特許第6008894号(P6008894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6008894
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
   B62H 1/02 20060101AFI20161006BHJP
   B62K 19/38 20060101ALI20161006BHJP
   B62L 3/04 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B62H1/02 F
   B62K19/38
   B62L3/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-73242(P2014-73242)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-193351(P2015-193351A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2014年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 浩太
(72)【発明者】
【氏名】川谷 岳史
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−195191(JP,A)
【文献】 特開2007−223538(JP,A)
【文献】 特開2001−048080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 1/02
B62K 19/38
B62L 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に揺動可能に支持されるメインスタンド(57)及びブレーキペダル(123)を備えた鞍乗り型車両において、
ヘッドパイプ(10C)から延びるメインフレーム(10D)の端部に左右一対の壁部(171,172)を備えるセンターフレーム(10E)が設けられ、前記壁部(171,172)間にメインスタンドシャフト(185)が渡され、このメインスタンドシャフト(185)に前記メインスタンド(57)が揺動可能に支持され、
記メインスタンドシャフト(185)よりも前方で前記左右の壁部(171,172)に、前記メインスタンド(57)を起立させた時の位置決め部となるストッパ部材(174)が固定され、
前記ストッパ部材(174)は、前記壁部(171,172)をそれぞれ貫通して配置され、前記壁部(171,172)に回転不能に支持されるシャフトであり、前記ストッパ部材(174)の端部に前記ブレーキペダル(123)が揺動可能に支持されていることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記メインスタンドシャフト(185)は、前記壁部(171,172)に設けられるメインスタンドシャフト挿通穴(171c,172c)を貫通して支持され、前記メインスタンドシャフト(185)の一端部にはフランジ(207)を備え、このフランジ(207)は、前記壁部(171)との間で係合する係合部(212)を備え、前記メインスタンドシャフト(185)の他端部には、抜け止め部材(186)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記ストッパ部材(174)の外径は、前記メインスタンドシャフト(185)の外径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記メインフレーム(10D)の下方及び前記センターフレーム(10E)の前方にエンジン(20)が配置され、このエンジン(20)の後方には変速用のアクチュエータ(201)が配置され、このアクチュエータ(201)は、前記エンジン(20)と前記センターフレーム(10E)との間に配置され、前記アクチュエータ(201)の下方で前記ブレーキペダル(123)が前後に延びていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記センターフレーム(10E)と前記エンジン(20)との間の下方に前記ブレーキペダル(123)に隣接させてアンダーカバー(203)が配置され、このアンダーカバー(203)で前記アクチュエータ(201)を下方から覆うことを特徴とする請求項に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に揺動可能に支持されるメインスタンド及びブレーキペダルを備えた鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキペダルの揺動軸を、メインスタンドを揺動可能に支持するメインスタンドシャフトで兼用した鞍乗り型車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
メインスタンドシャフトは、エンジン後部に取付けられるブラケットで支持され、このブラケットの左右の壁部には、メインスタンドシャフトを挿通・支持する貫通穴が設けられ、メインスタンドシャフトにおいて、壁部間に設けられる中間部でメインスタンドに設けられた支持部を支持し、一端部でブレーキペダルを支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−223538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、揺動する二部品を一本のシャフトで支持することで、省スペース化及びユニット化による車体への取付けを可能としているが、構造が複雑になり、組付け、メンテナンスにおける対応に課題があった。構造が簡素で、メインスタンド及びブレーキペダルの組付け、メンテナンスに対応しやすい効果的な配置構造が望まれる。
本発明の目的は、簡素な構造で、部品の組付け・メンテナンスに対応しやすい効果的な配置構造を有する鞍乗り型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明は、車体に揺動可能に支持されるメインスタンド(57)及びブレーキペダル(123)を備えた鞍乗り型車両において、ヘッドパイプ(10C)から延びるメインフレーム(10D)の端部に左右一対の壁部(171,172)を備えるセンターフレーム(10E)が設けられ、前記壁部(171,172)間にメインスタンドシャフト(185)が渡され、このメインスタンドシャフト(185)に前記メインスタンド(57)が揺動可能に支持され、前記メインスタンドシャフト(185)よりも前方で前記左右の壁部(171,172)に、前記メインスタンド(57)を起立させた時の位置決め部となるストッパ部材(174)が固定され、前記ストッパ部材(174)は、前記壁部(171,172)をそれぞれ貫通して配置され、前記壁部(171,172)に回転不能に支持されるシャフトであり、前記ストッパ部材(174)の端部に前記ブレーキペダル(123)が揺動可能に支持されていることを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記メインスタンドシャフト(185)は、前記壁部(171,172)に設けられるメインスタンドシャフト挿通穴(171c,172c)を貫通して支持され、前記メインスタンドシャフト(185)の一端部にはフランジ(207)を備え、このフランジ(207)は、前記壁部(171)との間で係合する係合部(212)を備え、前記メインスタンドシャフト(185)の他端部には、抜け止め部材(186)が設けられていても良い。
【0007】
た、上記構成において、前記ストッパ部材(174)の外径は、前記メインスタンドシャフト(185)の外径よりも小さくても良い。
【0008】
また、上記構成において、前記メインフレーム(10D)の下方及び前記センターフレーム(10E)の前方にエンジン(20)が配置され、このエンジン(20)の後方には変速用のアクチュエータ(201)が配置され、このアクチュエータ(201)は、前記エンジン(20)と前記センターフレーム(10E)との間に配置され、前記アクチュエータ(201)の下方で前記ブレーキペダル(123)が前後に延びていても良い。
また、上記構成において、前記センターフレーム(10E)と前記エンジン(20)との間の下方に前記ブレーキペダル(123)に隣接させてアンダーカバー(203)が配置され、このアンダーカバー(203)で前記アクチュエータ(201)を下方から覆うようにしても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ヘッドパイプから延びるメインフレームの端部に左右一対の壁部を備えるセンターフレームが設けられ、壁部間にメインスタンドシャフトが渡され、このメインスタンドシャフトにメインスタンドが揺動可能に支持され、メインスタンドを起立させた時の位置決め部となるストッパ部材が、メインスタンドシャフトよりも前方で左右の壁部に固定され、ストッパ部材の端部にブレーキペダルが揺動可能に支持されているので、ストッパ部材が、左右の壁部に固定されてセンターフレームの補強部材になるとともにメインスタンドの位置決め部材になり、更にストッパ部材がブレーキペダルの揺動軸となることで、特別に、センターフレームの補強部材やブレーキペダルの揺動軸が必要なく、部品数を減らすことができるため、構造が簡素になり、しかも、メインスタンドとブレーキペダルとは別々の部材に支持されているため、メインスタンド及びブレーキペダルの組付け及びメンテナンスに対応しやすい効果的な配置構造とすることができる。
【0010】
また、メインスタンドシャフトは、壁部に設けられるメインスタンドシャフト挿通穴を貫通して支持され、メインスタンドシャフトの一端部にはフランジを備え、このフランジは、壁部との間で係合する係合部を備え、メインスタンドシャフトの他端部には、抜け止め部材が設けられているので、簡単な構造でメインスタンドを回り止めしつつ支持することができ、メインスタンドシャフトのコスト低減及び容易な組付性を図ることができる。
また、ストッパ部材は、壁部をそれぞれ貫通して配置され、壁部に回転不能に支持されるシャフトであり、ストッパ部材の端部にブレーキペダルが揺動可能に支持されるので、ストッパ部材は、壁部の左右を連結する強度部材になり、この強度部材にブレーキペダルを強固に支持することができる。
また、ストッパ部材の外径は、メインスタンドシャフトの外径よりも小さいので、ストッパ部材を狭い空間にも配置することができ、配置自由度を増すことができる。
【0011】
また、メインフレームの下方及びセンターフレームの前方にエンジンが配置され、このエンジンの後方には変速用のアクチュエータが配置され、このアクチュエータは、エンジンとセンターフレームとの間に配置され、アクチュエータの下方でブレーキペダルが前後に延びているので、ブレーキペダルを変速用のアクチュエータの保護部材とすることができる。また、アクチュエータを、エンジンとセンターフレームとの間のスペースを有効利用して配置することができ、車体のコンパクト化を図ることができる。
また、センターフレームとエンジンとの間の下方にブレーキペダルに隣接させてアンダーカバーが配置され、このアンダーカバーでアクチュエータを下方から覆うので、ブレーキペダルとアンダーカバーとでアクチュエータの保護効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の自動二輪車を示す左側面図である。
図2】自動二輪車の要部を示す左側面図である。
図3】足シフトスイッチ機構、フットレスト及びその周囲を示す斜視図である。
図4】自動二輪車を示す要部底面図である。
図5】足シフトスイッチ機構及びサイドスタンドが取付けられたフットレストを示す底面図である。
図6】足シフトスイッチ機構及びサイドスタンドが取付けられたフットレストを示す平面図である。
図7図6の足シフトスイッチ機構及びサイドスタンド取付部を拡大した要部拡大図である。
図8】足シフトスイッチ機構及びサイドスタンドが取付けられたフットレストを示す正面図である。
図9図8の足シフトスイッチ機構を拡大した要部拡大図である。
図10】自動二輪車の要部を示す右側面図である。
図11】ブレーキペダルの取付部及びその周囲を示す斜視図である。
図12】ブレーキペダルの取付部及びその周囲を示す要部側面図である。
図13】メインスタンドの取付部及びその周囲を示す斜視図である。
図14】足シフトスイッチ機構の構造及び動作を示す説明図であり、図14(A)は足シフトスイッチ機構の作動前の状態を示す側面図、図14(B)は足シフトスイッチ機構による変速機のシフトアップ動作を示す作用図、図14(C)は足シフトスイッチ機構による変速機のシフトダウン動作を示す作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LEは車体左方を示している。
図1は、本発明の一実施形態の自動二輪車10を示す左側面図である。
自動二輪車10は、車体前部に設けられたフロントフォーク11に前輪12が車軸13を介して支持され、車体後部に設けられたスイングアーム15に後輪16が車軸17を介して支持され、車体中央部下部にエンジン20が設けられた鞍乗り型の車両である。
【0014】
自動二輪車10は、骨格となる車体フレーム10Aを備える。
車体フレーム10Aは、ヘッドパイプ10C、メインフレーム10D、センターフレーム10E、左右一対のリアフレーム10F、左右一対のサブフレーム10Gを備える。
ヘッドパイプ10Cは、車体フレーム10Aの前端部に設けられ、フロントフォーク11の上部に設けられたステムシャフト(不図示)を回動可能に支持している。メインフレーム10Dは、ヘッドパイプ10Cから後方斜め下方に延びている。センターフレーム10Eは、メインフレーム10Dの後端部から下方に延びている。左右のリアフレーム10Fは、メインフレーム10Dの中間部から後方斜め上方に延びている。左右のサブフレーム10Gは、メインフレーム10Dの後端部及び左右のリアフレーム10Fのそれぞれを接続している。
【0015】
フロントフォーク11は、ステムシャフトの上端部にバーハンドル21が取付けられ、フロントフォーク11の前部及び両側部とバーハンドル21の中央部とが車体前部カバー22で覆われている。スイングアーム15は、センターフレーム10Eに前端部がピボット軸23を介して上下揺動可能に取付けられている。エンジン20は、メインフレーム10Dの下方且つセンターフレーム10Eの前方に配置され、後部に一体的に変速機24を備える。
【0016】
変速機24の出力軸に設けられたドライブスプロケット25と、後輪16に一体的に設けられたドリブンスプロケット26とにはチェーン27が掛けられ、エンジン20の駆動力が変速機24、チェーン27を介して後輪16に伝達される。ドライブスプロケット25はエンジンカバー31で覆われ、ドリブンスプロケット26及びチェーン27はチェーンカバー32で覆われている。変速機24は、自動変速機であり、足シフトスイッチ機構35のギアチェンジペダル36を操作することにより電動のアクチュエータが作動し、変速が行われる。エンジン20の下部には、フットレスト37が取付けられ、フットレスト37の両端にそれぞれ運転者が足を載せるステップ38が設けられている。
【0017】
車体の中央部上部には運転者が着座するシート41が設けられ、シート41の下方から前後に亘って車体カバー42が設けられている。車体カバー42は、車体前部カバー22の後方に配置されて運転者の脚部を前方から覆うレッグシールド44と、レッグシールド44の後端に接続されてシート41の下方を後方に延びる左右一対のサイドカバー45とを備える。
図中の符号51は前輪12を上方から覆うフロントフェンダ、52は車体前部カバー22に設けられたヘッドライト、53は荷台、54はリアフレーム10Fとスイングアーム15とにそれぞれ渡されたリアクッションユニット、56はサイドスタンド、57はメインスタンドである。
【0018】
図2は、自動二輪車10の要部を示す左側面図である。
エンジン20は、クランクケース61と、クランクケース61の前端部から前方に略水平に延びるシリンダ部62とを備える。クランクケース61の後部に変速機24が設けられている。シリンダ部62は、クランクケース61の前端部に取付けられたシリンダブロック64と、シリンダブロック64の前端部に取付けられたシリンダヘッド65とを備える。シリンダヘッド65の上部には吸気装置が接続され、シリンダヘッド65の下部には排気装置67が接続されている。排気装置67は、シリンダヘッド65の下部から屈曲して後方へ延びる排気管81を備える。
【0019】
クランクケース61の下面には、例えば、アルミニウム合金鋳造製のフットレスト37が取付けられている。フットレスト37は、ほぼ全体が板状であり、左右の端部にステップ38が取付けられている。フットレスト37には、変速機24に変速動作を行わせるために運転者が足でギアチェンジペダル36が操作したときに、その操作を電気信号に変換する足シフトスイッチ機構35が設けられている。また、フットレスト37には、サイドスタンドブラケット83を介してサイドスタンド56が取付けられている。
【0020】
図3は、足シフトスイッチ機構35、フットレスト37及びその周囲を示す斜視図である。
足シフトスイッチ機構35は、支持板91、センサ部92、ストッパ94、ストッパピン95、リンク機構96、ギアチェンジペダル36、カラー部材97、ねじりコイルばね98を備える。
支持板91は、フットレスト37の上面37h(詳しくは、板状部37aの上面37h)に取付けられている。センサ部92は、支持板91に取付けられ、センサ部92に備える回動軸93が一方向又は他方向に回動したときにシフトアップ又はシフトダウンの変速信号を発生させる。
【0021】
その変速信号は、自動二輪車10(図1参照)に搭載されたECU(Electronic Control Unit)に出力され、ECUは、その変速信号に基づいて変速機24(図1参照)側に設けられたアクチュエータを作動させて変速を行わせる。ストッパ94は、板状であり、センサ部92の回動軸93の中間部に取付けられ、回動軸93の一方向及び他方向の回動をそれぞれ所定角度に規制する。ストッパピン95は、支持板91に取付けられ、ストッパ94に設けられた窓部94aを貫通し、ストッパ94と共に回動軸93の回動を規制する。
【0022】
リンク機構96は、回動軸93の先端部に一端部が取付けられたアーム部材101と、アーム部材101の他端部に一端が支軸102を介して揺動可能に連結されるとともに他端がギアチェンジペダル36に支軸103を介して揺動可能に連結されたリンク本体104とからなる。ギアチェンジペダル36は、支持板91に取付けられたペダル軸106に回動可能に支持されたペダル筒部143と、ペダル筒部143に取付けられたペダルアーム107と、ペダルアーム107の前端部及び後端部に取付けられた前踏込部108及び後踏込部109とからなる。
カラー部材97は、支持板91に取付けられて回動軸93を回動可能に支持している。ねじりコイルばね98は、カラー部材97に備えるフランジ付き筒部97aの外周に嵌合され、回動軸93と共に回動したストッパ94を所定位置に向けて付勢する。なお、符号112は、センサ部92からECUに変速信号を伝える導線である。
【0023】
図4は、自動二輪車10を示す要部底面図である。
エンジン20のクランクケース61は、左右二つ割とされた左ケース114及び右ケース115と、左ケース114の側部に取付けられたエンジンカバー31と、右ケース115の側部に取付けられたエンジンカバー116とを備える。左ケース114及び右ケース115は、クランクケース本体117を構成する。
クランクケース本体117の下面117aには、複数のボルト118でフットレスト37が車幅方向に延びるように取付けられている。フットレスト37に取付けられた左右のステップ38,38はフットレスト37から車幅方向外側へ延びている。
【0024】
排気管81は、シリンダ部62から後方に延び、クランクケース61とフットレスト37との間を通って、排気装置67を構成するマフラ121に接続されている。なお、符号122は排気管81から放射される熱を遮る遮熱カバーである。
フットレスト37の後方には、センターフレーム10E(図1参照)の下端部にそれぞれ回動可能に支持されたメインスタンド57及びブレーキペダル123が設けられている。ブレーキペダル123は、センターフレーム10Eの下端部から前方に延び、更に、フットレスト37の近傍で屈曲して右斜め側方に延び、ブレーキペダル123の踏込部162は、右側のステップ38の前方に位置している。
上記したように、フットレスト37は板状であるから、エンジン20の下面に取付けてもエンジン20から下方へのフットレスト37の突出量をより小さくすることができ、最低地上高を確保し易くすることができる。
【0025】
図5は、足シフトスイッチ機構35及びサイドスタンド56が取付けられたフットレスト37を示す底面図である。
フットレスト37は、車幅方向に延びる板状部37aを備える。
板状部37aは、窓部37b、複数のボルト挿通穴37c、複数の筒状突出部37d,37d,37e,37e、下面側左リブ37f、複数の下面側右リブ37gを備える。
窓部37bは、板状部37aの長手方向の中央部に開けられている。ボルト挿通穴37cは、窓部37bの車幅方向外側に開けられている。筒状突出部37d,37d,37e,37eは、ボルト挿通穴37cをそれぞれ囲むように板状部37aの下面37wから下方に突出するように形成されている。下面側左リブ37fは、左側に前後に並ぶように配置された一対の筒状突出部37d,37dを連結するとともに下面37wから下方に突出するように形成されている。下面側右リブ37gは、右側に前後に並ぶように配置された一対の筒状突出部37e,37eからそれぞれ車幅方向外側に延びるとともに下面37wから下方に突出するように形成されている。
【0026】
筒状突出部37d,37eは、それぞれボルト118の頭部118aを周囲から覆うため、頭部118aを保護することができる。従って、飛び石や路面からの突出物等の頭部118aへの干渉を防ぐことができる。また、筒状突出部37d,37eによって、ボルト挿通穴37cの周囲の板状部37aを補強することができる。
また、窓部37bは、複数の筒状突出部37d,37d,37e,37eで囲まれる箇所に開けられているため、窓部37bを形成したことによる強度・剛性の低下を抑制することができる。
【0027】
板状部37aの筒状突出部37dより車幅方向外側の後部には、サイドスタンドブラケット83を介してサイドスタンド56が取付けられている。また、板状部37aにおける一方の筒状突出部37eの近傍の前縁には、ブレーキペダル123との干渉を避けるための切欠き部37vが形成されている。なお、符号126はサイドスタンドブラケット83に対してサイドスタンド56を揺動可能に支持する支持ボルト、127はサイドスタンド56を立てた状態又は収納した状態に保持するために、サイドスタンドブラケット83に設けられた支持ピン83aと、サイドスタンド56に設けられたフック部56aとに渡された引張コイルばねである。
【0028】
図6は、足シフトスイッチ機構35及びサイドスタンド56が取付けられたフットレスト37を示す平面図である。
フットレスト37は、板状部37aの両端部から上方に延びる左右一対の板状の縦壁部37j,37kと、縦壁部37j,37kからフットレスト37の長手方向(車幅方向)外側方に突出する左右一対の側方突出部37m,37nとを一体に備える。
板状部37aは、図4に示したように、エンジン20のクランクケース61の左右の側面よりも車幅方向外側へ延びている。なお、符号128はサイドスタンドブラケット83を板状部37aに締結するボルトである。
【0029】
図6において、板状部37aの上面37hと左側の縦壁部37jの内側面37pとに亘って、複数の上面側左リブ37qが車幅方向の延びるように形成されている。また、板状部37aの上面37hと右側の縦壁部37kの内側面37rとに亘って、複数の上面側右リブ37sが車幅方向の延びるように形成されている。
左側の縦壁部37jよりも車幅方向内側に足シフトスイッチ機構35の大部分(ギアチェンジペダル36の一部とリンク機構96のリンク本体104とを除いた部分である。)とサイドスタンド56とが設けられている。ギアチェンジペダル36は、前踏込部108が縦壁部37jよりも車幅方向外側に配置され、後踏込部109が縦壁部37jの後方に配置されている。
【0030】
上記の図5及び図6に示したように、フットレスト37を鋳造で製造することで、板状部37aの上面37h及び下面37w、縦壁部37j,37kの内側面37p,37rに凹凸形状(筒状突出部37d,37e、下面側左リブ37f、下面側右リブ37g、上面側左リブ37q、上面側右リブ37s)、穴部(窓部37b、ボルト挿通穴37cの下穴)を切削加工を行うことなく容易に形成することができる。
【0031】
図7は、図6の足シフトスイッチ機構35及びサイドスタンド取付部を拡大した要部拡大図である。
足シフトスイッチ機構35の支持板91は、フットレスト37の上面37hに複数のボルト131で取付けられた板状の基部91aと、基部91aから上方及び前後方向に延びる起立部91bとを備える。起立部91bには、センサ部92、ギアチェンジペダル36、ストッパピン95、カラー部材97が取付けられている。
センサ部92は、センサケース134、センサ本体133、回動軸93、取付板135、取付カラー136を備える。
【0032】
センサケース134は、取付カラー136が取付けられた取付板135に取付けられ、取付カラー136にボルト137が通され、ボルト137の先端部が支持板91の起立部91bにねじ結合されることで、センサケース134が起立部91bに固定される。センサ本体133は、センサケース134に収容され、回動軸93の一方向及び他方向の回動を識別して検出する。回動軸93は、センサケース134に回動可能に支持されるとともにセンサ本体133を貫通するように配置されている。
【0033】
ギアチェンジペダル36は、支持板91の起立部91bに設けられた支軸141に回動可能に嵌合する筒状のペダル筒部143を備える。ペダル筒部143は、ギアチェンジペダル36のペダルアーム107の内側面に取付けられている。支軸141は、軸部141aと、軸部141aの一端に形成されたねじ部141bと、軸部141aの他端に形成された頭部141cとからなり、ねじ部141bが起立部91bにねじ結合され、頭部141cがギアチェンジペダル36の車幅方向移動を規制している。
【0034】
ペダルアーム107は、ストレート部107a、前傾斜部107b、前ストレート部107c、前端側傾斜部107d、後傾斜部107eから一体に構成されている。
ストレート部107aは、ペダル筒部143が取付けられ、前後方向に延びている。前傾斜部107bは、ストレート部107aの前端から屈曲して前方斜め外側方に延びている。前ストレート部107cは、前傾斜部107bから屈曲して前方に延び、支軸103を介してリンク機構96のリンク本体104に連結されている。前端側傾斜部107dは、前ストレート部107cから屈曲して前方斜め外側方に延び、前端部に前踏込部108が取付けられている。後傾斜部107eは、ストレート部107aの後端から屈曲して後方斜め外側方に延び、後端部に後踏込部109が取付けられている。
【0035】
ストッパピン95は、支持板91の起立部91bに対して略直交するように取付けられ、ピン本体95aと、ピン本体95aの一端に形成されたねじ部95bとからなる。ピン本体95aは、小径部95c及び大径部95dからなる段付きピン部95eと、段付きピン部95eの車幅方向内側に隣接する六角柱状の六角部95fとからなる。小径部95cはストッパ94を貫通するように配置されている。ねじ部95bは、起立部91bに形成されたねじ穴にねじ結合するとともに起立部91bを貫通し、ねじ部95bの先端部にロックナット145がねじ結合することでストッパピン95が起立部91bに取付けられる。
【0036】
カラー部材97は、センサ部92の回動軸93に嵌合するフランジ付き筒部97aと、フランジ付き筒部97aから後方に延びる平板部97bとを備える。フランジ付き筒部97aは、ねじりコイルばね98が巻かれた小径筒部97cと、小径筒部97cに隣接するフランジ部97dと、フランジ部97dに隣接して起立部91bを貫通する貫通部97eとからなる。平板部97bは、起立部91bの外側面91cにボルト146で取付けられている。
上記したギアチェンジペダル36のペダルアーム107、支持板91、センサ部92は、その少なくとも一部が、平面視で板状部37aと重なっている。
足シフトスイッチ機構35のうち、支持板91及びこの支持板91より車幅方向内側に配置されるセンサ部92等は、上方からクランクケース61(図2参照)のエンジンカバー31で覆われている。
【0037】
リンク機構96のアーム部材101は、回動軸93に取付けられたアーム基部101aと、アーム基部101aから前方に延びる板状のアーム延出部101bとからなる。
足シフトスイッチ機構35の主要部、即ち、足シフトスイッチ機構35からギアチェンジペダル36、回動軸93の一部、リンク機構96の一部を除いた部分は、その周囲(前方、後方、左方、右方及び上方)からスイッチユニットカバー148で覆われている。
スイッチユニットカバー148は、樹脂製のカバーであり、フットレスト37の板状部37aの上面37hに複数のビス(不図示)で取付けられている。このスイッチユニットカバー148により、足シフトスイッチ機構35は、雨水や土埃等が被らないように保護されている。
【0038】
図8は、足シフトスイッチ機構35及びサイドスタンド56が取付けられたフットレスト37を示す正面図である。
フットレスト37は、車幅方向に延びる板状部37aと、板状部37aの両端部から上方に延びる縦壁部37j,37kと、縦壁部37j,37kからそれぞれ左側方及び右側方に延びる側方突出部37m,37nとから構成される。
縦壁部37j,37kは、図4に示したように、エンジン20のクランクケース61の側面に沿って上方へ延びている。
【0039】
図8において、板状部37aの上面37hと、左側の縦壁部37jの内側面37pとに亘って上面側左リブ37qが形成されている。板状部37aの縦壁部37k側の端部には、排気管81との干渉を避けるために下方に突出するように曲げられた屈曲部37tが設けられている。
また、板状部37aの上面37hと、右側の縦壁部37kの内側面37rとに亘って上面側右リブ37sが形成されている。
上記した上面側右リブ37sと下面側右リブ37gとは、その一部が板状部37aの車幅方向で同じ範囲(区間)Kに形成されている。
【0040】
屈曲部37tは、板状部37aの一部を構成し、筒状突出部37e側に位置する左板部37xと、縦壁部37kに連続する右板部37yと、左板部37x及び右板部37yを繋ぐ底板部37zとからなる。左板部37xから底板部37zに亘ってはS字状に屈曲し、右板部37yは、底板部37zから屈曲した後は平板状に縦壁部37kまで上方斜め外側方に延びている。
【0041】
板状部37aの下面37wには、前後の筒状突出部37d,37d(一方の筒状突出部37dのみ図示)を繋ぐ下面側左リブ37fと、前後の筒状突出部37e,37e(一方の筒状突出部37eのみ図示)から屈曲部37tまで延びる複数の下面側右リブ37gが形成されている。
このように、フットレスト37に上面側左リブ37q、上面側右リブ37s、下面側左リブ37f、下面側右リブ37gを設けることで、フットレスト37の筒状突出部37d,37eよりも外側方に位置する部分の強度・剛性を高めることができる。
【0042】
また、上記したように、フットレスト37を鋳造により製造することで、容易に板状に成形することができるとともに、上面側左リブ37q、上面側右リブ37s、下面側左リブ37f、下面側右リブ37gを容易に形成することができる。フットレスト37が板状であれば、縦壁部37j,37kをエンジン20により近づけることができ、ステップ38もエンジン20側に近づけることができる。従って、車体をよりスリムに構成することができる。
【0043】
図9は、図8の足シフトスイッチ機構35を拡大した要部拡大図である。
左側の縦壁部37j及び上面側左リブ37qは、正面視でリンク機構96に重なる。また、ギアチェンジペダル36のペダルアーム107は、その前傾斜部107b及び前端側傾斜部107dが車幅方向に延び、前傾斜部107bから前端側傾斜部107dに至る部分が、縦壁部37jの前方を横切っている。
足シフトスイッチ機構35の支持板91は、正面視L字形状の部材である。支持板91の起立部91bの左側方には、ギアチェンジペダル36、ストッパ94、リンク機構96、ねじりコイルばね98が配置され、起立部91bの右側方には、センサ本体133が配置されている。回動軸93、ストッパピン95、カラー部材97は、起立部91bを貫通するように配置されている。
ストッパ94は、窓部94aの縁から折り曲げられた突起部94bを備える。ねじりコイルばね98は、巻き始めと巻き終わりの部分に、略平行に延びるストレート端部98a,98b(一方のストレート端部98a符号のみ図示)が設けられている。
【0044】
スイッチユニットカバー148は、上下二つ割の下カバー148a、上カバー148bで構成されている。下カバー148aはフットレスト37の板状部37aに取付けられ、上カバー148bは下カバー148aに取付けられている。
下カバー148aと上カバー148bとの割り面148cは、スイッチユニットカバー148の内外を貫通する回動軸93及びペダル筒部143の箇所で上下に分割可能に形成されているため、上カバー148bと下カバー148aとの間に隙間を生じにくくすることができる。
下カバー148a及び上カバー148bの前面の左側には、リンク機構96のアーム部材101のアーム延出部101bがスイッチユニットカバー148の内外を貫通するスリット148dが、下カバー148aと上カバー148bとに亘って開けられている。スリット148dは、アーム延出部101cが揺動しても干渉しない大きさに開けられている。
【0045】
図10は、自動二輪車10の要部を示す右側面図である。
ブレーキペダル123は、センターフレーム10Eの下端部側から延びるアーム部161と、アーム部161の前端に設けられた踏込部162とを備える。アーム部161は、センターフレーム10Eへの取付部近傍に下方に凸となるように形成された湾曲部161aと、湾曲部161aから略水平に直線的に延びる直線部161bと、直線部161bの前端から屈曲して上方斜め前方に延びる前部傾斜部161cとを一体に備える。
【0046】
排気管81がフットレスト37の上方を前後に延びるように配置されているのに対して、ブレーキペダル123の直線部161bは、フットレスト37の下方を前後に延びるように配置されている。踏込部162は、ステップ38と略同一高さに配置されている。遮熱カバー122は、シリンダヘッド65の下方からフットレスト37の上方まで延び、ブレーキペダル123の前部傾斜部161cとの干渉をさけるための切欠き部122aが形成されている。なお、符号164は排気管81に遮熱カバー122を取付けるためのビス、166はマフラ121からの放熱を遮るマフラ用遮熱カバーである。
【0047】
図11は、ブレーキペダル123の取付部及びその周囲を示す斜視図である。
エンジン20の後方には、車体フレーム10A(図1参照)を構成するセンターフレーム10Eが配置されている。センターフレーム10Eは、左右一対の側壁部171,172を備える。
ブレーキペダル123は、左右の側壁部171,172にそれぞれ開けられた軸挿通穴171b,172bに貫通するストッパ軸174の右端部174bに揺動可能に支持されている。ストッパ軸174は、メインスタンド57を起立させたときにメインスタンド57の位置決め部材となる。ストッパ軸174は、側壁部171,172の軸挿通穴171b,172bに貫通させた後に、軸挿通穴171b,172bの縁に溶接にて固定されている。このように、左右の側壁部171,172にストッパ軸174が固定されているので、側壁部171,172が強固に連結され、センターフレーム10Eを補強することができ、センターフレーム10Eの強度・剛性を高めることができる。
【0048】
ストッパ軸174の右端部174bは、右側の側壁部172よりも車幅方向外側へ突出している。ブレーキペダル123の湾曲部161aの端部には円筒部176が設けられている。円筒部176は、右端部174bに回動可能に嵌合され、右端部174bにワッシャ177が嵌められ、更に、右端部174bに円筒部176の抜け止めの割ピン178が装着されている。また、円筒部176にはアーム部161を延長するように板状の突出片181が取付けられ、突出片181の先端がロッド182を介してマスタシリンダ(不図示)に連結されている。
【0049】
左右の側壁部171,172にはそれぞれ軸挿通穴171c,172c(図13参照。但し、一方の軸挿通穴171cのみ図示した。)が開けられ、これらの軸挿通穴171c,172cにメインスタンドシャフト185が挿入され、メインスタンドシャフト185にメインスタンド57が回動可能に支持されている。メインスタンド57は、メインスタンドシャフト185に回動可能に嵌合された筒部187と、筒部187から後方にいくにつれて次第に開くように延びる左右一対の脚部188,188と、左右の脚部188,188間に設けられたストッパ片191及びクロス部材192とを備える。
【0050】
ストッパ片191は、板を略コ字状に折り曲げた部品であり、位置決めのための当接板部191aと、当接板部191aの両側に設けられてそれぞれ脚部188に取付けられた左右一対の側板部191b,191bとからなる。図では、メインスタンド57は、跳ね上げられて所定位置に収納された状態にある。この状態からメインスタンド57を立てて使用状態にしたときには、ストッパ片191の当接板部191aが、ストッパ軸174の側壁部171,172間に位置する中間部174dに当り、メインスタンド57が位置決めされる。
【0051】
メインスタンドシャフト185は、右側の端部185bにはワッシャ183が嵌められるとともに、抜け止めの割りピン186が通されている。
このように、メインスタンド57の位置決めをするストッパ軸174がブレーキペダル123の支持部材を兼ねることで、特別にブレーキペダル123の支持部材を設けるのに比べて部品数を減らすことができ、コストを抑えることができる。
【0052】
変速機24は、クランクケース61の後部下部に、変速動作の駆動源となるアクチュエータ201を備える。アクチュエータ201は、足シフトスイッチ機構35(図7参照)のセンサ部92からの変速信号に基づいてECUから送られる駆動信号により作動して変速機24のシフト動作を行う。アクチュエータ201に備える回動軸201aは、変速機24に備えるメイン軸、カウンタ軸と平行になるように車幅方向に沿って配置されている。アクチュエータ201は、左右の側壁部171,172とフットレスト37とに渡されたアンダーカバー203により下方から覆われている。ブレーキペダル123は、アクチュエータ201の下方であってアンダーカバー203の右側方を前後方向に延びている。なお、符号205はアンダーカバー203を側壁部171,172に締結するボルトである。
【0053】
図12は、ブレーキペダル123の取付部及びその周囲を示す要部側面図である。
ストッパ軸174及びメインスタンドシャフト185は、前後に並ぶように配置されている。ストッパ軸174の外径は、メインスタンドシャフト185の外径よりも小さい。
ブレーキペダル123の湾曲部161aは、アクチュエータ201を避けるようにアクチュエータ201の下方にアクチュエータ201の外周面に沿って所定隙間隔てて配置されている。
センターフレーム10Eには、左右の側壁部171,172を車幅方向に貫通するようにピボット軸23が取付けられ、ピボット軸23にスイングアーム15の前端部が支持されている。
アクチュエータ201は、クランクケース61の後壁とセンターフレーム10Eの下部との間に且つピボット軸23の下方に配置されている。このように、アクチュエータ201をクランクケース61とセンターフレーム10Eとの間に配置することで、車体のスペースを有効利用することができ、アクチュエータ201をコンパクトに配置することができる。
【0054】
図13は、メインスタンド57の取付部及びその周囲を示す斜視図である。
側壁部171,172に渡されたメインスタンドシャフト185は、筒状の部材であり、左側の端部185aにフランジ部材207が固定されている。フランジ部材207は、メインスタンドシャフト185に取付けられた板状のフランジ本体211と、フランジ本体211に取付けられた位置決めピン212及びばね掛けピン213とを備える。
フランジ本体211は、メインスタンドシャフト185の外周面に嵌合されて取付けられた円弧状の切欠き部211aが形成されている。位置決めピン212は、フランジ本体211を貫通してフランジ本体211の両側方に突出した部品であり、フランジ本体211から車幅方向内側に突出した部分は、左側の側壁部171に形成されたピン挿入穴に挿入され、これによって、フランジ部材207は、側壁部171に対して回り止めされる。ばね掛けピン213は、引張コイルばね215の一端を掛ける部分である。引張コイルばね215は、メインスタンド57を立てた状態又は収納した状態に保持するための部品であり、その他端はメインスタンド57の一方の脚部188に設けられたフック部188aに掛けられている。
【0055】
ストッパ軸174の左端部174aは、円柱の外周面に平坦面174cが形成された形状を有する。一方、左側の側壁部171は、ストッパ軸174の左端部174aの外形と略同形となるように軸挿通穴171b形成され、軸挿通穴171bに左端部174aが挿入されて回り止めされている。
アンダーカバー203は、下方に凸になるように湾曲した湾曲板部203aと、湾曲板部203aの四隅から前方及び後方に延びる前方突出部203b,203c、後方突出部203d,203eとが一体成形されている。前方突出部203b,203cはフットレスト37側に固定されている。また、一方の後方突出部203dは、側壁部171の下端部に車幅方向内側に屈曲するように形成されたカバー取付部171aにボルト205で締結され、他方の後方突出部203eは、側壁部172の下端部に車幅方向内側に屈曲するように形成されたカバー取付部172aにボルト205で締結されている。
【0056】
クランクケース61、詳しくは左ケース114には、その後面61aから後方に突出するケース後部膨出部61bが形成され、ケース後部膨出部61bの右側の端面にアクチュエータ201が後面61aの後方を後面61aに沿って車幅方向右方に延びるように取付けられている。アクチュエータ201は、クランクケース61の後面61aとセンターフレーム10Eとの間に配置されている。
【0057】
図14は、足シフトスイッチ機構35の構造及び動作を示す説明図であり、図14(A)は足シフトスイッチ機構35の作動前の状態を示す側面図、図14(B)は足シフトスイッチ機構35による変速機のシフトアップ動作を示す作用図、図14(C)は足シフトスイッチ機構35による変速機のシフトダウン動作を示す作用図である。
図14(A)に示すように、ストッパ94は、窓部94aの後方斜め下方に斜め延出部94cが設けられ、斜め延出部94cに有底筒状の筒部151が取付けられている。筒部151は、車幅方向外側に底部151aが設けられ、車幅方向内側に開口が設けられ、この開口が斜め延出部94cに形成された円形の貫通穴に臨むように斜め延出部94cに取付けられている。
【0058】
筒部151内には、底部151aに一端が支持される圧縮コイルばねと、圧縮コイルばねの他端によって車幅方向内側に付勢されるボール153とが収容されている。ボール153は、斜め延出部94cの上記した円形の貫通穴からカラー部材97の平板部97b側へ圧縮コイルばねの弾性力によって突出可能である。
カラー部材97の平板部97bは、車幅方向外側の側面97fに縦に並んだ3つの凹み部97g,97h,97jが形成されている。3つの凹み部97g,97h,97jは、それぞれストッパ94側の圧縮コイルばねで付勢されたボール153が入り込む部分である。
【0059】
足シフトスイッチ機構35が作動していない状態、即ち、変速機24(図1参照)のシフト位置がニュートラルのときには、ボール153は、カラー部材97の中央の凹み部97hに入り込んでいる。ボール153は、圧縮コイルばねの弾性力によって、凹み部97h内に押圧されているから、ストッパ94は、カラー部材97に対して位置決めされている。即ち、カラー部材97が取付けられた回動軸93が所定の回動位置で停止し、図7に示したセンサ部92のセンサ本体133は変速信号を発しない状態にある。
図14(A)において、ねじりコイルばね98のストレート端部98a,98bは、ストッパ94の突起部94b及びストッパピン95の小径部95cのそれぞれの両側に配置されている。突起部94bとストレート端部98a,98bとの間にはそれぞれ隙間Cが設けられている。小径部95cとストレート端部98a,98bとの間には、それぞれ隙間が無いか、あるいは上記の隙間Cより小さい隙間が形成されている。
【0060】
図14(B)に示すように、ギアチェンジペダル36の前踏込部108を白抜き矢印の向きに踏み込むと、ギアチェンジペダル36は、矢印Aで示すように回動し、リンク機構96のリンク本体104が、矢印Bで示すように下降し、回動軸93、ストッパ94が共に矢印Dで示すように回動する。この結果、ストッパ94のボール153が、圧縮コイルばねの弾性力に抗して凹み部97hから凹み部97gへ移動してストッパ94が位置決めされるとともに、回動軸93の反時計回りの回動をセンサ本体133(図7参照)が検出する。
【0061】
この結果、センサ本体133からECUへ変速信号としてのシフトアップ信号が送られ、ECUが図2に示した変速機24、詳しくはアクチュエータ201(図11参照)へシフトアップ指令を送るため、変速機24はシフトアップされる。図14(B)において、ストッパ94が位置決めされた状態では、ストッパ94の突起部94bがねじりコイルばね98の一方のストレート端部98aを押しているため、ストッパピン95とストレート端部98aとの間に隙間C1が出来、ストッパ94には、ねじりコイルばね98による時計回りの付勢力が作用している。このねじりコイルばね98の付勢力は、ボール153を凹み部97gから移動させるほど大きくない。
【0062】
仮に、ねじりコイルばね98を設けない場合でも、前踏込部108を踏み込むことによりボール153は凹み部97hから凹み部97gへ移動してストッパ94の位置決めが行われるが、運転者が足で前踏込部108を踏み込んだ際の足に伝わる反力が一定なので、どの程度の力で踏み込むのか、あるいは、どれだけの距離を踏み込めばよいのかが感覚的に把握しにくい。これに対して、上記のねじりコイルばね98を設けることで、足で前踏込部108を踏み込んだ際の足に伝わる反力が次第に増大するため、踏込力や踏込量を感覚的に掴みやすくなる。
【0063】
図14(B)に示した状態で、ギアチェンジペダル36の後踏込部109(図2参照)を踏めば、ねじりコイルばね98の付勢力も作用して、ギアチェンジペダル36、リンク本体104及びストッパ94は、矢印A,B,Dとは反対方向に回動又は移動し、ボール153は凹み部97gから凹み部97hに戻る。この結果、回動軸93の時計回りの回動をセンサ本体133が検出し、センサ本体133からECUへ変速信号としてのシフトダウン信号が送られ、変速機24はシフトダウンされる。
【0064】
図14(C)に示すように、ギアチェンジペダル36の後踏込部109(図2参照)を踏み込んでギアチェンジペダル36を、矢印Eで示すように回動させると、リンク機構96のリンク本体104が、矢印Fで示すように上昇し、回動軸93、ストッパ94が共に矢印Gで示すように回動する。この結果、ストッパ94のボール153が、圧縮コイルばねの弾性力に抗して凹み部97hから凹み部97jへ移動してストッパ94が位置決めされるとともに、回動軸93の時計回りの回動をセンサ本体133(図7参照)が検出する。
【0065】
この結果、センサ本体133からECUへ変速信号としてのシフトダウン信号が送られ、ECUがアクチュエータ201(図11参照)へシフトダウン指令を送るため、変速機24はシフトダウンされる。図14(C)において、ストッパ94が位置決めされた状態では、ストッパ94の突起部94bがねじりコイルばね98の他方のストレート端部98bを押しているため、ストッパピン95とストレート端部98bとの間に隙間C2が出来、ストッパ94には、ねじりコイルばね98による反時計回りの付勢力が作用している。このねじりコイルばね98の付勢力は、ボール153を凹み部97jから移動させるほど大きくない。
この状態で、ギアチェンジペダル36の前踏込部108を踏めば、ねじりコイルばね98の付勢力も作用して、ギアチェンジペダル36、リンク本体104及びストッパ94は、矢印E,F,Gとは反対方向に回動又は移動し、ボール153は凹み部97jから凹み部97hに戻り、変速機24はシフトアップされる。
【0066】
以上の図1図4及び図11に示したように、車体に揺動可能に支持されるメインスタンド57及びブレーキペダル123を備えた車両としての自動二輪車10において、ヘッドパイプ10Cから延びるメインフレーム10Dの端部に左右一対の壁部としての側壁部171,172を備えるセンターフレーム10Eが設けられ、側壁部171,172間にメインスタンドシャフト185が渡され、このメインスタンドシャフト185にメインスタンド57が揺動可能に支持され、メインスタンド57を起立させた時の位置決め部となるストッパ部材としてのストッパ軸174が、メインスタンドシャフト185よりも前方で左右の側壁部171,172に固定され、ストッパ軸174の端部にブレーキペダル123が揺動可能に支持されている。
【0067】
この構成によれば、ストッパ軸174が、左右の側壁部171,172に固定されてセンターフレーム10Eの補強部材になるとともにメインスタンド57の位置決め部材になり、更にストッパ軸174がブレーキペダル123の揺動軸となることで、特別に、センターフレーム19Eの補強部材やブレーキペダル123の揺動軸が必要なく、部品数を減らすことができるため、構造が簡素になる。しかも、メインスタンド57とブレーキペダル123とは別々の部材に支持されているため、メインスタンド57及びブレーキペダル123の組付け及びメンテナンスに対応しやすい効果的な配置構造とすることができる。
また、センターフレーム10Eの側壁部171,172において、ストッパ軸174をメインスタンドシャフト185よりも前方に設けることで、ストッパ軸174より後方に設けられる突出片181が側壁部171,172よりも後方へ突出する突出量をより少なくすることができ、他部品との干渉を防止することができる。
【0068】
また、図11及び図13に示したように、メインスタンドシャフト185は、側壁部171,172に設けられるメインスタンドシャフト挿通穴としての軸挿通穴171c,172c(一方の軸挿通穴171cのみ図示)を貫通して支持され、メインスタンドシャフト185の一端部にはフランジ部材207を備え、このフランジ部材207は、側壁部171との間で係合する係合部としての位置決めピン212を備え、メインスタンドシャフト185の他端部には、抜け止め部材としての割りピン186が設けられているので、簡単な構造でメインスタンド57を回り止めしつつ支持することができ、メインスタンドシャフト185のコスト低減及び容易な組付性を図ることができる。
【0069】
また、図13に示したように、ストッパ軸174は、側壁部171,172をそれぞれ貫通して配置され、側壁部171,172に回転不能に支持されるシャフトであり、ストッパ軸174の端部にブレーキペダル123が揺動可能に支持されるので、ストッパ軸174は、側壁部171,172の左右を連結する強度部材になり、この強度部材にブレーキペダル123を強固に支持することができる。
また、図12に示したように、ストッパ軸174の外径は、メインスタンドシャフト185の外径よりも小さいので、ストッパ軸174を狭い空間にも配置することができ、配置自由度を増すことができる。
【0070】
また、図1図4及び図12に示したように、メインフレーム10Dの下方及びセンターフレーム10Eの前方にエンジン20が配置され、このエンジン20の後方には変速用のアクチュエータ201が配置され、このアクチュエータ201は、エンジン20とセンターフレーム10Eとの間に配置され、アクチュエータ201の下方でブレーキペダル123が前後に延びているので、ブレーキペダル123を変速用のアクチュエータ201の保護部材とすることができる。また、アクチュエータ201を、エンジン20とセンターフレーム10Eとの間のスペースを有効利用して配置することができ、車体のコンパクト化を図ることができる。
また、図4及び図11に示したように、センターフレーム10Eとエンジン20との間の下方にブレーキペダル123に隣接させてアンダーカバー203が配置され、このアンダーカバー203でアクチュエータ201を下方から覆うので、ブレーキペダル123とアンダーカバー203とでアクチュエータ201の保護効果を高めることができる。
また、図11に示したように、アンダーカバー203の前方突出部203b,203cをフットレスト37とクランクケース61の底面に共締めし、更に、アンダーカバー203の後方突出部203d,203eを側壁部171,172の下端部に取付けたので、特別にアンダーカバー203を支持する支持部材を設ける必要がなく、部品数の増加を抑えることができる。
【0071】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
更に、本発明は、自動二輪車10に適用する場合に限らず、自動二輪車10以外も含む鞍乗り型車両にも適用可能である。なお、鞍乗り型車両とは、車体に跨って乗車する車両全般を含み、自動二輪車(原動機付き自転車も含む)のみならず、ATV(不整地走行車両)に分類される三輪車両や四輪車両を含む車両である。
【符号の説明】
【0072】
10 自動二輪車(鞍乗り型車両)
10A 車体フレーム
10C ヘッドパイプ
10D メインフレーム
10E センターフレーム
20 エンジン
57 メインスタンド
123 ブレーキペダル
171,172 側壁部(壁部)
171c,172c 軸挿通穴(メインスタンドシャフト挿通穴)
174 ストッパ軸(ストッパ部材)
185 メインスタンドシャフト
186 割りピン(抜け止め部材)
201 アクチュエータ
203 アンダーカバー
207 フランジ部材(フランジ)
212 位置決めピン(係合部)
図1
図2
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