特許第6007366号(P6007366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6007366
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】トレーニング器具
(51)【国際特許分類】
   A63B 21/055 20060101AFI20160929BHJP
【FI】
   A63B21/055
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-208819(P2015-208819)
(22)【出願日】2015年10月23日
【審査請求日】2015年10月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515295625
【氏名又は名称】廣川 忠仁
(72)【発明者】
【氏名】廣川 忠仁
【審査官】 宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−239027(JP,A)
【文献】 実開昭59−184859(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00 − 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空アーチ状のフレームと、
前記フレーム内に埋設された弾性部材と、
前記フレームの周りに取り付けられ、長手方向に沿ってスライド自在の一対のグリップとを備えたトレーニング器具であって、
前記弾性部材の一端は、前記一対のグリップの一方のグリップに第1の連結部材を介して連結されており、前記弾性部材の他端は、前記一対のグリップの他方のグリップに第2の連結部材を介して連結されたものであり
前記フレームの長手方向に沿って、前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材がスライドするスリットが形成されており、
前記一対のグリップが前記フレームの長手方向に沿ってスライドするとき、前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材は、それぞれ前記スリットに沿ってスライドする、
トレーニング器具。
【請求項2】
前記一対のグリップが前記フレームの中央部方向へスライドするのを阻止する一対のストッパが前記フレームの中央部から、それぞれ反対方向に所定の距離だけ離れた位置に、配設されている、請求項1に記載のトレーニング器具。
【請求項3】
前記一対のグリップを、前記フレームの中央部から長手方向に沿って、それぞれ反対方向にスライドさせるとき、前記一対のグリップには、それぞれ、前記弾性部材から、前記フレームの接線方向に沿って、該フレームの中央部に向かう張力が付加される、請求項1又は2に記載のトレーニング器具。
【請求項4】
前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材は、それぞれ前記弾性部材又は前記一対のグリップの一部で構成されている、請求項1に記載のトレーニング器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、肩や背中や胸等の筋肉を鍛えるためのトレーニング器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筋肉を鍛える簡易なトレーニング器具として、エキスパンダーやダンベル等の器具が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一対のダンベルを、伸縮可能なバンド状の弾性体でつないで、この弾性体を中空のウレタン等の緩衝材で覆ったトレーニング器具が開示されている。このトレーニング器具を肩に背負うことにより、一対のダンベルは、ダンベル自身の重力と弾性体の張力で上下にバランスの取れた状態で保持することができる。これにより、あらゆる方向の動きに対して、弾性体の張力と、ダンベルの慣性に対抗する負荷が生じるため、上半身を広範囲に鍛えることができる。また、弾性体は緩衝材で覆われているため、トレーニング器具を肩に背負っても、弾性体が肩に触れて擦れるのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−22696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたトレーニング器具では、弾性体は、一対のダンベルにつながれているだけなので、弾性体が伸縮する方向は定まらない。そのため、一定の方向に弾性体の伸縮を繰り返すようなトレーニングをする場合、腕の動きを、常に一定の方向に動かすことが難しいため、鍛えるべき筋肉に、安定した負荷をかけることができない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、その主な目的は、鍛えるべき筋肉に、常に安定した負荷をかけることができるトレーニング器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るトレーニング器具は、中空アーチ状のフレームと、フレーム内に埋設された弾性部材と、フレームの長手方向に沿ってスライド自在に取り付けられた一対のグリップとを備え、弾性部材の一端は、一対のグリップの一方のグリップに連結されており、弾性部材の他端は、一対のグリップの他方のグリップに連結されていることを特徴とする。
【0008】
ある好適な実施形態において、上記フレームの長手方向に沿って、スリットが形成されており、弾性部材の一端は、一方のグリップに第1の連結部材を介して連結されており、弾性部材の他端は、他方のグリップに第2の連結部材を介して連結されており、一対のグリップがフレームの長手方向に沿ってスライドするとき、第1の連結部材及び第2の連結部材は、それぞれスリットに沿ってスライドする。
【0009】
ある好適な実施形態において、上記一対のグリップを、フレームの中央部から長手方向に沿って、それぞれ反対方向にスライドさせるとき、一対のグリップには、それぞれ、弾性部材から、フレームの接線方向に沿って、フレームの中央部に向かう張力が付加される。
【0010】
ある好適な実施形態において、上記フレームの中央部から、それぞれ反対方向に所定の距離だけ離れた位置に、一対のグリップがフレームの中央部方向へスライドするのを阻止する一対のストッパが配設されている。
【0011】
ある好適な実施形態において、上記第1の連結部材及び第2の連結部材は、それぞれ弾性部材又は一対のグリップの一部で構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鍛えるべき筋肉に、常に安定した負荷をかけることができるトレーニング器具を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態におけるトレーニング器具の構成を模式的に示した図である。
図2】本発明の一実施形態におけるトレーニング器具の構成を模式的に示した図である。
図3図1に示したトレーニング器具の一部を拡大した部分断面図である。
図4図1に示したトレーニング器具の一部を拡大した上面図である。
図5図1に示したトレーニング器具のグリップ部分を拡大した横断面図である。
図6】(a)〜(c)は、従来のエキスパンダーを用いて、背筋を鍛える一連の運動を説明した図である。
図7】(a)〜(c)は、従来の鉄棒を用いて、背筋を鍛える一連の運動を説明した図である。
図8】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態におけるトレーニング器具を用いて、背筋を鍛える一連の運動を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0015】
図1及び図2は、本発明の一実施形態におけるトレーニング器具10の構成を模式的に示した図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態におけるトレーニング器具10は、中空アーチ状のフレーム11と、フレーム11内に埋設された弾性部材(不図示)と、フレーム11の周りに取り付けられた一対のグリップ12a、12bとを備えている。そして、一対のグリップ12a、12bは、フレーム11の長手方向に沿ってスライド自在に取り付けられている。また、フレーム11の中央部から、それぞれ反対方向に所定の距離だけ離れた位置に、一対のストッパ14a、14bが配設されている。この一対のストッパ14a、14bは、一対のグリップ12a、12bが、それぞれフレーム11の中央部方向へスライドするのを阻止する役目をもつ。 図3図5を参照しながら、本実施形態におけるトレーニング器具10の詳細な構成を説明する。ここで、図3は、図1に示したトレーニング器具10の一部を拡大した部分断面図で、図4は、図1に示したトレーニング器具10の一部を拡大した上面図で、図5は、図1に示したトレーニング器具10のグリップ12a、12b部分を拡大した横断面図である。
【0017】
図3及び図5に示すように、フレーム11内に埋設された弾性部材13の一端13aは、一対のグリップの一方のグリップ12aに、第1の連結部材15aを介して連結されており、弾性部材13の他端13bは、一対のグリップの他方のグリップ12bに、第2の連結部材15bを介して連結されている。
【0018】
また、図4に示すように、フレーム11の長手方向に沿って、スリット20a、20bが形成されており、一対のグリップ12a、12bがフレーム11の長手方向に沿ってスライドするとき、第1の連結部材15a及び第2の連結部材15bは、それぞれスリット20a、20bに沿ってスライドするようになっている。なお、一対のグリップ12a、12bは、それぞれ、一対のストッパ14a、14bによりフレーム11の中央部方向へスライドしないように規制されているため、一対のストッパ14a、14b間のフレーム11に、スリットを設ける必要はない。また、第1の連結部材15a及び第2の連結部材15bは、それぞれ弾性部材13又は一対のグリップ12a、12bの一部で構成されていてもよい。
【0019】
次に、図6図8を参照しながら、本実施形態におけるトレーニング器具10を用いて、背中の筋肉(背筋)を鍛える(ほぐす)運動を説明する。なお、図6及び図7は、比較として、従来のトレーニング器具を用いて、背筋を鍛える(ほぐす)運動を説明した図である。
【0020】
図6(a)〜(c)は、エキスパンダー30を用いて、背筋を鍛える(ほぐす)一連の運動を説明した図である。
【0021】
背筋を鍛える(ほぐす)には、図6(a)〜(c)に示すように、両腕を上にあげて、エキスパンダー30を左右に引っ張りながら、徐々に両腕を下に降ろす動作を行うことによって、肩甲骨を引き寄せ、これにより背筋を収縮させる運動を行うことが有効である。
【0022】
しかしながら、両腕に加える力Fは、エキスパンダー30を左右に引っ張る力に加えて、エキスパンダー30を下に降ろす力も必要となるため、図6(a)〜(c)に示すように、両腕に加える力Fの向きは、左右方向から、徐々に下方向に下がっていく。一方、エキスパンダー30からの張力Rは、両腕の一連の動作中、常に水平方向に一定である。つまり、両腕に加える力Fの向きと、エキスパンダー30からの張力Rの向きとは、一致していない。そのため、両腕に加える力Fが、肩甲骨を引き寄せるような負荷として有効に作用しない。その結果、背筋を鍛える(ほぐす)ことが十分にできないため、トレーニング効果を得ることが難しい。
【0023】
また、エキスパンダー30を左右に引っ張りながら、徐々に両腕を下に降ろしていく動作は、両腕自身で制御する必要があるため、常に一定の動作を繰り返すことは難しい。そのため、鍛えるべき筋肉に、安定した負荷をかけることができないため、トレーニング効果も安定しない。
【0024】
図7(a)〜(c)は、鉄棒40を用いて、背筋を鍛える(ほぐす)一連の運動を説明した図である。
【0025】
図7(a)〜(c)に示すように、この運動は、懸垂の動作であり、両腕に加える力Fの向きと、重力による引っ張り力Rの向きとは、常に一致しているので、背筋に効率よく負荷を加えることができる。しかしながら、両腕に加える力Fの向きは、常に垂直方向なので、肩甲骨を引き寄せるような負荷を背筋に加えることはほとんどできない。そのため、背筋を鍛える(ほぐす)効果は、ほとんど期待できない。
【0026】
図8(a)〜(c)は、本実施形態におけるトレーニング器具10を用いて、背筋を鍛える(ほぐす)一連の運動を説明した図である。
【0027】
図8(a)〜(c)に示すように、一対のグリップ(不図示)12a、12bを両腕で握り、フレーム11の中央部から長手方向に沿って、それぞれ反対方向にスライドさせる。このとき、一対のグリップ12a、12bには、それぞれ、グリップ12a、12bに連結された弾性部材13から、フレーム11の接線方向に沿って、フレーム11の中央部に向かう張力Rが付加される。一方、一対のグリップ12a、12bを握る両腕には、常に、張力Rと大きさが同じで向きが反対の力Fが加わる。従って、図8(c)に示すように、トレーニング器具10を用いた一連の動作によって、肩を起点として両腕を回すことにより両腕の可動範囲が広がるため、肩甲骨を引き寄せるような負荷Wを、効率よく背筋に加えることができる。また、一対のグリップ12a、12bは、アーチ状のフレーム11に沿ってスライドするため、常に同じ軌道の動作が繰り返される。そのため、トレーニング器具10を用いた一連の動作において、肩甲骨を引き寄せるような負荷Wを、安定して背筋に加えることができる。これにより、肩甲骨の周辺の筋肉を鍛える(ほぐす)トレーニングを、過度な負担もなく、安定して行うことができる。
【0028】
以上、説明したように、本発明におけるトレーニング器具は、アーチ状のフレーム11に取り付けた一対のグリップ12a、12bを、フレーム11内に埋設した弾性部材13からの張力を受けながら、フレーム11に沿ってスライドさせることができるため、鍛えるべき筋肉に、常に安定した負荷をかけることができる。また、一対のグリップ12a、12bの動く軌道がアーチ状であるため、鍛えるべき筋肉に万遍なく負荷を加えることができ、これにより、バランスよく筋肉を鍛える(ほぐす)ことができる。特に、本発明におけるトレーニング器具を用いることによって、従来の器具では難しかった肩甲骨を引き寄せる動作の伴う背筋のトレーニングを、効率よく行うことができる。
【0029】
本発明において、フレーム11は、アーチ状であれば、その形状は特に限定されない。例えば、半径が一定の円弧状であってもよいし、楕円状であってもよい。また、フレーム11の材質は特に限定されないが、例えば、樹脂または金属の材料を用いることができる。
【0030】
また、本発明における弾性部材13は、伸縮性のあるものであれば、特に限定されず、例えば、ゴム、チューブ、バネ等を用いることができる。また、弾性部材13とグリップ12a、12bとの連結は、固定されたものであっても、あるいは、取り外しできるものであってもよい。弾性部材13を取り外すことができれば、グリップ12a、12bに加わる負荷を調整することができる。また、弾性部材13とグリップ12a、12bとの連結は、公知の手段から適宜選択して行えばよい。
【0031】
また、本発明における一対のグリップ12a、12bは、その材料や形状は特に限定されない。
【0032】
上記実施形態では、フレーム11の長手方向に沿って、一本の20a、20bを形成した例を示したが、これに限定されず、複数のスリットを形成してもよい。この場合、弾性部材13を、複数の箇所で、グリップ12a、12bと連結させることができるため、弾性部材13を、より安定して保持することができる。
【0033】
また、上記実施形態では、フレーム11の中央部近傍に、一対のストッパ14a、14bを配設して、一対のグリップ12a、12bがフレーム11の中央部方向へスライドするのを阻止するようにしたが、フレーム11の両端部に、一対のグリップ12a、12bがフレーム11から脱落するのを阻止するために、一対のスットパをさらに配設してもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、本実施形態におけるトレーニング器具の使用例として、背筋を鍛える(ほぐす)運動を例に説明したが、これに限定されず、種々の筋肉のトレーニングに使用することができる。また、その使用目的も、筋肉強化、リハビリ、シェイクアップ等、あらゆる目的に使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 トレーニング器具
11 フレーム
12a、12b 一対のグリップ
13 弾性部材
13a 弾性部材の一端
13b 弾性部材の他端
14a、14b 一対のストッパ
15a 第1の連結部材
15b 第2の連結部材
20a、20b 一対のスリット
30 エキスパンダー
40 鉄棒
【要約】
【課題】鍛えるべき筋肉に、常に安定した負荷をかけることができるトレーニング器具を提供する。
【解決手段】トレーニング器具10は、中空アーチ状のフレーム11と、フレーム11内に埋設された弾性部材13と、フレーム11の長手方向に沿ってスライド自在に取り付けられた一対のグリップ12a、12bとを備え、弾性部材13の一端13aは、一対のグリップの一方のグリップ12aに連結されており、弾性部材13の他端13bは、一対のグリップの他方のグリップ12bに連結されている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8