【実施例1】
【0012】
図1は実施例1の本体ケースの周辺の分解斜視図、
図2は本体ケースの正面図である。自動販売機本体の外部の例えば側部に固定される金属製の本体ケース11の前方の孔部11aには、シリンダ錠12が装着可能とされている。孔部11aは円形の浅孔とされ、その奥部に円形の両側を面取りした挿通孔11bが形成されている。孔部11aの上部に設けられた孔部11cに、扉開放防止部材としてL字状の金属製ロックアーム13の軸部13aが回動自在に挿入される。孔部11cの下部にはロックアーム13に取り付けたロックボルトが挿入される上下方向の長溝11dが形成され、長溝11dの後方には後述する歯車部材を軸支する軸孔11eが設けられている。
【0013】
ケース本体11の開放された裏面は合成樹脂製の裏面板14により覆われ、ケース本体11は金属製の補強板15を用いて自動販売機の側面にボルトを貫通して固定する。
【0014】
図3はロックアーム13の底面図であり、ロックアーム13の軸部13a上には、等間隔に内ねじを有する複数の凹溝13bが設けられている。これらのうちの任意の凹溝13bにロックボルト13dが螺合し得るようにされている。軸部13aの端末部に設けた孔部には抜け出し用ストッパとしてボルト13eが螺合されている。また、軸部13aの先端にはアーム部13fが軸部13aに対し直交して設けられている。
【0015】
図4は
図1の本体ケース11のA−A線に沿った断面図、
図5はB−B線に沿った断面図である。本体ケース11の内部には隔壁11fを介して、第1の空隙部11gと第2の空隙部11hが、孔部11aの後方に順次に設けられている。隔壁11fには、孔部11aと連通する孔部11iと、孔部11iの上方にあって後述する歯車部材を挿着する切欠部11jと、更に切欠部11jの上方に位置した軸挿通部11kが設けられている。
【0016】
なお、切欠部11jは歯車部材の後軸部を軸挿通部11kに挿着するためのものであり、組立時において歯車部材を装着した後は、裏面板14からケース本体11内に突出された封止部により封止される。
【0017】
また、第1の空隙部11gと第2の空隙部11hの上部には、前述のロックアーム13用の孔部11cが前後方向に貫通して形成されており、第2の空隙部11hの上部には後述するロック操作部材のロックピンをロックアーム13の凹溝13b内に嵌入するためのロック孔11lが穿けられている。
【0018】
図6は本体ケース11の内部に配置される部材の分解斜視図である。シリンダ錠12の後方には第1の空隙部11g内に配置されるギア付リング部材16、シリンダ錠12の先端に取り付け第2の空隙部11h内に配置されるカム部材17、同様に第2の空隙部11hに配置されるロック操作部材18が設けられ、ギア付リング部材16と並列して第1の空隙部11g内に歯車部材19が配置される。なお、シリンダ錠12は鍵Kを挿入した状態を図示している。
【0019】
シリンダ錠12の胴体周囲に外ねじ12aが形成されており、胴体の両側は面取りされている。外ねじ12aにはナット12bが螺合されており、シリンダ錠12の先端には角柱から成る操作キー部12cが突出されている。
【0020】
シリンダ錠12の外ねじ12aは、第1の空隙部11g内に収納される円筒状のギア付リング部材16の内ねじ16aに螺合し回転可能とされている。ギア付リング部材16の中央部外周にはギア16bが形成され、ギア16bの前方はギア16bよりも小径の前円筒部16cとされ、後方はギア16bと同程度の径の後円筒部16dとされている。
【0021】
第2の空隙部11h内には、カム部材17が配置され、カム部材17の中央に設けた角孔状のキー溝17aに、シリンダ錠12の操作キー部12cが挿入可能とされている。また、カム部材17の上部にはカム17bが形成されている。
【0022】
このカム部材17は、第2の空隙部11h内に収納される枠板状のロック操作部材18の空胴部18a内に挿入され、空胴部18aの内側上部にはカム17bに係止する係止部18bが形成されている。また、ロック操作部材18の上部には、円柱状のロックピン18cが上方に向けて突出され、下部には支持棒18dが下方に向けて突出されており、支持棒18dにはコイルばね18eが巻回されている。更に、空胴部18aとロックピン18cとの間には、後述する歯車部材の軸部が挿入される軸孔18fが設けられている。
【0023】
また、ロック操作部材18はカム部材17の回動により、第2の空隙部11h内において上下動可能とされており、ロックピン18cはロック孔11lを通ってロックアーム13の凹溝13b内に嵌入可能とされている。そして、ロック操作部材18は支持棒18dに巻回されたコイルばね18eにより常時上方に付勢されている。
【0024】
また、第1の空隙部11gの上方には、ギア付リング部材16に隣接して回転部材としての歯車部材19が配置される。歯車部材19はギア付リング部材16のギア16bと噛合するギア19aを有し、ギア19aの後方には、アンロック操作時にロック操作部材18に設けた軸孔18fに嵌入する後軸部19bが延在されている。また、後軸部19bの周囲には歯車部材19をケース本体11に対して前方に付勢するためのコイルばね19cが巻着されている。歯車部材19の前方側にはケース本体11に設けられた孔部11eに挿入され、回転軸として機能する円柱状の前軸部19dが設けられ、前軸部19dの前端にはドライバ操作用の十字溝19eが形成されている。
【0025】
図7はロックアーム13を回動不能、引き出し不能なロック状態にしたケース本体11の裏面図である。ケース本体11内においては、シリンダ錠12はギア付リング部材16を回転することにより、内ねじ16aによりケース本体11内に引き込まれており、シリンダ錠12の操作キー部12cにより、カム部材17を回動してロック操作部材18を上昇し、ロックピン18cがロックアーム13の凹溝13bに挿入されている。
【0026】
この状態では、ロックアーム13の凹溝13bの1つに螺合したロックボルト13dは、ケース本体11の長溝11d内に収容され、ロックアーム13の回動は不能となり、ロックすべき凹溝13bは下方のロックピン18cの方向を向くことになる。ロックボルト13dをねじ込む凹溝13bは、ケース本体11の自動販売機への取付位置等を考慮して複数の凹溝13bの1つを選択する。そして、ロックボルト13dを長溝11dに挿入した状態で、残りの凹溝13bの何れか1つに、ロック操作部材18のロックピン18cが嵌入できるように寸法的に定められている。
【0027】
ロックに際しては、シリンダ錠12を鍵Kを用いて回動すると、シリンダ錠12の操作キー部12cがカム部材17を回動し、更にカム部材17のカム17bがロック操作部材18を上昇させ、ロックピン18cが凹溝13bに嵌入し、カム17bが係止部18bに係止する。これにより、鍵Kのそれ以上の回動は不能となり、ロック操作部材18の上昇は停止する。
【0028】
このロック状態において、ロックアーム13の回動、引き抜きが規制され、ロックアーム13が固定される。歯車部材19はコイルばね19cにより付勢されて、ケース本体11内で前方に位置し、歯車部材19のギア19aはギア付リング部材16の前円筒部16cに相当する位置にあって、ギア16bと噛合していない。
【0029】
図8はロックアーム13をアンロックし、ロックアーム13を引き抜いた状態のケース本体11の裏面図である。シリンダ錠12をアンロックのために鍵Kにより回動すると、カム部材17を介してロック操作部材18が下降し、ロック操作部材18のロックピン18cはロックアーム13の凹溝13bから抜き取られる。そして、ロックアーム13を孔部11cから引き抜くと、ロックボルト13dが長溝11dから抜け出す。
【0030】
ロックボルト13dが抜け出すと、歯車部材19の前軸部19dの十字溝19eを設けた端部が外面に現われる。前軸部19dにドライバを当接して、コイルばね19cの付勢力に抗して軸孔11eに沿って押し込むと、歯車部材19の後軸部19bがロック操作部材18の軸孔18fに挿入され、ロック操作部材18は下降状態で固定される。
【0031】
これにより、歯車部材19は軸方向内部に移動して、歯車部材19のギア19aがギア付リング部材16のギア19aと噛合し、ギア19aはギア付リング部材16の後円筒部16dの縁部により、それ以上の押し込みは不能となる。
【0032】
ここで、ドライバの先端を十字溝19eに嵌合して歯車部材19を回転すると、その回転はギア19aからギア16bにより伝達されて、ギア付リング部材16を回転させる。ギア付リング部材16の内ねじ16aにはシリンダ錠12の外ねじ12aに螺合しているが、シリンダ錠12は面取りされた挿通孔11bに挿通されている。従って、ギア付リング部材16を回転しても、シリンダ錠12は回転することなく、挿通孔11bから外方に押し出され、シリンダ錠12をケース本体11の外部に取り出すことができる。
【0033】
なお、この状態でドライバを外せば、歯車部材19はコイルばね19cの付勢力により、ケース本体11の前方に移動し、ギア19a、16b同士の噛合が外れる。
【0034】
また、新たなシリンダ錠12を本体ケース11に取り付けるには、ロックアーム13を引き出したアンロック状態において、シリンダ錠12を本体ケース11の前面から孔部11aの挿通孔11b内に挿入し、ギア付リング部材16内に内挿する。そして、ドライバにより歯車部材19を押し込むと共に歯車部材19を回転し、ギア19a、ギア16bを介して、ギア付リング部材16を回転する。
【0035】
これにより、ギア付リング部材16の内ねじ16aはシリンダ錠12の外ねじ12aに螺合して、シリンダ錠12をギア付リング部材16内に引き入れ、シリンダ錠12の操作キー部12cがカム部材17のキー溝17aに挿入される。これにより、新たなシリンダ錠12がケース本体11に装着されることになる。
【0036】
このシリンダ錠12の装着後に、ドライバを歯車部材19の前軸部19dの先端から離すと、歯車部材19はコイルばね19cに付勢され前方に移動し、ギア19aとギア16bとの噛合は外れ、後軸部19bはロック操作部材18の軸孔18fから抜け出す。
【0037】
そして、再びロックアーム13をロックするには、ロックアーム13を孔部11c内に押し込んで、ロックボルト13dを本体ケース11の長溝11dに押し込む。これにより、ロックアーム13の軸部13aは販売機本体の扉の前面に位置する。ここで、シリンダ錠12の操作キー部12cを鍵Kを用いて回動すると、カム部材17が連動してロック操作部材18が上昇し、ロックピン18cがロックアーム13の凹溝13bの1つに嵌入され、ロックアーム13がロックされ、扉の開放が不能となり盗難防止対策となる。そして、鍵Kをシリンダ錠12から引き抜けば、交換作業が完了する。
【実施例2】
【0038】
図9は実施例2におけるロックアームのロック状態のケース本体の裏面図であり、実施例1と同一の符号は同一の部材を示している。
【0039】
実施例1においては、歯車部材19の前後進によりギア19aはギア付リング部材16のギア16bと噛合したり外れるようにしたが、本実施例2においては、ギア16bの幅を円筒部16c、16dの範囲まで拡げることにより、ギア19aはギア16bに常時噛合している。ケース本体11の一部には、歯車部材19が前方に移動している状態で、ギア19aに噛合する歯形11mが形成されている。
【0040】
従って、
図10に示すアンロック状態で、ロックアーム13を引き抜いても、歯車部材19がコイルばね19cにより前方に押されている限り、歯車部材19を歯形11mの存在により回転することはできない。
【0041】
ドライバにより歯車部材19を押し込むと、ギア19aはギア付リング部材16のギア16bとの噛合を維持しながら後方に摺動し、歯形11mの規制から外れて、歯車部材19はギア付リング部材16を回転させることが可能となる。以後の操作は、実施例1と同様である。
【0042】
なお、実施例1、2においては、扉開放防止部材をL字状のロックアーム13としたが、本発明の扉開放防止部材はこれに限定されることはない。例えば、自動販売機の扉に係止部を取り付け、この係止部をケース本体11に取り付けた係止部材により係止して、シリンダ錠によりロックするようにしてもよい。