特許第6007992号(P6007992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6007992ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6007992
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/14 20060101AFI20161006BHJP
   C08F 14/22 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   C08J3/14CEW
   C08F14/22
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-556285(P2014-556285)
(86)(22)【出願日】2014年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2014079541
(87)【国際公開番号】WO2015083489
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2016年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-250091(P2013-250091)
(32)【優先日】2013年12月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-131237(P2014-131237)
(32)【優先日】2014年6月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊也
(72)【発明者】
【氏名】牧田 圭
(72)【発明者】
【氏名】松田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝弥
(72)【発明者】
【氏名】近藤 啓之
(72)【発明者】
【氏名】越後 裕司
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−025836(JP,A)
【文献】 特表2005−513223(JP,A)
【文献】 特表2009−504866(JP,A)
【文献】 特開2013−177532(JP,A)
【文献】 特開2011−177614(JP,A)
【文献】 特開2008−036202(JP,A)
【文献】 特開平08−134441(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/079936(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28
C08F 14/22
114/22
214/22
C08L 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒と水の合計量100質量%に対し、75〜99質量%の有機溶媒と1〜25質量%の水と0.5〜15質量%のポリフッ化ビニリデン樹脂を含む溶液をポリフッ化ビニリデン樹脂の貧溶媒に添加してポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を析出させる工程(a1工程)、またはフラッシュ晶析により前記溶液からポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を析出させる工程(a2工程)を実施することを特徴とするポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
a1工程およびa2工程を実施する、請求項1に記載のポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
a1工程を連続的に実施する、請求項1または2に記載のポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記有機溶媒が、N−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびアセトニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が、N−メチル−2−ピロリジノンまたはアセトニトリルである、請求項4に記載のポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記ポリフッ化ビニリデン樹脂の貧溶媒が、水、水とアセトニトリルの混合物、水とメタノールの混合物、水とエタノールの混合物および水とプロパノールの混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
フッ化ビニリデンの単独重合体、または、フッ化ビニリデンと他の単量体成分の共重合体であって構成単位の合計100mol%に対し前記単量体成分を30mol%以下の割合で含有するものから構成され、平均一次粒径が30nm以上300nm未満であり、変動係数が20%以下であることを特徴とするポリフッ化ビニリデン樹脂粒子。
【請求項8】
界面活性剤を実質的に含まない、請求項7に記載のポリフッ化ビニリデン樹脂粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフッ化ビニリデン樹脂粒子、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフッ化ビニリデン樹脂(以下、「PVDF樹脂」と略すことがある。)からなる粒子は優れた耐候性、耐汚染性、耐溶剤性、耐水性、耐湿性などの特性を有しており、印刷機内の防汚材料、トナー用途、耐候性や耐水性塗料用樹脂として好適に利用される。
【0003】
PVDF樹脂粒子の製造方法としては、含フッ素樹脂を極性有機溶媒中に溶解させた後、その溶液を水中に投入することにより粒径数百μm〜数mmの粒子を作る方法(特許文献1)、フッ素共重合体等を含む塗料原液溶液を噴霧乾燥して粒径数10μmの粒子を得る方法(特許文献2)、フッ素系界面活性剤とノニオン系界面活性剤との共存下にビニリデンフルオロライド単量体、またはビニリデンフルオロライドを含む単量体混合物を乳化重合させ、粒径200nm以下のPVDF樹脂粒子を含む水性分散液を製造する方法(特許文献3)などが報告されている。
【0004】
このようにいくつかのPVDF樹脂粒子の製造方法が提案されているが、単にPVDF樹脂を良溶媒に溶解し、その溶液を水などの貧溶媒へ注入する方法、または噴霧乾燥する方法では、数10μm〜数mmの粒子しか得られない。また、200nm以下の粒子を得るには、界面活性剤の存在下、ビニリデンフルオロライド単量体を乳化重合しなければならず、そのような粒子は界面活性剤を必要とする事から、真に純粋なPVDF樹脂粒子を入手するためには、必ずしも十分なものではなかった。特に、その純度を必要とする医療分野、電子情報分野および新エネルギーで重要な次世代電池の分野では界面活性剤フリーということは、最も重要な課題のひとつである。
【0005】
電子情報材料、医療材料等に乳化重合で製造したPVDF樹脂粒子を用いると、場合によっては界面活性剤が性能に悪影響を及ぼすことがあるので、界面活性剤を用いない粒子製造法としてソープフリー乳化重合が開発され(非特許文献1,2)、液晶スペーサー、導電性粒子、複写トナー、医療検査用担体等に用いられている。しかし、PVDF樹脂粒子をソープフリー乳化重合で合成した例は、未だ報告されていない。
【0006】
一方、電子情報材料分野に用いるコーティング材、フィルム等では薄膜化が加速しており、これらの分野で使用される薄膜形成には微粒子を前駆体として用いることが有効であることが知られており、それに用いる粒子の粒径が1ミクロン以下であることが求められている。
【0007】
このような状況から界面活性剤を含まず、簡易で、且つ大量に粒径の揃った粒径1ミクロン以下のPVDF樹脂粒子を製造する方法の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−177614号公報
【特許文献2】特開2003−82295号公報
【特許文献3】特開平7−90153号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本ゴム協会誌 2006 (79) 61
【非特許文献2】「ポリマー微粒子の最新技術動向」2008,(株)東レリサーチセンター
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、界面活性剤を含まず、工業的に実施でき、かつ簡便な操作でPVDF樹脂粒子を製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、驚くべきことに水を含む有機溶媒のPVDF樹脂溶液を、界面活性剤を実質的に含まないPVDF樹脂の貧溶媒へ添加し、またはフラッシュ晶析することにより、微細で、かつ粒径の揃ったPVDF樹脂粒子が安定して得られることを見出し、本発明に至った。
【0012】
即ち、本発明は、有機溶媒と水の合計量100質量%に対し、75〜99質量%の有機溶媒と1〜25質量%の水と0.5〜15質量%のポリフッ化ビニリデン樹脂を含む溶液をポリフッ化ビニリデン樹脂の貧溶媒に添加してポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を析出させる工程(a1工程)、またはフラッシュ晶析により前記溶液からポリフッ化ビニリデン樹脂粒子を析出させる工程(a2工程)を実施することを特徴とするポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の製造方法である。
【0013】
本発明において、a1工程およびa2工程を実施してもよい。例えばa2工程において、前記溶液をPVDF樹脂の貧溶媒中に添加することでフラッシュ晶析させることにより、a1工程とa2工程を同時に実施してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明を用いれば、工業的に安定して入手することが困難であった界面活性剤を実質的に含まない平均1次粒径300nm以下、特に200nm以下のPVDF樹脂粒子を簡便かつ安定的に製造することができ、広く産業上有用な材料が提供できる。本発明により得られたPVDF樹脂粒子は、スラッシュ成形用材料、ラピッドプロトタイピング・ラピッドマニュファクチャリング用材料、プラスティックゾル用ペーストレジン、粉ブロッキング材、粉体の流動性改良材、潤滑剤、ゴム配合剤、研磨剤、増粘剤、濾剤および濾過助剤、ゲル化剤、凝集剤、塗料用添加剤、吸油剤、離型剤、プラスティックフィルム・シートの滑り性向上剤、ブロッキング防止剤、光沢調節剤、つや消し仕上げ剤、光拡散剤、表面高硬度向上剤、バインダー材、接着剤、コート剤、半導体や液晶製造装置のバルブやキャップ、ガイドレール、ローラー、ボルト、ライニング、靭性向上材等の各種改質剤、液晶表示装置用スペーサー、クロマトグラフィー用充填材、香料・農薬の保持剤、化学反応用触媒およびその担持体、ガス吸着剤、セラミック加工用焼結材、測定・分析用の標準粒子、食品工業分野用の粒子、粉体塗料用材料、電子写真現像用トナー、リチウム2次電池セパレータ用接着剤などに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施態様に係る方法で製造したPVDF樹脂粒子を示す走査型電子顕微鏡画像である。
図2】従来技術に係る方法で製造したPVDF樹脂粒子の走査型電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
[原料のPVDF樹脂]
本明細書におけるPVDF樹脂とは、フッ化ビニリデンを重合して得られる樹脂のことを指し、下記一般式(1)で表されるものをいう。
【0018】
【化1】

【0019】
PVDF樹脂としては、市販品を使用することができ、具体的な市販されているPVDF樹脂としては、例えば、KFポリマーW#1100、#1300、#1700、#7200、#7300、#8500、#9100、#9200、#9300((株)クレハ社製)、カイナー721、741、761、461、301F、HSV900、カイナーフレックス2851、2801、2821(アルケマ(株)社製)、ソレフ1013、1015、21216、31508、6020(ソルベイスペシャリティポリマーズジャパン(株)社製)、シグマアルドリッチジャパン合同会社製試薬等が挙げられる。
【0020】
また、PVDF樹脂は、ポリフッ化ビニリデンの単独重合体であってもよいし、あるいはPVDF樹脂の特性を損なわない範囲において、ポリフッ化ビニリデンを含有しない他の単量体成分との共重合体でもよい。ポリフッ化ビニリデンを含有しない他の単量体成分としては、例示するならば、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエンなどの炭化水素系ビニル単量体、フッ化エチレン、三フッ化エチレン、四フッ化エチレンなどのフッ素系ビニル単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメラクリレート、アクリロイロキシエチルコハク酸、メタクリロイロキシエチルコハク酸、アクリロイロキシエチルフタル酸、メタクリロイロキシエチルフタル酸、トリフルオロメチルアクリル酸などのカルボキシルエステル基を含有する単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、などのカルボキシル基を含有する単量体、酢酸ビニルおよびそのケン化物、プロピオン酸ビニルおよびそのケン化物、酪酸ビニルおよびそのケン化物などとの共重合体であってもよい。中でも、PVDF樹脂の接着性を向上させる観点からカルボキシル基を有する単量体成分である2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメラクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチルなどが好ましく、工業的な入手のしやすさから、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチルなどがさらに好ましく、特に好ましくは、マレイン酸、マレイン酸モノメチルなどである。
【0021】
このような共重合体の共重合量は、PVDF樹脂の特性を損なわない範囲であればよいが、構成単位の合計を100mol%としたとき、30mol%以下であり、好ましくは、25mol%以下であり、より好ましくは20mol%以下であり、さらに好ましくは、10mol%以下であり、特に好ましくは5mol%以下である。
【0022】
PVDF樹脂の重量平均分子量の下限は1,000以上であり、好ましくは5,000以上であり、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは、50,000以上であり、特に好ましくは、100,000以上である。
【0023】
また、PVDF樹脂の重量平均分子量は10,000,000以下であり、好ましくは、5,000,000以下であり、さらに好ましくは3,000,000以下である。
【0024】
なお、本明細書におけるPVDF樹脂の重量平均分子量とは、ジメチルホルムアミドを溶媒に用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレンに換算した重量平均分子量を指す。
【0025】
PVDF樹脂としては、乳化重合、沈殿重合、懸濁重合など従前公知の方法で製造されたものが挙げられるが、特に界面活性剤の使用量を抑制できる観点から、沈殿重合によって製造されたものが好ましい。PVDF樹脂の形態は特に問わないが、具体的に例示するならば粉体、顆粒、ペレット等があげられる。後述する操作性及び溶解に要する時間を短縮させる観点から、特に粉末のPVDF樹脂が好ましい。
【0026】
[PVDF樹脂粒子の製造]
本実施態様におけるPVDF樹脂粒子は、水と混ざる有機溶媒と水を含むPVDF樹脂溶液を下記(a1工程)または(a2工程)のいずれかの工程を経て製造することができる。
【0027】
[析出工程]
(a1工程)界面活性剤を実質的に含まない貧溶媒へPVDF樹脂溶液を添加してPVDF樹脂粒子を析出させる工程
【0028】
(a2工程)界面活性剤を実質的に含まない貧溶媒へPVDF樹脂溶解液をフラッシュ晶析してPVDF樹脂粒子を析出させる工程
【0029】
まず、PVDF樹脂を有機溶媒に溶解させる。ここで、目的とするPVDF樹脂粒子を水溶性塗料等に使用する場合等、共存する無機イオンによる装置の腐食等を防止するために、無機イオンを含有していない粉末PVDF樹脂を使用することが特に好ましい。
【0030】
PVDF樹脂の溶解に使用する有機溶媒は、PVDF樹脂を溶解する溶媒で、水と混じり合う溶媒であればよい。具体的には、N−メチル−2−ピロリジノン(以下、NMPと略することもある)等のN−アルキルピロリドン類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下、DMIと略すこともある)等のウレア類、N、N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略すこともある)、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略することもある)等の鎖状アミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略することもある)、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン等のイオウ酸化物系極性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒の中から少なくとも一種選ばれる溶媒が挙げられる。中でも、溶媒の安定性と工業的取り扱いのしやすさから、NMP、DMI、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリルが好ましく、より好ましくはNMP、アセトニトリルが良い。
【0031】
溶解槽の雰囲気は、PVDF樹脂の分解、劣化を抑制するため、更には安全に作業を進めるために酸素ガス濃度を低くする方が好ましく、不活性ガス雰囲気下に溶解槽を配置することが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、二酸化炭素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、経済性、入手容易性を勘案して、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスが好ましく、特に好ましくは窒素ガスあるいはアルゴンガスが用いられる。
【0032】
溶解方法は特に限定しないが、PVDF樹脂溶液を作る場合、所定の容器にPVDF樹脂、有機溶媒と水を入れ、撹拌しながら溶解する。常温で溶解しない場合、加熱することにより溶解させる。
【0033】
PVDF樹脂を有機溶媒に溶解した後、水を添加しても良い。溶解後に水を添加する方法では、所定の容器でPVDF樹脂溶液を作製した後、PVDF樹脂溶液に水を添加する。水の添加には、送液ポンプ、駒込ピペット等を用いることができるが、一度に大量の水を入れるとPVDF樹脂が析出し、PVDF樹脂の溶解に長時間を要するので、徐々に水を加えることが好ましい。粒径の揃ったPVDF樹脂粒子を製造するにはPVDF樹脂を溶媒に完全溶解させてから貧溶媒へ添加、もしくはフラッシュ晶析して析出させることが好ましいが、未溶解のPVDF樹脂が存在していてもよい。
【0034】
添加する水量は、溶解させるPVDF樹脂濃度、有機溶媒の種類によって異なるが、有機溶媒質量の0.5〜40質量%、好ましくは、1〜25質量%である。水の量が少なすぎると異形粒子が生成し、水の量が多すぎるとPVDF樹脂が析出する。
【0035】
溶解温度は使用する溶媒の種類やPVDF樹脂の濃度によって異なるが、通常は常温〜200℃、好ましくは常温〜100℃、または有機溶媒の沸点以下である。
【0036】
溶解時間は溶媒の種類、PVDF樹脂の濃度、溶解温度によって異なるが、通常、5分〜50時間の範囲であり、好ましくは、10分〜40時間の範囲である。
【0037】
PVDF濃度が高いと、PVDF樹脂溶液の貧溶媒へ添加して粒子を析出させる際に粒子同士の融着等が生じ、粒径の小さな粒子や粒径の揃った粒子が得られない恐れがある。
【0038】
そのため、PVDF樹脂溶液を界面活性剤の含まないPVDF樹脂の貧溶媒へ添加する場合のPVDF樹脂の使用量は、通常は有機溶媒、水とPVDF樹脂の合計100質量部に対してPVDF樹脂15質量部以下とし、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。
【0039】
上記範囲であれば、工業生産に適用可能である。本実施態様においては前記溶媒にPVDF樹脂を溶解させた後、PVDF樹脂溶液を後述する析出工程に供する。
【0040】
[析出工程]
[a1工程]
a1工程では、界面活性剤を含まないPVDF樹脂粒子の貧溶媒へPVDF樹脂溶液を添加してPVDF樹脂粒子を析出させる。
【0041】
PVDF樹脂溶液をPVDF樹脂の貧溶媒へ添加するにあたっては、PVDF樹脂溶液を入れた容器からPVDF樹脂の貧溶媒を入れた容器(以下「受槽」と称することがある)に連続的に注入しても良いし、滴下しても良い。また、PVDF樹脂溶液を貧溶媒の上から気相を介して添加しても良いが、微細で粒径の揃った粒子が得られる点から直接貧溶媒中に入れることが好ましい。
【0042】
PVDF樹脂と貧溶媒を接触させてPVDF樹脂粒子を作製する方法には、貧溶媒を入れた受槽へPVDF樹脂溶液を添加して粒子化液を作製した後、粒子化液を抜き出し、次工程に供する方法(回分式)と連続流通式(単に連続式と略することがある)の2つの方法がある。連続流通式に用いる反応器には、連続槽型反応器(continuous stirred tank reactor、略称:CSTR)と管型反応器(plug flow reactor、略称:PFR)とがある。PVDF樹脂の粒子化には、いずれの反応器も適応可能である。
【0043】
CSTRを用いる方法は、受槽(連続式では反応器ということがある)に貧溶媒を入れ、PVDF樹脂溶液を添加してPVDF樹脂粒子を作製した後、続いて、その微粒子化液にPVDF樹脂溶液と貧溶媒を同時に滴下しつつ、受槽からPVDF樹脂の粒子化液を連続的に抜き出して、連続的に粒子化する方法である。また、回分式により作製したPVDF樹脂の粒子化液に、PVDF樹脂溶液と貧溶媒を同時に滴下しつつ、受槽からPVDF樹脂の粒子化液を連続的に抜き出して粒子化液を作製することもできる。
【0044】
CSTRを用いる場合、PVDF樹脂溶液と貧溶媒を同時に滴下することが必要である。貧溶媒の滴下速度に対するPVDF樹脂溶液滴下速度の比は、PVDF樹脂粒子が生成できれば良く、特に限定されないが、生産性の観点からPVDF樹脂溶液滴下速度に対する貧溶媒の滴下速度比は、0.1〜100の間にあることが好ましく、0.2〜50の間にあることがより好ましい。
【0045】
また、受槽(反応器)からの粒子化液抜き出し流量に対する受槽内の粒子化液重量の比を滞留時間とすると、滞留時間は、微細で粒径の揃った粒子が得られれば特に限定されないが、1秒間から10時間の間が好ましく、1分間〜1時間の間がより好ましい。
【0046】
受槽には粒子化液の均一性を保持するために混合装置を設置しても良い。混合装置の例として攪拌羽や2軸混合機、ホモジナイザー、超音波照射等を挙げることができる。
【0047】
PFRを用いる方法は、PVDF樹脂溶液と貧溶媒を配管の中へ一定速度で通液して配管中でPVDF樹脂溶液と貧溶媒を混合させて粒子化を行い、連続的に粒子化液を取り出す方法で、種々の配管を使用することができる。例えば、2つの配管を使用する場合、PVDF樹脂溶液を内管、貧溶媒を外管に一定速度で通液し、外管中でPVDF樹脂溶液と貧溶媒を混合させて粒子化することもできる。また、PVDF樹脂溶液を外管、貧溶媒を内管に通液しても良い。
【0048】
1つの配管を用いて連続粒子化する場合、例えば、T字型配管では、PVDF樹脂溶液の流れに対して90度の方向から貧溶媒を通液してPVDF樹脂溶液と貧溶媒を接触させて粒子化することもできる。
【0049】
種々の配管を用いてPVDF樹脂溶液と貧溶媒を混合させて連続的に粒子化することができるので、PFRの方法は、上記に限定されるものではない。
【0050】
PFRを用いる場合、PVDF樹脂溶液通液速度と貧溶媒の通液速度は、PVDF樹脂粒子が生成できれば良く、特に限定されないが、生産性の観点から貧溶媒の通液速度に対するPVDF樹脂溶液通液速度の比は、0.1〜100の間にあることが好ましく、0.2〜50の間にあることがより好ましい。
【0051】
また、PVDF樹脂溶液と貧溶媒の混合部分は配管のみでも良く、管状混合装置を設置しても良い。管状混合装置として上記混合装置やスタティックミキサー等の静的混合構造物を格納した管状混合装置等を挙げることができる。
【0052】
PVDF樹脂溶液と貧溶媒の混合時間は上記滞留時間と同じ範囲内であれば良い。配管の内径はPVDF樹脂溶液と貧溶媒が混合すれば良く、特に限定されないが、生産性の観点から0.1mm〜1mの間にあることが好ましく、1mm〜1mの間にあることがより好ましい。
【0053】
2つの配管を内管と外管として用いる場合、内管径と外管径の比は、粒子化液ができれば特に限定しないが、外管径/内管径=1.1〜500の間が好ましく、外管径/内管径=1.1〜100の間がより好ましい。
【0054】
PVDF樹脂粒子の貧溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール系溶媒、水などが挙げられ、好ましくは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール系溶媒、水などであり、特に好ましくは、メタノール、エタノールおよび水である。
【0055】
また、PVDF樹脂粒子を貧溶媒中に均一に分散させる観点からは、PVDF樹脂の貧溶媒は溶解に使用する有機溶媒と均一に混ざり合う溶媒であることが好ましい。ここで均一に混ざり合うとは、2つ以上の溶媒を混合して1日静置しても界面が現れないことをいう。例えば、水に対しては、NMP、DMF、DMAc、アセトン、DMSO、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール、エタノール等が均一に混ざり合う溶媒として挙げることができる。
【0056】
また、PVDF樹脂の貧溶媒は、溶解で使用する有機溶媒と均一に混ざり合うならば、単一の溶媒を用いてもよいし、2種類以上の溶媒を混合して用いてもよいが、特に微細かつ粒径の揃った粒子が得られやすい点から、水−アルコール類、水―ニトリル類の混合溶媒等、水を含む混合溶媒を用いるのが好ましい。
【0057】
PVDF樹脂の貧溶媒の使用量は特に限定しないが、溶解に用いる溶媒1質量部に対して0.1〜100質量部の範囲を例示することができ、好ましくは0.1〜50質量部、更に好ましくは0.1〜10質量部である。
【0058】
析出工程において使用されるPVDF樹脂の貧溶媒は、界面活性剤を実質的に含まないものである。粒子界面活性剤は全く含まないことが最も好ましいが、本発明の効果を損なわない程度で混入していても構わない。具体的には、PVDF樹脂の質量に対し、界面活性剤の混入割合を3質量%以下にとどめるべきであり、可能な限り1質量%未満にとどめるべきである。
【0059】
PVDF樹脂の貧溶媒中にPVDF樹脂溶液を添加する場合の受槽温度は、0℃以上で溶媒の沸点以下まで設定できるが、用いる溶媒によっては、粒子同士の融着が起こり、粒子が得られない場合があるので、添加直前の温度として0〜40℃が好ましい。この添加によりPVDF樹脂溶液からPVDF樹脂粒子が析出し、PVDF樹脂粒子の分散した液もしくは懸濁した液が得られる。また、PVDF樹脂溶液を加える際に、PVDF樹脂の貧溶媒を攪拌することが好ましい。
【0060】
[a2工程]
a2工程では、溶解させたPVDF樹脂溶液をフラッシュ晶析してPVDF樹脂粒子を析出させる。
【0061】
フラッシュ晶析とは、PVDF樹脂溶液を急速に固化・結晶化させる方法のことをいい、より具体的には、加熱・加圧下、または加圧下にある上記溶液を、溶解に用いた有機溶媒の沸点以下(常温以下でも良い)加圧されている圧力以下(減圧下でも良い)、または加圧されている圧力以下(減圧下でも良い)の他の容器(以下受槽と称する場合もある)中にノズルを介して噴出させて移液し、晶析させる方法である。
【0062】
フラッシュ晶析する際、貧溶媒中に向けてPVDF樹脂溶液を噴出させることが好ましい。PVDF樹脂溶液が噴出するノズルの先端を受槽側の貧溶媒中に入れた状態でフラッシュさせることが好ましいが、ノズル先端を貧溶媒からから離し、気相を介して貧溶媒中にフラッシュさせてもよい。
【0063】
具体的に説明すると、加熱・加圧下、または加圧下に保持した容器からPVDF樹脂溶液を大気圧下(減圧下でもよい)の受槽に向けて噴出させることによりフラッシュ晶析を行うことが好ましい。例えば前記溶解工程において、オートクレーブ等の耐圧容器中で加熱・溶解させると容器内は加熱による自製圧により加圧状態となる(窒素等の不活性ガスでさらに加圧してもよい)。この状態から放圧して大気圧下の受槽に放出させることにより、よりいっそう簡便に行うことができる。また、常温で溶解させた場合、溶解槽を任意の圧力に加圧し、PVDF樹脂の貧溶媒中に向けてフラッシュ晶析することによりPVDF樹脂粒子を得ることができる。
【0064】
貧溶媒中にフラッシュ晶析する場合に用いる貧溶媒としては、特に制限はなく、a1工程で説明した貧溶媒と同様のものを用いることができる。
【0065】
PVDF樹脂の貧溶媒の使用量は特に限定しないが、溶解に用いた溶媒1質量部に対して0.1〜100質量部の範囲を例示することができ、好ましくは0.2〜50質量部、更に好ましくは0.3〜10質量部である。
【0066】
フラッシュ晶析時の操作条件としては、通常、常温〜200℃、好ましくは常温〜100℃の範囲で溶解させた溶液を、後述する範囲で加圧されている圧力以下、あるいは減圧下の容器に1段でフラッシュ晶析する方法、または溶解液を入れた槽内よりも圧力の低い容器に多段でフラッシュ晶析する方法等が採用できる。具体的には、例えば前記溶解工程において、オートクレーブ等の耐圧容器中で加熱・溶解させると、容器内は加熱による自製圧により加圧状態となる(窒素等の不活性ガスでさらに加圧してもよい)。この加圧状態とした溶解液を、PVDF樹脂の貧溶媒を入れた大気圧の受槽に向けてフラッシュさせるか、減圧下の受槽に向けてフラッシュさせる。また、オートクレーブ等の耐圧容器中で加熱しないで溶解させた場合、任意の圧力に加圧して加圧状態とした溶解液を、PVDF樹脂の貧溶媒を入れた大気圧の受槽に向けてフラッシュさせるか、減圧下の受槽に向けてフラッシュさせる。フラッシュ晶析する溶解液の圧力(ゲージ圧)は0.2〜4MPaであることが好ましい。この環境にある溶解液を大気圧下の受槽に向けてフラッシュ晶析することが好ましい。
【0067】
受槽の温度は、受槽に入れるPVDF樹脂の貧溶媒により異なるが、PVDF樹脂の貧溶媒が凝固しない温度〜50℃、具体的には水の場合、フラッシュ晶析直前の温度として0〜50℃が好ましい。
【0068】
フラッシュ晶析方法では、溶解槽からの連結管出口を受槽の大気中、またはPVDF樹脂の貧溶媒中に入れ、フラッシュ晶析する方法が挙げられるが、貧溶媒中に入れる方がより微細なPVDF樹脂粒子が得られるので好ましい。
【0069】
上記析出工程(a1工程)、(a2工程)により得られるPVDF樹脂粒子は、分散液もしくは懸濁液の状態で得ることができる。以下、この状態の分散液もしくは懸濁液をフラッシュ液と称することがある。なお、この際、仕込んだPVDF樹脂の未溶解分等の粗粒を含む場合には、ろ過等により除くことも可能である。
【0070】
本実施態様の方法を採用することにより、界面活性剤を含まず、微細で、粒度の揃った粒子を安定的に製造することができる。
【0071】
[ろ過・単離工程]
PVDF樹脂粒子を単離する方法としては、ろ過、遠心分離、遠心ろ過等の従来公知の固液分離方法で行うことができるが、平均1次粒径300nm以下のような微細なPVDF樹脂粒子を固液分離操作で効率よく単離するためには、凝集によって見掛け上の粒径を増大させた後、ろ過や遠心分離等の固液分離操作を行うことが望ましい。凝集によって見掛け上の粒径を増大させる方法としては、加熱することにより凝集させる方法、塩析等の凝集剤を用いた凝集法などを用いることができるが、これらの凝集法のうち、塩析を用いる方法が、短時間で凝集体を得ることができることから好ましい。このときの凝集体の平均粒径としては5〜100μmであることが好ましい。
【0072】
塩析を用いた凝集法では、例えば、塩化ナトリウム等の無機塩をPVDF樹脂粒子1質量部に対して0.01〜1000質量部、好ましくは0.05〜500質量部程度を加えることにより粒径の大きな凝集体を得ることができる。具体的には、上記分散液もしくは懸濁液中に直接無機塩を添加する、あるいは、上記無機塩の0.1〜20質量部の溶液を添加する等の方法が挙げられる。無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム等の無機塩が挙げられる。無機塩を溶解させる溶媒としては、水が好ましい。粒子に添加する無機塩の量はPVDF樹脂粒子1質量部に対して0.05質量部以上でかつ、PVDF樹脂粒子を析出させる貧溶媒への飽和溶解量以下が望ましい。本実施態様の方法で得られたPVDF樹脂粒子は、このような方法で凝集させることにより固液分離が容易となる。
【0073】
上記固液分離の方法としては、ろ過、遠心分離等の方法が挙げられる。ろ過や遠心分離の際にはメンブレンフィルター(ろ過)やろ布(ろ過、遠心分離)などを使用できる。フィルターの目開きとしては、得ようとするPVDF樹脂粒子の粒度に応じて適宜決定されるが、メンブレンフィルターの場合、通常0.1〜50μm程度、ろ布の場合、124.5Paでの通気度が5cm/cm・sec 以下のものが使用できる。
【0074】
かくして得られるPVDF樹脂粒子はそのままで、もしくは所望の溶媒に分散させて分散液とし、あるいはその他の媒体に再分散させて複合体とし、種々の用途に用いることが可能である。
【0075】
かくして得られるPVDF樹脂粒子は、界面活性剤を実質的に含まない平均一次粒径が300nm以下、より好ましい態様においては200nm以下の粒子である。下限としては30nm程度である。また、粒度の揃った粒子が得られ、通常変動係数が40%以下、好ましい態様においては30%以下であり、より好ましい態様においては、20%以下であり、さらに好ましい態様においては、18%以下であり、特に好ましい態様では15%以下であるPVDF樹脂粒子が得られる。
【0076】
なお、ここでいうPVDF樹脂微粒子の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡写真から無作為に選択した100個の粒子の最大長を測定し、その算術平均を求めることにより決定するものである。
【0077】
また、本実施態様におけるPVDF樹脂粒子の粒度の均一性を示す変動係数(CV)は、平均一次粒径を算出する際に測長したデータから、下記の式(1)〜式(3)により求めた。
【0078】
【数1】
【0079】
PVDF樹脂粒子は、中実であってもよいし中空であってもよいが、産業上の用途という観点からは、中実であることが好ましい。また、本実施態様のPVDF樹脂粒子が中実であることは、透過型電子顕微鏡の微粒子断面観察にて確認することができる。
【0080】
本実施態様におけるPVDF樹脂粒子の特徴は、サブミクロンサイズの平均一次粒径を持ち、粒径分布が狭い点にあり、さらには界面活性剤の含まれる量が少ない点が挙げられる。
【0081】
このようなPVDF樹脂粒子を使用することで、フィルム、多孔膜、金型表面などに対して、緻密に塗工をすることができ、この緻密に塗工された状態を利用する事により、均一かつ薄層の接着膜を形成することができる。このPVDF樹脂粒子に含まれる界面活性剤が少ない事から、この接着膜の接着強度は高くなり、産業上有益なものになる。
【0082】
この例のように本実施態様の方法で製造されるPVDF樹脂粒子は、産業上、各種用途で、極めて有用かつ実用的に利用することが可能である。具体的には、トナー用添加剤、塗料などのレオロジー改質剤、医療用診断検査剤、自動車材料、建築材料などの成形品への機械特性改良剤、フィルム、繊維などの機械特性改良材、ラピッドプロトタイピング、ラピッドマニュファクチャリングなどの樹脂成形体用原料、フラッシュ成形用材料、プラスティックゾル用ペーストレジン、粉ブロッキング材、粉体の流動性改良材、潤滑剤、ゴム配合剤、研磨剤、増粘剤、濾剤および濾過助剤、ゲル化剤、凝集剤、塗料用添加剤、吸油剤、離型剤、プラスティックフィルム・シートの滑り性向上剤、ブロッキング防止剤、光沢調節剤、つや消し仕上げ剤、光拡散剤、表面高硬度向上剤、靭性向上材等の各種改質剤、液晶表示装置用スペーサー、クロマトグラフィー用充填材、化粧品ファンデーション用基材・添加剤、マイクロカプセル用助剤、ドラッグデリバリーシステム・診断薬などの医療用材料、香料・農薬の保持剤、化学反応用触媒およびその担持体、ガス吸着剤、セラミック加工用焼結材、測定・分析用の標準粒子、食品工業分野用の粒子、粉体塗料用材料、電子写真現像用トナーなどに用いることができる。
【実施例】
【0083】
[平均一次粒径の測定]
本実施態様におけるPVDF樹脂粒子の平均一次粒径は日本電子製走査型電子顕微鏡JEOL JMS−6700Fで得られた画像から無作為に選択した100個の粒子を選び、その最大長さを粒径として粒径を測長し、その平均値を平均一次粒径とした。
【0084】
[PVDF樹脂粒子の変動係数の算出]
本実施態様におけるPVDF樹脂粒子の変動係数(CV)は、日本電子製走査型電子顕微鏡JEOL JMS−6700Fで得られた画像から任意の100個の粒径を測長して求めた粒子径の個々の値を用いて、前出の式(1)〜式(3)により求めた。
【0085】
[PVDF樹脂の分子量の測定]
PVDF樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法を用い、ポリスチレンによる校正曲線と対比させて算出した。
【0086】
装置 :株式会社島津製作所製 LC−10Aシリーズ
カラム:昭和電工株式会社製 GF−7MHQ × 2本
移動相:ジメチルホルムアミド
流量 :1.0ml/min
検出 :示差屈折率計
カラム温度:40℃
【0087】
[平均粒径の測定]
日機装製レーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置MT3300EXIIを用い、分散媒としてポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル(商品名:ノナール912A 東邦化学工業製)の0.5質量%水溶液を用いて測定した。具体的にはマイクロトラック法によるレーザーの散乱光を解析して得られる粒子の総体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブが50%となる点の粒子径(メジアン径:d50)を微粒子の平均粒径とした。
【0088】
〔実施例1〕
シグマアルドリッチ合同会社製PVDF樹脂7.8gをNMP(三菱化学(株)社製)534gに80℃で溶解させ、その溶液に水66gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。80℃の前記溶液を80℃の水600gの粒子化槽(受槽)へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を7.8g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、98nm、変動係数14.9%であった。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
〔実施例2〕
シグマアルドリッチ合同会社製PVDF樹脂9gをNMP(三菱化学(株)社製)510gに80℃で溶解させ、その溶液に水90gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。80℃の前記溶液を常温の水600gの粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を9g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、100nm、変動係数15.2%であった。結果を表1に示す。
【0091】
〔実施例3〕
シグマアルドリッチ合同会社製PVDF樹脂12gをNMP(三菱化学(株)社製)534gに80℃で溶解させ、その溶液に水66gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。80℃の前記溶液を80℃の水600gの粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を12g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させた。メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、99nm、変動係数15.4%であった。結果を表1に示す。また、SEM観察により得られた画像を図1に示す。
【0092】
〔実施例4〕
シグマアルドリッチ合同会社製PVDF樹脂12gをNMP(三菱化学(株)社製)534gに80℃で溶解させ、その溶液に水66gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。80℃の前記溶液を常温の水600gの粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を12g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、102nm、変動係数15.1%であった。結果を表1に示す。
【0093】
〔実施例5〕
シグマアルドリッチ合同会社製PVDF樹脂18gをNMP(関東化学(株)社製)510gに80℃で溶解させ、その溶液に水90gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。80℃の前記溶液を80℃の水600gの粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を18g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、105nm、変動係数15.6%であった。結果を表1に示す。
【0094】
〔実施例6〕
KFポリマー#9300((株)クレハ社製)6gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温の水600gの粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、103nm、変動係数18.1%であった。結果を表1に示す。
【0095】
〔実施例7〕
KFポリマー#9300((株)クレハ社製)6gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温のメタノール540gと水60gの混合溶液からなる粒子化槽へ滴下した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、97nm、変動係数14.4%であった。結果を表1に示す。
【0096】
〔実施例8〕
KFポリマー#9300((株)クレハ社製)6gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温のメタノール420gと水180gの混合溶液からなる粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、104nm、変動係数15.5%であった。結果を表1に示す。
【0097】
〔実施例9〕
KFポリマー#9300((株)クレハ社製)6gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温のメタノール300gと水300ggの混合溶液からなる粒子化槽へ連続添加し、その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、107nm、変動係数18.5%であった。結果を表1に示す。
【0098】
〔実施例10〕
KFポリマー#9300((株)クレハ社製)6gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温のメタノール120gと水480gの混合溶液からなる粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、105nm、変動係数18.5%であった。結果を表1に示す。
【0099】
〔実施例11〕
KFポリマー#9300((株)クレハ社製)6gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温のアセトニトリル30gと水570gの混合溶液からなる粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、109nm、変動係数15.2%であった。結果を表1に示す。
【0100】
〔実施例12〕
KFポリマー#9300((株)クレハ社製)6gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温の水300gの粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、118nm、変動係数16.0%であった。結果を表1に示す。
【0101】
〔実施例13〕
KFポリマー#9300((株)クレハ社製)6gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)570gに80℃で溶解させ、その溶液に水30gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温の水600gの粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、111nm、変動係数18.2%であった。結果を表1に示す。
【0102】
〔実施例14〕
KFポリマー#9300((株)クレハ社製)6gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)582gに80℃で溶解させ、その溶液に水18gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温の水600gの粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、114nm、変動係数18.7%であった。結果を表1に示す。
【0103】
〔実施例15〕
KFポリマー#8500((株)クレハ社製)6gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温の水600gの粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、118nm、変動係数17.3%であった。結果を表1に示す。
【0104】
〔実施例16〕
KFポリマー#8500((株)クレハ社製)12gをNMP(三菱化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。80℃の前記溶液を常温の水600gの粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、123nm、変動係数16.6%であった。結果を表1に示す。
【0105】
〔実施例17〕
KFポリマー#8500((株)クレハ社製)12gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温の水600gの粒子化槽へ連続添加した。その混合液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を12g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、121nm、変動係数16.3%であった。結果を表1に示す。
【0106】
〔実施例18〕
KFポリマー#9300((株)クレハ社製)6gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温の水300gの粒子化槽へ連続添加し、粒子化液を得た。
【0107】
次に、別途調整したPVDF樹脂溶液606g(76℃)と水300g(常温)を、各々6分間で滴下終了する速度で粒子化槽へ同時に滴下しながら、粒子化液の液面を保つように、粒子化槽底部から粒子化液を906g抜き出した(粒子化液A)。続いて、別途調整したPVDF樹脂溶液606g(76℃)と水300g(常温)を、各々6分間で滴下終了する速度で粒子化槽へ同時に滴下しながら、粒子化液の液面を保つように、粒子化槽底部から粒子化液906gを抜き出した(粒子化液B)。粒子化槽に残っている粒子化液(粒子化液C)、および粒子化液A、Bに10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、粒子化液Aの平均1次粒径は、120nm、変動係数16.6%、粒子化液Bの平均1次粒径は、119nm、変動係数16.8%、粒子化液Cの平均1次粒径は、122nm、変動係数17.0%、であった。結果を表2に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
〔実施例19〕
KFポリマー#9300((株)クレハ社製)6gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温の水200gの粒子化槽へ連続添加し、粒子化液を得た。
【0110】
次に、別途調整したPVDF樹脂溶液606g(76℃)と水200g(常温)を、各々6分間で滴下終了する速度で粒子化槽へ同時に滴下しながら、粒子化液の液面を保つように、粒子化槽底部から粒子化液806gを抜き出した(粒子化液A)。続いて別途調整したPVDF樹脂溶液606g(76℃)と水200g(常温)を、各々6分間で滴下終了する速度で粒子化槽へ同時に滴下しながら、粒子化液の液面を保つように、粒子化槽底部から粒子化液806gを抜き出した(粒子化液B)。粒子化槽に残っている粒子化液(粒子化液C)、および粒子化液A、Bに10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、粒子化液Aの平均1次粒径は、121nm、変動係数16.8%、粒子化液Bの平均1次粒径は、120nm、変動係数16.9%、粒子化液Cの平均1次粒径は、123nm、変動係数17.2%であった。結果を表2に示す。
【0111】
〔実施例20〕
KFポリマー#9300((株)クレハ社製)8.1gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに80℃で溶解させ、その溶液に水60gを加え、PVDF樹脂溶液を作製した。76℃の前記溶液を常温の5wt%アセトニトリル水溶液600gの粒子化槽へ連続添加し、粒子化液を得た。
【0112】
次に、別途調整したPVDF樹脂溶液608.1g(76℃)と5wt%アセトニトリル水溶液600g(常温)を、各々6分間で同時に滴下終了する速度で粒子化槽へ滴下しながら、粒子化液の液面を保つように、粒子化槽底部から粒子化液1200gを抜き出した(粒子化液A)。続いて別途調整したPVDF樹脂溶液606g(76℃)と5wt%アセトニトリル水溶液600g(常温)を、各々6分間で同時に滴下終了する速度で粒子化槽へ滴下しながら、粒子化液の液面を保つように、粒子化槽底部から粒子化液1200gを抜き出した(粒子化液B)。粒子化槽に残っている粒子化液(粒子化液C)、および粒子化液A、Bに10質量%酢酸マグネシウム水溶液を6g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、粒子化液Aの平均1次粒径は、123nm、変動係数16.9%、粒子化液Bの平均1次粒径は、124nm、変動係数16.9%、粒子化液Cの平均1次粒径は、124nm、変動係数17.0%であった。結果を表2に示す。
【0113】
〔実施例21〕
1LのセパラブルフラスコにKFポリマー#9300((株)クレハ社製)6g、アセトニトリル(関東化学(株)社製)594gを加えて80℃で溶解させ、その溶液に水66.6gを加えてPVDF樹脂溶液を作製した。PVDF樹脂溶液送液用の内管(内径4mm×長さ200mm)と水送液用の外管(内径9.5mm×長さ1200mm)からなる二重管の内管に76℃のPVDF樹脂溶液600g、外管に常温の水600gを166.6g/分の速度で連続的に通液して外管内でPVDF樹脂溶液と水を混合させ、PVDF樹脂粒子化液を作製した。粒子化液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を12g加えてPVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、88nm、変動係数16.3%であった。結果を表3に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
〔実施例22〕
1LのセパラブルフラスコにKFポリマー#9300((株)クレハ社製)6g、アセトニトリル(関東化学(株)社製)594gを加えて80℃で溶解させ、その溶液に水66.6gを加えてPVDF樹脂溶液を作製した。PVDF樹脂溶液送液用の内管(内径2mm×長さ200mm)と水送液用の外管(内径9.5mm×長さ1200mm)からなる二重管の内管に76℃のPVDF樹脂溶液600gを166.6g/分、外管に常温の水150gを41.7g/分の速度で連続的に通液して外管内でPVDF樹脂溶液と水を混合させ、PVDF樹脂粒子化液を作製した。粒子化液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を12g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、81nm、変動係数16.7%であった。結果を表3に示す。
【0116】
〔実施例23〕
1LのセパラブルフラスコにKFポリマー#9300((株)クレハ社製)6g、アセトニトリル(関東化学(株)社製)594gを加えて80℃で溶解させ、その溶液に水66.6gを加えてPVDF樹脂溶液を作製した。PVDF樹脂溶液送液用の内管(内径4mm×長さ200mm)と水送液用の外管(内径16mm×長さ1200mm)からなる二重管の内管に76℃のPVDF樹脂溶液600g、外管に常温の水600gを333g/分の速度で連続的に通液して外管内でPVDF樹脂溶液と水を混合させ、PVDF樹脂粒子化液を作製した。粒子化液に10質量%酢酸マグネシウム水溶液を12g加え、PVDF樹脂粒子を凝集させ、メンブレンフィルターでろ過、水洗し、PVDF樹脂粒子の含水ウエットケークを得た。そのケークを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、平均1次粒径は、90nm、変動係数17.2%であった。結果を表3に示す。
【0117】
〔実施例24〕
[溶解工程]
1Lオートクレーブに撹拌機、温度測定器、およびインターナルの溶解液抜き出し管を装着した。抜き出し管にはバルブ開閉ができる連結管を装着した。また、フラッシュ晶析の受槽として、1Lのオートクレーブに撹拌機、コンデンサー、ガス通気管、および前記溶解槽からの連結管の他端(フラッシュ晶析出口)を受槽液の中に入る位置に装着した。
【0118】
窒素雰囲気下、溶解槽にPVDF樹脂(シグマアルドリッチ合同会社製)18gをNMP(三菱化学(株)社製)540gに溶解させ、80℃にて水60gを加えてPVDF樹脂溶液を調整した。窒素ガスで0.5MPaまで加圧した。
【0119】
[析出工程]
水600gを入れた受槽を攪拌し、窒素ガスを微量通気しておいた。前記溶解槽のインターナル連結管のバルブを開き、80℃のPVDF樹脂溶液を大気圧下の受槽の水(常温)の中に移液した。次いで、フラッシュ液に5質量%食塩水40gを加え、30分間撹拌し、メンブレンフィルターでろ過、洗浄してPVDF樹脂粒子のウエットケークを得た。平均一次粒径は103nm、変動係数15.6%であった。結果を表4に示す。
【0120】
【表4】
【0121】
〔実施例25〕
[溶解工程]
1Lオートクレーブに撹拌機、温度測定器、およびインターナルの溶解液抜き出し管を装着した。抜き出し管にはバルブ開閉ができる連結管を装着した。また、フラッシュ晶析の受槽として、1Lのオートクレーブに撹拌機、コンデンサー、ガス通気管、および前記溶解槽からの連結管の他端(フラッシュ晶析出口)を受槽液の中に入る位置に装着した。
【0122】
窒素雰囲気下、溶解槽にPVDF樹脂((株)クレハ社製KFポリマー#8500)12gをNMP(三菱化学(株)社製)540gに溶解させ、80℃にて水60gを加えてPVDF樹脂溶液を調整した。窒素ガスで0.5MPaまで加圧した。
【0123】
[析出工程]
水600gを入れた受槽を攪拌し、窒素ガスを微量通気しておいた。前記溶解槽のインターナル連結管のバルブを開き、80℃のPVDF樹脂溶液を大気圧下の受槽の水(常温)の中に移液した。次いで、フラッシュ液に5質量%食塩水40gを加え、30分間撹拌し、メンブレンフィルターでろ過、洗浄してPVDF樹脂粒子のウエットケークを得た。平均一次粒径は101nm、変動係数17.2%であった。結果を表4に示す。
【0124】
〔実施例26〕
[溶解工程]
1Lオートクレーブに撹拌機、温度測定器、およびインターナルの溶解液抜き出し管を装着した。抜き出し管にはバルブ開閉ができる連結管を装着した。また、フラッシュ晶析の受槽として、1Lのオートクレーブに撹拌機、コンデンサー、ガス通気管、および前記溶解槽からの連結管の他端(フラッシュ晶析出口)を受槽液の中に入る位置に装着した。
【0125】
窒素雰囲気下、溶解槽にPVDF樹脂((株)クレハ社製KFポリマー#8500)12gをアセトニトリル(関東化学(株)社製)540gに溶解させ、80℃にて水60gを加えてPVDF樹脂溶液を調整した。窒素ガスで0.5MPaまで加圧した。
【0126】
[析出工程]
水600gを入れた受槽を攪拌し、窒素ガスを微量通気しておいた。前記溶解槽のインターナル連結管のバルブを開き、80℃のPVDF樹脂溶液を大気圧下の受槽の水(常温)の中に移液した。次いで、フラッシュ液に5質量%食塩水40gを加え、30分間撹拌し、メンブレンフィルターでろ過、洗浄してPVDF樹脂粒子のウエットケークを得た。平均一次粒径は105nm、変動係数16.2%であった。結果を表4に示す。
【0127】
〔比較例1〕
シグマアルドリッチ合同会社製PVDF樹脂18gをNMP(三菱化学(株)社製)600gに80℃で溶解させ、PVDF樹脂溶解液を作製した。80℃の前記溶液を80℃の水600gの粒子化槽へ連続添加したところ、ひも状物が得られ、粒子は得られなかった。結果を表1に示す。また、SEM観察により得られた画像を図2に示す。
【0128】
〔比較例2〕
KFポリマー#8500((株)クレハ社製)12gをNMP(関東化学社製)600gに80℃で溶解させ、PVDF樹脂溶液を作製した。80℃の前記溶液を常温の水600gの粒子化槽へ連続添加したところ、ひも状物が得られ、粒子は得られなかった。結果を表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明に係るポリフッ化ビニリデン樹脂粒子の製造方法によれば、界面活性剤を実質的に含まない平均1次粒径300nm以下、特に200nm以下のPVDF樹脂粒子を簡便かつ安定的に製造することができ、広く産業上有用な材料が提供できる。
図1
図2