(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷間状態で移動している形鋼の表面にある表面欠陥を検出するに際して、前記表面の被検査面を撮影した撮像画像に基づき前記被検査面に存在する疵を検出する疵検出方法であって、
前記被検査面の被検査領域に照明装置で光を照射し、
前記被検査面の被検査領域を、互いに異なる角度に設置され、前記照明装置で前記被検査面に照射された光の反射光のうち、ハレーションが発生している像を撮像する第一のカメラと、ハレーションが発生していない像を撮像する第二のカメラとで撮像し、その撮像された各々の撮像情報に基づいて各々の撮像情報毎に前記被検査面の疵候補情報をそれぞれ生成し、
前記第一のカメラの撮像情報と前記第二のカメラの撮像情報とに基づいて生成された疵候補情報のいずれもが同一の判定範囲内にあるときに限って、当該疵候補情報に対応した疵が有るものと判定するとともに、前記第一のカメラの撮像情報に基づいて生成された疵候補情報の位置に疵が有るものと判定することを特徴とする疵検出方法。
冷間状態で移動している形鋼の表面を被検査面として、該被検査面を撮影した撮像画像に基づき前記表面にある表面欠陥を検出して前記被検査面に存在する疵を検出する疵検出装置であって、
前記被検査面の被検査領域に光を照射する照明装置と、前記被検査領域を互いに異なる角度から撮像する第一のカメラおよび第二のカメラと、該第一のカメラおよび該第二のカメラによって撮像された各々の撮像情報に基づいて、各々の撮像情報毎に前記被検査面の疵候補情報を生成する疵候補情報生成手段と、該疵候補情報生成手段で生成された複数の疵候補情報に基づいて前記被検査面の疵の有無を検出する疵検出手段とを備え、
前記第一のカメラは、前記照明装置で前記被検査面に照射された光の反射光のうち、ハレーションが発生している像を撮像し、前記第二のカメラは、前記照明装置で前記被検査面に照射された光の反射光のうち、ハレーションが発生していない像を撮像し、
前記疵検出手段は、前記複数の疵候補情報のいずれもが同一の判定範囲内にあるときに限って、当該疵候補情報に対応した疵が有るものと判定するとともに、前記第一のカメラの撮像情報に基づいて生成された疵候補情報の位置に疵が有るものと判定することを特徴とする疵検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冷間状態で移動している形鋼の表面を被検査面として撮像する場合、スケールや冷却水などの外乱を考慮する必要がある。つまり、冷却工程や洗浄工程で水を使用した処理によって形鋼表面に付着した水滴あるいは矯正工程で剥離したスケールは、エアパージ、スクレーパーなどを表面疵検査装置の前段に配置して設備的に除去しているものの、これらを完全に除去することは困難である。特に形鋼の下面側は、冷却工程や洗浄工程で水を使用した処理によって形鋼表面に付着した水滴が落下したり、あるいは矯正工程で剥離したスケールが落下して付着したりすることがあり、誤検出の要因になるという問題がある。
【0006】
特に、被検査材とカメラとの間に浮遊するスケールなどの異物は、被検査材の表面よりもカメラとの距離が近くなる。そのため、相対的に面積が大きく検出され、それにより閾値の調整などでフィルタリングを行うことも難しい。そのため、浮遊するスケールなどの異物と疵とを弁別することが困難であるという問題がある。
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、被検査面とカメラとの間に浮遊するスケールなどの疵以外の異物が存在する場合であっても、このような異物と疵とを弁別して、疵のみを検出し得る疵検出方法および疵検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る疵検出方法は、冷間状態で移動している形鋼の表面にある表面欠陥を検出するに際して、前記表面の被検査面を撮影した撮像画像に基づき前記被検査面に存在する疵を検出する疵検出方法であって、
前記被検査面の被検査領域に照明装置で光を照射し、前記被検査面の被検査領域を
、互いに異なる角度に設置
され、前記照明装置で前記被検査面に照射された光の反射光のうち、ハレーションが発生している像を撮像する第一のカメラと、ハレーションが発生していない像を撮像する第二のカメラとで撮像し、その撮像された各々の撮像情報に基づいて各々の撮像情報毎に前記被検査面の疵候補情報をそれぞれ生成し、
前記第一のカメラの撮像情報と前記第二のカメラの撮像情報とに基づいて生成され
た疵候補情報のいずれもが同一の判定範囲内にあるときに限って、当該疵候補情報に対応した疵が有るものと判定する
とともに、前記第一のカメラの撮像情報に基づいて生成された疵候補情報の位置に疵が有るものと判定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係る疵検出装置は、冷間状態で移動している形鋼の表面を被検査面として、該被検査面を撮影した撮像画像に基づき前記表面にある表面欠陥を検出して前記被検査面に存在する疵を検出する疵検出装置であって、前記被検査面の被検査領域に光を照射する照明装置と、前記被検査領域を互いに異なる角度から撮像する
第一のカメラおよび第二のカメラと、該
第一のカメラおよび該第二のカメラによって撮像された各々の撮像情報に基づいて、各々の撮像情報毎に前記被検査面の疵候補情報を生成する疵候補情報生成手段と、該疵候補情報生成手段で生成された複数の疵候補情報に基づいて前記被検査面の疵の有無を検出する疵検出手段とを備え、
前記第一のカメラは、前記照明装置で前記被検査面に照射された光の反射光のうち、ハレーションが発生している像を撮像し、前記第二のカメラは、前記照明装置で前記被検査面に照射された光の反射光のうち、ハレーションが発生していない像を撮像し、前記疵検出手段は、前記複数の疵候補情報のいずれもが同一の判定範囲内にあるときに限って、当該疵候補情報に対応した疵が有るものと判定する
とともに、前記第一のカメラの撮像情報に基づいて生成された疵候補情報の位置に疵が有るものと判定することを特徴とする。
本発明によれば、冷間状態で移動している形鋼の表面にある表面欠陥を検出するに際し、被検査面からの反射光を撮像するカメラを、異なる角度から同じ被検査領域を撮像するように
二台配置し、それらの撮像情報からそれぞれ生成した疵候補情報がいずれも同一の判定範囲にあるときに限って、当該疵候補情報に対応した疵が
第一のカメラの撮像情報に基づいて生成された疵候補情報の位置に有るものと判定するので、異物と疵とを弁別して、疵のみを検出することができる。
【0009】
つまり、
図1(a)に示すように、それぞれのカメラ1,2で同じ被検査領域Kを同時に撮像した時、カメラ1,2の検出角度の差異により、異物Fが被検査面Wsから離間している浮遊物であれば、撮像画像中の異物Fの撮像位置はカメラ1とカメラ2とでは異なる位置となる。同図の例では、第一のカメラ1による撮像位置は、被検査面Ws上での見かけの位置(第一のカメラ1での疵候補情報)がA点となるのに対し、第二のカメラ2による撮像位置は、被検査面Ws上での見かけの位置(第二のカメラ2での疵候補情報)がB点となる。これに対し、
図1(b)に示すように、被検査面Ws上の疵Dであれば、カメラ1,2の検出角度によらず各カメラ1、2での疵候補情報は撮像画像中の同じ位置に検出される。
【0010】
よって、被検査面Wsとカメラ1,2との間にスケール等の異物Fが存在した場合や、いずれか一方のカメラに落下した水滴が付着した場合であっても、カメラ1,2相互の撮像位置が異物と疵の場合には異なることを利用し、それぞれのカメラ1,2の疵候補情報がいずれも判定範囲であるか否かの判定により、被検査面Wsに存在する疵か否かを判定でき、異物Fと疵Dとを弁別して、疵Dのみを検出することが可能である。
【0012】
そして、本発明によれば、ハレーションを起こさせることで、第一のカメラの撮像画像中における、被検査面の表面性状としての微小凹凸からなる表面粗さなどを飛ばして、目的とする疵をよりはっきりと浮き出させることが可能となる。また、被検査面に水滴等の水が付着していても、ハレーションを起こさせることで水滴等の水のコントラスト差が低減する。このため、水滴等を疵として誤検知することを低減若しくは無くすことが可能となる。よって、異物と疵とを弁別して、疵のみを検出する上
で好適である。
【発明の効果】
【0013】
上述のように、本発明によれば、被検査面とカメラとの間に浮遊するスケールなどの疵以外の異物が存在する場合であっても、このような異物と疵とを弁別して、疵のみを検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図2および
図3は、本実施形態に係る疵検出装置の構成を示す概念図である。ここで、本実施形態の疵検出装置は、被検査材が形鋼(例えばH形鋼)であり、形鋼の製造工程の一部である検査ラインに配置された場合を例示している。そして、この疵検出装置は、検査ラインにおいて、搬送装置(不図示)で形鋼を搬送している間に、当該形鋼の表面を被検査面として検査する例である。また、本発明の疵検出装置は、鉄鋼を製造する工程における、少なくとも一部の冷却に水を使用する冷却工程の出側、又は洗浄工程の出側での疵検出に好適な疵検出装置である。
【0016】
本実施形態の疵検出装置は、
図2および
図3に示すように、第一のカメラ1、第二のカメラ2、照明装置3、及び画像処理部4を備える。検査対象とするH形鋼Wは、テーブルローラその他の搬送装置(不図示)で長手方向(搬送方向H)に沿って搬送されるようになっている。なお、下記の例では、H姿勢で搬送しているH形鋼Wのウェブの上面(以下、単に「上面」という)およびウェブの下面(以下、単に「下面」という)を被検査面Wsとする場合で例示する。H形鋼Wの上面および下面にそれぞれ配置された第一のカメラ1、第二のカメラ2および照明装置3の装置構成は同じであり、上下対称なので、以下、上面および下面を特に区別せずに被検査面Wsと呼んで説明する。
【0017】
照明装置3は、H形鋼Wの被検査面Wsの被検査領域K(
図3参照)に対して、搬送方向Hの上流側に傾いた斜め方向から光を照射可能に配置されている。照明装置3の照射軸L3は、被検査領域Kでの被検査面Wsの法線に対し、搬送方向Hの上流側に予め設定した角度θだけ傾斜して配置する。法線に対する角度θは、例えば±45度以内に設定する。本実施形態では、θ=30度に設定した。照明装置3としては、高周波蛍光灯が例示出来る。
【0018】
第一のカメラ1および第二のカメラ2は、形鋼Wの被検査面Wsの被検査領域Kを撮影可能な位置に配置されている。
第一のカメラ1は、被検査領域Kに対して搬送方向Hの下流側に傾いた斜め方向から、当該被検査領域Kを撮像するように、被検査領域Kの中央に撮影軸L1が設定されている。被検査面Wsの法線に対する撮影軸L1の角度θは、例えば±45度以内に設定する。本実施形態では、θ=30度に設定した。
【0019】
ここで、本実施形態では、第一のカメラ1により被検査領域Kを撮影した撮像画像に、照明装置3から照射される光によってハレーションが発生するように、照明装置3から被検査領域Kまでの距離、照射される光量を、実験その他の方法で決定しておく。本実施形態では、20V以上の高周波蛍光灯を使用し、照明装置3から被検査領域Kまでの距離を1160mm以内とすることで、被検査領域Kで1000ルックス以上の照度が確保できるように設定した。このように設定することで、第一のカメラ1で撮影した撮像画像において、少なくとも被検査領域Kを撮影した画像領域ではハレーションが発生することを確認したためである。これに対し、第二のカメラ2は、被検査領域Kを撮像するように当該被検査領域Kの中央に撮影軸L2が設定され、当該撮影軸L2は、被検査面Wsの法線に一致している。第二のカメラ2は、被検査領域Kを撮影した撮像画像でハレーションは発生していない状態で、表面の性状がはっきり撮影された被検査面が撮影されている。
【0020】
画像処理部4は、画像取込部5と疵検出部6を備えている。画像取込部5は、第一のカメラ1および第二のカメラ2が撮像した撮像画像を、予め設定した画像取込み周期で撮像情報として取得して記憶部にそれぞれ記憶する。疵検出部6は、上記第一のカメラ1および第二のカメラ2が撮影した撮像画像の画像処理を行って
図4に示す疵検出判定処理を実行する。
【0021】
疵検出判定処理が実行されると、疵検出部6は、第一のカメラ1および第二のカメラ2が撮像した撮像情報を記憶部から順次に取得し、その取得した撮像情報のそれぞれに対して、被検査領域Kを設定する(
図4のステップS1)。次いで、それぞれの被検査領域Kの撮像情報に2値化処理(エッジ処理)を実施して、各撮像画像の濃淡画像を濃度差分布に変換する(ステップS2)。次いで、疵検出部6は、変換した濃度差分布について予め設定された閾値と比較し、その閾値を越えた場合には、表面欠陥の候補とする疵候補情報をそれぞれに生成する。疵候補情報は、濃度差分布から黒色データ部分を抽出し、その面積が所定以上であればこれを表面欠陥の候補としたものである(ステップS3)。このステップS3が上記課題を解決するための手段に記載の「疵候補情報生成手段」に対応する。
【0022】
ここで、本実施形態の疵検出判定処理では、
図1に示したように、浮遊するスケールなどの異物Fと疵Kとを弁別するために、異物判定処理を実行する(ステップS4)。ステップS4の異物判定処理では、第一のカメラ1および第二のカメラ2が撮像した撮像情報に対してそれぞれ生成された上記疵候補情報のいずれもが同一の判定範囲A内にあるときに限って、当該疵候補情報に対応した疵が有るものと判定する。判定範囲Aは種々設定することができる。例えば疵候補とされた黒色データ部分の被検査領域Kでの座標(例えば黒色データ部分の重心)を判定範囲として相互に比較してもよいし、被検査領域Kを搬送方向Hに複数に区分して判定範囲とし、同一の区分に位置するか否かによって判定してもよい。
【0023】
本実施形態では、
図3に示すように、被検査領域Kを搬送方向Hに複数に区分して判定範囲Aを設定しており、相互の疵候補情報が同一の判定範囲Aに位置する場合に当該疵候補情報に対応した疵が有るものと判定する。特に本実施形態では、ステップS4では、第一のカメラ1の撮像情報に基づいて生成された疵候補情報が判定範囲A内にあるときに、第二のカメラ2の撮像情報に基づいて生成された疵候補情報も当該判定範囲A内にあるときに第一のカメラ1の撮像情報に基づいて生成された疵候補情報の位置に疵が有るものと判定している。このステップS4が上記課題を解決するための手段に記載の「疵検出手段」に対応する。
画像処理部4は、疵検出部6の判定結果を、例えば表示部に出力して該表示部に表示したり、疵位置を形鋼Wにマーキングするマーキング装置などに出力したりする(ステップS5の結果出力処理)。
【0024】
次に、本実施形態の疵検出装置の動作および作用効果について説明する。
この疵検出装置は、被検査領域Kに到来した搬送中の形鋼Wの被検査面Wsに対し、照明装置3からハレーションを発生可能なだけの光量で光を照射し、被検査領域Kでハレーションを発生した状態の像が第一のカメラ1によって撮影される。一方、第二のカメラ2では、被検査領域Kでのハレーションを発生していない状態で、表面の性状がはっきり撮影された像が撮影される。
【0025】
そして、この疵検出装置によれば、被検査面Wsからの反射光を撮像する二台のカメラ1,2を異なる角度に配置し、それらの撮像情報からそれぞれ生成した疵候補情報がいずれも同一の判定範囲Aにあるときに限って、当該疵候補情報に対応した疵Dが有るものと判定するので、
図1を参照して説明したように、被検査面Wsとカメラ1,2との間にスケール等の異物Fが存在した場合であっても、カメラ1,2相互の撮像位置が異物と疵の場合には異なることを利用し、それぞれのカメラ1,2の疵候補情報がいずれも判定範囲Aであるか否かの判定により、被検査面Wsに存在する疵か否かを判定でき、異物Fと疵Dとを弁別して、疵Dのみを検出することが可能である。
【0026】
ここで、形鋼Wには、冷却工程や洗浄工程などの水を使用した処理によって、表面に水滴が付着している場合がある。従来のように、表面の性状をはっきり撮影できる光量の光を照射して撮影した撮影画像のみによって疵検出を行う場合には、例えば1〜2mmの大きさの水滴であっても、その水滴を疵と誤検知するおそれがある。これは、照射した光が水滴によって乱反射し、そのために見かけ上のコントラスト差が生まれることで、誤検知の要因になるからである。
【0027】
これに対し、第一のカメラ1で撮影された撮像画像では、ハレーションが発生しているために、被検査面Wsに形成されている微小凹凸からなる表面粗さは画像から飛ぶことでマスキングされる。これにより、所定深さ以上の疵Dや異物Fが所定の濃度差で撮影された撮像画像となり、疵と誤検知されるような水滴をマスキングして、より精度良く目的とする疵候補だけを検知可能となる。
【0028】
このように、本実施形態の疵検出装置であれば、被検査面Wsとカメラ1,2との間に浮遊するスケールなどの疵以外の異物が存在する場合であっても、被検査面Wsの表面性状による誤差の影響を抑えつつ、異物Fと疵Dとを弁別して、表面欠陥をより精度良く検出することが可能となる。また、被検査面Wsの表面性状の影響を軽減できたので、表面性状の影響を排除する設備導入コストも小さく抑えることが出来る。例えば、水切り装置の水切り能力を小さくすることが可能となる。
【実施例】
【0029】
次に、上記実施形態の疵検出装置に基づく疵の検出についての実施例について説明する。
本実施例の設定条件は、鋼種がH形鋼であり、その寸法は、ウェブ高さが250mm〜1000mm、フランジ幅が125mm〜500mm、長さが6〜34mである。適用したのは形鋼工場の精整ラインであり、H形鋼の搬送速度は0〜4m/sである。なお、被検査面Wsとして形鋼のウェブ表面に設定した。照明装置3からの照射による被検査領域Kでの照度は1230ルックスとし、各カメラ1、2のシャッタースピードは1/240,絞りを全開とした。
【0030】
本実施例における第一のカメラ1および第二のカメラ2で撮影した撮像画像の一例を、
図5に示す。上記設定によって、第一のカメラ1が撮影した撮像画像でハレーションが発生していることを確認した(
図5(a)参照)。また、第二のカメラ2では、被検査領域Kでのハレーションを発生していない状態で、表面の性状がはっきり撮影された(
図5(b)参照)。なお、画像処理部4での閾値はそれぞれ欠陥を検出可能な値に校正した。
【0031】
なお、実施例の条件について、被検査領域Kでの照度が変わるように照明装置3の設定を変更して、第一のカメラ1で撮影した撮像画像にハレーションが発生するかどうか確認したところ、942ルックスでは、ハレーション状態になっていなかったが、1000ルックス以上ではハレーション状態となっていることを確認した。この実験は、840〜1143ルックスの範囲で実施した。
【0032】
ここで、
図5(b)に示すように、第二のカメラ2での撮像画像では、被検査面Wsの小さな凹凸も写り込み、検出したい表面欠陥の境界位置でのコントラスト差が小さくなっている。これに対し、
図5(a)に示すように、第一のカメラ1の撮像画像では、ハレーションによって被検査面Wsの目的とする疵よりも小さな凹凸が飛んでマスキングされて表面欠陥等の疵候補が浮かび上がっている。なお、
図5(a)において、上端側若しくは下端側に灰色の部分が見えているが、この部分は被検査領域Kとされておらず、ハレーションが発生していない部分である。
図5(a)に示す撮像画像では、被検査領域Kは、中央側(確実にハレーションが発生している領域)に設定されている。
【0033】
本実施例では、
図5に示すように、被検査領域Kを搬送方向Hに複数に区分して判定範囲Aを設定している。判定範囲Aは、例えば同図の符号A3のように広く設定すれば高速搬送に対応する上では好ましく、精度を向上させる上では、符号A1に示すように、狭い範囲に設定することが好ましい。また、符号A2に示すように、被検査領域Kの種々の範囲に複数の判定範囲Aを設定することもできる。この例では、同図(a)に示すように、第一のカメラ1において、黒色データ部分が疵候補として疵候補情報が生成された(同図の異物Fに示す部位)。これに対し、同図(b)に示すように、第二のカメラ2においても対応する黒色データ部分が疵候補として疵候補情報が生成された(同図の異物Fに示す部位)。しかし、相互の疵候補情報が同一の判定範囲Aに位置していない。この例では、第一のカメラ1の疵候補情報が判定範囲A1(またはA3)にあるのに対し、第二のカメラ2の疵候補情報は、いずれの判定範囲にも属していない。よって、相互の疵候補情報が同一の判定範囲A(A1またはA3)に位置しないので、この例は、疵候補情報は異物と判断され、当該疵候補情報に対応した疵は有しないと判定される。
【0034】
このように、本実施形態の形鋼の表面疵の検出方法および装置によれば、少なくとも二台のカメラ1、2を用いることにより、スケール除去や水滴除去のための設備を大型・複雑化することなく、形鋼表面のスケールや水滴等の異物と疵を弁別することができる。
本実施形態の装置の採用により、誤検知率の低減にて設備の検査精度(信頼性)が向上し、疵流出の防止によりクレームが削減され、品質をより高いレベルで保証可能となった。
なお、本発明に係る疵検出方法および装置は、上記実施形態ないし実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
【0035】
例えば上記実施形態では、形鋼Wを搬送中に目的以上の深さの表面欠陥を検出する場合を例示しているが、これに限らず、被検査面を静置した状態で疵検出を実施しても良い。また、疵検出装置の照明装置3と第一のカメラ1および第二のカメラ2の組の方を、相対移動させて疵検出のための走査を行うようにしても良い。
また、本発明の適用対象とする被検査面は、形鋼Wの表面に限定されず、種々の鋼材の表面に対しても適用することができる。本発明は、特に鋼とカメラとの間にスケール等の異物が存在した場合や、水滴が付着している可能性のある状態の被検査面の疵検出に有効である。