【実施例1】
【0016】
まず、本発明の実施例1に係る、異種メモリ混載モジュールを搭載した情報処理装置について説明する。
図1は、両面プリント基板12(12A,12B,12C)が、マザーボード17に垂直に実装された、情報処理装置100の側面図である。両面プリント基板(以下、単に基板)12には、複数の異種メモリ混載メモリモジュール(DIMM)10とCPU20とが装着されている。換言すると、複数の混載メモリモジュール(DIMM)10が、水平方向においてCPU20とほぼ同じ高さに配置されている。
【0017】
この例では、マザーボード17に取り付けてあるDIMMソケット11(11A,11B,11C)に垂直に、第1〜第3のメモリモジュール10(10A,10B,10C)が実装されている。DIMMソケット11A,11B,11Cは、マザーボード17の内部のグランドライン18やメモリバスライン19に各々接続されている。また、マザーボード17の一端のDIMMソケット11Dには、放熱フィン付きのCPU20が実装されている。各DIMMソケットに各々挿入される第1〜第3のメモリモジュールの両面基板12は、その各下端の両面にそれぞれソケット用の端子(DIMMソケット端子)を有している。本実施例では、マザーボード17に搭載されるメモリモジュールの数を3としている。この数に制限はないが、通常は、信号の伝送速度が速いほど少なくする必要があり、1メモリバスあたりこの数を3〜4とするのが望ましい。両面基板の基材には、例えばFR4(Flame Retardant Type 4)を用いる。
【0018】
本発明では、各メモリモジュールがマザーボード17のDIMMソケット11に挿入されたとき、両面基板12のCPU20に近い側(面している側)を表面、遠い側(反対側)を裏面と定義する。また、両面基板12は、相対向する第1辺と第2辺とを有し、DIMMソケット端子に近い側を第1辺側、DIMMソケット端子から遠い、メモリコントローラやSDRAMが設けられている側を第2辺側と定義する。
【0019】
第1、第2のメモリモジュール10A,10Bは、フラ
ッシュメモリ16とSDRAM15が搭載されたメモリモジュール(混載メモリモジュール)であり、第3のメモリモジュール10Cは、SDRAM15が搭載されたSDRAMメモリモジュールである。
【0020】
すなわち、CPU20に最も近い第1の混載メモリモジュール10Aは、基板12Aの表面に設置されたアドレス用メモリコントローラ(MCA)13及びデータ用メモリコントローラ(MCD)14と、基板の裏面に設置されたSDRAM(DRAM)15及びフラ
ッシュメモリ(Flash)16とを備えている。MCA13及びMCD14と、SDRAM15とは、基板上のソケット端子から遠方の第2辺側の表裏、相対応する位置にあり、ビア60を介して相互に接続されている。なお、プリント基板内の配線に関しては後で説明する。第1の混載メモリモジュール10Aにおいて、基板12Aの表面12Sでかつ第1辺に近い位置、換言すると、基板12Aの裏面のフラ
ッシュメモリに対応する位置には、何も設置されていない。
【0021】
次に、第2の混載メモリモジュール10Bは、基板12Bの表面に設置されたMCA13及びMCD14と、基板の裏面に設置されたSDRAM15とフラ
ッシュメモリ16とを備えている。MCA13及びMCD14と、SDRAM15とは、基板の第2辺側の表面及び裏面において相対応する位置にあり、ビア60を介して相互に接続されている。一方、基板12Bの第1辺に近い位置の表面及び裏面にはフラ
ッシュメモリ16が設置されている。
【0022】
次に、CPU20から最も遠い第3の混載メモリモジュール10Cは、SDRAMメモリモジュールであり、JEDEC標準に準拠した、DDR3−SDRAMで構成される240ピンのRDIMM(Registered DIMM)を使用している。RDIMMは、アドレス信号と制御信号を、DIMM基板上のレジスタード・バッファ(Registered buffer) と呼ばれるIC(Integrated Circuit)で一旦受けて整形増幅してから、各SDRAMに分配するDIMMである。基板12Cの両面に、各々SDRAM15が搭載されている。
【0023】
図2は、本実施例に係る、異種メモリ混載モジュール10を用いたサーバ100の構成を示す平面図である。サーバ100は、2つのCPU20と、それらの左右に配置された複数個のメモリモジュール10と、IOH(Input Output Hub)21と、PCI−SSD22と、SAS(Serial Attached SCSI)ブリッジ23と、SAS−SSD/HDD24とを有する。2つのCPU20はそれぞれIOH21とQPIバス(Quick Path Interconnect)19Qを介して接続されている。2つのCPU20はそれぞれ4チャネルのメモリバス19Mと接続されている。1チャネルのメモリバス19Mのデータ幅は8B(バイト)で、それにECCデータが1B(バイト)付与されている。1チャネルのメモリバス19Mは、それぞれ3個のメモリモジュール10が接続可能とされている。IOH21は、PCIeバス19Pを介してPCISSD22及びSASブリッジ23と接続されている。SASブリッジ23は、SASバス19Sを介してSAS−SSD/HDD24と接続されている。
【0024】
本実施例では、2個のCPU20に、8個の異種メモリ混載メモリモジュール(DIMM)10が接続されている。すなわち、左右の2つのCPU20のメモリバス19Mに、16個の混載メモリモジュール(10A及び10B)と、8個のSDRAMメモリモジュール10Cが接続されている。混載メモリモジュール10A,10BおよびSDRAMメモリモジュール10Cは、いずれもCPU20によってSDRAMのメモリインタフェースでアクセスされる。なお、サーバ100を構成するCPU20は、1つであっても良い。
【0025】
また、フラ
ッシュメモリの使用環境が40℃〜55℃程度以下になるように冷却するために、
図2において、下方からCPU20やメモリモジュール10に向かって、ファン(図示略)により冷却風が供給されるように構成されている。
【0026】
図3Aは、実施例1に係る第1のメモリモジュール10Aの表側の部品配置を示す図である。
図3Bは、第1のメモリモジュール10Aの裏側の部品配置を示す図である。
図4Aは、第1のメモリモジュールの基板の積層パターンの一例を示す、
図3AのA−A‘に沿った縦断面図である。
【0027】
第1のメモリモジュール10Aは、基板12Aと、この基板の両面の第1辺付近にありDIMMソケット11Aに対応するソケット端子62Aと、基板の表側の第2辺付近にある1個のMCA13、及び9個のMCD14と、基板の裏側の第2辺付近にある9個のSDRAM15、9個のフラ
ッシュメモリ16、及び1個のSPD27とを有する。MCA13、MCD14及びSDRAM15は、ソケット端子62Aから遠い第2辺側の基板表面に配置され、フラ
ッシュメモリ16は、基板51の裏面であって、ソケット端子62Aに近い位置に配置されている。
【0028】
基板12Aは、その表側から順に、表面12S上に形成された信号線40(メモリバス19−6)、絶縁層41、グランド層42(第1のグランド18−1)、絶縁層43、信号線44(メモリバス19−2)、電源層45(メモリバス19−1)、絶縁層46、テータ線47(メモリバス19−3)、グランド層48(第2のグランド18−2)、絶縁層49、信号線50(メモリバス19−4)、グランド層51(第3のグランド18−3)、絶縁層52、信号線53(メモリバス19−5)が積層された構成になっている。
【0029】
第1のメモリモジュール10Aでは、基板の表側の表面12Fの配線層がそのまま導体路40として使用され、ソケット端子62AとMCA13やMCD14とを接続している。これにより、VIAや配線層またぎによる反射を最小限に抑えられるため、CPUとMCA13やMCD14間の信号やデータの高速伝送が可能である。また、MCD14とSDRAM15の実装位置を表裏で重ね最短距離でビアにより相互に接続することで、両者間における信号やデータの高速伝送を可能にしている。なお、この図ではSSTLの終端用の抵抗部品を記載していないが、MCDとソケット端子の間にはこの抵抗部品を設けても良いし、その機能をMCDに内蔵しても良い。また
図3の配線はその代表として一部のみしか記載していない。
【0030】
また、第1のメモリモジュール10Aでは、フラ
ッシュメモリ16を基板12Aの裏側にのみ配置することにより、フラ
ッシュメモリ16に対して、高熱の発生源であるCPU20からの熱を軽減することができる。これらの効果に関しては、後で詳細に述べる。
【0031】
図4Bは、
図4Aの積層パターンに対応した、基板12Aの裏側の表面12Sの一例を示す図である。基板面における外部端子(バンプ電極)は半田ボールで形成されている。基板の上側の外部端子26は、SDRAMのボールと同じ位置に配置され、また、基板の下側の外部端子(ボール)53は、フラ
ッシュメモリ16の外部端子と接続する信号線の一部である。基板の下端にはソケット端子62Aと接続するボールが配置されている。54は、グランド配線(ビア)である。なお、この図ではグランドビアを代表として1つのみしか記載していないが、実際には信号:電源:グランド=3:1:1程度となるようにビアを配置する。信号線40以外の、高速伝送が必要でない他の多数の信号線は、多層配線で構成されている基板内を引き回すことにより、形成される。
【0032】
図5Aは、実施例1に係る第2のメモリモジュール10Bの表側の部品配置を示す図である。
図5Bは、第2のメモリモジュール10Bの裏側の部品配置を示す図である。
【0033】
第2のメモリモジュール10Bは、基板12Bの両面の第1辺付近にあるソケット端子62Bと、基板の表側にある1個のMCA13、9個のMCD14、及び9個のフラ
ッシュメモリ16、基板の裏側にある9個のSDRAM15、9個のフラ
ッシュメモリ16、及び1個のSPD27とを有する。MCA13、MCD14及びSDRAM15は、ソケット端子62Bから遠い側の基板の第2辺付近の表面に配置されている。言い換えると、フラ
ッシュメモリ16は、基板51の表裏面であって、SDRAM15よりも下方に配置されている。
【0034】
図2に示したサーバ100によれば、第1、第2の混載メモリモジュール10A,10Bに、合計27個のフラ
ッシュメモリが搭載されている。各基板上において、MCA13は横長に、SDRAM22Sは横長に、フラッシュメモリ23Fは縦長に配置されている。
【0035】
第3のメモリモジュール10Cは、基板12Cの表面にSDRAM15が18個、レジスタード・バッファICが1個、SPDが1個搭載されている。また、基板12Cの裏面にSDRAM15が18個、レジスタード・バッファICが1個搭載されている。そのうち、表面の2個のSDRAM15および裏面の2個のSDRAM15は、ECCデータ用である。すなわち、第3のメモリモジュール10Cは、ECC付の32GBのRDIMMである。データは4Gb×64、ECCは4Gb×8である。第3のメモリモジュール10Cは、データ信号もバッファされるLRDIMM(Load-Reduced DIMM)であってもよい。この場合、LRDIMMの端子配置および端子機能は、RDIMMの端子配置および端子機能と同じである。
【0036】
図6Aは、第2のメモリモジュール10Bの基板内部の構成を示す横断面図であり、図中、右端がDIMMソケット11Aに挿入されるソケット端子62である。また、
図6Bは、
図6Aの一部を表面側から見た図である。
【0037】
本発明の特徴の1つは、MCD/DRAM用グランドライン80、81と、フラ
ッシュ用グランドライン82とが、分離されていることにある。これは幅広の導体であるグランドプレーンが熱の伝導経路となるためである。但し、MCDのフラ
ッシュI/Fとフラ
ッシュメモリのグランドライン82は、共通化されている。これは、信号配線のリターンパスを確保するためのものである。このようにすることで、フラッシュへの熱の伝達を最小限に抑えつつ、信号品質を確保し、高速伝送を可能としている。
【0038】
第2のメモリモジュール10Bは、マザーボード17の内部に、MCD/DRAM用グランド層80、81、フラ
ッシュ用グランド層82、及び、メモリバスライン19が形成されている。MCD14やDRAM15は、接続点83,84,85、MCD/DRAM用グランド層81(第2のグランド18−2)、グランド層80(第1のグランド18−1)、ビア(図示略)を介して、ソケット端子62に接続される。また、MCD14やDRAM15は、ビア(図示略)を介してメモリバスライン19に接続されている。さらに、MCD14は接続点90、ビア,87を介してフラ
ッシュ用グランド層82の一端に接続されている。すなわち、MCDのフラ
ッシュI/Fとフラ
ッシュメモリのグランドライン82は、共通化されている。このように、同じ基板内の同じ層の第2のグランド18−2が、2つのグランド層81、82に分離されている。一方、フラ
ッシュメモリ16は、接続点88、グランド層82(第2のグランド18−2)、ビア91、を介して、ソケット端子62Bに接続される。
【0039】
なお、第1のメモリモジュール10Aも、MCD/DRAM用グランドラインと、フラ
ッシュ用グランドラインが、分離されている構成は同じであり、MCD14と同じ面にフラ
ッシュメモリ16が無い点で、
図6Aと相違している。
【0040】
図7は、実施例1に係る混載メモリモジュールの全体構成を示す図である。
図7に示すように、混載メモリモジュール10A,10Bは、MCA13と、MCD14と、SDRAM15と、複数のフラッシュメモリ16とを有する。MCA13とMCD14とでメモリコントローラMC(
図8B、13,14)を構成している。搭載するSDRAM15の個数分のMCD14が各混載メモリモジュール10A,10Bに実装され、MCA13は混載メモリモジュール10A,10Bに各々1つ実装される。MCA13とMCD14のそれぞれは、半導体チップで形成され、BGA型パッケージに実装されている。64GBの容量のフラッシュメモリ16は、8GBのNAND型フラッシュメモリチップ(NAND Flash)が8枚積層されて1つのBGA型パッケージに実装されている。
【0041】
また、混載メモリモジュール10A,10Bは、SPD(Serial Presence Detect)27と、DC−DCコンバータ28とを有する。SPD27には、メモリモジュール自身に関する情報(例えば、メモリチップの種類や構成、メモリ容量、ECCやパリティの有無などの情報)が格納されている。DC−DCコンバータ28はフラッシュメモリ16用の電源線圧を生成する。
【0042】
また、混載メモリモジュール10A,10Bは、メモリバスライン19Mと接続するためのソケット端子を有する。ソケット端子には、クロック信号(Clock)、アドレス信号(ADDR)、制御信号(CTRL)、データ信号(DQ)、データ制御信号(DQS、DQS#、DM)、電源(VDD、VSS、VDDQ,VrefDQ)、SPD信号等が印加される。ソケット端子からのSDRAMおよびフラッシュメモリのアクセスに必要な信号は、一旦MCA13またはMCD14に入力される。
【0043】
MCA13において、第1のクロック信号(Clock)がPLL(Phase Loop Lock)回路に入力され、このPLL回路は、フラッシュメモリ用の第2のクロック信号(CKF,CKF#)、MCAデータ用の第3のクロック信号(CKMD)、SDRAM用の第4のクロック信号(CK、CK#)を出力する。第1のクロック信号(Clock)と第3のクロック信号(CKMD)と第4のクロック信号(CK,CK#)とは同じ周波数の信号である。第2クロック信号(CKF,CKF#)は、第1クロック信号(Clock)の1/4の周波数の信号である。
【0044】
アドレス信号(ADDR)および制御信号(CTRL)は、MCA13のセレクタに入力され、SDRAM用の制御信号(ADDR CTRL)が出力される。この信号は、フラッシュメモリのデータをSDRAMに書き込む場合やSDRAMSのデータをフラッシュメモリに書き込む場合に使用される。
【0045】
図8Aに示すように、MCA13は、メモリモジュール10A,10Bの中央付近に配置するのがよい。1個のデータ用メモリコントローラMCD14と1個のSDRAM152個のフラッシュメモリ16を破線で囲った部分DSFは、(
図8AではMCA13の上下に1つずつしか示していないが)、例えば、上に5つ、下に4つ配置される。
【0046】
図8Bは、サーバ100を構成するCPU20と混載メモリモジュール10A,10Bのブロック図である。CPU20には、メモリモジュール10A,10B,10Cを制御するメモリコントローラ25が内蔵されており、ハイパーバイザ26によってメモリコントローラ25は制御されている。なお、CPU20には、図示していないキャッシュメモリが内蔵されており、メモリコントローラ25によって、メモリモジュール10A,10B,10Cから読み出されたデータがこのキャッシュメモリに格納される。メモリコントローラ13、14は、メモリバス19MとSDRAM15およびフラッシュメモリ16とのインタフェースを行う。
【0047】
図8Bにおいて、混載メモリモジュール10A,10Bのフラッシュメモリ16からデータを読み出す場合(READ)は、まず、メモリコントローラ13、14がフラッシュメモリ16からデータを読み出してSDRAM15に書き込み、その後メモリコントローラ13、14がSDRAM15からデータを読み出す。
【0048】
フラッシュメモリ16からデータを読出してSDRAM15に書込む経路(WRITE (i))において、メモリバス19Mを介することなく、SDRAM15からデータを読出す経路(READ(ii))のみメモリバス19Mを介することで、データスループットをメモリバスの限界まで最大化することができる。
【0049】
また、混載メモリモジュール10A,10Bのフラッシュメモリ16にデータを書き込む場合(WRITE)は、まず、メモリコントローラ13、14がSDRAM15にデータを書き込み(WRITE(1))、その後メモリコントローラ13、14がSDRAM15からデータを読み出してフラッシュメモリ16に書き込む(WRITE(2))。すなわち、フラッシュメモリ16にデータを書き込む場合も、メモリバス19Mを介さず、SDRAM15からデータを読み出してフラッシュメモリ16に書き込むことで、データスループットをメモリバスの限界まで最大化することができる。
【0050】
このように、CPU20が、混載メモリモジュール10A、10B内のメモリ管理を行っているので、メモリコントローラ13,14での遅延を最小限にすることができる。
【0051】
ハイパーバイザ26は、ハードウェア上で直接動作し、すべてのOSはそのハイパーバイザ上で動作する。アプリケーションはOS上で動作する。ハイパーバイザによってサーバの、VMを含むアドレス空間が実現される。アプリケーションが確保するバッファキャッシュのアドレスは、OSにより任意のアドレスに割り当てられる。
【0052】
混載メモリモジュール10FD内のフラッシュメモリはI/O空間にある。したがって、I/O空間にあるフラッシュメモリから読み出すデータのアドレスをメモリアドレス空間の物理アドレス上に割り当てる必要がある。そこで、ハイパーバイザによるアドレス変換によって、アプリケーションが確保するバッファキャッシュのアドレスを、混載メモリモジュール(DIMM)内部のSDRAMに割り付ける。これによって、混載メモリモジュール内部でのデータ伝送が可能となり、メモリバスへの余分なデータ伝送を防止することができる。
【0053】
先に述べたように、フラッシュメモリは高温では寿命が短くなるため、温度管理が必須である。温度上昇の主な原因となるのは、(1)CPUからの放熱風、(2)MCDやMCAの発熱である。なお、発熱部品は、これらに限定されるものではなく、ASICやFPGA等の消費電力の大きい部品や、電源モジュールなど、その他の発熱体もある。混載メモリモジュールの部品寿命を最大化するためには、熱に弱いフラッシュメモリと放熱部品との配置関係を最適化する必要がある。
【0054】
図9、
図10は、本実例のメモリモジュールの、熱に関係した作用効果を説明する図である。本実例では、
図2に示したように、サーバ100内で、複数の混載メモリモジュール10AがCPU20を挟んで水平方向に配置されているものとする。サーバ100における主な発熱部品は、CPU20、MCD14及びMCA13、DRAM15であり、とりわけ、CPUの発熱が大きい。
【0055】
本実例では、
図9に示したように、CPU20に最も近い第1の混載メモリモジュール10Aは、基板12Aの表面に、MCA13及びMCD14のみが配置され、基板の裏面には、DRAM15とフラ
ッシュメモリ16が配置されている。すなわち、第1の混載メモリモジュール10Aにおいて、基板12Aの表面12SでかつDIMMソケット11Aに近い位置は、発熱部品であるCPUからの輻射熱(H−1)を直接受けるため、この位置にフラッシュメモリを配置するのは、耐久性の見地から望ましくない。そのため、この位置は非実装とし、導体路40以外、何も設置されていない。一方、基板の裏面側は、CPUからの輻射熱を受けないため、フラ
ッシュメモリ16を配置しても、その放熱特性に影響は無い。
【0056】
また、熱は上方に伝わるため、発熱部品(MCA、MCDおよびDRAM)の上に配置することは回避する必要がある。すなわち、MCA13、MCD14及びDRAM15の発熱(H−2)により周囲の空気が暖められて対流(上昇気流)が生ずるが、フラッシュメモリをMCA13、MCD14及びDRAM15よりも下方に配置しているため、これらの熱(H−2)によるフラッシュメモリの放熱特性へ影響を回避できる。
【0057】
なお、CPUからマザーボード17のグランドパターン、ソケット端子62を介してフラッシュメモリに伝達される熱(H−3)も有るが、伝熱経路が長いこと等から、H−1、H−2に比べると、その影響は無視できる。
【0058】
次に、第2の混載メモリモジュール10Bは、基板12Bの表面に設置されたMCA13及びMCD14と、基板の裏面に設置されたSDRAM15とフラ
ッシュメモリ16とを備えている。第2の混載メモリモジュール10Bでは、表面、裏面、共に、CPUからの輻射熱を受けないため、両面にフラ
ッシュメモリ16を配置してもその放熱特性に支障が無い。但し、MCA13、MCD14及びDRAM15の発熱(H−2)による影響を回避するために、フラッシュメモリをMCA13、MCD14及びDRAM15よりも下方のDIMMソケット11A側に配置し、フラ
ッシュメモリの放熱特性を確保している。
【0059】
次に、MCD14やDRAM15の熱は、基板内のグランドパターンを介して、フラ
ッシュメモリ16へ伝播する可能性がある。
図10は、本実例の基板10A、10B内のグランドパターンを示した図である。ここでは、MCD14の発熱(H−4)が、グランドパターンを介してフラ
ッシュメモリ16へ伝播するのを阻止するために、同じ高さの第2のグランド層18−2が、MCD14のグランド層81とフラ
ッシュメモリ16のグランド層82とに分割されている。MCD14やDRAM15は、接続点83−86、全面グランド層80(第1のグランド18−1)、ビア(図示略)を介して、ソケット端子に接続される。一方、フラ
ッシュメモリ16は、接続点88、グランドライン82(第2のグランド18−2)、ビア91、を介して、ソケット端子に接続される。このように、基板内の第2のグランド18−2が、2つの部分に分離され、各々に、MCD14やDRAM15と、フラ
ッシュメモリ16とが接続されている。これにより、基板内のグランドパターンを介して、MCDやDRAMからの熱(H−4)がフラ
ッシュメモリへ伝播するのを阻止している。なお、分離された第2のグランド18−2と近接して平行に、大きな面を有する単体の導体プレートから成る第1のグランド18−1が配置されているため、第1のグランド18−1にリターン電流が流れ、第2のグランド18−2が分割されているので高周波信号による放電ノイズの影響を低減できる。
【0060】
MCD14のFlash I/Fとフラ
ッシュメモリのグランドラインは、右端部で共通化されている。しかし、伝熱の観点からは、破線の矢印で示したように、MCD14やDRAM15と、フラ
ッシュメモリ16との間が、3つのグランドラインや複数のビアを経由した長い経路となるため、熱(H−4)の伝播は殆どない。
【0061】
本実施例では、CPUメモリバススループットの向上についても配慮している。すなわち、
図11A、
図11Bにより、サーバ等の情報処理装置の演算能力に大きく関与する、データの読み出し/書き込みスループットに関して説明する。
【0062】
図11Aは、CPU20と、各混載メモリモジュール10A、10Bに実装された各素子(MCA,MCD,DRAM,フラ
ッシュメモリ)との間のメモリバス19における、データや信号の送受の経路を示したものである。
【0063】
既に、
図4Aに関しても述べたように、第1の混載メモリモジュール10Aにおいて、基板の表側の表面12Fの配線層がそのまま導体路40として使用され、ソケット端子62AとMCA13やMCD14とを接続している。例えば、ソケット端子62Aと各MCD14とは、11本のデータ線と30本のアドレス線で接続され、ソケット端子62AとMCA13とは、2本のクロック線と30本のアドレス線で接続される。基板の表面12Fに形成される導体路40には、途中(表面)にビアが無いので、インピーダンスの乱れを生じることなく、
図11Aに示したclock信号やデータ(S−1,S−2,Data)の、高速伝送が可能である。例えば、データ線により、CPU20との間で1.6Gbpsのデータを高速でMCD14に伝達できる。また、MCD14とSDRAM15とは基板の表裏で重ね最短距離で相互に接続されているので、両者間における信号やデータの高速伝送が可能である。これに対し、フラ
ッシュメモリ16とMCA13、MCD14及びSDRAM15との間の信号やデータ(S−3,S−4,Data)、及び各素子間のアドレスの伝送は、相対的に遅くても良いので、基板の内層の配線を用いてこれらが伝達される。
【0064】
第1の混載メモリモジュール10Aにおいて、基板の表側の表面12Fの配線層40がそのままMCA13やMCD14への導体路40として使用されるので、信号の特性が良く、データや信号の高速伝送をより確実なものにできる。
【0065】
さらに、
図11Bは、CPU20と、各混載メモリモジュール10A、10B,10Cに実装された各素子との間のメモリバス19における、インピーダンスの関係を説明する図である。
一般に、CPU20から各混載メモリモジュール10A、10B,10CのMCD等へのメモリバス19は同じ太さ(インピーダンスZ
0)に設定されるが、各分岐点700では、等価的にみると(1/2)Z
0になる。混載メモリモジュールの数が3と仮定した場合、第1の混載メモリモジュールでは信号の反射が最も多くなり、ノイズの影響を受け、第3の混載メモリモジュールではその影響が小さい。本実施例では、第1の混載メモリモジュール10Aにおいて、基板の表側の表面12Fの配線層がそのままMCA13やMCD14への導体路40として使用されるので、分岐点における多くの反射の影響はあるものの、導体路40における信号の特性が良いので、データや信号の高速伝送をより確実なものにできる。また、第1の混載メモリモジュール10Aの基板裏のフラ
ッシュメモリ16とMCA13、MCD14との間の信号やデータ(S−3,S−4,Data)の伝送は、相対的に遅くても良いので、基板の内層の配線を用いてこれらが伝達される。
【0066】
一方、第2、第3の混載メモリモジュールでは信号の反射が少なくなるので、基板の表面にフラ
ッシュメモリを実装し、内層の配線を用いて信号やデータを伝達しても、影響が少ない。
【0067】
本実施例によれば、フラッシュメモリを備えた第1、第2の混載メモリモジュールにおいて、フラッシュメモリの温度特性に配慮しつつ、かつ、基板の表面の導体路を活用することで、CPUメモリバススループットを向上させることができる。
【0068】
このように、複数のDIMM(10A,10B,10C)がマザーボード17のソケット11に垂直に実装された情報処理装置100において、フラッシュメモリの実装密度を高くして性能を向上させると共に、熱に弱いフラッシュメモリと放熱部品との配置関係を最適化し、混載メモリモジュールの部品寿命を最大化することができる。