(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6007777
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月12日
(54)【発明の名称】電縫鋼管の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21C 37/08 20060101AFI20160929BHJP
【FI】
B21C37/08 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-276012(P2012-276012)
(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-117736(P2014-117736A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】軽部 嘉文
(72)【発明者】
【氏名】井口 敬之助
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭57−195531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段のフィンパスロールのフィンで、鋼板のエッジを拘束しながら、フィンパスロールのフランジ間隔を狭めて、鋼板の板幅方向に絞りを加える電縫鋼管の製造方法であって、
金型の曲率半径Rと曲げ角度θ、および板厚tから、板厚中心に必要な絞り量X(任意)を与えた際の外周長絞り量X´を、下記数1式に基づいて各段ごとに算出し、この算出値に基づいて設計されたフィンパスロールを用いて絞り成形することを特徴とする電縫鋼管の製造方法。
【数1】
【請求項2】
電縫鋼管が、(肉厚/外径)×100=7〜25%の電縫鋼管であることを特徴とする請求項1記載の電縫鋼管の製造方法。
【請求項3】
電縫鋼管が、アズロールのシリンダー用鋼管、または、油井管、または、ラインパイプ、または一般配管用鋼管の何れかであることを特徴とする請求項1記載の電縫鋼管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電縫鋼管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電縫鋼管の製造方法として、
図1に示すように、鋼板をロール成形で次第に円形状に近づけていき、その後スクイズロール(以下「SQロール」)直前で高周波電流を流し、円形鋼板のエッジを溶融させてSQロールで当該エッジに圧力をかけて溶接する技術(例えば、特許文献1)が広く採用されている。
【0003】
SQロールの前段に配置された
複数段のフィンパスロール(以下「FPロール」)では、
図2に示すように、鋼板のエッジ1をフィン2で拘束しながら、フィンパスロールのフランジ間隔3を狭めることで、鋼板の板幅方向に絞り(リダクション)が加えられる。これにより、エッジバックリング抑制や、エッジ端面が平滑に磨かれて後工程の電縫溶接性が向上する、といった効果を得ることができる。
【0004】
従来、各段のFPロール(
図1に示す実施形態では4段から構成される)における絞り量の管理は、FPロールの各段出側で鋼板の外周長を測定し、その測定値を基準として行われていた。
【0005】
しかし、鋼板に曲げを加えた場合、
図3に示すように、「オイラー・ベルヌーイの仮定」に従って、外周長における「伸び」が大きくなり、特に、板厚の厚い鋼板ほど、その傾向が顕著となる。
【0006】
このため、板厚の肉厚による外周長伸びの変動が考慮されていない従来のリダクション設計では、同一の絞り量を加えた場合であっても、
図4および
図5に示すように、板厚の肉厚によって板厚中心の実際の絞り量は異なり、板厚の厚い鋼板ほど、本来成形に必要な絞り量以上に、過剰な絞り量が与えられる傾向があった。
【0007】
過剰な絞り量が与えられると、
図6に示すように、フィンパスの際にエッジ1近傍で、肉厚が不均一となる現象が生じ、電縫鋼管の内径真円度が悪化する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−289446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は前記問題を解決し、フィンパスロールを用いたロール成形の際に、鋼板のエッジ近傍で、肉厚が不均一となる現象を回避し、内径真円度の良い電縫鋼管の
製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の電縫鋼管の製造方法は、
複数段のフィンパスロールのフィンで、鋼板のエッジを拘束しながら、フィンパスロールのフランジ間隔を狭めて、鋼板の板幅方向に絞りを加える電縫鋼管の製造方法であって、
金型の曲率半径Rと曲げ角度θ、および板厚tから、板厚中心に必要な絞り量X(任意)を与えた際の外周長絞り量X´を、下記数1式に基づいて各段ごとに算出し、この算出値に基づいて設計されたフィンパスロールを用いて絞り成形することを特徴とするものである。
【数1】
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電縫鋼管の製造方法において、電縫鋼管が、(肉厚/外径)×100=7〜25%の電縫鋼管であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の電縫鋼管の製造方法において、電縫鋼管が、アズロールのシリンダー用鋼管、または、油井管、または、ラインパイプ、または一般配管用鋼管の何れかであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
背景技術の欄に記載のように、板厚の肉厚による外周長伸びの変動が考慮されていない従来のリダクション設計では、同一の絞り量を加えた場合であっても、
図4および
図5に示すように、板厚の肉厚によって板厚中心の実際の絞り量は異なり、板厚の厚い鋼板ほど、本来成形に必要な絞り量以上に、過剰な絞り量が与えられる傾向があったが、本発明では、板厚の肉厚による外周長伸びの変動が考慮された上記数1式に基づいて
各段のフィンパスロールにおける絞り量を決定するため、板厚の肉厚ごとに適切な絞り量が設定され、過剰な絞りを抑制することができる。下記式は、板がフィンパス金型に密着している前提で、板厚中心に必要な絞り量X(任意)を与えた際の外周長絞り量X´を、金型の曲率半径Rと曲げ角度θ、および板厚tから算出するものである。
【0016】
請求項2記載の発明のように、上記式で絞り量を決定し、(肉厚/外径)×100=7〜25%の電縫鋼管を製造した場合、エッジ近傍における増肉量を±5%に抑制することができる。ここで、増肉量とは上記数2式で定義される。
[数2]
増肉量 [%]={(増肉部平均厚−平均母材厚)/平均母材厚} ×100
増肉部平均厚:
図7における溶接部から円周方向両側それぞれに平均母材厚の3倍の距離の範囲内の増肉部最大肉厚ta、tbの平均で(ta+tb)/2
平均母材厚:
図7における電縫溶接部を0°として、45°位置から315℃位置まで22.5°刻みで測定したt1〜t13の合計の平均
尚、ta、tb、t1〜t13の測定は製品となった電縫鋼管の片側管端でそれぞれの位置をマイクロメーターにて測定する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】フィンパスロールにおけるロール成形の説明図である。
【
図3】鋼板の周長変化が、板厚方向ごとに異なることを説明する図である。
【
図4】板厚15.3mmの厚肉鋼板を、4段構成のFPロールでロール成形し、各段の出側で鋼板の外周長と板厚中心周長を測定した結果を示す図である。
【
図5】板厚3.0mmの薄肉鋼板を、4段構成のFPロールでロール成形し、各段の出側で鋼板の外周長と板厚中心周長を測定した結果を示す図である。
【
図6】過剰な絞り量に起因する増肉現象の説明図である。
【
図8】本発明に用いる式の導出過程を説明する図である。
【
図9】本発明による増肉量削減効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1に示すように、鋼板をロール成形で次第に円形状に近づけていき、その後SQロール直前で高周波電流を流し、円形鋼板のエッジを溶融させてSQロールで当該エッジに圧力をかけて溶接する点は従来と同様である。
【0019】
従来、
複数段のFPロールにおけるリダクション設計は、FPロールの各段出側で鋼板の外周長を測定し、その測定値を基準として行われており、板厚の肉厚による外周長伸びの変動が考慮されていなかったため、同一の絞り量を加えた場合であっても、
図4、
図5に示すように、板厚の肉厚によって板厚中心の実際の絞り量は異なり、板厚の厚い鋼板ほど、本来成形に必要な絞り量以上に、過剰な絞り量が与えられる傾向があった。
【0020】
板厚中心の周長を測定し、その測定値を基準としてリダクション設計を行うことで、絞り量を適切に与えることは可能となるが、実操業で板厚中心周長の測定は困難である。そこで、本発明では、外周長伸びの変動を考慮した成形を行う為、板がフィンパス金型に密着している前提で、板厚中心に必要な絞り量X(任意)を与えた際の外周長絞り量X´を、金型の曲率半径Rと曲げ角度θ、および板厚tから上記数1式により算出し、
この算出値に基づいて設計されたフィンパスロールを用いて絞り成形を行う。
【0021】
図8には、上記式の導出過程の説明図を示している。
【0022】
上記数1式は、「(n段目)外周長絞り量(X´
n)=(n段目)出側外周長−(n−1段目)出側外周長・・・(数2) 」で表されることに着目し、更に、「(n段目)出側外周長=(n段目)出側狙い板厚中心周長+(n段目)金型の外周長と板厚中心周長の差・・・(数3) 」および「(n−1段目)出側外周長=(n−1段目)出側狙い板厚中心周長+(n−1段目)金型の外周長と板厚中心周長の差 =(n段目)出側狙い板厚中心周長−(n段目)板厚中心長絞り量(Xn) +(n−1段目)金型の外周長と板厚中心周長の差・・・(数4) 」で表されることから、(数3)(数4)を(数2)に代入して導出されたものであり、上記数1式は、「(n段目)外周長絞り量(X´n)=(n段目)板厚中心長絞り量(Xn)+(n段目)金型の外周長と板厚中心周長の差−(n−1段目)金型の外周長と板厚中心周長の差」を意味するものである。
【0023】
このようにして製造された本発明の電縫鋼管は真円度に優れている。即ち、上記数2式による増肉量[%]が±5%以内に納まる。これは従来の電縫鋼管の+10%に比較し、大幅な改善となり、一般配管用は勿論、アズロールのシリンダー用鋼管、または、油井管、または、ラインパイプ用に適している。
【実施例】
【0024】
板厚15.3mm、10.0mm、3.0mmの3種類の鋼板を用いて、フィンパスロールにおけるリダクション設計を、板厚の肉厚による外周長伸びの変動が考慮されていない従来のリダクション設計(
段落0014に記載のフィンパスロールの各段出側で鋼板の外周長を測定し、その測定値を基準とする従来方法)、および、板厚の肉厚による外周長伸びの変動を考慮した本発明のリダクション設計(板厚中心に必要な絞り量X(任意)を与えた際の外周長絞り量X´を、金型の曲率半径Rと曲げ角度θ、および板厚tから上記数1式により算出する本発明方法)で行い、それぞれの設計通り製作されたフィンパスロールを用いて鋼板を絞り成形し、電縫鋼管を製造した。製造された各々の電縫鋼管について、増肉量[%]を調べた結果を示すグラフを
図9に示している。
【0025】
図9に示すように、本発明の方法によれば、全ての板厚において、増肉が抑制されること、特に、板厚の厚い鋼板において、その効果が顕著となることが確認された。
【符号の説明】
【0026】
1 エッジ
2 フィン
3 フランジ間隔