特許第6007466号(P6007466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6007466
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】角膜形状測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/107 20060101AFI20160929BHJP
【FI】
   A61B3/10 H
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-291223(P2010-291223)
(22)【出願日】2010年12月27日
(65)【公開番号】特開2012-135536(P2012-135536A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】清水 一成
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−066830(JP,A)
【文献】 特開2005−261447(JP,A)
【文献】 特開2005−137662(JP,A)
【文献】 特開2008−295972(JP,A)
【文献】 特開2007−215950(JP,A)
【文献】 特開2006−034744(JP,A)
【文献】 特開2010−252994(JP,A)
【文献】 特開2003−169778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1指標を角膜に投影する第1投影光学系と、角膜に投影された第1指標の反射像を撮像する第1撮像光学系と、
角膜形状を測定するために前記第1指標とは投影範囲と使用波長の少なくともいずれかが異なる第2指標を角膜に投影する第2投影光学系と、角膜に投影された第2指標の反射像を撮像する第2撮像光学系と、
前記第1撮像光学系によって取得された第1指標の反射像に基づいて第2投影光学系の投影光量を調整し、第2撮像光学系によって撮像された第2指標の反射像に基づいて被検者眼の角膜形状を測定する演算制御手段と、を備える角膜形状測定装置であって、
前記演算制御手段は、
第1撮像光学系によって撮像された第1指標の反射像に基づいて被検者眼の角膜形状を測定し、
測定された角膜形状に基づいて第2投影光学系の投影光量を調整し、第2撮像光学系によって撮像された第2指標の反射像に基づいて被検者眼の角膜形状を測定することを特徴とする角膜形状測定装置。
【請求項2】
前記演算制御手段は、前記第1指標の反射像に基づいて第1指標の像高を測定し、
測定された第1指標の像高に基づいて第2投影光学系の投影光量を調整することを特徴とする請求項1の角膜形状測定装置。
【請求項3】
前記第1投影光学系が、赤外光源を有し、赤外光にて第1指標を角膜に投影し、前記第2投影光学系は、可視光源を有し、可視光にて第2指標を角膜に投影する請求項1又は請求項2の角膜形状測定装置。
【請求項4】
前記第2投影光学系が、角膜上の投影範囲が前記第1指標より広い指標を第2指標として角膜に投影する請求項1又は請求項2の角膜形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の角膜形状を測定する角膜形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
角膜形状測定装置は、例えば、指標パターンを角膜に投影する光学系と、投影された指標パターン像を撮像する光学系と、撮像されたパターン像を解析して角膜トポグラフィーを演算する演算部と、を備える(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−215950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記装置は、撮像された指標パターンの輝度の大小をモニタリングし、測定に必要な輝度が確保された指標パターン像を解析用パターンとして取得していた。すなわち、上記装置は、同じ指標パターンを複数回角膜に投影していた。
【0005】
本発明は、上記従来技術を鑑み、被検者にとって低負担でかつ、精度の良い測定結果を取得できる角膜形状測定装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1)
第1指標を角膜に投影する第1投影光学系と、角膜に投影された第1指標の反射像を撮像する第1撮像光学系と、
角膜形状を測定するために前記第1指標とは投影範囲と使用波長の少なくともいずれかが異なる第2指標を角膜に投影する第2投影光学系と、角膜に投影された第2指標の反射像を撮像する第2撮像光学系と、
前記第1撮像光学系によって取得された第1指標の反射像に基づいて第2投影光学系の投影光量を調整し、第2撮像光学系によって撮像された第2指標の反射像に基づいて被検者眼の角膜形状を測定する演算制御手段と、を備える角膜形状測定装置であって、
前記演算制御手段は、
第1撮像光学系によって撮像された第1指標の反射像に基づいて被検者眼の角膜形状を測定し、
測定された角膜形状に基づいて第2投影光学系の投影光量を調整し、第2撮像光学系によって撮像された第2指標の反射像に基づいて被検者眼の角膜形状を測定することを特徴とする。
(2)
前記演算制御手段は、前記第1指標の反射像に基づいて第1指標の像高を測定し、
測定された第1指標の像高に基づいて第2投影光学系の投影光量を調整することを特徴とする(1)の角膜形状測定装置。
(3)
前記第1投影光学系が、赤外光源を有し、赤外光にて第1指標を角膜に投影し、前記第2投影光学系は、可視光源を有し、可視光にて第2指標を角膜に投影する(1)又は(2)の角膜形状測定装置。
(4)
前記第2投影光学系が、角膜上の投影範囲が前記第1指標より広い指標を第2指標として角膜に投影する(1)又は(2)の角膜形状測定装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被検者にとって低負担でかつ、精度の良い測定結果を取得できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1は本実施形態に係る角膜形状測定装置の概略構成図である。図2は撮像光学系によって撮像された第1指標像及び前眼部像を示す例であり、撮像画像がモニタに表示された状態を示す。図3は撮像光学系によって撮像された第2指標像及び前眼部像を示す例である。図4は第1指標パターン像を用いて角膜形状を測定する手法について説明する図である。
【0010】
本装置の概要について説明する。角膜形状測定装置は、第1投影光学系1と、第2投影光学系10と、撮像光学系20と、演算制御部70と、を含み、被検者眼Eの角膜形状の分布を測定する。なお、各構成1、10、20、70は、図1に図示の構成に限定されない。
【0011】
第1投影光学系1は、第1指標を角膜Ecに投影する(例えば、図2の指標T2参照)。第1投影光学系1は、例えば、簡易的に角膜形状を測定するために用いられる。第1指標のパターンを形成する光は、眼にとって低負担であって、例えば、眼にとって眩しくない赤外光(近赤外光であってもよい)が好ましい。また、可視光であっても、角膜上の投影範囲を一部に限定した指標パターンであれば、一定の効果が得られる。第1の指標パターンは、例えば、角膜上の一部の角膜曲率(曲率半径)を測定するための指標であればよい。
【0012】
第1投影光学系1は、例えば、撮像光学系20の光軸L1から離れた位置に配置された光源を有し、斜め方向から角膜Ecに向けて指標を投光する。第1投影光学系1は、例えば、点状指標、リング指標、スリット指標、等を角膜Ecに投影する。光源は、一つ、複数であってもよい。光源は、点状光源、リング光源、スリット光源であってもよい。光源は、好ましくは赤外光源、又は可視光源が用いられる。
【0013】
第1投影光学系1は、専用の光学系であってもよいし、他の目的で利用される光学系との兼用であってもよい。兼用の場合、例えば、アライメント光学系が第1投影光学系として用いられる。
【0014】
第2投影光学系10は、第1指標とは異なる第2指標を角膜Ecに投影する(例えば、図3参照)。第2指標は、例えば、第1指標とは投影範囲と使用波長の少なくともいずれかが異なる。第2投影光学系10は、角膜形状の分布を測定するために用いられる。第2指標のパターンは、広範囲に亘る角膜形状を測定可能なパターンが好ましい。例えば、角膜上の投影範囲について、第2指標パターンは、第1の指標パターンより広い。
【0015】
第2投影光学系10は、例えば、光軸L1から離れた位置に配置された光源を有し、斜め方向から角膜Ecに向けて指標を投光する。第2投影光学系10は、例えば、点状指標、リング指標、スリット指標、等を角膜Ecに投影する。より好ましくは、角膜の広範囲に指標を投影するため、第2投影光学系10は、複数のリングパターン又は格子パターンを投影する。光源は、一つ、複数であってもよい。また、光源は、点状光源、リング光源、スリット光源であってもよい。
【0016】
光源は、可視光源、又は赤外光源が用いられる。第2の指標パターンとしては、例えば、可視光(例えば、青、緑、赤)が利用される。特に、青色光の利用は、茶,黒色系の虹彩の影響を回避する上で有効である。なお、可視光の波長帯域は、一般的には、λ=360nm〜830nmとされている。
【0017】
なお、第1投影光学系1と第2投影光学系10は、各構成の一部が重複するようにしてもよい。例えば、第2投影光学系10は、多重リングパターンを投影する光学系であって、第2投影光学系10の一部のリングパターンが、第1投影光学系1として利用される構成であってもよい。
【0018】
撮像光学系20は、撮像素子22を有し、角膜に投影された第1指標と第2指標の反射像を撮像する。撮像素子22は、例えば、前眼部と略共役な位置に配置される。そして、撮像光学系20は、第1投影光学系1及び第2投影光学系10の波長帯域に合わせて撮像可能な波長帯域が設定される。撮像素子22には、例えば、2次元CCD、2次元CMOSなどの二次元受光素子が用いられる。撮像光学系20は、指標パターンの撮像の他、前眼部像を撮像するようにしてもよい。撮像素子22からの出力は、演算制御部70に接続される。
【0019】
なお、第1指標と第2指標を撮像する撮像素子及び撮像光学系は、同一構成であることが好ましいが、それぞれ別の撮像光学系であってもよい。なお、図1では、第1指標を撮像する撮像光学系は、第2指標を撮像する撮像光学系を兼用する。
【0020】
演算制御部70は、例えば、CPUによって構成され、各構成を制御する。演算制御部70は、撮像素子22によって撮像された指標の反射像に基づいて角膜形状を測定する。演算制御部70は、第1指標の反射像に基づいて第2投影光学系10の投影光量を調整し、第2指標の反射像に基づいて眼Eの角膜形状を測定する。
【0021】
例えば、演算制御部70は、第1投影光学系1を用いて第1指標パターンを角膜に投影し、角膜に投影された第1指標パターン像に基づいて角膜形状を測定する。次に、演算制御部70は、第2指標投影光学系10を用いて第2指標パターンを角膜に投影し、角膜に投影された第2指標パターン像を撮像光学系20によって取得する。演算制御部70は、第2指標パターン像を解析用パターンとして取得し、記憶部72に記憶させる。解析用パターンが取得された後、第2指標パターンの投影は、速やかに終了されるのが好ましい。
【0022】
このとき、演算制御部70は、第1の指標パターンによって取得された角膜形状(第1測定結果)に基づいて第2の指標パターンの光量を制御する。なお、角膜形状に応じて第2指標パターンの光量を変更するのは、測定に必要な光量を確保するためである。すなわち、角膜曲率半径が小さいほど、指標パターンの角膜での反射光は眼の周辺方向に進行し、撮像光学系に向かう光が少なくなる傾向にあるため、光量不足になりやすい。一方、角膜曲率半径が大きいほど、指標パターンの角膜での反射光は正面方向に反射され、撮像光学系に向かう光が多くなる傾向にある。
【0023】
そこで、第1の指標パターンの撮像結果に応じて、眼Eの角膜曲率に合った光量にて第2指標パターンを投影する。なお、角膜曲率に関係なく、指標パターンの光量を初めから高めに設定しておいてもよいが、眼の負担を考慮すると、必ずしも良好な手法とはいえない。指標パターンの投影は、被検者にとって負担である(例えば、可視光の場合、眩しさの問題がある)。
【0024】
例えば、演算制御部70は、第1の指標パターンによって得られた第1結果が所定の閾値を満たすか否かを判定し、判定結果に基づいて光量を制御する。このとき、第1結果が所定の角膜曲率半径より大きい場合、演算制御部70は、第1光量レベルにて第2指標パターンが投光されるように投光光量を調整する。また、演算制御部70は、第1結果が所定の角膜曲率半径以下の場合、演算制御部70は、第1光量レベルより大きい第2光量レベルにて第2指標パターンが投光されるように投光光量を調整する。
【0025】
光量を調整する手法としては、光源に印加する電圧を制御するようにしてもよいし、光源から眼の間に配置されるフィルタによって光量が制御されてもよい(例えば、液晶シャッタ)。なお、演算制御部70は、第2の指標パターンの全ての光量を変更する必要はなく、例えば、第2の指標パターンにおける周辺部に関して、光量を変更するようにしてもよい。
【0026】
演算制御部70は、記憶部72に記憶された第2指標パターン像を解析し、眼Eの角膜形状の分布情報を取得する。そして、演算制御部70は、得られた分布情報を数値、カラーマップにて出力する。得られた分布情報は、眼内レンズの選択、レーザ屈折矯正手術などに用いられる。
【0027】
本装置は、簡易的な第1指標パターンを用いて角膜形状を測定する。そして、簡易的に測定された角膜形状を利用して、角膜解析に用いる第2指標パターンの光量を調整する。そして、第2指標パターン像の解析によって広範囲での角膜形状を測定し、測定結果を出力する。これにより、測定精度を確保できると共に、眼にとって負担の大きい第2指標パターンの発光が少なくて済むことで、被検者の負担が軽減される。
【0028】
なお、装置は、第1の角膜曲率の測定後、速やかに第2指標パターン像を投影するのが好ましい。これにより、角膜解析に用いる第2指標パターンが短時間で取得され、涙液の減少に伴う測定精度の低下が回避される。
【0029】
また、装置は、第1の指標パターンを赤外光にて角膜に投影し、第2の指標パターンを可視光にて角膜に投影することにより、簡易測定時における眼の負担がいっそう軽減される。
【0030】
なお、演算制御部70は、第1指標の反射像に基づいて第2投影光学系10の投影光量を調整する場合、第1指標の反射像に基づいて測定された角膜形状を利用する手法に限定されない。演算制御部70は、第1指標の反射像の撮像結果を利用する。例えば、演算制御部70は、第1指標の反射像の光量レベルを検出し、検出された光量レベルに基づいて第2投影光学系10の投影光量を調整する。この場合、第1指標の光量レベルが低いほど、第2指標の投影光量を大きくする。
【0031】
以下に、本実施形態に係る角膜形状測定装置の一例について詳細に説明する。この場合、第1投影光学系1の一例として、眼Eに対するZ方向のアライメント状態を検出するための指標を投光する投光光学系45aが用いられる。第2投影光学系10の一例として、プラチド指標投影光学系11が用いられる。また、撮像光学系20として、前眼部観察光学系21が用いられる。
【0032】
本一例に係る装置の光学系は、被検眼の角膜上にプラチド指標を投影するプラチド指標投影光学系11と、被検眼の前眼部を撮像する撮像光学系21と、被検眼を固視させるための固視標呈示光学系30と、被検眼角膜にXY方向(上下左右)のアライメント用指標を投影するXYアライメント指標投影光学系40と、被検眼角膜にZ(作動距離)方向のアライメント用指標を投影しその反射光を検出することにより被検眼に対する装置本体のZ方向のアライメント情報を検出する作動距離検出光学系45(投影光学系45a及び検出光学系45b)と、被検眼の眼屈折力分布又は波面収差を測定するための眼屈折力分布測定光学系9と、に大別される。これらの光学系は、図示なき筐体に配置される。その筐体は、周知のアライメント用移動機構により、眼Eに対して三次元的に移動される。
【0033】
まず、プラチド投影光学系10について説明する。プラチド板12は中央部に開口を持つ略半球状であり、光軸L1を中心として同心円の多数の透光部と遮光部を持つリングパターンが形成されている。可視光源13は、LED等の可視光を発する。光源13を発した光は反射板14で反射され、プラチド板12を背後からほぼ均一に照明する。被検眼角膜にはプラチドリング像が投影される。なお、前眼部照明光源15は、プラチド板12の外周に配置され、前眼部を近赤外光にて照明する。
【0034】
また、反射板14の背後には、指標投影光学系45a及び指標検出光学系45bが、光軸L1に対して左右対称に配置されている。指標投影光学系45aは、赤外光源46とレンズ47を備え、光軸L1に対して斜め方向から指標を投影する。指標検出光学系45bは、レンズ48と位置検出素子49を備え,投影された指標を反対方向から検出する。
【0035】
指標投影光学系45aにより角膜に形成された指標像の光束は、プラチド板12及び反射板14に設けられた開口を通り、指標検出光学系45bのレンズ48を介して位置検出素子49に入射する。位置検出素子49に入射した指標像の位置から,装置に対する眼Eの作動距離方向におけるアライメント情報が検出される。
【0036】
ビームスプリッタ25は光軸L1と光軸L2を同軸とする。光軸L2上には、固視標呈示光学系30が配置されている。固視標呈示光学系30は、例えば、可視の照明光源31、固視標32、レンズ33を有する。光源31は固視標32を照明する。固視標32からの光は、レンズ33、ダイクロイックミラー27、ハーフミラー26、対物レンズ23、ビームスプリッタ25を介して、被検眼の眼底に投影される。なお、光源31及び固視標32は光軸L2方向に移動可能であり、被検眼に固視させる固視標32の視度を変更し、被検眼に雲霧を掛ける。
【0037】
ダイクロイックミラー27は可視光を透過し赤外光を反射する。ダイクロイックミラー27は光軸L2と光軸L3を同軸とする。光軸L3上には、XYアライメント指標投影光学系40が配置されている。投影光学系40は、例えば、光源41、レンズ42を有する。光源41からの光は、レンズ42を介して、ダイクロイックミラー27にて反射された後、前述の固視標32からの光と同様の光路を経て、被検眼の角膜上に投影される。
【0038】
ハーフミラー26は、光軸L2と光軸L4とを同軸とする。光軸L4上には、撮像光学系20が配置されている。観察光学系21は、ビームスプリッタ25、対物レンズ23、ハーフミラー26、テレセントリック絞り24、撮像レンズ28、二次元撮像素子22を有する。被検眼前眼部からの光束は、ビームスプリッタ25、対物レンズ23、ビームスプリッタ26、撮像レンズ28、テレセントリック絞り24を介して、撮像素子22により撮像(受光)される。なお、観察光学系21は、テレセントリック絞り24を持ち、光軸に平行な光束を取り込むテレセントリック光学系を構成する。撮像素子22は、被検眼の前眼部正面像の観察用に使用される他、角膜上に投影されるプラチド指標の撮像、光源41により形成されるアライメント指標像の検出用として兼用される。
【0039】
ビームスプリッタ25の透過方向には、眼屈折力分布測定光学系9が配置されている。測定光学系9は、被検眼の眼底に測定指標を投影する投影光学系2と、投影光学系2によって投影された眼底反射光を受光する受光光学系3と、ビームスプリッタ4と、対物レンズ6と、を含む。ビームスプリッタ4は、投影光学系2から発せられた測定光を反射して被検眼に向かわせ、眼底にて反射された測定光を透過し受光光学系3へと向かわせる。なお、被検眼の眼屈折力分布を測定するための光学系としては、位相差方式(例えば、特開平10−108837号公報参照)や、ハルトマン板を用いた方式(例えば、特開平10−216092号公報)のものが考えられる。
【0040】
次に、制御系について説明する。演算制御部(以下、制御部)70は、撮像素子22からの撮像信号に基づいて角膜形状データ(角膜曲率分布データ)を取得する。制御部70は、受光光学系3からの受光信号に基づいて眼Eの眼屈折力分布データ(波面収差データ)を取得する。制御部70は、光源41により角膜に形成された指標像が撮像素子22により検出されると、指標像の座標位置を得てXY方向のアライメント情報を検出する。制御部70は、位置検出素子49からの信号によりZ方向のアライメント情報を検出する。
【0041】
モニタ75は、制御部70に接続され、撮像素子22によって撮像される前眼部像や角膜形状データ等の取得結果を表示する。制御部70は、モニタ75の表示を制御し、取得された角膜形状データ及び眼屈折力分布データに基づくカラーマップを表示する。記憶手段としてのメモリ75は、取得されたマッピング画像及び数値情報からなる眼光学特性情報(例えば、角膜形状情報及び眼屈折力分布情報)を記憶する。制御部70には、検者がアライメント作業を行うためのジョイスティック5が接続されている。なお、ジョイスティック5の頂部には、測定開始スイッチ5aが設けられている。
【0042】
以上のような構成を備える装置において、その動作について説明する。まず、検者は、被検者の顔を図示なき顔支持ユニットに固定させた後、ジョイスティック5を用いて被検眼に対するアライメントを行う。検者は、表示モニタ75に表示される前眼部像を見ながらアライメントを行う。
【0043】
図2はアライメント完了時の前眼部観察画面を示す図である。指標T1は投影光学系40によって角膜上に形成された指標である。指標T2は指標投影光学系45aによって角膜上に形成された指標である。レチクルLTはアライメント基準であり電子的に表示される。
【0044】
検者は、指標T1がレチクルLT内に収まるように装置本体をXY方向に移動させる。次に、検者は、図示なきインジケータがアライメント完了を示すように装置本体をZ方向に移動させる。
【0045】
上下左右方向、及び作動距離方向のアライメントが適正な状態となったら、検者は、測定開始スイッチ5aを押す。なお、制御部70は、XYZ方向のアライメント情報が許容範囲を満たしたとき、自動的に測定開始のトリガを発するようにしてもよい。
【0046】
指標T1は眼Eに対して正面方向から投影された光によって形成された指標であり、アライメント完了時において、指標T1は撮像光軸L4上に配置される。
【0047】
投影光学系45aから照射された光の角膜での反射光の一部は、眼Eの角膜で反射された後、検出光学系45bによって検出される。これにより、Z方向のアライメント状態が検出される。
【0048】
投影光学系45aから照射された光の角膜での反射光の一部(光軸L1に平行な光束)は、撮像素子22に受光される(図4参照)。指標T2は投影光学系45aによって形成される指標であり、アライメント完了時において、撮像素子22上における光軸L4上から離れた位置に受光される。このとき、光軸L4に対する指標T2の像高Dは、眼Eの角膜曲率半径によって変化する(図2図4参照)。
【0049】
<第1の測定> そこで、制御部70は、撮像素子22から出力される撮像画像における指標T2の座標位置を画像処理により検出し、像高Dを測定する(図2参照)。制御部70は、撮像光軸L4から指標T2までの距離を像高Dとして測定してもよいし、指標T1と指標T2との間の距離を像高Dとして測定するようにしてもよい。そして、制御部70は、測定された像高Dに基づいて曲率半径を測定する。この場合、例えば、角膜曲率が異なる模型眼を用いて角膜曲率と距離Dとの関係を予め求めておけばよい(キャリブレーション)。
【0050】
そして、制御部70は、測定された曲率半径が、所定の曲率半径(例えば、5mm)より大きいか否かを判定する。判定結果は、第2の測定における投影光学系11の投影光量の調整に用いられる。このとき、曲率半径が大きいほど、投影光量が低く設定される。一方、曲率半径が小さいほど、投影光量が高く設定される。なお、光量設定について、所定の曲率半径を閾値とする2段階の光量設定を例に示したが、これに限定されない。例えば、曲率半径に応じて3段階以上の光量が設定できる構成であってもよい。
【0051】
なお、制御部70は、第1の測定を行う前眼部像として、アライメント完了と判定された前眼部像(測定開始のトリガとなった画像)、又はアライメント完了と判定された次のフレームレートにて取得された前眼部像を用いることが好ましい。
【0052】
また、第1の測定にて得られる角膜曲率は、光量設定に用いられるものである。したがって、制御部70は、曲率半径と一対の関係にある像高Dに応じて投影光学系10の光量を調整するようにしてもよい。
【0053】
<第2の測定> 第1の測定の終了後、制御部70は、投影光学系11の各光源を発光させ、角膜Ec上にプラチド指標Pを投影する(図3参照)。このとき、制御部70は、第1の測定にて取得された曲率半径に応じて光源46への印加電圧を調整することにより、プラチド指標の光量を調整する。
【0054】
そして、制御部70は、プラチド指標が投影された前眼部像を撮像素子22を用いて撮像する。そして、前眼部の撮像が完了されると、制御部70は、取得されたプラチド指標の解析により角膜形状の分布情報を得る。そして、制御部70は、取得された分布情報をカラーマップにて表示する。
【0055】
なお、上記構成においては、アライメント指標T1を角膜上に形成させるための投影光学系(投影光学系40)を特別に設けたが、投影光学系2がこれを兼用する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本実施形態に係る角膜形状測定装置の概略構成図である。
図2】撮像光学系によって撮像された第1指標パターン像及び前眼部像を示す例であり、撮像画像がモニタに表示された状態を示す。
図3】撮像光学系によって撮像された第2指標像及び前眼部像を示す例である。
図4】第1指標パターン像を用いて角膜形状を測定する手法について説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
1 第1投影光学系
10 第2投影光学系
13 可視光源
20 撮像光学系
46 赤外光源
70 演算制御部
図1
図2
図3
図4