(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリオレフィンアイオノマー又は無水マレイン酸変性α−ポリオレフィンであることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図を参照しながら、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明のタイヤの一例のトレッド部の部分平面図であり、
図2は、
図1のII−II線に沿う断面図である。
図1に示すタイヤのトレッド部1は、タイヤ周方向に伸びる複数の主溝2とタイヤ幅方向に伸びる複数の横溝3とによって画成されたブロック状陸部4を具え、該ブロック状陸部4にタイヤ幅方向に伸びる複数のサイプ5が形成されている。そして、該サイプ5は、
図2に示すように、主溝2及び横溝3の深さ方向に伸びている。なお、
図1に示すタイヤのトレッド部1は、タイヤ赤道面6に対して、左右非対称であるが、本発明のタイヤのトレッド部は、タイヤ赤道面に対して、左右対称であってもよい。
【0017】
ここで、本発明のタイヤにおいては、上記ブロック状陸部4に、ゴム成分(A)、及び、
水に不溶の親水性樹脂からなる繊維(B
1)と該繊維の少なくとも一部を被覆するゴム成分に対して親和性を有する樹脂からなる被覆層(B
22)とからなる複合繊維(B)を含み、該複合繊維(B)の長さが前記サイプ間距離Dの1/2以上であるゴム組成物が用いられており、また、該複合繊維(B)7がタイヤ周方向に配向していることを特徴とする。
【0018】
本発明のタイヤにおいては、複数のサイプ5が形成されているブロック状陸部4に、上記ゴム成分(A)と上記複合繊維(B)を含むゴム組成物が用いられており、該複合繊維(B)は
、親水性樹脂からなる繊維(B
1)と該繊維の少なくとも一部を被覆するゴム成分(A)に対して親和性を有する樹脂からなる被覆層(B
22)とからなるため、複合繊維(B)とゴム成分(A)との接着性、親和性が高く、複合繊維(B)がブロック状陸部4中で滑ることが抑制されている。ここで、ブロック状陸部4に、親水性樹脂からなる繊維(B
1)を配合したゴム組成物を使用した場合は、親水性樹脂からなる繊維(B
1)とゴム成分(A)との接着性、親和性が低いため、親水性樹脂からなる繊維(B
1)がブロック状陸部4中で滑り易く、親水性樹脂からなる繊維(B
1)による剛性の維持が難しい。
【0019】
また、上記複合繊維(B)7がタイヤ周方向に配向していることに加え、上記複合繊維(B)7の長さが上記サイプ間距離Dの1/2以上であるため、ブロック状陸部4のタイヤ周方向の剛性を向上させることができる。ここで、複合繊維(B)の長さがサイプ間距離Dの1/2未満では、ブロック状陸部4に応力がかかった際に、複合繊維(B)による剛性の維持が難しい。
【0020】
上述のように、本発明のタイヤにおいては、複合繊維(B)によってブロック状陸部4の剛性が向上している。そのため、本発明によれば、タイヤの乾燥路面での操縦安定性を向上させることができる。なお、本発明のタイヤは、複合繊維(B)によってブロック状陸部4の剛性が向上しているため、耐摩耗性にも優れる。
【0021】
また、本発明のタイヤにおいては、タイヤの使用時において、複合繊維(B)中の親水性樹脂からなる繊維(B
1)がトレッド表面に露出し、水との親和性を充分に確保することができ、タイヤに優れた排水性を付与することができる。そのため、本発明によれば、タイヤの氷上性能も向上させることができる。
【0022】
本発明のタイヤのブロック状陸部4に用いるゴム組成物のゴム成分(A)としては、特に制限はなく、天然ゴム(NR)の他、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル−ブタジエンゴム(NBR)等の合成ゴムを使用することができ、これらの中でも天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)が好ましい。これらゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明のタイヤ
においては、ブロック状陸部4に用いるゴム組成物
が、親水性樹脂からなる繊維(B
1)と該繊維の少なくとも一部を被覆するゴム成分(A)に対して親和性を有する樹脂からなる被覆層(B
22)とからなる複合繊維(B)を含む。繊維に親水性樹脂を採用することにより、水との親和性を充分に確保することができ、タイヤに優れた排水性を付与して、氷上性能を向上させることができる。なお、水との親和性はゴム成分中における繊維の分散性を低下させかねないものの
、繊維(B
1)の表面に被覆層(B
22)を形成することで、ゴム成分(A)中における複合繊維(B)の分散性を大幅に向上させることができ、タイヤに良好な排水性を付与しつつ、優れた乾燥路面での操縦安
定性、耐摩耗性を付与することができる。なお、ゴム成分に対して親和性を有する樹脂の軟化点が加硫最高温度よりも低い場合は、加硫時に、ゴム成分に対して親和性を有する樹脂が、溶融して流動性を帯びた被覆層(B
22)となってゴム成分(A)と繊維(B
1)との接着に寄与し、タイヤに良好な排水性と優れた乾燥路面での操縦安
定性、耐摩耗性を付与することができる。また、上記被覆層(B
22)は、繊維(B
1)の全表面にわたって形成されていてもよく、繊維(B
1)の一部の表面に形成されていてもよく、具体的には、少なくとも繊維(B
1)全表面積の50%を占める割合で被覆層(B
22)が形成されていることが好ましい。
【0036】
上記ゴム成分に対して親和性を有する樹脂としては、例えば、溶解パラメーター(SP値)がゴム成分(A)に近い樹脂が使用でき、具体的には、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。該ポリオレフィン系樹脂は、分岐状、直鎖状等のいずれであってもよく、また、エチレン−メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマー樹脂であってもよい。該ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、並びにこれらのアイオノマー樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリオレフィンアイオノマー、無水マレイン酸変性α−ポリオレフィンが特に好ましい。なお、ポリオレフィンアイオノマーや無水マレイン酸変性α−ポリオレフィンを用いた場合、水酸基とも接着するため、ゴム強度をより向上させることが可能となる。
【0037】
上記親水性樹脂からなる繊維(B
1)と該繊維の少なくとも一部を被覆するゴム成分(A)に対して親和性を有する樹脂からなる被覆層(B
22)とからなる複合繊維(B)は、例えば、
図3に示すようなダイ11を具える押出機を用い、ダイ出口12から親水性樹脂を、ダイ出口13からゴム成分に対して親和性を有する樹脂を、各々同時に押し出して、未延伸糸を形成し、かかる未延伸糸を熱延伸しながら繊維状にすることで製造できる。なお、各樹脂の使用量は、得られる複合繊維(B)の長さや径によっても変動し得るが、親水性樹脂100質量部に対して、ゴム成分に対して親和性を有する樹脂を通常0.1〜80質量部、好ましくは0.1〜20質量部の量で使用する。これらの樹脂を上記範囲内の量で使用することにより、延伸工程を経た後に得られる親水性樹脂からなる繊維(B
1)の表面に、所望の効果を発揮し得る被覆層(B
22)を有効に形成することができる。
【0038】
上記複合繊維(B)は、親水性樹脂からなる繊維(B
1)と該繊維の少なくとも一部を被覆するゴム成分(A)に対して親和性を有する樹脂からなる被覆層(B
22)とからなる限り特に限定されず、種々の断面形状を採用することができる。例えば、
図3に示すようなダイ11を具える押出機を用いた場合は、
図4(a)に示すような、複合繊維(B)7のほぼ中心に親水性樹脂からなる繊維(B
1)14が位置し、該親水性樹脂からなる繊維(B
1)14をゴム成分(A)に対して親和性を有する樹脂からなる被覆層(B
22)15が被覆する形状の複合繊維(B)が得られる。また、他の形状としては、
図4(b)に示すような、複合繊維(B)7内に親水性樹脂からなる繊維(B
1)14が随所に散在し、該親水性樹脂からなる繊維(B
1)14をゴム成分(A)に対して親和性を有する樹脂からなる被覆層(B
22)15が被覆する形状が挙げられる。
【0039】
上記繊維(B
1)に用いる親水性樹脂は水に不溶
である。水に不溶の親水性樹脂からなる繊維を用いた場合、トレッド表面に複合繊維(B)中の繊維(B
1)部分が露出した際に路面の水に繊維(B
1)部分が溶け込まないため、トレッド表面の親水性を長期に亘って維持でき、トレッドの排水性能、氷上性能を長期に亘って向上させることができる。
【0040】
上記繊維(B
1)に用いる親水性樹脂は、水との間に親和性を発揮し得る樹脂、すなわち分子内に親水性基を有する樹脂であれば特に限定されないが、具体的には、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を含む樹脂であることが好ましく、−OH、−COOH、−OCOR(Rはアルキル基)、−NH
2、−NCO、−SHからなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含む樹脂であることが更に好ましく、−OH、−COOH、−NH
2、−NCOからなる群から選択される少なくとも1種の官能基を含む樹脂であることがより一層好ましい。
【0041】
上記繊維(B
1)に用いる親水性樹脂として、具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体
、ポリ(メタ)アクリル酸
のエステル
、スチレン−マレイン酸共重合体
、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体
等が好ましく、これらの中でも
、エチレン−ビニルアルコール共重合体が特に好ましい。
【0042】
上記親水性樹脂からなる繊維(B
1)は、公知の製造方法、例えば、親水性樹脂を溶融紡糸して未延伸糸を形成し、かかる未延伸糸を熱延伸しながら繊維状にする方法で製造できる。得られる繊維(B
1)の平均長さは、通常トレッドに形成するサイプ5のサイプ間距離Dの1/2以上であり、好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下であり、平均径は通常0.001〜2mm、好ましくは0.005〜0.5mmである。平均長さ及び平均径が上記範囲内であると、繊維同士が必要以上に絡まるおそれがなく、良好な分散性を阻害するおそれもない。また、アスペクト比は通常10〜4000、好ましくは50〜1000である。なお、アルペクト比とは、繊維(B
1)の長軸の短軸に対する比を意味する。
【0043】
また、上記複合繊維(B)の平均長さは、トレッドに形成するサイプ5のサイプ間距離Dの1/2以上であり、好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下であり、平均径は通常0.001〜2mm、好ましくは0.005〜0.5mm、である。平均長さ及び平均径が上記範囲内であると、複合繊維(B)同士が必要以上に絡まるおそれがなく、良好な分散性を阻害するおそれもない。また、アスペクト比は通常10〜4000、好ましくは50〜1000である。なお、アルペクト比とは、複合繊維(B)の長軸の短軸に対する比を意味する。
【0044】
上記複合繊維(B)の配合量は、上記ゴム成分(A)100質量部に対して通常0.1〜100質量部、好ましくは0.1〜50質量部である。複合繊維(B)の配合量が上記範囲内であると、良好な排水性を保持して、氷上性能を向上させつつ、充分な乾燥路面での操縦安定性、耐摩耗性を付与することが可能となる。
【0045】
上記ブロック状陸部4に用いるゴム組成物は、更に発泡剤(C)を含有してもよい。発泡剤(C)を含有することにより、加硫工程中に発泡剤から発生したガスをゴム内に散在させたり、また、かかるガスを溶融した複合繊維(B)の内部に侵入させて複合繊維(B)の形状に対応した形状を有する気泡を形成させたりすることができる。このような気泡がゴム内に存在することにより、タイヤが摩耗するにつれて排水溝としての機能を発揮させることができ、タイヤに更に優れた排水性を付与することが可能となる。特に、複合繊維(B)の形状に対応した形状を有する気泡が形成されれば、より好適に排水溝としての機能を発揮でき、タイヤの氷上性能を大幅に向上させることができる。
【0046】
上記発泡剤(C)としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼンスルホニルヒドラジド誘導体、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタルアミド、トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。なかでも、製造加工性の観点から、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が好ましく、アゾジカルボンアミド(ADCA)がより好ましい。これら発泡剤(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、該発泡剤(C)の配合量は、特に限定されるものではないが、ゴム成分(A)100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲が好ましい。なお、上記発泡剤は、上記繊維中に含ませてもよい。
【0047】
また、上記発泡剤(C)は、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛や亜鉛華等の発泡助剤と併用することが好ましい。これら発泡助剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。発泡助剤を併用することにより、発泡反応を促進して反応の完結度を高め、経時的に不要な劣化を抑制することが可能となる。
【0048】
なお、上記発泡剤(C)を含有するゴム組成物を加硫した後に得られる加硫ゴムにおいて、その発泡率は、通常1〜100%、好ましくは5〜40%である。発泡剤(C)を配合した場合、発泡率が大きすぎるとゴム表面の空隙も大きくなり、充分な接着面積を確保できなくなるおそれがあるが、上記範囲内の発泡率であれば、排水溝として有効に機能する気泡の形成を確保しつつ、気泡の量を適度に保持できるので、耐久性を損なうおそれもない。ここで、上記加硫ゴムの発泡率とは、平均発泡率Vsを意味し、具体的には次式(8)により算出される値を意味する。
Vs=(ρ
0/ρ
1−1)×100(%) ・・・ (8)
[式(8)中、ρ
1は加硫ゴム(発泡ゴム)の密度(g/cm
3)を示し、ρ
0は加硫ゴム(発泡ゴム)における固相部の密度(g/cm
3)を示す。]
【0049】
上記ブロック状陸部4に用いるゴム組成物には、上記ゴム成分(A)、複合繊維(B)と共に、必要に応じて上記発泡剤(C)及び発泡助剤の他、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、カーボンブラック等の充填剤、軟化剤、ステアリン酸、老化防止剤、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合してもよい。
【0052】
上記ゴム組成物の製造方法の
一態様では、予め親水性樹脂からなる繊維(B
1)と該繊維の少なくとも一部を被覆するゴム成分(A)に対して親和性を有する樹脂からなる被覆層(B
22)とからなる複合繊維(B)を準備し、該複合繊維(B)をゴム成分(A)に配合する。この場合、予め親水性樹脂からなる繊維(B
1)の表面にゴム成分(A)に対して親和性を有する樹脂からなる被覆層(B
22)が形成されているため、混練の初期から、ゴム成分(A)に対する複合繊維(B)の分散性が良好である。
【0053】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物をブロック状陸部4に用いることを特徴とする。本発明のタイヤは、適用するタイヤの種類や部材に応じ、未加硫のゴム組成物を用いて成形後に加硫して得てもよく、又は予備加硫工程等を経た半加硫ゴムを用いて成形後、さらに本加硫して得てもよい。なお、タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0054】
本発明のタイヤにおいては、上記複合繊維(B)がタイヤ周方向に配向していることを特徴とする。ここで、複合繊維(B)の配向を揃える手法としては、未加硫ゴム組成物中に分散している複合繊維(B)を一定方向に配向させればよく、例えば、流路断面積が出口に向かって低減する押出機を用いて、複合繊維(B)又は親水性樹脂からなる繊維(B
1)を含むゴム組成物を押し出す方法が挙げられる。そして、複合繊維(B)が一定方向に配向しているゴム組成物からトレッドゴムを形成し、該トレッドゴムを、複合繊維(B)がタイヤ周方向に配向するように配置して生タイヤを成形し、常法に従って、加硫することで、本発明のタイヤを製造できる。なお、複数のサイプを有するブロック状陸部4は、加硫モールドの形状を適宜選択することで、トレッド部1に形成することができる。
【実施例】
【0055】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0056】
<製造例1:親水性樹脂からなる繊維(B
1)と被覆層(B
22)とからなる複合繊維(B)の製造>
図3に示すようなダイ11と、2つのホッパーを具える二軸押出機を用い、エチレン−ビニルアルコール共重合体[(株)クラレ製、エバールF104B]と、ポリエチレン[日本ポリエチレン(株)製、ノバテックU360]とを別々のホッパーに投入し、ダイ出口12からエチレン−ビニルアルコール共重合体を、ダイ出口13からポリエチレンを各々同時に押し出して、常法に従って得られた繊維を長さ0.5mm、1mm、2mm、3mmにカットして、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる繊維(B
1)とポリエチレン(PE)からなる被覆層(B
22)とからなる複合繊維(B)を作製した。なお、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)とポリエチレン(PE)との質量比は、EVOH:PE=50:50であり、繊維径は、50μmである。
【0057】
<製造例2:ゴム成分に対して親和性を有する樹脂からなる繊維の製造>
上記ホッパーに上記ポリエチレンのみ投入し、ダイ出口12及びダイ出口13の双方からポリエチレンを押し出して、常法に従って得られた繊維を長さ1mm、2mm、3mmにカットして、ポリエチレン(PE)からなる繊維を作製した。なお、繊維径は、50μmである。
【0058】
<製造例3:親水性樹脂からなる繊維(B
1)の製造>
上記ホッパーに上記エチレン−ビニルアルコール共重合体のみ投入し、ダイ出口12及びダイ出口13の双方からエチレン−ビニルアルコール共重合体を押し出して、常法に従って得られた繊維を長さ1mm、2mm、3mmにカットして、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)からなる繊維(B
1)を作製した。なお、繊維径は、50μmである。
【0059】
<製造例4:ゴム成分に対して親和性を有する樹脂からなる繊維の製造>
上記ホッパーにアイオノマー[三井・デュポンポリケミカル(株)製、ハイミラン1557]のみ投入し、ダイ出口12及びダイ出口13の双方からアイオノマーを押し出して、常法に従って得られた繊維を長さ1mm、2mm、3mmにカットして、アイオノマーからなる繊維を作製した。なお、繊維径は、50μmである。
【0060】
<製造例5:親水性樹脂からなる繊維(B
1)を接着剤層(B
21)で被覆してなる複合繊維(B)の製造>
表1の配合に従い、接着剤の各成分を混合し、25℃で24時間熟成して接着剤液を作製した。かかる接着剤液をB
1の表面に、繊維100質量部に対して20質量部となる量で塗布し、120℃で1分間乾燥させ、その後180℃で2分間の熱処理を施した。次いで、得られた繊維を長さ5mmにカットした。
【0061】
【表1】
【0062】
*1:日本ゼオン(株)製、Nipol 2518GL
*2:日本ゼオン(株)製、Nipol LX110
【0063】
<ゴム組成物の調製>
上記繊維を用いて、下記表2に示す配合処方のゴム組成物を調製した。
【0064】
【表2】
【0065】
*3 JSR(株)製,「BR01」、シス−1,4−ポリブタジエン
*4 旭カーボン(株)製、「カーボン N220」
*5 大内新興化学工業社製、「ノクセラーDM」、ジ−2−ベンゾチアジルジスルフィド
*6 三協化成(株)製、「セルマイクAN」、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)
【0066】
<タイヤの作製>
流路断面積が出口に向かって減少する押出機を用いて、上記ゴム組成物を押し出して、繊維が一定方向に配向しているトレッドゴムを準備した。次に、該トレッドゴムを、トレッドゴム中の繊維がタイヤ周方向に配向するようにトレッド部に配置して生タイヤを成形し、常法に従って、加硫して、
図1に示す構造のトレッド部を有し、サイズが195/65R15、サイプ間距離Dが2mmのタイヤを作製した。得られたタイヤについて、トレッド部を形成する加硫ゴムの発泡率を上記式(8)により算出し、更に、以下の方法で、氷上性能、乾燥路面での操縦安定性、耐摩耗性を評価した。結果を表3に示す。
【0067】
(1)氷上性能
トレッド部の摩耗率が20%のタイヤを装着した車両にて、氷上平坦路を走行させ、時速20km/hの時点でブレーキをかけてタイヤをロックさせ、停止状態になるまでの制動距離を測定した。比較例1のタイヤの制動距離の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、氷上での制動性に優れることを示す。なお、トレッド部の摩耗率は、下記式により算出した。
摩耗率(%)=(1−摩耗後の溝深さ/新品時の溝深さ)×100
【0068】
(2)乾燥路面での操縦安定性
供試タイヤを装着し、乾燥したテストコースにて実車走行を行って、ドライバーが評点をつけ、比較例1の評点を100として指数表示した。指数値が大きい程、乾燥路面での操縦安定性が良好であることを示す。
【0069】
(3)耐摩耗性
195/65R15のタイヤを用いた実車にて舗装路面を1万km走行後、残溝を測定しトレッドが1mm摩耗するのに要する走行距離を相対評価し、比較例1を100として指数表示した。
【0070】
【表3】
【0071】
表3中の実施例1〜3
の結果から、親水性樹脂からなる繊維(B
1)をゴム成分に対して親和性を有する樹脂からなる被覆層(B
22)で被覆してなる複合繊維(B)
を含むゴム組成物をトレッド部に用い、更に、複合繊維(B)をタイヤ周方向に配向させることで、耐摩耗性を維持しながら、タイヤの氷上性能、乾燥路面での操縦安定性を向上させられることが分かる。
【0072】
また、表3中の比較例1と実施例1〜3との比較
から、親水性樹脂からなる繊維(B
1)をゴム成分に対して親和性を有する樹脂からなる被覆層(B
22)で被覆してなる複合繊維(B)
の長さがサイプ間距離Dの1/2以上の場合、操縦安定性が向上するものの、複合繊維(B)の長さがサイプ間距離Dの1/2未満では、乾燥路面での操縦安定性が向上しないことが分かる。
【0073】
また、表3中の比較例6〜8の結果から、親水性樹脂からなる繊維(B
1)を配合したゴム組成物をトレッド部に用いると、耐摩耗性が低下することが分かる。
【0074】
また、表3中の比較例9〜11の結果から、アイオノマーからなる繊維を配合したゴム組成物をトレッド部に用いると、耐摩耗性を維持しながら、タイヤの氷上性能、操縦安定性を向上させられるものの、氷上性能、乾燥路面での操縦安定性の向上幅が小さいことが分かる。