガラス基板1の貫通孔10の断面の途中に庇部が生じることを防止できる。
【0018】
その後、レジストパターン4aを剥離し、クロムマスク2a及びクロム膜3をエッチング液に溶解させて除去することで、図2及び図3に示すような貫通孔10付きガラス基板1が得られる。レジスト剥離液としては、公知のアルカリ系のものを用いることができ、エッチング液としては、上記硝酸セリウムアンモニウムを用いることができる。
【0019】
このようにして貫通孔10が形成されたガラス基板1の下面に、図3に示すように、所定の加工(例えば、図示省略の精密研磨、溝加工、孔加工、配線パターン形成)が施された他の基板5を接合しても、これらガラス基板下面1bと他の基板5との間に隙間が形成されないことから、庇部が発生することがない。このため、基板接合後に貫通孔10の周壁部(内面)10aに金属膜を形成する際、この周壁部10aにカバレッジよくかつ密着性よく配線用の金属膜を形成することができるので、断線を防止できる。尚、他の基板5としては、例えば、ガラス製のものやシリコン製のものを用いることができる。他の基板5がガラス製のものである場合、ガラス基板1と他の基板5とを位置合わせし、位置合わせした両基板を仮接合し、この仮接合したものをベーク炉にて軟化点以下の温度(例えば、両基板が共にSchott製のテンパックスフロートで構成される場合500〜600℃)で焼成することにより、ガラス基板1と他の基板5とを接合できる。
【0020】
ところで、スパッタリング法によるクロム膜3の成膜速度は其程高くなく、クロム膜3の厚さを厚くすると生産性を低下させることを考慮して、クロム膜3の厚さは上記範囲内で設定される。この場合、ガラス基板下面1bでの貫通孔10の孔径dが大きいと(例えば、3mm以上になると)、図4に示すように、ガラス基板1のエッチングが進行して貫通孔10の下部にクロム膜3が露出したときに、クロム膜3に破断が生じ、ひいてはガラス基板下面1bからクロム膜3の剥がれが生じる。このとき、クロム膜3とガラス基板下面1bとの間に隙間が生じ、この隙間にエッチング液が染み込み、ガラス基板下面1bが面方向にエッチングされ、貫通孔10の周壁部10bに庇部11が形成されてしまう。
【0021】
そこで、図5に示すように、ガラス基板1のウェットエッチングに先立ち、ガラス基板1下側のクロム膜3を保護する保護部材(保護膜)6を設けることが好ましい。保護部材6としては、レジスト6aと保護フィルム6bとの積層膜を用いることができる。このレジスト6aは、上記レジスト4の塗布直後に同一材料のものを塗布して形成し、レジストパターン4aと共に剥離すれば、生産効率がよい。保護フィルム6bとしては、樹脂性の粘着保護フィルムを用いることができ、また、貫通孔10形成後に剥離するには公知のアルカリ系の剥離液を用いることができる。このような保護部材6を設けることにより、貫通孔10が形成されたときのクロム膜3の破断を防止でき、ガラス基板下面1bが面方向にエッチングされて庇部11が形成されることを確実に防止できる。
【0022】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、金属膜2の形成に先立ち、ガラス基板1の上面1a及び下面1bの研磨やディップ洗浄を行ってもよい。また、保護部材6をレジスト又は保護フィルムの1層のみで構成してもよい。また、金属膜2,3としては、ガラス基板1に対する密着性が高い金属膜又は少なくとも2種の金属膜を積層した積層膜を用いることができ、例えば、Cr膜,Si膜,Ni膜,Cr膜から選択された1種の膜とAu膜との積層膜や、Cr膜とNi膜とAu膜との積層膜を用いることができる。また、貫通孔10付きガラス基板1は、バイオチップやインターポーザ以外の用途にも当然に使用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…ガラス基板、1a…一方の面(上面)、1b…他方の面(下面)、2…クロム膜(金属膜)、2a…クロムマスク(金属マスク)、3…クロム膜(金属膜)、6…保護部材、10…貫通孔、10a…周壁部、11…変曲点。
図1
図3
図4
図5
図6
図2