特許第6008988号(P6008988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6008988電力需要調整システムおよび電力需要調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6008988
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】電力需要調整システムおよび電力需要調整方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20161006BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20161006BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H02J3/14
   H02J3/00 130
   H02J3/00 170
   H02J13/00 301A
   H02J13/00 311T
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-553908(P2014-553908)
(86)(22)【出願日】2012年12月25日
(86)【国際出願番号】JP2012083418
(87)【国際公開番号】WO2014102894
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 泰志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広考
【審査官】 緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−166636(JP,A)
【文献】 特開2006−074952(JP,A)
【文献】 特開2002−176729(JP,A)
【文献】 特開2009−213240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の需要調整を行う電力需要調整システムであって、
需要調整の要求条件に基づく調整目標データを提供する目標管理手段と、
需要調整リソースの需要調整における振る舞いを表すモデルを管理するモデル管理手段と、
前記モデルに基づき、前記調整目標データを満たすように、需要調整の対象とする需要調整リソースである調整対象リソースと、該調整対象リソースにおける調整量とを決定する調整力割当手段と、を有し、
前記目標管理手段は、複数の需要調整要求元から調整力要求データを取得し、前記調整力要求データを集約して前記調整目標データを生成する、
電力需要調整システム。
【請求項2】
電力系統の需要調整を行うための電力需要調整方法であって、
目標管理手段が、需要調整の要求条件に基づく調整目標データを提供するステップと、
モデル管理手段が、需要調整リソースの需要調整における振る舞いを表すモデルを管理するステップと、
調整力割当手段が、前記モデルに基づき、前記調整目標データを満たすように、需要調整の対象とする需要調整リソースである調整対象リソースと、該調整対象リソースにおける調整量とを決定するステップと、を有し、
前記目標管理手段は、前記調整目標データを提供するステップにおいて、複数の需要調整要求元から調整力要求データを取得し、前記調整力要求データを集約して前記調整目標データを生成する、
電力需要調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は需要家の電力需要量を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統では、系統全体の周波数や電圧などを安定に維持するため、発電量と需要量のバランスである需給バランスを常に一定に維持することが必要である。電力需要の急増や、出力が不安定な自然エネルギーによる発電の導入拡大などに対して、需給バランスを一時的に調整する手段として、需要の調整を活用することへの期待が高まっている。
【0003】
需給バランス調整の目的は、周波数の維持や、送電線潮流に対する制約の緩和など多岐にわたる。また、需要調整の手段となるうリソースも、ビルや家庭など様々な需要家種別、空調や電気給湯器などの様々な機器種別など多岐にわたる。従って、需給バランス調整には、各用途に対して需要調整リソースを適切に選択して適用することが要求される。
【0004】
特許文献1、2には、複数の電力系統需給制御装置と複数の需要家とが存在するシステムにおいて各時刻の電力需要を調整する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−333369号公報
【特許文献2】特開平11−308771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように需給バランス調整の目的は多岐にわたる。そして、需給バランス調整の目的が異なれば、需要調整を行うべき場所、時刻、および必要調整量、調整に求められる応答時間などの要求条件が異なる。また、需要調整リソースには、場所、時刻、応答可能量、応答時間、コストなどの特性がそれぞれ異なるものが含まれている。さらに、需要調整リソースによっては、ある時刻での需要を変化させることで別の時刻での需要が変化する場合がある。その結果、別の時刻での需要調整の能力が不足したり、割高な需要調整リソースの調達が必要となってコストが増大したりする可能性がある。
【0007】
従って、需要調整リソースの需要を変化させる需給バランス調整においては、多岐にわたる調整目的の各要求条件と、需要調整リソースの特性とを考慮し、また別の時刻への影響も考慮して適切な調整を行うことが望ましい。
【0008】
本発明の目的は、需要調整への要求条件および需要調整リソースの特性を考慮して適切に需要調整を行う技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による電力需要調整システムは、電力系統の需要調整を行う電力需要調整システムであって、需要調整の要求条件に基づく調整目標データを提供する目標管理手段と、需要調整リソースの需要調整における振る舞いを表すモデルを管理するモデル管理手段と、前記モデルに基づき、前記調整目標データを満たすように、需要調整の対象とする需要調整リソースである調整対象リソースと、該調整対象リソースにおける調整量とを決定する調整力割当手段と、を有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、需要調整への要求条件および需要調整リソースの特性を考慮して適切に需要調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る電力システム、およびその電力システムにおける需要調整を行うシステムを含んだ全体システムの構成例を含むブロック図である。
図2】本実施形態に係る電力需要調整システムの構成例を示す機能ブロック図である。
図3】本実施形態に係る電力需要調整システム全体の処理の流れを示す図である。
図4A】調整力要求データの一例を示す表である。
図4B】調整目標データの一例を示す表である。
図5】調整力リソース稼働状態予測データの例を示す表である。
図6A】調整力リソース応答条件データの一例を示す表である。
図6B】調整力応答条件データの一例を示す表である。
図7】調整力リソース時刻間変化影響データの一例を示す表である。
図8A】調整力リソース割当データの一例を示す表である。
図8B】調整力割当データの一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る電力システム、およびその電力システムにおける需要調整を行うシステムを含んだ全体システムの構成例を含むブロック図である。
【0014】
電力システム(電力系統)10は、電力を需要家15に供給するシステムであり、発電設備11、送電線12、配電線13、変圧器14、不図示の開閉器などの設備で構成される。
【0015】
電力システム10による電力供給を受ける需要家15には、学校、商業施設、ビル、工場などの大規模な需要家の他、一般家庭も含まれる。一般家庭の例では、需要家15の需要家端には、エアコン、テレビ、洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、電気給湯器などの電気負荷機器のほか、蓄電池、EV、またPVなどの発電設備も設置されることがある。
【0016】
以下では、これら需要家端に設置されている機器を需要家機器16と総称するものとする。
【0017】
需要家端では、これら各種の需要家機器16が通信ネットワーク17を介して接続された需要家エネルギー管理システム18により管理されている。
【0018】
需要家15の需要調整を行う電力需要調整システム19は、通信ネットワーク21を介して需要調整要求元システム20と接続されるとともに、各需要家端の需要家エネルギー管理システム18とも通信ネットワーク21を介して接続されている。電力需要調整システム19は、需要調整要求元システム20からの要求に基づき、電力システム10全体における電力需要の調整を行う。
【0019】
需要調整要求元システム20は複数存在しうる。需要調整要求元システム20は、電力需要調整システム19に対して、電力系統における電力需要量の調整を依頼するシステムである。需要調整の依頼は、場所、時刻、調整量の許容範囲などの要求条件を互いに対応付けたものであり、これを調整力要求データとして電力需要調整システムに送信する。
【0020】
需要調整要求元システム20の一例として、電力系統全体の周波数維持のために、需給バランスを制御する需給制御システムがある。
【0021】
電力系統全体の発電量が何らかの理由によって将来のある時点で不足することが予測される場合に、電力系統全体の需給バランスを維持するための方策の1つとして、電力需要量を不足分だけ抑制することが考えられる。そのために、需給制御システムは、電力需要を抑制すべき時間帯(抑制時間帯)と、その抑制時間帯において抑制すべき電力需要量(電力需要抑制量)とを電力需要調整システム19に要求する。
【0022】
また、需要調整要求元システム20の他の例として、送電系統全体の電圧の安定度を維持するために、潮流分布を制御する潮流制御システムがある。
【0023】
ある送電線12の潮流が将来のある時点で上限の制約を逸脱することが予測される場合に、その送電線12の潮流を抑制する方策の1つとして、末端側の需要家15側における電力需要量を抑制することが考えられる。そのために、潮流制御システムは、抑制時間帯と、電力需要抑制量とを電力需要調整システム19に要求する。
【0024】
各需要家端にある需要家エネルギー管理システム18は、HEMS(Home Energy Management system)あるいはBEMS(Building and Energy Management System)に代表されるような、需要家機器16の稼働状態を監視し、制御するシステムである。電力需要調整システム19から、電力需要調整の依頼(需要調整依頼)として、電力需要の調整量と調整時間帯とを含むデータを受け取り、この需要調整依頼を満たすように需要家機器16の稼働状態を制御する。
【0025】
例えば、13時から14時に500Wの電力需要の抑制の依頼を受け取った場合、需要家エネルギー管理システム18は、13時に稼働して500Wを消費している需要家機器16(例えば空調器)を停止させる。
【0026】
需要家エネルギー管理システム18は、配下の需要家機器16の稼働状態を示すデータ(稼働状態データ)を電力需要調整システム19に送る。
【0027】
電力需要調整システム19は、各需要調整要求元システム20から調整力要求データを取得し、その全ての条件を満たすように、各需要家15の需要家エネルギー管理システム18への需要調整依頼の配分を決定する。更に、電力需要調整システム19は、決定した需要調整依頼を各需要家エネルギー管理システム18へ配信する。
【0028】
図2は、本実施形態に係る電力需要調整システムの構成例を示す機能ブロック図である。
【0029】
電力需要調整システム19は、調整目標管理部31、調整力応答モデル管理部32、調整力割当部36、およびデータ管理部37を含んで構成されている。調整力応答モデル管理部32は、調整力リソース稼働状態データ管理部33、調整力応答条件管理部34、および調整力リソース時刻間変化影響計算部35を有している。電力需要調整システム19を構成する各機能ブロックは互いに連携して動作する。
【0030】
図3は、本実施形態に係る電力需要調整システム全体の処理の流れを示す図である。
【0031】
以下、図2に示した各機能ブロックの処理について図3の流れに従って説明する。
【0032】
調整目標管理部31は、ステップ101として、各需要調整要求元システム20から需要調整の要求条件である調整力要求データを取得し(ステップ101a)、それらを集約し(ステップ101b)、調整目標データとして生成する。調整目標管理部31は、集約した調整目標データをデータ管理部37に格納する。
【0033】
図4Aは調整力要求データの一例を示す表である。図4Bは調整目標データの一例を示す表である。図4Aの調整力要求データと図4Bの調整目標データは対応している。
【0034】
図4Aの調整力要求データは、需要調整の要求をした需要調整要求元システム20(要求元)毎に、需要を調整すべき場所、各時刻で必要な調整量の上限および下限、増加あるいは現象という調整の方向、応答時間、単位調整量あたりの単価の上限を管理するデータである。単位調整量あたりの単価の上限は、需要を調整するときに許容できるコストを表す値であり、需要調整を要求する側が決める値である。
【0035】
なお、図4Aでは、抑制側と増加側の両方の表記が表中に記載されているが、設定されるのはいずれか一方である(以下同様)。そして需要調整の値として表中に設定される値は抑制の場合は負の値であり、増加の場合は正の値であるものとする(以下同様)。
【0036】
図4Bの調整目標データは、図4Aの調整力要求データを場所毎に集約したデータである。調整目標データとして、場所毎に、各時刻の調整量の上限および下限、調整の方向、応答時間、単位調整量あたりの単価の上限が管理されている。
【0037】
上述のように、調整力応答モデル管理部32は、調整力リソース稼働状態データ管理部33、調整力応答条件管理部34、および調整力リソース時刻間変化影響計算部35を含んでおり、時刻間にわたる影響などの需要調整リソースの需要調整における振る舞いを表すモデル(調整力応答もでる)を管理する。
【0038】
調整力リソース稼働状態データ管理部33は、各需要家エネルギー管理システム18から、需要家機器16の稼働状態として、運転停止状態、30分等の単位時間あたりの電力消費量などの実績データを取得し、取得した実績データを調整力リソース稼働実績データとしてデータ管理部37に格納する(ステップ102a)。
【0039】
また、調整力リソース稼働状態データ管理部33は、各需要家機器16の過去の各時刻の電力消費量の平均値を計算し、これを将来の各需要家機器16の各時刻の予測値とし、その予測値を調整力リソース稼働状態予測データとしてデータ管理部37に格納する(ステップ102b)。
【0040】
図5は調整力リソース稼働状態予測データの例を示す表である。図5には、需要調整リソース毎に各時刻における稼働状態の予測値が示されている。予測値は、例えば、需要調整リソースである需要家機器16が稼働によって消費する電力量によって示される。
【0041】
調整力応答条件管理部34は、各需要家15において需要家エネルギー管理システム18によりユーザが設定する、将来の各時刻での需要調整が可能な上限量、応答時間、単位調整量あたりの対価である単価を取得し、取得したデータを調整力リソース応答条件データとしてデータ管理部37に格納して管理する(ステップ102c)。さらに、調整力応答条件管理部34は、調整力リソース応答条件データを場所毎に集約して、将来の各時刻での需要調整が可能な上限量、応答時間、単位調整量あたりの対価である単価を、調整力応答条件データとして生成し、データ管理部37に格納する(ステップ102d)。
【0042】
図6Aは調整力リソース応答条件データの一例を示す表である。図6Bは調整力応答条件データの一例を示す表である。図6Aの調整力リソース応答条件データと図6Bの調整力応答条件データとは対応している。ここでの単位調整量あたりの対価である単価は、需要を調整するときに得たい料金を表す値であり、需要調整にリソースを提供する側が決める値である。
【0043】
調整力リソース時刻間変化影響計算部35は、各需要家15における需要家機器16である調整力リソースの各々について、ある時刻に需要調整を実施した場合の他時刻の需要変化量を予測し、これを調整力リソース時刻間変化影響データとしてデータ管理部37に格納する。この計算は調整力割当部36からの起動要求に応じて行われる。調整力リソース時刻間変化影響計算部35は、ある時刻に需要調整を実施した場合の他時刻の需要変化量を予測するとき、調整力リソース稼働状態予測データに基づいて、また予め需要家機器種別毎に備えておいた時刻間需要変化影響計算モデルに従って計算を行う。
【0044】
時刻間の影響の例として電気給湯器について考えてみる。通常は朝方一定の時刻までに温水を沸き上げて蓄える蓄熱運転を行い、昼間は蓄熱運転しないものとする。この電気給湯器に需要調整のために昼間に蓄熱運転を実施させるとした場合、朝方の蓄熱運転を開始する時刻を昼間の追加起動時間の分だけ後ろ倒しにして、昼間に蓄熱するエネルギー量の分だけ朝方に蓄熱するエネルギー量を削減することが考えられる。
【0045】
なお、調整力リソース時刻間変化影響計算部35は、例えば、複数の計算モデルを予め備えておいて、需要家15が需要家エネルギー管理システム18上で指定するモデルに従って計算するように構成しても良い。
【0046】
図7は、調整力リソース時刻間変化影響データの一例を示す表である。図7を参照すると、縦方向に需要調整を実施する時刻の時間軸をとり、横方向に需要調整により影響を受ける時刻の時間軸をとっている。表には、単位調整量当たりの影響を受ける需要量が示される。この表から、ある時刻の需要調整によってどの時刻の需要がどのように影響を受けるかを計算することができる。
【0047】
調整力割当部36は、データ管理部37に格納されている調整目標データと調整力応答条件データと調整力時刻間変化影響データを取得し、各調整力リソースiに依頼する調整量Prs(i,t)を、後述するように決定して、調整力リソース割当データとしてデータ管理部37に格納する。また、調整力割当部36は、調整力リソース割当データを場所毎に集約したものを調整力割当データとしてデータ管理部37に格納する。
【0048】
図8Aは、調整力リソース割当データの一例を示す表である。図8Bは、調整力割当データの一例を示す表である。図8Aの調整力リソース割当データは、需要調整リソース毎にどの時刻にどれだけ需要の抑制あるいは増加を行うかを示している。図8Bの調整力割当データは、場所毎に、どの時刻にどれだけ需要の抑制あるいは増加を行うかを示している。
【0049】
以下、調整力割当部36が各調整力リソースiに依頼する調整量Prs(i,t)を決定する処理について(1)〜(10)として説明する。
【0050】
(1) まず調整力リソースiと時刻tを設定する。
【0051】
(2) Prs(i,t,−)≦Prs(i,t)≦Prs(i,t,+)となるようにPrs(i,t)の値を乱数で設定する。
【0052】
ここで、Prs(i,t)>0は需要増加、Prs(i,t)<0は需要抑制を意味するものとする。
【0053】
(3) Prs(i,t)<0でありかつSrs(i,t)<|Prs(i,t)|の場合、あるいは、Prs(i,t)>0でありかつSrs(i,t)+Prs(i,t)が調整力リソースiの最大電力量を上回る場合には、(2)の処理を再度実行する。これは、調整量が調整できる範囲を超えないようにするためである。
【0054】
上記(1)〜(2)が図3のステップ103bに相当する。
【0055】
(4) 図5の調整力リソース稼働状態予測データの当該個所を以下のように更新する。
【0056】
・すなわち、Srs(i,t)をSrs(i,t)+Prs(i,t)で更新する。
【0057】
(5) 調整力リソース時刻間変化影響計算を以下のように行う。
【0058】
(5−1) 調整力応答モデル管理部の調整力リソース時刻間変化影響計算部35に、Prs(i,t)を渡して、調整力リソース時刻間変化影響データの更新を起動する。
【0059】
(5−2) 調整力リソース稼働状態予測データを下記にて更新する。
【0060】
・Prs(i,t)≧0の場合、各調整力リソースiの各時刻t’について、Srs(i,t’)をSrs(i,t’)+Prs(i,t)×VPrs(i,t,+,t’)で更新する。ここで、更新後のSrs(i,t’)が調整リソースiの最大電力量を超過する場合には、最大電力量で更新するものとし、更新後のSrs(i,t’)が調整リソースiの最小電力量を下回る場合には最小電力量で更新するものとする。
【0061】
・Prs(i,t)<0の場合、各調整力リソースiと各時刻t’について、Srs(i,t’)をSrs(i,t’)+|Prs(i,t)|×VPrs(i,t,−,t’)で更新する。ここで、更新後のSrs(i,t’)が調整リソースiの最大電力量を超過する場合には、最大電力量で更新するものとし、更新後のSrs(i,t’)が調整リソースiの最小電力量を下回る場合には最小電力量で更新するものとする。
【0062】
(5−3) 調整力リソースiの時刻t’までの各時刻t’’について、Prs(i,t’’)<0でありかつSrs(i,t’’)<|Prs(i,t’’)|の場合、あるいは、Prs(i,t’’)>0でありかつSrs(i,t’’)+Prs(i,t’’)が調整力リソースiの最大電力量を上回る場合には、(4)〜(5−2)の処理をキャンセルして、(2)の処理を再度実行する。
【0063】
上記(5−1)〜(5−3)が図3のステップ103b〜103cに相当する。
【0064】
(6) 最終時刻まで時刻tを1つずつ進め、(2)〜(5−3)の処理を繰り返して実行する。
【0065】
(7) 全ての調整力リソースについて、(1)〜(6)の処理を繰り返して実行し、需要調整量の組合せであるPrs={Prs(i,t):全ての調整リソースi、全ての時刻t}を調整力リソース割当の候補として生成する。
【0066】
(8) (7)までで生成した調整力リソース割当の候補Prsが調整目標データを満たすかどうかを以下のように判定する。
【0067】
・全ての場所pと全ての時刻tについて、Prq(a,t,−,m)≦Σ{Prs(i,t):場所pをとる全ての調整力リソースi}≦Prq(a,t,+,M) の場合に、候補Prsは調整目標を満たすと判定する。
【0068】
・調整目標を満たす調整力リソース割当の候補Prsについて、IncentiveAll=Σ{Prs(i,t)×Crs(i,t):全ての調整力リソースiと全ての時刻t}を計算する。
【0069】
(9) (1)〜(8)の処理を繰り返して、調整力リソース割当の候補を予め定めた一定数以上生成する。
【0070】
上記(8)〜(9)が図3のステップ103eに相当する。
【0071】
(10) 生成した調整力リソース割当の候補のうち、IncentiveAllの値が最小となるものを選択し、これを最終的な調整力リソース割当データとしてデータ管理部に格納する。また、場所毎に集約したものを調整力割当データとしてデータ管理部に格納する。この(10)が図3のステップ103f〜104に相当する。
【0072】
以上、本実施形態によれば、調整力割当部36が各需要調整リソースの調整力応答モデルに基づき、調整目標データを満たすように、需要調整の対象とする需要調整リソースである調整対象リソースと、その調整対象リソースにおける調整量とを決定するので、需要調整への要求条件および需要調整リソースの特性を考慮して適切に需要調整を行うことができる。
【0073】
また、本実施形態では、調整力応答モデルには需要調整リソースの需要調整における時刻間にわたる影響の情報である調整力リソース時刻間変化影響データを含んでいる。そのため、本実施形態によれば、時刻間の影響を考慮した需要調整の制御が可能である。
【0074】
また、本実施形態では、調整力割当部36は、調整目標データを満たす調整対象リソースと調整量とを含む、需要調整に適用する候補を1つ以上抽出し、1つ以上の候補のうち、適用に必要なコストが最小のものを適用する。そのため、本実施形態によれば、要求条件を満たす調整方法の中でより低コストの方法を選択することができる。
【0075】
また、本実施形態では、調整目標管理部31が調整目標データにおいて、需要調整を適用する場所および時刻に対する調整量の上限と下限とを規定し、調整力割当部36が、その場所におけるその時刻での調整量が上限と下限の間に入るように、その場所にある調整対象リソースと、その時刻での調整対象リソースによる調整量とを決定する。そのため、本実施形態によれば、調整量を所定範囲内に制御することが求められる電力系統における調整量を適切に制御することが可能である。
【0076】
また、本実施形態では、調整力応答モデル管理32が、需要調整リソースにおける時刻間の影響を含む稼働実績に基づいて、調整力応答モデルを逐次更新する。そのため、本実施形態によれば、新しい実績に基づく適切な制御を維持することができる。
【0077】
なお、上述した本実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0078】
例えば、上述した本実施形態では、調整力応答モデル管理部32が電力需要調整システム19内に実装される形態を例として記述した。しかし、本発明がその例に限定されることはない。他の例として、需要家エネルギー管理システム18内に調整力応答モデル管理部32に実装する形態としても良い。また、その場合でも、調整力リソース時刻間変化影響計算部35は、需要家エネルギー管理システム18に実装されていなくてもよく、電力需要調整システム19に実装されていてもよい。これらの場合、各機能ブロックで必要なデータは需要家エネルギー管理システム18にある不図示のデータ管理部内にて管理することにするとよい。
【符号の説明】
【0079】
10…電力システム、11…発電設備、12…送電線、13…配電線、14…変圧器、15…各需要家、15…需要家、16…需要家機器、17…通信ネットワーク、18…需要家エネルギー管理システム、19…電力需要調整システム、20…需要調整要求元システム、21…通信ネットワーク、31…調整目標管理部、32…調整力応答モデル管理部、33…調整力リソース稼働状態データ管理部、34…調整力応答条件管理部、35…調整力リソース時刻間変化影響計算部、36…調整力割当部、37…データ管理部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B