(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
仕上圧延機と、その仕上圧延機の出側に配置されたランナウトテーブルと、そのランナウトテーブルの出側に配置されたコイラーと、前記ランナウトテーブルに沿って配置された冷却装置と、を備えた熱間圧延ラインにおいて、
前記冷却装置の出側とコイラーとの間に配置された鋼帯端部のタングの形状の画像を撮影する撮影装置と、前記撮影装置によって撮影された画像を解析して前記タングの長さを算出する解析装置とを備え、
前記解析装置は、前記撮影装置によって撮影された画像中で前記鋼帯の一端位置を特定する位置特定手段と、
前記位置特定手段によって特定された一端位置を起点として、前記画像中の鋼帯幅を鋼帯の長手方向に順次測定し、その鋼帯幅が目標値に達した位置までの鋼帯の長手方向の長さをタング長さとして算出する算出手段と、
算出された前記タング長さが、前記熱間圧延ラインの後続処理工程として行われる切断で用いられるダブルカットシャーのシャー幅の半分未満である場合に、前記タングを有する鋼帯コイルが前記ダブルカットシャーに投入可能であると判別する判別手段と、を有し、
前記判別により前記タングを有する鋼帯コイルが前記後続処理工程に投入可能であるかどうかを選別するために用いることを特徴とする鋼帯端部のタング長さの測定装置。
熱間圧延ラインの仕上圧延機の出側において、仕上圧延された鋼帯端部のタングの形状の画像を撮影する撮影工程と、前記撮影工程で得られた画像を解析して前記タングの長さを算出する解析工程とを有する鋼帯端部のタング長さの測定方法であって、
前記解析工程は、前記画像中で前記鋼帯の一端位置を特定する一端位置特定ステップと、
前記一端位置特定ステップによって特定された一端位置を起点として、前記鋼帯幅を順次測定し、この測定値が目標値に達するまでの鋼帯の長さ方向の寸法を算出し、この算出された長さをタング長さとする算出ステップと、
算出された前記タング長さが、前記熱間圧延ラインの後続処理工程として行われる切断で用いられるダブルカットシャーのシャー幅の半分未満である場合に、前記タングを有する鋼帯コイルが前記ダブルカットシャーに投入可能であると判別する判別ステップと、を含み、
前記判別により前記タングを有する鋼帯コイルが前記後続処理工程に投入可能であるかどうかを選別するために用いることを特徴とする鋼帯端部のタング長さの測定方法。
【背景技術】
【0002】
従来より熱間圧延ラインで仕上圧延された鋼帯の端部にタングが形成されていることが知られている。このタングは形状及び品質等の面で製品として用いることができない部分であるため、後続処理のいずれかのライン中において、適宜、タング部分はカットされる。
こうした後続処理の一例としては、ダブルカットシャーを用いて先行する鋼帯の尾端部と後行する鋼帯の先端部の各タングを切り落とす処理が挙げられる。この場合に、
図1(a)に示すように、先行する鋼帯の尾端タング長さと、後行する鋼帯の先端タング長さと、それら両方の鋼帯端部どうしの隙間の長さの和がダブルカットシャーのシャー幅以内である場合には問題は生じない。しかし、
図1(b)に示すように、当該各長さの和がダブルカットシャーのシャー幅を超えている場合には、タングの全体を切り取ることができない。このため、切り出された鋼帯端部の形状の一部が所定の幅サイズを満たさない不良鋼帯が生じる可能性がある。不良鋼帯の発生は能率を低下させることから、後続処理の開始に先立ち、別途タング部分のみをカットする工程や、カット作業を備えるスキンパス工程等に鋼帯コイルを投入するといった付加的な作業工程が発生している。
【0003】
そこで、特にダブルカットシャーによって鋼帯端部を切り落とす後続処理を控える場合においては、こうした付加的作業を省略するために、熱間圧延処理される鋼帯であって仕上圧延によって鋼帯端部のタング形状が確定してから、後続処理工程に鋼帯コイルが投入される前までの間に、当該鋼帯の端部のタング長さを測定することによって、ダブルカットシャーによる切り出し処理に適した鋼帯コイルを選別するための有効な方法が望まれていた。
【0004】
そこで、熱間圧延ライン中に鋼帯を測定する技術を見てみると、仕上圧延前の反り形状を計測する技術(特許文献1参照)や仕上圧延後の尾端部の破断の有無を判定する技術(特許文献2参照)がある。また熱間圧延処理を施された後、コイルヤードに置かれた鋼帯コイルの内周面に作業員が測定器を一つ一つ差し渡すことによって、タングの長さを測定する方法もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1に開示された発明では、粗圧延後の鋼帯の先端タングの形状を撮影することはできるが、仕上圧延処理を施された後に生ずる最終的な鋼帯端部のタング長さを測定することはできない。また特許文献2に開示された発明では、仕上圧延後の尾端部の形状を検出することはできるが、その後更に尾端部のタング長さを測定する技術は開示されておらず、当該長さを測定することはできない。
【0007】
さらに作業員の手作業による測定方法では、測定作業に時間がかかるとともに、作業員の負担が大きいという問題が生じていた。また測定する作業員によって測定位置等が微妙に異なったりすることで、測定されるデータの精度にばらつきが生じるという問題も生じていた。
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、熱間圧延ライン上で連続して大量に流れる、仕上圧延後の鋼帯の先端部及び尾端部のうち少なくとも一方のタング長さを、当該鋼帯コイルが後続処理工程に投入される前までの間に、効率よくかつ正確に測定することができる測定装置、測定方法、並びにその測定方法を用いた鋼帯コイルの選別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の目的を達成するために、本発明に係る鋼帯端部のタング長さの測定装置、測定方法及び鋼帯コイル選別方法を次のように構成したことを特徴とする。
即ち、本発明の第一の態様は、鋼帯端部のタング長さの測定装置であって、仕上圧延機と、その仕上圧延機の出側に配置されたランナウトテーブルと、そのランナウトテーブルの出側に配置されたコイラーと、前記ランナウトテーブルに沿って配置された冷却装置と、を備えた熱間圧延ラインにおいて、冷却装置の出側とコイラーとの間に配置され鋼帯端部のタングの形状の画像を撮影する撮影装置と、撮影装置によって撮影された画像を解析してタングの長さを算出する解析装置とを備え、解析装置は、撮影装置によって撮影された画像中で鋼帯の一端位置を特定する位置特定手段と、位置特定手段によって特定された一端位置を起点として、画像中の鋼帯幅を鋼帯の長手方向に順次測定し、その鋼帯幅が目標値に達した位置までの鋼帯の長手方向の長さをタング長さとして算出する算出手段
と、算出された前記タング長さ
が、前記熱間圧延ラインの後続処理工程として行われる切断で用いられるダブルカットシャーのシャー幅の半分未満である場合に、前記タングを有する鋼帯コイルが前記ダブルカットシャーに投入可能であると判別する判別手段と、を有し、前記判別により前記タングを有する鋼帯コイルが
前記後続処理工程に投入可能であるかどうかを選別するために用いることを特徴とする。
【0009】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様の鋼帯端部のタング長さの測定装置における撮影装置において、冷却装置の出側とコイラーとの間に配置される鋼帯表面の表面検査装置に備えられた撮影装置としてもよい。
本発明の第三の態様は、熱間圧延ラインの仕上圧延機の出側において、仕上圧延された鋼帯端部のタングの形状の画像を撮影する撮影工程と、撮影工程で得られた画像を解析してタングの長さを算出する解析工程とを有する鋼帯端部のタング長さの測定方法であって、解析工程は、画像中で鋼帯の一端位置を特定する一端位置特定ステップと、一端位置特定ステップによって特定された一端位置を起点として、鋼帯幅を順次測定し、この測定値が所定の目標値に達するまでの鋼帯の長さ方向の寸法を算出し、この算出された長さをタング長さとする算出ステップ
と、算出された前記タング長さ
が、前記熱間圧延ラインの後続処理工程として行われる切断で用いられるダブルカットシャーのシャー幅の半分未満である場合に、前記タングを有する鋼帯コイルが前記ダブルカットシャーに投入可能であると判別する判別ステップと、を含み、前記判別により前記タングを有する鋼帯コイルが
前記後続処理工程に投入可能であるかどうかを選別するために用いることを特徴とする。
【0010】
本発明の第四の態様は、本発明の第三の態様
を用いて鋼帯コイルを選別することを特徴とする。
上述した本発明の各態様における前記タングは、鋼帯の先端部に形成されたタング及び尾端部に形成されたタングの少なくとも一方のタングであればよい。
【発明の効果】
【0011】
従って、本発明の第一の態様では、仕上圧延後の鋼帯がコイラーに巻き取られる前までの間に、当該鋼帯端部のタングの形状の画像を得る。そして、この得られた画像を定型的な手法を用いて解析処理することによって、速やかにタング長さを測定する。そして熱間圧延ライン上で連続して大量に流れる、仕上圧延後の鋼帯端部のタング長さを、当該鋼帯コイルが後続処理工程に投入される前までの間に、効率よくかつ正確に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
(構成)
図2は、一般的な熱間圧延ラインの概略図である。
熱間圧延ラインは、
図2に示すようにまず上流側から、スラブを加熱する加熱炉20と、加熱炉20で加熱されたスラブを幅圧下して所定幅とするサイジングプレス30を備える。続いてサイジングプレス30で幅寸法を決められたスラブを粗圧延する複数の粗圧延スタンドからなる粗圧延機40を備える。続いて粗圧延後の鋼帯10の先端部及び尾端部をカットするクロップシャー50と、ここで先尾端がカットされて整えられた鋼帯10を続けて仕上圧延する複数の仕上圧延スタンドからなる仕上圧延機60を備える。さらに続けてランナウトテーブル80と、これに続くコイラー90を備え、ランナウトテーブル80の上下には冷却装置70を備えている。熱間圧延ラインは、スラブがこうして各部を通過することにより鋼帯10となってコイラー90に巻き取られるように構成されている。
【0014】
撮影装置100は、冷却装置70の出側であってコイラー90で巻き取られるまでの範囲において、ランナウトテーブル80の上面又は下面の少なくともいずれか一方の位置に、鋼帯10側を指向して配置される。この撮影装置100は、対象の画像を撮影できる器具であれば一般的なものでよく、また静止画像を連続して撮影できる器具であってもよい。
【0015】
また撮影装置100は、冷却装置70から出てきてランナウトテーブル80上を搬送される鋼帯10の先端部及び尾端部の少なくとも一方の端部におけるタングの形状の画像を取得するようになっている。ひとつの鋼帯10の両方の端部を撮影するか或いはいずれか一方の端部を撮影するかを、解析装置110に指示できる入力装置を介してユーザが選択できるように設定してもよい。この撮影装置100が取得した撮像画像は、解析装置110に入力される。
【0016】
なお、熱間圧延ラインでは通常、冷却装置70とコイラー90との間に鋼帯表面の疵等の状態を検査するための表面検査装置(図示しない)が配置されている。この表面検査装置は鋼帯10の表面を、全長全幅の範囲で連続撮影する機能を有する。この表面検査装置が有する撮影装置100によって撮影された全長全幅或いは鋼帯10の端部部分の表面画像を解析装置110に入力してもよい。
【0017】
このように表面検査装置の撮影装置100を用いることによって、熱間圧延ラインの既存設備を活用して、鋼帯端部のタングの形状の画像を得ることができる。よって新規な撮影装置等を導入する必要がないことから、鋼帯端部のタング長さを測定するコストを削減することができる。
解析装置110は、撮影装置100が取得した撮像画像に対して、後述する解析処理を実行し、鋼帯端部のタング長さを算出する。解析装置110は、例えばCPUとROMとRAMと入出力ポートを有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的なマイクロコンピュータで構成される。
【0018】
図3は解析装置110の構成を示すブロック図である。また
図4は鋼帯端部の各部位を説明する図である。
解析装置110は、後述する画像取得部aと、位置固定部bと、領域分割部cと、一端位置検出部dと、鋼帯幅測定部eと、タング長さ算出部fと、記憶部gと、判別部hとを備える。
【0019】
前記画像取得部aは、撮影装置100が取得した撮像画像を取得するものである。
また前記位置固定部bは画像取得部aで取得した画像に対して画像処理を行い、解析用画面中における画像データの上下左右位置を固定するようになっている。
前記領域分割部cは、位置固定部bが固定した解析用画面を、タング部分を含む鋼帯領域とそれ以外の背景領域とに領域分割する分割処理を行うものである。
【0020】
また前記一端位置検出部dは、領域分割部cによって特定された鋼帯領域の中で、鋼帯10の一端位置12の座標データを算出し、鋼帯10の一端位置12を特定する処理を行うようになっている。なお、本発明における一端位置12とは、特段の説明が無い限り、
図4に示すように、タングの外延部分における一点であって、後述する設定鋼帯幅Woの中心から最遠端の点のことをいう。
【0021】
前記鋼帯幅測定部eは、一端位置検出部dが特定した鋼帯10の一端位置12を起点として、画像中の鋼帯幅を鋼帯10の長手方向に順次測定する。そしてこの測定された鋼帯幅に所定の倍率を乗算して、実際の鋼帯幅Wiを算出する。そしてこの実際の鋼帯幅Wiが後述する目標値Xに達するまで画像中の鋼帯幅の測定と実際の鋼帯幅Wiの算出を繰り返す。
【0022】
前記タング長さ算出部fは、鋼帯幅測定部eによって、実際の鋼帯幅Wiが後述する目標値Xに達したときの鋼帯10の一端位置12からの移動距離を算出するとともに、この算出された移動距離に所定の倍率を乗算して、実際のタング長さTiとして算出する。
前記記憶部gは、一端位置検出部dが算出した鋼帯10の一端位置12の座標データと、鋼帯幅測定部eが算出した実際の鋼帯幅Wiと、タング長さ算出部fが算出した実際のタング長さTiを記録する。しかし実際の鋼帯幅Wiは、一端位置12から順次算出した全ての鋼帯幅Wiを記録する必要はなく、解析装置100の処理効率を向上させるために、後述する目標値Xに達したときの実際の鋼帯幅Wiのみを記録するようにしてもよい。
【0023】
前記判別部hは、記憶部gが記録した実際の鋼帯幅Wiを読み出し、この実際の鋼帯幅Wiが後述する目標値Xに達したかどうかを判別するものである。またこの判別部hは、記憶部gが記録した実際のタング長さTiを読み出し、この実際のタング長さTiが後述するタング長さの大小を判断するための閾値以上であるかどうかを判別するようになっている。
前記出力装置120は、解析装置110が判別部hによって判別した結果をユーザに対して出力するようになっている。この出力装置120としては、主にコンピュータ用の画像表示装置等が一般に用いられるが、これに限定されるものではない。
【0024】
(作用)
図2に示すように、仕上圧延機60で圧延された鋼帯10はランナウトテーブル80上を搬送されながら、冷却装置70によって冷却された後、コイラー90で巻き取られて鋼帯コイルとされる。撮影装置100は、冷却装置70から出てきてランナウトテーブル80上を搬送される鋼帯10の先端部及び尾端部のタングの形状の画像を取得する。撮影装置100が取得した撮像画像は、解析装置110に入力される。
【0025】
図4は解析装置110で実行する鋼帯端部のタング長さ算出処理の手順を示すフローチャートである。この鋼帯端部のタング長さ算出処理は、撮影装置100の画像取得に同期して実行する。
先ずステップS1で解析装置110は、撮影装置100が取得した撮像画像を、画像取得部aにより取得する。次にステップS2に移行して、このステップS2で解析装置110は、位置固定部bにより、画像取得部aが取得した撮像画像を画像解析用画面に取り込み、解析用画面中における画像データの上下左右位置を固定する処理を行う。
【0026】
次にステップS3に移行して、このステップS3で解析装置110は、領域分割部cにより、位置固定部bが位置固定した解析用画面をタング部分を含む鋼帯領域と、それ以外の背景領域とに領域分割する分割処理を行う。代表的な分割方法としては画素の色彩に基づく2値画像法が用いられることが多いが、その他一般的に採用される分割方法によって領域分割が行われてもよい。
【0027】
次にステップS4に移行して、このステップS4で解析装置110は、一端位置検出部dにより、領域分割部cが特定した鋼帯領域の中で鋼帯10の一端位置12を特定する処理を行う。この特定された一端位置12は記憶部gに記録される。
次にステップS5に移行して、このステップS5で解析装置110は、鋼帯幅測定部eにより、一端位置検出部dが特定した一端位置12を起点として、鋼帯10側に直線的に向かって順次測定点を移動させる。そして画面中の鋼帯幅を順次測定する処理を行うとともに、測定された鋼帯幅に所定の倍率を乗算して、実際の鋼帯幅Wiを算出する処理を行う。この測定された実際の鋼帯幅Wiは記憶部gに記録される。
【0028】
次にステップS6に移行して、このステップS6は解析装置110は、判別部hによって、記憶部gから鋼帯幅測定部eに測定された実際の鋼帯幅Wiを読み出し、この実際の鋼帯幅Wiが下記(1)式のとおり定義される目標値Xに到達したかどうかを、判別する。
【0029】
〔数1〕
(目標値X)=(設定鋼帯幅Wo)×(許容率A)/100 ・・・(1)
【0030】
ここで設定鋼帯幅Woは、熱間圧延工程で本来設定されている鋼帯幅を示す。また許容率A%は、熱間圧延工程の後続処理工程でダブルカットシャーによって切り取られる鋼帯端部の鋼帯幅が、設定鋼帯幅Woに対してどの程度の割合を占めるかを示す比率である。
図1(b)に示すように鋼帯端部にタングの一部が残存した状態であっても、当該鋼帯端部の幅が、設定されている鋼帯幅に対してA%以上の長さである場合に、当該鋼帯コイルは後続処理工程に投入されても、不良鋼帯を生じないと判断される。
【0031】
解析装置110は、判別部hにより実際の鋼帯幅Wiが目標値Xに到達していないと判別される限り、再度上記ステップS5に移行して、実際の鋼帯幅Wiを算出する処理を繰り返す。
解析装置110は、判別部hにより実際の鋼帯幅Wiが目標値Xに到達したと判別された場合に、下記ステップS7に移行する。
【0032】
このステップS7では、解析装置110はタング長さ算出部fにより、目標値Xに到達したと判別された鋼帯幅を測定した際の、鋼帯10の一端位置12からの移動距離を算出する処理を行う。そして算出された移動距離に所定の倍率を乗算して、実際のタング長さTiを算出する処理を行う。この算出された実際のタング長さTiは記憶部gに記録される。
【0033】
以上が、鋼帯端部のタング長さ算出処理の流れとなる。この後更に、判別部hによって実際のタング長さTiが後述するタング長さの大小を判断するための閾値以上かどうかを判別するステップS8に移行させることで、鋼帯コイルの選別方法とすることができる。
このステップS8では、判別部hは、記憶部gからタング長さ算出部fに算出された実際のタング長さTiを読み出し、この実際のタング長さTiが下記(2)式を満たすかどうかを判別する。
【0034】
〔数2〕
Ti ≧ L/2 ・・・(2)
【0035】
ここでLはユーザによって任意に設定されるダブルカットシャーの間隔であり、L/2は実際のタング長さTiと比較する閾値である。
算出された実際のタング長さTiが上記(2)式を満たすと判別された場合はステップS9に移行して、解析装置110は当該鋼帯コイルを不良コイルとして判別する。
また算出された実際のタング長さTiが上記(2)式を満たさない場合はステップS10に移行して、当該鋼帯コイルを後続処理工程に投入可能なコイルとして判別する。
そして当該判別結果は、
図3に示すように出力装置120に出力されてユーザに示される。このとき判別結果に替えて、又は判別結果とともに、算出された実際のタング長さTiを出力してもよい。
【0036】
その後当該判別結果は、コイラー90に巻き取られた各々の鋼帯コイルの選別に用いられる。具体的には、当該判別結果を各々の鋼帯10の製造番号と対応させて記録する等の手段が用いられる。
このように本発明に係る鋼帯コイルの選別方法では、速やかにタング長さを上記(2)式に示す閾値と比較して、不良コイルとそうでないコイルを選別することができることから、鋼帯コイルが後続処理工程に投入される前までの間に、効率よく正確に鋼帯コイルを選別することができる。
以上の処理は、鋼帯10の使途等の条件に応じて、その先端部に形成されたタング及び尾端部に形成されたタングの少なくとも一方のタングについて行うことができる。
【0037】
(効果)
本発明に係る鋼帯コイルの選別方法は上述した構成を有することから、熱間圧延ライン上で連続して大量に流れる、仕上圧延後の鋼帯の先端部及び尾端部の少なくとも一方のタング長さを、当該鋼帯コイルが後続処理工程に投入される前までの間に、効率よくかつ正確に測定し、不良コイルと後続処理工程投入可能コイルに選別することができる。よって、後続処理のために鋼帯端部を事前に切り落とす付加的作業を省略することができる。
【実施例】
【0038】
以下発明の実施例について説明する。対象材の鋼種はSGP-MZHである。
対象材を熱間圧延ラインにて仕上圧延を施して鋼帯10を得た後、当該鋼帯10をランナウトテーブルにおいて冷却装置70を通過させた後であってコイラー90によって巻き取られる前に、表面検査装置によって当該鋼帯10の先端部のタングの形状を撮影した。コイラー90に巻き取られる直前の鋼帯10の移動速度は、約600mpmであった。その後、撮影された画像のデータを解析装置110に入力し、画像解析用画面に取り込んだ後、画像データの上下左右位置を固定した。そして画素の輝度スペクトル分析に基づき解析用画面の領域分割を行い、鋼帯領域と背景領域とに領域分割した。
【0039】
また下記(a)、(b)のとおり、本実施例における設定条件を定義及び算出した。
設定条件:
(a)許容率A=100%、設定鋼帯幅Wo=1035mmより、
目標値X=Wo×A=1035mm
(b)L=180mmより、閾値L/2=90mm
ここで、上述した解析方法により算出された実際の鋼帯幅Wiが1035mmに到達した時点における実際のタング長さTi=65mmであった。よって、65mm<90mmであるから、この鋼帯の先端部のタング長さは閾値よりも小さい。
【0040】
従って当該鋼帯コイルは、後続処理工程に投入することが可能な鋼帯コイルとして選別された。