(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記フェーズ判定部は、上記エンジン回転数検出部により検出されたエンジン回転数が、上記自動変速機の変速後の目標回転数に向かって変化した場合に、上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定する、
請求項1に記載の車両用エンジン回転数表示装置。
上記フェーズ判定部は、上記自動変速機制御部により上記自動変速機の変速制御が行われているときに、上記変速動作のフェーズがトルクフェーズであるか否かを判定し、当該判定によりトルクフェーズでないことが確認された場合に、上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであるか否かを判定する、
請求項2に記載の車両用エンジン回転数表示装置。
上記フェーズ判定部は、上記自動変速機制御部により上記自動変速機の変速制御が開始されてから所定時間が経過するまでの間、上記変速動作のフェーズがトルクフェーズであると判定し、上記所定時間が経過すると、上記変速動作のフェーズがトルクフェーズではないと判定する、
請求項3に記載の車両用エンジン回転数表示装置。
上記応答性変更部は、上記擬似回転数を進み補正した値に基づいて上記エンジン回転数表示部を制御することにより、上記エンジン回転数表示部の表示の応答性を高くする、
請求項6に記載の車両用エンジン回転数表示装置。
上記応答性変更部は、理論上の最短時間で変速制御が終了したときの理想終了時点を迎えると上記擬似回転数の進み補正を終了し、当該理想終了時点より後は、進み補正されていない擬似回転数に基づいて上記エンジン回転数表示部を制御する、
請求項7または8に記載の車両用エンジン回転数表示装置。
上記応答性変更部は、変速制御が終了した後の所定期間、上記エンジン回転数の検出値と上記擬似回転数との双方に基づいて上記エンジン回転数表示部を制御するとともに、時間経過ととともにエンジン回転数の検出値の重み付けを徐々に増やす、
請求項6〜10のいずれか1項に記載の車両用エンジン回転数表示装置。
エンジンと、エンジンに連結された自動変速機と、自動変速機を制御する自動変速機制御部と、を備えた車両に設けられたエンジン回転数表示装置を制御する方法であって、
エンジン回転数を検出するステップと、
上記検出されたエンジン回転数をなまし処理した値に基づき、上記エンジン回転数表示装置による表示を制御するステップと、を有し、
上記エンジン回転数表示装置による表示を制御するステップは、
上記自動変速機制御部により上記自動変速機の変速制御が行われているときに、上記自動変速機の変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであるか否かを判定するステップと、
上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定されたときに、上記検出されたエンジン回転数に対する上記エンジン回転数表示装置の表示の応答性を、上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズではないときよりも高くするステップと、を有し、
上記表示の応答性を高くするステップでは、上記なまし処理におけるなまし処理量をイナーシャフェーズでないときよりも減少させる、
ことを特徴とする車両用エンジン回転数表示装置の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両用エンジン回転数表示装置及び車両用エンジン回転数表示装置の制御方法を説明する。
【0018】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態によるエンジン回転数表示装置を搭載した車両の機械的構成について説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態によるエンジン回転数表示装置を搭載した車両の機械的構成を示すブロック図である。本図に示される車両1は、エンジン2と、エンジン2の動力を所望の回転数及びトルクに変換して出力する自動変速機4と、自動変速機4から出力された動力を駆動輪8に伝達するデファレンシャルギア6と、デファレンシャルギア6を介して入力された動力を路面に伝えて車両1を駆動する駆動輪8とを有している。また、車両1には、バッテリ10に電力を供給するオルタネータ12やエアコン14が搭載されており、エンジン2の動力は、これらのオルタネータ12やエアコン14のコンプレッサにも伝達される。
【0020】
自動変速機4は、エンジン2の出力軸に連結されるトルクコンバータ16と、トルクコンバータ16の出力軸に連結される変速機構18と、変速機構18に油圧を供給するオイルポンプ20とを備えている。トルクコンバータ16は、エンジン2の動力を流体により変速機構18に伝達するトーラス22と、エンジン2と変速機構18とを機械的に直結させるロックアップクラッチ24とを備えている。また、変速機構18は、複数の変速段を実現するための遊星歯車機構を含み、歯車の組合せを切り替えることにより回転数及びトルクの伝達比を変更する。歯車の組合せの切り替えは、オイルポンプ20から供給される油圧を利用して行われる。
【0021】
次に、上記エンジン回転数表示装置を含む車両1の電気的構成について説明する。
【0022】
図2は、上記エンジン回転数表示装置を含む車両1の電気的構成を示すブロック図である。本図に示すように、エンジン回転数表示装置は、エンジン2の出力軸の回転数(エンジン回転数)を検出するエンジン回転数センサ26と、エンジン回転数を表示するタコメータ28と、タコメータ28による表示を制御するタコメータ制御部30とを有している。
【0023】
エンジン回転数センサ26は、請求項にいう「エンジン回転数検出部」に相当する。本実施形態において、エンジン回転数センサ26は、エンジン回転数を示す信号を所定時間(例えば10msec)ごとにタコメータ制御部30に出力する。
【0024】
タコメータ28は、請求項にいう「エンジン回転数表示部」に相当する。本実施形態において、タコメータ28は、エンジン回転数を表した目盛りと、エンジン回転数に応じた位置の目盛りを指示する指針とを備えている。
【0025】
タコメータ制御部30は、請求項にいう「表示制御部」に相当する。本実施形態において、タコメータ制御部30は、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数に基づき、タコメータ28の指針の動きを制御する。また、タコメータ制御部30は、その機能的要素として、なまし演算部30aと、フェーズ判定部30bと、応答性変更部30cとを有している。
【0026】
なまし演算部30aは、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数の時系列データを平均化するなまし処理を実行するものである。より具体的に、なまし演算部30aは、エンジン回転数センサ26から所定時間ごとに入力されるエンジン回転数の直近の複数回分のデータ(時系列データ)を平均化する処理を実行する。タコメータ28の指針の動きは、このようななまし処理後のエンジン回転数に基づいて制御される。エンジン回転数をなまし処理する理由は、直近の1回分のデータだけを用いてタコメータ28の指針の動きを制御した場合には指針が細かく揺れ動いて視認し難くなるからである。
【0027】
フェーズ判定部30bは、自動変速機4の変速時に、変速動作のフェーズがトルクフェーズであるかイナーシャフェーズであるかを判定するものである。トルクフェーズとは、変速指令が出されたとき若しくは変速制御の開始を示す所定の状態が確認されたときから、イナーシャフェーズが開始されるまでの期間のことである。このトルクフェーズでは、実質的なギヤ比の変更はまだ行われていないため、エンジン回転数(または後述するタービン回転数)は大きく変化しない。一方、イナーシャフェーズとは、トルクフェーズの終了後にエンジン回転数(またはタービン回転数)が変化する期間のことである。このイナーシャフェーズでは、実質的なギヤ比の変更が行われるため、エンジン回転数(またはタービン回転数)は変速後のギヤ比に対応する回転数に向けて急激に変化する。
【0028】
応答性変更部30cは、フェーズ判定部30bにより変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであることが確認された場合に、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数に対するタコメータ28の表示の応答性を、イナーシャフェーズでないときよりも高くするものである。より具体的に、応答性変更部30cは、なまし演算部30aによるなまし処理量を減少させる(つまり平均化するエンジン回転数の時系列データの数を少なくする)ことにより、タコメータ28の表示の応答性を高くする。
【0029】
また、車両1には、トルクコンバータ16の出力軸の回転数(タービン回転数)を検出するタービン回転数センサ32、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ34、車両1の速度を検出する車速センサ36、自動変速機4にアップ変速を指令するためのマニュアル操作を受け付けるシフトアップスイッチ38、自動変速機4にダウン変速を指令するためのマニュアル操作を受け付けるシフトダウンスイッチ40、及び、自動変速機4を操作するためのセレクターのレンジを検出するレンジセンサ42が搭載されている。これらのセンサやスイッチから出力された信号は、コントロールユニット44に入力される。
【0030】
コントロールユニット44は、入力された信号に基づき、自動変速機4の変速機構18及びロックアップクラッチ24、エンジン2、オルタネータ12、エアコン14等を制御する。また、コントロールユニット44は、タコメータ制御部30がタコメータ28による表示を制御するときに参照する信号を、タコメータ制御部30に出力する。
【0031】
コントロールユニット44は、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのROMやRAMの如き内部メモリを備えるコンピュータにより構成される。なお、コントロールユニット44は、上記のように自動変速機4を制御する機能を有するので、請求項にいう「自動変速機制御部」に相当する。
【0032】
次に、タコメータ制御部30によるタコメータ28の表示制御について説明する。
【0033】
図3は、自動変速機4のアップ変速時におけるエンジン回転数の変化と、エンジン回転数に対する応答性を変化させた場合にタコメータ28に表示されるエンジン回転数の変化を示す線図である。
【0034】
タコメータ制御部30は、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数を、所定の応答性によりタコメータ28に表示させる。タコメータ制御部30は、この表示の応答性を、後述するエンジン回転数の表示制御(
図4)中に設定される応答性フラグのON/OFFに応じて変化させる。
【0035】
図3において、実線は、エンジン回転数センサ26により検出される実際のエンジン回転数の変化を示し、破線は、応答性フラグがONの場合にタコメータ28の指針により指示されたエンジン回転数の変化を示し、二点鎖線は、応答性フラグがOFFの場合にタコメータ28の指針により指示されたエンジン回転数の変化を示している。
【0036】
この
図3に示すように、タコメータ制御部30は、応答性フラグがONであるときには、応答性フラグがOFFであるときよりもタコメータ28の応答性を高くする。即ち、タコメータ制御部30は、応答性フラグがONであるとき、タコメータ28の指針を、応答性フラグがOFFであるときよりもエンジン回転数の変化に敏速に追随するように動作させる。
【0037】
次に、タコメータ制御部30が行うエンジン回転数の表示制御について説明する。
【0038】
図4は、エンジン回転数の表示制御の具体的手順を示すフローチャートであり、
図5は、自動変速機4のアップ変速時におけるエンジン回転数及びタービン回転数の変化を応答性フラグの変化と併せて示すタイミングチャートである。この
図5において、横軸は時間を示し、縦軸は、エンジン回転数(実線)及びタービン回転数(一点鎖線)と、応答性フラグのON/OFFとを示している。
【0039】
エンジン回転数の表示制御は、車両1のイグニッションがオンにされたときに開始され、その後繰り返し実行される。この表示制御の開始時点において、応答性フラグは予めOFFに設定されている。
【0040】
まず、
図4に示すように、表示制御が開始されると、コントロールユニット44は、エンジン回転数センサ26、タービン回転数センサ32、アクセルポジションセンサ34、車速センサ36、シフトアップスイッチ38、シフトダウンスイッチ40、及び、レンジセンサ42から出力された信号を読み込む(ステップS1)。
【0041】
次に、コントロールユニット44は、車両1が走行中か否かを判定する(ステップS2)。本実施形態においては、コントロールユニット44は、車速センサ36により検出された車速が5km/h以上である場合に、車両1が走行中であると判定する。
【0042】
車両1が走行中ではない(車速が5km/h未満である)場合、自動変速機4の変速時におけるエンジン回転数の変化量が小さいので、タコメータ28の表示の応答性を高める必要性は低いと考えられる。そこで、ステップS2でNOと判定された場合、コントロールユニット44は、以降の処理をスキップし、フローをステップS1に戻す。
【0043】
一方、ステップS2でYESと判定されて車両1が走行中である(車速が5km/h以上である)ことが確認された場合、コントロールユニット44は、自動変速機4の変速制御が実行中か否かを判定する(ステップS3)。具体的に、コントロールユニット44は、予め定められた自動変速用のシフトマップ、又は、シフトアップスイッチ38やシフトダウンスイッチ40から入力されたマニュアル操作に従って、自動変速機4に変速指令を出力する。そして、変速指令の出力時点からオイルポンプ20による変速機構18の油圧制御が完了するまでの期間中、自動変速機4の変速制御が実行中であると判定する。
【0044】
自動変速機4の変速制御が実行中ではない場合、エンジン回転数の変化速度が低いので、タコメータ28の表示の応答性を高める必要性は低いと考えられる。そこで、ステップS3でNOと判定された場合、コントロールユニット44は、以降の処理をスキップし、フローをステップS1に戻す。
【0045】
一方、ステップS3でYESと判定されて自動変速機4の変速制御が実行中であることが確認された場合、即ち、自動変速機4に変速指令が入力された後でかつオイルポンプ20による変速機構18の油圧制御が完了する前の期間であることがコントロールユニット44により確認された場合、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、自動変速機4の変速動作のフェーズがトルクフェーズであるか否かを判定する(ステップS4)。
【0046】
具体的に、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、
図5に示すように、変速指令が入力されたことにより自動変速機4の変速制御が開始されてから所定時間T
1が経過していない場合に、自動変速機4の変速動作のフェーズがトルクフェーズであると判定し、所定時間T
1が経過した場合に、トルクフェーズではないと判定する。
【0047】
上記変速動作のフェーズがトルクフェーズである場合、エンジン回転数の変化速度が低いので、タコメータ28の表示の応答性を高める必要性は低いと考えられる。そこで、ステップS4でYESと判定された場合、タコメータ制御部30は、以降の処理をスキップし、フローをステップS1に戻す。
【0048】
一方、ステップS4でNOと判定されて変速動作のフェーズがトルクフェーズではないことが確認された場合、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであるか否かを判定する(ステップS5)。具体的に、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数が、自動変速機4の変速後の目標回転数に向かって変化した場合(アップ変速時は回転数が減少した場合、ダウン変速時は回転数が増加した場合)に、イナーシャフェーズであると判定する。自動変速機4の変速後の目標回転数は、車速と、自動変速機4の変速後のギヤ比と、最終減速比とから算出される。
【0049】
例えば、アップ変速時には、
図5に示すように、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数が減少した場合に、イナーシャフェーズであると判定する。
【0050】
上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズ(エンジン回転数が急激に変化する期間)ではない場合、タコメータ28の表示の応答性を高める必要性は低いと考えられる。そこで、ステップS5でNOと判定された場合、タコメータ制御部30は、以降の処理をスキップし、フローをステップS1に戻す。
【0051】
一方、ステップS5でYESと判定されて変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであることが確認された場合、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、
図5に示すように、タコメータ28の応答性フラグをOFFからONに切り換える(ステップS6)。
【0052】
応答性フラグがONになったことを受けて、タコメータ制御部30の応答性変更部30cは、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数に対するタコメータ28の表示の応答性を高くする(ステップS7)。具体的に、タコメータ制御部30の応答性変更部30cは、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数をなまし演算部30aがなまし処理する際のなまし処理量を減少させることにより、タコメータ28の表示の応答性を高くする。
【0053】
次に、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、イナーシャフェーズが終了したか否かを判定する(ステップS8)。具体的に、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、自動変速機4の変速後の目標回転数に向かうエンジン回転数の変化が終了した場合(アップ変速時は回転数の減少が終了した場合、ダウン変速時は回転数の増加が終了した場合)に、イナーシャフェーズが終了したと判定する。
【0054】
例えば、アップ変速時には、
図5に示すように、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数が減少から増加に転じた場合に、イナーシャフェーズが終了したと判定する。
【0055】
ステップS8でNOと判定されてイナーシャフェーズが終了していないことが確認された場合、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、イナーシャフェーズが終了するまでステップS8を繰り返す。
【0056】
一方、ステップS8でYESと判定されてイナーシャフェーズが終了したことが確認された場合、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、ステップS8においてイナーシャフェーズが終了したと判定してから所定時間T
2(例えば180msec)が経過したか否かを判定する(ステップS9)。
【0057】
ステップS9でNOと判定されてイナーシャフェーズの終了後所定時間T
2が経過していないことが確認された場合、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、所定時間T
2が経過するまでステップS9を繰り返す。
【0058】
一方、ステップS9でYESと判定されてイナーシャフェーズの終了後所定時間T
2が経過した場合、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、
図5に示すように、タコメータ28の応答性フラグをONからOFFに切り換える(ステップS10)。
【0059】
応答性フラグがOFFになったことを受けて、タコメータ制御部30の応答性変更部30cは、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数に対するタコメータ28の表示の応答性を低下させる(ステップS11)。具体的に、タコメータ制御部30の応答性変更部30cは、なまし演算部30aによるエンジン回転数のなまし処理量を通常に戻す(ステップS7のときよりも増大させる)ことにより、タコメータ28の表示の応答性を低下させる。
【0060】
なお、
図3では、エンジン回転数の表示の応答性を高める制御をアップ変速時のイナーシャフェーズ中に実行した場合におけるエンジン回転数等の変化を示したが、応答性を高める制御は、アップ変速時だけでなくダウン変速時にも同様に適用することができる。ただし、ダウン変速の場合はイナーシャフェーズ中にエンジン回転数が上昇するので、ダウン変速時に応答性を高めた場合には、エンジン回転数の上昇変化が際立つような表示がなされることになる。
【0061】
次に、上述した本発明の第1実施形態による車両用エンジン回転数表示装置の作用効果を説明する。
【0062】
タコメータ制御部30は、自動変速機4の変速中に変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定されたときに、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数をなまし処理する際のなまし処理量を減少させるので、イナーシャフェーズのときのタコメータ28の表示の応答性をイナーシャフェーズでないときよりも高くすることができ、変速時におけるエンジン回転数の変化が際立つようにエンジン回転数をタコメータ28に表示させることができる。
【0063】
これにより、ドライバは、変速時におけるエンジン回転数の鋭い変化を、タコメータ28の表示の変化から視覚により感じ取ることができる。
【0064】
特に、タコメータ制御部30は、エンジン回転数が変速後の目標回転数に向かって変化した場合に、変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定する。即ち、エンジン回転数が目標回転数から離れるように変化している場合にはイナーシャフェーズであると判定されないので、エンジン回転数が目標回転数から離れるように変化しているときにタコメータ28の表示の応答性が上昇させられるのを防止できる。これにより、変速後の目標回転数から離れるようなエンジン回転数の変化が際立つことによってドライバが違和感を覚えることを防止できる。
【0065】
また、タコメータ制御部30は、変速動作のフェーズがトルクフェーズではないと判定されたときに、変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであるか否かを判定する。即ち、タコメータ制御部30は、トルクフェーズにおいては、変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであるか否かを判定しないので、トルクフェーズ中にドライバのアクセル操作によりエンジン回転数が変速後の目標回転数に向かって変化した場合に、この変化によりイナーシャフェーズであると誤判定することを防止できる。これにより、イナーシャフェーズではないにも関わらずタコメータ28の表示の応答性が高められるのを防止できる。
【0066】
また、タコメータ制御部30は、自動変速機4の変速制御が開始されてからの時間経過に基づき、変速動作のフェーズがトルクフェーズであるか否かを判定するので、トルクフェーズの判定を簡易な手順により行うことができる。
【0067】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態にかかる車両用エンジン回転数表示装置について説明する。なお、第2実施形態では、タコメータ28の応答性を変更する手法が異なる以外は、基本的に上記第1実施形態と同様である。したがって、ここでは応答性の変更に関わる制御動作を中心に説明する。
【0068】
図6は、エンジン回転数の表示制御の具体的手順を示すフローチャートであり、
図7は、自動変速機4のアップ変速時におけるエンジン回転数やタービン回転数等の変化を応答性フラグ等の変化と併せて示すタイミングチャートである。
【0069】
図6のフローチャートに示す制御がスタートすると、コントロールユニット44またはタコメータ制御部30は、各種センサまたはスイッチから出力された信号を読み込み(ステップS21)、車両1が走行中か否かを判定し(ステップS22)、自動変速機4の変速制御が実行中か否かを判定し(ステップS23)、変速動作のフェーズがトルクフェーズであるか否かを判定し(ステップS24)、変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであるか否かを判定する(ステップS25)。なお、これら各ステップS21〜S25の制御は、先の第1実施形態において説明した
図4のフローチャートのステップS1〜S5の制御と同様であるので、各ステップの詳細な内容についてはその説明を省略する。
【0070】
ステップS25でYESと判定されて変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであることが確認された場合、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、
図7に示すように、タコメータ28の応答性フラグをOFFからONに切り換える(ステップS26)。
【0071】
応答性フラグがONになったことを受けて、タコメータ制御部30の応答性変更部30cは、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数に対するタコメータ28の表示の応答性を高くする(ステップS27)。具体的に、タコメータ制御部30の応答性変更部30cは、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数から、所定の予測時間(例えば70〜90msec)が経過した後のエンジン回転数を予測し、このエンジン回転数の予測値に基づいてタコメータ28の指針の動きを制御することにより、タコメータ28の表示の応答性を高くする。なお、以下では、所定の予測時間が経過した後のエンジン回転数を予測することを「進み補正」といい、エンジン回転数の予測値のことを「進み補正後のエンジン回転数」という。
【0072】
例えば、タコメータ制御部30のなまし演算部30aがなまし処理後のエンジン回転数を演算により求める時間間隔をΔt(例えば10msec)、なまし演算部30aによるエンジン回転数の直近の演算値をn1、それより1つ前の演算値をn2、上記予測時間をTとすると、進み補正後のエンジン回転数n’は、下式(1)により演算することができる。
【0073】
n’=n1+(n1−n2)×(T/Δt)‥‥(1)
【0074】
図7に例示するアップ変速時のタイミングチャートでは、進み補正後のエンジン回転数の値を破線のカーブで示している。図示のとおり、進み補正後のエンジン回転数の値は、エンジン回転数が低下するイナーシャフェーズにおいて、実線のカーブで示される実エンジン回転数(エンジン回転数センサ26により検出される実際のエンジン回転数)よりも低く算出される。一方、イナーシャフェーズの終了後に実エンジン回転数が上昇に転じると、進み補正後のエンジン回転数の値は、実エンジン回転数よりも高く算出される。
【0075】
また、
図7では、タコメータ28に表示されるエンジン回転数の値を2点鎖線のカーブで示している。上記のような進み補正後のエンジン回転数の値に基づいてタコメータ28の指針の動きが制御されることにより、タコメータ28に表示されるエンジン回転数の値(指針が指し示す値)は、実エンジン回転数に対しほとんど遅れなく変化するようになる(つまり表示の応答性が高くなる)。
【0076】
なお、タコメータ28に表示されるエンジン回転数の値は、進み補正後のエンジン回転数の値に比べれば若干遅れて変化することになるが、これは、タコメータ28の指針の動きが自身の慣性等により若干遅れるからである。このため、仮にエンジン回転数の進み補正が行われなかった場合には、実エンジン回転数の変化に対し遅れて指針が追随するようになる(例えば
図3に示した2点鎖線のライン参照)。これに対し、
図7の例では、エンジン回転数の進み補正量が適切に設定されることにより、上記遅れ分がほぼ打ち消され、実エンジン回転数の変化に対し忠実に指針が追随するようになる。
【0077】
上記のようにしてタコメータ28の表示の応答性を高める制御が開始された後、コントロールユニット44は、自動変速機4の変速制御が終了したか否かを判定する(ステップS28)。この判定は、例えばオイルポンプ20から変速機構18の遊星歯車機構に供給される油圧(ライン圧)に基づいて行われる。
【0078】
ステップS28でYESと判定されて変速制御が終了したことが確認された場合、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、
図7に示すように、タコメータ28の応答性フラグをONからOFFに切り換える(ステップS29)。
【0079】
応答性フラグがOFFになったことを受けて、タコメータ制御部の応答性変更部30cは、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数に対するタコメータ28の表示の応答性を徐々に低下させる(ステップS30)。具体的に、タコメータ制御部30の応答性変更部30cは、エンジン回転数の進み補正量を徐々に減少させる(つまり上記式(1)における予測時間Tを徐々に小さくして最終的にゼロにする)ことにより、タコメータ28の表示の応答性を徐々に低下させる。進み補正量がゼロになると、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数をなまし処理しただけの値に基づいてタコメータ28の指針の動きが制御されるようになり、実エンジン回転数の変化に対し遅れて指針が追随する通常の状態に戻ることになる。
【0080】
図7では、イナーシャフェーズへの移行に伴い応答性フラグがONになったときの進み補正量を100%として図示している。その後、変速制御が終了して応答性フラグがOFFになると、その時点から上記ステップS30の制御が開始されることにより、進み補正量が徐々に小さくなり、最終的に0%になる。つまり、応答性フラグがOFFになって以降、進み補正後のエンジン回転数の値は、徐々に実エンジン回転数に近づいていく。
【0081】
なお、
図7では、エンジン回転数の表示の応答性を高める制御をアップ変速時のイナーシャフェーズ中に実行した場合におけるエンジン回転数等の変化を示したが、応答性を高める制御は、アップ変速時だけでなくダウン変速時にも同様に適用することができる。
【0082】
以上説明した第2実施形態の車両用エンジン回転数表示装置によれば、変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定されたときに、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数を進み補正した値に基づいてタコメータ28が制御されるので、イナーシャフェーズのときのタコメータ28の表示の応答性を高めることができ、変速時におけるエンジン回転数の変化が際立つようにエンジン回転数をタコメータに表示させることができる。
【0083】
なお、上記第2実施形態では、
図6のステップS28において、変速制御が実際に終了したか否かを油圧に基づき判定し、変速制御の終了が確認された時点で応答性フラグをOFFに設定したが(ステップS29)、これに代えて、実エンジン回転数の変化に基づいてイナーシャフェーズが終了したか否かを判定し、イナーシャフェーズが終了した時点で応答性フラグをOFFに設定してもよい。あるいは、第1実施形態と同様に、イナーシャフェーズが終了してから所定時間が経過した時点で応答性フラグをOFFに設定してもよい。
【0084】
また、上記第2実施形態では、所定の時間間隔おきに演算されるなまし処理後のエンジン回転数の履歴(過去2回分の値)に基づいて、所定の予測時間(例えば70〜90msec)が経過した後のエンジン回転数を予測計算し(上記式(1))、これを進み補正後のエンジン回転数として採用するようにしたが、進み補正の具体的な方法はこれ以外にも種々考えられる。例えば、予測計算に用いるなまし処理後のエンジン回転数の履歴として、過去3回分もしくはそれ以上の回数分の値を採用してもよい。
【0085】
あるいは、過去の一定期間に亘ってエンジン回転数センサ26により検出された実際のエンジン回転数の変化傾向から、上記予測時間(例えば70〜90msec)が経過した後のエンジン回転数を求め、これを進み補正後のエンジン回転数として採用してもよい。
【0086】
さらに、上記予測時間を可変的に設定してもよい。例えば、自動変速機の変速モードとしてスポーツモード(マニュアルモード)が選択されている場合には、ノーマルモードのときよりも予測時間を長めに(例えば90〜110msec先に)設定してもよい。
【0087】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態にかかる車両用エンジン回転数表示装置について説明する。この、第3実施形態も、タコメータ28の応答性を変更する手法が異なる以外は、基本的に上記第1実施形態と同様である。したがって、ここでは応答性の変更に関わる制御動作を中心に説明する。
【0088】
図8は、エンジン回転数の表示制御の具体的手順を示すフローチャートであり、
図9は、自動変速機4のアップ変速時におけるエンジン回転数やタービン回転数等の変化を応答性フラグ等の変化と併せて示すタイミングチャートである。
【0089】
図8のフローチャートに示す制御がスタートすると、コントロールユニット44またはタコメータ制御部30は、各種センサまたはスイッチから出力された信号を読み込み(ステップS41)、車両1が走行中か否かを判定し(ステップS42)、自動変速機4の変速制御が実行中か否かを判定し(ステップS43)、変速動作のフェーズがトルクフェーズであるか否かを判定し(ステップS44)、変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであるか否かを判定する(ステップS45)。なお、これら各ステップS41〜S45の制御は、先の第1実施形態において説明した
図4のフローチャートのステップS1〜S5の制御と同様であるので、各ステップの詳細な内容についてはその説明を省略する。
【0090】
ステップS45でYESと判定されて変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであることが確認された場合、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、
図9に示すように、タコメータ28の応答性フラグをOFFからONに切り換える(ステップS46)。
【0091】
応答性フラグがONになったことを受けて、タコメータ制御部30の応答性変更部30cは、タコメータ28の表示の応答性を高くする(ステップS47)。具体的に、タコメータ制御部30の応答性変更部30cは、変速時の理想的なタービン回転数である理想タービン回転数(請求項にいう「擬似回転数」に相当)をさらに進み補正した値に基づいてタコメータ28の指針の動きを制御することにより、タコメータ28の表示の応答性を高くする。
【0092】
変速時の理想タービン回転数とは、遅れのない理想的な変速が行われた場合のトルクコンバータ16の出力軸の回転数のことであり、所定の演算により求めることができる。例えば、イナーシャフェーズに移行する直前の理想タービン回転数は、変速前の変速機構18のギヤ比と、イナーシャフェーズ直前の車速とを用いて求めることができる。また、イナーシャフェーズ中に変化する理想タービン回転数の傾き(変化率)は、変速機構18の遊星歯車機構の歯車の組合せを切り替えるのに要する理論上の最短時間(理想変速時間)と、変速後のギヤ比とを用いて求めることができる。さらに、変速後の理想タービン回転数は、変速後のギヤ比と車速とを用いて求めることができる。かかる演算により理想タービン回転数を求めるため、例えばコントロールユニット44の記憶部には、各変速段のギヤ比や、各変速段の間で変速を行ったときの理想変速時間等が予め記憶されている。
【0093】
図9では、実タービン回転数(タービン回転数センサ32により検出される実際のタービン回転数)を太い1点鎖線のカーブで示し、理想タービン回転数を細い実線のカーブで示している。
図9において、イナーシャフェーズに移行した直後から、タービン回転数の図示を実タービン回転数(太い1点鎖線)から理想タービン回転数(細い実線)に切り替えているのは、その時点から、タコメータ28の表示を制御するための基準値が理想タービン回転数に切り替えられたことを表している。理想タービン回転数は理論上の最短時間(理想変速時間)で変速が行われた場合の回転数であるから、理想タービン回転数の傾きは、実タービン回転数よりも大きく(急峻に)なる。
【0094】
さらに、
図9では、上記理想タービン回転数を進み補正した値を破線のカーブで示している。ここでの進み補正は、過去の理想タービン回転数の変化から、現時点より所定時間(例えば70〜90msec)先の理想タービン回転数を予測するものである。
【0095】
上記のような進み補正後の理想タービン回転数の値に基づいてタコメータ28の指針の動きが制御されることにより、タコメータ28に表示されるエンジン回転数の値(2点鎖線)は、理想タービン回転数に対しほとんど遅れなく変化するようになる(つまり表示の応答性が高くなる)。
【0096】
上記のようにしてタコメータ28の表示の応答性を高める制御が開始された後、コントロールユニット44は、イナーシャフェーズに移行してから理想変速時間が経過したか否か、つまり変速制御の理想終了時点に到達したか否かを判定する(ステップS48)。
【0097】
ステップS48でYESと判定されて変速制御の理想終了時点であることが確認された場合、タコメータ制御部30の応答性変更部30cは、理想タービン回転数に基づいてタコメータ28の指針の動きを制御することにより、タコメータ28の表示の応答性を高くする(ステップS49)。ただし、このステップS49では、先のステップS47と異なり、理想タービン回転数を進み補正することは行われないので、進み補正が行われるステップS47のときに比べれば、表示の応答性は低くなる。
【0098】
図9では、イナーシャフェーズへの移行に伴い応答性フラグがONになったときの進み補正量を100%としている。その後、変速制御の理想終了時点を迎えるのに伴い、上記ステップS49の制御が実行されて、進み補正量が一気に0%まで低下する。この進み補正量の低下に伴い、タコメータ28の表示回転数は、理想タービン回転数の変化に対し若干遅れて追随するようになる(つまり応答性が低下する)。ただし、理想タービン回転数は実エンジン回転数よりも早めに変化するので、たとえ進み補正量が0%になっても、実エンジン回転数に基づきタコメータ28の表示を制御する場合に比べれば応答性は高いといえる。
【0099】
上記のようにして応答性を中程度に高める制御が開始された後、コントロールユニット44は、自動変速機4の変速制御が実際に終了したか否かを判定する(ステップS50)。この判定は、例えばオイルポンプ20から変速機構18の遊星歯車機構に供給される油圧(ライン圧)に基づいて行われる。
【0100】
ステップS50でYESと判定されて変速制御が実際に終了したことが確認された場合、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、
図9に示すように、タコメータ28の応答性フラグをONからOFFに切り換える(ステップS51)。
【0101】
応答性フラグがOFFになったことを受けて、タコメータ制御部の応答性変更部30cは、タコメータ28の表示の応答性を徐々に低下させる(ステップS52)。具体的に、タコメータ制御部30の応答性変更部30cは、タコメータ28の表示を制御するための基準値を、理想タービン回転数から実エンジン回転数へと徐々に戻すことにより、タコメータの表示の応答性を低下させる。例えば、
図9に示すように、理想タービン回転数と実エンジン回転数との重み付けを100:0から0:100へと徐々に変化させる処理が行われることにより、タコメータ28の表示を制御するための基準値が理想タービン回転数から実エンジン回転数へと徐々に戻される。
【0102】
なお、
図9では、エンジン回転数の表示の応答性を高める制御をアップ変速時のイナーシャフェーズ中に実行した場合におけるエンジン回転数等の変化を示したが、応答性を高める制御は、アップ変速時だけでなくダウン変速時にも同様に適用することができる。ただし、ダウン変速時には、変速前にエンジン回転数が一時的に上昇させられることがあり、場合によっては、実エンジン回転数の方が理想タービン回転数よりも早めに変化することがある。そこで、このような場合に限っては、理想タービン回転数ではなく実エンジン回転数に基づいてタコメータ28の表示を制御するとよい。
【0103】
以上説明した第3実施形態の車両用エンジン回転数表示装置によれば、変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定されたときに、エンジン回転数センサ26によるエンジン回転数の検出値とは独立した理想タービン回転数(擬似回転数)に基づいてタコメータ28が制御されるので、イナーシャフェーズのときのタコメータ28の表示の応答性を高めることができ、変速時におけるエンジン回転数の変化が際立つようにエンジン回転数をタコメータに表示させることができる。
【0104】
以上説明した各実施形態では、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、エンジン回転数センサ26により検出されたエンジン回転数が、自動変速機4の変速後の目標回転数に向かって変化した場合にイナーシャフェーズであると判定し、自動変速機4の変速後の目標回転数に向かうエンジン回転数の変化が終了した場合にイナーシャフェーズが終了したと判定すると説明したが、タービン回転数センサ32により検出されたタービン回転数に基づいてイナーシャフェーズの開始及び終了を判定するようにしてもよい。即ち、タコメータ制御部30のフェーズ判定部30bは、タービン回転数センサ32により検出されたタービン回転数が、自動変速機4の変速後の目標回転数に向かって変化した場合にイナーシャフェーズであると判定し、自動変速機4の変速後の目標回転数に向かうタービン回転数の変化が終了した場合にイナーシャフェーズが終了したと判定するようにしてもよい。
【0105】
また、上記各実施形態では、コントロールユニット44とは別体に、なまし演算部30a、フェーズ判定部30b、および応答性変更部30cを含むタコメータ制御部30を設けたが、これらをコントロールユニット44と一体に設けてもよい。
【0106】
また、上記各実施形態では、自動変速機4の変速制御が開始された後、まずトルクフェーズであるか否かを判定し、当該判定でトルクフェーズでないことが確認された場合に、はじめてイナーシャフェーズであるか否かを判定するようにしたが、どのような条件下でイナーシャフェーズの判定を開始するかは、上記実施形態の態様以外にも種々考えられる。例えば、変速制御が開始されたことが確認された後、トルクフェーズの判定をすることなく、直ちにイナーシャフェーズの判定を開始してもよい。また、上記実施形態では、自動変速機4に変速指令が入力された場合に変速制御が開始された(変速制御の実行中である)と判定したが、変速制御が実行中か否かは、変速制御に関する何らかの状態量に基づいて判定すればよく、変速指令の情報は必ずしも必要ではない(この場合もトルクフェーズの判定は省略可能である)。
【0107】
さらに、イナーシャフェーズの判定の方法についても、種々の変更が考えられる。すなわち、上記実施形態では、エンジン回転数が変速後の目標回転数に向かって変化した場合にイナーシャフェーズであると判定したが、変速後の目標回転数(車速と変速後のギヤ比と最終減速比とから算出される変速後の回転数)は、当該判定をするのに必ずしも必要ではない。例えば、変速後の目標回転数を算出する代わりに、ドライバのシフト操作に基づいてアップ変速かダウン変速かを判定してもよい。そして、アップ変速と判定された状態で回転数が減少した場合、または、ダウン変速と判定された状態で回転数が上昇した場合に、イナーシャフェーズであると判定してもよい。
【0108】
いずれにせよ、イナーシャフェーズか否かの判定は、変速に伴うエンジン回転数(またはタービン回転数)の変化が起きたことを確認する判定であればよく、そのための具体的な方法は特に問わない。
【0109】
<実施形態のまとめ>
最後に、上記実施形態の中で開示された特徴的な構成及びそれに基づく作用効果についてまとめて説明する。
【0110】
上記実施形態のエンジン回転数表示装置は、エンジンと、エンジンに連結された自動変速機と、自動変速機を制御する自動変速機制御部と、を備えた車両に設けられている。この表示装置は、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出部と、エンジン回転数を表示するエンジン回転数表示部と、上記エンジン回転数検出部により検出されたエンジン回転数に基づき、上記エンジン回転数表示部による表示を制御する表示制御部と、を有する。上記表示制御部は、上記自動変速機制御部により上記自動変速機の変速制御が行われているときに、上記自動変速機の変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであるか否かを判定するフェーズ判定部と、上記フェーズ判定部により上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定されたときに、上記エンジン回転数検出部により検出されたエンジン回転数に対する上記エンジン回転数表示部の表示の応答性を、上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズではないときよりも高くする応答性変更部と、を有する。
【0111】
上記表示装置によれば、自動変速機の変速制御が開始された後、変速動作のフェーズがイナーシャフェーズ(変速に伴いエンジン回転数が変化する期間)であると判定されたときに、エンジン回転数検出部により検出されたエンジン回転数に対するエンジン回転数表示部の表示の応答性が、イナーシャフェーズではないときよりも高くされるので、変速時におけるエンジン回転数の変化が際立つようにエンジン回転数をエンジン回転数表示部に表示させることができる。
【0112】
これにより、ドライバは、変速時におけるエンジン回転数の鋭い変化を、エンジン回転数表示部の表示の変化から視覚により感じ取ることができる。
【0113】
上記表示装置において、好ましくは、上記表示制御部は、上記エンジン回転数検出部により検出されたエンジン回転数のなまし処理を実行するなまし演算部を有する。上記応答性変更部は、上記フェーズ判定部により上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定されたときに、上記なまし演算部によるなまし処理量をイナーシャフェーズでないときよりも減少させることにより、上記エンジン回転数表示部の表示の応答性を高くする。
【0114】
この構成によれば、エンジン回転数の検出値をなまし処理する際のなまし処理量を減少させることにより、イナーシャフェーズのときの表示の応答性を確実に高めることができる。
【0115】
上記表示装置において、好ましくは、上記フェーズ判定部は、上記エンジン回転数検出部により検出されたエンジン回転数が、上記自動変速機の変速後の目標回転数に向かって変化した場合に、上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定する。
【0116】
この構成によれば、フェーズ判定部は、エンジン回転数が変速後の目標回転数に向かって変化した場合に、変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定する。即ち、エンジン回転数が目標回転数から離れるように変化している場合にはイナーシャフェーズであると判定されないので、エンジン回転数が目標回転数から離れるように変化しているときに、エンジン回転数表示部の表示の応答性が高められるのを防止できる。これにより、変速後の目標回転数から離れるようなエンジン回転数の変化が際立つことによってドライバが違和感を覚えることを防止できる。
【0117】
また、上記表示装置において、好ましくは、上記フェーズ判定部は、上記自動変速機制御部により上記自動変速機の変速制御が行われているときに、上記変速動作のフェーズがトルクフェーズであるか否かを判定し、当該判定によりトルクフェーズでないことが確認された場合に、上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであるか否かを判定する。
【0118】
このように構成によれば、フェーズ判定部は、変速動作のフェーズがトルクフェーズではないと判定されたときに、変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであるか否かを判定する。即ち、フェーズ判定部は、トルクフェーズ中においては、変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであるか否かを判定しないので、トルクフェーズ中にドライバのアクセル操作によりエンジン回転数が変速後の目標回転数に向かって変化した場合に、この変化によりフェーズ判定部がイナーシャフェーズであると誤判定することを防止できる。これにより、イナーシャフェーズではないにも関わらずエンジン回転数表示部の表示の応答性が高められることを防止できる。
【0119】
上記表示装置において、好ましくは、上記フェーズ判定部は、上記自動変速機制御部により上記自動変速機の変速制御が開始されてから所定時間が経過するまでの間、上記変速動作のフェーズがトルクフェーズであると判定し、上記所定時間が経過すると、上記変速動作のフェーズがトルクフェーズではないと判定する。
【0120】
この構成によれば、フェーズ判定部は、自動変速機の変速制御が開始されてからの時間経過に基づき、変速動作のフェーズがトルクフェーズであるか否かを判定するので、トルクフェーズの判定を簡易な手順により行うことができる。
【0121】
上記表示装置において、好ましくは、上記応答性変更部は、上記フェーズ判定部により上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定されたときに、上記エンジン回転数検出部により検出されたエンジン回転数を進み補正した値に基づいて上記エンジン回転数表示部を制御することにより、上記エンジン回転数表示部の表示の応答性を高くする。
【0122】
この構成によれば、エンジン回転数の検出値を進み補正した値に基づいてエンジン回転数表示部を制御することにより、イナーシャフェーズのときの表示の応答性を確実に高めることができる。
【0123】
上記表示装置において、好ましくは、上記応答性変更部は、上記フェーズ判定部により上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定されたときに、上記エンジン回転数検出部によるエンジン回転数の検出値とは異なる擬似回転数に基づいて上記エンジン回転数表示部を制御することにより、上記エンジン回転数表示部の表示の応答性を高くする。
【0124】
この構成によれば、エンジン回転数の検出値とは異なる擬似回転数に基づいてエンジン回転数表示部を制御することにより、イナーシャフェーズのときの表示の応答性を確実に高めることができる。
【0125】
また、上記実施形態は、上記エンジン回転数表示装置を制御する方法を開示する。この制御方法は、エンジン回転数を検出するステップと、上記検出されたエンジン回転数に基づき、上記エンジン回転数表示装置による表示を制御するステップと、を有する。上記エンジン回転数表示装置による表示を制御するステップは、上記自動変速機制御部により上記自動変速機の変速制御が行われているときに、上記自動変速機の変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであるか否かを判定するステップと、上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズであると判定されたときに、上記検出されたエンジン回転数に対する上記エンジン回転数表示装置の表示の応答性を、上記変速動作のフェーズがイナーシャフェーズではないときよりも高くするステップと、を有する。