【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、
図5に示すモータ101は、複数の取り付け用ボス106がベース囲い104の外周部から突出する構造であり、
図5からも確認できるように、複数の取り付け用ボス106は、カップ状部材102よりもモータ外周側に突出している。このため、モータ101において、カップ状部材102にインペラを取り付けて軸流送風機とした場合を考慮すると、モータ外周に突出している複数の付け用ボス106が通風路にかかり、送風を妨げるような構造になっている。
【0005】
一方、
図6に示すモータ201は、ねじ穴206がハウジング202の図示で下側に形成されるため、モータ外周に突出部を有さない構造となっている。しかし、モータ201は、特許文献2に記載されているように、ハウジング202がダイカスト法によって成型される亜鉛合金製であるため、回路基板208とハウジング202との接触箇所に絶縁処理を施す必要がある。ここで、モータ201のハウジング202を樹脂で形成した場合を考慮すると、回路基板208とハウジング202との接触箇所への絶縁処理は不要となるが、ハウジング202に形成されるねじ穴206も樹脂で形成されることになるため、ねじ穴206の強度不足が懸念される。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軸流送風機用アウターロータ型ブラシレスモータを、送風の妨げとならない取り付け構造により、外部の筐体に強固に固定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)ロータと、該ロータが配置される熱可塑性樹脂製のモータベースとを含むアウターロータ型ブラシレスモータであって、該アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体へ取り付けるための取り付けねじ穴が、前記モータベースの前記ロータが配置される側とは軸方向に反対側に位置する底部の、前記ロータを軸方向に投影した範囲内に設けられた下穴と、該下穴に挿入された
状態で固定された金属製のインサートナットとで形成されるアウターロータ型ブラシレスモー
タ。
【0008】
本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、ロータと、熱可塑性樹脂製のモータベースとを含み、モータベースにロータが配置される構造を有している。又、モータベースの、ロータが配置される側とは、軸方向に反対側に位置する底部に、アウターロータ型ブラシレスモータを外部の筐体へ取り付けるための、取り付けねじ穴が形成されている。これにより、アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体に取り付ける際には、モータベースの底部を外部筐体に密接させて、おねじにより締結することになる。このため、外部筐体のモータ取り付け面の大きさを、モータベースの底部の面積に対応する大きさに抑えるものとなる。
更に、取り付けねじ穴は、モータベースの底部の、ロータを軸方向に投影した範囲内に形成されている。このため、アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体に取り付けた状態においても、取り付けに使用するおねじ及び取り付けねじ穴が、ロータの外周よりも外側に突出することはない。すなわち、本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、例えば軸流送風機に用いる場合に、通風路を妨げない構造によって、モータベースを外部筐体に取り付けるものである。
【0009】
又、本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、取り付けねじ穴が、熱可塑性樹脂製のモータベースの底部に設けられた下穴に、金属製のインサートナットを挿入することにより形成されている。このように、モータベースが熱可塑性樹脂製でありながら、モータベースに設けられた下穴に挿入するインサートナットを金属製とすることで、インサートナットにより必要な強度を確保して、外部筐体に強固にねじ固定されるものとなる。
なお、本説明において、下穴へのインサートナットの「挿入」には、熱可塑性樹脂製のモータベースの成型後に行う拡張方式、圧入方式、熱圧入方式、及び、モータベースの成型時に予めインサートナットを組み付けておく方法を含むものとする。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記下穴は、前記インサートナットの軸方向の長さよりも深い止まり穴であるアウターロータ型ブラシレスモー
タ。
本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、モータベースの底部に設けられる下穴が、止まり穴として設けられている。このため、アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体に取り付ける際に、金属製のインサートナットにおねじを螺合することにより、金属屑が発生したとしても、下穴が止まり穴であるため、下穴が貫通穴である場合のように、金属屑が下穴の軸方向ロータ側からこぼれ落ちることはない。これにより、金属屑に起因する、回路基板等の回路の絶縁不良を防止するものとなる。
【0011】
又、本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、止まり穴として設けられている下穴が、下穴に挿入されるインサートナットの軸方向の長さよりも深く設けられている。このため、アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体に取り付けるために、取り付けねじ穴におねじを螺合した状態では、下穴の底部に、おねじが螺合されたインサートナットにより、開口側が塞がれた、閉塞空間が形成される。そして、下穴の深さを、インサートナットの軸方向の長さより、例えば、ねじ山2つ分以上長い深さとした場合には、上述したような、金属製のインサートナットにおねじを螺合することにより発生する金属屑を、閉じ込めるに十分な容積を有する閉塞空間が、おねじ先端部と止まり穴の底部との間に形成されることになる。更に、アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体に取り付けるために使用するおねじとして、例えば、M3、M5メートル並目ねじ等の、2mm単位の長さでサイズ分けされている規格おねじを使用する場合には、下穴をインサートナットの軸方向の長さより2mm以上長い深さで設けることにより、締結のために必要な最短の長さのおねじに加えて、このおねじよりも長さのサイズが1つ大きいおねじも、外部筐体への取り付けに使用するものとなる。
【0012】
(3)上記(2)項において、前記下穴の内径は、前記インサートナットの挿入前の状態で一定径を有しているアウターロータ型ブラシレスモー
タ。
本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、モータベースの底部に設けられた下穴が、開口側から底部にかけて一定の内径を有している。この下穴に、金属製のインサートナットを挿入することで、上記(1)から(3)の作用を奏するものとなる。
【0013】
(4)上記(2)項において、前記下穴の底部には、インサートナットの外径より小さい内径の小径部を有して
、前記下穴の内周部には段差が形成されており、前記下穴に対する、前記インサートナットの挿入方向前方端部が、前記段差に近接する態様で挿入されているアウターロータ型ブラシレスモータ(請求項
1)。
【0014】
本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、モータベースの底部に設けられる下穴が、インサートナットの外径と略等しい内径の大径部と、下穴の底部に位置し、インサートナットの外径より小さい内径の小径部とにより構成されている。そして、大径部は、下穴に挿入されるインサートナットの軸方向の長さと略等しい深さを有し、小径部は、大径部の内径より小さい内径を有している。このため、下穴の内周部の、大径部と小径部との境界位置、つまり、下穴の開口側端部からインサートナットの軸方向の長さと略等しい深さの位置には、段差が形成される。このような構造を有する下穴に、インサートナットを挿入すると、インサートナット全体が下穴に収まった状態で、インサートナットの挿入方向前方の端部が、下穴の内周部に形成されている段差に近接する態様となる。
【0015】
ここで、下穴にインサートナットを挿入する方法として、熱圧入方式を用いることを想定する。熱圧入方式では、インサートナットの挿入方向後方に形成されているフランジ部側の面からインサートナットを加熱し、加熱された状態のインサートナットを下穴へ挿入する。このとき、インサートナット外周面に形成された突起部が、周囲の樹脂を溶かしながら下穴へ入る。そして、加熱を止めることで溶けた樹脂が固まり、インサートナットが下穴に固定される。しかし、挿入の過程ではフランジ部も加熱されているため、フランジ部周辺の下穴の一部が溶けすぎてしまう場合がある。このため、下穴の内周部に段差が形成されていない場合には、下穴にインサートナットが深く入り過ぎてしまう虞がある。一方、本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータのように、下穴が大径部と小径部とで構成され、下穴の内周部に段差が形成されている場合には、フランジ部周辺の下穴の一部が溶けすぎてしまっても、インサートナットの挿入方向前方の端部が、段差に当接した状態となり、インサートナットが挿入方向に進まなくなる。そして、下穴に形成されている段差の位置が、加熱されているインサートナットのフランジ部から離れた位置であるため、下穴の段差周辺の樹脂が溶けるようなことはない。このため、本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、下穴にインサートナットを挿入する際に、インサートナットが深く挿入されることを防ぎ、適切な深さに挿入されるものとなる。
【0016】
(5)上記(4)項において、前記小径部の内径は、前記インサートナットと組み合わされるおねじの外径よりも大きいことを特徴とするアウターロータ型ブラシレスモータ(請求項
2)。
本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、小径部が、インサートナットに螺合されるおねじの外径より大きい内径を有しているため、インサートナットが深く挿入されることを防ぎつつ、外部筐体に取り付けるためのおねじとして、締結のために必要な最短の長さのおねじよりも、長いおねじを利用し得るものともなる。
【0017】
(6)上記
(4)又は(5)項記載のアウターロータ型ブラシレスモータを含む送風機(請求項
3)。
本項に記載の送風機は、モータとして上記
(4)又は(5)項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータを用いることで、ロータの外周よりも外側に突出しない取り付け構造により、アウターロータ型ブラシレスモータが筐体に取り付けられる。このため、例えば、外周にインペラが取り付けられたロータを回転させることにより、送風を行うような場合であっても、アウターロータ型ブラシレスモータの取り付け構造が、通風路の妨げになるようなことはなく、通風路を広く確保するものとなる。更に、上記
(4)又は(5)項に記載の作用を奏するアウターロータ型ブラシレスモータの取り付け構造により、送風機の筐体に強固に取り付けられるものともなる。