特許第6007597号(P6007597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6007597形鋼用曲り矯正装置および形鋼の曲り矯正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6007597
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】形鋼用曲り矯正装置および形鋼の曲り矯正方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 3/05 20060101AFI20160929BHJP
【FI】
   B21D3/05 D
   B21D3/05 M
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-124667(P2012-124667)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-248640(P2013-248640A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】小野 康次
(72)【発明者】
【氏名】畠中 淳
(72)【発明者】
【氏名】丸門 直登
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 由紀雄
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−084829(JP,A)
【文献】 特開昭61−135425(JP,A)
【文献】 特開2002−282943(JP,A)
【文献】 特開昭51−110475(JP,A)
【文献】 特開昭59−189019(JP,A)
【文献】 特開2008−030090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 3/05
B21D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブと、該ウェブの高さ方向での少なくとも一端から左右に張り出す右フランジ部および左フランジ部を有するフランジとを備える形鋼に用いられ、前記形鋼を冷間で搬送しつつ前記ウェブの高さ方向での曲りまたは前記ウェブの厚さ方向での反りを圧延で矯正する形鋼用曲り矯正装置であって、
前記フランジを前記ウェブとは反対側の面から支持する支持ロールと、該支持ロールとの間で前記左右のフランジ部を前記ウェブ側の面から押圧して前記左右のフランジ部それぞれを挟圧する一対の矯正ロールと、該一対の矯正ロールそれぞれの押圧力を個別に制御する一対の押圧力制御手段とを備え
各矯正ロールは、前記支持ロールとの対向方向に沿ってスライド移動可能に各矯正ロールを個別に支持するチョックをそれぞれ有し、
各押圧力制御手段は、前記各矯正ロールそれぞれのチョックを前記支持ロールとの対向方向に向けて個別に押圧する複数の油圧シリンダと、該複数の油圧シリンダの押圧力の付与および解除を切り替える方向制御弁と、該方向制御弁と前記複数の油圧シリンダとの間の油路に介装されて前記複数の油圧シリンダの押圧力を前記曲りまたは前記反りに応じた所定値に設定可能且つ該油路の圧力を前記設定された所定値を維持するように圧油を給排する複数の圧力制御弁とを有し、前記挟圧するための押圧力が、前記設定された所定値維持するように前記一対の矯正ロールそれぞれの押圧力を個別に制御することを特徴とする形鋼用曲り矯正装置。
【請求項2】
ウェブと、該ウェブの高さ方向での少なくとも一端から左右に張り出す右フランジ部および左フランジ部を有するフランジとを備える形鋼に用いられ、前記形鋼を冷間で搬送しつつ前記ウェブの高さ方向での曲りまたは前記ウェブの厚さ方向での反りを圧延によって矯正する方法であって、
請求項1に記載の形鋼用曲り矯正装置を用い、前記フランジを前記ウェブとは反対側の面から支持ロールで支持するとともに、前記左右のフランジ部それぞれを前記ウェブ側の面から一対の矯正ロールによって押圧することで前記支持ロールとの対向方向に挟圧し、その挟圧する左右のフランジ部それぞれに対する押圧力を、前記曲りまたは前記反りに応じて設定した所定値に維持するように個別に制御することを特徴とする形鋼の曲り矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H形鋼やT形鋼等の、ウェブとそのウェブの高さ方向での少なくとも一端から左右に張り出す右フランジ部および左フランジ部を有するフランジとを備える形鋼に好適に用い得る形鋼用曲り矯正装置、およびこの種の形鋼の矯正に好適な形鋼の曲り矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の形鋼は、鋼板を溶接組立する方法や、加熱炉で加熱された被圧延材をスケール除去後、熱間圧延する方法によって製造される。熱間圧延で使用されるユニバーサル圧延機は、上下一対の水平ロールと、左右一対の垂直ロールとを備えた圧延機であり、被圧延材である形鋼のウェブとフランジとをこれらのロールで圧下することによって形鋼の製品形状としていく。
【0003】
ところで、熱間圧延で成形された形鋼は、熱間圧延時のフランジの圧下率差や冷却時の温度差などにより、反りや曲りが生じる。そのため、成形された形鋼は、冷却床で冷却後に矯正して所望形状の製品とされる。つまり、H形鋼の場合を例にとると、例えば図2に示すように、H形鋼100は、ウェブ101と、そのウェブ101の高さ方向での両側にそれぞれ設けられる二つのフランジ102とを有して構成される。このH形鋼100を圧延製造する場合には、同図(a)に示すように、H形鋼100には、ウェブ101の高さ方向での曲がり(曲がり量を符号δで示す)や、あるいは、図3(a)に示すようにウェブ101の厚さ方向での反り(反り量を符号Sで示す)が、全体的あるいは局部的に生じることがある。このような「曲がり」や「反り」を減少させる方法として、ユニバーサル圧延での圧延条件を調整する方法が知られている。
【0004】
しかし、H形鋼の曲がりや反りの発生には、ユニバーサル圧延での圧下のアンバランスや被圧延材の形状不良など、すなわち、ユニバーサル圧延機や被圧延材に種々の上下左右での非対称圧延要素が影響しており、これら全ての要因に対応してユニバーサル圧延機の圧延条件を微妙に調整することは非常に困難である。
そこで、圧延条件の調整でも曲がりや反り防止できない場合は、圧延後のH形鋼を温間や冷間で矯正する方法が不可欠となる。このような方法に関しては、通常、反りに対してはローラー矯正機によってオンラインで矯正を行っているものの、曲がりに対しては、反りと比較してローラー矯正機の効果が小さいことから、オフラインによる精製工程にて矯正を行っている。
【0005】
精整工程での形鋼の曲り矯正方法としては、プレス機による3点曲げによる矯正方法が知られている(例えば特許文献1参照)。しかし、プレス機による3点曲げ矯正においては、曲げ加工の支点間の機械的な制約により、成形された形鋼の先尾端の局所的な曲りの矯正ができないという問題がある。また、プレス機による3点曲げ矯正は、形鋼の搬送を停止した状態での曲げ加工であることから処理効率が低いという問題がある。
【0006】
これに対し、曲がっている側のフランジ面をローラーにより圧延することでフランジ面を延伸させて曲りを矯正する方法も行われている(例えば特許文献2参照)。従来の圧延方式の曲り矯正は、フランジをウェブとは反対側の面から押圧する外面ロールと、左右に張り出す右フランジ部および左フランジ部を有するフランジを外面ロールとの間でウェブ側の面から支持して左右のフランジそれぞれを挟圧する一対の矯正ロールとを用い、フランジ内外の対向するロールに所定の圧下力を加えてフランジを挟圧する曲り矯正方法である。このような圧延矯正方法は、成形された形鋼の局所的な曲りを矯正でき、また、形鋼を搬送しながらの矯正なので、処理効率の点でも有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−030090号公報
【特許文献2】特開2002−282943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の圧延方式の曲り矯正方法は、矯正する形鋼の左右のフランジ相互に板厚の差異がある場合、圧延時に生じる左右の圧下率差や伸び率差により、矯正後に、形鋼の他の形状(反りや捩れなど)が劣化するという問題があった。
図4に示すように、フランジ厚が左右で異なる形鋼、すなわち、左フランジ部102bのフランジ厚と右フランジ部102aのフランジ厚とが異なる厚さの形鋼100を矯正する場合には、従来の圧延方式の曲り矯正方法では、フランジ外面ロールを圧下する機構であるため、左フランジ部102bと右フランジ部102aそれぞれのフランジ厚に合わせてロールギャップを変更することができず、大きな反りや捩れが発生する。熱間圧延で成形された形鋼では、圧延される部位によってフランジ厚が異なる場合が多いため、従来の圧延による曲り矯正技術を適用することが困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、形鋼を冷間で搬送しつつウェブの高さ方向での曲りまたは厚さ方向での反りを圧延で矯正するに際し、左右のフランジ部相互に板厚の差異がある場合であっても、形鋼の他の形状(反りや捩れなど)の劣化を防止または抑制し得る形鋼の曲がり矯正方法および形鋼用矯正装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る形鋼用曲り矯正装置は、ウェブと、該ウェブの高さ方向での少なくとも一端から左右に張り出す右フランジ部および左フランジ部を有するフランジとを備える形鋼に用いられ、前記形鋼を冷間で搬送しつつ前記ウェブの高さ方向での曲りまたは前記ウェブの厚さ方向での反りを圧延で矯正する形鋼用曲り矯正装置であって、前記フランジを前記ウェブとは反対側の面から支持する支持ロールと、該支持ロールとの間で前記左右のフランジ部を前記ウェブ側の面から押圧して前記左右のフランジ部それぞれを挟圧する一対の矯正ロールと、該一対の矯正ロールそれぞれの押圧力を個別に制御する一対の押圧力制御手段とを備え、各矯正ロールは、前記支持ロールとの対向方向に沿ってスライド移動可能に各矯正ロールを個別に支持するチョックをそれぞれ有し、各押圧力制御手段は、前記各矯正ロールそれぞれのチョックを前記支持ロールとの対向方向に向けて個別に押圧する複数の油圧シリンダと、該複数の油圧シリンダの押圧力の付与および解除を切り替える方向制御弁と、該方向制御弁と前記複数の油圧シリンダとの間の油路に介装されて前記複数の油圧シリンダの押圧力を前記曲りまたは前記反りに応じた所定値に設定可能且つ該油路の圧力を前記設定された所定値を維持するように圧油を給排する複数の圧力制御弁とを有し、前記挟圧するための押圧力前記設定された所定値維持するように前記一対の矯正ロールそれぞれの押圧力を個別に制御することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係る形鋼の曲り矯正方法は、ウェブと、該ウェブの高さ方向での少なくとも一端から左右に張り出す右フランジ部および左フランジ部を有するフランジとを備える形鋼に用いられ、前記形鋼を冷間で搬送しつつ前記ウェブの高さ方向での曲りまたは前記ウェブの厚さ方向での反りを圧延によって矯正する方法であって、本発明の一態様に係る形鋼用曲り矯正装置を用い、前記フランジを前記ウェブとは反対側の面から支持ロールで支持するとともに、前記左右のフランジ部それぞれを前記ウェブ側の面から一対の矯正ロールによって押圧することで前記支持ロールとの対向方向に挟圧し、その挟圧する左右のフランジ部それぞれに対する押圧力を、前記曲りまたは前記反りに応じて設定した所定値に維持するように個別に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、支持ロールと一対の矯正ロールとによって挟圧する左右のフランジ部それぞれに対する押圧力を、ウェブの高さ方向での曲りまたは厚さ方向での反りに応じて設定した所定値に維持するように個別に制御するので、矯正する形鋼の左右のフランジ部相互に板厚の差異がある場合であっても、圧延時に生じる左右のフランジ部の圧下率差や伸び率差を少なくすることができる。そのため、矯正後における形鋼の他の形状(反りや捩れなど)の劣化を防止または抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一態様に係る形鋼用曲り矯正装置の一実施形態である圧延方式の曲り矯正装置の正面図であり、同図では油圧回路も併せて図示している。
図2】形鋼の圧延製造による「曲がり」を説明する図であり、同図(a)は平面図、(b)は横断面図である。
図3】形鋼の圧延製造による「反り」を説明する図であり、同図(a)は平面図、(b)は横断面図である。
図4】フランジ厚が左右で異なる形鋼を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。ここで、この曲り矯正装置は、形鋼を冷間で搬送しつつ前記ウェブの高さ方向での曲りを圧延で矯正するものである。
図1に示すように、この曲り矯正装置10は、圧延で矯正する形鋼としてH形鋼100に適用した例である。なお、この例は、H形鋼100を製品長に切断した状態で矯正を行っており、H形鋼100は、その長手方向に沿って設けられた不図示の複数のテーブルローラ上に載置され、不図示の駆動装置によりH形鋼100の長手方向に搬送されるようになっている。
【0016】
H形鋼100は、ウェブ101と、ウェブ101の高さ方向での両側にそれぞれ設けられる二つのフランジ102、102とを有して構成されている。各フランジ102、102は、ウェブ101の厚さ方向での左右両側にそれぞれ張り出して一対をなしている右フランジ部102aおよび左フランジ部102bを有する。つまり、本明細書においては、一方のフランジ102(同図では下側のフランジ)に対し、その張り出す左右について、左右のフランジ部102a,102bと呼称する。
曲り矯正装置10は、同図に示すように、支持ロール1と、一対の矯正ロール2,3とを備えている。支持ロール1は、不図示のチョックによって回転自在に枢支され、同図では下側のフランジ102をウェブ101とは反対側の面102cから支持している。
【0017】
一対の矯正ロール2,3は、同図下側のフランジ102に対し、ウェブ101側の面から左右のフランジ部102a,102bに対向配置されている。各矯正ロール2,3は、同一の構成を有している。つまり、各矯正ロール2,3は、それぞれのチョック22,32の先端に支軸21,31を介して回転自在に枢支されている。各チョック22,32は、それぞれの基端部が支持機構23,33によって、支持ロール1との対向方向にスライド移動可能に支持されている。そして、一対の矯正ロール2,3は、各矯正ロール2,3毎に設けられた一対の押圧力制御手段により押圧力が付与されることで、上記左右のフランジ部102a,102bを支持ロール1との間で挟圧するようになっている。
【0018】
以下、一対の押圧力制御手段について説明する。なお、一対の押圧力制御手段相互の構成は同一なので、上記一対の矯正ロール2,3同様に符号を並べて説明する。
各押圧力制御手段は、各矯正ロール2,3のチョック22,32を支持ロール1との対向方向に向けて押圧する油圧シリンダ24,34を有する。各油圧シリンダ24,34は、各油圧シリンダ24,34によるチョック22,32への押圧力の付与および解除を切り替え可能なように、各油圧シリンダ24,34のピストンを押し引きする方向制御弁27に接続されている。さらに、各油圧シリンダ24,34と方向制御弁27との間の油路には、圧力制御弁26,36がそれぞれ接続されている。圧力制御弁26,36は、各油圧シリンダ24,34のピストンを押し出す側の油路に介装されている。
【0019】
各圧力制御弁26,36は、各油圧シリンダ24,34に供給される圧油の圧力を調整可能な調整バルブ(リリーフバルブ)26b,36bと、調整バルブ26b,36bによって設定された油圧を維持するためのパイロット油路26p,36pとを有する。つまり、各油圧シリンダ24,34のピストンが設定された油圧を超える側(ピストンの引き込み方向)に押し込まれたときには、パイロット油路26p,36pの作動により流量調整弁25,35からの圧力がタンク側に逃がされ、設定された油圧を維持する。
【0020】
一方、各油圧シリンダ24,34のピストンが設定された油圧を下げる側に更に押し出されたときには、パイロット油路26p,36pの作動により設定された油圧に戻すようタンク側への油路を閉じて設定された油圧に油路の圧力を維持する。ここで、調整バルブ26b,36bによって設定される油圧は、H形鋼100のウェブ101の高さ方向での曲がりの測定値(曲がり量δ(図2(a)参照))に基づき、実験等によるデータから予め設定された所定値とされる。これにより、各押圧力制御手段は、上記一対の矯正ロール2,3と支持ロール1とにより圧延で挟圧するための押圧力を、ウェブ101の高さ方向での曲り(曲がり量δ)に応じて設定した所定値に維持するように個別に制御可能になっている。
【0021】
次に、上記曲り矯正装置10およびこれを用いた形鋼の曲り矯正方法並びにその作用効果について説明する。
上記曲り矯正装置10で形鋼の曲り矯正するに際し、まず、冷却床で所定温度まで冷却後のH形鋼100のうち、曲りのあるもののみを抽出した。そして、曲り矯正装置10の入側にて、そのH形鋼100のウェブ101の高さ方向での曲がりを測定し、その測定値(曲りの発生位置、および曲がり量δ(図2(a)参照))に基づき、圧力制御弁26,36の調整バルブ26b,36bを調整して、加えるべき圧油の圧力を予め設定された所定値とする。本実施形態では各調整バルブ26b,36bとも同じ設定値とした。
【0022】
次いで、H形鋼100を曲り矯正装置10に導く複数のテーブルローラ上に載置する。そして、凹の曲りを有するフランジ102(図1での下側)をウェブ101とは反対側の面102cから支持ロール1で支持するとともに、左右のフランジ部102a,102bそれぞれをウェブ101側の面から一対の矯正ロール2,3によって押圧することで支持ロール1との対向方向で挟圧しつつ、駆動装置によりH形鋼100をその長手方向に冷間で搬送しつつフランジを圧延することで、H形鋼100の曲りを矯正する。
【0023】
ここで、上記曲り矯正装置10を用いた形鋼の曲り矯正方法は、上述した各押圧力制御手段が、各矯正ロール2,3により挟圧するための押圧力を、ウェブ101の高さ方向での曲り(曲がり量δ)に応じて設定した所定値に維持するように個別に制御するので、矯正するH形鋼100の左右のフランジ102a,102b相互に板厚の差異がある場合であっても、圧延時に生じる左右のフランジ102a,102bの圧下率差や伸び率差を少なくすることができる。そのため、矯正後におけるH形鋼100の他の形状(反りや捩れなど)の劣化を防止または抑制することができる。なお、曲りを矯正するために必要なフランジ部の圧下率は、熱間圧延H形鋼の一般的な曲りの大きさから考えて、1%以下の圧下率で十分であることが多い。
本実施形態によれば、上記曲り矯正装置10で形鋼の曲り矯正することにより、製品の直行率が65%から80%に向上した。また、局所的な大曲りを矯正することにより曲りによる格落ちを削減(格落ち率1.5%から0.3%に向上)することができた。
【0024】
なお、本発明に係る形鋼用曲り矯正装置および形鋼の曲り矯正方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態は、ウェブの高さ方向での曲りを主に矯正する例であり、また、各調整バルブ26b,36bとも同じ設定値とした例で説明したが、これに限定されず、H形鋼100に反り(図3(a)参照)がある場合には、測定された反り量((図3(a)に示す符号S)に基づいて、左右の調整バルブ26b,36bの調整を左右のフランジ102a,102bで異ならせることにより、「曲がり」とともに「反り」をも矯正することができる。この場合、反っている側(凹の側)のフランジの設定値をそうでない側の設定値よりも大きくすることで反りを矯正することができる。
また、上記実施形態では、形鋼として、H形鋼100を例に説明したが、これに限らず、本発明は、ウェブと、そのウェブの高さ方向での少なくとも一端から左右に張り出す左右のフランジ部を有するフランジとを備える形鋼であれば、種々の形鋼に適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 支持ロール
2、3 矯正ロール
10 曲り矯正装置(形鋼用曲り矯正装置)
22,32 チョック
23,33 支持機構
24,34 油圧シリンダ
26,36 圧力制御弁
図1
図2
図3
図4