特許第6007515号(P6007515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6007515
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】車輪支持装置
(51)【国際特許分類】
   B60B 35/14 20060101AFI20160929BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20160929BHJP
【FI】
   B60B35/14 U
   F16D1/06 210
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-46509(P2012-46509)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-180679(P2013-180679A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 勝之
(72)【発明者】
【氏名】安野 仁
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−083813(JP,A)
【文献】 特開2010−137676(JP,A)
【文献】 特表2008−539387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 35/14
F16D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に固定される固定輪、車輪が取り付けられる回転輪、及び、前記固定輪と前記回転輪との間に設けられている転動体を有するハブユニットと、
前記ハブユニットの軸方向一方側に設けられ、前記回転輪に回転トルクを伝達するトルク伝達輪を有しているジョイントと、を備え、
前記回転輪は、軸方向一方側に環状の第1端面を有し、前記トルク伝達輪は、軸方向他方側に環状の第2端面を有し、
前記第1端面の径方向外側領域と、前記第2端面の径方向外側領域とのそれぞれにおいてのみ、相互に噛み合う外側スプラインが形成され、
前記第1端面の径方向内側領域と、前記第2端面の径方向内側領域とのそれぞれにおいてのみ、相互に噛み合う内側スプラインが形成され、
前記第1端面では、当該第1端面の前記径方向外側領域と前記径方向内側領域との間に、軸方向側に向く第1の環状側面が形成され、
前記第2端面では、当該第2端面の前記径方向外側領域と前記径方向内側領域との間に、軸方向側に向く第2の環状側面が形成されていることを特徴とする車輪支持装置。
【請求項2】
前記第1端面の径方向外側領域に、軸方向他方側に向かって拡径するテーパ外周面が形成され、
前記第2端面の径方向外側領域に、軸方向他方側に向かって拡径し前記テーパ外周面に対向するテーパ内周面が形成され、
前記外側スプラインは、前記テーパ外周面と前記テーパ内周面とのそれぞれに形成されている請求項1に記載の車輪支持装置。
【請求項3】
前記内側スプラインのスプライン溝の数は、前記外側スプラインのスプライン溝の数の1/n(但し、nは整数)であり、
前記内側スプラインのスプライン溝から半径方向外側に延びる延長線上に、前記側スプラインのスプライン溝が配置されている請求項1又は2に記載の車輪支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体に設けられている懸架装置に対して車輪を回転可能に支持するために、例えば図5に示す車輪支持装置が用いられており、この車輪支持装置は、ハブユニット80、及び、このハブユニット80にトルクを伝達するジョイント90を備えている。
【0003】
ハブユニット80は、懸架装置に固定される固定輪81、車輪が取り付けられる回転輪82、及び、これらの間に設けられている転動体83を備えており、回転輪82の内周面に雌スプライン84が形成されている。
ジョイント90は外輪89を有しており、この外輪89は、筒状の本体部88と、この本体部88から軸方向に延びている軸部87とを有している。そして、ハブユニット80とジョイント90との間においてトルクの伝達が可能となるように、軸部87の外周面には、雌スプライン84と噛み合う雄スプライン86が形成されている。
【0004】
図5に示す構成の場合、ハブユニット80とジョイント90との組み立てに、多くの工程を要する。すなわち、ハブユニット80とジョイント90の外輪89とを同一直線上に位置させる位置合わせを行い(第1工程)、ジョイント90の軸部87を回転輪82に圧入(仮圧入)し、軸部87の先端を回転輪82の軸方向の端面(図5では左側の端面)から露出させ(第2工程)、軸部87の先端に形成されているねじ部87aに仮ナット(図示せず)を取り付け(第3工程)、この仮ナットをねじ部87aに螺合させることによってハブユニット80の回転輪82とジョイント90の外輪89との間の隙間が無くなるまで軸部87を回転輪82に圧入(本圧入)し(第4工程)、仮ナットを軸部87から取り外し(第5工程)、本ナット85を軸部87のねじ部87aに締め付け(第6工程)、そして、本ナット85を回転輪82の側面にかしめ等によって固定し、本ナット85の緩み止めを行う(第7工程)。
また、図5に示すように、軸部87を回転輪82に圧入して軸方向に長い雄スプライン86を軸方向に長い雌スプライン84に噛み合わせる構成であることから、これらスプライン86,84の形成の際に、特に厳密な寸法管理が必要となり、スプラインを形成する工程においても多くの工数が必要となる。
【0005】
そこで、ハブユニットとジョイントとの組み立てを容易とするために、例えば、特許文献1に記載の車輪支持装置(車輪用軸受装置)が用いられている。この車輪支持装置では、ハブユニットが有する回転輪の軸方向一方側の円環状の端面(側面)に、第1スプラインが形成され、ジョイントが有する外輪の軸方向他方側となる円環状の端面(側面)に、第1スプラインに噛み合う第2スプラインが形成されている。第1スプライン及び第2スプラインそれぞれは、円環状である端面の、ほぼ全面にわたって形成されている。
【0006】
この特許文献1に記載されている車輪支持装置の場合、ハブユニットとジョイントとの組み立ては、ハブユニットとジョイントの外輪とを軸方向から突き合わせ、ハブユニット側の第1スプラインと、ジョイント側の第2スプラインとを噛み合わせた状態とし、これらをボルトによって軸方向に締め付けることにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−284920号公報(図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の車輪支持装置の場合、ハブユニットとジョイントとの組み立ては容易となるが、第1スプライン及び第2スプラインそれぞれを設けるためには、円環状である端面のうち、その内周縁から外周縁まで連続した径方向に長いスプライン溝(スプライン突条)を、全周にわたって複数形成する必要があることから、これらスプラインを例えばプレスを用いた塑性加工によって形成するためには、大きなプレス荷重が必要となり、また、スプライン全体を精度良く形成するためには、レベルの高い加工技術が必要となる。なお、スプラインの形成を容易とするために、スプライン溝(突条)の数を減らすことも考えられるが、この場合、必要なトルクを伝達することができなくなる場合がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、スプラインの形成が容易であり、しかも、必要なトルクを伝達可能とするスプライン構造を備えた車輪支持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車体側に固定される固定輪、車輪が取り付けられる回転輪、及び、前記固定輪と前記回転輪との間に設けられている転動体を有するハブユニットと、前記ハブユニットの軸方向一方側に設けられ、前記回転輪に回転トルクを伝達するトルク伝達輪を有しているジョイントと、を備え、前記回転輪は、軸方向一方側に環状の第1端面を有し、前記トルク伝達輪は、軸方向他方側に環状の第2端面を有し、前記第1端面の径方向外側領域と、前記第2端面の径方向外側領域とのそれぞれにおいてのみ、相互に噛み合う外側スプラインが形成され、前記第1端面の径方向内側領域と、前記第2端面の径方向内側領域とのそれぞれにおいてのみ、相互に噛み合う内側スプラインが形成され、前記第1端面では、当該第1端面の前記径方向外側領域と前記径方向内側領域との間に、軸方向側に向く第1の環状側面が形成され、前記第2端面では、当該第2端面の前記径方向外側領域と前記径方向内側領域との間に、軸方向側に向く第2の環状側面が形成されていることを特徴とする。




















【0011】
本発明によれば、回転輪及びトルク伝達輪それぞれの端面において、径方向外側の領域に外側スプラインが形成され、径方向内側の領域に内側スプラインが形成されたスプライン構造となり、このスプライン構造は、従来のような円環状である端面の内周縁から外周縁まで連続した径方向に長いスプライン溝(スプライン突条)を全周にわたって形成した構造とは異なることから、スプラインの形成は従来に比べてプレス等による荷重は小さくて済み、容易となる。そして、スプラインは環状の端面において径方向外側と内側との双方に形成されていることから、充分なスプライン長を有し、必要なトルクの伝達が可能となる。
【0012】
また、前記第1端面の径方向外側領域に、軸方向他方側に向かって拡径するテーパ外周面が形成され、前記第2端面の径方向外側領域に、軸方向他方側に向かって拡径し前記テーパ外周面に対向するテーパ内周面が形成され、前記外側スプラインは、前記テーパ外周面と前記テーパ内周面とのそれぞれに形成されているのが好ましい。
この場合、スプラインは、ハブユニット側では軸方向他方側に向かって拡径するテーパ外周面に形成され、ジョイント側では軸方向他方側に向かって拡径するテーパ内周面に形成されていることから、スプラインの歯長を長くすることができ、伝達可能とするトルクを大きくすることができる。
【0013】
また、前記内側スプラインのスプライン溝の数は、前記外側スプラインのスプライン溝の数の1/n(但し、nは整数)であり、前記外側スプラインのスプライン溝から半径方向内側に延びる延長線上に、前記内側スプラインのスプライン溝が配置されているのが好ましい。
この場合、内側スプラインと外側スプラインとのうちの一方の精度が仮に悪くても、ハブユニットの回転輪と、ジョイントのトルク伝達輪とを軸方向から接近させて対向するスプライン同士を嵌合させやすくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車輪支持装置によれば、スプラインが、環状の端面の径方向外側と径方向内側とに独立して形成されており、スプラインの形成は従来に比べて容易となり、また、スプラインは、径方向外側と内側との双方に形成されていることから、充分なスプライン長を有し、必要なトルクの伝達が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】車輪支持装置の実施の一形態を示す縦断面図である。
図2】ハブユニットが有する回転輪の軸方向一方側の端面の斜視図である。
図3】ハブユニットが有する回転輪の軸方向一方側の端部と、ジョイントが有する外輪の軸方向他方側の端部とを示す断面図である。
図4】回転輪の軸方向一方側の端面を、軸方向他方側から見た図である。
図5】従来のハブユニット及びジョイントが有する外輪の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のハブユニット10及びジョイント30を備えている車輪支持装置1の実施の一形態を示す縦断面図である。ハブユニット10は、自動車の車体に設けられている懸架装置2に取り付けられ、この懸架装置2に対して車輪3を回転可能に支持するためのものであり、ジョイント30は、このハブユニット10と連結され、ハブユニット10が有している回転輪12に回転トルクを伝達させるためのものである。そして、これらハブユニット10とジョイント30とは、連結部材であるボルト4によって連結固定されている。
【0017】
車両の左右方向と車輪支持装置1の軸方向とは一致しており、ハブユニット10とジョイント30とは車両の左右方向に並べて設けられている。ハブユニット10が左右方向外側に設けられ、この左右方向内側にジョイント30が設けられる。図1では、右側が軸方向一方側(車両の内側)であり、左側が軸方向他方側(車両の外側)である。
【0018】
ハブユニット10は、懸架装置2にボルト(図示せず)によって固定される固定輪11と、車輪3が取り付けられる回転輪12と、固定輪11と回転輪12との間に設けられている玉(転動体)13とを有している。固定輪11は回転輪12の径方向外側に設けられており、回転輪12の中心線Lは、固定輪11の中心線と一致している。
【0019】
固定輪11は、内周面に軌道面14,15が形成されている筒形状の本体部16と、この本体部16から径方向外方へ延びているフランジ部17とを有している。このフランジ部17が懸架装置2に固定され、これによりハブユニット10が車体側に固定される。
【0020】
回転輪12は、中心側に貫通孔18が形成されている中空形状の軸部19と、軸部19の軸方向他方側の一部から径方向外側に延びているフランジ部20と、軸部19の軸方向一方側に外嵌させた環状の内輪部材21とを有している。貫通孔18は、回転輪12の中心線Lに沿って直線的に形成されている。内輪部材21は、軸部19の軸方向一方側の端部を径方向外側に塑性変形させた拡径部22によって、軸部19にかしめられて固定されている。軸部19及び内輪部材21それぞれの外周面に、軌道面23,24が形成されている。そして、回転輪12の拡径部22は、軸方向一方側(図1では右側)に環状の第1端面25を有しており、この第1端面25に、第1スプライン(スプライン歯)として、外側スプライン(外側スプライン歯)51及び内側スプライン(内側スプライン歯)52が形成されている(図3参照)。
【0021】
外側スプライン51と内側スプライン52とが形成されている部分は、回転輪12の軸方向一方側の端部に形成されている拡径部22であり、この拡径部22は、回転輪12の軸部19の軸方向一方側の端部を、塑性加工により、径方向外側に拡径して形成した部分である。本実施形態では、この塑性加工は、揺動かしめ加工である。
そして、この揺動かしめ加工によって拡径部22を形成する際に、この拡径部22に外側スプライン51と内側スプライン52を形成する。つまり、図示しないが、揺動かしめ加工を行う型部材(金型)に、外側スプライン51と内側スプライン52を形成するための歯形が形成されており、この型部材の歯形が、形成される拡径部22に転写される。
【0022】
図1において、玉13は、周方向に複数設けられており、これら玉13の列が二列設けられており、一方の列の玉13は、軌道面14,23を転動し、他方の列の玉13は、軌道面15,24を転動する。各列の玉13は、保持器27によって周方向に等間隔で保持されている。これら玉13と固定輪11と回転輪12とにより、複列アンギュラ玉軸受が構成されている。
【0023】
ジョイント30は、駆動軸31の軸方向他方側の端部に固定されている内輪32と、内輪32の径方向外側に設けられた外輪33と、これら内輪32と外輪33との間に設けられている複数の玉34とを有しており、本実施形態では等速ジョイントである。外輪33は、有底円筒形状であり、筒形状である筒部35と、この筒部35の軸方向他方側の部分と一体である底部36とを有している。底部36の中心側には、軸方向他方側へ延びる小筒部36aが形成されており、この小筒部36aの内周面に、前記ボルト4の先端に形成されているねじ部4aが螺合するボルト孔37が形成されている。
【0024】
そして、このジョイント30において、外輪33は、ハブユニット10の回転輪12に回転トルクを伝達するトルク伝達輪としての機能を有しており、このために、外輪33の底部36は、軸方向他方側に環状の第2端面38を有しており、この第2端面38に、ハブユニット10側の前記第1スプラインと噛み合う第2スプライン(スプライン歯)として、外側スプライン(外側スプライン歯)61及び内側スプライン(内側スプライン歯)62が形成されている(図3参照)。
【0025】
図2は、ハブユニット10の回転輪12(拡径部22)の軸方向一方側の第1端面25の斜視図である。図3は、回転輪12の軸方向一方側の端部(拡径部22)と、ジョイント30が有する外輪33の軸方向他方側の端部とを示す断面図である。
回転輪12の拡径部22は、軸方向一方側に環状である第1端面25を有しており、この第1端面25は、その内周縁から径方向中間位置までの領域に、軸方向一方側へ向く環状側面28を有しており、更に、この環状側面28の径方向外側領域に、軸方向他方側に向かって拡径するテーパ外周面29を有している。
環状側面28は、その中央に前記貫通孔18(図1参照)の開口18aを有する環状の面からなり、回転輪12の中心線Lに直交する面である。
テーパ外周面29は、環状側面28の外周縁から軸方向他方側へ向かって拡径しており、中心線Lに対して傾斜する傾斜面からなる。
【0026】
そして、図3に示すジョイント30側において、外輪33は、軸方向他方側であって小筒部36aの径方向外側に環状の第2端面38を有しており、この第2端面38は、小筒部36aの裾部から径方向中間位置までの領域に、軸方向他方側に向く環状側面40を有しており、更に、この環状側面40の径方向外側領域に、軸方向他方側に向かって拡径するテーパ内周面41を有している。テーパ内周面41と、ハブユニット10側のテーパ外周面29とは対向する配置にあり、また、環状側面28と環状側面40とも対向する。
環状側面40は、外輪33の中心線に直交する面である。
テーパ内周面41は、環状側面40の外周縁から軸方向他方側へ向かって拡径しており、外輪33の中心線に対して傾斜する傾斜面からなる。
【0027】
そして、径方向外側のテーパ外周面29とテーパ内周面41とのそれぞれに、相互に噛み合う外側スプライン51,61が形成されており、さらに、径方向内側の環状側面28を含む部分と環状側面40を含む部分とのそれぞれに、相互に噛み合う内側スプライン52,62が形成されている。これら外側スプライン51,61及び内側スプライン52,62がそれぞれ噛み合うことにより、ハブユニット10の回転輪12とジョイント30の外輪33との間でトルク伝達が行われる。
【0028】
ハブユニット10側において、第1端面25の径方向外側領域であるテーパ外周面29に、外側スプライン51が形成されており、この外側スプライン51は、図2に示すように、周方向に交互に並んで形成されているスプライン溝51aとスプライン突条51bとからなる。スプライン溝51aは、周方向で等間隔に複数形成されており、スプライン突条51bについても、周方向で等間隔に複数形成されている。
図2図3に示すように、スプライン溝51aの溝長手方向(スプライン突条51bの長手方向)は、テーパ外周面29に平行な方向であり、スプライン突条51bの頂面が、テーパ外周面29と一致するようにして外側スプライン51が形成されている。
【0029】
また、このハブユニット10において、第1端面25の径方向内側領域である、環状側面28と貫通孔18の内周面との交差部を含む内周角部E1に、内側スプライン52が形成されており、この内側スプライン52は、図2に示すように、周方向に交互に並んで形成されているスプライン溝52aとスプライン突条52bとからなる。スプライン溝52aは、周方向で等間隔に複数形成されており、スプライン突条52bについても、周方向で等間隔に複数形成されている。
図2図3に示すように、環状側面28の一部が、スプライン突条52bの歯先面の内の一面と一致し、貫通孔18の内周面の一部が、スプライン突条52bの歯先面の内の他面と一致するようにして内側スプライン52が形成されている。
【0030】
このハブユニット10に対して、ジョイント30側では、図3に示すように、第2端面38の径方向外側領域であるテーパ内周面41に、外側スプライン51に噛み合う外側スプライン61が形成されており、この外側スプライン61は、周方向に交互に並んで形成されているスプライン溝61aとスプライン突条61bとからなる(図3参照)。そして、このスプライン溝61aの溝長手方向(スプライン突条の長手方向)は、テーパ内周面41に平行な方向であり、スプライン溝61aの底面が、テーパ内周面41と一致するようにして第2外側スプライン61が形成されている。
【0031】
また、このジョイント30において、第2端面38の径方向内側領域である、環状側面40と小筒部36aの裾部外周面との交差部を含む外周隅部E2に、内側スプライン62が形成されており、この内側スプライン62は、周方向に交互に並んで形成されているスプライン溝62aとスプライン突条62bとからなる(図3参照)。
環状側面40の一部が、スプライン溝62aの底面の内の一面と一致し、小筒部36aの裾部外周面が、スプライン溝62aの底面の内の他面と一致するようにして内側スプライン62が形成されている。
【0032】
そして、図2に示すように、第1端面25において、外側スプライン51の溝51aと内側スプライン52の溝52aとは独立して形成されており、また、外側スプライン51の突条51bと内側スプライン52の突条52bとは独立して形成されている。つまり、溝51aと溝52aとは連続した溝ではなく、径方向に離れて形成されている。これと同様に、突条51bと突条52bとは連続した突条ではなく、径方向に離れて形成されている。
【0033】
以上より、図3において、本実施形態の車輪支持装置1は、第1端面25の径方向外側領域と、第2端面38の径方向外側領域とのそれぞれに、相互に噛み合う外側スプライン51,61が形成されており、そして、第1端面25の径方向内側領域と、第2端面38の径方向内側領域とのそれぞれに、相互に噛み合う内側スプライン52,62が、外側スプライン51,61とは独立して、形成されているスプライン構造を備えている。
【0034】
そして、内側スプライン52の溝52aの数は、外側スプライン51の溝51aの数よりも少なく、内側スプライン52の突条52bの数は、外側スプライン51の突条51bの数よりも少ない。
特に、内側スプライン52のスプライン溝52aの数は、外側スプライン51のスプライン溝51aの数の1/n(但し、nは整数)に設定されている。本実施形態では、図4に示すように、内側スプライン52のスプライン溝52aの数は「15」であるのに対して、外側スプライン51のスプライン溝51aの数は「30」であり、溝数の比は、1/2である。つまり、前記整数n=2とされている。なお、この整数nの値は「2」以外とすることができ、「3」以上とすることができる。
【0035】
さらに、第1端面25を軸方向一方側から他方へと向かって見ると(図4参照)、外側スプライン51のスプライン溝51a、及び、内側スプライン52のスプライン溝52aは、それぞれ周方向で等間隔に形成されているが、径方向外側のスプライン溝51aから、回転輪12の中心線上の点Pへと向かう直線(延長線F)上に、径方向内側のスプライン溝52aが形成されている。
つまり、外側スプライン51のスプライン溝51aから半径方向内側に延びる延長線F上に、内側スプライン52のスプライン溝52aが配置されている。なお、延長線Fは、径方向外側のスプライン溝51aの溝幅方向の中心と、回転輪12の中心線上の点Pとを通過する直線であり、この延長線Fは、径方向内側のスプライン溝52aの溝幅方向の中心を通過する。
【0036】
このように、同じ一つの直線(延長線F)上に、径方向外側のスプライン溝51a及び径方向内側のスプライン溝52aが配置されていることにより、内側スプライン52と外側スプライン51とのうちの一方の精度(製造後の精度)が仮に悪くても、ハブユニット10の回転輪12と、ジョイント30の外輪33とを軸方向から接近させて、対向するスプライン同士を嵌合させやすくなる。
【0037】
以上の本実施形態に係る車輪支持装置1によれば、ハブユニット10の回転輪12及びジョイント30の外輪33それぞれの端面25,38において、径方向外側の領域に外側スプライン51,61が形成され、径方向内側の領域に内側スプライン52,62が形成されているが、これら外側スプライン51,61と内側スプライン52,62とはそれぞれ独立して形成されており、従来のような円環状である端面の内周縁から外周縁まで連続した径方向に長いスプライン溝(スプライン突条)が全周にわたって形成された構造とは異なる。このため、スプライン51,52,61,62の形成は、従来に比べて揺動かしめ加工に必要となる荷重は小さくて済み、容易となる。そして、端面25,38それぞれにおいて、スプラインは径方向外側と内側との双方に形成されていることから、充分なスプライン長を有し、必要なトルクの伝達が可能となる。
【0038】
特に、本実施形態では、ハブユニット10側では、軸方向他方側に向かって拡径するテーパ外周面29に、外側スプライン51が形成され、ジョイント30側では、軸方向他方側に向かって拡径するテーパ内周面41に、外側スプライン61が形成されていることから、スプラインの歯長が長くなり、伝達可能とするトルクを従来と同等に確保することができる。
【0039】
そして、本実施形態に係るハブユニット10及びジョイント30の組み立ては、図1において、ハブユニット10の回転輪12とジョイント30の外輪33とを軸方向から突き合わせ、回転輪12の軸方向一方側の第1端面25に形成されているスプライン51,52(図3参照)と、外輪33の軸方向他方側の端面38に形成されているスプライン61,62(図3参照)とを噛み合わせた状態とし、これらをボルト4によって軸方向に締め付けることにより行われる。
このように、回転輪12と外輪33との間においてトルクの伝達を可能とするためには、回転輪12と外輪33とを軸方向に接近させ、回転輪12側のスプラインと、外輪33側のスプラインとを噛み合わせればよく、組み立てが簡単である。
【0040】
なお、ボルト4は、同一直線上に配置した回転輪12と外輪33とを軸方向に締め付けて連結する部材であり、回転輪12の貫通孔18より大径であるボルト頭部4bと、外輪33に形成されているボルト孔37と螺合するねじ部4aとを有している。このボルト4の先端部(ねじ部4a)を、軸方向他方側から貫通孔18に挿し入れてから、ボルト孔37に螺合させることにより、ボルト4は回転輪12と外輪33とを軸方向に締め付けて連結することができる。ボルト4を締め付けてボルト4に軸力が作用している状態で、ハブユニット10とジョイント30とが連結され、ジョイント30からハブユニット10へと回転トルクが伝達される。
【0041】
また、本発明の車輪支持装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、ジョイント30は、等速ジョイント以外の他の型式のジョイントであってもよく、また、前記実施形態では、ジョイント30のトルク伝達輪を、有底円筒状の外輪33(図1参照)として説明したが、トルク伝達輪は他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
3:車輪 10:ハブユニット 11:固定輪 12:回転輪 13:玉(転動体) 25:第1端面 29:テーパ外周面 30:ジョイント 33:外輪(トルク伝達輪) 38:第2端面 41:テーパ内周面 51:外側スプライン 52:内側スプライン 61:外側スプライン 62:内側スプライン F:延長線
図1
図2
図3
図4
図5