(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施例1〕
[ブレーキ装置の全体構成]
実施例1のブレーキ装置1について説明する。
図1はブレーキ装置1の全体構成図である。
ブレーキ装置1は、運転者によって踏み込み操作が行われるブレーキペダル2と、ブレーキペダル2の踏み込みにより液圧を発生させるマスタシリンダ3と、ブレーキ液を貯留するリザーバタンク4と、各車輪に設けられブレーキ液圧により制動力を発生させるホイルシリンダ5A,5B,5C,5Dと、ホイルシリンダ5に供給するブレーキ液圧を制御するブレーキ液圧コントロールユニット6とを有している。ホイルシリンダ5A,5B,5C,5Dの「A」、「B」、「C」、「D」は、各車輪に設けられていることを区別するために記載しているが、以降、他の構成においても特に区別しないときには「A」、「B」、「C」、「D」の表示は省略する。
ブレーキペダル2にはプッシュロッド2aが接続されており、プッシュロッド2aはマスタシリンダ3のプライマリピストン3aに接続している。ブレーキペダル2には、ブレーキペダル2の踏み込み量を検出するストロークセンサ2bが設けられている。
マスタシリンダ3内にはシリンダ3eが形成されており、このシリンダ3e内をプライマリピストン3aとセカンダリピストン3bとが摺動可能に設けられている。シリンダ3eはセカンダリピストン3bによりプライマリ液圧室3cとセカンダリ液圧室3dとに隔成されており、プライマリ液圧室3cはプライマリピストン3aによって内部のブレーキ液が増圧され、セカンダリ液圧室3dはセカンダリピストン3bによって内部のブレーキ液が増圧される。プライマリ液圧室3cとセカンダリ液圧室3dには、それぞれリザーバタンク4からブレーキ液が供給される。
【0009】
[ブレーキ液圧コントロールユニットの構成]
ブレーキ液圧コントロールユニット6の構成について説明する。ブレーキ液圧コントロールユニット6には、マスタシリンダ3のプライマリ液圧室3cとホイルシリンダ5A,5Bとを接続するプライマリ液路60Pと、セカンダリ液圧室3dとホイルシリンダ5C,5Dとを接続するセカンダリ液路60Sが形成されている。プライマリ液路60Pの「P」はプライマリ系統に設けられていることを示し、セカンダリ液路60Sの「S」はセカンダリ系統に設けられていることを示すが、以降、他の構成であっても特に区別をしないときには「P」、「S」の表示は省略する。また、ホイルシリンダ5の接続は、ホイルシリンダ5A,5Bが左前輪、右後輪用とし、ホイルシリンダ5C,5Dが右前輪、左後輪用とする所謂X配管であっても、ホイルシリンダ5A,5Bが左前輪、左後輪用とし、ホイルシリンダ5C,5Dが右前輪、右後輪用とする所謂H配管であっても良く特に限定しない。
プライマリ液路60Pには常開型の比例弁である遮断弁61Pが、セカンダリ液路60Sには同じく常開型の比例弁である遮断弁61Sが設けられている。プライマリ液路60P上であって、プライマリ液圧室3cと遮断弁61Pとの間には、プライマリ液圧室3c内の液圧を検出するマスタシリンダ圧センサ69が設けられている。
【0010】
プライマリ液路60P上であって、マスタシリンダ3のプライマリ液圧室3cと遮断弁61Pとの間から分岐するストロークシミュレータ液路66が形成されている。ストロークシミュレータ液路66には、ストロークシミュレータ80に接続している。ストロークシミュレータ液路66上であって、プライマリ液路60Pとストロークシミュレータ80との間には常閉型のオン/オフ弁であるストロークシミュレータ遮断弁65が設けられている。ストロークシミュレータ80は、ピストン80aとスプリング80bとから構成されている。ストロークシミュレータ遮断弁65が開弁しているときに、マスタシリンダ3のプライマリ液圧室3cに発生する液圧に応じてピストン80aが変位し、ピストン80aの変位に応じてスプリング80bによる反力が発生して、ブレーキペダル2にペダル反力を発生させることが可能となる。
【0011】
プライマリ液路60P、セカンダリ液路60S上であって、各ホイルシリンダ5との間には常開型の比例弁である増圧弁62A,62B,62C,62Dが設けられている。また各増圧弁62を迂回するようにバイパス液路71A,71B,71C,71Dが形成されており、各バイパス液路71に一方弁70A,70B,70C,70Dが設けられている。一方弁70は、マスタシリンダ3側からホイルシリンダ5側へ流れるブレーキ液の流れを規制し、ホイルシリンダ5側からマスタシリンダ3側へのブレーキ液の流れを許可している。
プライマリ液路60P上であって遮断弁61Pと増圧弁62A,62Bとの間には、この間の液路内の液圧(以下、プライマリ液路液圧)を検出するプライマリ液路液圧センサ68Pが設けられ、セカンダリ液路60S上であって遮断弁61Sと増圧弁62C,62Dとの間には、この間の液路内の液圧(以下、セカンダリ液路液圧)を検出するセカンダリ液路液圧センサ68Sが設けられている。
【0012】
プライマリ液路60P上であってプライマリ液路液圧センサ68Pと増圧弁62A,62Bとの間と、セカンダリ液路60S上であってセカンダリ液路液圧センサ68Sと増圧弁62C,62Dとの間とを接続する連通液路73が形成されている。連通液路73とプライマリ液路60P側との間には常開型の比例弁である連通弁72Pが設けられ、連通液路73とセカンダリ液路60Sとの間には常閉型の比例弁である連通弁72Sが設けられている。また連通液路73には連通液路73の液圧を検出する連通液路液圧センサ76が設けられている。
連通弁72Pを常開型とし、連通弁72Sを常閉型としているが、これは電源失陥時であってもプライマリ液路60Pとセカンダリ液路60Sとの間を遮断することができるようにするためであり、連通弁72Pと連通弁72Sの少なくともどちらか一方が常閉型であれば良い。連通弁72Pと連通弁72Sとを両方常閉型としても良い。
【0013】
連通弁72Pと連通弁72Sは共に比例弁としているが、常開型である連通弁72Pはオン/オフ弁であっても良い。常閉型の連通弁72Sもオン/オフ弁としても良いが、通常制御では連通弁72Sは常時開弁制御するため、PWM制御による電流制御は実施したほうがよい。
連通液路73には、吐出弁77を介してポンプ78の吐出側が接続される。ポンプ78はモータ79により駆動される。吐出弁77は、ポンプ78から連通液路73に向かって吐出する方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向のブレーキ液の流れを規制している。ポンプ78の吸入側はリザーバタンク4と接続するサクション液路67と接続している。連通液路73とサクション液路67との間には還流液路74が形成され、この還流液路74には常閉型の比例弁である調圧弁75が設けられている。
【0014】
プライマリ液路60P上のホイルシリンダ5Aと増圧弁62Aとの間から減圧液路81Aが分岐し、ホイルシリンダ5Aと増圧弁62Bとの間から減圧液路81Bが分岐している。またセカンダリ液路60S上のホイルシリンダ5Cと増圧弁62Cとの間から減圧液路81Cが分岐し、ホイルシリンダ5Dと増圧弁62Dとの間から減圧液路81Dが分岐している。各減圧液路81はサクション液路67に接続している。
減圧液路81Aと減圧液路81Dには、それぞれ常閉型のオン/オフ弁である減圧弁63A,63Dが設けられている。減圧液路81Bと減圧液路81Cには、それぞれ常閉型の比例弁であるバックアップ減圧弁64B,64Cが設けられている。バックアップ減圧弁64C,64Cを比例弁としているのは調圧弁75が失陥したときに、調圧弁75の代わりにバックアップ減圧弁64B,64Cを用いるためである。減圧弁63A,63Bも比例弁として、調圧弁75の代わりに使用するようにしても良い。
【0015】
[コントローラの構成]
図2はコントローラ9の構成を示す図である。コントローラ9は、倍力液圧制御部90、自動ブレーキ液圧制御部91、片系統液圧制御部92、増圧異常液圧制御部93、減圧異常液圧制御部94、増圧異常検出部95、減圧異常検出部96、保持異常検出部97を有している。コントローラ9は、ストロークセンサ2b、マスタシリンダ圧センサ69、プライマリ液路液圧センサ68P、セカンダリ液路液圧センサ68S、連通液路液圧センサ76から各情報を入力する。そして、各制御部91〜97における演算に基づいて、ストロークシミュレータ遮断弁65、遮断弁61、増圧弁62、減圧弁63、バックアップ減圧弁64、連通弁72、調圧弁75、モータ79を制御する。なお、増圧異常検出部95、減圧異常検出部96、保持異常検出部97はポンプ状態チェック部を構成している。
【0016】
(倍力液圧制御)
図3は倍力液圧制御部90による通常時に行うブレーキ液圧コントロールユニット6の制御を示す図である。
図3に示すように通常時には、遮断弁61を閉弁するとともにストロークシミュレータ遮断弁65を開弁する。これにより、運転者によりブレーキペダル2が踏み込まれると、マスタシリンダ3からブレーキ液圧コントロールユニット6内に送られるブレーキ液は、ストロークシミュレータ80に供給される。このときストロークシミュレータ80では、ブレーキペダル2の踏み込みに応じてブレーキペダル反力が発生するようにしている。
また、倍力液圧制御時には連通弁72を開弁する。遮断弁61を閉弁するとともに連通弁72を開弁しているため、連通液路液圧センサ76で検出する液圧は、ホイルシリンダ圧と見ることができる。倍力液圧制御時には運転者によるブレーキペダル2の操作量をストロークセンサ2bにより検出し、検出した操作量に応じて目標ホイルシリンダ圧を演算する。この目標ホイルシリンダ圧と検出したホイルシリンダ圧との偏差に応じて、モータ79はPWM制御される。また調圧弁75も目標ホイルシリンダ圧と検出したホイルシリンダ圧との偏差に応じてPWM制御されており、モータ79と調圧弁75とでホイルシリンダ圧を調圧している。これによりブレーキペダル2の踏み込み時には、踏み込み量に応じてホイルシリンダ液圧を倍力するように制御することができる。
【0017】
また実施例1のブレーキ装置1は、遮断弁61を閉弁することによりステアバイワイヤのブレーキ装置とすることができ、駆動源としてモータジェネレータを用いている車両では、回生制動時にホイルシリンダ圧を回生制動力分だけ減少させる協調制御を行うこともできる。
また、倍力液圧制御は目標ホイルシリンダ圧と検出したホイルシリンダ圧の偏差が大きい場合など所定の条件が成立した時のみ実施することも可能である。そして、条件が成立しない場合は、遮断弁61を開弁、連通弁72及びストロークシミュレータ遮断弁65を閉弁し、マスタシリンダ3から送られるブレーキ液によってホイルシリンダ5を加圧し制動力を得るようにしてもよく、この場合、ポンプの作動頻度を抑制できる。
【0018】
(自動ブレーキ液圧制御)
自動ブレーキ液圧制御時とは、ブレーキペダル2の踏み込みがないときであっても、旋回中に車両の横滑りを防止する横滑り防止制御時や、加速中に駆動輪にスリップが発生した場合にスリップ輪を制動するためのトラクション制御時に、自動的にホイルシリンダ5にブレーキ液を供給し制動力を発生させる制御である。自動ブレーキ液圧制御時には、自動ブレーキ液圧制御部91により倍力液圧制御と同様、遮断弁61を閉弁するとともにストロークシミュレータ遮断弁65を開弁する。ストロークシミュレータ遮断弁65は自動ブレーキ液圧制御時には閉弁していても構わない。
さらに連通弁72を開弁しモータ79を駆動してポンプ78により連通液路73にブレーキ液を供給するとともに、調圧弁75の開弁量を比例制御して連通液路73からプライマリ液路60Pおよびセカンダリ液路60Sに供給するブレーキ液の量を調整する。
また、各ホイルシリンダ5の液圧を独立して制御するために、増圧弁62、減圧弁63およびバックアップ減圧弁64を制御する。
【0019】
(片系統液圧制御)
図4は片系統液圧制御部92による片系統失陥時に行うブレーキ液圧コントロールユニット6の制御を示す図である。片系統失陥時とは、プライマリ系統またはセカンダリ系統の一方の液圧回路に失陥が生じ、液圧漏れが生じている状態を示す。
図4では、セカンダリ系統の液圧回路に失陥が生じている場合を示している。
図4に示すようにセカンダリ系統の液圧回路失陥時には、遮断弁61Pを閉弁、遮断弁61Sを開弁するとともにストロークシミュレータ遮断弁65を開弁する。これにより、運転者によりブレーキペダル2が踏み込まれると、マスタシリンダ3からブレーキ液圧コントロールユニット6内に送られるブレーキ液は、ストロークシミュレータ80に供給される。このときストロークシミュレータ80では、ブレーキペダル2の踏み込みに応じてブレーキペダル反力が発生するようにしている。このとき、遮断弁61Sも閉弁するようにしても良い。なお、プライマリ系統の液圧回路失陥時には遮断弁61Pと遮断弁61Sを共に閉弁する。
またセカンダリ系統の液圧回路失陥時には、失陥側の連通弁72Sを閉し、他方の連通弁72Pを開弁しモータ79を駆動してポンプ78により連通液路73にブレーキ液を供給するとともに、調圧弁75の開弁量を比例制御して連通液路73からプライマリ液路60Pに供給するブレーキ液の量を調整する。これによりセカンダリ系統の液圧回路失陥時であってもプライマリ系統の液圧回路側で倍力制御を行うことができる。
【0020】
(増圧異常液圧制御)
図5は増圧異常液圧制御部93による調圧系統増圧異常時に行うブレーキ液圧コントロールユニット6の制御を示す図である。調圧系統とは、ポンプ78から連通液路73を介してプライマリ液路60P、セカンダリ液路60Sに供給するブレーキ液量を調整する構成要素であって、具体的には調圧弁75、ポンプ78、モータ79を示す。また調圧系統増圧異常とは、例えばモータ79やポンプ78の故障により連通液路73にブレーキ液を供給できないときや、調圧弁75が開固着したためプライマリ液路60Pやセカンダリ液路60Sにブレーキ液を供給できない状態を示す。
図5に示すように増圧異常時には、遮断弁61を開弁するとともにストロークシミュレータ遮断弁65を閉弁し、連通弁72を閉弁する。これにより、運転者によりブレーキペダル2が踏み込まれると、マスタシリンダ3からブレーキ液圧コントロールユニット6内に送られるブレーキ液は、ストロークシミュレータ80には供給されず、ホイルシリンダ5側に供給されることとなる。すなわち増圧異常時には、マスタシリンダ圧によってホイルシリンダ5にブレーキ液を供給しており、倍力作用は発生しないものの、最低限の制動力を確保することができる。
【0021】
(減圧異常液圧制御)
図6は減圧異常液圧制御部94による減圧異常時に行うブレーキ液圧コントロールユニット6の制御を示す図である。減圧異常時とは、例えば調圧弁75が失陥して開弁制御することができないため連通液路73からプライマリ液路60P、セカンダリ液路60Sへ供給するブレーキ液の量を制御できない状態を示す。
図6に示すように減圧異常時には、遮断弁61を閉弁するとともにストロークシミュレータ遮断弁65を開弁する。これにより、運転者によりブレーキペダル2が踏み込まれると、マスタシリンダ3からブレーキ液圧コントロールユニット6内に送られるブレーキ液は、ストロークシミュレータ80に供給される。このときストロークシミュレータ80では、ブレーキペダル2の踏み込みに応じてブレーキペダル反力が発生するようにしている。
また減圧異常時において、連通弁72を開弁しモータ79を駆動してポンプ78により連通液路73にブレーキ液を供給するとともに、バックアップ減圧弁64の開弁量を比例制御してプライマリ液路60Pおよびセカンダリ液路60Sからホイルシリンダ5に供給するブレーキ液の量を調整する。これによりブレーキペダル2の踏み込み時には、踏み込み量に応じてホイルシリンダ液圧を倍力するように制御することができる。すなわち、失陥した調圧弁75の代わりにバックアップ減圧弁64を用いるようにしている。
【0022】
(電源失陥液圧制御)
図7は電源失陥時に行うブレーキ液圧コントロールユニット6の制御を示す図である。電源失陥時にはブレーキ液圧コントロールユニット6の各弁には通電できない。そのため
図7に示すように電源失陥時には、遮断弁61が開弁するとともにストロークシミュレータ遮断弁65が閉弁する。またプライマリ液路60P側の連通弁72Pは開弁し、セカンダリ液路60S側の連通弁72Sは閉弁し、調圧弁75は閉弁し、モータ79は停止する。
これにより、運転者によりブレーキペダル2が踏み込まれると、マスタシリンダ3からブレーキ液圧コントロールユニット6内に送られるブレーキ液は、ストロークシミュレータ80には供給されず、ホイルシリンダ5側に供給されることとなる。またセカンダリ液路60S側の連通弁72Sが閉弁しているため、プライマリ液路60Pとセカンダリ液路60Sとの間の連通は遮断されている。
【0023】
(増圧異常検出処理)
図8は増圧異常検出部95において行われる増圧異常を検出する制御の流れを示すフローチャートである。
ステップS1では、制動要求の有無を判定し、制動要求が有るときにはステップS2へ移行し、制動要求が無いときにはステップS3へ移行する。制動要求の有無の判定は、例えばストロークセンサ2bの値が所定以上となり、運転者によりブレーキペダル2が踏み込まれていることを検出することで制動要求が有ると判定できる。または、横滑り制御やトラクション制御により、自動ブレーキ液圧制御が要求されているときに制動要求が有ると判定できる。
ステップS2では、増圧異常検出処理を禁止してステップS4へ移行する。
ステップS3では、前回の増圧異常検出処理完了から所定時間経過しているか否かを判定し、所定時間経過しているときにはステップS5へ移行し、所定時間経過していないときにはステップS2へ移行する。
ステップS4では、判定タイマT1をリセットし、処理を終了する。
ステップS5では、増圧異常検出処理の実行を許可して、ステップS6へ移行する。
【0024】
ステップS6では、連通弁72を閉弁、調圧弁75を閉弁、モータ79を駆動してステップS7へ移行する。
図9はステップS6の処理が行われたときのブレーキ液圧コントロールユニット6の制御を示す図である。モータ79が駆動してポンプ78によりリザーバタンク4内のブレーキ液を連通液路73内に供給する。このとき、連通弁72および調圧弁75が閉弁しているため、ポンプ78が正常に駆動すれば連通液路73内の液圧が上昇し、この液圧上昇を連通液路液圧センサ76により検出することができる。連通弁72および調圧弁75が閉弁し、連通液路73は閉回路となっている。そのため、ポンプ78により少量のブレーキ液が吐出されるだけで、連通液路73内の液圧が発生するため、ポンプ78の駆動を抑えて、増圧異常検出を行うことができる。またブレーキ液圧コントロールユニット6内の回路で増圧異常検出を行うことができるため、液剛性の関係はブレーキ液圧コントロールユニット6毎に決まっており、搭載車両に寄らず判断条件を一定にすることができる。
ステップS7では、連通液路液圧センサ76により検出した連通液路73内の液圧が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上であるときにはステップS8へ移行し、所定値未満であるときにはステップS9へ移行する。このとき連通弁72および調圧弁75を閉弁しているため、連通液路73内の液圧はポンプ78の吐出圧と等しくなる。
ステップS8では、増圧正常であると判定しステップS4へ移行する。増圧正常とは、連通弁72、調圧弁75、ポンプ78、モータ79のいずれもが正常に作動し、倍力制御を行うことができる状態であることを示す。
ステップS9では、判定タイマT1が所定値より大きいか否かを判定し、所定値より大きいときにはステップS10に移行し、所定値以下であるときにはステップS12に移行する。判定タイマT1は、ポンプ78が駆動し始めて十分に吐出圧が上昇するまで、ポンプ78による液圧増圧異常判定を待つためのタイマである。
ステップS10では、増圧異常と判定してステップS11へ移行する。
ステップS11では、警告を作動させて処理を終了する。警告作動とは、ランプの点灯やブザーを鳴らすことであり、これによりブレーキシステムに異常が発生していることを運転者に伝える。
ステップS12では、判定タイマT1をインクリメントして処理を終了する。
【0025】
(異常箇所特定処理)
上記の増圧異常検出処理だけでは、増圧異常は検出することができるが、異常箇所まで特定することができない。そこで、続いて以下に説明する異常箇所特定処理を行う。
図10は増圧異常検出部95において行われる異常箇所を検出する制御の流れを示すフローチャートである。
ステップS21では、異常箇所が特定できているか否かを判定し、異常箇所が特定できているときにはステップS24へ移行し、異常箇所が特定できていないときにはステップS22へ移行する。
ステップS22では、制動要求の有無を判定し、制動要求が有るときにはステップS23へ移行し、制動要求が無いときにはステップS24へ移行する。
ステップS23では、連通弁72を閉弁、調圧弁75を閉弁、モータ79を停止、遮断弁61を開弁、増圧弁62を開弁、ストロークシミュレータ遮断弁65を閉弁してステップS24へ移行する。ステップS23の処理が行われたときには、増圧異常時のブレーキ液圧コントロールユニット6の制御(
図5)を行う。これにより、マスタシリンダ圧によってホイルシリンダ5にブレーキ液を供給し、倍力作用は発生しないものの、最低限の制動力を確保することができる。
ステップS24では、判定タイマT2,T3をリセットして処理を終了する。
【0026】
ステップS25では、連通弁72を閉弁、調圧弁75を閉弁、モータ79を駆動、遮断弁61を閉弁、増圧弁62を閉弁してステップS26へ移行する。
図11はステップS25の処理が行われたときのブレーキ液圧コントロールユニット6の制御を示す図である。モータ79が駆動してポンプ78によりリザーバタンク4内のブレーキ液を連通液路73内に供給する。このとき、連通弁72および調圧弁75が正常に閉弁し、ポンプ78が正常に駆動すれば連通液路73内の液圧が上昇し、この液圧上昇を連通液路液圧センサ76により検出することができる。また連通弁72および調圧弁75が正常に閉弁しなくても、遮断弁61が正常に閉弁していれば、ポンプ78が駆動することにより連通液路73内の液圧が上昇するとともに、プライマリ液路液圧、セカンダリ液路液圧が上昇することとなる。
【0027】
ステップS26では、連通液路液圧センサ76により検出した連通液路73内の液圧が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上であるときにはステップS27へ移行し、所定値未満であるときにはステップS32へ移行する。
ステップS27では、プライマリ液路液圧センサ68Pにより検出したプライマリ液路液圧が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上であるときにはステップS28へ移行し、所定値未満であるときにはステップS29へ移行する。
ステップS28では、プライマリ側の連通弁72Pに異常が発生していると判定しステップS31へ移行する。
ステップS29では、セカンダリ液路液圧センサ68Sにより検出したセカンダリ液路液圧が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上であるときにはステップS30へ移行し、所定値未満であるときにはステップS35へ移行する。
ステップS30では、セカンダリ側の連通弁72Sに異常が発生していると判定しステップS31へ移行する。
ステップS31では、異常箇所を特定したと判定して処理を終了する。
【0028】
ステップS32では、判定タイマT2が所定値より大きいか否かを判定し、所定値より大きいときにはステップS33に移行し、所定値以下であるときにはステップS34に移行する。判定タイマT2は、ポンプ78が駆動し始めて十分に吐出圧が上昇するまで、ポンプ78による増圧異常判定を待つためのタイマである。
ステップS33では、調圧系統増圧異常と判定しステップS31へ移行する。調圧系統増圧異常とは、モータ79、ポンプ78、調圧弁75のいずれかに異常が発生しており、ポンプ78による増圧を望めない状況のことを示す。
ステップS34では、判定タイマT2をインクリメントして処理を終了する。
ステップS35では、判定タイマT3が所定値より大きいか否かを判定し、所定値より大きいときにはステップS37に移行し、所定値以下であるときにはステップS36に移行する。判定タイマT3は、ポンプ78が駆動し始めて十分に吐出圧が上昇するまで、ポンプ78による増圧異常判定を待つためのタイマである。
ステップS36では、判定タイマT3をインクリメントして処理を終了する。
ステップS37では、増圧正常と判定しステップS24へ移行する。
【0029】
(減圧異常検出処理)
図12は減圧異常検出部96において行われる減圧異常を検出する制御の流れを示すフローチャートである。
ステップS41では、増圧異常検出処理が終了し増圧正常であったか否かを判定して、増圧正常であったときにはステップS43へ移行し、増圧異常検出処理が終了していないまたは増圧異常であったときにはステップS42へ移行する。
ステップS42では、増圧異常検出処理を実行するように指令してステップS45へ移行する。
ステップS43では、制動要求の有無を判定し、制動要求が有るときにはステップS46へ移行し、制動要求が無いときにはステップS44へ移行する。
ステップS44では、減圧異常検出処理を禁止してステップS45へ移行する。
ステップS45では、判定タイマT4をリセットして処理を終了する。
ステップS46では、減圧異常検出処理を許可してステップS47へ移行する。
【0030】
ステップS47では、連通弁72を閉弁、調圧弁75を所定開度開弁、モータ79を停止してステップS48へ移行する。
図13はステップS47の処理が行われたときのブレーキ液圧コントロールユニット6の制御を示す図である。増圧異常検出処理が終了した後に、増圧正常であれば連通液路73内は高圧の状態となっている。このとき、調圧弁75を所定開度開弁することにより連通液路73内の液圧が減少し、この液圧減少を連通液路液圧センサ76により検出することができる。
ステップS48では、連通液路液圧センサ76により検出した連通液路73内の液圧が所定値以下であるか否かを判定し、所定値以下であるときにはステップS49へ移行し、所定値より大きいときにはステップS50へ移行する。
ステップS49では、調圧弁75が正常であると判定してステップS45へ移行する。
ステップS50では、判定タイマT4が所定値より大きいか否かを判定し、所定値より大きいときにはステップS51へ移行し、所定値以下であるときにはステップS53へ移行する。
ステップS51では、調圧弁75に異常が発生していると判定してステップS52へ移行する。
ステップS52では、警告を作動させて処理を終了する。
ステップS53では、判定タイマT4をインクリメントして処理を終了する。
【0031】
(保持異常検出処理)
上記の増圧異常検出処理と減圧異常検出処理との間に保持異常検出処理を行っても良い。
増圧異常検出処理が終了し、増圧正常と判断されると保持異常検出処理が行われる。保持異常検出処理では、連通弁72を閉弁、調圧弁75を閉弁、モータ79を停止した状態で連通液路液圧センサ76により検出した連通液路73の液圧が維持されていれば、保持正常と判定する。
【0032】
(異常判定後の処理)
ブレーキ液圧コントロールユニット6に異常が発生していると判定されたときには、その異常箇所に応じて制御を行う。
図14は異常箇所に応じた制御モードを示す図である。
図14に示すように調圧系統増圧異常と判定されたときには増圧異常液圧制御を行う。増圧異常液圧制御は前述のように増圧異常液圧制御部93により
図5に示すようにブレーキ液圧コントロールユニット6を制御する。これにより、マスタシリンダ圧によってホイルシリンダ5にブレーキ液を供給しており、倍力作用は発生しないものの、最低限の制動力を確保することができる。
【0033】
調圧弁異常と判定されたときには減圧異常液圧制御を行う。減圧異常液圧制御は前述のように減圧異常液圧制御部94により
図6に示すようにブレーキ液圧コントロールユニット6を制御する。すなわち、異常と判定された調圧弁75の代わりにバックアップ減圧弁64を用いるようにしている。なお、プライマリ側にバックアップ減圧弁64Bを、セカンダリ側にバックアップ減圧弁64Cを配置しているが、調圧弁75の異常時にはどちらか一方のみを調圧弁75の代わりに用いても良いし、両方用いても良い。
連通弁異常と判定されたときには倍力液圧制御を行う。倍力液圧制御は前述のように倍力液圧制御部90により
図3のようにブレーキ液圧コントロールユニット6を制御する。つまり、ブレーキ液圧コントロールユニット6が正常であるときと同様に制御する。しかし、連通弁72に異常が発生しているため警告は作動させるようにしている。
【0034】
(異常判定処理動作)
図15は異常判定処理のタイムチャートである。制動要求が無い時間t1において増圧異常判定処理が実行される。増圧異常判定処理が実行されると連通弁72、調圧弁75を閉弁し、モータ79を駆動する。判定タイマT1,T2,T3が所定値(増圧異常判定閾値)に達する前に、連通液路73の液圧が所定値(増圧判定圧力)以上となると増圧正常と判定する(時間t2)。
増圧異常検出処理が終了すると保持異常検出処理が実行される。保持異常検出処理では、連通弁72、調圧弁75を閉弁し、モータ79を停止する。このとき、連通液路73の液圧が減少しなければ保持正常と判定する(時間t3)。
保持異常検出処理が終了すると減圧異常検出処理が実行される。減圧異常検出処理では、連通弁72を閉弁し、調圧弁75は所定開度開弁し、モータ79を停止する。判定タイマT4が所定値(減圧異常判定閾値)に達する前に、連通液路73の液圧が所定値(減圧判定圧力)以下となると増圧正常と判定する(時間t4)。
【0035】
[作用]
実施例1のようにブレーキ液圧コントロールユニット内のポンプにより倍力作用を発生させるシステムでは、ポンプによる倍力作用が発生できなくなったときに備えて常時ブレーキ液圧を貯めておくアキュムレータを備えているものがある。この場合、アキュムレータ内の圧力を監視していれば走行中であっても、液圧の増圧異常が発生していることを検出することができる。
アキュムレータを搭載すると、ブレーキ液圧コントロールユニット自体が大型化する問題がある。そこでアキュムレータを廃止することが考えられるが、アキュムレータを廃止するとシステムの信頼性確保のために増圧異常の検出を頻繁に行う必要が出てくる。しかし、アキュムレータを搭載していない場合、増圧異常を検出するためにはポンプを駆動する必要があり、ポンプを駆動するとホイルシリンダ圧が発生してしまうため走行中に増圧異常の検出を行うことができない。
【0036】
そこで実施例1では、プライマリ液路60Pとセカンダリ液路60Sとを繋ぐ連通液路73を設け、この連通液路73にポンプ78からブレーキ液を吐出するようにした。さらに連通液路73とプライマリ液路60Pとの間に連通弁72Pを、連通液路73とセカンダリ液路60Sとの間に連通弁72Sを設けるようにした。そして、連通弁72Pおよび連通弁72Sを閉弁制御してポンプ78を駆動することで、調圧系統の異常検出を行うようにした。これにより、連通弁72Pと連通弁72Sを閉弁した状態でポンプ78を駆動すれば、ポンプ78からプライマリ液路60Pおよびセカンダリ液路60Sのブレーキ液が供給されないため、走行中であってもホイルシリンダ圧を発生させることなく調圧系統の異常を検出することができる。
また、プライマリ側の連通弁72Pとポンプ78との間に、連通液路73に吐出されたブレーキ液をポンプ78の吸入側に還流する還流液路74を備えた。これにより、プライマリ側の連通弁72Pとセカンダリ側の連通弁72Sとをともに閉弁することで、ポンプ78の吐出側と吸入側との間で循環回路を形成することができ、走行中であってもホイルシリンダ5側にブレーキを送ることなくポンプ78を駆動することができる。
【0037】
また、還流液路74に調圧弁75を備え、調圧系統の異常検出時に調圧弁75を制御するようにした。これにより、ポンプ78からプライマリ液路60P、セカンダリ液路60Sに供給するブレーキ液量の制御の異常を検出することができる。
【0038】
また、プライマリ側の連通弁72Pとセカンダリ側の連通弁72Sのうち一方の連通弁を開弁方向に制御し、他方の連通弁を閉弁方向に制御し、ポンプ78を駆動して開弁方向に制御した系統への液路へブレーキ液を送るようにした。これにより、一方の系統の液路が失陥したとしても他方の系統の液路により制動力を確保することができる。
また、連通弁72P、連通弁72Sおよび調圧弁75を閉弁方向に制御し、ポンプ78を駆動して、連通液路液圧センサ76の検出値によって増圧異常検出を行うようにした。これにより、連通弁72Pと連通弁72Sを閉弁した状態でポンプ78を駆動すれば、ポンプ78からプライマリ液路60Pおよびセカンダリ液路60Sのブレーキ液が供給されないため、走行中であってもホイルシリンダ圧を発生させることなく増圧異常検出処理を行うことができる。
【0039】
また、連通弁72P、連通弁72Sおよび調圧弁75を閉弁方向に制御し、ポンプ78を駆動した後に、調圧弁75を開弁方向に制御して増圧したブレーキ液を減圧して、連通液路液圧センサ76の検出値によって減圧異常検出処理を行うようにした。これにより、走行中であってもホイルシリンダ圧を変化させることなく減圧異常検出処理を行うことができる。
また、連通弁72P、連通弁72Sおよび調圧弁75を閉弁方向に制御し、ポンプ78を駆動し連通液路73内のブレーキ液を増圧し、ポンプ78を停止して、連通液路液圧センサ76の検出値によって保持異常検出処理を行うようにした。これにより、走行中であってもホイルシリンダ圧を変化させることなく保持異常検出処理を行うことができる。
また、前記循環回路を構成して各異常検出処理を行うことで、異常検出処理中に運転者によりブレーキペダルが踏み込まれても、マスタシリンダ3からブレーキ液圧コントロールユニット6内に送られるブレーキ液は、ホイルシリンダ5側に供給されることとなるため、ペダルフィールを悪化することなく制動力を確保することができる。
【0040】
[効果]
実施例1のブレーキ装置1の効果について、以下に列記する。
(1)運転者のペダル操作によりブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ3のプライマリ液圧室3c(第一室)により発生したマスタシリンダ圧により加圧可能な複数のホイルシリンダ5A,5Bを備えたプライマリ液路60Pと、マスタシリンダ3のセカンダリ液圧室3d(第二室)により発生したマスタシリンダ圧により加圧可能な複数のホイルシリンダ5C,5Dを備えたセカンダリ液路60Sと、プライマリ液路60Pとセカンダリ液路60Sとを接続する連通液路73と、連通液路73にブレーキ液を吐出するポンプ78と、連通液路73に設けられ、連通液路73からプライマリ液路60Pへのブレーキ液の流れを抑制する連通弁72P(第一連通弁)と、連通液路73に設けられ、連通液路73からセカンダリ液路60Sへのブレーキ液の流れを抑制する連通弁72S(第二連通弁)と、ポンプ78を駆動させ連通弁72Pおよび連通弁72Sを閉じ方向に制御し、少なくともポンプ78の状態をチェックする増圧異常検出部95、減圧異常検出部96、保持異常検出部97(ポンプ状態チェック部)を有するコントローラ9と、を備えた。
よって、ポンプ78からプライマリ液路60Pおよびセカンダリ液路60Sのブレーキ液が供給されないため、走行中であってもホイルシリンダ圧を発生させることなく調圧系統の異常を検出することができる。
【0041】
(2)連通弁72Pと連通弁72Sのうち少なくとも一方の連通弁とポンプ78との間に設けられ、連通液路73に吐出されたブレーキ液をポンプ78の吸入側に還流する還流液路74を備えた。
よって、プライマリ側の連通弁72Pとセカンダリ側の連通弁72Sとをともに閉弁することで、ポンプ78の吐出側と吸入側との間で循環回路を形成することができ、走行中であってもホイルシリンダ5側にブレーキを送ることなくポンプ78を駆動することができる。
(3)還流液路74に調圧弁75を備え、コントローラ9は、増圧異常検出部95、減圧異常検出部96、保持異常検出部97による異常検出時に調圧弁75を制御するようにした。
よって、ポンプ78からプライマリ液路60P、セカンダリ液路60Sに供給するブレーキ液量の制御の異常を検出することができる。
【0042】
(4)コントローラ9に、連通弁72Pと連通弁72Sのうち一方の連通弁を開弁方向に制御し、他方の連通弁を閉弁方向に制御し、ポンプ78を駆動して開弁方向に制御した系統への液路へブレーキ液を送る片系統液圧制御部92を備えた。
よって、一方の系統の液路が失陥したとしても他方の系統の液路により制動力を確保することができる。
(5)連通液路73の液圧を検出する連通液路液圧センサ76を備え、コントローラ9に、連通弁72P、連通弁72Sおよび調圧弁75を閉弁方向に制御し、ポンプ78を駆動して、連通液路液圧センサ76の検出値によって増圧異常検出を行う増圧異常検出部95を備えた。
よって、走行中であってもホイルシリンダ圧を発生させることなく増圧異常検出処理を行うことができる。
【0043】
(6)連通液路73の液圧を検出する連通液路液圧センサ76を備え、コントローラ9に、連通弁72P、連通弁72Sおよび調圧弁75を閉弁方向に制御し、ポンプ78を駆動した後に、調圧弁75を開弁方向に制御して増圧したブレーキ液を減圧して、連通液路液圧センサ76の検出値によって減圧異常検出を行う減圧異常検出部96を備えた。
よって、走行中であってもホイルシリンダ圧を変化させることなく減圧異常検出処理を行うことができる。
(7)連通液路73の液圧を検出する連通液路液圧センサ76を備え、コントローラ9に、連通弁72P、連通弁72Sおよび調圧弁75を閉弁方向に制御し、ポンプ78を駆動し連通液路73内のブレーキ液を増圧しポンプ78を停止して、連通液路液圧センサ76の検出値によって保持異常検出を行う保持異常検出部97を備えた。
よって、走行中であってもホイルシリンダ圧を変化させることなく保持異常検出処理を行うことができる。
【0044】
〔他の実施例〕
以上、本願発明を実施例1に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、実施例1では運転車のブレーキペダル2の操作量をストロークセンサ2bにより検出していたが、マスタシリンダ圧センサ69により検出するようにしても良いし、ブレーキペダル2の踏力を検出する踏力センサを用いるようにしても良い。
また、実施例1では倍力装置としてポンプ78のみを用いているが、負圧ブースタ、電動ブースタ、油圧ブースタ等の倍力装置も併用しても良く、併用する倍力装置の全負荷点以下のホイルシリンダ圧の領域では併用する倍力装置を用いて倍力作用を発生させるようにし、全負荷点より大きいホイルシリンダ圧の領域ではポンプ78を用いて倍力作用を発生させるようにしても良い。
また、実施例1ではマスタシリンダ3、ブレーキ液圧コントロールユニット6、ストロークシミュレータ80を分離しているが、いずれか2つまたは3つ全てを組み合わせて一体のユニットとしても良い。
【0045】
〔請求項以外の技術的思想〕
更に、上記実施例から把握しうる請求項以外の技術的思想について、以下にその効果と共に記載する。
(イ)運転者のペダル操作によりブレーキ液圧を発生するマスタシリンダの第一室により発生したマスタシリンダ圧により加圧可能な複数のホイルシリンダを備えたプライマリ系統の液路と、
前記マスタシリンダの第二室により発生したマスタシリンダ圧により加圧可能な複数のホイルシリンダを備えたセカンダリ系統の液路と、
前記プライマリ系統の液路と前記セカンダリ系統の液路とを接続する連通液路と、
前記連通液路にブレーキ液を吐出するポンプと、
前記連通液路と前記プライマリ系統の液路および前記セカンダリ系統の液路とを分離し、前記ポンプを駆動し、前記連通液路内のブレーキ液を流動させて前記ポンプの状態をチェックするポンプ状態チェック部を有するコントローラと、
を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、ポンプからプライマリ系統の液路およびセカンダリ系統の液路のブレーキ液が供給されないため、走行中であってもホイルシリンダ圧を発生させることなく調圧系統の異常を検出することができる。
【0046】
(ロ)上記(イ)に記載のブレーキ装置において、
前記連通液路に設けられ、前記連通液路から前記プライマリ系統の液路へのブレーキ液の流れを抑制する第一連通弁と、
前記連通液路に設けられ、前記連通液路から前記セカンダリ系統の液路へのブレーキ液の流れを抑制する第二連通弁と、
を備え、
前記第一連通弁および前記第二連通弁によって、前記連通液路と前記プライマリ系統の液路および前記セカンダリ系統の液路とを分離することを特徴とするブレーキ装置。
よって、連通弁および連通弁を閉弁することにより、ポンプからプライマリ系統の液路およびセカンダリ系統の液路のブレーキ液が供給されないため、走行中であってもホイルシリンダ圧を発生させることなく調圧系統の異常を検出することができる。
(ハ)上記(ロ)に記載のブレーキ装置において、
前記コントローラに、前記第一連通弁と前記第二連通弁のうち一方の連通弁を開弁方向に制御し、他方の連通弁を閉弁方向に制御し、前記ポンプを駆動して前記開弁方向に制御した系統への液路へブレーキ液を送る片系統液圧制御部を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、一方の系統の液路が失陥したとしても他方の系統の液路により制動力を確保することができる。
(ニ)上記(ハ)に記載のブレーキ装置において、
前記第一連通弁と前記第二連通弁のうち少なくとも一方の連通弁と前記ポンプとの間に設けられ、前記連通液路に吐出されたブレーキ液を前記ポンプの吸入側に還流する還流路と、
前記還流路に設けられた調圧弁と、
前記ポンプが吐出したブレーキ液の液圧を検出する液圧検出部と、
前記第一連通弁、前記第二連通弁、前記調圧弁および前記ポンプを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラに、前記第一連通弁、前記第二連通弁および前記調圧弁を閉弁方向に制御し、前記ポンプを駆動して、前記液圧検出部の検出値によって増圧状態を検出する増圧異常検出部を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、走行中であってもホイルシリンダ圧を発生させることなく増圧異常検出処理を行うことができる。
【0047】
(ホ)上記(ニ)に記載のブレーキ装置において、
前記コントローラに、前記第一連通弁、前記第二連通弁および前記調圧弁を閉弁方向に制御し、前記ポンプを駆動し前記連通液路内のブレーキ液を増圧し前記ポンプを停止して、前記液圧検出部の検出値によって保持状態を検出する保持異常検出部を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、走行中であってもホイルシリンダ圧を変化させることなく保持異常検出処理を行うことができる。
(ヘ)上記(ホ)に記載のブレーキ装置において、
前記コントローラに、前記第一連通弁、前記第二連通弁および前記調圧弁を閉弁方向に制御し、前記ポンプを駆動した後に、前記調圧弁を開弁方向に制御し増圧したブレーキ液を減圧して、前記液圧検出部の検出値によって減圧状態を検出する減圧異常検出部を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、走行中であってもホイルシリンダ圧を変化させることなく減圧異常検出処理を行うことができる。
【0048】
(ト)運転者のペダル操作によりブレーキ液圧を発生するマスタシリンダの第一室により発生したマスタシリンダ圧により加圧可能な複数のホイルシリンダを備えたプライマリ系統の液路と、
前記マスタシリンダの第二室により発生したマスタシリンダ圧により加圧可能な複数のホイルシリンダを備えたセカンダリ系統の液路と、
前記プライマリ系統の液路と前記セカンダリ系統の液路とを接続する連通液路と、
前記連通液路にブレーキ液を吐出するポンプと、
前記連通液路に設けられ、前記連通液路から前記プライマリ系統の液路へのブレーキ液の流れを抑制する第一連通弁と、
前記連通液路に設けられ、前記連通液路から前記セカンダリ系統の液路へのブレーキ液の流れを抑制する第二連通弁と、
前記第一連通弁と前記第二連通弁のうち少なくとも一方の連通弁と前記ポンプの間に設けられ、前記連通液路に吐出されたブレーキ液を前記ポンプの吸入側に還流する還流路と、
前記第一連通弁および前記第二連通弁を閉弁方向に制御することで、前記連通液路および前記還流路と前記ポンプとの間に閉回路を形成し、前記ポンプを駆動することで前記閉回路内のブレーキ液を流動させて前記ポンプの状態をチェックするポンプ状態チェック部を有するコントローラと、
を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、ポンプからプライマリ系統の液路およびセカンダリ系統の液路のブレーキ液が供給されないため、走行中であってもホイルシリンダ圧を発生させることなく調圧系統の異常を検出することができる。
【0049】
(チ)上記(ト)に記載のブレーキ装置において、
前記還流路に設けられた調圧弁を備え、
前記コントローラは、前記ポンプ状態チェック部によるチェック時に前記調圧弁を制御することを特徴とするブレーキ装置。
よって、ポンプからプライマリ系統の液路、セカンダリ系統の液路に供給するブレーキ液量の制御の異常を検出することができる。
(リ)上記(チ)に記載のブレーキ装置において、
前記コントローラに、前記第一連通弁と前記第二連通弁のうち一方の連通弁を開弁方向に制御し、他方の連通弁を閉弁方向に制御し、前記ポンプを駆動して前記開弁方向に制御した系統への液路へブレーキ液を送る片系統液圧制御部を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、一方の系統の液路が失陥したとしても他方の系統の液路により制動力を確保することができる。
(ヌ)上記(チ)に記載のブレーキ装置において、
前記第一連通弁と前記第二連通弁のうち少なくとも一方の連通弁と前記ポンプの間に設けられ、前記連通液路に吐出されたブレーキ液を前記ポンプの吸入側に還流する還流路と、
前記還流路に設けられた調圧弁と、
前記ポンプが吐出したブレーキ液の液圧を検出する液圧検出部と、
前記第一連通弁、前記第二連通弁、前記調圧弁および前記ポンプを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラに、前記第一連通弁、前記第二連通弁および前記調圧弁を閉弁方向に制御し、前記ポンプを駆動して、前記液圧検出部の検出値によって増圧状態を検出する増圧異常検出部を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、ポンプからプライマリ系統の液路およびセカンダリ系統の液路のブレーキ液が供給されないため、走行中であってもホイルシリンダ圧を発生させることなく調圧系統の異常を検出することができる。
(ル)上記(チ)に記載のブレーキ装置において、
前記コントローラに、前記第一連通弁、前記第二連通弁および前記調圧弁を閉弁方向に制御し、前記ポンプを駆動し前記連通液路内のブレーキ液を増圧し前記ポンプを停止して、前記液圧検出部の検出値によって保持状態を検出する保持異常検出部を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、走行中であってもホイルシリンダ圧を変化させることなく保持異常検出処理を行うことができる。
(ヲ)上記(チ)に記載のブレーキ装置において、
前記コントローラに、前記第一連通弁、前記第二連通弁および前記調圧弁を閉弁方向に制御し、前記ポンプを駆動した後に、前記調圧弁を開弁方向に制御し増圧したブレーキ液を減圧して、前記液圧検出部の検出値によって減圧状態を検出する減圧異常検出部を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
よって、走行中であってもホイルシリンダ圧を変化させることなく減圧異常検出処理を行うことができる。