(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2操業状態から前記第1操業状態に切り替える際には、前記循環恒温水槽を用いた水の循環を再開した後、前記第2配管への前記乾燥ガスの分配を再開する、請求項3に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
請求項2に記載の前記合金化設備を用いて、前記鋼帯に施された亜鉛めっきを加熱合金化する工程をさらに有する、請求項3〜5のいずれか一項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車、家電、建材等の分野において、構造物の軽量化等に寄与する高張力鋼板(ハイテン鋼板)の需要が高まっている。ハイテン鋼材としては、例えば、鋼中にSiを含有することにより穴広げ性の良好な鋼板や、SiやAlを含有することにより残留γが形成しやすく延性の良好な鋼板が製造できることがわかっている。
【0003】
しかし、Siを多量に(特に0.2質量%以上)含有する高張力鋼板を母材として合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合、以下の問題がある。合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、還元雰囲気又は非酸化性雰囲気中で600〜900℃程度の温度で母材の鋼板を加熱焼鈍した後に、該鋼板に溶融亜鉛めっき処理を行い、さらに亜鉛めっきを加熱合金化することによって、製造される。
【0004】
ここで、鋼中のSiは易酸化性元素であり、一般的に用いられる還元雰囲気又は非酸化性雰囲気中でも選択酸化されて、鋼板の表面に濃化し、酸化物を形成する。この酸化物は、めっき処理時の溶融亜鉛との濡れ性を低下させて、不めっきを生じさせる。そのため、鋼中Si濃度の増加と共に、濡れ性が急激に低下して不めっきが多発する。また、不めっきに至らなかった場合でも、めっき密着性に劣るという問題がある。さらに、鋼中のSiが選択酸化されて鋼板の表面に濃化すると、溶融亜鉛めっき後の合金化過程において著しい合金化遅延が生じ、生産性を著しく阻害するという問題もある。
【0005】
このような問題に対して、例えば特許文献1には、順に加熱帯前段、加熱帯後段、保熱帯及び冷却帯を有する焼鈍炉と溶融めっき浴とを用いた連続焼鈍溶融めっき方法において、鋼板温度が少なくとも300℃以上の領域の鋼板の加熱または保熱を間接加熱とし、各帯の炉内雰囲気を水素1〜10体積%、残部が窒素及び不可避的不純物よりなる雰囲気とし、前記加熱帯前段で加熱中の鋼板到達温度を550℃以上750℃以下とし、かつ、露点を−25℃未満とし、これに続く前記加熱帯後段及び前記保熱帯の露点を−30℃以上0℃以下とし、前記冷却帯の露点を−25℃未満とする条件で焼鈍を行うことにより、Siを内部酸化させ、鋼板の表面にSiが濃化するのを抑制する技術が記載されている。また、加熱帯後段及び/又は保熱帯に、窒素と水素の混合ガスを加湿して導入することも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高張力鋼板を製造する場合には、均熱帯内の露点を上昇させるために、還元性又は非酸化性の乾燥ガスに加えて、特許文献1に記載のように加湿ガスを均熱帯に投入する。これに対し、通常強度の鋼板(以下、「普通鋼板」という。)を製造する場合には、加湿ガスは投入せず、還元性又は非酸化性の乾燥ガスのみを均熱帯に投入する。そのため、例えば高張力鋼板と通常鋼板を連続して製造する場合、加湿ガスの使用/不使用を切り換えながら操業する必要がある。
【0008】
本発明者らは、このような加湿ガスの使用/不使用を切り換えながら操業する場合に生じる以下のような問題を認識した。すなわち、加湿ガスの不使用時に、単に加湿系統のガスを止めても、加湿系統の配管内には、加湿装置からの水が拡散して結露が発生したり、過剰に加湿されたガスが滞留したりする。すると、加湿系統を不使用から使用に切り換えた際に、前記配管内の結露した水や過剰に加湿されたガスが均熱帯に吹き込んでしまい、均熱帯内のハースロールを傷めピックアップが生じたり、鋼板に水滴模様が付いたりする問題が発生する。これに起因して、後続の溶融亜鉛めっき工程で不めっきが発生し、めっき外観が損なわれることがあった。
【0009】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、加湿ガス用配管内の結露等に起因して生じうる均熱帯のロールピックアップの発生を抑制し、良好なめっき外観を得ることが可能な連続溶融亜鉛めっき装置及び溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく本発明者らは、加湿ガスの不使用時(均熱帯への加湿ガスの供給を停止している間)に加湿ガス用配管に内に結露が生じたり、過剰に加湿されたガスが滞留したりしないための工夫を鋭意検討し、以下の構成によって当該目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)加熱帯と、均熱帯と、冷却帯とがこの順に並置された焼鈍炉と、前記冷却帯に隣接した溶融亜鉛めっき設備と、を有する連続溶融亜鉛めっき装置であって、
還元性又は非酸化性の乾燥ガスが通過する第1配管と、
前記第1配管に接続され、前記第1配管内を通過した乾燥ガスを分配するガス分配装置と、
前記ガス分配装置から分岐し、前記ガス分配装置に分配された乾燥ガスが通過する第2配管、第3配管、及び第4配管と、
前記第2配管に接続され、前記第2配管内を通過した乾燥ガスが導入される加湿装置と、
前記加湿装置から延び、前記加湿装置により加湿された加湿ガスが通過する第5配管と、
前記第3配管及び前記第5配管に接続され、前記第3配管を通過した乾燥ガスと前記第5配管を通過した前記加湿ガスとを混合して混合ガスを作製するガス混合装置と、
前記ガス混合装置から延び、前記混合ガスが通過する第6配管と、
前記第6配管を通過した混合ガスを前記均熱帯内に供給するための、前記均熱帯に設けられた混合ガス供給口と、
前記第4配管を通過した乾燥ガスを前記均熱帯内に供給するための、前記均熱帯に設けられた乾燥ガス供給口と、
を有し、
前記加湿装置は、水蒸気透過膜を含むモジュールを有し、前記モジュール内の前記水蒸気透過膜を隔てた片方の空間を、前記第2配管内を通過した乾燥ガスが通過しつつ、他方の空間には循環恒温水槽を用いて水を循環させることで、前記乾燥ガスを加湿するように構成され、
さらに、前記均熱帯に前記混合ガスを供給しないときに、前記モジュールの前記他方の空間から水を排水するための排水装置を有することを特徴とする連続溶融亜鉛めっき装置。
【0012】
(2)前記溶融亜鉛めっき設備に隣接した合金化設備を有する上記(1)に記載の連続溶融亜鉛めっき装置。
【0013】
(3)上記(1)に記載の連続溶融亜鉛めっき装置を用いた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、
鋼帯を前記焼鈍炉の内部で、前記加熱帯、前記均熱帯及び前記冷却帯の順に搬送して、前記鋼帯に対して焼鈍を行う工程と、
前記溶融亜鉛めっき設備を用いて、前記冷却帯から排出される鋼帯に溶融亜鉛めっきを施す工程と、
を有し、
前記均熱帯に前記混合ガス及び前記乾燥ガスを供給する第1操業状態では、前記循環恒温水槽を用いた水の循環を行い、
前記均熱帯に前記乾燥ガスのみを供給し、前記混合ガスを供給しない第2操業状態では、前記第2配管への前記乾燥ガスの分配を停止するとともに、前記排出装置を用いて前記モジュールの前記他方の空間から水を排水し、前記循環恒温水槽を用いた水の循環を行わないことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0014】
(4)前記第2操業状態から前記第1操業状態に切り替える際には、前記循環恒温水槽を用いた水の循環を再開した後、前記第2配管への前記乾燥ガスの分配を再開する、上記(3)に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0015】
(5)前記第1操業状態では前記均熱帯内の露点を−20℃以上0℃以下に制御する上記(3)又は(4)に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0016】
(6)上記(2)に記載の前記合金化設備を用いて、前記鋼帯に施された亜鉛めっきを加熱合金化する工程をさらに有する、上記(3)〜(5)のいずれか一項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の連続溶融亜鉛めっき装置及び溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法によれば、加湿ガス用配管内の結露等に起因して生じうる均熱帯のロールピックアップの発生を抑制し、良好なめっき外観を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態による連続溶融亜鉛めっき装置100の構成を、
図1を参照して説明する。連続溶融亜鉛めっき装置100は、加熱帯10、均熱帯12及び冷却帯14,16がこの順に並置された焼鈍炉20と、冷却帯16に隣接した溶融亜鉛めっき設備としての溶融亜鉛めっき浴22と、この溶融亜鉛めっき浴22と隣接した合金化設備24と、を有する。本実施形態において加熱帯10は、第1加熱帯10A(加熱帯前段)及び第2加熱帯10B(加熱帯後段)を含む。冷却帯は、第1冷却帯14(急冷帯)及び第2冷却帯16(除冷帯)を含む。第2冷却帯16と連結したスナウト18は、先端が溶融亜鉛めっき浴22に浸漬しており、焼鈍炉20と溶融亜鉛めっき浴22とが接続されている。本発明の他の実施形態は、この連続溶融亜鉛めっき装置100を用いた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
【0020】
鋼帯Pは、第1加熱帯10Aの下部の鋼帯導入口から第1加熱帯10A内に導入される。各帯10,12,14,16には、上部及び下部に1つ以上のハースロールが配置される。ハースロールを起点に鋼帯Pが180度折り返される場合、鋼帯Pは焼鈍炉20の所定の帯の内部で上下方向に複数回搬送され、複数パスを形成する。
図1においては、均熱帯12で10パス、第1冷却帯14で2パス、第2冷却帯16で2パスの例を示したが、パス数はこれに限定されず、処理条件に応じて適宜設定可能である。また、一部のハースロールでは、鋼帯Pを折り返すことなく直角に方向転換させて、鋼帯Pを次の帯へと移動させる。このようにして、鋼帯Pを焼鈍炉20の内部で、加熱帯10、均熱帯12及び冷却帯14,16の順に搬送して、鋼帯Pに対して焼鈍を行うことができる。
【0021】
焼鈍炉20において、隣接する帯は、それぞれの帯の上部同士または下部同士を接続する連通部を介して連通している。本実施形態では、第1加熱帯10Aと第2加熱帯10Bとは、それぞれの帯の上部同士を接続するスロート(絞り部)を介して連通する。第2加熱帯10Bと均熱帯12とは、それぞれの帯の下部同士を接続するスロートを介して連通する。均熱帯12と第1冷却帯14とは、それぞれの帯の下部同士を接続するスロートを介して連通する。第1冷却帯14と第2冷却帯16とは、それぞれの帯の下部同士を接続するスロートを介して連通する。各スロートの高さは適宜設定すればよいが、各帯の雰囲気の独立性を高める観点から、各スロートの高さはなるべく低いことが好ましい。焼鈍炉20内のガスは、炉の下流から上流に流れ、第1加熱帯10Aの下部の鋼帯導入口から排出される。
【0022】
(加熱帯)
本実施形態において、第2加熱帯10Bは、直火型加熱炉(DFF)である。DFFは公知のものを用いることができる。
図1においては図示しないが、第2加熱帯10Bにおける直火型加熱炉の内壁には、複数のバーナが鋼帯Pに対向して分散配置される。複数のバーナは複数のグループに分けられ、グループごとに燃料率及び空気比を独立に制御可能とすることが好ましい。第1加熱帯10Aの内部には、第2加熱帯10Bの燃焼排ガスが供給され、その熱で鋼帯Pを予熱する。
【0023】
燃焼率は、実際にバーナに導入した燃料ガス量を、最大燃焼負荷時のバーナの燃料ガス量で割った値である。バーナを最大燃焼負荷で燃焼したときが燃焼率100%である。バーナは、燃焼負荷が低くなると安定した燃焼状態が得られなくなる。よって、燃焼率は通常30%以上とすることが好ましい。
【0024】
空気比は、実際のバーナに導入した空気量を、燃料ガスを完全燃焼するために必要な空気量で割った値である。本実施形態では、第2加熱帯10Bの加熱用バーナを4つの群(#1〜#4)に分割し、鋼板移動方向上流側の3つの群(#1〜#3)は酸化用バーナ、最終ゾーン(#4)は還元用バーナとし、酸化用バーナ及び還元用バーナの空気比を個別に制御可能とした。酸化用バーナでは、空気比を0.95以上1.5以下とすることが好ましい。還元用バーナでは、空気比を0.5以上0.95未満とすることが好ましい。また、第2加熱帯10Bの内部の温度は、800〜1200℃とすることが好ましい。
【0025】
(均熱帯)
本実施形態において均熱帯12では、加熱手段としてラジアントチューブ(RT)(図示せず)を用いて、鋼帯Pを間接加熱することができる。均熱帯12の内部の平均温度Tr(℃)は、均熱帯内に熱電対を挿入することによりにより測定されるが、700〜900℃とすることが好ましい。
【0026】
均熱帯12には還元性ガス又は非酸化性ガスが供給される。還元性ガスとしては、通常H
2−N
2混合ガスが用いられ、例えばH
2:1〜20体積%、残部がN
2および不可避的不純物からなる組成を有するガス(露点:−60℃程度)が挙げられる。また、非酸化性ガスとしては、N
2および不可避的不純物からなる組成を有するガス(露点:−60℃程度)が挙げられる。
【0027】
本実施形態では、均熱帯12に供給される還元性ガス又は非酸化性ガスは、混合ガス及び乾燥ガスの二形態である。ここで、「乾燥ガス」とは、露点が−60℃〜−50℃程度の上記還元性ガス又は非酸化性ガスであって、加湿装置により加湿されていないものである。一方、「混合ガス」とは、加湿装置により加湿されたガスと、加湿装置により加湿されていないガスとを、露点が−20〜10℃となるように所定の混合比で混合して得たものである。
【0028】
図2を参照して、均熱帯12への混合ガス及び乾燥ガスの供給系を説明する。この供給系は、上流側から第1配管31、第2配管32、第3配管33、第4配管34、第5配管35、第6配管36を有し、さらに、ガス分配装置40、加湿装置50、ガス混合装置60、排水装置80を有する。
【0029】
第1配管31は、図示しないガス供給源から供給される乾燥ガスが通過する。
【0030】
ガス分配装置40は、第1配管31に接続され、第1配管31内を通過した乾燥ガスを以下の第2配管32、第3配管33、第4配管34の3系統に任意かつ可変の比率で分配する。第2配管32、第3配管33、第4配管34は、ガス分配装置40から分岐し、ガス分配装置40に分配された乾燥ガスが通過する。すなわち、第1配管31内を通過した乾燥ガスの一部は、第2配管32を通って加湿装置50へと送られ、他部は第3配管を通ってガス混合装置60へと送られ、残部は第4配管34を通ってそのまま均熱帯12内に供給される。ガス分配装置40は、後述する混合ガスの不使用時には、第2配管32及び第3配管33への分配を遮断する。
【0031】
まず、乾燥ガスの供給について説明する。第4配管34を通過した乾燥ガスは、均熱帯12に設けられた乾燥ガス供給口72A,72B,72C,72Dを介して、均熱帯12内に供給される。乾燥ガス供給口の位置及び数は特に限定されず、種々の条件を考慮して適宜決めればよい。しかし、乾燥ガス供給口は、同じ高さ位置に複数配置されることが好ましく、鋼帯進行方向に均等に配置されることが好ましい。
【0032】
次に、混合ガスの供給について説明する。加湿装置50は、第2配管32に接続され、第2配管32内を通過した乾燥ガスが導入される。第5配管35は、加湿装置50から延び、加湿装置50により加湿された加湿ガスが通過する。
【0033】
ガス混合装置60は、第3配管33及び第5配管35に接続され、第3配管を通過した乾燥ガスと第5配管を通過した加湿ガスとを所定かつ可変の比率で混合して、所望の露点の混合ガスを調製する。第6配管36は混合ガス用配管であり、ガス混合装置60から延び、このガス混合装置60から出た混合ガスが通過する。第6配管36を通過した混合ガスは、均熱帯12に設けられた混合ガス供給口を介して、均熱帯12内に供給される。本実施形態では、混合ガスは、混合ガス供給口70A,70B,70Cと、混合ガス供給口71A,71B,71Cの二系統で供給される。混合ガス供給口の位置及び数は特に限定されず、種々の条件を考慮して適宜決めればよい。しかし、混合ガス供給口は、本実施形態のように、2つ以上の異なる高さ位置にそれぞれ複数配置されることが好ましく、鋼帯進行方向に均等に配置することが好ましい。混合ガスの露点は、第6配管に設けられた混合ガス用露点計74により測定可能である。
【0034】
次に、
図3を参照して加湿装置50及び本発明の特徴的構成である排出装置80の構成を説明する。加湿装置50は、筒状のモジュール52及び循環恒温水槽54を有する。モジュール52内には水蒸気透過膜51が配置される。本実施形態において水蒸気透過膜51は、フッ素系又はポリイミド系の中空糸膜であり、
図3では2本のみ図示したが、50〜500本程度の中空糸膜が略平行に配置される。モジュール52内の水蒸気透過膜の内側53Aを、第2配管32内を通過した乾燥ガスが通過しつつ、水蒸気透過膜の外側53Bには循環恒温水槽54を用いて所定温度に調整された純水を循環させる。すなわち、モジュール内の水蒸気透過膜の外側53Bは、流路55A,55Bを介して循環恒温水槽54と連結している。
【0035】
フッ素系又はポリイミド系の中空糸膜とは、水分子との親和力を有するイオン交換膜の一種である。中空糸膜の内側と外側に水分濃度差が生じると、その濃度差を均等にしようとする力が発生し、水分はその力をドライビングフォースとして低い水分濃度の方へ膜を透過し移動する。そのため、乾燥ガスがモジュール52内の水蒸気透過膜の内側53Aを通過する過程で加湿され、加湿ガスとなる。乾燥ガス温度は、季節や1日の気温変化にしたがって変化するが、本実施形態では、水蒸気透過膜51を介したガスと水の接触面積を十分に取ることで熱交換も行えるため、乾燥ガス温度が循環水温より高くても低くても、乾燥ガスは設定水温と同じ露点まで加湿されたガスとなり、高精度な露点制御が可能となる。加湿ガスの露点は5〜50℃の範囲で任意に制御可能である。加湿ガスの露点が配管温度よりも高いと配管内で結露してしまい、結露した水が直接炉内に浸入する可能性があるので、加湿ガス用の配管は加湿ガス露点以上かつ外気温以上に加熱・保熱されている。
【0036】
なお、モジュール52内の構成は
図3に限定されず、例えば、水蒸気透過膜がフッ素系又はポリイミド系の平膜であってもよい。その場合、モジュール内の水蒸気透過膜を隔てた片方の空間を、第2配管32内を通過した乾燥ガスが通過しつつ、他方の空間には循環恒温水槽54を用いて水を循環させることで、乾燥ガスを加湿する。
【0037】
本実施形態の連続溶融亜鉛めっき装置100は、均熱帯に混合ガスを供給しないときに、モジュールの水蒸気透過膜の外側53Bの空間から水を排水するための排水装置80を有する点が特徴である。排水装置80の一例を
図3に示す。排水装置80は、第1遮断弁82、第2流路84、第2遮断弁86、及び排水タンク88を含む。第1遮断弁82は、モジュール内の水蒸気透過膜の外側53Bから循環恒温水槽54へ移動する水が通過する流路55Bに設けられる。第2流路84は、流路55Bの第1遮断弁82より上流(水蒸気透過膜の外側53B寄り)の部分から分岐し、先端は排水タンク88の上方に位置する。第2遮断弁86は、第2流路84に設けられる。排水タンク88は、第2流路82から排出される水を収容する。
【0038】
加湿ガスの生成するときは、第1遮断弁82を全開、第2遮断弁Bを全閉とし、恒温循環水槽54を用いて、モジュール内の水蒸気透過膜の外側53Bに水を循環させる。加湿ガスを生成しないときには、水の循環を停止し、第2遮断弁86を全開とし、第1遮断弁82を全閉とすれば、モジュールの水蒸気透過膜の外側53Bの空間の水は、排水タンク88へと排水される。排水タンク88の上端に対して、モジュール52の高さを200mm以上高くできない場合は、排水タンク側に吸引装置等を設けて加湿装置内の水を排水することが好ましい。
【0039】
例えば高張力鋼板の製造時には、乾燥ガスに加えて、加湿ガスを含む混合ガスを均熱帯12に供給する。本発明において、この状態を「第1操業状態」と称する。これに対し、例えば普通鋼板の製造時には、乾燥ガスのみを均熱帯12に供給し、混合ガスは供給しない。本発明において、この状態を「第2操業状態」と称する。
【0040】
第2操業状態で、加湿ガスが不要となる場合には、第2配管32及び加湿装置50への乾燥ガスの分配を停止し、モジュール内の水蒸気透過膜の内側53Aに乾燥ガスが流れないようにすればよい。しかしながら、循環恒温水槽54を用いた水の循環を継続したまま長期間放置すると、モジュール52の前後の配管内(第2配管32や第5配管35)や、さらに下流の第6配管36内が結露してしまう。仮に配管を加熱・保温したとしても、配管内は水分が常時飽和した状態であるから、過剰に加湿されたガスが滞留してしまう。また、水の循環を停止したとしても、モジュールの水蒸気透過膜の外側53Bの空間に水が充満している状態のままで長時間放置しても、同様の問題が生じる。
【0041】
そこで本実施形態では、第1操業状態/第2操業状態の切替えを以下のように行う。まず、第1操業状態では、第1遮断弁82を全開、第2遮断弁Bを全閉とした状態で、循環恒温水槽54を用いた水の循環を行い、加湿ガスを生成する。そして、第2操業状態では、第2配管32への乾燥ガスの分配を停止し、さらに循環恒温水槽54を用いた水の循環も停止した後、排出装置80を用いてモジュールの水蒸気透過膜の外側53Bの空間から水を排水する。具体的には、第2遮断弁86を全開とし、第1遮断弁82を全閉とする。すなわち、第2操業状態では、水蒸気透過膜の外側53Bの空間に水がない状態とし、循環恒温水槽54を用いた水の循環を行わない。なお、循環恒温水槽54の温度調整は継続して構わない。
【0042】
これにより、第2操業状態の間に、モジュール52の前後の配管内(第2配管32や第5配管35)や、さらに下流の第6配管36内が結露したり、過剰に加湿されたガスが滞留したりしない。そのため、第2操業状態から次に第1操業状態に切り替える際に、結露した水や過剰に加湿されたガスが均熱帯12に混入することがなく、均熱帯12のロールピックアップの発生を抑制し、その結果、良好なめっき外観を得ることができる。
【0043】
第2操業状態から第1操業状態に切り替える際(例えば、普通鋼板の製造から高張力鋼板の製造に切り替える際)には、循環恒温水槽54を用いた水の循環を再開した後、第2配管32への乾燥ガスの分配を再開する。
【0044】
第1操業状態及び第2操業状態において、第4配管34を介して均熱帯12に供給される乾燥ガスのガス流量Qrdは、第4配管34に設けられたガス流量計(図示せず)により測定され、特に限定されないが、0〜600(Nm
3/hr)程度とする。これによって、均熱帯12内の炉圧を適切に(直火帯よりも高く)維持し、過大が炉圧になることもない。
【0045】
第1操業状態において、第6配管36を介して均熱帯12に供給される混合ガスのガス流量Qrwは、第6配管36に設けられたガス流量計(図示せず)により測定され、特に限定されないが、100〜500(Nm
3/hr)程度とする。これによって、均熱帯12内の炉圧を適切に(直火帯よりも高く)維持し、過大な炉圧になることがない。
【0046】
また、第1操業状態では均熱帯12内の露点を常に−20℃以上0℃以下に制御することが好ましい。露点計は、下部ハースロール73Bの近傍(均熱帯の最下部)に少なくとも1箇所(露点測定位置75A)と、上部ハースロール73Aより下方で、均熱帯の高さ方向1/2より高い位置(均熱帯の上部)に少なくとも1箇所(露点測定位置75B)設置する。均熱帯12内の露点を−20℃以上に制御すると、その後の合金化処理時に適正な合金化温度となり、所望の機械特性を得ることができる。一方、均熱帯12内では、露点が+10℃以上になると、鋼帯地鉄が酸化し始めるため、均熱帯12内の露点分布の均一性や露点変動幅を最小化する理由から、露点の上限は0℃で管理することが好ましい。
【0047】
ガス混合装置30におけるガスの混合割合を調整すれば、任意の露点の混合ガスを均熱帯12内に供給できる。均熱帯12内の露点が目標範囲を下回るようであれば、高い露点の混合ガスを供給し、均熱帯12内の露点が目標範囲を上回るようであれば、低い露点の混合ガスを供給することができる。このようにして、第1操業状態では均熱帯12内の露点を常に−20℃以上0℃以下に制御できる。
【0048】
(冷却帯)
本実施形態において冷却帯14,16では、鋼帯Pが冷却される。鋼帯Pは、第1冷却帯14では480〜530℃程度にまで冷却され、第2冷却帯16では470〜500℃程度にまで冷却される。
【0049】
冷却帯14,16にも、上記還元性ガス又は非酸化性ガスが供給されるが、ここでは、乾燥ガスのみが供給される。冷却帯14,16への乾燥ガスの供給は特に限定されないが、冷却帯内に均等に投入されるように、高さ方向2ヶ所以上、長手方向2ヶ所以上の投入口から供給することが好ましい。冷却帯14,16に供給される乾燥ガスの合計ガス流量Qcdは、配管に設けられたガス流量計(図示せず)により測定され、特に限定されないが、200〜1000(Nm
3/hr)程度とする。これによって、均熱帯12内の炉圧を適切に(直火帯よりも高く)維持し、過大が炉圧になることもない。
【0050】
(溶融亜鉛めっき浴)
溶融亜鉛めっき浴22を用いて、第2冷却帯16から排出される鋼帯Pに溶融亜鉛めっきを施すことができる。溶融亜鉛めっきは定法に従って行えばよい。
【0051】
(合金化設備)
合金化設備24を用いて、鋼帯Pに施された亜鉛めっきを加熱合金化することができる。合金化処理は定法に従って行えばよい。本実施形態によれば、合金化温度が高温にならないため、製造された合金化溶融亜鉛めっき鋼板の引張強度が低下することがない。ただし、本発明において合金化設備24や、それによる合金化処理は必須ではない。加湿ガス用配管の結露等に起因して生じうる均熱帯のロールピックアップの発生を抑制し、良好なめっき外観を得るとの効果は、合金化処理をしない場合にも得ることができるからである。
【実施例】
【0052】
(実験条件)
図1〜
図3に示す連続溶融亜鉛めっき装置を用いて、表1に示す成分組成の鋼帯を表2に示す各種焼鈍条件で焼鈍し、その後溶融亜鉛めっき及び合金化処理を施した。鋼種Aは普通鋼、鋼種Bは高張力鋼であり、比較例・発明例ともに、表2に記載の通板順で連続的に、焼鈍、溶融亜鉛めっき及び合金化処理を行った。
【0053】
第2加熱帯はDFFとした。加熱用バーナを4つの群(#1〜#4)に分割し、鋼板移動方向上流側の3つの群(#1〜#3)は酸化用バーナ、最終ゾーン(#4)は還元用バーナとし、酸化用バーナ及び還元用バーナの空気比を表2に示す値に設定した。なお、各群の鋼板搬送方向の長さは4mである。
【0054】
均熱帯は、容積Vrが700m
3のRT炉とした。均熱帯の内部の平均温度Trは表2に示すものに設定した。乾燥ガスとしては、15体積%のH
2で残部がN
2および不可避的不純物からなる組成を有するガス(露点:−50℃)を用いた。この乾燥ガスの一部を、10台の中空糸膜式加湿モジュールを有する加湿装置により加湿して、混合ガスを調製した。各モジュールに最大500L/minの乾燥ガスと、最大10L/minの循環水を流した。循環恒温水槽は各モジュールで共通とし、計100L/minの純水を供給可能である。乾燥ガス供給口及び混合ガス供給口は、
図2に示す位置に配置した。また、
図3に示す排水装置も設置した。
【0055】
比較例・発明例ともに、鋼種Aの通板中は第2操業状態、鋼種Bの通板中は第1として、均熱帯にガス供給を行った。表2の乾燥ガス流量Qrd、混合ガス流量Qrw、混合ガス露点は、それぞれの通板中の安定値である。
【0056】
比較例では、鋼種Aを通板中の第2操業状態において、第2配管への乾燥ガスの供給は停止したものの、循環恒温水槽を用いた水の循環を継続した。発明例では、鋼種Aを通板中の第2操業状態において、第2配管への乾燥ガスの分配を停止し、さらに循環恒温水槽を用いた水の循環も停止した後、排出装置を用いてモジュールの水蒸気透過膜の外側の空間から水を排水した。
【0057】
第1冷却帯及び第2冷却帯には、各帯の最下部から上記乾燥ガス(露点:−50℃)を表2に示す流量で供給した。
【0058】
めっき浴温は460℃、めっき浴中Al濃度0.130%、付着量はガスワイピングにより片面当り45g/m
2に調節した。なお、ライン速度は80〜100mpmとした。また、溶融亜鉛めっきを施した後に、皮膜合金化度(Fe含有率)が10〜13%内となるように、誘導加熱式合金化炉にて合金化処理を行った。その際の合金化温度は表2に示す。
【0059】
(評価方法)
めっき外観の評価は、光学式の表面欠陥計による検査(φ0.5以上の不めっき欠陥や過酸化性欠陥を検出)および目視による合金化ムラ判定を行い、全ての項目が合格で○、軽度の合金化ムラがある場合は△、一つでも不合格があれば×とした。結果を表2に示す。
【0060】
また、各種条件で製造した合金化溶融亜鉛めっき鋼板の引張強度を測定した。普通鋼の鋼種Aは270MPa以上、高張力鋼の鋼種Bは980MPa以上を合格とした。結果を表2に示す。
【0061】
(評価結果)
比較例のNo.1では、鋼種Bの通板において混合ガスを供給し均熱帯露点を上昇させたので、合金化温度を過剰に上げる必要が無く、引張強度は問題なかった。しかし、通板2本目で加湿ガスの供給を開始した際に、配管内で結露した水分が均熱帯に投入されてしまったことで、ハースロール近傍で局所的に高露点となり、ロールピックアップが発生し、鋼帯表面にもロールピックアップに起因する疵が発生した。そのため、通板2〜4本目まで全て、めっき外観が損なわれた。これに対し、本発明例のNo.2では、配管内に結露は発生せず、加湿ガスの切換えができた。その結果、すべての評価項目で合格となった。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】