特許第6007107号(P6007107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6007107
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】永久磁石カップリング
(51)【国際特許分類】
   F16D 7/02 20060101AFI20160929BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20160929BHJP
   H02K 49/10 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   F16D7/02 C
   F16H49/00 A
   H02K49/10 A
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-549339(P2012-549339)
(86)(22)【出願日】2011年1月19日
(65)【公表番号】特表2013-517435(P2013-517435A)
(43)【公表日】2013年5月16日
(86)【国際出願番号】EP2011050639
(87)【国際公開番号】WO2011089131
(87)【国際公開日】20110728
【審査請求日】2013年10月17日
(31)【優先権主張番号】202010001180.9
(32)【優先日】2010年1月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512144586
【氏名又は名称】リングフェーダー・パワー−トランスミッション・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100157440
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】エングレルト・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】モカ・トーマス
【審査官】 河端 賢
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許出願公開第02782419(FR,A1)
【文献】 特開2007−228735(JP,A)
【文献】 特開2003−284317(JP,A)
【文献】 米国特許第05747902(US,A)
【文献】 特開平05−231299(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02240666(GB,A)
【文献】 特開昭56−150650(JP,A)
【文献】 特開平07−264838(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0057530(US,A1)
【文献】 特開2014−155253(JP,A)
【文献】 特開2014−202233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 7/02
F16H 49/00
H02K 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のロータ(1a)と第2のロータ(1b)とを有し、これらロータの一方が、その外周を所定の数の永久磁石(2b)によって周方向に全面的に覆われたインナロータを構成し、他方が、その内周を同じ数の永久磁石(2a)によって周方向に全面的に覆われたアウタロータを構成し、第1のロータ(1a)と第2のロータ(1b)の全ての個々の永久磁石(2a,2b)が、それぞれ同じ広がりの角度領域にわたって延在し、第1のロータ(1a)と第2のロータ(1b)のそれぞれ周方向に隣接する永久磁石(2a,2b)が、互いに反対の半径方向に整向された磁化方向を備える、回転運動を同期伝達するための永久磁石カップリングにおいて、
第1のロータ(1a)のそれぞれ少なくとも1つの永久磁石が、均等な角度間隔省略され、これにより、周方向に、空気の渦流を発生させるための凹部を成す複数の空疎化されたスペース(5)が構成されていること、を特徴とする永久磁石カップリング。
【請求項2】
第1のロータ(1a)の各スペース(5)にそれぞれ周方向に隣接する永久磁石が、反対の磁化方向を備え、各スペース(5)が、それぞれ、第1のロータ(1a)の2つの永久磁石の広がりに一致する角度領域にわたって延在すること、を特徴とする請求項1に記載の永久磁石カップリング。
【請求項3】
第1のロータ(1a)の各スペース(5)にそれぞれ周方向に隣接する永久磁石が、同じ磁化方向を備え、各スペース(5)が、それぞれ、第1のロータ(1a)の1つの永久磁石の広がりに一致する角度領域にわたって延在すること、を特徴とする請求項1に記載の永久磁石カップリング。
【請求項4】
第1のロータ(1a)の周方向に隣り合う2つのスペース(5)間に、互いに反対の磁化方向を有する2つの永久磁石(2a)が配設されていること、を特徴とする請求項2又は3に記載の永久磁石カップリング。
【請求項5】
第1のロータ(1a)が、インナロータを構成すること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の永久磁石カップリング。
【請求項6】
第1のロータ(1a)が、アウタロータを構成すること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の永久磁石カップリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のロータと第2のロータとを有し、これらロータが、それぞれ永久磁石によって覆われ、インナロータとアウタロータとを構成し、第1のロータと第2のロータの互いに対応する永久磁石が、周方向に同じ角度領域に延在する、回転運動を同期伝達するための永久磁石カップリングに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石カップリングは、空隙を介したトルクの摩耗のない非接触の伝達を可能にする。空隙との概念は、ロータ間に構成された間隔に関するものであるが、この間隔内には、例えば、インナロータとアウタロータ間のリークのないシールを可能にする遮断シュラウドを設けることもできる。従って、遮断シュラウドを有する永久磁石カップリングは、例えばポンプ内で使用することができ、リークのないトルク伝達によって、有毒な又は他の危険な環境汚染物質の場合でも、空間的な分離による高い安全性が保証される。
【0003】
更に、永久磁石カップリングは、摩耗のないトルク制限を可能にするが、所定のトルクまでは、インナロータとアウタロータが同期運動をし、所定の限界値に達した場合には、永久磁石カップリングが空転する。これらの特性は、特に製造及び加工機械では、例えば過負荷を回避すべき場合、又は、ネジ結合を生じさせる際の所定の解放トルクを維持すべき場合に有利である。トルクの伝達が非接触で行なわれるので、所定の運転時の空転は、カップリングの摩耗を生じさせず、これにより、これは、基本的に、強い負荷下における長時間の使用のために適している。
【0004】
本発明は、インナロータとアウタロータが全面的に永久磁石で覆われ、各ロータにおいて、連続する永久磁石が、それぞれ反対の磁化方向を備える(図1a及び1b)、実務から公知の永久磁石カップリングから出発する。全ての磁石が、同じ広がりを周方向に備える、即ち同じ角度をカバーする。インナロータとアウタロータ間の磁力に関しては、空隙において、インナロータのN極にアウタロータのS極が向かい合い、インナロータのS極にアウタロータのN極が向かい合う場合に、最小値が生じる。個々の永久磁石は、円弧状に形成することができ、アウタロータの永久磁石は、拡大された直径のために相応に大きい。交互に整向された永久磁石の緊密なパッキングにより、コンパクトな構造でも高いトルクを伝達することができる。インナロータとアウタロータの永久磁石は、それぞれ1つのロータサポート上に配設され、このロータサポートは、磁束にとって還流要素としても設けられている。最大伝達トルクに達した場合、カップリングは空転する、即ち、駆動装置として設けられたロータは、駆動されるロータにもはや従わない。空転は、生じる磁力と、生じる渦電流とに基づいて、空転の時間と永久磁石カップリングの回転数と共に増加する著しい発熱と結びついている。これにより、永久磁石カップリングのそれぞれの構造に依存して、過熱を回避するために運転中に超過することが許されない、使用範囲を限定する最大スリップ時間もしくは最大回転数が生じる。従って、公知の構成では、高い回転数の領域で、長く続くスリップは、回避しなければならない。
【0005】
特許文献1(図1)から、アウタロータのそれぞれ隣接する永久磁石の間に、等距離の間隔が周方向に設けられた、永久磁石カップリングが公知である。この間隔は、アウタロータの永久磁石が、インナロータの永久磁石とほぼ同じ広がりを備えることから生じる。通常は、インナロータとアウタロータには同じ数の永久磁石が設けられており、同期運動の間、インナロータの各永久磁石に、アウタロータの1つの永久磁石が対応している。アウタロータが全面的に覆われているために、裁断伝達トルクは、比較的小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許第2 240 666号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底にある課題は、構造がコンパクトで最大伝達トルクが高くても、空転時に低い過熱の傾向を備える永久磁石カップリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
冒頭で説明した特徴を有する永久磁石カップリングから出発して、この課題は、第1のロータに、永久磁石により全面的に覆うことから出発して、周方向に永久磁石の一部を省略することによって空疎化されたスペースが構成されること、第1のロータと第2のロータが、異なった数の永久磁石を備えることによって解決される。
【0009】
第1のロータが、周方向に永久磁石の一部を省略されているので、回転運動の同期伝達時に、もはや、特に周方向に全面的に永久磁石で覆われた第2のロータの各永久磁石に、第1のロータの1つの永久磁石が対応することはない。永久磁石の一部を省略することにより、最大伝達トルクは、ある程度の度合いで低減されている。しかしながら、驚くべきことに、空疎化されたスペースの形成によって、空転時の熱的負荷は、非常に強く軽減されている。即ち、第1のロータにおける永久磁石と空疎化されたスペースとの入替えにより、強い空気の渦流と空気の運動が発生され、これらが、永久磁石カップリングの空転時、即ちスリップ中、非常に効果的な冷却を、熱の分散及び排出によって可能にする。従って、従来技術と比べて明らかに高い回転数でも、スリップが続く際の過熱を回避することができ、これにより、極端な条件下での永久磁石カップリングの本質的に長い寿命が得られる。
【0010】
実務から公知の構成の場合でのように、合目的に、全ての磁石が、同じ広がりを周方向に備える、即ち同じ角度領域をカバーする。インナロータとアウタロータの直径が異なることにより、それぞれの磁石は、通常は大きさが異なっている。全面的に覆うこととは、本発明の枠内では、隣接する磁石の間に未だ小さいスペース又はウェブが残っている形成とも理解する。ウェブは、特に、永久磁石を確実に保持するために設けることができる。しかしながらまた、第1のロータと第2のロータの間の空隙における湾曲に応じて磁石を円弧状に形成した場合は、周方向に連続する磁石は、直接互いに突き合わせることもできる。
【0011】
本発明の枠内で、磁石の一部を省略することに基づいて構成されるスペースが空疎化されたままであり、これにより、前記の空気の渦流を構成できることが重要である。回転軸に対して平行に延在するスペースと、空気の渦流とにより、長手方向にも良好で一様な熱分散が得られる。
【0012】
好ましいことに、第2のロータの周方向に連続する永久磁石は、それぞれ反対の磁化方向を備える。第1のロータの周方向に連続する全ての永久磁石も、それぞれ反対の磁化方向を備えることができ、その場合には、スペースが、それぞれ、第1のロータの2つの永久磁石又は少なくとも偶数の永久磁石の広がりに一致する角度領域にわたって延在する。
【0013】
選択的な形成によれば、さもなければ永久磁石が交互に整向される第1のロータにおいて、スペースにそれぞれ隣接する永久磁石が、同じ磁化方向を備え、スペースが、それぞれ、第1のロータの1つの永久磁石又は奇数の永久磁石の広がりに一致する角度領域にわたって延在する。
【0014】
即ち、前記形成は、公知のインナロータとアウタロータを永久磁石により全面的に覆うことから出発して、両ロータの一方において、一様な間隔で個々の永久磁石又は対の永久磁石が省略されている構成に一致する。
【0015】
空疎化されたスペースを備えるロータは、限定なくインナロータ又はアウタロータを構成することができ、合目的に、空疎化されたスペースは、空転時に前記のベンチレーション効果を得るために、それぞれ駆動されるロータに設けることができる。
【0016】
本発明を、以下でただ1つの実施例を図示した図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a】従来技術による永久磁石カップリング
図1b図1aによる公知の永久磁石カップリングの斜視図
図2】本発明による永久磁石カップリングの選択的な形成
図3】本発明による永久磁石カップリングの選択的な形成
図4】本発明による永久磁石カップリングの選択的な形成
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1a及び1bは、従来技術から公知の永久磁石カップリングを平面図もしくは斜視図で示す。永久磁石カップリングは、それぞれ永久磁石2a,2bによって覆われ、インナロータとアウタロータとを構成する第1のロータ1aと第2のロータ1bとを有する。第1のロータ1aと第2のロータ1bは、周囲に交互の磁化方向で配設されたそれぞれ12個の永久磁石2a,2bを備える。永久磁石2a,2bは、ロータ1a,1b間に構成された空隙3の湾曲に応じて円弧状に形成され、これにより、本質的に閉じたリングを形成する。第1のロータ1aもしくは第2のロータ1bの永久磁石2a,2bは、磁束の還流要素としても設けられているロータサポート4a,4bに配設されている。
【0019】
公知の永久磁石カップリングは、コンパクトな構造で、伝達すべきトルクが高いことによって際立っているが、しかしながら、空転時には、非常に強い発熱が認められる。この発熱は、回転数に依存するので、永久磁石カップリングが高い回転数で長時間にわたって空転する場合には、永久磁石カップリングが過熱され、損傷を受ける危険がある。
【0020】
公知の形成から出発して、図2は、第1のロータ1aが駆動されるアウタロータを構成する本発明による永久磁石カップリングを示す。第2のロータ1bであるインナロータが前記のように形成されているのに対し、全部で6個の永久磁石2aしか有しないアウタロータにおいては、周囲にわたって、反対の極性の永久磁石2aの対が、空疎化されたスペース5と交互に配置されるが、このスペースは、それぞれ、第1のロータ1aの2つの永久磁石2aの広がりに一致する角度領域にわたって延在する。永久磁石の空転時、第2のロータ1bであるインナロータは、駆動される第1のロータ1aの運動にもはや従わず、これにより、著しい発熱が生じるしかしながら、空疎化されたスペース5により、良好な冷却と一様な熱分散を生じさせる強い空気の渦流が発生されるので、永久磁石カップリングの過熱は、公知の構成に対して高い回転数及び/又は長い空転の場合でも回避することができる。
【0021】
図3は、その他の構造は比較可能で、インナロータが、駆動され、本発明による永久磁石カップリングのスペース5を備える第1のロータ1aを構成する選択的な形成を示す。この実施形の場合も、第1のロータ1aが、12個の永久磁石2bを有する第2のロータ1bとは違って、反対に整向されたそれぞれ2つの永久磁石の3つのグループで配設され6個の永久磁石2aしか備えない。
【0022】
図4は、第1のロータ1aに、ここでは模範駅にインナロータに、第1のロータ1aの1つの永久磁石2aの角度領域にわたってのみ延在するスペース5が設けられている、本発明の選択的な形成を示す。従って、磁化方向のさもなければ交互の整向に基づいて、スペース5に隣接するそれぞれ1つの永久磁石2aの磁化方向が等しい。
【符号の説明】
【0023】
1a 第1のロータ
1b 第2のロータ
2a 永久磁石
2b 永久磁石
3 空隙
4a ロータサポート
4b ロータサポート
5 スペース
図1A
図1B
図2
図3
図4