特許第6007130号(P6007130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6007130
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/34 20060101AFI20160929BHJP
   F16F 9/508 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   F16F9/34
   F16F9/508
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-39734(P2013-39734)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-167335(P2014-167335A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 正平
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−054236(JP,U)
【文献】 特開昭58−178035(JP,A)
【文献】 実開昭60−188082(JP,U)
【文献】 特開2000−145986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H9/00−9/16
F16F9/00−9/58
F16K1/00−1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダに摺動可能に嵌装されて該シリンダ内を2室に区画するピストンと、
前記ピストンに連結されるとともに前記シリンダの外部へ延出するピストンロッドと、を備えるシリンダ装置であって、
前記ピストンの一方向の移動時に、ピストン速度が遅い領域で開弁して前記2室のうち前記ピストンの移動側の圧力室を他の室に連通しつつ低減衰力を発生させ、ピストン速度が速い領域で閉弁する第1の開閉弁機構と、
前記ピストンの前記一方向の移動時に、ピストン速度が速い領域で開弁して前記圧力室を前記他の室に連通しつつ高減衰力を発生させる第2の開閉弁機構と、を有し、
前記第1の開閉弁機構は、
前記圧力室と前記他の室とを連通させる連通路と、
該連通路の前記圧力室側に設けられた第1弁座と、
前記連通路の前記他の室側に設けられた第2弁座と、
軸方向の一側に前記第1弁座に着座する第1弁部が形成され軸方向の他側に前記第2弁座に着座する第2弁部が形成されて軸方向に移動する弁体と、
該弁体を、前記第1弁部が前記第1弁座に着座する方向に付勢する付勢手段とを有することを特徴とするシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器において、入力された地震による振動が大きい場合に、ピンが外れることにより減衰力を低減衰側から高減衰側に切り替えるものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−255662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の緩衝器を、高減衰側から低減衰側に戻す場合には、人手によりピンを差し込む必要があり、地震が連続して発生する場合には所望の減衰力を発生できない可能性があった。
【0005】
したがって、本発明は、高減衰側から低減衰側に自動的に戻すことができ、地震が連続して発生する場合であっても所望の減衰力を発生可能なシリンダ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ピストンの一方向の移動時に、ピストン速度が遅い領域で開弁してシリンダ内の2室のうち前記ピストンの移動側の圧力室を他の室に連通しつつ低減衰力を発生させ、ピストン速度が速い領域で閉弁する第1の開閉弁機構と、前記ピストンの前記一方向の移動時に、ピストン速度が速い領域で開弁して前記圧力室を前記他の室に連通しつつ高減衰力を発生させる第2の開閉弁機構と、を有し、前記第1の開閉弁機構は、前記圧力室と前記他の室とを連通させる連通路と、該連通路の前記圧力室側に設けられた第1弁座と、前記連通路の前記他の室側に設けられた第2弁座と、軸方向の一側に前記第1弁座に着座する第1弁部が形成され軸方向の他側に前記第2弁座に着座する第2弁部が形成されて軸方向に移動する弁体と、該弁体を、前記第1弁部が前記第1弁座に着座する方向に付勢する付勢手段とを有する構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高減衰側から低減衰側に自動的に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る第1実施形態のシリンダ装置を示す断面図である。
図2】本発明に係る第1実施形態のシリンダ装置の要部を示す部分拡大断面図である。
図3】本発明に係る第1実施形態のシリンダ装置による減衰力特性を示す特性線図である。
図4】本発明に係る第2実施形態のシリンダ装置を示す断面図である。
図5】本発明に係る第2実施形態のシリンダ装置の要部を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態のシリンダ装置を図1図3を参照して以下に説明する。
【0010】
図1に示す第1実施形態のシリンダ装置10は、具体的には建築物に地震等により生じる振動を抑制する制振ダンパとなっている。シリンダ装置10は、作動流体としての油液が封入されるシリンダ11と、シリンダ11に摺動可能に嵌装されてシリンダ11内を室(圧力室)12と室(他の室)13との2室に区画するピストン14と、シリンダ11の中心軸線上に配置されてピストン14に連結されるとともに軸方向両側がシリンダ11の外部へ延出するピストンロッド15とを備えている。
【0011】
シリンダ11は、円筒状をなすシリンダ本体20と、シリンダ本体20の軸方向一端側に嵌合される有孔円板状のロッドガイド21と、シリンダ本体20の軸方向他端側に嵌合される有孔円板状のロッドガイド22とを有している。
【0012】
ロッドガイド21のシリンダ本体20に嵌合する径方向外側の段状の嵌合部25には、シリンダ本体20とロッドガイド21との隙間を密封するOリング26が設けられている。また、ロッドガイド21には、径方向の中央に軸方向に貫通する貫通孔27が形成されており、この貫通孔27には外側から順にシール部材28、シール部材29、摺動部材30が設けられていて、これらの内側にピストンロッド15が挿通されている。シール部材28,29はロッドガイド21とピストンロッド15との隙間を密封し、摺動部材30はピストンロッド15の摺動を案内する。
【0013】
ロッドガイド22のシリンダ本体20に嵌合する径方向外側の段状の嵌合部35にも、シリンダ本体20とロッドガイド22との隙間を密封するOリング36が設けられている。また、ロッドガイド22にも、径方向の中央に軸方向に貫通する貫通孔37が形成されており、この貫通孔37には外側から順にシール部材38、シール部材39、摺動部材40が設けられていて、これらの内側にピストンロッド15が挿通されている。シール部材38,39はロッドガイド22とピストンロッド15との隙間を密封し、摺動部材40はピストンロッド15の摺動を案内する。
【0014】
シリンダ本体20には、軸方向の一端位置に径方向に貫通する貫通孔43が形成されており、軸方向の他端位置にも径方向に貫通する貫通孔44が形成されている。貫通孔43にはプラグ45が、貫通孔44にはプラグ46が、それぞれ着脱可能に取り付けられている。これらはメンテナンス用のものであり、一側の貫通孔43およびプラグ45は、一方の室12の油液の給排用、他側の貫通孔44およびのプラグ46は、他方の室13の油液の給排用となっている。
【0015】
ピストンロッド15には、軸方向中間位置の外周部に径方向内方に凹む円環状の装着溝50が形成されている。ピストンロッド15は、この装着溝50よりも軸方向一側が、ロッドガイド21の貫通孔27とシール部材28,29と摺動部材30とを摺動する一定径の摺動軸部51となっており、装着溝50よりも軸方向他側が、ロッドガイド22の貫通孔37とシール部材38,39と摺動部材40とを摺動する一定径の摺動軸部52となっている。摺動軸部51と摺動軸部52とは同軸同径となっている。
【0016】
ピストン14は、半円筒状の一対の取付部材55,56と、有孔円板状のピストン本体57と、有孔円板状の取付板58とを有している。ピストン本体57は、径方向中央に軸方向に貫通する貫通孔60が形成されており、この貫通孔60は軸方向一側が大径孔部61とされ、軸方向他側が大径孔部61よりも小径の小径孔部62とされている。取付板58には径方向中央に軸方向に貫通する貫通孔64が形成されている。
【0017】
一対の取付部材55,56は、ピストンロッド15の装着溝50に嵌合されており、ピストン本体57は、小径孔部62においてピストンロッド15の摺動軸部52に嵌合し、大径孔部61において取付部材55,56に嵌合している。また、取付板58は、貫通孔64においてピストンロッド15の摺動軸部51に嵌合しており、ピストン本体57とで一対の取付部材55,56を軸方向に挟むようにして、ピストン本体57に固定される。これにより、ピストン本体57が、ピストンロッド15に軸方向移動不可となるように装着されている。ピストン14は、ピストン本体57の外周面においてシリンダ11のシリンダ本体20の内周面を摺動することになり、ピストン本体57の外周部には、ピストン本体57とシリンダ本体20との隙間を密封するシール部材としてのOリング66が設けられている。ピストン14は、軸方向の一方向である室12側に移動するとこの室12の油液を圧縮して圧力を高める。
【0018】
ピストン本体57には、貫通孔60と外周部との間に、軸方向に貫通する貫通孔70が形成されている。貫通孔70は、図2に示すように、軸方向の一方の室12側が小径孔部71とされ、小径孔部71の軸方向の室12とは反対側が小径孔部71よりも大径の中径孔部72とされ、中径孔部72よりも軸方向の他方の室13側が中径孔部72よりも大径の大径孔部73となっている。大径孔部73の軸方向の室13側にはメネジ74が形成されている。
【0019】
大径孔部73のメネジ74には、中央に軸方向に沿う貫通孔77が形成された円環状のストッパ78がその外周部のオネジ79において螺合されている。
【0020】
大径孔部73のストッパ78よりも小径孔部71側には弁体81が設けられている。この弁体81は、軸方向のストッパ78とは反対側から順に、小径孔部71に摺動可能に嵌合される先端軸部82と、先端軸部82よりも大径で中径孔部72よりも小径で中径孔部72の径方向間に隙間をもって嵌合される第1弁部83と、第1弁部83よりも大径かつ大径孔部73よりも小径のバネ受フランジ部84と、先端軸部82よりも小径の中間軸部85と、ストッパ78の貫通孔77よりも大径かつ大径孔部73よりも小径でストッパ78に当接可能な第2弁部86と、ストッパ78の貫通孔77よりも小径でこの貫通孔77に径方向に隙間をもって挿通される基端軸部87とを有している。先端軸部82には径方向に貫通し基端軸部87とは反対側に抜ける溝90が形成されており、基端軸部87にも径方向に貫通し先端軸部82とは反対側に抜ける溝91が形成されている。
【0021】
弁体81の軸方向の一側に形成された第1弁部83は、第1弁座95に着座することにより小径孔部71を閉塞可能であり、弁体81の軸方向の他側に形成された第2弁部86はストッパ78の小径孔部71側の端面を含む第2弁座96に着座することにより貫通孔77を閉塞可能となっている。ここで、第1弁部83と第2弁部86との軸方向距離は第1弁座95と第2弁座96との軸方向距離よりも短くなっており、これにより、弁体81は、第1弁部83が第1弁座95に着座し且つ第2弁部86が第2弁座96から離座する状態から、第2弁部86が第2弁座96に着座し且つ第1弁部83が第1弁座95から離座する状態までの間で軸方向に移動し、その間、先端軸部82が常に小径孔部71内を移動し、基端軸部87が常に貫通孔77内を移動する。
【0022】
弁体81のバネ受フランジ部84とストッパ78との間にはコイルスプリング(付勢手段)98が設けられており、このコイルスプリング98は、弁体81を第1弁部83が第1弁座95に着座する方向に付勢している。弁体81およびコイルスプリング98は、ストッパ78とピストン本体57の大径孔部73のストッパ78よりも中径孔部72側の内室99に設けられている。
【0023】
弁体81の第1弁部83が第1弁座95から離座し且つ第2弁部86が第2弁座96から離座する状態では、小径孔部71と、先端軸部82の溝90と、内室99と、基端軸部87とストッパ78の貫通孔77との隙間とが、室12と室13とを連通させる連通路100となっている。第1弁座95および第2弁座96のうちの第1弁座95が、連通路100の、ピストン14の室12側への移動時に高圧となる室12側に設けられており、この第1弁座95に弁体81の第1弁部83が着座することで連通路100を介した室12,13間の連通が遮断される。また、第1弁座95および第2弁座96のうちの第2弁座96が、連通路100の、ピストン14の室12側への移動時に低圧となる室13側に設けられており、この第2弁座96に弁体81の第2弁部86が着座することで連通路100を介した室12,13間の連通が遮断される。
【0024】
上記した連通路100と、連通路100に設けられた第1弁座95および第2弁座96と、第1弁部83および第2弁部86を有する弁体81と、コイルスプリング98とが、室12と室13との差圧に応じて連通路100を開閉する第1の開閉弁機構101を構成している。第1の開閉弁機構101は、ピストン14に設けられており、室12の圧力が高くなり室13の圧力が低くなってこれらの差圧が第1の開弁差圧を超えると開弁して室12と室13とを連通させる。
【0025】
ピストン本体57には、径方向の貫通孔60と貫通孔70との間に、これらに平行をなして、室13側の端面から室12側の途中位置まで配置穴110が形成されており、これら貫通孔60と貫通孔70と配置穴110とは中心線が同一平面に配置されている。また、ピストン本体57には、貫通孔70の大径孔部73と配置穴110とを連通させる連通穴111が外周面から配置穴110の位置まで径方向に沿って形成されている。連通穴111の貫通孔70よりも配置穴110とは反対側にメネジ112が形成されており、このメネジ112に連通穴111を封止する封止ネジ113が螺合されている。連通穴111は貫通孔70の大径孔部73の中径孔部72側と配置穴110の底側とを連通させる。
【0026】
配置穴110は、軸方向の室12側である底側が小径穴部116とされ、小径穴部116の軸方向の室13側が小径穴部116よりも大径の大径穴部117とされている。大径穴部117の軸方向の室13側の端部にはメネジ118が形成されている。
【0027】
大径穴部117にはベース部材121が取り付けられている。このベース部材121は、底部122と筒部123とを有する有底筒状をなしており、筒部123の底部122とは反対側には、外周部にオネジ124が形成されている。このベース部材121は、オネジ124において配置穴110のメネジ118に螺合し底部122において大径穴部117の底面に当接した状態で配置穴110に固定される。ベース部材121の底部122には、軸方向の筒部123とは反対側に小径孔部125が形成され、小径孔部125の軸方向の筒部123側が小径孔部125よりも大径の中径孔部126とされ、筒部123の内側が中径孔部126よりも大径の大径孔部127とされている。大径孔部127の軸方向の中径孔部126とは反対側の内周部にはメネジ128が形成されている。
【0028】
大径孔部127のメネジ128には、中央に軸方向に沿う貫通孔131が形成された円環状のストッパ132がその外周部のオネジ133において螺合されている。このストッパ132は、外周部にオネジ133が形成された主部134と、主部134よりも外径が小径とされた凸状部135とを有しており、貫通孔131は、これら主部134および凸状部135を貫通している。
【0029】
大径孔部127のストッパ132よりも小径孔部125側には弁体141が設けられている。この弁体141は、軸方向のストッパ132とは反対側から順に、小径孔部125に摺動可能に嵌合される先端軸部142と、先端軸部142よりも大径で中径孔部126よりも小径で中径孔部126の径方向間に隙間をもって摺動可能に嵌合される弁部143と、弁部143よりも大径かつ大径孔部127よりも小径のバネ受フランジ部144と、先端軸部142よりも大径の基端軸部145とを有している。先端軸部142には径方向に貫通し基端軸部145とは反対側に抜ける溝146が形成されている。
【0030】
弁体141の弁部143は、中径孔部126の小径孔部125側の端面を含む弁座148に着座することにより小径孔部125を閉塞可能となっている。ここで、弁体141の弁部143よりも基端軸部145側の長さは、弁座148とストッパ132との軸方向距離よりも短くなっており、これにより、弁体141は、弁部143が弁座148に着座する状態と弁部143が弁座148から離座する状態との間で軸方向に移動する。
【0031】
弁体141のバネ受フランジ部144とストッパ132の主部134との間にはコイルスプリング149が設けられており、このコイルスプリング149は、弁体141をその弁部143が弁座148に着座する方向に付勢している。弁体141およびコイルスプリング149は、ベース部材121とストッパ132との間の内室150内に配置されている。
【0032】
なお、コイルスプリング149の付勢力は、第1の開閉弁機構101のコイルスプリング98の付勢力よりも高く設定されている。具体的に、室12,13間の圧力差が増大し、第1の開閉弁機構101の弁体81が第1弁部83を第1弁座95から離座させた後、第2弁部86を第2弁座96に着座させると、その直後に、弁体141の弁部143が弁座148から離座するように、コイルスプリング98,149の付勢力が設定されている。
【0033】
弁体141の弁部143が弁座148から離座する状態では、第1の開閉弁機構101の小径孔部71と弁体81の先端軸部82の溝90と内室99とに加えて、連通穴111と、配置穴110の小径穴部116と、ベース部材121の小径孔部125および中径孔部126と、弁体141の先端軸部142の溝146と、内室150と、ストッパ132の貫通孔131とが、室12と室13とを連通させる連通路151を構成している。この連通路151に弁座148が設けられており、この弁座148に弁体141の弁部143が着座することで連通路151を介した室12,13間の連通が遮断される。
【0034】
上記した連通路151と、連通路151に設けられた弁座148と、弁部143を有する弁体141と、コイルスプリング149とが、室12と室13との差圧に応じて連通路151を開閉する第2の開閉弁機構152を構成している。第2の開閉弁機構152は、ピストン14に設けられており、室12の圧力が高まり室13の圧力が低くなってこれらの差圧が上記した第1の開弁差圧よりも大きい第2の開弁差圧を超えると開弁して室12と室13とを連通させる。
【0035】
ピストン14が停止して室12と室13とに差圧が発生していない状態では、第1の開閉弁機構101の弁体81の第1弁部83がコイルスプリング98の付勢力で第1弁座95に着座して連通路100を閉塞しており、第2の開閉弁機構152の弁体141も弁部143がコイルスプリング149の付勢力で弁座148に着座している。これにより、ピストン14の連通路100および連通路151は閉塞されている。
【0036】
そして、ピストン14の室12側への一方向の移動時に、ピストン14で圧縮される室12の圧力が上昇しこれよりも室13の圧力が低下して、これらの差圧が第1の開閉弁機構101の弁体81に室13の方向に加わる。このとき、ピストン速度Vが遅い低速領域(図3の速度0〜速度v1)では、第1の開閉弁機構101の付勢力が低いコイルスプリング98で付勢されていた弁体81が第1弁部83を第1弁座95から離座させて開弁する。すると、貫通孔70内の連通路100が、室12と室13とを連通させる。このとき、コイルスプリング98の付勢力が低いため、減衰力Fが0〜f1と低い低減衰力を発生させることになる。この低速領域では、ピストン速度Vの増加量に対する減衰力Fの増加量の割合が低くなる。
【0037】
ピストン速度Vが上記低速領域より速い中速領域(図3の速度v1〜速度v2)になると、第1の開閉弁機構101のコイルスプリング98で付勢されていた弁体81が最大限移動して第2弁部86を第2弁座96に当接させて閉弁する。すると、ストッパ78の貫通孔77が閉塞されて、連通路100を閉じることになり、この連通路100を介しての室12と室13との連通が遮断される(図3の速度v1)。それとともに、室12と室13との差圧が、連通路151にある第2の開閉弁機構152の、付勢力が高いコイルスプリング149で付勢されていた弁体141にかかり、この弁体141が弁座148から離間して開弁する。すると、連通路151が、室12と室13とを連通させる。このとき、コイルスプリング149の付勢力が高いため、減衰力Fが減衰力f1〜f2の高減衰力を発生させることになる。この中速領域では、ピストン速度Vの増加量に対する減衰力Fの増加量の割合が上記低速領域よりも大幅に高くなる。
【0038】
ピストン速度が上記中速領域より速い高速領域(図3の速度v2〜)になると、ピストン本体57に第1の開閉弁機構101および第2の開閉弁機構152とは別途設けられた図1に示す流路154に設けられたリリーフ弁155が開いて、室12と室13とを連通させることにより、減衰力Fの上昇を抑制することになる。つまり、この高速領域では、図3に示すように、ピストン速度Vの増加量に対する減衰力Fの増加量の割合が中速領域よりも低くなる。
【0039】
他方、ピストン14の室13側への逆方向の移動時には、室13の圧力が上昇しこれよりも室12の圧力が低下することになるが、このとき、ピストン本体57に第1の開閉弁機構101および第2の開閉弁機構152とは別途設けられた図1に示す流路156のチェック弁157が開いて、室13と室12とを連通させる。このとき、流路156およびチェック弁157は流路抵抗が低く低減衰力を発生させることになる。
【0040】
つまり、ピストン14には第1の開閉弁機構101、第2の開閉弁機構152、リリーフ弁155およびチェック弁157の4種類が設けられている。
【0041】
以上に述べた第1実施形態によれば、ピストン14の一方向の室12側への移動時に、ピストン速度が遅い低速領域では、第1の開閉弁機構101の弁体81が高圧となる室12側からの圧力でコイルスプリング98の付勢力に抗して第1弁座95から第1弁部83を離座させて連通路100を開放し、シリンダ11内の2つの室12,13を連通しつつ低減衰力を発生させることになる。また、ピストンの室12側への移動時に、ピストン速度が速い中速領域では、第1の開閉弁機構101の弁体81が、高圧となる室12側からの圧力でコイルスプリング98の付勢力に抗して第2弁部86を低圧となる室13側の第2弁座96に着座させて連通路100を閉じることになり、低減衰力を発生させることはなくなる。それとともに、第2の開閉弁機構152の弁体141が室12側からの圧力でコイルスプリング149の付勢力に抗して弁座148から弁部143を離座させて開弁し連通路151を介して室12,13を連通しつつ高減衰力を発生させることになる。そして、再びピストン速度が遅い低速領域に向け下がると、第2の開閉弁機構152の弁体141がコイルスプリング149の付勢力で弁部143を弁座148に着座させて連通路151を閉じ、それとともに第1の開閉弁機構101の弁体81がコイルスプリング98の付勢力で第2弁座96から第2弁部86を離座させて、連通路100を開放する状態となり、室12,13を連通しつつ低減衰力を発生させる状態となる。したがって、高減衰側から低減衰側に、人手を介することなく自動的に戻すことができ、また、必要により何度でも低減衰側から高減衰側に切り替えたり、高減衰側から低減衰側に切り替えたりすることができる。よって、地震が連続的に発生する場合であっても所望の減衰力を発生させることができる。
【0042】
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を図3図5に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。
【0043】
図4に示す第2実施形態のシリンダ装置200も、建築物に地震等により生じる振動を抑制する制振ダンパとなっている。第2実施形態のシリンダ装置200は、そのシリンダ201が、円筒状のシリンダ本体202と、シリンダ本体202より大径でシリンダ本体202の外周側に設けられシリンダ本体202との間にリザーバ室(他の室)203を形成するように同軸状に配置される有底円筒状の外筒204とを有している。つまり、第2実施形態のシリンダ装置200は、そのシリンダ201が、シリンダ本体202と外筒204とを有する複筒式となっている。
【0044】
シリンダ装置200は、シリンダ本体202の中心軸線上に配置されるとともに軸方向一側がシリンダ本体202の内部に挿入され軸方向他側がシリンダ本体202および外筒204から外部に延出されるピストンロッド205と、このピストンロッド205の軸方向一側の端部に連結されシリンダ本体202内に摺動可能に嵌装されてシリンダ201内を二つの室(圧力室)206および室207に区画するピストン208とを有している。
【0045】
シリンダ201は、シリンダ本体202および外筒204におけるピストンロッド205の突出側の端部位置に嵌合されてピストン208との間に室206を形成するロッドガイド211を有している。なお、シリンダ本体202のロッドガイド211とは反対側には、図示略のベース部材が嵌合されている。このベース部材には、ピストン208のロッドガイド211とは反対側の室207とリザーバ室203とを連通可能な通路が形成されている。
【0046】
ピストンロッド205は、一定径の主軸部215と、主軸部215より小径の中径軸部216と、中径軸部216より小径のガイド軸部217と、ガイド軸部217より小径の小径軸部218とを有しており、小径軸部218の主軸部215とは反対側の外周部には、オネジ219が形成されている。
【0047】
ピストン208は、径方向の中央に軸方向に沿って貫通孔221が形成されている。ピストン208の貫通孔221にピストンロッド205の小径軸部218が挿通された状態で、ピストンロッド205のオネジ219にナット222が螺合されることで、ピストン208がピストンロッド205に取り付けられる。ピストン208の外周部には、ピストン208とシリンダ本体202との隙間を密封するOリング223が設けられている。
【0048】
ピストン208には、径方向の貫通孔221と外周部との間に、軸方向に貫通する複数の通路孔224が形成されており、複数の通路孔224によって室206と室207とが連通可能となっている。ピストンロッド205のガイド軸部217には、円環状の弁部材226が軸方向移動可能に設けられており、この弁部材226とピストンロッド205の主軸部215の中径軸部216側の端面との間にコイルスプリング227が介装されている。このコイルスプリング227は、弁部材226をピストン208の複数の通路孔224の室206側の弁座228に密着させる方向に押圧することになり、弁座228に密着した弁部材226は複数の通路孔224を閉塞する。
【0049】
ピストンロッド205がそのロッドガイド211からの突出量が増大する伸び側に移動すると、ピストンロッド205と一体にピストン208が室206側に移動して、室206の圧力を室207の圧力よりも高くする。すると、ピストン208に設けられた弁部材226は複数の通路孔224を閉塞し、複数の通路孔224を介しての室206と室207との連通を遮断する。他方、ピストンロッド205がそのロッドガイド211からの突出量が減少する縮み側に移動すると、ピストンロッド205と一体にピストン208が室207側に移動して、室207側の圧力を室206側の圧力よりも高くする。すると、ピストン208に設けられた弁部材226はコイルスプリング227の付勢力に抗して移動して複数の通路孔224を開放し、複数の通路孔224を介しての室207と室206とを連通する。ここで、弁部材226、弁座228およびコイルスプリング227は、室207から室206への油液の流れのみを許容するチェック弁229を構成している。
【0050】
外筒204は、有底円筒状の外筒本体231と、外筒本体231の開口側の端部に溶接される円筒状の支持部材232とを有している。支持部材232は、外筒本体231と同外径であって外筒本体231よりも径方向に厚肉とされている。
【0051】
ロッドガイド211は、外周側が、軸方向一側から順に、大径外径部235と、大径外径部235よりも小径の中間外径部236と、中間外径部236よりも小径の段差外径部237と、段差外径部237よりも小径の小径外径部238とを有している。ロッドガイド211は、中間外径部236において外筒204の支持部材232に嵌合され、小径外径部238においてシリンダ本体202に嵌合されている。中間外径部236には支持部材232との隙間を密封する二本のOリング239,240が設けられており、小径外径部238にはシリンダ本体202との隙間を密封するOリング241が設けられている。
【0052】
また、ロッドガイド211には、径方向の中央に軸方向に貫通する貫通孔244が形成されており、この貫通孔244には軸方向の外側にシール部材245およびシール部材246が設けられていて、これらの内側にピストンロッド205が挿通されている。シール部材245,246はロッドガイド211とピストンロッド205との隙間を密封する。ロッドガイド211の内周部には、軸方向のシール部材245,246よりも内側に、いずれも室206に連通する通路溝248および通路溝249が、貫通孔244から径方向外方に凹んで形成されている。通路溝248,249は、ロッドガイド211の軸方向に沿って形成されており、通路溝248は、通路溝249よりもロッドガイド211の軸方向に長くなっている。
【0053】
ロッドガイド211には、図5に示すように、軸方向の大径外径部235と通路溝248とが重なる位置に、径方向に貫通する貫通孔251が形成されている。また、ロッドガイド211には、この貫通孔251よりもロッドガイド211の軸方向の小径外径部238とは反対側に、配置穴252が貫通孔251と平行に形成されている。貫通孔244と貫通孔251と配置穴252とは中心線が同一平面に配置されている。
【0054】
貫通孔251は、ロッドガイド211の径方向の内側が通路溝248に開口する小径孔部253とされ、小径孔部253の外側が小径孔部253よりも大径の中径孔部254とされ、中径孔部254よりも外側が中径孔部254よりも大径の大径孔部255とされている。中径孔部254の大径孔部255側の端部にはメネジ256が形成されており、大径孔部255の中径孔部254とは反対側の端部にもメネジ257が形成されている。
【0055】
貫通孔251の中径孔部254のメネジ256には、中央に軸方向に沿う貫通孔260が形成された円環状のストッパ261がその外周部のオネジ262において螺合されている。
【0056】
中径孔部254のストッパ261よりも小径孔部253側には、弁体265が設けられている。この弁体265は、軸方向のストッパ261とは反対側から順に、小径孔部253に摺動可能に嵌合される先端軸部266と、先端軸部266よりも大径で中径孔部254よりも小径の第1弁部267と、第1弁部267よりも大径かつ中径孔部254よりも小径のバネ受フランジ部268と、先端軸部266よりも若干大径の中間軸部269と、ストッパ261の貫通孔260よりも大径かつ中径孔部254よりも小径でストッパ261に当接可能な第2弁部270と、ストッパ261の貫通孔260よりも小径でこの貫通孔260に径方向に隙間をもって挿通される基端軸部271とを有している。先端軸部266には径方向に貫通し基端軸部271とは反対側に抜ける溝272が形成されており、基端軸部271にも径方向に貫通し先端軸部266とは反対側に抜ける溝273が形成されている。
【0057】
弁体265の軸方向の一側に形成された第1弁部267は、中径孔部254の小径孔部253側の端面を含む第1弁座276に着座することにより小径孔部253を閉塞可能であり、弁体265の軸方向の他側に形成された第2弁部270はストッパ261の小径孔部253側の端面を含む第2弁座277に着座することにより貫通孔260を閉塞可能となっている。ここで、第1弁部267と第2弁部270との軸方向距離は第1弁座276と第2弁座277との軸方向距離よりも短くなっており、これにより、弁体265は、第1弁部267が第1弁座276に着座し且つ第2弁部270が第2弁座277から離座する状態から、第2弁部270が第2弁座277に着座し且つ第1弁部267が第1弁座276から離座する状態までの間で軸方向に移動する。
【0058】
弁体265のバネ受フランジ部268とストッパ261との間にはコイルスプリング(付勢手段)280が設けられており、このコイルスプリング280は、弁体265を第1弁部267が第1弁座276に着座する方向に付勢している。弁体265およびコイルスプリング280は、ロッドガイド211の中径孔部254とストッパ261との間の内室281内に設けられている。
【0059】
貫通孔251の大径孔部255のメネジ257には、大径孔部255の中径孔部254とは反対側の端部を封止する封止部材285がそのオネジ286において螺合されている。封止部材285のオネジ286よりも中径孔部254側の外周部には、封止部材285と大径孔部255との隙間を密封するOリング287が設けられている。
【0060】
ロッドガイド211には、径方向の段差外径部237と小径外径部238との間にて軸方向に延びる通路穴290が形成されている。通路穴290は、一端側が貫通孔251の大径孔部255を貫通して配置穴252まで延びており、他端側がリザーバ室203に連通している。
【0061】
よって、弁体265の第1弁部267が第1弁座276から離座し且つ第2弁部270が第2弁座277から離座する状態では、ロッドガイド211の通路溝248と、小径孔部253と、弁体265の先端軸部266の溝272と、内室281と、基端軸部271とストッパ261の貫通孔260との隙間と、ロッドガイド211の大径孔部255と通路穴290とが、室206とリザーバ室203とを連通させる連通路291となっている。第1弁座276および第2弁座277のうちの第1弁座276が、この連通路291の、ピストン208の室206側への移動時に高圧となる室206側に設けられており、この第1弁座276に弁体265の第1弁部267が着座することで連通路291を介した室206とリザーバ室203との間の連通を遮断する。また、第1弁座276および第2弁座277のうちの第2弁座277が、連通路291の、ピストン208の室206側への移動時に低圧となるリザーバ室203側に設けられており、この第2弁部270に弁体265の第2弁部270が着座することで連通路291を介した室206とリザーバ室203との間の連通を遮断する。
【0062】
上記した連通路291と、連通路291に設けられた第1弁座276および第2弁座277と、第1弁部267および第2弁部270を有する弁体265と、コイルスプリング280とが、室206とリザーバ室203との差圧に応じて連通路291を開閉する第1の開閉弁機構292を構成している。第1の開閉弁機構292は、ピストン208以外の部品であるロッドガイド211に設けられており、室206の圧力が高くなり、これと比べてリザーバ室203の圧力が低くなってこれらの差圧が第1の開弁差圧を超えると開弁して室206とリザーバ室203とを連通させる。
【0063】
ロッドガイド211には、貫通孔251の中径孔部254と配置穴252とを連通させる連通穴295が軸方向の外端面から配置穴252の位置まで軸方向に沿って形成されている。連通穴295の配置穴252よりも貫通孔251とは反対側にメネジ296が形成されており、このメネジ296に連通穴295を封止する封止ネジ297が螺合されている。連通穴295は貫通孔251の中径孔部254と配置穴252の底側とを連通させる。
【0064】
配置穴252は、底側が小径の小径穴部300とされ、小径穴部300の外側が小径穴部300よりも大径の大径穴部301とされている。小径穴部300の大径穴部301側の端部にはメネジ302が形成されており、大径穴部301の小径穴部300とは反対側の端部にもメネジ303が形成されている。
【0065】
小径穴部300にはベース部材305が取り付けられている。このベース部材305は、円板状をなしており、径方向の中央に軸方向に貫通する貫通孔306が形成され、外周部にオネジ307が形成されている。このベース部材305は、オネジ307において配置穴252の小径穴部300のメネジ302に螺合して配置穴252に固定される。
【0066】
配置穴252の大径穴部301のメネジ303には、大径穴部301の小径穴部300とは反対側の端部を封止する封止部材310がそのオネジ311において螺合されている。封止部材310のオネジ311よりも小径穴部300側の外周部には、封止部材310と大径穴部301との隙間を密封するOリング312が設けられている。
【0067】
ベース部材305と封止部材310との間には、弁体315が設けられている。この弁体315は、軸方向の封止部材310とは反対側から順に、ベース部材305の貫通孔306に摺動可能に嵌合される先端軸部316と、先端軸部316よりも大径の弁部317と、弁部317よりも大径かつ大径穴部301よりも小径のバネ受フランジ部318と、先端軸部316よりも大径の基端軸部319とを有している。先端軸部316には径方向に貫通し基端軸部319とは反対側に抜ける溝320が形成されている。
【0068】
弁体315の弁部317は、ベース部材305の封止部材310側の端面を含む弁座325に着座することにより貫通孔306を閉塞可能となっている。ここで、弁体315の弁部317よりも基端軸部319側の長さは、弁座325と封止部材310との軸方向距離よりも短くなっており、これにより、弁体315は、弁部317が弁座325に着座する状態と弁部317が弁座325から離座する状態との間で軸方向に移動する。
【0069】
弁体315のバネ受フランジ部318と封止部材310との間にはコイルスプリング326が設けられており、このコイルスプリング326は、弁体315を弁部317が弁座325に着座する方向に付勢している。弁体315およびコイルスプリング326は、ロッドガイド211の大径穴部301とベース部材305と封止部材310との間の内室327内に配置されている。
【0070】
なお、コイルスプリング326の付勢力は、第1の開閉弁機構292のコイルスプリング280の付勢力よりも高く設定されている。具体的に、室206,203間の圧力差が増大し、第1の開閉弁機構292の弁体265が第1弁部267を第1弁座276から離座させた後、第2弁部270を第2弁座277に着座させると、その直後に、弁体315の弁部317が弁座325から離座するように、コイルスプリング280,326の付勢力が設定されている。
【0071】
弁体315の弁部317が弁座325から離座する状態では、通路溝248と、第1の開閉弁機構292の小径孔部253と、弁体265の先端軸部266の溝272と、内室281とに加えて、連通穴295と、配置穴252の小径穴部300と、ベース部材305の貫通孔306と、弁体315の先端軸部316の溝320と、内室327と、貫通孔251の大径孔部255と、通路穴290とが、室206とリザーバ室203とを連通させる連通路330を構成している。この連通路330に弁座325が設けられており、この弁座325に弁体315の弁部317が着座することで連通路330を介した室206とリザーバ室203との間の連通を遮断する。
【0072】
上記した連通路330と、連通路330に設けられた弁座325と、弁部317を有する弁体315と、コイルスプリング326とが、室206とリザーバ室203との差圧に応じて連通路330を開閉する第2の開閉弁機構331を構成している。第2の開閉弁機構331は、ピストン208以外の部品であるロッドガイド211に設けられており、室206の圧力が高くなりこれよりもリザーバ室203の圧力が低くなってこれらの差圧が上記した第1の開弁差圧よりも大きい第2の開弁差圧を超えると開弁して室206とリザーバ室203とを連通させる。
【0073】
図4に示すように、ロッドガイド211には、長さの短い通路溝249の位置に、この通路溝249から段差外径部237に貫通するように貫通孔335が形成されている。この貫通孔335の通路溝249とは反対側の端部は封止ネジ336で閉塞されている。また、ロッドガイド211には、その軸方向に沿って、連通穴340が、貫通孔335に連通するように形成されている。この連通穴340は、貫通孔335への連通部分が小径穴部341とされ、それ以外の部分が小径穴部341よりも大径の大径穴部342とされていて、大径穴部342の小径穴部341とは反対側の端部にメネジ343が形成されている。
【0074】
大径穴部342のメネジ343には、連通穴340の大径穴部342の小径穴部341とは反対側の端部を封止する封止部材345がそのオネジ346において螺合されている。封止部材345のオネジ346よりも小径穴部341側の外周部には、封止部材345と大径穴部342との隙間を密封するOリング347が設けられている。
【0075】
大径穴部342内には、弁体351が設けられている。この弁体351は、軸方向の封止部材345とは反対側から順に、小径穴部341に摺動可能に嵌合される先端軸部352と、先端軸部352よりも大径の弁部353と、弁部353よりも小径の基端軸部354とを有している。弁体351には、径方向の中央に軸方向に貫通するオリフィス孔355が形成されている。弁部353は、大径穴部342の小径穴部341側の端面を含む弁座358に着座することにより小径穴部341を閉塞可能となっている。
【0076】
弁体351の弁部353と封止部材345との間にはコイルスプリング360が設けられており、このコイルスプリング360は、弁体351を弁部353が弁座358に着座する方向に付勢している。弁体351およびコイルスプリング360は、封止部材345とロッドガイド211の大径穴部342との間の内室361内に配置されている。ロッドガイド211には、この内室361をリザーバ室203に連通させる連通穴362が形成されている。弁体351、弁座358およびコイルスプリング360は、室206からリザーバ室203側に油液を流すリリーフ弁363を構成している。つまり、ロッドガイド211に、第1の開閉弁機構292、第2の開閉弁機構331およびリリーフ弁363の3種類が設けられている。
【0077】
ピストン208が停止していて、室206と、室207およびリザーバ室203とに差圧が発生していない状態では、図5に示すように、第1の開閉弁機構292の弁体265の第1弁部267がコイルスプリング280の付勢力で第1弁座276に着座して連通路291を閉塞しており、第2の開閉弁機構331の弁体315も弁部317がコイルスプリング326の付勢力で弁座325に着座している。これにより、ロッドガイド211の連通路291および連通路330は閉塞されている。
【0078】
そして、ピストン208の室206側への一方向の移動時に、室206の圧力が上昇しこれよりもリザーバ室203の圧力が低下して、これらの差圧が第1の開閉弁機構292の弁体265に径方向外側に加わる。このとき、ピストン速度Vが遅い低速領域(図3の速度0〜速度v1)では、第1の開閉弁機構292の付勢力が低いコイルスプリング280で付勢されていた弁体265が第1弁部267を第1弁座276から離座させて開弁する。すると、連通路291が、室206とリザーバ室203とを連通させる。このとき、コイルスプリング280の付勢力が低いため、減衰力Fが0〜f1と低い低減衰力を発生させることになる。この低速領域では、ピストン速度Vの増加量に対する減衰力Fの増加量の割合が低くなる。
【0079】
ピストン速度Vが上記低速領域より速い中速領域(図3の速度v1〜速度v2)になると、第1の開閉弁機構292のコイルスプリング280で付勢されていた弁体265が最大限移動して第2弁部270を第2弁座277に当接させて閉弁する。すると、ストッパ261の貫通孔260が閉塞されて、連通路291を閉じることになり、この連通路291を介しての室206とリザーバ室203との連通が遮断される。それとともに、室206とリザーバ室203との差圧が、連通路330にある第2の開閉弁機構331の、付勢力が高いコイルスプリング326で付勢されていた弁体315にかかり、この弁体315が弁座325から離間して開弁する。すると、連通路330が、室206とリザーバ室203とを連通させる。このとき、コイルスプリング326の付勢力が高いため、減衰力Fが減衰力f1〜f2の高減衰力を発生させることになる。この中速領域では、ピストン速度Vの増加量に対する減衰力Fの増加量の割合が上記低速領域よりも大幅に高くなる。
【0080】
ピストン速度が上記中速領域より速い高速領域(図3の速度v2〜)になると、第1の開閉弁機構292および第2の開閉弁機構331とは別途設けられたリリーフ弁363が開いて、室206とリザーバ室203とを連通させることにより、減衰力の上昇を抑制することになる。つまり、この高速領域では、図3に示すように、ピストン速度Vの増加量に対する減衰力Fの増加量の割合が中速領域よりも低くなる。
【0081】
他方、ピストン208の室207側への逆方向の移動時には、室207の圧力が上昇し室206の圧力が低下することになるが、このとき、ピストン208に設けられたチェック弁229が開いて、室207と室206とを通路孔224を介して連通させる。このとき、チェック弁229は、ほぼ減衰力を発生させずに油液を流す。
【0082】
以上に述べた第2実施形態によれば、ピストン208の一方向の室206側への移動時に、ピストン速度が遅い低速領域では、第1の開閉弁機構292の弁体265が高圧となる室206側からの圧力でコイルスプリング280の付勢力に抗して第1弁座276から第1弁部267を離座させて連通路291を開放し、室206とリザーバ室203とを連通しつつ低減衰力を発生させることになる。また、ピストンの室206側への移動時に、ピストン速度が速い中速領域では、第1の開閉弁機構292の弁体265が、高圧となる室206側からの圧力でコイルスプリング280の付勢力に抗して第2弁部270を低圧となるリザーバ室203側の第2弁座277に着座させて連通路291を閉じることになり、低減衰力を発生させることはなくなる。それとともに、第2の開閉弁機構331の弁体315が室206側からの圧力でコイルスプリング326の付勢力に抗して弁座325から弁部317を離座させて開弁し連通路330を介して室206とリザーバ室203とを連通しつつ高減衰力を発生させることになる。そして、再びピストン速度が遅い低速領域に向け下がると、第2の開閉弁機構331の弁体315がコイルスプリング326の付勢力で弁部317を弁座325に着座させて連通路330を閉じ、それとともに第1の開閉弁機構292の弁体265がコイルスプリング280の付勢力で第2弁座277から第2弁部270を離座させて、連通路291を開放する状態となり、室206およびリザーバ室203を連通しつつ低減衰力を発生させる状態となる。したがって、高減衰側から低減衰側に人手を介することなく自動的に戻すことができ、また、必要により何度でも低減衰側から高減衰側に切り替えたり、高減衰側から低減衰側に切り替えたりすることができる。よって、地震が連続的に発生する場合であっても所望の減衰力を発生させることができる。
【0083】
以上に述べた実施形態は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダに摺動可能に嵌装されて該シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されるとともに前記シリンダの外部へ延出するピストンロッドと、を備えるシリンダ装置であって、前記ピストンの一方向の移動時に、ピストン速度が遅い領域で開弁して前記2室のうち前記ピストンの移動側の圧力室を他の室に連通しつつ低減衰力を発生させ、ピストン速度が速い領域で閉弁する第1の開閉弁機構と、前記ピストンの前記一方向の移動時に、ピストン速度が速い領域で開弁して前記圧力室を前記他の室に連通しつつ高減衰力を発生させる第2の開閉弁機構と、を有し、前記第1の開閉弁機構は、前記圧力室と前記他の室とを連通させる連通路と、該連通路の前記圧力室側に設けられた第1弁座と、前記連通路の前記他の室側に設けられた第2弁座と、軸方向の一側に前記第1弁座に着座する第1弁部が形成され軸方向の他側に前記第2弁座に着座する第2弁部が形成されて軸方向に移動する弁体と、該弁体を、前記第1弁部が前記第1弁座に着座する方向に付勢する付勢手段とを有することを特徴とする。
【0084】
ピストンの一方向の移動時に、ピストン速度が遅い領域では、第1の開閉弁機構の弁体が圧力室側からの圧力で付勢手段の付勢力に抗して第1弁座から第1弁部を離座させて連通路を開放し、圧力室と他の室とを連通しつつ低減衰力を発生させることになる。また、ピストンの前記一方向の移動時に、ピストン速度が速い領域では、第1の開閉弁機構の弁体が、圧力室側からの圧力で付勢手段の付勢力に抗して第2弁部を他の室側の第2弁座に着座させて連通路を閉じることになり、低減衰力を発生させることはなくなる。それとともに、第2の開閉弁機構が開弁してシリンダ内の圧力室を他の室に連通しつつ高減衰力を発生させることになる。そして、再びピストン速度が遅い領域になると、第1の開閉弁機構の弁体が付勢手段の付勢力で第2弁座から第2弁部を離座させて、連通路を開放する状態となり、圧力室と他の室とを連通しつつ低減衰力を発生させる状態となる。したがって、高減衰側から低減衰側に自動的に戻すことができる。
【符号の説明】
【0085】
11,201 シリンダ
12,206 室(圧力室)
13 室(他の室)
14,208 ピストン
15,205 ピストンロッド
81,265 弁体
83,267 第1弁部
86,270 第2弁部
95,276 第1弁座
96,277 第2弁座
98,280 コイルスプリング(付勢手段)
100,291 連通路
101,292 第1の開閉弁機構
152,331 第2の開閉弁機構
203 リザーバ室(他の室)
207 室
図1
図2
図3
図4
図5