特許第6008506号(P6008506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6008506
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】アウターロータ型ブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/00 20060101AFI20161006BHJP
   H02K 5/02 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H02K5/00 A
   H02K5/02
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-18786(P2012-18786)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-158204(P2013-158204A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年11月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】菅原 辰之介
【審査官】 沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−014647(JP,U)
【文献】 特開平10−271721(JP,A)
【文献】 特開平09−275654(JP,A)
【文献】 特開平11−299164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00
H02K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、該ロータが配置される熱可塑性樹脂製のモータベースとを含むアウターロータ型ブラシレスモータであって、
該アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体へ取り付けるための取り付けねじ穴が、前記モータベースの前記ロータが配置される側とは軸方向に反対側に位置する底部の、前記ロータを軸方向に投影した範囲内に設けられた下穴と、該下穴に挿入された状態で固定された金属製のインサートナットとで形成され
前記下穴は、前記インサートナットの軸方向の長さよりも深い止まり穴であり、前記下穴の底部には、インサートナットの外径より小さい内径の小径部を有して、前記下穴の内周部には段差が形成されており、
前記下穴に対する、前記インサートナットの挿入方向前方端部が、前記段差に近接する態様で挿入されていることを特徴とするアウターロータ型ブラシレスモータ。
【請求項2】
前記小径部の内径は、前記インサートナットと組み合わされるおねじの外径よりも大きいことを特徴とする請求項記載のアウターロータ型ブラシレスモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアウターロータ型ブラシレスモータを含むことを特徴とする送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターロータ型ブラシレスモータに関するものである。詳しくは、軸流送風機用アウターロータ型ブラシレスモータを外部の筐体に固定するための取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、軸流送風機のインペラを回転させるための動力部として、様々なアウターロータ型ブラシレスモータが発明されており、これらアウターロータ型ブラシレスモータを筐体に取り付けるための構造についても、多様な構造が発明されている。
一例として、モータ101の構造を図5に示している(特許文献1参照)。図示のように、モータ101は、筐体に取り付けるための構造として、ベース囲い104の外周部から複数の取り付け用ボス106が突出して形成される構造を有している。
又、別の例として、図6にモータ201の構造を示している(特許文献2参照)。図示によれば、モータ201は、ハウジング202の基部204の図示で下側に、ねじ穴206が形成されており、このねじ穴206を使用して、筐体にモータ201をねじ止めするような構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−322592号公報
【特許文献2】特開2011−19356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、図5に示すモータ101は、複数の取り付け用ボス106がベース囲い104の外周部から突出する構造であり、図5からも確認できるように、複数の取り付け用ボス106は、カップ状部材102よりもモータ外周側に突出している。このため、モータ101において、カップ状部材102にインペラを取り付けて軸流送風機とした場合を考慮すると、モータ外周に突出している複数の付け用ボス106が通風路にかかり、送風を妨げるような構造になっている。
【0005】
一方、図6に示すモータ201は、ねじ穴206がハウジング202の図示で下側に形成されるため、モータ外周に突出部を有さない構造となっている。しかし、モータ201は、特許文献2に記載されているように、ハウジング202がダイカスト法によって成型される亜鉛合金製であるため、回路基板208とハウジング202との接触箇所に絶縁処理を施す必要がある。ここで、モータ201のハウジング202を樹脂で形成した場合を考慮すると、回路基板208とハウジング202との接触箇所への絶縁処理は不要となるが、ハウジング202に形成されるねじ穴206も樹脂で形成されることになるため、ねじ穴206の強度不足が懸念される。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軸流送風機用アウターロータ型ブラシレスモータを、送風の妨げとならない取り付け構造により、外部の筐体に強固に固定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)ロータと、該ロータが配置される熱可塑性樹脂製のモータベースとを含むアウターロータ型ブラシレスモータであって、該アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体へ取り付けるための取り付けねじ穴が、前記モータベースの前記ロータが配置される側とは軸方向に反対側に位置する底部の、前記ロータを軸方向に投影した範囲内に設けられた下穴と、該下穴に挿入された状態で固定された金属製のインサートナットとで形成されるアウターロータ型ブラシレスモータ。
【0008】
本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、ロータと、熱可塑性樹脂製のモータベースとを含み、モータベースにロータが配置される構造を有している。又、モータベースの、ロータが配置される側とは、軸方向に反対側に位置する底部に、アウターロータ型ブラシレスモータを外部の筐体へ取り付けるための、取り付けねじ穴が形成されている。これにより、アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体に取り付ける際には、モータベースの底部を外部筐体に密接させて、おねじにより締結することになる。このため、外部筐体のモータ取り付け面の大きさを、モータベースの底部の面積に対応する大きさに抑えるものとなる。
更に、取り付けねじ穴は、モータベースの底部の、ロータを軸方向に投影した範囲内に形成されている。このため、アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体に取り付けた状態においても、取り付けに使用するおねじ及び取り付けねじ穴が、ロータの外周よりも外側に突出することはない。すなわち、本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、例えば軸流送風機に用いる場合に、通風路を妨げない構造によって、モータベースを外部筐体に取り付けるものである。
【0009】
又、本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、取り付けねじ穴が、熱可塑性樹脂製のモータベースの底部に設けられた下穴に、金属製のインサートナットを挿入することにより形成されている。このように、モータベースが熱可塑性樹脂製でありながら、モータベースに設けられた下穴に挿入するインサートナットを金属製とすることで、インサートナットにより必要な強度を確保して、外部筐体に強固にねじ固定されるものとなる。
なお、本説明において、下穴へのインサートナットの「挿入」には、熱可塑性樹脂製のモータベースの成型後に行う拡張方式、圧入方式、熱圧入方式、及び、モータベースの成型時に予めインサートナットを組み付けておく方法を含むものとする。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記下穴は、前記インサートナットの軸方向の長さよりも深い止まり穴であるアウターロータ型ブラシレスモータ。
本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、モータベースの底部に設けられる下穴が、止まり穴として設けられている。このため、アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体に取り付ける際に、金属製のインサートナットにおねじを螺合することにより、金属屑が発生したとしても、下穴が止まり穴であるため、下穴が貫通穴である場合のように、金属屑が下穴の軸方向ロータ側からこぼれ落ちることはない。これにより、金属屑に起因する、回路基板等の回路の絶縁不良を防止するものとなる。
【0011】
又、本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、止まり穴として設けられている下穴が、下穴に挿入されるインサートナットの軸方向の長さよりも深く設けられている。このため、アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体に取り付けるために、取り付けねじ穴におねじを螺合した状態では、下穴の底部に、おねじが螺合されたインサートナットにより、開口側が塞がれた、閉塞空間が形成される。そして、下穴の深さを、インサートナットの軸方向の長さより、例えば、ねじ山2つ分以上長い深さとした場合には、上述したような、金属製のインサートナットにおねじを螺合することにより発生する金属屑を、閉じ込めるに十分な容積を有する閉塞空間が、おねじ先端部と止まり穴の底部との間に形成されることになる。更に、アウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体に取り付けるために使用するおねじとして、例えば、M3、M5メートル並目ねじ等の、2mm単位の長さでサイズ分けされている規格おねじを使用する場合には、下穴をインサートナットの軸方向の長さより2mm以上長い深さで設けることにより、締結のために必要な最短の長さのおねじに加えて、このおねじよりも長さのサイズが1つ大きいおねじも、外部筐体への取り付けに使用するものとなる。
【0012】
(3)上記(2)項において、前記下穴の内径は、前記インサートナットの挿入前の状態で一定径を有しているアウターロータ型ブラシレスモータ。
本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、モータベースの底部に設けられた下穴が、開口側から底部にかけて一定の内径を有している。この下穴に、金属製のインサートナットを挿入することで、上記(1)から(3)の作用を奏するものとなる。
【0013】
(4)上記(2)項において、前記下穴の底部には、インサートナットの外径より小さい内径の小径部を有して、前記下穴の内周部には段差が形成されており、前記下穴に対する、前記インサートナットの挿入方向前方端部が、前記段差に近接する態様で挿入されているアウターロータ型ブラシレスモータ(請求項)。
【0014】
本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、モータベースの底部に設けられる下穴が、インサートナットの外径と略等しい内径の大径部と、下穴の底部に位置し、インサートナットの外径より小さい内径の小径部とにより構成されている。そして、大径部は、下穴に挿入されるインサートナットの軸方向の長さと略等しい深さを有し、小径部は、大径部の内径より小さい内径を有している。このため、下穴の内周部の、大径部と小径部との境界位置、つまり、下穴の開口側端部からインサートナットの軸方向の長さと略等しい深さの位置には、段差が形成される。このような構造を有する下穴に、インサートナットを挿入すると、インサートナット全体が下穴に収まった状態で、インサートナットの挿入方向前方の端部が、下穴の内周部に形成されている段差に近接する態様となる。
【0015】
ここで、下穴にインサートナットを挿入する方法として、熱圧入方式を用いることを想定する。熱圧入方式では、インサートナットの挿入方向後方に形成されているフランジ部側の面からインサートナットを加熱し、加熱された状態のインサートナットを下穴へ挿入する。このとき、インサートナット外周面に形成された突起部が、周囲の樹脂を溶かしながら下穴へ入る。そして、加熱を止めることで溶けた樹脂が固まり、インサートナットが下穴に固定される。しかし、挿入の過程ではフランジ部も加熱されているため、フランジ部周辺の下穴の一部が溶けすぎてしまう場合がある。このため、下穴の内周部に段差が形成されていない場合には、下穴にインサートナットが深く入り過ぎてしまう虞がある。一方、本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータのように、下穴が大径部と小径部とで構成され、下穴の内周部に段差が形成されている場合には、フランジ部周辺の下穴の一部が溶けすぎてしまっても、インサートナットの挿入方向前方の端部が、段差に当接した状態となり、インサートナットが挿入方向に進まなくなる。そして、下穴に形成されている段差の位置が、加熱されているインサートナットのフランジ部から離れた位置であるため、下穴の段差周辺の樹脂が溶けるようなことはない。このため、本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、下穴にインサートナットを挿入する際に、インサートナットが深く挿入されることを防ぎ、適切な深さに挿入されるものとなる。
【0016】
(5)上記(4)項において、前記小径部の内径は、前記インサートナットと組み合わされるおねじの外径よりも大きいことを特徴とするアウターロータ型ブラシレスモータ(請求項)。
本項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータは、小径部が、インサートナットに螺合されるおねじの外径より大きい内径を有しているため、インサートナットが深く挿入されることを防ぎつつ、外部筐体に取り付けるためのおねじとして、締結のために必要な最短の長さのおねじよりも、長いおねじを利用し得るものともなる。
【0017】
(6)上記(4)又は(5)項記載のアウターロータ型ブラシレスモータを含む送風機(請求項)。
本項に記載の送風機は、モータとして上記(4)又は(5)項に記載のアウターロータ型ブラシレスモータを用いることで、ロータの外周よりも外側に突出しない取り付け構造により、アウターロータ型ブラシレスモータが筐体に取り付けられる。このため、例えば、外周にインペラが取り付けられたロータを回転させることにより、送風を行うような場合であっても、アウターロータ型ブラシレスモータの取り付け構造が、通風路の妨げになるようなことはなく、通風路を広く確保するものとなる。更に、上記(4)又は(5)項に記載の作用を奏するアウターロータ型ブラシレスモータの取り付け構造により、送風機の筐体に強固に取り付けられるものともなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明はこのように構成したので、軸流送風機用アウターロータ型ブラシレスモータを、送風の妨げとならない取り付け構造により、外部の筐体に強固に固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータの構造を模式的に示しており、(a)は軸方向の断面図、(b)は(a)の下面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体におねじで取り付けた際の、取り付けねじ穴周辺の拡大断面図であり、(a)は締結に必要な最短のおねじで取り付けた場合を、(b)は(a)のおねじよりも長いおねじで取り付けた場合を示している。
図3】本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータのモータベ−スの構造を、実施例と共に示すものであり、(a)は軸方向の断面図、(b)は(a)の上面図、(c)は(a)の下面図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータを外部筐体におねじで取り付けた際の、取り付けねじ穴周辺の拡大断面図である。
図5】従来のアウターロータ型ブラシレスモータの取り付け構造を模式的に示すものであり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
図6】従来の別のアウターロータ型ブラシレスモータの取り付け構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。以下の説明において、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については、同一符号で示し、詳しい説明を省略する。図1において、(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10を模式的に示す軸方向の断面図であり、(b)は(a)の下面図である。
【0021】
図1(a)で示すように、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10は、熱可塑性樹脂製のモータベース14の中央部に、軸受ハウジング44が立設されており、軸受ハウジング44の内周面には、一対の軸受42が嵌着されている。この一対の軸受42は、シャフト24を回転可能に支持しており、シャフト24には、ブッシュ43を介して、磁石28を内周面に有するモータヨーク26が固定されている。そして、これらのシャフト24、モータヨーク26、磁石28により、ロータ12が構成されている。又、軸受ハウジング44の外周面には、ステータコア36に、インシュレータ34を介して、巻線32を巻回して構成される、ステータ30が配置されている。そして、ステータ30の図中で下側には、ステータ30に供給する電流を制御するための、回路基板38が設けられており、ピン40を介して、ステータ30に電流が供給される。
【0022】
又、モータベース14の底部16には、アウターロータ型ブラシレスモータ10を外部の筐体に固定するための、取り付けねじ穴18が形成されている。この取り付けねじ穴18は、モータベース14の底部16に、止まり穴である下穴20を設け、この下穴20に金属製のインサートナット22を挿入することにより形成されている。熱可塑性樹脂製のモータベース14に設けられた下穴20に、金属製のインサートナット22を挿入する方法として、例えば、熱源を使用する熱圧入方式や、熱源を使用しない拡張方式、圧入方式等が挙げられる。又、取り付けねじ穴18は、ロータ12を軸方向に投影した範囲内に、図1(b)で示す例では、略等間隔に4箇所形成されている。なお、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10において、モータベース14の底部16に形成する取り付けねじ穴18の数は、4箇所に限定されるものではなく、底部16のロータ12を軸方向に投影した範囲内であれば、3箇所以下、或いは、5箇所以上であってもよい。
【0023】
次に、図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10に形成されている、取り付けねじ穴18の構造について詳細に説明する。なお、図2は、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10を、外部筐体におねじで取り付けた際の、取り付けねじ穴18周辺を拡大して示しており、(a)は締結に必要な最短のおねじで取り付けた場合を、(b)は(a)のおねじよりも長いおねじで取り付けた場合を示している。
【0024】
まず、図2(a)から確認すると、取り付けねじ穴18は、上述したように、熱可塑性樹脂製のモータベース14に設けられた下穴20に、金属製のインサートナット22が挿入されて形成されている。下穴20は止まり穴であり、図からも確認できるように、インサートナット22の外径と略等しい内径で、インサートナット22の軸方向の長さよりも、ねじ山2つ分以上深く設けられている。又、インサートナット22は、外径がインサートナット22の本体部分よりも大きいフランジ部22aを有している。このため、下穴20の開口側端部は、インサートナット22のフランジ部22aに対応する内径のざぐりを有している。このような構造により、インサートナット22が下穴20に対し、必要以上に深く挿入されることを防いでいる。
【0025】
又、取り付けねじ穴18に螺合されているおねじ50は、図2(a)の例では、アウターロータ型ブラシレスモータ10を外部筐体52に締結した状態で、おねじ50の先端部が、インサートナット22の挿入方向先端部(図中では上側端部)と略同じ位置に達するような軸方向の長さを有している。そして、下穴20は、インサートナット22の軸方向の長さよりも、ねじ山2つ分以上深く形成されている止まり穴であるため、取り付けねじ穴18におねじ50を螺合した状態では、図示のように、下穴20の底部に、略円筒状の閉塞空間Aが形成されている。
【0026】
一方、図2(b)で示す例では、下穴20及びインサートナット22により構成される取り付けねじ穴18は、図2(a)で示した例と同じ構造を有しているが、取り付けねじ穴18には、図2(a)のおねじ50よりも長い、おねじ50’が螺合されている。そして、おねじ50’を使用した場合でも、下穴20がインサートナット22の軸方向の長さより深く形成されているため、おねじ50を使用した場合と同様に、下穴20の底部に、閉塞空間Aが形成されている。
【0027】
ここで、図3を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10の、モータベース14の実施例について説明する。本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10のモータベース14は、図3(b)の実施例で示すように、下穴20を形成するための円筒部51等の必要部位を除いて、中空であってもよいものである。この場合には、図示のように、放射状にリブ48を設けることにより、モータベース14の強度を確保し、反りやひけを防止している。また、円筒部51に結合されるリブ48を設けると、強度的に有利で、さらに反りが防止できる。このように、熱可塑性樹脂製のモータベース14を中空に成型することで、成型に使用する樹脂の量を減らすことができる。
【0028】
さて、上記構成をなす、本発明の第1の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。
すなわち、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10は、図1に示すように、ロータ12と、熱可塑性樹脂製のモータベース14とを含み、モータベース14にロータ12が配置される構造を有している。又、モータベース14の、ロータ12が配置される側(図中上側)とは、軸方向に反対側(図中下側)に位置する底部16に、アウターロータ型ブラシレスモータ10を外部筐体52(図2参照)へ取り付けるための、取り付けねじ穴18が形成されている。これにより、アウターロータ型ブラシレスモータ10を外部筐体52に取り付ける際には、モータベース14の底部16を外部筐体52に密接させて、おねじ50(図2(a)参照)により締結することになる。このため、外部筐体52のモータ取り付け面の大きさを、モータベース14の底部16の面積に対応する大きさに抑えることができる。
【0029】
更に、取り付けねじ穴18は、モータベース14の底部16の、ロータ12を軸方向に投影した範囲内に形成されている。このため、アウターロータ型ブラシレスモータ10を外部筐体52に取り付けた状態においても、取り付けに使用するおねじ50及び取り付けねじ穴18が、ロータ12の外周よりも外側に突出することはない。すなわち、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10は、例えば軸流送風機に用いる場合に、通風路を妨げない構造によって、モータベース14を外部筐体52に取り付けることができる。
【0030】
又、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10は、取り付けねじ穴18が、熱可塑性樹脂製のモータベース14の底部16に設けられた下穴20に、金属製のインサートナット22を挿入することにより形成されている。このように、モータベース14が熱可塑性樹脂製でありながら、モータベース14に設けられた下穴20に挿入するインサートナット22を金属製とすることで、インサートナット22により必要な強度を確保して、外部筐体52に強固にねじ固定することが可能となる。
【0031】
更に、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10は、モータベース14の底部16に設けられる下穴20が、止まり穴として設けられている。このため、アウターロータ型ブラシレスモータ10を外部筐体52に取り付ける際に、金属製のインサートナット22におねじ50を螺合することにより、金属屑が発生したとしても、下穴20が止まり穴であるため、下穴20が貫通穴である場合のように、金属屑が下穴20の軸方向ロータ12側(図中上側)からこぼれ落ちることはない。これにより、金属屑に起因する、回路基板38等の回路の絶縁不良を防止することができる。
【0032】
又、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10は、図2(a)に示すように、止まり穴として設けられている下穴20が、下穴20に挿入されるインサートナット22の軸方向の長さよりも深く設けられている。このため、アウターロータ型ブラシレスモータ10を外部筐体52に取り付けるために、取り付けねじ穴18におねじ50を螺合した状態では、下穴20の軸方向ロータ12側(図中上側)の底部に、おねじ50が螺合されたインサートナット22により、開口側(図中下側)が塞がれた、閉塞空間Aが形成される。そして、下穴20の深さを、インサートナット22の軸方向の長さより、例えば、ねじ山2つ分以上長い深さとした場合には、上述したような、金属製のインサートナット22におねじ50を螺合することにより発生する金属屑を、閉じ込めるに十分な容積を有する閉塞空間Aが、おねじ50の先端部と下穴20の底部との間に形成されることになるため、金属屑を閉塞空間Aに閉じ込めておくことができる。更に、アウターロータ型ブラシレスモータ10を外部筐体52に取り付けるために使用するおねじとして、例えば、M3、M5メートル並目ねじ等の、2mm単位の長さでサイズ分けされている規格おねじを使用する場合には、下穴20をインサートナット22の軸方向の長さより2mm以上長い深さで設けることにより、締結のために必要な最短の長さのおねじ50に加えて、図2(b)に示すように、おねじ50よりも長さのサイズが1つ大きいおねじ50’も、外部筐体52への取り付けに使用することが可能となる。
【0033】
更に、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10は、図3に示すように、熱可塑性樹脂製のモータベース14を、下穴20を形成するための円筒部51等の必要部位を除いて、中空に成型することとすれば、成型に使用する樹脂の量を減らすことができ、製造コストを抑えることが可能となる。
【0034】
続いて、図4を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10について説明する。図4において、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10と同一部分、若しくは相当する部分については、同一の符号を付している。なお、本発明の第2の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10について、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10との、相違部分のみ説明をすることとし、本発明の第1の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10と、同様の部分の構成や作用効果については、説明を省略する。
【0035】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10を、おねじ50により外部筐体52に固定した状態の、取り付けねじ穴18’周辺を示している。図示のように、本発明の第2の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10は、取り付けねじ穴18’が、熱可塑性樹脂製のモータベース14に設けられている下穴20’に、金属製のインサートナット22を挿入することにより形成され、下穴20’が、大径部46と小径部47とで構成されている。大径部46は、インサートナット22の外径と略等しい内径で、インサートナット22の軸方向の長さと略等しい深さで設けられている。又、下穴20’の開口側端部は、インサートナット22のフランジ部22aに対応する内径のざぐりを有している。一方、小径部47は、大径部46と貫通状態にある止まり穴として、大径部46の内径よりも小さく、すなわちインサートナットの外径よりも小さく、かつ、おねじ50の外径よりも大きい内径で、ねじ山2つ分以上の深さで設けられている。
【0036】
そして、上述したような構造を有する大径部46及び小径部47により、下穴20’が構成されているため、下穴20’の内周部には、段差49が形成されている。このため、下穴20’に挿入されているインサートナット22は、その挿入方向先端部(図中では上側端部)が、段差49に近接している。又、取り付けねじ穴18’には、おねじ50が螺合されており、おねじ50は、その先端部が、アウターロータ型ブラシレスモータ10を外部筐体52に締結した状態で、インサートナット22の挿入方向先端部と略同じ位置に達する長さを有している。従って、おねじ50が螺合された状態のインサートナット22は、下穴20’の大径部46に収容された状態となっている。このため、図示のように、止まり穴として設けられている小径部47に、おねじ50が螺合されたインサートナット22により開口側(図中下側)が塞がれた、略円筒状の閉塞空間Aが形成されている。
【0037】
上記の如く、本発明の第2の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10は、図4に示すように、モータベース14の底部16に設けられる下穴20’が、大径部46と、下穴20’の底部(図中上側)に位置し、大径部46と貫通状態にある、小径部47とにより構成されている。そして、大径部46は、下穴20’に挿入されるインサートナット22の軸方向の長さと略等しい深さを有し、小径部47は、大径部46の内径より小さく、かつ、インサートナット22に螺合されるおねじ50の外径より大きい内径を有している。このため、下穴20’の内周部の、大径部46と小径部47との境界位置、つまり、下穴20’の開口側端部(図中下側)から、インサートナット22の軸方向の長さと略等しい深さの位置には、段差49が形成される。このような構造を有する下穴20’に、インサートナット22を挿入すると、インサートナット22の全体が下穴20’の大径部46に収まった状態で、インサートナット22の挿入方向前方(図中上方)の端部が、下穴20’の内周部に形成されている段差49に近接する態様となる。
【0038】
そして、図4で示すような下穴20’に、インサートナット22の挿入方向後方(図中下方)に形成されている、フランジ部22a側の面を加熱しながら挿入する熱圧入方式により、インサートナット22を挿入すると、その挿入の過程で、加熱されているフランジ部22a周辺の下穴20’の一部が、下穴20’が設けられているモータベース14が樹脂製であることにより、溶けすぎてしまう場合がある。このため、下穴20’の内周部に段差49が形成されていない場合には、下穴20’にインサートナット22が深く入り過ぎてしまう虞がある。一方、本発明の第2の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10のように、下穴20’が大径部46と小径部47とで構成され、下穴20’の内周部に段差49が形成されている場合には、フランジ部22a周辺の下穴20’の一部が溶けてしまっても、インサートナット22の挿入方向前方(図中上方)の端部が、段差49に当接した状態となり、インサートナット22が挿入方向(図中上方向)に進まなくなる。しかも、下穴20’に形成されている段差49の位置が、加熱されているインサートナット22のフランジ部22aから離れた位置であるため、下穴20’の段差49周辺の樹脂が溶けすぎるようなことはない。このため、本発明の第2の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10は、下穴20’にインサートナット22を挿入する際に、インサートナット22が深く挿入されることを防ぎ、適切な深さに挿入することが可能となる。
【0039】
更に、本発明の第2の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10は、小径部47が、インサートナット22に螺合されるおねじ50の外径より大きい内径を有しているため、インサートナット22が深く挿入されることを防ぎつつ、外部筐体52に取り付けるためのおねじとして、締結のために必要な最短の長さのおねじ50よりも、長いおねじ50’(図2(b)参照)を利用することが可能ともなる。
【0040】
そして、上述したような構造を有する、本発明の第1及び第2の実施の形態に係るアウターロータ型ブラシレスモータ10を、モータとして用いた送風機は、ロータ12の外周よりも外側に突出しない取り付け構造により、アウターロータ型ブラシレスモータ10を筐体に取り付けることができる。このため、例えば、外周にインペラが取り付けられたロータ12を回転させることにより、送風を行うような場合であっても、アウターロータ型ブラシレスモータ10の取り付け構造が、通風路の妨げになるようなことはなく、通風路を広く確保することができる。更に、上述したような作用効果を奏する、アウターロータ型ブラシレスモータ10の取り付け構造により、送風機の筐体に強固に取り付けることが可能ともなる。
【符号の説明】
【0041】
10:アウターロータ型ブラシレスモータ、12:ロータ、14:モータベース、16:底部、18、18’:取り付けねじ穴、20、20’:下穴、22:インサートナット、46:大径部、47:小径部、50、50’:おねじ
図1
図2
図3
図4
図5
図6