特許第6008052号(P6008052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6008052
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/04 20060101AFI20161006BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20161006BHJP
   B41M 5/382 20060101ALI20161006BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20161006BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20161006BHJP
   B41J 31/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   C08J7/04 ZCFD
   B32B27/36
   B41M5/26 G
   B41M5/26 101G
   B41M5/26 B
   B41J31/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-532195(P2015-532195)
(86)(22)【出願日】2015年6月9日
(86)【国際出願番号】JP2015066584
(87)【国際公開番号】WO2015194418
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-126131(P2014-126131)
(32)【優先日】2014年6月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早野 知子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潤
【審査官】 細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−136655(JP,A)
【文献】 特開2013−151155(JP,A)
【文献】 特開平2−16087(JP,A)
【文献】 特開平2−16086(JP,A)
【文献】 特開平9−239931(JP,A)
【文献】 特開2000−108200(JP,A)
【文献】 特開2006−334814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04
B32B 1/00−43/00
B41J 31/00
B41M 5/382
B41M 5/40− 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの片側の表面にワックスを有してなるポリエステルフィルムであって、前記ワックスはフィルムの表面上に島状に分散しており、前記ワックスのフィルム表面の占有率が20〜45%であり、かつ島状に分散したワックスのおのおのの島の面積が200μm以上のものが1個以下/10000μmであり、ワックスの島の1個当たりの面積が50μmを超えるものが10個以上/10000μmであることを特徴とするポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルムのワックスを有する表面の突起個数(SPc)が300〜500個/0.2mmであることを特徴とする請求項1記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
ポリエステルフィルムは、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物全体に対して粒子を0.4〜1.0重量%含有しており、かつ、フィルムの厚みが2〜20μmであることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルフィルムからなる熱転写用インクリボン。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルフィルムの片面に転写層を設け、前記転写層とは反対の面にワックスを主成分とする滑性層を設けてなる熱転写インクリボン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片面にワックスを有するポリエステルフィルムに関するものである。さらに詳しくは、本発明は、フィルムを巻き取った際のフィルムの転写層を設ける面への滑性層(ワックス)の転写痕を抑制し、これを熱転写リボンとして用いることにより、耐スティック性に優れ、かつ印画時の画質を飛躍的に向上せしめることができるポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートなどからなるポリエステルフィルムは、機械特性、耐熱性、寸法安定性、耐薬剤性およびコストパフォーマンス性などに優れていることから、それらの性能を活かして多くの用途に使用されている。その用途のひとつに熱転写用リボンが挙げられる。
【0003】
熱転写用リボンが用いられる熱転写記録方式は、コストパフォーマンス、メンテナンス性および操作性などに優れていることからFAXやバーコード印刷等の分野に用いられているが、近年はカラー熱転写インクを用いることにより、高精細で高画質などの特性も加わり、カラー熱転写プリンターなどにも用いられている。
【0004】
これらの熱転写記録方式は、顔料や染料等の色材と結合剤とを含む熱転写層をポリエステルフィルム上に設けた熱転写用インクリボンを受像シートと重ね、その熱転写インクリボンの裏側からサーマルヘッドにより熱を与え、前記の熱転写層を溶融させて前記受像シート上に融着させることにより、この受像シート上に画像を形成する方式である。
【0005】
熱転写インクリボンは、上記のとおりサーマルヘッドにより熱が加えられるため、熱転写用インクリボンに用いられるフィルムには、耐熱性が求められる。また、印画時におけるサーマルヘッドとポリエステルフィルムとの滑り(耐スティック性)を良好にし、画質を向上させる観点から、熱転写用インクリボンに用いられるフィルムには、滑り性も求められる。上記の特性を有するフィルムを得るために、インクを設ける面とは反対側となる熱転写インクリボンの滑性層として、耐熱性と耐スティック性の良好な滑性層を前記ポリエステルフィルム上に設けることが一般的に行われてきた。
【0006】
しかしながら、ポリエステルフィルムの表面はぬれ性が低いため接着性に乏しく、直接、ワックス等を主成分とする滑性層を塗布しても密着しないという課題がある。そのため滑性層との接着性を強固なものとするために、フィルム表面上に各種ガス雰囲気下での放電処理(Electric Discharge:EC処理)等を施し、フィルム表面のぬれ性を改善した後に滑性層が設けられてきており、ポリエステルフィルムと滑性層との接着性と、耐スティック性を両立させる検討が種々行われている。
【0007】
例えば、ワックスを設けるフィルムの基材中にさらにワックスを添加した提案(特許文献1参照。)、さらにフィルムの静摩擦係数や3次元粗さを規定した提案(特許文献2参照。)、および、滑性層の組成を規定した提案(特許文献3参照。)が挙げられ、より耐スティック性に優れた滑性層を設ける試みがされてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−81018号公報
【特許文献2】特開2004−59861号公報
【特許文献3】特開平9−239931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年、熱転写リボン用途においては、高精細で高画質なカラー印刷への要求が高まっている。高精細で高画質なカラー印刷には、サーマルヘッドからの熱量を調整して、インクの転写量の高度に調整をする必要がある。そのため、熱転写用インクリボン用フィルムには、転写層側のインク塗布均一性も要求されてきている。
【0010】
また、転写層が設けられる前のフィルムは、その工程上の性質からフィルムロールとして巻き取られ保管されるが、耐スティック性を向上させるために、滑性層のワックス成分を多く設けるとフィルムを巻き取る際に、滑性層のワックスが、フィルムの転写層を設ける面の表面に転写されたり、また、長期間、保管するとフィルムロールが室内の気圧や温度によって巻き締まり、その転写は、さらに濃く転写される傾向にある。このような転写は、フィルムに転写層を設けたときに、ワックスの転写があった箇所を起点にして、転写成分のインクの塗布はじきを発生させるため、熱転写用途に用いられる製品の、高精細で高画質なカラーを出すことの妨げとなっている。
【0011】
そこで本発明の目的は、耐スティック性に優れ、そして印画時に滑性層が転写層に影響しない高画質な印画ができるポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決せんとするものであって、本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの片側の表面にワックスを有してなるポリエステルフィルムであって、前記のワックスはフィルムの表面上に島状に分散しており、前記のワックスのフィルム表面の占有率が20〜45%であり、かつ島状に分散したワックスのおのおのの島の面積が200μm以上のものが1個以下/10000μmであり、ワックスの島の1個当たりの面積が50μmを超えるものが10個以上/10000μmであることを特徴とするポリエステルフィルムである。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、前記のポリエステルフィルムのワックスを有する表面の突起個数(SPc)は、300〜500個/0.2mmである。
【0014】
本発明のポリエステルフィルムの好ましい態様によれば、前記のポリエステルフィルムは、フィルムを構成するポリエステル樹脂組成物全体に対して粒子を0.4〜1.0重量%含有しており、かつ、フィルムの厚みは2〜20μmである。
【0015】
本発明では、前記のポリエステルフィルムを用いて、熱転写用インクリボンを製造することができる。
【0016】
本発明では、前記のポリエステルフィルムの片面に転写層を設け、前記の転写層とは反対の面にワックスを主成分とする滑性層を設けて熱転写インクリボンを製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フィルムを巻き取った際のフィルムの滑性層の転写層を設ける面へのワックスの転写痕を抑制することができるポリエステルフィルムが得られる。本発明のポリエステルフィルムを熱転写リボンとして用いることにより、耐スティック性に優れ、そして印画時の画質を飛躍的に向上せしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明のポリエステルフィルムのワックスを有する側の表面を模式的に示した表面図である。
図2図2は、本発明の実施例1に記載のポリエステルフィルムのワックスを有する側の表面を顕微鏡で50倍に拡大した際の図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの片側の表面にワックスを有してなるポリエステルフィルムであって、前記のワックスはフィルムの表面上に島状に分散しており、前記のワックスのフィルム表面の占有率が20〜45%であり、かつ島状に分散したワックスのおのおのの島の面積が200μm以上のものが1個以下/10000μmであることを特徴とするポリエステルフィルムである。
【0020】
本発明に係るポリエステルフィルムは、延伸に伴う分子配向によって高強度フィルムとなり得るポリエステルで形成されている。用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましく用いられる。これらのポリエステルはポリエステル共重合体であってもよいが、その繰り返し構造単位のうち、好ましくは80モル%以上がエチレンテレフタレートもしくはエチレン−2,6−ナフタレートであることが好ましい態様である。
【0021】
他のポリエステル共重合成分としては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、p−キシレングリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分、またはアジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸成分、ないしはトリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能ジカルボン酸成分やp−ヒドロキシエトキシ安息香酸などが挙げられる。また、上記のポリエステルに、これらのポリエステルと反応性のないスルホン酸のアルカリ金属塩誘導体、あるいは該ポリエステルに不溶なポリアルキレングリコールや脂肪族ポリエステルなどのうち、一種以上を、5モル%を超えない程度ならば共重合ないしブレンドさせることができる。
【0022】
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムを構成する樹脂中にワックスを含有しないことが好ましい態様である。ポリエステルフィルムを構成する樹脂中にワックスを含有すると、フィルムの製造時に受ける熱負荷によってフィルム表面にワックス成分が析出するため、フィルム表面のワックスの分散形状を、本発明の範囲となるように調整することが難しくなるからである。
【0023】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの片側の表面にワックスを有してなるフィルムであることが必要である。ワックスは、印画時のサーマルヘッドとの融着を防止する点、熱転写インクとのブロッキングを防止する点で滑性層として必要である。ワックスは、市販の各種のワックス、例えば石油系ワックス、植物性ワックス、動物系ワックス、および低分子量ポリオレフィン類などを使用することができ、特に易滑性の点で石油系ワックスと植物系ワックスが好ましく用いられる。
【0024】
本発明において、ワックスを有する面の静摩擦係数率が、0.40以下である場合、フィルムの表面にワックスを有すると判断する。静摩擦係数率は、フィルムのワックス面同士を、ASTM D−1894−63にしがたい、新東科学(株)製表面性測定機HEIDON―14DRを用いて、サンプル移動速度200mm/分、荷重200g、接触面積63.5mm×63.5mmの条件で測定し、アナライジングレコーダーTYPE:HEIDON3655E―99で記録し評価する。
【0025】
本発明で用いられるワックスには、石油系ワックス、動物系ワックスおよび植物性ワックス等が挙げられる。
【0026】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリステリンワックス、ペトロラクタムおよび酸化ワックスなどが挙げられるが、パラフィンワックスが特に好ましく用いられる。
【0027】
動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウ、イボタロウ、セラックワックス、coccuscacti waxおよび水鳥ワックスなどを用いることができる。
【0028】
また、植物性ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、パームワックス、木ロウ、ホホバワックス、オウリキュリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、バークワックスおよびロジン変性ワックスなどが挙げられる。
【0029】
用いられるワックスの分子量は、水への分散性の点で、好ましくは10000以下であり、より好ましくは1000以下である。
【0030】
本発明においては、上記のワックスについて、易滑性や離型性の点で、石油系ワックスと植物性ワックスを混合系で用いることが好ましく、特にパラフィンワックスとロジン変性ワックスの混合系で用いることが好ましい。
【0031】
上記のワックスには本発明の効果を阻害しない範囲内で各種添加剤を併用することができる。例えば帯電防止剤、耐熱剤、耐酸化防止剤、有機、無機の粒子および顔料などを用いることができる。 本発明において、片面の表面にワックスを有してなるポリエステルフィルムは、ポリエステルフィルムの片面に、好ましくはワックスを含んでなる塗液を塗布した後、乾燥することにより得ることができる。ここで、塗液中のワックス濃度(固形分濃度)は、0.3重量%〜1.0重量%であることが好ましく、さらに好ましくは、0.4重量%〜0.6重量%である。
【0032】
本発明においてワックスの厚みは、1nm〜20nmであることが好ましい。ここでいうワックスの厚みとは、後述する測定方法において、フィルム断面を観察することにより求めることができる。具体的には、フィルム断面を観察し、観測視野におけるフィルムの表面に存在するワックスの厚みが最大となる厚さを求めるものである。
【0033】
ワックスを含有する層の厚みが薄ければ薄いほど、フィルムの転写層側への転写を抑制することができるが、薄くしすぎると、滑り性が悪くなるため、熱転写リボンとした際に、リボンフィルムとプリンターのサーマルヘッドの融着、いわゆる耐スティック性が悪化する。ワックスを含有する層の厚みは、好ましくは1nm〜10nmであり、さらに好ましくは2nm〜8nmである。また、この厚みが20nmを超えると、必要以上にワックスを塗布することになるため、ワックスを乾燥させる際には、製造工程中で乾燥しきれず、フィルムの裏面にワックスが剥離接着を引き起こす場合がある。
【0034】
本発明のポリエステルフィルムは、ワックスのフィルム表面の占有率が20%〜45%であることが必要である。このワックスのフィルム表面の占有率を上記の範囲とすることにより、耐スティック性を付与したまま転写痕の発生を抑制することが可能となる。ワックスのフィルム表面の占有率とは、フィルムの上面からみた際に、フィルムの表面をワックスが占めている割合を言う。この占有率が20%未満では、転写痕は発生しにくいが、フィルム表面のワックス量が不足するため、熱転写リボンとした際に、耐スティック性が悪化する。この耐スティック性が悪化すると、印画もシワが入るため、印画性が悪化する。
【0035】
また、占有率が45%を超えると耐スティック性は向上するが、全体に占めるワックスの占有量が高くなるため、ワックスが転写層側に転写しやすくなる。また、占有率が45%を超えると、フィルム表面上で個々の島が密集することになるため、個々の島が隣接する島と連結し、後述するワックスの島の面積が200μmを超えるものが発生しやすくなり、ワックスの転写痕が発生する。好ましい島の占有率は、20〜30%である。
【0036】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの片側の表面上にワックスが島状に分散しており、ワックスの島の1個当たりの面積が200μm以上を超えるものが1個以下/10000μmであることが必要である。島1個あたりの面積は、フィルム表面に存在するワックスが、島の領域が完全に分離される一つ一つを島として求める。ワックスが島状に分散して存在していることにより、フィルムを巻き取った際に、転写層側のワックスの転写痕を抑制することができる。
【0037】
一方、ワックスがフィルム表面上に島状に分散して存在していたとしても、ワックスの島の1個当たりの面積が200μm以上を超えるものが1個以下/10000μmであることが必要である島1個あたりの面積が200μm以上のものが多く存在すると、ワックスの転写痕を発生させる原因となり、印画性を悪化させる。島1個あたりの面積が200μm以上となると、ワックスの転写痕が発生しやすく、その転写痕上に設けられる転写層(インク層)の塗布ムラや塗布はじきを発生させる。したがって、200μm以上を超えるものが1個以下/10000μmとすることにより、フィルムのワックスの転写痕を抑制することが可能となる。
【0038】
ワックスの島の1個当たりの面積が200μm以上を超えるものは、より好ましくは0.5個以下/10000μmである。
【0039】
本発明において、ワックスのフィルム表面の占有率を20〜45%とし、ワックスの島の面積が200μm以上を超えるものが1個以下/10000μmとするためには、(a)フィルム中に含有する粒子の量を特定の範囲とすること、(b)フィルムの表面を特定の条件で放電処理を施した後にワックスを含む塗液を塗布すること、(c)フィルムの表面にワックス濃度を調整した塗液を塗布すること、(d)適切な塗布方法を選択すること、(e)ワックスを含む塗液を塗布した後に少なくとも一軸方向に延伸することが挙げられ、上記の(a)と、(b)〜(e)の内、少なくとも1つ以上の手段を組み合わせることによって、均一にワックスを含む塗布液を塗布することによって達成することができる。
【0040】
本発明のポリエステルフィルムの表面を模式的に図1を用いて説明する。本発明のポリエステルフィルムは、図1のポリエステルフィルム2で模式的に表わすことができ、ポリエステルフィルム2とその片面にワックス1を有する構成からなる。ポリエステルフィルム2のワックス1を有する表面からポリエステルフィルムを観察した際に、フィルム上にワックス1が観察されるものである。
【0041】
具体的には、本発明のポリエステルフィルムは、図2の顕微鏡で50倍に拡大した際の写真であり、この写真を画像として下記の測定方法で、本発明のワックス2を規定することが可能となる。
【0042】
上記の(d)のフィルムの表面に塗布液を塗布する方法としては、例えば、バーコート法やグラビアコート法が挙げられる。バーコート法は、過剰にフィルムに塗布液を塗布した後、余剰の塗布液をバーで掻き取ってなる塗布方法であり、グラビアコート法は、バーに必要な塗布液だけを設けてフィルムに転写する方式で塗布する方法である。バーコート法は、過剰に塗布液を用いるため、表面張力によりフィルム表面に塗布液が一ヶ所に集中しやすく、本発明の島の面積が大きくさせる傾向にあることから、コロナ放電処理を組み合わせて用いることが好ましい態様である。
【0043】
したがって、本発明においては、従来公知のバーコート法でただ単にポリエステルフィルムの片面にワックスを含む塗布液を塗布しただけでは、塗布液の表面張力により均一に塗布しにくいため、ワックスの島の1個当たりの面積が200μm以上を超えるものが1個以下/10000μmとしながら、ワックスの占有率を20%以上とすることができない。
【0044】
また、従来公知のグラビアコート法で塗布した場合には、分散して塗布することができるが、それぞれワックスの塗布液が塗布された箇所で塗布液の表面張力によりワックスの分散径が小さくなり、ワックスの占有率が20%以上を達成することができない。また、単に塗液中のワックス濃度を上げた場合には、ワックスの分散性が悪くなり、ワックスの島の1個当たりの面積が200μm以上を超えるものが1個以下/10000μmとしながら、ワックスの占有率を20%以上とすることができない。
【0045】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、フィルムの表面に存在するワックスは、その分散径が小さすぎると、耐スティック性に劣る場合がある。そのため、本発明のポリエステルフィルムは、ワックスの島の1個当たりの面積が50μmを超えるものが10個以上/10000μmあり、さらに好ましくは15個以上/10000μmである。
【0046】
本発明のポリエステルフィルムは、粒子を含有することが好ましい。粒子をフィルム中に含有せしめることにより、フィルムの表面に粒子が析出するため、フィルム表面にワックスを含む塗液を塗布すると、析出した粒子の表面張力によって粒子周辺にワックスが集まり、その集まったワックスが島構成を形成する。そのため、ワックスを島状に分散することが容易となる。フィルム中に含有する粒子が多くなると、隣接する粒子とワックスの島構成を作り、塗布後に延伸してもその島構成は続いた状態でワックスの島の面積を大きくさせる傾向にある。
【0047】
粒子含有量は、フィルムの厚みやフィルムの表面に析出させる量にもよるが、フィルムの最終的に得られる厚みが2〜20μmである場合には、ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂組成物全体に対して、0.4〜1.0重量%含有させることが好ましい。粒子含有量が0.4重量%未満では、フィルム表面に粒子が析出されにくいため、ワックスの分散体の大きさを均一とすることができず、また、ワックスの占有率は20%未満となり、耐スティック性が十分ではなかったり、ワックスの転写痕を抑制することができず、印画性が劣る傾向にある。
【0048】
また、粒子含有量が1.0重量%を超えると、ワックスの占有率は20%を超すことはできるが、粒子周りに集まったワックスの塗布液とその隣接する粒子周りに集まったワックスの塗布液とが接触しやすく、ワックスの島の面積が200μmを超える島が発生しやすくなるなり、印画性が劣る傾向になる。粒子含有量が0.4重量%以上1.0重量%以下であると、フィルム表面に析出する粒子の数を適正な範囲とすることができ、ワックスの島の面積が200μmを超えるものの発生を抑制しつつ、ワックスの占有率を高くできる。また、粒子の表面突起による耐スティック性の悪化も防止することができる。
【0049】
上記の効果は、上述した(a)と、(b)〜(e)の内、少なくとも1つを組み合わせることにより、特に顕著に得ることができる。上記の(b)による効果は、大気中でフィルム表面に放電処理を行なうことによって、特に、粒子の表面に水酸基が付着し、粒子周辺にワックスをより集めることができ、ワックスの分散性を高めることができていることによるものと考えられる。
【0050】
本発明のポリエステルフィルムは、ワックスを有する表面の突起個数(SPc)が300〜500個/0.2mmであることが好ましい。本発明において突起個数(SPc)とは、後述する測定方法によって求められるものであり、フィルムの表面形状を表す指標である。SPcの突起個数をこの範囲とすることにより、上述したフィルム表面の粒子の析出を適正量とすることができ、ワックスの分散性を高めることができる。
【0051】
また、フィルム表面に有する突起は、フィルムを巻き取った際に、転写層を支える役割を有するため、300個/0.2mm未満では、転写痕を抑制させることが難しくなる場合がある。特に、ワックスの島1個当たりの面積が50μmを超える島が10個以上ある場合には、突起個数(SPc)が300個/0.2mm以上あることで、転写痕を抑制しやすくなる。フィルム表面に有する突起が500個/0.2mmを超える場合、突起による摩擦が影響し、熱転写リボンとした際には、耐スティック性が悪化する場合がある。突起個数(SPc)は、熱転写リボンとした際の耐スティック性の観点から、400個以下/0.2mmとすることが好ましい。SPcの突起個数を上記の範囲とするには、フィルム中に含有する粒子の大きさと粒子の含有量を上述する好ましい範囲とし、かつ、後述する条件でフィルムを製膜することなどが挙げられる。
【0052】
本発明のポリエステルフィルムは、粒子を含有し、その粒子がポリエステルフィルムの表面に露出していることが好ましい。さらに、その粒子が、フィルムの表面に存在するワックスの島に含まれていることが好ましい態様である。フィルムを巻き取った際に、ワックスの島の転写痕を防止しやすくなるからである。
【0053】
フィルムに添加される粒子種は、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンおよび硫酸バリウムなどが挙げられる。中でも細孔容積が高く、吸油性能が高く、二次粒子の凝集性が高いゲル法シリカによって製造された細孔シリカが好ましく用いられる。粒子の細孔容積は、1.0ml/g〜3.0ml/gである粒子であることが好ましい。
【0054】
添加される粒子の大きさは、フィルムの厚みによっても変わるが、本発明のポリエステルフィルムの厚みが2〜20μmである場合には、粒子の大きさは、2〜3.5μmであることが好ましい。粒子の大きさが2μm未満では、フィルムの表面に粒子が露出する面積が少なくなり、ワックスの占有率が低下したり、また、フィルムの表面の突起個数(SPc)を形成しにくくなる場合がある。また、粒子の大きさが3.5μmより大きくなると、粒子が脱落しやすくなるため、フィルムの製造工程を汚染する場合がある。本発明でいう粒子の大きさとは、後述する測定方法により求められる平均粒子径のことを表す。
【0055】
フィルムの表面の放電処理としては、特開2012−206045号公報に開示される放電処理などが例に挙げられ、放電処理にムラが発生しないように処理を施すことが好ましい。
【0056】
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0057】
ポリエステルフィルムの製造方法については、押出機を有する製膜装置において、粒子を含有するポリエステル樹脂を真空乾燥した後に溶融し、スリット状のダイを用いてフィルム状に成形した後、表面温度20〜70℃のキャスティングドラムに巻き付けて冷却固化させ、未延伸フィルムとする。続いて80〜130℃で長手方向に3.0〜7.0倍延伸して、一軸延伸フィルムを得る。このとき、多段階延伸をすることにより製膜性を損なわずに長手方向に強く配向したフィルムを得ることができる。
【0058】
本発明のポリエステルフィルムは、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルム少なくとも片面に放電処理を施し、その放電処理を施した面にワックスを含んでなる塗液を塗布した後、得られたポリエステルフィルムを少なくとも一軸方向に延伸し、その後、ポリエステルフィルムに熱処理を施して、ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる工程により得られることが好ましい態様である。
【0059】
この方法によれば、ポリエステルフィルムの製膜とワックスを含む塗液の塗布乾燥を同時に行うことができるため、歩留りを良くすることができ、また、ワックスの分散径を均一にすることができる。
【0060】
本発明において、特に、表面に均一な放電処理を与えるには、長手方向に延伸したポリエステルフィルムのワックスを含む塗液を塗布する面を、放電密度0.5×10W/m〜2.0×10W/mで、処理時間が0.01〜0.05秒の条件でコロナ放電処理を実施することが好ましい態様である。放電処理を施した後、ワックスを有してなる塗液を塗布し、好ましくは90℃〜130℃の温度で加熱乾燥する。ワックスは、均一に塗布されることが好ましい。
【0061】
コロナ放電処理の出力として放電密度が2.0×10W/mを超えると、ポリエステルフィルムの電荷を与えていないフィルム面側にまで処理されてしまうため、放電処理を施さない面にインク層を設ける熱転写リボンとして使用したときに、インクの剥離がされにくくなり、受容紙に転写される鮮像度が悪化する傾向がある。
【0062】
また、放電処理が0.5×10W/m未満では、ポリエステルフィルムへの電荷が不足するため、ワックスを含有してなる塗液が均一に塗布されない傾向となる。放電密度の好ましい範囲は、1.0×10W/m〜1.8×10W/mである。
【0063】
また、コロナ放電処理の時間は、0.01秒〜0.05秒で実施することが好ましい。放電処理の時間が0.01秒未満では放電量が不十分となり、ワックスを含有する塗液が均一に塗布されない場合がある。また、放電処理の時間が0.05秒を超えると、過大な放電を施すこととなるため、放電処理を施さない面にインク層を設ける熱転写リボンとして使用したときに、インクの剥離がされにくくなり、受容紙に転写される鮮像度が悪化する傾向がある。
【0064】
放電処理の時間の好ましい範囲は、0.01秒〜0.04秒である。この条件を用いることにより、ワックスの厚みが薄くなっても均一に塗布することが可能となる。また、放電密度、放電処理時間を上記の範囲とすることにより、フィルム表面に析出する粒子の表面にワックスの収集効果を付与させ易くなり、ワックスの分散性を良好にすることができる。乾燥は、好ましくは90℃〜130℃の温度で熱することによって、塗液中の溶媒(水)を蒸発させる(乾燥させる)ことができる。
【0065】
次に、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き90〜140℃の温度に加熱した雰囲気中で長手方向に垂直な方向に3.0〜4.5倍で、横延伸する。塗布した後に少なくとも一軸方向に延伸させることで、さらにワックスを微分散させることが可能となる。
【0066】
このようにして得られたポリエステルフィルムの平面性や寸法安定性を付与するために、200℃〜240℃で熱固定を行なう。温度が200℃よりも低いと、熱結晶化が十分進まず、結晶性の低いフィルムとなる。温度が240℃より高いと、熱結晶化が進みすぎ、延伸で進行した分子鎖の配向が低下してしまう。熱固定前にさらに縦ないし横方向に、または縦横両方向に再度延伸させて強度を高めることも可能である。熱固定後、100〜185℃で幅方向に0〜8%収縮させてからロール状に巻き取る。
【0067】
本発明のポリエステルフィルムの製造方法によれば、フィルムの製造時や加工時における走行安定性に優れ、フィルムを巻き取った際のフィルムの裏面側のワックスの転写痕やフィルム中に含有せしめてなる粒子による突起の転写痕を防止することができるポリエステルフィルムを得ることが可能となる。
【0068】
本発明のポリエステルフィルムは、熱転写用インクリボンとして好ましく用いることができ、この熱転写用インクリボンを用いて、熱転写用インクリボンを製造することができる。
【実施例】
【0069】
次に、実施例により、本発明のポリエステルフィルムについて具体的に説明する。本発明における評価方法は、次とおりである。
【0070】
〔評価方法〕
(a)ワックスのフィルム表面の占有率およびワックスの島の1個当たりの面積が50μm、200μmを超える島の個数:
実質的に粒子を含有しない厚み4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを顕微鏡(ニコン社製ECLIPSE−LV100)を用いてフィルム面を50倍に拡大して視野領域を写真にとり、それを画像ソフトのHALCON11(株式会社リンクス社製)に写真を取り込み、基準Aとして閾値を設けた。
【0071】
ワックスを設けたフィルム面の上側から観測した写真画像を採取し、顕微鏡(ニコン社製ECLIPSE−LV100)を用いてフィルム面を50倍に拡大して視野領域を写真にとり、それを画像ソフトのHALCON11(株式会社リンクス社製)に写真を取り込み、上記で得られた基準Aをベースに暗部と明部に2値化し、暗部の全体面積(ピクセル)と、暗部についての暗部割合(%)と、暗部領域のそれぞれの面積(ピクセル)を求めた。この暗部についての暗部割合(%)をワックスの占有率(a)(%)とした。また、2値化した対象面積(μm)と、暗部の全体面積(ピクセル)と暗部の暗部割合(%)から、1ピクセルにおける面積(μm)を求め、暗部領域のそれぞれの面積(ピクセル)に乗じて、それぞれのワックスの島の面積(μm)を求め、10000μm当たりのワックス1個あたりの島の面積が50μmを越えるワックスの島の個数(b−1)と、200μmを越えるワックスの島の個数(b−2)をカウントした。
【0072】
これを10回繰り返し、ワックスの占有率(a)(%)の平均値をワックスのフィルム表面の占有率(%)、10000μm当たりのワックス1個あたりの島の面積が50μmを超えるワックスの島の個数(b−1)の平均値を10000μm当たりのワックス1個あたりの島の面積が50μmを超えるワックスの島の個数、10000μm当たりのワックス1個あたりの島の面積が200μmを超えるワックスの島の個数(b−2)の平均値を10000μm当たりのワックス1個あたりの島の面積が200μmを超えるワックスの島の個数とした。
【0073】
(b)突起個数(SPc):
フィルムのワックスを有する面を、3次元表面粗さ計(小坂研究所製、ET−30HK)を用いて、次の条件で触針法により突起個数の測定を行った。これを5回繰り替えし、その平均を突起個数(SPc)とした。
針径 2(μmR)
針圧 10(mg)
測定長 500(μm)
縦倍率 20000(倍)
CUT OFF 低域:0.25mm、高域:R+W
測定速度 100(μm/s)
測定間隔 5(μm)
記録本数 81本
ヒステリシス幅 ±0(nm)
基準面積 0.2(mm)。
【0074】
(c)印画性評価と耐スティック性評価:
フィルムのワックスが設けられている面とは反対の転写層の面に、120℃の温度で溶融攪拌した次に示す溶融型インクを、最終的に得られるインク層の厚みが0.5μmになるようにホットメルトコーターを用いて約100℃の温度で塗布し、熱転写リボンを得た。
【0075】
(溶融型インク)
・カルナウバワックス(カルナバ1号、東洋アドレ社製):30重量部
・パラフィンワックス(HNP−10、日本精蝋社製) :35重量部
・カーボンブラック(MA−8、三菱化学社製) :15重量部
・エチレン酢酸ビニル共重合体(MB−11、住友化学社製):10重量部
<印画性評価>
熱転写リボンを熱転写プリンター(セイコー電子工業(株)製高精細プリンター Color Printer 2 8階調のソフト“PALMIX”)で印画し、画像を目視で確認し、次の基準で評価し、○と◎を合格とした。
◎:印画ムラなく良好。
○:わずかに印画ムラと印画濃度の低下を確認することができる。
×:印画ムラと印画濃度の低下を確認することができる。
【0076】
<耐スティック性>
印画中に耐スティック性についても確認を行い、次の基準で評価した。○と◎を合格とした。
◎:融着無く、スムーズに走行。
○:一部融着があったものの走行した。
×:融着してシワが発生した。
【0077】
(d)粒子の含有量
フィルム1gを1N−KOHメタノール溶液200mlに投入して加熱還流し、溶解させた。溶解が終了した溶液に200mlの水を加え、次いでその液体を遠心分離器にかけて不活性粒子を沈降させ、上澄み液を取り除いた。粒子にはさらに水を加えて洗浄、遠心分離を2回繰り返した。このようにして得られた粒子を乾燥させ、粒子の含有量を算出した。
【0078】
(e)粒子の平均粒子径:
JIS−H7804(2005)に従い走査電子顕微鏡(SEM)で倍率50000倍で、樹脂(フィルム)に添加する前の各粒子について、100個ずつ任意に粒子径を測定し、数平均粒子径を求めた値をいう。(粒子が球状でない場合には、最も形状の近い楕円に近似させ、その楕円の(長径+短径)/2にて求める)。
【0079】
(f)ポリエステルフィルムの厚みとワックスの厚み:
日立製作所(株)製透過型電子顕微鏡HU−12型を用いて、ワックスを設けたポリエステルフィルムの断面を観察した写真から、ポリエステルフィルムの厚みと、最大となるワックスの厚みを求めた。ポリエステルフィルムの厚みは測定視野内で、ワックスを含まないポリエステルフィルムの任意の点10点の厚みの平均値とした。また、ワックスの厚みは、一つの視野領域における最大のワックスの厚みの10点の平均値とした。
【0080】
[実施例1]
数平均粒子径が2.7μmのシリカ粒子を0.4重量%含有したポリエチレンテレフタレート樹脂チップを185℃の温度に溶融させ、口金からシート状に溶融押し出しし、25℃の温度の回転冷却ドラムに密着させて固化させ、未延伸フィルムを得た。次いで加熱したロールの周速差を用いてフィルムの長手方向に125℃の温度で2.4倍に延伸(1段目延伸)を行い、次いで長手方向に115℃の温度で2.5倍に延伸(2段目延伸)して、一軸延伸フィルムを得た。
【0081】
一軸延伸したフィルムの片面を放電密度1.8×10W/mの条件で0.01秒放電処理を実施し、引き続きコーティング工程へ移動させ、放電処理を実施したフィルム表面に次の塗液を塗布した。
【0082】
[塗液]
(i)パラフィンワックスを110℃(溶融温度)の温度で溶融後、非イオン性界面活性剤、リン酸エステル(ブトキシエチル化物)、オレイン酸アンモニウム、および、2−アミノ−2−メチルプロパノールを各1重量部添加し、100℃の温度の水に加えて強撹拌し、更にホモジナイザーを用い分散せしめてパラフィンワックス水分散体を得た。
【0083】
(ii)植物性ワックス[{水添ロジン・αβ置換エチレン(α置換基:カルボキシル、β置換基:メチル)付加物}・アルキル(炭素数:6)ポリ(繰り返し単位:5)アルコ−ルのエステル化合物]を110℃(溶融温度)で溶融後、非イオン性界面活性剤、リン酸エステル(ブトキシエチル化物)、オレイン酸アンモニウム、および2−アミノ−2−メチルプロパノールを各1重量部添加し、100℃の温度の水に加えて強撹拌し、更にホモジナイザーを用い、分散せしめ、植物性ワックス水分散体を得た。
【0084】
(iii)上記の(i)および(ii)で得られたパラフィンワックス水分散体および植物性ワックス水分散を、次の比率で混合せしめ、さらに全固形分重量比率が0.45重量%となるように水で希釈せしめて塗液を得た。
・パラフィンワックス水分散体 60重量部(固形分比)
・植物性ワックス水分散体:40重量部(固形分比)。
【0085】
塗液の塗布はメタリングバーを使用したバーコート法で行い、ウェット厚みを4.5μmとした。
【0086】
次に、このようにして得られたフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、110℃の温度で予熱した後、120℃の温度に加熱しつつ幅方向に4.0倍に延伸し、さらに230℃の温度で熱処理し、150℃の温度で幅方向に4.0%弛緩させて、ポリエステルフィルムを得た。図2に、本発明の実施例1で得られたポリエステルフィルムのワックスを有する側の表面を顕微鏡で50倍に拡大した際の図面代用写真を示す。結果を、表1に示す。
【0087】
[実施例2〜4、比較例1〜3、比較例5、6、8]
フィルムに含有する粒子量、塗液の塗布方法、および放電処理の有無、ワックス厚みを表1としたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。結果を、表1に示す。
【0088】
具体的には、実施例2は、実施例1のポリエステルフィルムの粒子含有量を0.4重量%から0.8重量%にし、他の条件は変えずにポリエステルフィルムを得た。
【0089】
実施例3は、実施例1のポリエステルフィルムの粒子含有量を0.4重量%から0.6重量%にし、他の条件は変えずにポリエステルフィルムを得た。
【0090】
実施例4は、実施例1のワックスの塗布方法をバーコート法からグラビアコート法に変更すること以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0091】
比較例1は、実施例1のポリエステルフィルムの粒子含有量を0.4重量%から0.2重量%に変更し、さらに、ワックスの塗布方法をバーコート法からグラビアコート法に変更し、放電処理をしないこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0092】
比較例2は、ワックスの塗布方法をバーコート法からグラビアコート法に変更し、放電処理をしないこと以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0093】
比較例3は、実施例1のポリエステルフィルムの粒子含有量を0.4重量%から0.3重量%に変更し、ワックスの塗布方法をバーコート法からグラビアコート法に変更すること以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0094】
比較例5は、実施例1のポリエステルフィルムの粒子含有量を0.4重量%から0.3重量%に変更すること以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0095】
比較例6は、実施例1のポリエステルフィルムの粒子含有量を0.4重量%から0.2重量%に変更すること以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0096】
比較例8は、実施例1のポリエステルフィルムの粒子含有量を0.4重量%から1.2重量%に変更すること以外は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0097】
[実施例5]
フィルムに含有する粒子量、塗液の塗布方法および放電処理の有無を表1のとおりとすること、全固形分重量比率が1.0重量%となるように水で希釈せしめた塗液を用いること、およびウェット厚みを2.0μmとしたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。結果を、表1に示す。
【0098】
[比較例4]
実施例1で得られたフィルムを粉砕し、ポリエチレンテレフタレートフィルムの原料として30wt%用い、250℃の温度で溶融し、ワックスの塗布量としてウェット厚みを4.0μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。結果を、表1に示す。
【0099】
[比較例7]
実施例5のポリエステルフィルムの粒子含有量を0.4重量%から1.2重量%に変更し、放電処理を行なったこと以外は実施例5と同様にしてポリエステルフィルムを得た。結果を、表1に示す。
【0100】
[実施例と比較例のまとめ]
実施例1は、フィルム表面のワックス占有率は本発明の範囲内にあり、島の面積が200μmを超える島が確認されず、印画性と耐スティック性も十分なものであった。
【0101】
実施例2は、粒子の含有量を実施例1に比べて2倍としたために、フィルムの表面の突起個数(SPc)が実施例1に比べて多くなり、フィルム表面上でのワックスの占有率が高くなった。ワックスの島1個当たりの面積が200μmを超える島が確認されたが、印画性もわずかにムラが観測される程度で問題なく使用できた。
【0102】
実施例3は、粒子の含有量を実施例1に比べて1.5倍としたために、フィルムの表面の突起個数(SPc)が実施例1に比べて多くなり、フィルム表面上でのワックスの占有率が高くなった。ワックスの島1個当たりの面積が200μmを超える島が確認されたが、印画性と耐スティック性も十分なものであった。
【0103】
実施例4は、実施例1の塗布方法を変更したが、印画性と耐スティック性も十分なものであった。
【0104】
実施例5は、実施例4のフィルムに、放電処理を行なわずに塗布を行なったため、ワックスの島1個当たりの面積が200μmを超える島が確認された。隣接する粒子間でワックス面積が結合されたためと考えられる。また、ワックスの島1個あたりの面積が50μmを超える島の数が実施例1に比べて少なくなり、耐スティック性と印画性がやや欠けるものとなったが問題なく使用できるレベルであった。
【0105】
比較例1は、粒子の含有量を0.2重量%とし、グラビアコート法で塗布したため、島の面積が200μmを超える島は確認されなかったが、放電処理を行なわなかったこと、粒子の表面形成が十分ではなかったため、ワックス占有率が十分ではなく、耐スティック性が悪化した。
【0106】
比較例2は、粒子含有量を0.4重量%とし、グラビアコート法で塗布厚みを実施例5の2倍となるように塗布したため耐スティック性は十分なものであったが、放電処理をおこなわなかったために、ワックスの島の面積が200μmを超える島が確認され、印画ムラがやや多く発生した。
【0107】
比較例3は、グラビアコート法で塗布し、放電処理を行なったため、ワックスの島の面積が200μmを超える島が確認されなかったが、粒子含有量が不足したため、突起個数(SPc)が不足し、フィルム表面のワックスの占有率は20%未満となり、耐スティック性が悪化した。
【0108】
比較例4は、粒子含有量は0.4重量%であるが、本発明のフィルムを回収原料として基材に用いたため、基材フィルムの表面に析出したワックスにより、ワックスの占有率は20%を超えたが、ワックスの島の面積が200μmを超える島が確認され、印画ムラが多く発生し、また、フィルム表面に異物が発生し、耐スティック性が悪化した。
【0109】
比較例5と6は、放電処理をおこなったため200μmを超える島は確認されなかったが、粒子含有量が不足したため、突起個数(SPc)が低くなり、フィルム表面のワックスの占有率は20%未満となり、耐スティック性が悪化した。
【0110】
比較例7と8は、粒子含有量を1.2重量%、添加したため、フィルムの突起個数(SPc)が高くなり、フィルム表面に粒子周辺にワックスが分散された後、隣接する粒子間でワックス面積が結合され、ワックスの占有率は20%を超え、フィルム表面に200μmを超える島が多くなったものと考えられる。この結果、耐スティック性は向上したが、印画性が悪化した。
【0111】
【表1】
【符号の説明】
【0112】
1:ワックス
2:ポリエステルフィルム
図1
図2