(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6008306
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】固形炭素燃料用ガス化装置及びガスの生産および燃焼のための設備
(51)【国際特許分類】
C10J 3/02 20060101AFI20161006BHJP
C10J 3/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
C10J3/02 M
C10J3/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-516361(P2014-516361)
(86)(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公表番号】特表2014-520189(P2014-520189A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】EP2012062060
(87)【国際公開番号】WO2012175657
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2015年5月13日
(31)【優先権主張番号】11171156.0
(32)【優先日】2011年6月23日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513324767
【氏名又は名称】キシロワット エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】オーブ,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】クライン,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ブルゴワ,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】バック,アレクサンドル
【審査官】
森 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−105030(JP,A)
【文献】
特開2005−120125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形炭素系の燃料(2)のガス化用並流固定床ガス化装置であって、前記ガス化装置(1)は垂直な容器(4)を含み、前記容器(4)は頂部から下方に向かって連続的に、
前記燃料(2)を前記容器(4)に導入するための入口チェンバー(5)、
前記容器(4)に導入された前記燃料(2)をガス化し、熱分解剤の第1進入手段(11)を含む熱分解領域(10)、
前記熱分解領域(10)で生じた熱分解ガスを燃焼させ、ガス化剤の第2進入手段(21)を含む燃焼領域(20)、
熱分解領域で生じた炭化燃料をガス化するための還元領域(30)、
還元領域で生じたガスを集めるための出口(6)、及び、
灰を集めて排出するための領域(40)、を備え、
前記容器(4)は前記熱分解領域(10)から前記還元領域(30)に固形物質を能動的に移送するための能動移送手段を含み、前記能動移送手段は前記熱分解領域(10)と前記燃焼領域(20)の間に設置され、前記能動移送手段は、前記固形物質の前記熱分解領域(10)から前記還元領域(30)への直接的な流れを防ぐことのできる移送チェンバー(50)を含み、前記移送チェンバー(50)は前記熱分解ガスを透過させることを特徴とするガス化装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化装置において、前記移送チェンバー(50)は少なくとも1つの偏心した第1開口(61)を含む第1回転プレート(51)および少なくとも1つの偏心した第2開口(62)を含む第2回転プレート(52)を含み、前記第1及び第2回転プレート(51、52)は互いにある距離を隔てて水平に置かれて、前記第1及び第2回転プレートの間の移送領域が定められ、前記各第1開口(61)は前記各第2開口(62)に対して水平方向においてずれていることと、前記移送領域は前記容器(4)に固定された第1障害物(70)を備えていることを特徴とするガス化装置。
【請求項3】
請求項2に記載のガス化装置において、前記第1障害物(70)は前記第1及び第2回転プレート(51、52)の半径方向に延びる少なくとも1つの第1クロスビーム(71)を含むことを特徴とするガス化装置。
【請求項4】
請求項3に記載のガス化装置において、前記第1障害物(70)はさらに前記少なくとも1つの第1クロスビーム(71)に対して角度がずれ、外側から前記第1及び第2回転プレート(51、52)の中心に向かって半径方向に部分的に延びる、少なくとも1つの別のクロスビーム(72)を含むことを特徴とするガス化装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか1項に記載のガス化装置において、前記容器(4)に固定された第2障害物(80)が前記第1回転プレート(51)の上方に置かれていることを特徴とするガス化装置。
【請求項6】
請求項5に記載のガス化装置において、前記第2障害物(80)は前記第1及び第2回転プレート(51、52)の半径方向に延びる少なくとも1つの第2クロスビーム(81)を含むことを特徴とするガス化装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のガス化装置において、前記容器(4)は前記第2障害物(80)の上方に位置する前記固形物質を、横断面において、せん断するためのせん断手段(90)をさらに含むことを特徴とするガス化装置。
【請求項8】
請求項7に記載のガス化装置において、前記せん断手段(90)は実質的に水平に延びる可動ブレード(91)を含むことを特徴とするガス化装置。
【請求項9】
請求項8に記載のガス化装置において、前記第1回転プレート(51)、前記第2回転プレート(52)、および前記ブレード(91)が接続された中心軸(100)を含み、また前記中心軸を回転駆動するための手段(101)を含むことを特徴とするガス化装置。
【請求項10】
前記ガスを生産するための請求項1乃至9の何れか1項に記載のガス化装置を含む、ガスの生産および燃焼のための設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば固形バイオマス等の固形炭素系燃料をガス化させるための並流固定床ガス化装置に関する。より詳細には、本発明は、頂部から下方に向かって連続的に下記を呈する縦型容器を含むガス化装置に関する。
【0002】
・燃料を容器に導くための入口チェンバー
・熱分解剤進入用第1手段を含む、容器に導入された燃料を熱分解するための熱分解領域
・ガス化剤進入用第2手段を含む、熱分解領域で生じた熱分解ガスを燃焼させるための燃焼領域
・熱分解領域で生じた炭化燃料をガス化させるための還元領域
・還元領域で生じたガスを集めるための出口
・灰を集めて排出するための領域
さらに、前述の容器は固形物質を熱分解領域から還元領域に積極的に移送する能動移送手段を含み、前述の移送手段は熱分解領域と燃焼領域の間に設置される。すなわち、能動移送手段は、容器内において、前記熱分解剤を容器内に入れるために熱分解剤進入用第1手段が用意されている位置と前記ガス化剤を容器内に入れるためにガス化剤進入用第2手段が用意されている位置の間に設置される。
【0003】
「熱分解剤」という用語は、熱分解領域中に存在する固形燃料の温度を上昇させるために必要なエネルギーを与える中性または反応性ガスを意味すると理解すべきである。エネルギーはガス自体によって運ばれても、ガスと熱分解領域に存在する生成物との反応によって生成されてもよい。したがって、前記熱分解剤は、たとえば、予熱された外気、より高い酸素、水蒸気、二酸化炭素濃度を有するガス、燃料ガス、またはこれらのガスの混合物でもよい。
【0004】
「ガス化剤」という用語は、固形燃料中に存在する炭素および/またはや水素と反応することのできるガスを意味すると理解すべきである。したがって、前記ガス化剤は、たとえば、外気、より高い酸素、水蒸気、二酸化炭素濃度を有するガス、またはこれらのガスの混合物でもよい。
【0005】
また本発明は、前記ガスを生産するための上記のガス化装置を含む、ガスの生産および燃焼のための設備にも関する。
【背景技術】
【0006】
上記のガス化装置は既知であり、固形炭素系燃料、特に製材工場または林業などから生じる木屑、または農業副産物(麦わらなど)、またはリサイクル木材からも燃料ガスを生産することができる。この燃料ガスは、特に一酸化炭素および水素を含んでおり、続いて種々の目的、たとえば、ガスタービンまたは内燃エンジンまたはボイラーまたは火炉への供給に使用できる。
【0007】
しかし、既知の並流ガス化装置の大部分は少なくない量のタールも含むガスを提供しており、そのようなガスを燃料として使用されている設備の満足な運転を阻害することがある。そのため、上記のガス化装置によって生産されるガスのタール含有量を減らすために種々の解決策が提供されてきた。
【0008】
たとえば、特許文献1には、熱分解ガスのより良い燃焼、また熱分解塊のより良いガス化を得るために燃焼領域に空間(すなわち、固形物質のない領域)が作られたガス化装置が開示されており、これにより出口におけるガスのタール含有量の削減が可能になる。この特許では、この空間を作るため、還元領域と灰を集める領域の間の固形物質移送の調節を可能にする機構を持つ還元領域の下方部分を備えることが提案されている。還元領域の下方部分にはさらに、燃焼領域に入る固形燃料の量を多少なりとも測定するために漏斗状物および可動格子が備えられる。
【0009】
固形物流れが非常にランダム性を持っていることを考慮すると、上記のシステムには、まだ完全に熱分解していない物質が燃焼領域に入る可能性があるという不都合がある。さらに、場合によってまだ完全に還元されていない物質が灰を集める領域に入ることもある。このことは、燃焼領域に入る物質の流速が予想より速い場合に、物質を、灰を集める領域に移送する手段が、燃焼領域の空間を維持するためにより多く開くためである。実際には、たとえば使用されるバイオマスの物理的特性(たとえば粒子径測定値)および/または流れの瞬時的特性の関数としての環境によって、流入速度は変わることがある。
【0010】
特許文献2には、類似のガス化装置が開示され、固形物質を熱分解領域から還元領域に移送しつつ、これら2つの領域の間に空間を残すことを可能にする機構を持つ、熱分解領域の下方部分を備えることが提案されている。この固形物質移送機構は、容器の対応する円錐形狭窄部からある距離を隔てて置かれ、固形物質をかき混ぜて還元領域に移送するために回転および/または軸方向移動のできる円錐体を含む。ここで再度、固形物流れの非常なランダム性からみると、まだ完全に熱分解していない燃料が燃焼領域に入る可能性がある。先の実施例について、「煙突」現象および/または「雪崩」現象(固形物流れの特質を参照)が、たとえば、熱分解領域に出現することがある。適当な場合、容器内に新たに導入された(そしてまだ完全には熱分解されていない)固形物質が移送機構によって還元領域に運ばれることがあり、出口におけるガスのタール含有量の増加を引き起こす。
【0011】
その構造および運転においては大きく異なるが還元領域に入る固形物質を多少なりとも測定するために可動格子も含む、特許文献3に記載されているような逆流ガス化装置も存在する。そのような可動格子は、上述したものと同様の不都合を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第1248828号明細書
【特許文献2】蘭国特許第8200417号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/107727号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の1つの目的は、既知のガス化装置の問題点を少なくとも部分的に解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するため、本発明によるガス化装置は、能動移送手段が熱分解領域から還元領域への固形物質の直進流れを防止でき、前記能動移送手段が熱分解ガスを透過させる移送チェンバーを含むことを特徴とする。
【0015】
これは、上述の移送チェンバーのおかげで、固形物質の還元領域への移送に関してよりよい制御を働かせることができ、したがって前記還元領域に入るまだ完全に熱分解していない燃料量を減らすことができ、出口ガス中のタール量を減らすことに寄与できるからである。還元領域に流れ込む固形物質の流速もより良く調節でき、したがって還元領域上方の空間(すなわち、固形物質のない領域)をより良く確保でき、同様に出口ガス中のタール量を減らすことに寄与できる。
【0016】
好ましくは、移送チェンバーは少なくとも1つの第1偏心開口を含む第1回転プレートと少なくとも1つの第2偏心開口を含む第2回転プレートを含み、2つのプレートは互いにある距離を隔てて水平に置かれて、2つのプレートの間の移送領域が定められ、各第1開口は各第2開口に対して水平方向においてずれており、そして移送領域は容器に固定された第1障害物を備えている。
【0017】
上述の利点に加えて、そのような好適な装置は、第1開口の偏芯と回転運動のおかげで、熱分解領域からの固形燃料の引き出しのより良い分配を達成することができる。この装置は、このように熱分解領域における固形物質のLILO(後入れ後出し)型の理想的な流れに対する、より良い近似を達成することができ、したがって熱分解をより完全なものとするのに寄与する。
【0018】
さらに、第2開口の偏心と回転運動のおかげで、この好適な装置によって固形物質を還元領域の物質層上により均一に分配することができ、それはより良いガス化に寄与する。このことは、より均一な分配によって、さもなければ前述のガス流れの過度に急速な還元層の通過によって固形粒子とガス流れとの間の還元反応の完了の減少を引き起こす、還元領域を通る前記ガス流れの優先経路が生じるのを防ぐことができるからである。上述した2つの効果が、出口ガス中のタール量をさらに減らすのに寄与する。
【0019】
第1障害物は容器に固定されているため、これは、固形物質の少なくとも一部を第1および/または第2プレートの回転によって回転して運ばれるのを防止する効果があり、それによって第2開口を通して移送領域を効果的に空にすることができる。
【0020】
好ましくは、熱分解領域に置かれた固形物質の少なくとも1部を第1プレートの回転によって回転して運び去られ、熱分解領域の物質の望みどおりの流れがさもなければ乱されるのを防ぐため、容器に固定された第2障害物が第1回転プレートの上方に置かれる。
【0021】
本発明のこれらの局面および他の局面は、下記図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳細に説明することによって明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明によるガス化装置の概略正面断面図である。
【
図2】本発明によるガス化装置の1実施形態の正面断面図である。
【
図3】本発明によるガス化装置の好適な実施形態の正面断面図である。
【
図4】
図3のガス化装置の横断面AAにおける図である。
【
図5】
図3のガス化装置の好適な実施形態の横断面AAにおける図である。
【
図6】
図3によるガス化装置のさらに好適な実施形態の正面断面図である。
【
図7】
図3によるガス化装置のさらに好適な実施形態の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図の形状は原寸に比例していない。一般に、図中において類似の構成要素は類似の参照番号で示す。
【0024】
以下に説明する実施形態においては燃料例としてバイオマスが用いられるが、任意の他の種類の固形炭素系燃料も適合することは明らかであろう。
【0025】
図1は、本発明によるガス化装置(1)の概略正面断面図である。ガス化装置は、頂部から下方に向かって連続的に下記で構成される縦型容器状反応器(4)によって形成される。
【0026】
・バイオマス(2)を容器に導くための入口チェンバー(5)
・熱分解剤進入用第1手段(11)を含む、容器に導入されたバイオマスを熱分解するための熱分解領域(10)
・ガス化剤進入用第2手段(21)を含む、熱分解領域で生じた熱分解ガスを燃焼させるための燃焼領域(20)
・熱分解領域で生じた炭化バイオマスをガス化させるための還元領域(30)
・還元領域で生じたガスを集めるための出口(6)
・灰を集めて排出するための領域(40)
バイオマス(2)、たとえば木材チップが入口チェンバー(5)(たとえば回転弁)によって容器(4)に導入されて熱分解領域(10)に入り、そこにおいてバイオマスは加熱によって分解され、揮発性物質と一般にチャーまたはコークスと呼ばれる炭素に富んだ固形残渣を生じる。この反応は、典型的には300℃から700℃の温度範囲において起こる。熱分解剤進入用第1手段(11)、たとえば熱分解領域のレベルにおいて容器内の側面に現れる1つまたは複数のノズルによって、バイオマスを部分的または完全に分解して揮発性物質およびチャーを生じるのに必要なエネルギーを直接的または間接的に与えるガスを容器内に導入することができる。前記ガスは、たとえば、バイオマスの一部またはバイオマスの分解による生成物の燃焼によって、熱分解に必要なエネルギーを発する、酸素を含む反応性ガスでよい。それは、予熱され、熱分解に必要なエネルギーを与える不活性ガス(たとえば二酸化炭素、窒素、または水蒸気)でもよい。それは、これらの種類のガスの組み合わせでもよい。他の種類の熱分解剤進入手段、たとえば容器内に垂直に下がり、熱分解領域に現れるノズルももちろん可能である。
【0027】
容器はまた、熱分解領域(10)から還元領域(30)に固形物質(基本的にはチャー)を積極的に移送する能動移送手段を含み、前記移送手段は熱分解領域(10)と燃焼領域(20)の間に設置される。すなわち、能動移送手段は容器中において、前述の熱分解剤が容器中に入れるようにするための熱分解剤進入用第1手段(11)が用意されている位置(11a)と前記ガス化剤が容器中に入れるようにするためのガス化剤進入用第2手段(21)が用意されている位置(21a)の間に設置される。これらの能動移送手段は、固形物質(2)の熱分解領域(10)から還元領域(20)への直進流れを防ぐことのできる移送チェンバー(50)を含む。このように、これらの移送手段は2つの機能をもっており、一方では、固形物質(2)を熱分解領域(10)と反応器のその他の部分(領域20、30、および40)の間で物理的に分離し、他方では、反応器(4)のこれら2つの部分の間の固形物質(2)の流れを積極的に制御することを可能にする。これらの移送手段は揮発性物質の熱分解領域からその内部で燃焼される燃焼領域への流路を可能とする必要があることに留意すべきである。すなわち、前記移送チェンバーは熱分解ガスを透過させる。実施例を以下に示す。
【0028】
燃焼領域(20)に入る(「熱分解ガス」としても知られる)揮発性物質は、そこにおいてガス化剤進入用第2手段(21)のレベルで部分的または完全に燃焼する。ガス化剤進入用第2手段は、たとえば燃焼領域のレベルにおいて容器内の側面に現れる1つまたは複数のノズルを含むことができる。この燃焼は、基本的に二酸化炭素(CO
2)、水(H
2O)、そして、もちろん熱を生み出す。典型的には、1100℃以上の温度が燃焼領域において達成可能である。還元領域に移送されたチャーは、燃焼生成物と反応して特に一酸化炭素(CO)および水素(H
2)を形成する。たとえば、木材のようなリグノセルロース材料とガス化剤として常温の外気を使用する自己発熱反応の場合、この反応は典型的には300℃から800℃の温度範囲において起こる。それでも、より炭素に富んだ燃料が使用されたり、予熱された反応剤が使用されたりした場合には、この温度はより高くなり、1300℃に到達したり、1300℃を超えたりすることも可能である。この反応によって生成されたガスは、容器(4)の底部に配置された、反応器の出口(6)に集められる。このようにして、ガス化剤として外気を使用した場合、出口(6)において、典型的には約15%から30%のCO、10%から25%のH
2、0.5%から3%のCH
4、5%から15%のCO
2、49%のN
2を含む燃料ガスが作り出される。灰は容器の基部(40)に集められる。
【0029】
移送チェンバー装置(50)は別として、そのようなガス化装置は既知であり、そのためそれらの設計および運転をより詳細には説明しない。移送チェンバー(50)に関心が寄せられるが、その実施例を以下に示す。
【0030】
図2は、本発明によるガス化装置の一実施形態の正面断面図である。ここで移送チェンバー(50)は、モーター(M)によって駆動されるエンドレススクリュ(56)がその下部に据えられたホッパ(55)を含み、前記スクリュは燃焼領域に現れる円筒部(57)によって囲まれている。このように、移送チェンバーは、熱分解領域(10)から還元領域(30)へのチャーの直進流れを防止する一方、能動的に熱分解領域から還元領域へチャーを移送することを可能にする。チャーの流速は、たとえば、モーター(M)の回転速度を変えることによって調節できる。特に、この流量は、還元領域の上方の固形物の隙間を連続的に残すように調節される。モーター(M)の速度の制御は、閉ループで行えるのが有利である。燃焼領域における固形物の存在の検出器が、この目的のために使用できる。
【0031】
たとえば、2つのスライドドアを含む移送チェンバー等の物質移送のための他の機構(たとえば、入口ドアが熱分領域に向けられ、出口ドアが燃焼領域に向けられて、出口ドアが閉鎖されている時に入口ドアが開放され、逆もまた同様に行われる。また、いくつかの入口ドアおよびいくつかの出口ドアを考えることもできる。)が考えられ、その場合におけるチャーの流量は前記入口および出口ドアの開閉律動を変えることによって調節できる。移送チェンバーは熱分解ガスを連続的に通過させられなければならないため、前記入口および出口ドアは気密構造であってはならないことに留意すべきである。
【0032】
別の可能性は、物質移送手段が移送チェンバーを含み、その1つの入口(熱分解領域側)が一定間隔で配置され、互いに平行な複数の横方向バーで形成され、少なくとも1つの前述のバーが回転し、好ましくは多角形断面(たとえば、正方形断面)を有し、その出口(燃焼領域側)が1つまたは複数の可動シャッターで形成されることである。2つの隣接するバー間の距離およびそれらそれぞれの断面は、前述の2つの隣接するバーのうちで回転できるバーの回転がない場合、前述の2つの隣接するバーに支えられるアーチ効果によって固形物質が前述の2つの隣接するバーの上方に塞がれて残るように設計される。可動シャッターを閉じた状態で、回転できるこれらのバーを回転させると、熱分解領域で生じた固形物質が移送チェンバーに入り、移送チェンバーから出ていくことはできない。次にこれらのバーの回転を停止し、その後可動シャッターを開くと、移送チェンバーに前もって貯えられた固形物質が還元領域へ放出される。たとえ可動シャッターが閉鎖されていても特に熱分解ガスが自由に移送チェンバーを通過できるようにするため、可動シャッターはガスを透過させる。固形物質の流量は、バーの回転/回転停止律動とシャッターの開/閉シーケンスを変えることによって制御できる。
【0033】
図3は、本発明によるガス化装置の好適な実施形態の正面断面図である。ここで移送チェンバー(50)は、少なくとも1つの第1開口(61)を含む第1回転プレート(51)および少なくとも1つの第2開口(62)を含む第2回転プレート(52)を含む。2つのプレートの間に移送領域を形成するよう、2つのプレートは互いにある距離を隔てて水平に置かれている。2つのプレートは、たとえばモーター(101)によって回転駆動できるZ軸を有する垂直中心軸(100)に接続されるのが好ましい。
【0034】
2つの開口(61、62)はZ軸に関して偏心しており、それらは水平方向においても互いにずれているため、チャー(2)は熱分解領域(10)から還元領域(30)に直進通過することはできない。すなわち、第1プレートの第1開口(61)は、第2プレートの第2開口(62)と重なり合わないように設計されている。好ましくは、プレート(51,52)は円形を有し、また容器(4)は円形横断面を有し、プレートのレベルにおけるその直径は、プレートの直径よりわずかに大きい。2つのプレートの間の移送領域はさらに、容器に対して固定されている第1障害物(70)を備えている。それは、たとえば、容器(4)に直接または間接に取り付けられた1つまたは複数の横方向バーでよい。この障害物は、固形物質が第2プレート(52)の回転運動によって運び去られるのを防ぎ、そして障害物が第2開口(62)の反対側に到達した時に前述の物質を第2開口から通過させることができる。
図4は、
図3のガス化装置の横断面AAにおける図である。2つの開口(61、62)および第1固定障害物(70)がその図でさらによくわかる。第1固定障害物は、プレートの半径方向に延びる少なくとも1つの第1固定クロスビームを含むのが好ましい。モーター(101)は、連続回転運動または時計回り−反時計回りの揺動運動を有することができる。連続回転運動の場合、モーターの回転速度は、たとえば、1時間あたり5から15回転程度である。モーター(101)は、還元領域(30)のチャーに対する要求に従属し、還元領域物質層上方の空隙を維持するのが好ましい。このために、還元領域のチャー用高レベルセンサーおよび低レベルセンサーを備え、モーター(101)を制御して、低レベルが検出された時にモーターが回転を開始し、高レベルが検出された時にモーターが回転を停止するようにできる。
【0035】
図5は、
図3のガス化装置の好適な実施形態の横断面AAにおける図である。この好適な形態において、第1固定障害物は、プレートの半径方向に延びる少なくとも1つの第1固定クロスビーム(71)に加えて、少なくとも1つの第1クロスビーム(71)に対して角度がずれ、外側からプレートの中心に向かって半径方向に部分的に延びる、少なくとも1つの別のクロスビーム(72)を含む。この実施例において、別のクロスビーム(72)は、プレート(51、52)の半径のおおよそ半分にわたって延びる。この別のクロスビーム(72)は、プレートの回転時に、そうしなければ還元領域における物質の均一な分布にとって有害となるであろう、第1クロスビーム(71)直上の物質の蓄積の防止を可能とするが、移送領域の中心エリア、すなわち中心軸(100)の近くに過度に狭い空間を作らない。
図5に示すように、互いに90°ずれた4つの半径方向クロスビーム(71)および互いに90°ずれ、また半径方向クロスビームに対して45°ずれた4つの部分的半径方向クロスビーム(72)があるのが好ましい。
【0036】
図6は、
図3によるガス化装置のさらに好適な実施形態の正面断面図である。この場合、容器に固定された第2障害物(80)、たとえば半径方向クロスビーム等が第1プレート(51)の上方に置かれている。この第2障害物は、熱分解領域(10)で生じる固形物質(2)が第1プレート(51)の回転運動によって回転して運び去られるのを防止して、頂部から下方への物質のより均一な流れ(LILO)を確保することを可能にする。第2固定障害物は、垂直軸Zの方向において第1固定障害物と一直線にあわせるように固定するのが好ましい。したがって、第1固定障害物が、たとえば、
図5に示すように4つの半径方向クロスビーム(71)を含んでいれば、第2固定障害物も第1障害物の4つの半径方向クロスビーム(71)と垂直方向で一直線にあわせた4つの半径方向クロスビームを含むのが好ましい。
【0037】
図7は、
図3によるガス化装置のさらに好適な実施形態の正面断面図である。この場合、容器(4)は、熱分解領域(10)に位置する固形物質(2)を、横断面において、せん断するためのせん断手段(90)をさらに含む。これらのせん断手段(90)は、第2障害物(80)の直上に設置するのが好ましい。これらのせん断手段は、一般に第2障害物(80)上で支持される、これらアーチの基部を壊すことによって、熱分解領域で形成される固形物質(2)のアーチを防止することができる。これによって、物質のより均一な流れ(”LILO”)がもたらされる。
【0038】
せん断手段は、容器(4)内で実質的に水平に延びる可動ブレード(91)を含むのが好ましい。ブレード(91)は、中心軸(100)によって回転駆動できるように、中心軸(100)に固定するのが好ましい。あるいは、ブレード(91)は、適切な駆動手段によって回転または並進駆動できる。
【0039】
本発明はまた、前述のガスを生産するための上述のガス化装置を含む、ガスの生産および燃焼のための設備にも関する。それは、たとえば、上述のガス化装置および内燃エンジンを含み、ガス化装置の出口(6)がエンジンの燃料吸気装置に接続された組み合わせでよい。
【0040】
本発明を具体的な実施形態に関して説明してきたが、それらは単に説明用であり、限定するものと見なすべきでない。一般に、本発明が図解および/または説明した上述の実施例に限定されないことは、当業者には明らかであろう。特許請求の範囲に示される場合を含めて、図面中の参照番号の存在を限定するものと見なすことはできない。動詞”to comprise”、”to include”、または他の変形、およびそれらの語形変化の使用は、言及された構成要素以外の構成要素の存在を決して排除しない。ある構成要素を紹介するための不定冠詞”a”あるいは”an”または定冠詞”the”の使用は、複数のこれら構成要素の存在を排除しない。
【0041】
要約すれば、本発明は次のようにも説明できる。垂直容器(4)を含む固形炭素系燃料のガス化装置であって、前述の容器は頂部から下方に向かって連続的にガス化される固形炭素系燃料(2)用入口(5)、熱分解ガスおよびチャーを生産するための前述の燃料の熱分解領域(10)、熱分解ガスの燃焼領域(20)、チャーの還元領域(30)、ガスの出口(6)、灰の収集領域(40)を含む。熱分解領域(10)と燃焼領域(20)とは、燃料(2)を熱分解領域(10)から還元領域(30)に直進させることなく、熱分解領域(10)から還元領域(30)に燃料を移送できる移送チェンバー(50)を含む能動移送手段によって分離され、したがってこれら2つの領域の間の流量に関してより良い制御を働かせることができる。