特許第6007316号(P6007316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6007316
(24)【登録日】2016年9月16日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】抗体製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20160929BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160929BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20160929BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20160929BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20160929BHJP
   A61M 5/00 20060101ALI20160929BHJP
   A61M 5/178 20060101ALI20160929BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20160929BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20160929BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20160929BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20160929BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   A61K39/395 NZNA
   A61K9/08
   A61K47/26
   A61K47/22
   A61K47/34
   A61M5/00
   A61M5/178
   A61P37/02
   A61P37/06
   A61P17/00
   A61P29/00 101
   A61P19/02
【請求項の数】10
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-509555(P2015-509555)
(86)(22)【出願日】2013年5月2日
(65)【公表番号】特表2015-522524(P2015-522524A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】IB2013053490
(87)【国際公開番号】WO2013164789
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2014年12月22日
(31)【優先権主張番号】61/642,644
(32)【優先日】2012年5月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】ウィルマン,マティアス
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−503098(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/050262(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/047954(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/003470(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/147921(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 9/08
A61K 47/00−47/48
A61M 5/00
A61M 5/178
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物のpHが6.0であり、
(i)抗体濃度が150mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース270mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン30mM、および
(iv)界面活性剤として0.06%のポリソルベート20
を含む、水性医薬組成物。
【請求項2】
抗CD40抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を有するVドメインおよび配列番号2のアミノ酸配列を有するVドメインを含む、請求項に記載の水性医薬組成物。
【請求項3】
抗CD40抗体が、配列番号9の重鎖領域および配列番号10の軽鎖領域を含む、請求項に記載の水性医薬組成物。
【請求項4】
抗CD40抗体が、配列番号13の重鎖領域および配列番号14の軽鎖領域を含む、請求項に記載の水性医薬組成物。
【請求項5】
抗CD40抗体が、配列番号17の重鎖領域および配列番号18の軽鎖領域を含む、請求項に記載の水性医薬組成物。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の水性医薬組成物を含む送達装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の水性医薬組成物を含むプレフィルドシリンジ。
【請求項8】
CD40によって媒介される疾患または障害の治療のための請求項1からのいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
【請求項9】
自己免疫疾患の治療のための請求項に記載の水性医薬組成物。
【請求項10】
関節リウマチ、全身性エリテマトーデスまたは尋常性天疱瘡の治療のための請求項に記載の水性医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD40に対する抗体の医薬製剤、その調製方法および製剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患にはいくつかの免疫抑制治療が利用されているにもかかわらず、患者集団の大部分にとってより有効で安全な薬物は未だに大きな課題となっている。例えば、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群および多発性硬化症においてはリツキシマブおよびベリムマブのようなB細胞枯渇/阻害療法の有効性が報告されているにもかかわらず、これらの療法は疾患のある一部の個体にのみ効果的で、リツキシマブでは、進行性多巣性白質脳症の危険性が伴う。さらに、マクロファージ、樹状細胞およびT細胞などの多数のその他の白血球細胞型がこれらの自己免疫疾患の病理にしばしば関与しており、したがってその他の細胞型または重要な免疫経路を標的として、それらの機能を阻害する治療的介入が利益をもたらし得るだろう。活性化および機能またはこれらの細胞型においてCD40−CD154が多数の免疫学的に意義のある役割を果たすならば、抗CD40抗体は、上記に概略を示した自己免疫疾患に罹患した患者に対して、現行の療法によって現在もたらされている利益を上回る治療上の利益をもたらす可能性がある。さらに、クローン病および潰瘍性大腸炎などの腸炎症性障害においてCD40−CD154相互作用が中心的役割を果たすこと、および自己免疫血管炎、尋常性天疱瘡および突発性血小板減少性紫斑病(ITP)などのより希な障害の病理に対してCD40経路が機構的に関与することによっても、これらの適応症における抗CD40抗体の潜在力が強調される。
【0003】
固形臓器移植後に使用される現在利用可能な免疫抑制剤によって、優れた短期効力がもたらされる。新規期間内の急性拒絶反応は、レシピエントの5%〜20%において認められ(臓器、患者集団および治療計画に左右される)、新規期間内の急性拒絶反応に対する移植片喪失の割合は、いかなる場合においても5%未満である。現在のところまだ解決されていない重要な課題は、患者の免疫抑制の耐容性および長期における移植片生着率である。腎移植後、33%の患者が亡くなり、および/または5年以内に移植片を喪失し、移植レシピエントの平均死亡年齢は58歳である。カルシニューリン阻害剤(CNI)は依然として、移植患者の大部分にとって頼みの綱の免疫抑制療法である。CNIに関連する腎毒性および心血管罹患率は、慢性同種移植片腎障害ならびに移植片の機能が維持された状態での患者の死亡の促進因子の1つであるが、別の主要な免疫抑制作用がCNIの代わりとなることはできなかった。全体的に見て、長期の移植免疫抑制を改善する余地がまだ残されている。B細胞によって媒介される移植腎の免疫学的損傷が長期予後不良に関与することがあり、医学界ではB細胞拒絶反応を標的とする新たな薬剤の必要性がますます認識されている。
【0004】
CD40に対する抗体は当業界で公知である。Chir12.12は、CD154(CD40リガンド;CD40Lとしても知られている)媒介白血球活性化をブロックし、インビトロにおけるヒト白血球およびB細胞リンパ腫の抗体依存性細胞障害(ADCC)を媒介することができる完全にヒト化された非作動性抗CD40抗体(IgG1、カッパ)である(国際特許公開番号第2006/073443号パンフレット参照)。国際特許公開番号第2005/044306号パンフレットは、特に自己免疫障害および炎症障害の治療において使用するために、Chir12.12を含む抗CD40アンタゴニスト抗体について記載している。さらに、Chir12.12は、カニクイザル(Macaca fascicularis)(カニクイザル)において単独療法として投与したとき、腎臓の同種移植片拒絶反応を遅延させるのに有効である(Li et al.(2008)Transplantation;86(1):10-15)。しかし、Chir12.12はまた、非ヒト霊長類(NHP)における末梢B細胞の枯渇を媒介することができる。
【0005】
サイレンシングされたADCC活性を備えた抗CD40mAbは、親抗CD40抗体よりも安全特性が改善されていることが予測され、特に自己免疫疾患などの非腫瘍性適応症により適しており、移植場面において使用することができる。本出願人は、Chir12.12抗体をベースにして3種類のサイレント抗CD40抗体を開発した。以後、mAb1、mAb2およびmAb3と称するこれらの抗体は、ADCC活性をサイレンシングするFc領域内のある種のアミノ酸変異を特徴とする。
【0006】
mAb1は、抗体の重鎖アミノ酸配列にN297A変異を含む。この抗体は、それぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびにそれぞれ配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。mAb1は、配列番号1のアミノ酸配列を有するVドメインおよび配列番号2のアミノ酸配列を有するVドメインを含む。mAb1は、配列番号9の完全長重鎖アミノ酸配列および配列番号10の完全長軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0007】
mAb2は、抗体の重鎖アミノ酸配列にD265A変異を含む。この抗体は、それぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびにそれぞれ配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。mAb2は、配列番号1のアミノ酸配列を有するVドメインおよび配列番号2のアミノ酸配列を有するVドメインを含む。mAb2は、配列番号13の完全長重鎖アミノ酸配列および配列番号14の完全長軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0008】
mAb3は、抗体の重鎖アミノ酸配列にL234A、L235A変異(LALA)を含む。この抗体は、それぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびにそれぞれ配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む。mAb3は、配列番号1のアミノ酸配列を有するVドメインおよび配列番号2のアミノ酸配列を有するVドメインを含む。mAb3は、配列番号17の完全長重鎖アミノ酸配列および配列番号18の完全長軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0009】
高濃度の抗体を含む製剤は、保存期間が短いことがあり、製剤化された抗体は化学的および物理的に不安定なため貯蔵中に生物学的活性を失うことがある。中でも、凝集、脱アミドおよび酸化は、抗体分解の最も一般的な原因であることが知られている。特に、凝集は、患者における免疫応答の増大を引き起こす可能性があり、安全性が問題となっている。したがって、凝集は最小限に抑えるか、防止しなければならない。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、抗CD40抗体のさらに改善された製剤、特に、高濃度の抗CD40抗体を含み、抗体凝集レベルが低い製剤を提供することである。
【0011】
発明の開示
治療用抗体は通常、非経口投与のために準備された水性形態か、または投与前に適切な希釈剤で再構成するための凍結乾燥物として製剤化される。本発明によれば、抗CD40抗体は、凍結乾燥物として、または、例えば、プレフィルドシリンジに入れた水性組成物として製剤化することができる。適切な製剤は、患者に送達するために、水性医薬組成物、または再構成して高濃度の抗体活性成分を含み、抗体凝集レベルが低い溶液にすることができる凍結乾燥物を形成することができる。患者に送達しなければならない物質の量を抑えるので、高濃度の抗体は有用である。投与体積を抑えると、患者に固定用量を送達するために要する時間が最小限に抑えられる。高濃度の抗CD40抗体を含む本発明の水性組成物は、特に皮下投与に適している。
【0012】
したがって、本発明は、対象における非経口投与、例えば、皮下投与に適切な、抗CD40抗体を含む水性医薬組成物を提供する。
【0013】
以下の本発明の特定の実施形態は、以下に番号をつけて記載する。
【0014】
1.抗体の濃度が少なくとも50mg/mlである抗CD40抗体を含み、前記抗CD40抗体が(i)配列番号3、4および5からなる群から選択される1種または複数の重鎖CDR;および/または(ii)配列番号6、7および8からなる群から選択される1種または複数の軽鎖CDRを含む、対象における皮下投与に適切な水性医薬組成物。
【0015】
2.前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む、実施形態1に記載した、対象における皮下投与に適切な水性医薬組成物。
【0016】
3.抗CD40抗体がアミノ酸配列番号1のVドメインおよびアミノ酸配列番号2のVドメインを含む、実施形態1または2の水性医薬組成物。
【0017】
4.抗CD40抗体が配列番号9の重鎖領域および配列番号10の軽鎖領域または配列番号13の重鎖領域および配列番号14の軽鎖領域または配列番号17の重鎖領域および配列番号18の軽鎖領域を含む、実施形態1、2または3の水性医薬組成物。
【0018】
5.抗CD40抗体の5%未満が凝集または分解している、実施形態1から4のいずれか1つの水性医薬組成物。
【0019】
6.安定剤、緩衝剤および界面活性剤からなる群から選択される以下の成分の1つまたは複数を含む実施形態1から5のいずれか1つの水性医薬組成物。
【0020】
7.安定剤が糖である実施形態6の水性医薬組成物。
【0021】
8.糖、緩衝剤および界面活性剤を含む、実施形態6または7の水性医薬組成物。
【0022】
9.遊離アミノ酸をさらに含む、実施形態6または7の水性医薬組成物。
【0023】
10.糖としてスクロースを含む、実施形態7から9の水性医薬組成物。
【0024】
11.スクロース200〜300mMを含む、実施形態10の水性医薬組成物。
【0025】
12.緩衝剤としてヒスチジン緩衝液を含む、実施形態6〜11の水性医薬組成物。
【0026】
13.ヒスチジン緩衝液25〜35mMを含む、実施形態12の水性医薬組成物。
【0027】
14.界面活性剤としてポリソルベート20を含む、実施形態6から13の水性医薬組成物。
【0028】
15.0.01から0.2%のポリソルベート20を含む、実施形態14の水性医薬組成物。
【0029】
16.遊離アミノ酸としてアルギニンおよび/またはメチオニンをさらに含む、実施形態9の水性医薬組成物。
【0030】
17.アルギニン40〜80mMを含む、実施形態16の水性医薬組成物。
【0031】
18.スクロース、ヒスチジン緩衝剤、ポリソルベート20およびアルギニンを含む、前記実施形態のいずれかの水性医薬組成物。
【0032】
19.スクロース、ヒスチジン緩衝剤、ポリソルベート20およびメチオニンを含む、前記実施形態のいずれかの水性医薬組成物。
【0033】
20.スクロース、ヒスチジン緩衝剤、ポリソルベート20、アルギニンおよびメチオニンを含む、前記実施形態のいずれかの水性医薬組成物。
【0034】
21.前記実施形態のいずれかの水性医薬組成物を調製するために適切な凍結乾燥物(lyophilisate)。
【0035】
22.スクロース、ヒスチジン緩衝剤およびポリソルベート20を含む実施形態21に記載の凍結乾燥物。
【0036】
23.(i)抗CD40抗体、糖、緩衝剤、界面活性剤、および、場合によって遊離アミノ酸を含む水溶液を調製するステップ、および(ii)この水溶液を凍結乾燥するステップを含む、凍結乾燥物の調製方法。
【0037】
24.実施形態1〜20のいずれか1つの水性医薬組成物を含む送達装置(delivery device)。
【0038】
25.実施形態1〜20のいずれか1つの水性医薬組成物を含むプレフィルドシリンジ。
【0039】
26.実施形態1〜20のいずれか1つの医薬組成物を患者に投与するステップを含む、抗CD40モノクローナル抗体を哺乳動物に送達するための方法。
【0040】
27.CD40によって媒介される疾患または障害の治療において使用するための実施形態1〜20のいずれか1つの組成物。
【0041】
28.自己免疫疾患の治療のための実施形態27の組成物。
【0042】
29.関節リウマチ、全身性エリテマトーデスまたは尋常性天疱瘡(Pemphigus vulgaris)の治療のための実施形態28の組成物。
【0043】
30.抗体の濃度が、少なくとも少なくとも50mg/ml、少なくとも100mg/ml、少なくとも150mg/ml、少なくとも200mg/ml、少なくとも250mg/mlまたは少なくとも300mg/mlである実施形態1〜20のいずれか1つの水性医薬組成物。
【0044】
本発明はまた、前述したような抗CD40モノクローナル抗体、例えば、mAb1、mAb2またはmAb3、特にmAb1、安定剤、緩衝剤および界面活性剤を含む水性医薬組成物を提供する。組成物はまた、遊離アミノ酸を含むことが好ましい。
【0045】
本発明はまた、前述したような抗CD40モノクローナル抗体、例えば、mAb1、mAb2またはmAb3、特にmAb1、糖、緩衝剤および界面活性剤を含む凍結乾燥物を提供する。凍結乾燥物はまた、遊離アミノ酸を含むことが好ましい。
【0046】
本発明はまた、前述のような抗CD40モノクローナル抗体、例えば、mAb1、mAb2またはmAb3、特にmAb1を含む凍結乾燥物であって、水性再構成物質で再構成して、再構成後の水溶液中における抗体の濃度が少なくとも50mg/ml、100mg/ml、150mg/ml、200mg/ml、250mg/mlまたは300mg/mlである水性組成物を提供することができる凍結乾燥物を提供する。
【0047】
本発明はまた、高濃度の前述したような抗CD40モノクローナル抗体、例えば、mAb1、mAb2またはmAb3、特にmAb1を含み、抗CD40抗体の5%、4%、3%、2%または1%未満が凝集または分解している水性医薬組成物を提供する。
【0048】
本発明はまた、(i)抗CD40モノクローナル抗体、糖、緩衝剤、界面活性剤、および、場合によって遊離アミノ酸を含む水溶液を調製するステップ、および(ii)この水溶液を凍結乾燥するステップを含む、凍結乾燥物の調製方法を提供する。
【0049】
本発明はまた、凍結乾燥物と水性再構成物質とを混合するステップを含み、凍結乾燥物が抗CD40モノクローナル抗体、糖、緩衝剤、界面活性剤、および、場合によって遊離アミノ酸を含む医薬組成物の調製方法を提供する。
【0050】
さらに具体的に、本発明は
(i)抗体濃度が20〜150mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤、
(iii)緩衝剤、
(iv)界面活性剤、および、場合によって
(v)アミノ酸
を含む、pHが5.0〜7.0である水性製剤を凍結乾燥することによって調製される凍結乾燥製剤(lyophilised formulation)を提供する。
【0051】
一実施形態では、前記製剤は、
(i)抗体濃度が20〜150mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロースまたはトレハロース、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン、
(iv)界面活性剤としてポリソルベート20、および、場合によって
(v)アルギニン、メチオニンおよびグリシンから選択されるアミノ酸
を含む、pHが5.0〜7.0である水性製剤から調製される。
【0052】
一実施形態では、前記凍結乾燥製剤は、
(i)抗体濃度が20〜150mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロースまたはトレハロース3〜300mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン1〜60mM、
(iv)界面活性剤として最高0.2%のポリソルベート20、および、場合によって
(v)アルギニン、メチオニンおよびグリシン2〜80mM
を含む、pHが5.0〜7.0である水性製剤から調製される。
【0053】
一実施形態では、前記凍結乾燥製剤は、
(i)抗体濃度が50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース90mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン10mM、
(iv)界面活性剤として0.02%のポリソルベート20
を含む、pHが6.0である水性製剤から調製される。
【0054】
一実施形態では、前記凍結乾燥製剤は、
(i)抗体濃度が50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース90mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン10mM、
(iv)界面活性剤として0.02%のポリソルベート20、および
(v)アルギニン17mM
を含む、pHが6.0である水性製剤から調製される。
【0055】
一実施形態では、前記凍結乾燥製剤は、
(i)抗体濃度が150mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース270mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン30mM、および
(iv)界面活性剤として0.06%のポリソルベート20
を含む、pHが6.0である水性製剤から調製される。
【0056】
本発明はまた、前述のような凍結乾燥製剤を再構成割合(reconstitution factor)1:0.5から1:6で再構成することによって得られる水性医薬組成物を提供する。
【0057】
一実施形態では、再構成割合は1:3である。
【0058】
本発明はまた、
(i)抗体濃度が少なくとも50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤、
(iii)緩衝剤、
(iv)界面活性剤、および、場合によって
(v)アミノ酸を
含む、pHが5.0から7.0である水性医薬組成物を提供する。
【0059】
一実施形態では、pHが5.0から7.0である水性医薬組成物は、
(i)抗体濃度が少なくとも50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロースまたはトレハロース、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン、
(iv)界面活性剤としてポリソルベート20、および、場合によって
(v)アルギニン、メチオニンまたはグリシンから選択されるアミノ酸
を含む。
【0060】
一実施形態では、pHが5.0から7.0である水性医薬組成物は、
(i)抗体濃度が少なくとも50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース200〜300mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン25〜35mM、
(iv)界面活性剤として最高0.2%のポリソルベート20、および、場合によって
(v)アルギニン、メチオニンまたはグリシン10〜80mM
を含む。
【0061】
一実施形態では、水性医薬組成物は、pHが6.0であり、かつ
(i)抗体濃度が少なくとも50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース270mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン30mM、および
(iv)界面活性剤として0.06%のポリソルベート20
を含む。
【0062】
一実施形態では、水性医薬組成物は、pHが6.0であり、かつ
(i)抗体濃度が少なくとも50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース270mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン30mM、
(iv)界面活性剤として0.06%のポリソルベート20、および
(v)アルギニン51mM
を含む。
【0063】
一実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、抗CD40抗体濃度が150mg/mlである。
【0064】
一実施形態では、本発明の凍結乾燥製剤または水性医薬組成物は、配列番号1のアミノ酸配列を有するVHドメインおよび配列番号2のアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。
【0065】
一実施形態では、本発明の凍結乾燥製剤または水性医薬組成物は、配列番号9の重鎖領域および配列番号10の軽鎖領域を含む抗CD40抗体を含む。
【0066】
一実施形態では、本発明の凍結乾燥製剤または水性医薬組成物は、N297A変異を有する抗CD40抗体Chir12.12を含む。
【0067】
一実施形態では、本発明の凍結乾燥製剤または水性医薬組成物は、配列番号13の重鎖領域および配列番号14の軽鎖領域を含む抗CD40抗体を含む。
【0068】
一実施形態では、本発明の凍結乾燥製剤または水性医薬組成物は、D265A変異を有する抗CD40抗体Chir12.12を含む。
【0069】
一実施形態では、本発明の凍結乾燥製剤または水性医薬組成物は、配列番号17の重鎖領域および配列番号18の軽鎖領域を含む抗CD40抗体を含む。
【0070】
一実施形態では、本発明の凍結乾燥製剤または水性医薬組成物は、L234A L235A変異を有する抗CD40抗体Chir12.12を含む。
【0071】
本発明はまた、本発明の水性医薬組成物を含む送達装置を含む。
【0072】
本発明はまた、本発明の水性医薬組成物を含むプレフィルドシリンジを含む。
【0073】
本発明はまた、本発明の水性医薬組成物を患者に投与するステップを含む、抗CD40抗体を哺乳動物に送達するための方法を含む。
【0074】
本発明はまた、CD40によって媒介される疾患または障害の治療において使用するための本発明による凍結乾燥製剤または水性医薬組成物を含む。
【0075】
本発明はまた、自己免疫疾患の治療において使用するための本発明による凍結乾燥製剤または水性医薬組成物を含む。
【0076】
本発明はまた、本発明による凍結乾燥製剤または水性医薬組成物 多発硬化症、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、移植拒絶反応(transplant rejection)、移植片対宿主病、尋常性天疱瘡を提供する。
【0077】
高濃度の抗CD40抗体を含む水性医薬組成物
本発明は、少なくとも部分的には、液体(水性)または凍結乾燥組成物のいずれかとして高濃度で製剤化したとき、顕著な安定性および生理活性特性を保持しているmAb1などの抗体の製剤特性に依拠する。
【0078】
本明細書で使用したように、「水性」医薬組成物とは、水性担体が蒸留水である、医薬用途に適切な組成物である。医薬用途に適切な組成物は、滅菌され、均一および/または等張であり得る。水性医薬組成物は、水性形態、例えば、すぐに使えるプレフィルドシリンジ(「液体製剤」)で直接、または使用直前に再構成される凍結乾燥物として調製することができる。本明細書で使用したように、用語「水性医薬組成物」とは、液体製剤または再構成された凍結乾燥製剤を意味する。ある実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、ヒト対象に非経口投与するために適切である。特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、皮下投与するために適切である。
【0079】
本明細書で使用したように、「非経口投与」という語句は、通常、注射による、腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、限定はしないが、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節腔内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外およびintrastemal注射および注入を含む。
【0080】
医薬の活性成分としての抗体の使用は今では広まっており、製品HERCEPTIN(商標)(トラスツズマブ)、RITUXAN(商標)(リツキシマブ)、SYNAGIS(商標)(パリビズマブ)などが含まれる。治療用抗体の医薬等級への精製技術は、当業界では周知である。
【0081】
組成物は通常、非発熱性で、例えば、用量当たり<1EU(内毒素単位、標準測定値)、好ましくは、用量当たり<0.1EUを含有する。組成物はグルテンを含まないことが好ましい。
【0082】
特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物が示す抗体凝集または分解は、低レベルから検出不可能なレベルで、製造、調製、輸送および長期貯蔵の間の生物活性の損失はほとんどないか、または全くなく、抗CD40抗体の濃度は少なくとも約50mg/ml、100mg/ml、150mg/ml、200mg/ml、250mg/mlまたは300mg/mlである。
【0083】
一態様では、本発明は、高濃度の抗CD40抗体を含む水性医薬組成物に関する。
【0084】
例えば、より低い抗体濃度が特定の治療行為に必要であるか、または子どもを含む体重のより少ない患者を治療する場合、このような高濃度水性医薬組成物を注射前に希釈することができることは当業界では公知である。適切な濃度は、25mg/mlまたは10mg/mlであってもよい。あるいは、元の製剤をこのような低濃度で製造してもよい。
【0085】
本明細書では、用語「抗体」は、全抗体および抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)またはそれらの1本鎖を含む。天然に生じる「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結した少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVと略す)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、アイソタイプC1、C2、C3およびC4に応じて3個または4個のドメインから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略す)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1個のドメインCから構成される。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と称するより保存された領域が組み込まれた相補性決定領域(CDR)と称する超可変領域にさらに分割することができる。各VおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端まで、以下の順番:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3個のCDRおよび4個のFRから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的な補体系の第1成分(Clq)を含む、宿主組織または要素に対するイムノグロブリンの結合を媒介する可能性がある。
【0086】
本明細書で使用したように、抗体の「抗原結合部分」(または簡単に「抗原部分」)という用語は、抗原(例えば、CD40の部分)に特異的に結合する能力を保持する抗体の完全長または1個もしくは複数の断片を意味する。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実施され得ることが示された。抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される結合断片の例には、Fab断片、V、V、CおよびC1ドメインから構成される1価断片、F(ab)断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結した2個のFab断片を含む2価断片、VおよびC1ドメインから構成されるFd断片、抗体の1腕のVおよびVドメインから構成されるFv断片、Vドメインから構成されるdAb断片(Ward et al.、1989 Nature 341:544-546)ならびに単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。
【0087】
さらに、Fv断片の2個のドメイン、VおよびVは、別々の遺伝子によってコードされるが、組換法を使用して、VおよびV領域を組み合わせて1価分子(1本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.、1988 Science 242:423-426; and Huston et al.、1988 Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883を参照のこと)を形成する1本のタンパク質鎖として作製することができる合成リンカーによって、一緒にすることができる。このような1本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合領域」という用語内に包含されるものとする。これらの抗体断片は、当業者には公知の従来の技術を使用して得られ、断片は、利用するために完全な抗体と同じ方法でスクリーニングする。
【0088】
本明細書で使用したように、「単離された抗体」とは、様々な抗原特異性を有するその他の抗体を実質的に含まない抗体を意味し、例えば、ヒトCD40に特異的に結合する単離抗体は、CD40以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。しかし、CD40に特異的に結合する単離された抗体は、その他の種のCD40分子などのその他の抗原に交差反応することがある。さらに、単離された抗体は、その他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0089】
本明細書で使用したように、用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子組成物である抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに単一の結合特異性および親和性を示す。
【0090】
本明細書で使用したように、「ヒト抗体」という用語には、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト由来の配列から得られた可変領域を有する抗体が含まれる。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、定常領域はまた、このようなヒト配列、例えば、ヒト生殖系列配列、またはヒト生殖系列配列の変異型または、例えば、Knappik、et al.(2000. J Mol Biol 296、57-86)で記載されたように、ヒトフレームワーク配列分析から得られたコンセンサスフレームワーク配列を含有する抗体から得られる。
【0091】
イムノグロブリン可変ドメイン、例えば、CDRの構造および位置は、よく知られている番号の付け方、例えば、Kabat番号付け、Chothia番号付け、KabatおよびChothiaの組み合わせ(AbM)などを使用して決定することができる(例えば、Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S. Department of Health and Human Services(1991)、eds. Kabat et al.; Al Lazikani et al.(1997) J. Mol. Bio. 273:927 948を参照のこと)。本明細書を通じて、相補性決定領域(「CDR」)は、Kabatの定義にしたがって決定されるが、このCDRのためのKabatおよびChothiaの両方の定義を組み合わせて決定した一連のアミノ酸であるCDRH1は除く。
【0092】
本発明のヒト抗体は、ヒト配列によってコードされていないアミノ酸残基を含んでいてもよい(例えば、インビトロにおけるランダムもしくは部位特異的変異誘発またはインビボにおける体細胞変異によって誘導された変異)。しかし、本明細書で使用したように、「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列から得られたCDR配列がヒトフレームワーク配列に繋がれた抗体は含まないものとする。
【0093】
用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト配列から得られた可変領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を意味する。
【0094】
本明細書で使用したように、用語「組換えヒト抗体」には、組換え手段によって調製、発現、作出または単離された全ヒト抗体、例えば、ヒトイムノグロブリン遺伝子のために遺伝子導入または染色体導入された動物(例えば、マウス)またはそれらから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、ヒト抗体を発現するために形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、およびヒトイムノグロブリン遺伝子、配列の全部または一部からその他のDNA配列へのスプライシングに関与する任意のその他の手段によって調製、発現、作出または単離された抗体が含まれる。このような組換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR領域がヒト生殖系列イムノグロブリン配列から得られた可変領域を有する。しかし、ある種の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、インビトロにおいて変異誘発を受けることができ(または、ヒトIg配列のために遺伝子導入された動物を使用する場合、インビボにおいて体細胞変異誘発を受けることができ)、したがって組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列から得られ、それらに関与するが、天然においてはインビボにおけるヒト抗体生殖系列レパートリー内に存在していなくてもよい配列である。
【0095】
本明細書で使用したように、「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によって規定される抗体の種類を意味する(例えば、IgM、IgA、IgD、IgEおよびIgG、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)。
【0096】
「抗原を認識する抗体」および「抗原に特異的な抗体」という語句は、本明細書では「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と同義に使用される。
【0097】
本明細書で使用したように、「CD40ポリペプチドに特異的に結合する」抗体または「抗CD40抗体」とは、配列番号21のヒトCD40ポリペプチドにKが100nM以下、10nM以下、1nM以下で結合する抗体を意味する。「CD40以外の抗原と交差反応する」抗体とは、その抗原にKが0.5×10−8M以下、5×10−9M以下または2×10−9M以下で結合する抗体を意味する。「特定の抗原と交差反応しない」抗体とは、その抗原にKが1.5×10−8M以上、またはKが5〜10×10−8Mまたは1×10−7M以上で結合する抗体を意味するものとする。ある種の実施形態では、抗原と交差反応しないこのような抗体が、標準的結合アッセイにおいてこれらのタンパク質に対して示す結合は本質的に検出不可能である。
【0098】
一実施形態では、本発明の水性医薬組成物における高濃度の抗CD40抗体は少なくとも50mg/mlである。一実施形態では、高濃度とは少なくとも100mg/mlである。一実施形態では、高濃度とは少なくとも150mg/mlである。一実施形態では、高濃度とは少なくとも200mg/mlである。一実施形態では、高濃度とは少なくとも250mg/mlである。一実施形態では、高濃度とは少なくとも300mg/mlである。
【0099】
一実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、50mg/mlと300mg/mlとの間の抗CD40抗体、例えば、mAb1を含む。
【0100】
一実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、75mg/mlと250mg/mlとの間の抗CD40抗体、例えば、mAb1を含む。
【0101】
一実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、100mg/mlと250mg/mlとの間の抗CD40抗体、例えば、mAb1を含む。
【0102】
一実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、100mg/mlと200mg/mlとの間の抗CD40抗体、例えば、mAb1を含む。
【0103】
一実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、150mg/mlの抗CD40抗体、例えば、mAb1を含む。
【0104】
一実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、約50mg/ml、約60mg/ml、約70mg/ml、約80mg/ml、約90mg/ml、約100mg/ml、約110mg/ml、約120mg/ml、約130mg/ml、約140mg/ml、約150mg/ml、約160mg/ml、約170mg/ml、約180mg/ml、約190mg/ml、約200mg/ml、約210mg/ml、約220mg/ml、約230mg/ml、約240mg/ml、約250mg/mlまたは約300mg/mlの抗CD40抗体、例えば、mAb1を含む。
【0105】
さらに、水性医薬組成物は安定で、したがって、SEC−HPLCで測定すると、2〜8℃で4週間貯蔵した後でも凝集しているのは全体の抗CD40抗体の5%、4%、3%、2%、1%、0.05%または0.01%未満である。
【0106】
水性医薬組成物は、抗CD40抗体に加えて、以下の(i)安定剤、(ii)緩衝剤、(iii)界面活性剤および(iv)遊離アミノ酸の1種または複数などの他の成分をさらに含んでいてもよい。このような追加成分を含めると、抗CD40抗体の凝集が少ない組成物を得ることができる。
【0107】
本発明で使用するために適切な安定剤は、例えば、粘度促進剤、増量剤、溶解剤などとして作用することができる。安定剤は、イオン性または非イオン性(例えば、糖)であってもよい。糖としては、限定はしないが、単糖、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなど、二糖、例えば、乳糖、スクロース、トレハロース、セロビオースなど、多糖、例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど、およびマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)などのアルジトールなどが含まれる。例えば、糖は、スクロース、トレハロース、ラフィノース、マルトース、ソルビトールまたはマンニトールであってもよい。糖は、糖アルコールまたはアミノ糖であってもよい。スクロースは特に有用である。イオン性安定剤として、NaClなどの塩またはアルギニン−HClなどのアミノ酸成分が含まれる。
【0108】
本発明で使用するために適切な緩衝剤には、限定はしないが、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸もしくはフタル酸の塩などの有機酸塩、トリス、thomethamine塩酸塩またはリン酸緩衝剤が含まれる。さらに、アミノ酸成分も緩衝剤として使用できる。このようなアミノ酸成分には,限定はしないが、グリシンおよびヒスチジンが含まれる。ヒスチジン緩衝剤は特に有用である。
【0109】
水性医薬組成物には、pH制御を改善するために、このような緩衝剤またはpH調節剤が含まれる。一実施形態では、本発明の水性医薬組成物のpHは、5.0と8.0との間、5.5と7.5との間、5.0と7.0との間、6.0と8.0との間または6.0と7.0との間である。特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物のpHは、約6.0である。
【0110】
本明細書で使用したように、本明細書の用語「界面活性剤」は、両親媒性構造を有する有機物質を意味し、すなわち、対立する溶解傾向の基、通常、油溶性炭化水素鎖および水溶性イオン基から構成される。界面活性剤は、界面活性部分の電荷に応じて、様々な医薬組成物および生物学的物質の調製のためのアニオン剤、カチオン剤および分散剤に分類することができる。
【0111】
本発明で使用するために適切な界面活性剤には、限定はしないが、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤および双性イオン界面活性剤が含まれる。本発明で使用するために一般的な界面活性剤には、限定はしないが、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン)、トリオレイン酸ソルビタン、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノカプリル酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(例えば、テトラステアリン酸ポリオキシエチレンソルビトール、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、ジステアリン酸ポリエチレングリコール)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、ポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油(例えば、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油)、ポリオキシエチレン蜜蝋誘導体(例えば、ポリオキシエチレンソルビトール蜜蝋)、ポリオキシエチレンラノリン誘導体(例えば、ポリオキシエチレンラノリン)およびポリオキシエチレン脂肪酸アミド(例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド);C10〜C18アルキル硫酸塩(例えば、セチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム)、平均して2から4モルのエチレンオキシド単位を付加したポリオキシエチレンC10〜C18アルキルエーテル硫酸塩(例えば、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム)およびC〜C18アルキルスルホコハク酸エステル塩(例えば、ラウリルスルホコハク酸エステルナトリウム)およびレシチン、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質(例えば、スフィンゴミエリン)などの天然界面活性剤およびC12〜C18脂肪酸のスクロースエステルが含まれる。組成物は、これらの界面活性剤の1種または複数を含んでいてもよい。好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ポリソルベート20、40、60または80である。ポリソルベート80(トゥイーン80)が特に有用である。
【0112】
本発明で使用するために適切な遊離アミノ酸には、限定はしないが、アルギニン、リシン、ヒスチジン、メチオニン、オルニチン、イソロイシン、ロイシン、アラニン、グリシン、グルタミン酸またはアスパラギン酸が含まれる。塩基性アミノ酸、すなわち、アルギニン、リシンおよび/またはヒスチジンを含めることが好ましい。組成物がヒスチジンを含む場合、緩衝剤および遊離アミノ酸の両方として作用することができるが、ヒスチジン緩衝剤を使用する場合、ヒスチジンではない遊離アミノ酸を含めること、例えば、ヒスチジン緩衝剤およびリシンを含めることが一般的である。アミノ酸は、そのDおよび/またはL体で存在してもよいが、L体が一般的である。アミノ酸は、任意の適切な塩、例えば、アルギニン−HClなどの塩酸塩として存在してもよい。
【0113】
存在するならば、成分(i)から(iv)は、
(i)凍結乾燥および貯蔵および再構成(凍結乾燥物用)、または
(ii)投与単位に処理および貯蔵(液体製剤用)した後で、抗CD40抗体を活性のある可溶性の形態で維持するために十分な濃度である。
【0114】
したがって、糖は、例えば、凍結乾燥物を水中に再構成した後で、本発明の水性医薬組成物中に、3と400mMとの間、例えば、50〜380mM、100〜350mM、200〜300mMの濃度で存在してもよい。270mMの濃度のスクロースが有用である。
【0115】
緩衝剤は、例えば、凍結乾燥物を水中に再構成した後で、本発明の水性医薬組成物中に、1と60mMとの間、例えば、10〜50mM、20〜40mM、25〜35mMの濃度で存在してもよい。30mMの濃度のヒスチジン緩衝剤が有用である。
【0116】
界面活性剤は、例えば、凍結乾燥物を水中に再構成した後で、本発明の水性医薬組成物中に、0.2%まで(体積)、例えば、0.01〜0.1%、0.03〜0.08%、0.04〜0.08%の濃度で存在してもよい。0.06%の濃度のポリソルベート20が有用である。いくつかの実施形態では、ポリソルベート80を使用してもよい。
【0117】
遊離アミノ酸は、例えば、凍結乾燥物を水中に再構成した後で、本発明の水性医薬組成物中に、2と100mMとの間、例えば、10〜80mM、20〜70mM、30〜60mM、40〜60mMの間の濃度で存在してもよい。51mMの濃度のアルギニン(例えば、アルギニン−HCl)または60mMの濃度のメチオニンもしくはグリシン(例えば、グリシン−HCl)が有用である。
【0118】
ヒスチジン緩衝剤、スクロースおよびポリソルベート20を含有する製剤は、再構成後少なくとも150mg/mlの濃度の抗体mAb1の凍結乾燥に適切であることが示された。
【0119】
一実施形態では、水性医薬組成物は、mAb1 150mg/ml、ヒスチジン30mM、スクロース270mMおよび0.06% ポリソルベート20から構成される。
【0120】
一実施形態では、水性医薬組成物は、mAb1 150mg/ml、ヒスチジン30mM、スクロース270mM、0.06% ポリソルベート20およびアルギニン−HCl 51mMから構成される。
【0121】
一実施形態では、水性医薬組成物は、mAb1 150mg/ml、ヒスチジン30mM、スクロース270mM、0.06% ポリソルベート20およびグリシン−HCl 60mMから構成される。
【0122】
一実施形態では、水性医薬組成物は、mAb1 200mg/ml、ヒスチジン30mM、スクロース270mMおよび0.06% ポリソルベート20から構成される。
【0123】
一実施形態では、水性医薬組成物は、mAb1 200mg/ml、ヒスチジン30mM、スクロース270mM、0.06% ポリソルベート20およびアルギニン−HCl 51mMから構成される。
【0124】
一実施形態では、水性医薬組成物は、mAb1 75mg/ml、ヒスチジン30mM、スクロース270mMおよび0.06% ポリソルベート20から構成される。
【0125】
一実施形態では、水性医薬組成物は、mAb1 75mg/ml、ヒスチジン30mM、スクロース270mM、0.06% ポリソルベート20およびアルギニン−HCl 51mMから構成される。
【0126】
本発明の水性医薬組成物で利用することができるその他の企図した賦形剤には、例えば、矯臭剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、リン脂質もしくは脂肪酸などの脂質、コレステロールなどのステロイド、血清アルブミン(ヒト血清アルブミン)、組換えヒトアルブミン、ゼラチン、カゼインなどのタンパク質賦形剤、ナトリウムなどの塩を形成する対イオンが含まれる。本発明の製剤での使用に適切なこれらおよびさらなる公知の医薬賦形剤および/または添加物は、例えば、「The Handbook of Pharmaceutical Excipients、4th edition、Rowe et al.、Eds.、American Pharmaceuticals Association(2003); and Remington: the Science and Practice of Pharmacy、21th edition、Gennaro、Ed.、Lippincott Williams & Wilkins(2005)」に挙げられているように、当業界では公知である。
【0127】
本発明の水性医薬組成物は、抗CD40抗体に加えてさらなる活性成分を含んでいてもよい。さらなる薬理学的薬剤には、例えば、化学療法化合物を含めることができる。
【0128】
凍結乾燥物
抗体の凍結乾燥技術は当業界では周知であり、例えば、John F. Carpenter and Michael J. Pikal、1997(Pharm. Res. 14、969-975); Xialin(Charlie)Tang and Michael J. Pikal、2004(Pharm. Res. 21、191-200)を参照のこと。例えば、モノクローナル抗体製品SYNAGIS(商標)、REMICADE(商標)、RAPTIVA(商標)、SIMULECT(商標)、XOLAIR(商標)およびHERCEPTIN(商標)は凍結乾燥物として供給される。これらの抗体は、様々な最終濃度で再構成され、例えば、SIMULECT(商標)は、抗体4mg/mlの濃度で再構成し、REMICADE(商標)は10mg/mlの濃度で再構成し、HERCEPTIN(商標)は21mg/ml、SYNAGIS(商標)およびRAPTIVA(商標)は100mg/ml、ならびにXOLAIR(商標)は125mg/mlで再構成する。
【0129】
予備凍結乾燥物(pre-lyophilisate)、凍結乾燥物および水による再構成(aqueous reconstitution)
凍結乾燥物は、患者に投与する前に水性再構成物質で再構成しなければならない。このステップは、凍結乾燥物中の抗体およびその他の成分を再度溶解して、患者への注射に適切な溶液を生じさせる。
【0130】
再構成に使用する水性物質の体積は、得られる医薬組成物中の抗体の濃度を決定する。予備凍結乾燥体積よりも体積の少ない再構成物質による再構成によって、凍結乾燥前よりも濃縮された組成物がもたらされる。再構成割合(凍結乾燥後の製剤の体積:前の製剤の体積)は1:0.5から1:6であってもよい。再構成割合は1:3が有用である。前述のように、本発明の凍結乾燥物を再構成して、抗CD40抗体濃度が少なくとも50mg/ml、100mg/ml、150mg/ml、200mg/ml、250mg/mlまたは300mg/mlの水性組成物を得ることができ、再構成物質の体積はそれにしたがって選択する。必要ならば、再構成した製剤は、企図した用量を送達するために適切なように、患者に投与する前に希釈することができる。
【0131】
凍結乾燥した抗体の一般的な再構成物質には、場合によって保存剤を含有する滅菌水または緩衝液が含まれる。凍結乾燥物が緩衝剤を含む場合、再構成物質はさらに緩衝剤を含んでいてもよく(凍結乾燥物の緩衝剤と同じでもよく、異なっていてもよい)または代わりに緩衝剤を含めなくてもよい(例えば、WFI(注射用水)または生理学的食塩水)。
【0132】
存在するならば、成分(i)から(iv)は、貯蔵(通常条件下)および再構成した後で抗CD40抗体を活性のある可溶性の形態に維持するために十分な、凍結乾燥前濃度である。成分は、再構成後にも存在する。
【0133】
したがって、スクロースまたはトレハロースなどの糖は、凍結乾燥前に3と300mMの間の濃度、例えば、15〜200mM、30〜150mM、80〜100mMで存在していてもよい。90mMの濃度のスクロースが有用である。ヒスチジンなどの緩衝剤は、凍結乾燥前に1と60mMの間の濃度、例えば、3〜30mM、5〜20mM、5〜15mMで存在していてもよい。10mMの濃度のヒスチジン緩衝液が有用である。ポリソルベート80またはポリソルベート20などの界面活性剤は、凍結乾燥前に最高0.2%(体積)の濃度、例えば、0.01〜0.1%、0.01〜0.08%、0.01〜0.04%で存在していてもよい。0.02%の濃度のポリソルベート80またはポリソルベート20が有用である。アルギニン、メチオニンまたはグリシンなどの遊離アミノ酸は、凍結乾燥前に2と80mMの間の濃度、例えば、3〜60mM、3〜50mM、6〜30mM、10〜25mM、15〜20mMで存在していてもよい。17mMの濃度のアルギニン−HClまたは20mMの濃度のグリシン−HClまたは60mMの濃度のメチオニンが有用である。抗CD40抗体は、凍結乾燥前に20mg/mlと120mg/mlの間の濃度、例えば、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、66.6mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、100mg/ml、110mg/mlまたは120mg/mlで存在する。50mg/mlの濃度が有用である。
【0134】
本発明の予備凍結乾燥物のpHは5.0と8.0との間、5.0と7.0との間、5.5と6.5との間である。特定の実施形態では、本発明の予備凍結乾燥物のpHは約6.0である。
【0135】
一実施形態では、本発明の予備凍結乾燥物のスクロース:抗体のモル比は90:1で、ヒスチジン:抗体のモル比は10:1である。
【0136】
一実施形態では、本発明の予備凍結乾燥物のスクロース:抗体のモル比は90:1で、ヒスチジン:抗体のモル比は10:1、およびアルギニン−HCl:抗体のモル比は17:1である。
【0137】
一実施形態では、本発明の予備凍結乾燥物のスクロース:抗体のモル比は90:1で、ヒスチジン:抗体のモル比は10:1、およびグリシン−HCl:抗体のモル比は60:1である。
【0138】
ヒスチジン緩衝剤、スクロース、ポリソルベート20、および、場合によってアルギニン、メチオニンまたはグリシンを含有する製剤は、抗体mAb1の凍結乾燥に適していることが示された。再構成後、凍結乾燥物の成分は、前述したように水性医薬組成物の濃度で存在していてもよい。
【0139】
標的疾患および障害
抗CD40抗体を含む本発明の水性医薬組成物は、CD40関連自己免疫障害、CD40関連炎症障害を治療、回復または予防するため、および/または移植における移植片拒絶反応(graft rejection)の危険性を予防または軽減するために使用することができる。本発明の目的のために、「炎症障害」という用語には、「自己免疫障害」が含まれる。
【0140】
本明細書で使用したように、用語「自己免疫」は一般的に、「自己」抗原に関連した炎症性免疫媒介プロセスを包含するものと理解される。自己免疫疾患では、自己抗原(複数可)は、宿主免疫応答を誘発する。
【0141】
抗CD40抗体を含む医薬組成物は、多発硬化症、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、移植拒絶反応;移植片対宿主病、尋常性天疱瘡ならびに急性リンパ芽球性白血病(ALL)およびB細胞慢性リンパ性白血病(CLL)などのB細胞新生物の治療に特に有用である。
【0142】
また、本発明には、組織移植拒絶反応に関連した炎症の治療が含まれる。「移植拒絶反応」または「移植片拒絶反応」とは、限定はしないが、HLA抗原、血液型抗原などを含む移植片に対するいかなる宿主開始免疫応答も意味する。
【0143】
本発明はまた、例えば、骨髄移植に関連したものなどの移植片対宿主病の治療に使用することができる。このような移植片対宿主病では、ドナーの骨髄には、リンパ球およびリンパ球に成熟する細胞が含まれる。ドナーのリンパ球は、レシピエントの抗原を非自己として認識し、炎症性免疫応答を開始する。したがって、本明細書で使用したように、「移植片対宿主病」または「移植片対宿主応答」とは、ドナーのリンパ球が宿主抗原と反応するいかなるT細胞媒介免疫応答も意味する。
【0144】
本明細書で記載したアンタゴニスト抗CD40抗体またはタンパク質、例えば、mAb1、mAb2またはmAb3は、本発明の方法にしたがって、限定はしないが、全身性エリテマトーデス(SLE)、円板状ループス、ループス腎炎、サルコイドーシス、若年性関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎、および痛風性関節炎を含む炎症性関節炎、臓器もしくは組織移植の拒絶反応、超急性、急性もしくは慢性の拒絶反応および/または移植片対宿主病、多発硬化症、高IgE症候群、結節性多発動脈症、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病(グルテン感受性腸症)、原発性シェーグレン症候群(pSS)、自己免疫性肝炎、悪性貧血、自己免疫性溶血性貧血、乾癬、強皮症、重症筋無力症、自己免疫性血小板減少性紫斑、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス病、橋本病、免疫複合体病、慢性疲労、免疫機能不全症候群(CFIDS)、多発筋炎および皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、血栓溶解、心筋症、尋常性天疱瘡、間質性肺線維症、I型およびII型糖尿病、1,2、3および4型遅延型過敏、アレルギーもしくはアレルギー障害、治療タンパク質に対する望まない/意図しない免疫応答(例えば、米国特許出願第2002/0119151号およびKoren、et al.(2002) Curr. Pharm. Biotechnol. 3: 349-60を参照)、喘息、チャーグ・ストラウス症候群(アレルギー性肉芽腫症)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性および刺激性接触性皮膚炎、蕁麻疹、IgE媒介アレルギー、アテローム性動脈硬化、ANCA関連血管炎、血管炎、突発性炎症性筋疾患、溶血性疾患、アルツハイマー病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシーなどを含む、自己免疫および/または炎症障害を治療するために使用することができる。
【0145】
CD40−CD154経路の遺伝子破壊または薬理学的阻害が、SLE、pSS、ITP、MS、クローン病、尋常性天疱瘡、自己免疫血管炎およびRAの臨床または前臨床モデルにおいて臨床的に有益であることが以前に示されたことがあり(Law CL、Grewal IS.(2009). Adv. Exp. Med. Biol. 2009;647:8-36)、その医学的必要性を以下に詳述する。
【0146】
好ましい実施形態において、本発明の抗CD40抗体またはタンパク質は、(i)好ましくは、寛解を誘導および維持するために効果的なステロイド節約療法および末期腎疾患の予防を提供する全身性エリテマトーデス(ループス腎炎)の治療、(ii)好ましくは唾液腺および涙腺破壊を予防し、腺外徴候の寛解を誘導および維持する原発性シェーグレン症候群の治療、(iii)好ましくは標準治療に抵抗性の患者を治療する自己免疫血小板減少性紫斑の治療、(iv)好ましくはコルチコステロイドに抵抗性の患者における寛解を誘導および維持し、ステロイド節約治療を行うANCA関連血管炎、(v)好ましくはコルチコステロイドに抵抗性の患者の寛解を誘導および維持し、ステロイド節約治療を行う尋常性天疱瘡の治療、(vi)好ましくは再発および能力障害の進行の予防のためのより効果的な治療を提供し、疾患のない状態を実現する多発硬化症の治療、ならびに(vii)好ましくは抗TNFに抵抗性の患者の寛解を維持し、治療するためにより有効な療法を提供するクローン病の治療に有用である。
【0147】
いくつかのその他の実施形態では、本発明の抗CD40抗体またはタンパク質は、限定はしないが、肺移植片拒絶反応、喘息、サルコイドーシス、肺気腫、膿疱性線維症、突発性肺線維症、慢性気管支炎、アレルギー性鼻炎および過敏性肺炎などの肺のアレルギー性疾患、好酸球性肺炎、骨髄および/または胚移植またはその他の原因による閉塞性細気管支炎、移植片アテローム性動脈硬化/移植片静脈硬化、ならびにコラーゲン、血管、および関節リウマチ、強皮症およびエリテマトーデスなどの自己免疫疾患から生じる肺線維症を含む肺炎症の治療に有用である。
【0148】
本明細書では、「治療」とは、本発明による抗CD40抗体またはタンパク質、例えば、mAb1、mAb2またはmAb3抗体の対象への適用または投与、あるいは本発明の前記抗CD40抗体またはタンパク質を含む医薬組成物の対象から単離された組織または細胞系への適用または投与として定義され、対象は、自己免疫疾患および/または炎症疾患、自己免疫疾患および/または炎症疾患に関連した症状、あるいは自己免疫疾患および/または炎症疾患の発症に対する素因を有し、目的は自己免疫疾患および/または炎症疾患、自己免疫疾患および/または炎症疾患に関連した任意の症状、あるいは自己免疫疾患および/または炎症疾患の発症に対する素因の治癒、快復、緩和、解放、変化、療治、回復、改善、または上記疾患、症状、もしくは素因に影響を及ぼすことである。
【0149】
「治療」はまた、本発明の抗CD40抗体またはタンパク質、例えば、mAb1、mAb2またはmAb3抗体を含む医薬組成物の対象への適用または投与、あるいは本発明の前記抗CD40抗体またはタンパク質を含む医薬組成物の対象から単離された組織または細胞系への適用または投与を意味しており、対象は、自己免疫疾患および/または炎症疾患、自己免疫疾患および/または炎症疾患に関連した症状、あるいは自己免疫疾患および/または炎症疾患の発症に対する素因を有し、目的は自己免疫疾患および/または炎症疾患、自己免疫疾患および/または炎症疾患に関連した任意の症状、あるいは自己免疫疾患および/または炎症疾患の発症に対する素因の治癒、快復、緩和、解放、変化、療治、回復、改善、または上記疾患、症状、もしくは素因に影響を及ぼすことである。
【0150】
「抗炎症活性」は、炎症の軽減または予防を意味する。少なくとも1種の本発明による抗CD40抗体またはタンパク質による療法は、自己免疫疾患および/または炎症疾患の治療に関して有益な生理学的応答を引き起こし、この疾患にはCD40抗原を発現する細胞が関与する。本発明の方法は、増殖、活性化などの細胞の表現型変化を予防するのに有用であり得ると認識される。
【0151】
患者への投与
本発明の医薬組成物は、患者に投与することができる。投与は通常、シリンジによる。したがって、本発明は、本発明の医薬組成物を含む送達装置(例えば、シリンジ)を提供する(例えば、プレフィルドシリンジ)。患者は、主要な活性成分として抗CD40抗体の有効量、すなわち、問題の疾患または障害を治療、回復または予防するために十分な量を投与される。治療効果はまた、全身症状の軽減を含むことができる。任意の特定の対象のための抗体の最適な有効量および濃度は、患者の年齢体格健康状態および/または性別、症状の性質および程度、特定の抗体の活性、体によるクリアランス速度、ならびに抗体と組み合わせて投与する他の任意の治療薬候補(複数)も含む様々な要素に左右される。所与の状況のために送達される有効量は、医師の判断で決定することができる。本発明の目的のために、効果的な用量は、約0.005mg/kgから約50mg/kg、または約0.05mg/kgから約10mg/kgであってもよい。公知の抗体をベースにした医薬は、この点において指針が準備されており、例えば、HERCEPTIN(商標)は、初回量4mg/kg体重、維持量2mg/kg体重を毎週投与し、RITUXAN(商標)は毎週375mg/mを投与し、SYNAGIS(商標)は15mg/kg体重を筋肉内投与するなどである。
【0152】
本発明はまた、本発明の医薬組成物を患者に投与するステップを含む、モノクローナル抗体を哺乳動物に送達するための方法を提供する。
【0153】
本発明はまた、(i)本発明の凍結乾燥物を再構成して水性製剤を得るステップ、および(ii)水性製剤を患者に投与するステップを含む、モノクローナル抗体を哺乳動物に送達するための方法を提供する。ステップ(ii)は、ステップ(i)の24時間以内、例えば、12時間以内、6時間以内、3時間以内、または1時間以内に行うことが理想的である。
【0154】
本発明はまた、医薬品として使用するため、例えば、抗体を哺乳動物に送達するのに使用するため、または前述の疾患および障害の1種または複数の治療、予防または回復に使用するために、本発明の製剤を提供する。
【0155】
哺乳動物はヒトが好ましいが、例えば、ウマまたはウシまたはイヌまたはネコであってもよい。抗体は、標的種に合致するように、例えば、ヒトに投与するにはヒト抗体、ウマにはウマ抗体、イヌにはイヌ抗体などと選択することが理想的である。天然の宿主抗体が利用不可能な場合、抗体の特異性を1つの種から別の種へ移すことは、CDR残基(および通常はさらに、1種または複数のフレームワーク残基)をドナー抗体から宿主種のレシピエントフレームワークに移すことによって、例えば、ヒト化のように実現することができる。ウマ化、ウシ化、イヌ化およびネコ化した抗体は、当業界では公知である。抗体は、標的種のCD40に結合するが、その他の種のCD40にも交差反応することがある。
【0156】
投薬は、単回投与計画または反復投与計画であってもよい。
【0157】
本発明の組成物を形成するための成分(例えば、凍結乾燥物および再構成物質)は、密封容器に入れて供給することができる。
【0158】
抗CD40抗体
本発明は、抗CD40抗体、より具体的にはmAb1、mAb2およびmAb3、特にmAb1と称する抗体の製剤に関する。
【0159】
本発明の医薬組成物に含めることができる適切な1種の抗体は、以下にさらに記載するように構造的に特徴付けられたヒト組換え抗体mAb1である。このような単離された抗CD40抗体のVアミノ酸配列を配列番号1に示す。このような単離された抗CD40抗体のVアミノ酸配列を配列番号2に示す。このような単離された抗CD40抗体の完全長重鎖アミノ酸配列を配列番号9に示す。このような単離された抗CD40抗体の完全長軽鎖アミノ酸配列を配列番号10に示す。このような単離された抗CD40抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列の別の例は、それぞれ、配列番号11および配列番号12のヌクレオチド配列によってコードされたものである。
【0160】
本発明の医薬組成物を調製するために使用することができるその他の抗CD40抗体には、アミノ酸欠失、挿入または置換によって変異しているが、前述した重鎖または軽鎖領域におけるアミノ酸欠失、挿入または置換が1、2、3、4または5以下であるアミノ酸を有する抗CD40抗体が含まれる。特定の実施形態では、このようなアミノ酸変化がフレームワークおよび/または定常領域内のみに出現し、CDR領域がそれぞれ、配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域と100%同一である。さらに特定の一実施形態では、生じた変化は、CDR領域以外の保存的なアミノ酸置換のみである。
【0161】
保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されている置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当業界では定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無荷電の極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ枝分かれ側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。したがって、抗CD40抗体のCDR領域以外の1個または複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーのその他のアミノ酸残基で置換することができ、変化した抗体は、機能保持、特にCD40に対する同じ結合特性について試験することができる。
【0162】
抗体は通常、グリコシル化されていてもよい。重鎖のC2ドメインに付着したN結合グリカンは、例えば、C1qおよびFcR結合に影響を及ぼすことができ、グリコシル化されていない抗体(例えば、N297A変異を含む)のこれらの受容体に対する親和性は、低下しているか、または異なっていることがある。グリカン構造はまた、活性に影響を及ぼし、例えば、補体媒介細胞死の違いは、グリカンの二分枝鎖の末端のガラクトース糖の数(0、1または2)に左右され得る。抗体のグリカンは、投与後にヒト免疫原性応答(immunogenic response)を引き起こさないことが好ましい。
【0163】
本発明によって検討される本明細書の抗CD40抗体の別の改変は、ペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させるためにペグ化することができる。抗体をペグ化するために、抗体またはその断片は通常、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、反応性エステルまたはPEGのアルデヒド誘導体と、1個または複数のPEG基が抗体または抗体断片に付着するようになる条件下で、反応させてもよい。ペグ化は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応によって実施することができる。
【0164】
本明細書で使用したように、用語「ポリエチレングリコール」は、その他のタンパク質を誘導体するために使用したPEGの形態のいずれか、例えば、モノ(C1〜C10)アルコキシ−またはアリルオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール−マレイミドを包含するものとする。ある種の実施形態では、ペグ化する抗体は、グリコシル化されていない抗体である。タンパク質をペグ化する方法は、当業界では公知で、本発明の抗体に適用することができる。例えば、Nishimuraらによる欧州特許第0154316号およびIshikawaらによる欧州特許第0401384号を参照のこと。
【0165】
抗CD40抗体(例えば、mAb1)の任意のその他の天然または非天然の翻訳後改変は、本発明の医薬組成物を調製するために使用することができた抗CD40抗体の特定の実施形態としてさらに企図される。
【0166】
抗体は、天然において関連する生成物を含まない形態で調製することができる。抗体の天然の環境の混入成分には、酵素、ホルモンまたはその他の宿主細胞タンパク質などの物質が含まれる。
【0167】
本発明の様々な特徴および実施形態は、上記の個々の項目および実施形態を意味し、適切ならば、必要に応じて変更を加えて、その他の項目および実施形態に適用される。したがって、1項目または実施形態で詳述した特徴は、適切ならば、その他の項目または実施形態で詳述した特徴と一緒にすることができる。
【実施例】
【0168】
抗CD40抗体の調製
CHIR−12.12およびmAb1(N297A CHIR−12.12)、mAb2(D265A CHIR−12.12)およびmAb3(CHIR−12.12 LALA)は、CD40に特異的に結合する。以下の表1および2は、これらの抗体の配列の特性をまとめて示している。これらの抗体は、適切な発現プロモーター下で、重鎖および軽鎖コーディング配列を有する発現ベクターで遺伝子導入したCHO細胞株などの哺乳動物宿主細胞において産生され得る。
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
製剤の例
mAb1の高濃度凍結乾燥製剤または液体製剤は望ましいので、製剤に関する研究が実施された。糖、緩衝剤および界面活性剤を含む凍結乾燥製剤は安定で、再構成後、高い抗体濃度を維持することができた。
【0172】
mAb1の5種類の製剤(F1、F2、F3、F4およびF5)の安定性を評価した。F1は、pH6.0のmAb1 50mg/mLの液体製剤である。製剤F2、F3、F4およびF5は、凍結乾燥前に、mAb1 50mg/バイアルを有した。製剤F2、F3、F4およびF5は、凍結乾燥前に、pH6.0で、mAb1 50mg/mlを有した。製剤F2、F3、F4およびF5の充填量は、3.6mlである。5種類の製剤には、表3に挙げたような緩衝剤、糖、界面活性剤および遊離アミノ酸が含まれた。
【0173】
【表3】
【0174】
F2、F3、F4およびF5凍結乾燥物は、WFI(1.0ml)で再構成することによって、再構成量1.2ml(元の水溶液体積の1/3)を得た。再構成した組成物を表4に挙げた。
【0175】
【表4】
【0176】
使用した凍結乾燥サイクルを表5に報告する。
【0177】
【表5】
【0178】
以下に挙げたように、製剤/再構成後の様々な時点での5種類の製剤の安定性を試験した。
【0179】
サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)を使用して、製剤時点(T0)、4週間(25℃)、4週間(40℃)、6ヵ月(2〜8℃)、6ヵ月(25℃)および6ヵ月(40℃)での各製剤におけるmAb1の量を評価した。表6に挙げたように、抗体の量を、開始量のパーセントで表現する。F1製剤は、50mg/ml±5mg/ml(100%±10%)近くが残存しており、F2、F3、F4およびF5製剤は、150mg/ml±15mg/ml(100%±10%)近くが残存している。
【0180】
【表6】
【0181】
各製剤中のmAb1抗体の効力は、T0、4週間(25℃)、4週間(40℃)、6ヵ月(2〜8℃)、6ヵ月(25℃)および6ヵ月(40℃)にELISAアッセイによって測定した。開始効力(100%)のパーセントとして表現した結果を表7に挙げる。F1製剤の効力は、時間の進行および温度の増加と共に減少し、6月(6m)後、40℃で効力は79%になることが見いだされた。測定された最低値は、F4では85%(25℃で6月)、F3で86%(40℃で6月)であった。
【0182】
【表7】
【0183】
製剤の安定性は、サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)および動的光散乱法(DLS)によって測定した%不純度によって評価した。結果を表8および9に示す。
【0184】
【表8】
【0185】
【表9】
【0186】
F1製剤は、温度および時間の増加と共に凝集生成物の増加を示した。F2からF5の製剤では、アルギニンの添加によって(F2およびF3)凝集レベルが少し軽減し、スクロース(F3およびF5)はトレハロースより優れていた。
【0187】
凝集生成物はまた、濁度を測定することによって評価した。F1製剤は、温度の増加および時間の増加と共に濁度の増加を示した。F2からF5の製剤は、アルギニンを含有する製剤(F2およびF3)では少し濁度値の増加を示した。
【0188】
【表10】
【0189】
製剤の安定性は、SEC−HPLCで測定したように、分解生成物%によって評価した。F2からF5の製剤では、アルギニンを添加すると、分解が少し軽減した。結果を表11に示す。
【0190】
【表11】
【0191】
4種類の凍結乾燥製剤F2、F3、F4およびF5の再構成後の視覚的透明度を評価した。結果を表12に示す。
【0192】
【表12】
【0193】
製剤の物理化学的特性を評価し、結果を表13に示す。粘度値は、凍結乾燥前に抗体50mg/mlを有する製剤の値である。浸透圧値は、抗体150mg/mlを有する再構成組成物に対応する。
【0194】
【表13】
【0195】
結論
全体的に見て、試験した製剤は良好な結果を示した。バイオアッセイにより(SECおよびELISA)、製剤は同等であることが示された。可溶性の凝集は、アルギニンの存在下で少し軽減し、トレハロースを含有する製剤と比較してスクロースを含有する製剤では少し低かった。濁度は、アルギニンの存在下で少し増加し、トレハロースまたはスクロースを含有する製剤では差がなかった。分解は、アルギニンの存在下で軽減した。物理化学的特性に関しては、pH、粘度、残留水分含量および視覚面は、どの製剤も同等であった。浸透圧は、どの製剤も>300mOsm/kgで、アルギニン−HClの存在下ではさらに高かった(F2およびF3)。血漿と等張であるか(290mOsm/kg)、またはこの値にできるだけ近い製剤を有することが望ましい。スクロースを有する製剤(F3およびF5)は、トレハロースを含む製剤よりも好ましいと考えられた。分解に関していくつかの有利な効果がアルギニンでは認められたが(F3)、F5製剤の浸透圧が低いことは、より重要な要素であると考えられた。F5製剤は、最適な製剤と見なされた。

本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
(i)抗体濃度が20〜150mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤、
(iii)緩衝剤、
(iv)界面活性剤、および、場合によって
(v)アミノ酸
を含む、pHが5.0〜7.0である水性製剤を凍結乾燥することによって調製される凍結乾燥製剤。
[2]
(i)抗体濃度が20〜150mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロースまたはトレハロース、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン、
(iv)界面活性剤としてポリソルベート20、および、場合によって
(v)アルギニン、メチオニンおよびグリシンから選択されるアミノ酸
を含む、pHが5.0〜7.0である水性製剤から調製される、請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
[3]
(i)抗体濃度が20〜150mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロースまたはトレハロース3〜300mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン1〜60mM、
(iv)界面活性剤として最高0.2%のポリソルベート20、および、場合によって
(v)アルギニン、メチオニンおよびグリシン2〜80mM
を含む、pHが5.0〜7.0である水性製剤から調製される、請求項1または請求項2に記載の凍結乾燥製剤。
[4]
(i)抗体濃度が50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース90mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン10mM、
(iv)界面活性剤として0.02%のポリソルベート20
を含む、pHが6.0である水性製剤から調製される、前記請求項のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
[5]
(i)抗体濃度が50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース90mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン10mM、
(iv)界面活性剤として0.02%のポリソルベート20、および
(v)アルギニン17mM
を含む、pHが6.0である水性製剤から調製される、前記請求項のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
[6]
(i)抗体濃度が150mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース270mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン30mM、および
(iv)界面活性剤として0.06%のポリソルベート20
を含む、pHが6.0である水性製剤から調製される、前記請求項のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
[7]
再構成割合が1:0.5から1:6の間である、前記請求項のいずれか一項に記載の凍結乾燥製剤を再構成することによって得られる水性医薬組成物。
[8]
再構成割合が1:3である、請求項8に記載の水性医薬組成物。
[9]
(i)抗体濃度が少なくとも50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤、
(iii)緩衝剤、
(iv)界面活性剤、および、場合によって
(v)アミノ酸
を含む、pHが5.0から7.0である水性医薬組成物。
[10]
(i)抗体濃度が少なくとも50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロースまたはトレハロース、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン、
(iv)界面活性剤としてポリソルベート20、および、場合によって
(v)アルギニン、メチオニンまたはグリシンから選択されるアミノ酸
を含む、請求項9に記載の水性医薬組成物。
[11]
(i)抗体濃度が少なくとも50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース200〜300mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン25〜35mM、
(iv)界面活性剤として最高0.2%のポリソルベート20、および、場合によって
(v)アルギニン、メチオニンまたはグリシン10〜80mM
を含む、請求項9または10に記載の水性医薬組成物。
[12]
組成物のpHが6.0であり、
(i)抗体濃度が少なくとも50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース270mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン30mM、および
(iv)界面活性剤として0.06%のポリソルベート20
を含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
[13]
組成物のpHが6.0であり、
(i)抗体濃度が少なくとも50mg/mlである抗CD40抗体であって、前記抗CD40抗体がそれぞれ配列番号3、4および5の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3ならびに配列番号6、7および8の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3を含む抗CD40抗体、
(ii)安定剤としてスクロース270mM、
(iii)緩衝剤としてヒスチジン30mM、
(iv)界面活性剤として0.06%のポリソルベート20、および
(v)アルギニン51mM
を含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
[14]
抗CD40抗体の濃度が150mg/mlである、請求項9から13のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
[15]
抗CD40抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を有するVドメインおよび配列番号2のアミノ酸配列を有するVドメインを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の凍結乾燥製剤または請求項7から14のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
[16]
抗CD40抗体が、配列番号9の重鎖領域および配列番号10の軽鎖領域を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の凍結乾燥製剤または請求項7から14のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
[17]
抗CD40抗体が、配列番号13の重鎖領域および配列番号14の軽鎖領域を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の凍結乾燥製剤または請求項7から14のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
[18]
抗CD40抗体が、配列番号17の重鎖領域および配列番号18の軽鎖領域を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の凍結乾燥製剤または請求項7から14のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
[19]
請求項7から18のいずれか一項に記載の水性医薬組成物を含む送達装置。
[20]
請求項7から18のいずれか一項に記載の水性医薬組成物を含むプレフィルドシリンジ。
[21]
請求項7から18のいずれか一項に記載の水性医薬組成物を哺乳動物に投与するステップを含む、抗CD40抗体を哺乳動物に送達するための方法。
[22]
CD40によって媒介される疾患または障害の治療において使用するための請求項1から6のいずれか一項に記載の凍結乾燥製剤または請求項7から14のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
[23]
自己免疫疾患の治療において使用するための請求項22に記載の凍結乾燥製剤または水性医薬組成物。
[24]
関節リウマチ、全身性エリテマトーデスまたは尋常性天疱瘡の治療において使用するための請求項23に記載の凍結乾燥製剤または水性医薬組成物。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]