特許第6009022号(P6009022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6009022海上航行支援サーバシステム、及び海上航行支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009022
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】海上航行支援サーバシステム、及び海上航行支援方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/00 20060101AFI20161006BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20161006BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20161006BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20161006BHJP
   B63B 49/00 20060101ALI20161006BHJP
   G01C 21/26 20060101ALN20161006BHJP
【FI】
   G08G3/00 A
   G09B29/00 F
   G09B29/10 A
   G06Q50/30
   B63B49/00 Z
   !G01C21/26 Z
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-55419(P2015-55419)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-177382(P2016-177382A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】仲本 剛
(72)【発明者】
【氏名】池田 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】植山 良
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0210865(US,A1)
【文献】 特開2009−286230(JP,A)
【文献】 特開2004−354069(JP,A)
【文献】 特開2005−101992(JP,A)
【文献】 柴田 大輔、他,「スマートフォンを用いたプレジャーボート向け衝突事故防止アプリケーションの開発」,第75回(平成25年)全国大会講演論文集(3) ネットワーク セキュリティ,一般社団法人情報処理学会,2013年 3月 6日,第167、168頁
【文献】 「海の地図ナビ」,[online],2010年 8月17日,URL,http://www.womanapps.net/news_RwI1W9vqI.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 3/00
B63B 49/00
G06Q 50/30
G09B 29/00
G09B 29/10
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信端末に通信可能に接続されるサーバシステムであって、
前記サーバシステムは、
無線部と、
制御部と、
船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を記憶する記憶部と、
を備え、
前記制御部は、
前記無線部を介して、船舶に乗船するユーザの携行する前記無線通信端末から前記無線通信端末の位置情報と前記船舶の大きさの情報とを受信する船舶情報受信部と、
前記船舶の大きさに対応させて、前記船舶の時系列の位置情報からなる航行軌跡情報を作成する航行履歴作成更新部と、
前記航行履歴作成更新部により作成された航行軌跡情報を入力として、前記記憶部に記憶されている、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を更新する航路情報作成更新部と、
を備えることを特徴とするサーバシステム。
【請求項2】
前記船舶情報受信部は、さらに、
前記無線通信端末から前記船舶の大きさの情報の信頼度を受信し、
前記航路情報作成更新部は、さらに
前記航路情報作成更新部により前記船舶の大きさに対応させて作成された航行軌跡情報と前記船舶の大きさの情報の信頼度とを入力として、前記記憶部に記憶されている、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を更新する
ことを特徴とする請求項1に記載のサーバシステム。
【請求項3】
前記記憶部は、さらに、
船舶の大きさごとに航行可能な航路情報とともに前記航路情報の過去の航行実績に基づく実績レベルを記憶し、
前記航行履歴作成更新部は、さらに、
前記船舶の大きさごとに航行可能な航路情報の過去の航行実績に基づく実績レベルを更新する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサーバシステム。
【請求項4】
無線部と、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を記憶する記憶部と、制御部と、を備える、無線通信端末に通信可能に接続されるサーバシステムが前記記憶部に記憶されている、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を更新する航路情報作成更新方法であって、
前記制御部により、
前記無線部を介して、船舶に乗船するユーザの携行する前記無線通信端末から前記無線通信端末の位置情報と前記船舶の大きさの情報とを受信する船舶情報受信ステップと、
前記船舶の大きさに対応させて、前記船舶の時系列の位置情報からなる航行軌跡情報を作成する航行履歴作成更新ステップと、
前記航行履歴作成更新ステップにおいて作成された航行軌跡情報を入力として、前記記憶部に記憶されている、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を更新する航路情報作成更新ステップと、
を備える航路情報作成更新方法。
【請求項5】
前記船舶情報受信ステップは、さらに、
前記無線通信端末から前記船舶の大きさの情報の信頼度を受信し、
前記航路情報作成更新ステップは、さらに
前記航行履歴作成更新ステップにより前記船舶の大きさに対応させて作成された航行軌跡情報と前記船舶の大きさの情報の信頼度とを入力として、前記記憶部に記憶されている、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を更新する
ことを特徴とする請求項4に記載の航路情報作成更新方法。
【請求項6】
前記記憶部は、さらに、
船舶の大きさごとに航行可能な航路情報とともに前記航路情報の過去の航行実績に基づく実績レベルを記憶し、
前記航路情報作成更新ステップは、さらに、
前記船舶の大きさごとに航行可能な航路情報の過去の航行実績に基づく実績レベルを更新する
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の航路情報作成更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPSが搭載された無線通信端末とサーバシステムとで構成された海上航行支援システムに関するものであり、特に、既存の陸上の道路用カーナビゲーションシステムの構成を流用し、サーバシステムが、無線通信端末から受信した位置情報及び船舶の種類に基づき、当該船舶の航行可能な航路情報を無線通信端末に提供するとともに、各無線通信端末から収集した船舶の排水量及び当該船舶の位置情報の軌跡を用いて、船舶の航行可能な航路情報をアップデートすることで、船舶の安全な航行に寄与することが可能な海上航行支援サーバシステムと端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、海上安全に関して、海上交通センターが航行船舶に対し、情報提供を行うとともに、巨大船等が航路を安全に航行できるように航行管制を行っているが、サービスエリアが限定されるとともに、船舶自動識別装置AIS(Automatic Identification System)を備えた特定の船舶に限られていた。
【0003】
これに対して、近年、ヨット、クルーザー、モーターボート、遊漁船などレジャーを主とした、漁船、貨客船以外の船舶(以下、「プレジャーボート」という)の所有者数が増加するに伴い、海上における事故(例えば、暗礁、定置網等への乗り上げ事故)も増加している。
【0004】
統計データによると日本で起こっている海難事故のうち沿岸3海里未満での海難が80%であり、死者・行方不明者を伴う海難の94%が漁船・遊漁船・プレジャーボート等の小型船舶であることがわかっている。小型船舶では高価な海上用ナビゲーション機材を備えることが少なく、安価で信頼性の高い海上用ナビゲーション機材が必要となっている。
【0005】
このため、船舶が座礁等の危険を回避するための技術として、地上の親局(サーバ)と船舶に搭載された子局(クライアント)との通信により、子局に危険を通知する技術が開発されてきた。
【0006】
例えば、特許文献1には、予め契約した顧客の魚船、プレジャーボートなどに海象情報の計測機器を設け、計測機器を取り付けた船の海上の現在位置情報、船が存在する海域の海象情報を計測機器で計測し、計測情報をサーバに送信し、サーバは、船の排水量を予め登録しておき、受信した船の位置情報と海象情報を集計することにより、海象情報を地図上に表示すると共に、海象情報と船の排水量とから船の危険度を算出し、危険情報を表示・警告し、利用者がサーバにアクセスして海象情報を受信する方法が開示されている。
【0007】
特許文献2には、船舶に乗船中のユーザが所持する位置特定可能な移動端末装置にサーバから海上安全情報を配信するシステムにおいて、移動端末装置の端末位置、現在時刻、船舶の大きさ、船舶の種類、進路、船舶の速度、行き先、乗船目的から選ばれる少なくとも1つを評価した評価結果に基づいて配信を制御する配信制御手段を備えることを特徴とする沿海・海岸情報システムが開示されている。
【0008】
また、陸上の道路のナビゲーション技術として、自動車の運転や歩行時等に携帯電話やスマートフォン等の携帯通信端末にインストールされたアプリケーションを用いて現在地から目的地までのルート案内をおこなう技術が普及している。
この技術では、携帯通信端末に備えられたGPSで側位された現在位置を、サーバもしくは携帯通信端末に備えられた道路地図上に「マップマッチング」と一般的に呼ばれている技術によってプロットし表示することが可能となっている。また、無線通信端末に目的地を入力することで、サーバもしくは携帯通信端末上で現在位置から目的地までのルートを計算し、ユーザにルート案内を提供することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−354069号公報
【特許文献2】特開2005−101992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
陸上の道路のナビゲーション技術で扱う道路地図と異なり、航路地図には以下の特徴が挙げられる。
まず、排水量(トン数)によって航行できる海路に違いがある。言い換えると、船により通過できる水深が異なるため、トン数が大きくなると、より座礁の危険性が高くなるので、航行できる航路が限定される。
さらに、水深は潮の満ち引きによっても変化する。日時と排水量との条件によって、航行できる海路が変化する。
【0011】
従来技術のうち、陸上の道路用のナビゲーション技術は、自動車等の車両はその大きさが限定されており、特殊な車両で無い限りは通行できる道路に大きな差は無いため、どのような車両に対しても一律のルート案内をおこなうことができる。そのため、陸上の道路用のナビゲーション技術を海上に応用する場合、安全な航行のような問題点を解決できない。
特許文献1に記載の発明は、計測機器を装備するとともに、予め排水量を予約する必要があることで管理者の手間を必要であることが導入の難しさがある。
特許文献2において、海上の状況が刻々と変化を逐一確認する手段としては、AISが受信できる装置やナビゲーションシステム等の装置を装備することで回避が可能であるが、海上レジャースポーツにおける初心者にとって高額であり、もっと安価なものかつ身近なもので代用することで少しでも敷居を低くし提供する必要がある。
【0012】
海上を航行するボートの中には、経験不足から海上の状況判断が不慣れなため、行きたい場所が選択できず、海上の状況変化を正確に把握できないことから、海難事故の発生につながるケースがある。海上レジャースポーツにおける初心者から経験豊富者に至る全ての人に対する容易性、安全性を図る技術が望まれる。
【0013】
本発明では、従来のナビゲーション技術を応用しつつ、簡易な方法で船舶の種類に応じた海路地図を提供することで、スマートフォン等の無線通信端末に実装可能なシステムを提供し、船舶の航行の安全に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)無線通信端末(例えば、後述の無線通信端末2)に通信可能に接続されるサーバシステム(例えば、後述のサーバシステム3)であって、前記サーバシステムは、無線部(例えば、後述の無線部32)と、制御部(例えば、後述の制御部30)と、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を記憶する記憶部(例えば、後述の記憶部31)と、を備え、前記制御部は、前記無線部を介して、船舶に乗船するユーザの携行する前記無線通信端末から前記無線通信端末の位置情報と前記船舶の大きさの情報とを受信する船舶情報受信部(例えば、後述の現在位置情報処理部302)と、前記船舶の大きさに対応させて、前記船舶の時系列の位置情報からなる航行軌跡情報を作成する航行履歴作成更新部(例えば、後述の航行履歴作成更新部304)と、前記航行履歴作成更新部により作成された航行軌跡情報を入力として、前記記憶部に記憶されている、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を更新する航路情報作成更新部(例えば、後述の航路情報作成更新部305)と、を備えることを特徴とするサーバシステム。
【0015】
(1)のサーバシステムによれば、無線通信端末2から受信した、船舶の大きさ及び船舶の航行軌跡に基づいて、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を作成更新することができる。そうすることで、AISが受信できる装置やナビゲーションシステム等の装置を装備する代わりに、スマートフォン等の無線通信端末に実装可能なシステムで、船舶の種類に応じて、過去に実績のある航路情報(海路地図)を提供することができる。
【0016】
(2)前記船舶情報受信部(例えば、後述の現在位置情報処理部302)は、さらに、前記無線通信端末(例えば、後述の無線通信端末2)から前記船舶の大きさの情報の信頼度を受信し、前記航路情報作成更新部(例えば、後述の航路情報作成更新部305)は、さらに前記航行履歴作成更新部(例えば、後述の航行履歴作成更新部304)により前記船舶の大きさに対応させて作成された航行軌跡情報と前記船舶の大きさの情報の信頼度とを入力として、前記記憶部(例えば、後述の記憶部31)に記憶されている、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を更新することを特徴とする(1)に記載のサーバシステム。
【0017】
(2)のサーバシステムによれば、例えば、ユーザの手入力により、仮に間違った排水量を入力(申告)した場合であっても、情報の信頼度に基づいて、より適切な航路情報を更新することができる。
【0018】
(3)前記記憶部(例えば、後述の記憶部31)は、さらに、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報とともに前記航路情報の過去の航行実績に基づく実績レベルを記憶し、前記航路情報作成更新部(例えば、後述の航路情報作成更新部305)は、さらに、前記船舶の大きさごとに航行可能な航路情報の過去の航行実績に基づく実績レベルを更新することを特徴とする(1)又は(2)に記載のサーバシステム。
【0019】
(3)のサーバシステムによれば、例えば、無線通信端末において、過去の航行実績の大きい実績レベルの高い航路を太い線で表示させることができ、例えば陸上における広い幹線道路と同様に、ユーザに対してより安全な航路を効果的に示すことができる。
【0020】
(4)無線部(例えば、後述の無線部32)と、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を記憶する記憶部(例えば、後述の記憶部31)と、制御部(例えば、後述の制御部30)とを備える、無線通信端末(例えば、後述の無線通信端末2)に通信可能に接続されるサーバシステム(例えば、後述のサーバシステム3)が前記記憶部に記憶されている、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を更新する航路情報作成更新方法であって、前記制御部により、前記無線部を介して、船舶に乗船するユーザの携行する前記無線通信端末から前記無線通信端末の位置情報と前記船舶の大きさの情報とを受信する船舶情報受信ステップと、前記船舶の大きさに対応させて、前記船舶の時系列の位置情報からなる航行軌跡情報を作成する航行履歴作成更新ステップと、前記航行履歴作成更新ステップにおいて作成された航行軌跡情報を入力として、前記記憶部に記憶されている、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を更新する航路情報作成更新ステップと、を備える航路情報作成更新方法。
【0021】
(5)前記船舶情報受信ステップは、さらに、前記無線通信端末(例えば、後述の無線通信端末2)から前記船舶の大きさの情報の信頼度を受信し、前記航路情報作成更新ステップは、さらに前記航行履歴作成更新ステップにより前記船舶の大きさに対応させて作成された航行軌跡情報と前記船舶の大きさの情報の信頼度とを入力として、前記記憶部に記憶されている、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を更新することを特徴とする(4)に記載の航路情報作成更新方法。
【0022】
(6)前記記憶部は、さらに、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報とともに前記航路情報の過去の航行実績に基づく実績レベルを記憶し、前記航路情報作成更新ステップは、さらに、前記船舶の大きさごとに航行可能な航路情報の過去の航行実績に基づく実績レベルを更新することを特徴とする(4)又は(5)に記載の航路情報作成更新方法。
【0023】
(4)〜(6)の方法によれば、(1)〜(3)のサーバシステムと同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来のナビゲーション技術を応用しつつ、簡易な方法で船舶の種類に応じた海路地図を提供することで、スマートフォン等の無線通信端末に実装可能なシステムを提供し、船舶の航行の安全に寄与することが可能となる。
本発明によれば、海上レジャースポーツにおける初心者にとっては、AISが受信できる装置やナビゲーションシステム等の装置を装備する代わりに、無線通信端末から過去に実績のある航路情報等を利用できることから、海上レジャースポーツにとっての敷居を下げる効果が得られる。
また、船舶の航海情報を逐一、サーバシステムへアップロードしていることから、何らかの問題が発生した際には、当該船舶のそれまでの航行実績を参照することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ナビゲーションシステム100のシステム構成を示す図である。
図2】無線通信端末2の構成を示す図である。
図3】サーバシステム3の構成を示す図である。
図4】排水量が同じ船舶4の、全ての航行軌跡の平均値(例えば複数の航行軌跡の中心点を結ぶところ)を示す図である。
図5】無線通信端末2に表示される、配信された海路案内を表示する画面の例を示す図である。
図6】ナビゲーションシステム100の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、本発明のナビゲーションシステムの好ましい一実施形態について、図1図6を参照しながら説明する。
【0027】
[海上航行支援システムの機能構成]
本発明の好ましい一実施形態に係る海上航行支援システムの構成について説明する。
【0028】
図1に示すように、海上航行支援システムは、二輪車、四輪車乗用車等を含む陸上用の車両1と、プレジャーボート、小型船舶等を含む船舶4と、無線通信端末2と、無線通信端末2とのデータの送受信が可能なサーバシステム3と、を含んで構成される。
【0029】
無線通信端末2は、スマートフォンやタブレット端末、PDA、ノートパソコン、さらには携帯電話を含むその他の携帯可能な電子機器であって、無線通信機能を備える電子機器を含む。
無線通信端末2には、様々なアプリケーションソフトウェアのインストールが可能となっている。本実施例では、車両1や船舶4の種類(特に船舶4の排水量)を近接無線通信手段等によって認識(接続情報を受信)し、サーバシステム3と接続してデータを送受信する。
【0030】
無線通信端末2には、ナビゲーション(ルート案内)等のソフトウェアがインストールされており、無線通信端末2を携行するユーザが車両1に乗車している陸上においては、ユーザの要求に基づき、サーバシステム3から取得した道路地図を表示し、現在位置から目的地までのルート案内をおこなうことができる。
【0031】
また、無線通信端末2には、海路図案内等のソフトウェアがインストールされており、無線通信端末2を携行するユーザが船舶1に乗船している海上においては、ユーザの要求に基づき、サーバシステム3から取得した海図及び航行可能な航路情報を表示し、航行可能な海路案内を行うことができる。
【0032】
なお、ナビゲーション(ルート案内)等のソフトウェア、及び海路図案内等のソフトウェアは、予めインストールされていてもよい。また、サーバシステム3との送受信時に必要に応じて適宜ダウンロードされてもよい。例えば、ナビゲーション(ルート案内)等のソフトウェア、及び海路図案内等のソフトウェアをブラウザ上で動くWebアプリケーションで構築する場合には、サーバシステム3との送受信時に必要に応じて適宜ダウンロードすることができる。
【0033】
サーバシステム3は、通信部32を介して、無線通信端末2とのデータの送受信が可能となっている。また、サーバシステム3には海図及び航行可能な航路情報の他に、後述するように無線通信端末2を通して取得した船舶4の種類(排水量)と航行軌跡を記憶するとともに、航行軌跡から海路地図を書き換えるプログラムや、船舶4の種類から航行可能な航路情報を生成・更新するプログラム、さらに航行可能な航路情報に応じた目的地までのルートを計算するプログラム等が保存されている。
サーバシステム3は、無線通信端末2による要求に基づいて、航行可能な航路情報を無線通信端末2に配信する。
【0034】
本発明の実施形態では、サーバシステム3を1つのサーバとして記載するが、サーバシステム3の各機能を、適宜複数のサーバに分散する、分散処理システムとしてもよい。また、クラウド上で仮想サーバ機能等を利用して、サーバシステム3の各機能を実現してもよい。また、サーバシステム3を、例えば、Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバ等の複数のサーバから構成されるサーバシステムとしてもよい。
【0035】
次にそれぞれの構成について説明する。
【0036】
<無線通信端末2>
図2に示すように、無線通信端末2は、少なくとも、制御部20と、記憶部21と、無線部22と、センサ部23と、表示部24と、入力部25と、を備える。また、無線通信端末2は、近距離無線部26を備えることができる。
【0037】
制御部20はCPU、RAM、ROM、I/O等を有するマイクロプロセッサにより構成される。CPUは、ROM又は記憶部21から読み出した各プログラムを実行し、その実行の際にはRAM、ROM、及び記憶部21から情報を読み出し、RAM及び記憶部21に対して情報の書き込みを行い、無線部22、センサ部23、表示部24、入力部25、及び近距離無線部26等と信号の授受を行う。
詳細については、後述する。
【0038】
記憶部21は半導体メモリ等で構成されており、オペレーティングシステム(OS)やルート案内のための各プログラム、海路図案内のための各プログラム、さらに道路地図情報、道路リンク情報、海図情報、航行可能な航路情報、ユーザにより設定される各種パラメータ、及び位置情報等、種々の情報が記憶される。なお、道路地図情報、道路リンク情報、海図情報、航行可能な航路情報等については、記憶部21に予め記憶しておく構成でもよい。また、サーバシステム3から適宜取得する構成でも良い。
【0039】
無線部22は、DSP(Digital Signal Processor)等を有し、3GやLTE等の携帯電話通信網に代表される無線通信網を通じて無線通信を行い、サーバシステム3と無線通信を行うことが可能に構成されている。なお、携帯電話通信網は陸から例えば15kmほど送受信可能とされる。
無線部22は、無線通信端末2の現在位置情報、サービス加入状態を識別するID(以下、「ユーザID」という)やパスワード、車両情報(例えば、車両ID、車両の種類やナンバープレート等の情報)、車両の状態(例えばイグニッションオンされた状態、走行状態、イグニッションオフされた状態等)、車両の目的地情報、船舶情報(例えば、船舶の名前、船舶の種類、船舶の排水量等)、船舶の状態(例えば航行状態、船舶の進路、船舶の速度、給油量の状態、燃費情報等)等をサーバシステム3に送信し、車両のルート情報、船舶の航行可能な海路地図情報等をサーバシステム3から受信することができる。
【0040】
センサ部23は、GPSセンサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ等から構成される。センサ部23は、現在位置を検出する位置検出手段としての機能を備え、GPSセンサによりGPS衛星信号を受信し、無線通信端末2の現在位置(緯度及び経度)を測位する。
また、GPS通信が不可能な場合、AGPS(Assisted Global Positioning System)通信を利用し、無線部22から取得される基地局情報によって車両1の現在位置を算出することも可能である。
【0041】
表示部24は、液晶ディスプレイ、又は有機ELパネル等の表示デバイスにより構成され、制御部20からの指示を受けて画像を表示する。表示部24は、無線通信端末2の現在位置、記憶部21から読み出された無線通信端末2の現在位置周辺の地図情報(道路地図又は海図)、及び無線部22を介してサーバシステム3から取得した車両1のルート情報及び当該船舶の航行可能な航路情報等の各種情報を表示する。
【0042】
入力部25は、テンキーと呼ばれる物理スイッチや表示部24の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置(図示せず)等で構成される。入力部25からの操作入力、例えばユーザによるテンキーの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号を制御部20に出力することで、立ち寄る施設決定、地図の拡大縮小等の操作を行うことができる。
【0043】
なお、無線通信端末2は、例えばNFC(Near Field Communication)と呼ばれる非接触通信による近距離無線部26を備えることができる。
【0044】
近年、車両1は、近距離無線部等(例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi−Fi等)の自動認識手段を備え、当該近距離無線部を介して車両情報や車両の状態を通知することが可能となっている。
このため、近距離通信部26を備える無線通信端末2は、車両1の近距離無線部等と通信することで、車両情報や車両の状態を取得することが可能となっている。
【0045】
また、プレジャーボートのような船舶1は、近距離無線部等(例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi−Fi等)の自動認識手段を備え、当該近距離無線部を介して船舶情報や位置情報、測位精度情報を通知することが可能となっている。
このため、近距離無線部26を備える無線通信端末2は、船舶2の近距離無線部等と通信することで、船舶情報、船舶の状態等を取得することが可能となる。
【0046】
このように、無線通信端末2は、近距離無線部26により車両1や船舶4と通信することで、ユーザが車両1に乗車中なのか船舶4に乗船中なのか、の情報を取得することが可能となる。なお、図示しないが、近距離無線部26とは別に、有線による近距離通信部を備えることもできる。
【0047】
制御部20は、各プログラム(以下、「ルート案内・海路案内アプリケーション」とも総称する)を実行することによって、無線通信端末2に所定の手段(以下、「ルート案内・海路案内部」とも総称する)として機能させる。例えば、ユーザが車両1に乗車中の場合、ルート案内のための各プログラムが起動されると、センサ部23からの位置情報を使用することで現在位置を表示しながら右左折等を指示するルート案内が可能となる。
また、ユーザが船舶4に乗船中の場合、海路案内のための各プログラムが起動されると、センサ部23(特にGPSセンサ)からの位置情報を使用することで現在位置を表示しながら当該船舶の排水量に応じた、現在位置周辺の航行可能な海路地図の案内が可能となる。また、ナビゲーション(ルート案内)等のソフトウェア、及び海路図案内等のソフトウェアをブラウザ上で動くWebアプリケーションで構築する場合には、これらのソフトウェアはサーバシステム3との送受信時に必要に応じて適宜ダウンロードされ、起動されることで、ルート案内・海路案内が可能となる。
また、制御部20はルート案内・海路案内のための各プログラムを実行することによって、無線通信端末2に、所定の手順(以下、「ルート案内・海路案内手順」とも総称する)を実行させる。
【0048】
以下、制御部20の有する機能をルート案内・海路案内部の観点から説明する。なお、無線通信端末_案内手順(方法)の観点に基づく説明は、「部」を「手順」に置き換えることで説明できるため、省略する。
【0049】
図2に示すように、制御部20は、接続処理部201と、位置情報更新部202と、接続情報取得部203と、ルート設定部204と、ルート案内部205と、を備える。
【0050】
<接続処理部201>
接続処理部201は、ユーザにより、ルート案内・海路案内アプリケーションが起動されると、GPSセンサ等をONにして、サーバシステム3に対して、例えば、ユーザID及びパスワードを用いてログイン処理を実行するとともに、センサ部23により算出した無線通信端末2の現在位置情報、及び計時部(図示せず)から取得した現在時刻情報等をサーバシステム3に送信する。
なお、送信情報として、後述する接続情報取得部203により取得された、当該無線通信端末2を携行するユーザが車両1に乗車中なのか船舶4に乗船中なのか、を示す状態を含むことができる。ユーザが車両1に乗車中の場合には、送信情報として、車両情報や車両の状態を含むことができる。ユーザが船舶4に乗船中の場合には、送信情報として、船舶情報や船舶の状態を含むことができる。
ユーザにより、無線通信端末2のルート案内・海路案内の稼働を終了させることで、ルート案内・海路案内はその機能を停止する。
【0051】
<位置情報更新部202>
無線通信端末2が携帯電話網の通信圏内にある場合、位置情報更新部202は、無線通信端末2のルート案内・海路案内アプリケーションが終了されるまで、ユーザID、センサ部13により算出した無線通信端末2の現在位置情報、及び計時部(図示せず)から取得した現在時刻情報、ユーザが車両1に乗車中の場合には車両の状態を、またユーザが船舶4に乗船中の場合には船舶の状態等を、定期的にサーバシステム3に送信する。
【0052】
なお、無線通信端末2が携帯電話網の通信圏外にある場合、位置情報更新部202は、無線通信端末2のルート案内・海路案内アプリケーションが終了されるまで、ユーザID、無線通信端末2の現在位置情報、現在時刻情報、ユーザが車両1に乗車中の場合には車両の状態を、またユーザが船舶4に乗船中の場合には船舶の状態等を定期的に記憶部21のワークエリアに記録する。
そして、無線通信端末2が携帯電話網の通信圏内に復帰した場合、位置情報更新部202は、通信圏外中にワークエリアに記録した位置情報等をまとめてサーバシステム3にアップロードする。
【0053】
なお、位置情報更新部202は、所定の時間間隔(例えば3秒間隔)で取得する無線通信端末2の現在位置情報及び現在時刻情報、ユーザが車両1に乗車中の場合には車両の状態を、またユーザが船舶4に乗船中の場合には船舶の状態等を、その都度リアルタイムにサーバシステム3に送信するのではなく、複数個まとめて(例えば5分間分の無線通信端末2の現在位置情報及び現在時刻情報等をまとめて)、一度に送信(いわゆるバースト送信)することができる。
なお、無線通信端末2の現在位置情報等の取得時間間隔及び複数個まとめてバースト送信する場合の一度に送信する個数等については、例えばパラメータ設定画面を介して、無線通信端末2の記憶部21に、予めパラメータとして設定することができる。
【0054】
そうすることで、ユーザが船舶4に乗船中の場合に、サーバシステム3は、後述する航行履歴作成更新部304により、無線通信端末2から送信される、無線通信端末2の現在位置情報、現在時刻情報、及び船舶の状態等に基づいて、船舶の種類(排水量)と航行軌跡等からなる航行軌跡情報を作成更新することができる。
【0055】
<接続情報取得部203>
接続情報取得部203は、近距離無線部26を介して車両1や船舶4と通信することで、当該無線通信端末2を携行するユーザが車両1に乗車中なのか船舶4に乗船中なのか、さらにユーザが車両1に乗車中の場合には、車両情報や車両の状態を、またユーザが船舶4に乗船中の場合には、船舶情報や船舶の状態を取得することができる。
【0056】
接続情報取得部203は、近距離無線部26を介してユーザが車両1に乗車中の場合には車両1から取得した車両情報や車両の状態、又はユーザが船舶4に乗船中の場合には船舶4から取得した船舶情報や船舶の状態を、無線部22を介して、サーバシステム3に送信することができる。
そうすることで、サーバシステム3は、後述する乗船判定処理部303により、無線通信端末2から送信される接続情報に基づいて、ユーザが車両1に乗車中なのか船舶4に乗船中なのか、を判定することができる。
ユーザが車両1を下車して、その後船舶4に乗船した場合、後述するように、サーバシステム3の乗船判定処理部303は、ユーザが船舶4に乗船したことを判定し、後述するルート算出部306は、ルート算出を陸上のルート情報から海上の航路情報に切り替える処理を行う。
【0057】
なお、無線通信端末2が、近距離無線部26を介して車両1や船舶4と通信できない場合、接続情報取得部203は、船舶情報(特に船舶の排水量)の入力画面を表示部24に表示する。そうすることにより、接続情報取得部203は、入力画面を介してユーザにより入力された船舶4の、船舶情報(特に船舶の排水量)を取得することができる。
ただしこの場合、間違った排水量等を入力(申告)すると、当該船舶自身が危険であることから、後述するように、サーバシステム3から当該無線通信端末2に配信する航路情報を、入力された排水量の値よりも大きな排水量を想定して送信することが望ましい。
【0058】
このため、接続情報取得部203は、船舶情報(特に船舶の排水量)を船舶情報(特に船舶の排水量)の信頼度情報とともにサーバシステム3に送信する。
なお、船舶情報(特に船舶の排水量)の入力源に関する情報を信頼度情報としてもよい。
その場合、例えば、船舶情報(特に船舶の排水量)を携帯無線端末2が近接無線通信によって取得した場合(すなわち、入力源が近接無線通信の場合)は、信頼度が高く、船舶情報(特に船舶の排水量)を携帯無線端末2が手入力によって取得した場合(すなわち、入力源が手入力の場合)は、信頼度は低い。
なお、手入力以外に、例えば当該船舶4の船舶情報(特に船舶の排水量)を予め携帯無線端末2に登録していた場合(すなわち、入力源が予め登録している場合)は、信頼度を高くしてもよい。このように、船舶情報(特に船舶の排水量)の信頼度情報は、当該データの入力源によって流用することができる。
なお、近距離無線部26により船舶情報(特に船舶の排水量)を取得することができず、また手入力による排水量入力もなされない場合に、仮に海上に出ているとの位置情報がサーバシステム3にアップロードされた場合には、最も安全な航路情報すなわち大きな排水量の船舶用のデータを無線通信端末2に送信することができる。
【0059】
<ルート設定部204>
ルート設定部204は、表示部24を介して、ルート案内のための目的地等を入力するための画面をユーザに対して表示する。その際、ルート設定部204は、センサ部23を用いて、現在位置(緯度及び経度)を特定し、現在位置を出発位置としてデフォルト設定する。ルート設定部204は、入力部25を介してユーザから入力された目的地を設定する。ルート設定部204は、無線部22を介して、目的地の情報等をサーバシステム3に送信する。
【0060】
<ルート案内部205>
ルート案内部205は、前述したように、ユーザが車両1に乗車中の場合、サーバシステム3から受信するルート情報に基づいて、道路ルート案内を実行する。
その後、ユーザが車両1を下車して、船舶4に乗船した場合、前述したように、接続情報取得部203は、無線部22を介して、ユーザが船舶4に乗船したことをサーバシステム3に送信する。
そうすることで、サーバシステム3の乗船判定処理部303により、ルート算出部306のルート設定のモードが陸上用ナビゲーションから海上用のナビゲーションに切り替えられる。後述するように、サーバシステム3のルート算出部306は、無線通信端末2の現在位置(船舶4の現在位置)に基づいて、当該船舶情報(特に船舶の排水量)に見合った航路情報を検索し、選択された航路情報を無線通信端末2に送信する。
そうすることで、ルート案内部205は、ユーザが船舶4に乗船中の場合、サーバシステム3から受信する海図及び船舶4の航行可能な航路情報に基づいて、当該船舶の排水量に応じた、現在位置周辺の航行可能な航路情報の案内を行うことが可能となる。
このように、無線通信端末2によるルート案内を開始した場合は、ユーザが車両1から下車後に、船舶4に乗船した場合は、海路案内を続けることが可能となる。
【0061】
なお、無線通信端末2のルート案内部205によるルート案内又は海路案内を利用しない場合は、ルート案内部205のタスクを終了させてもよい。
【0062】
次に、サーバシステム3について説明する。
<サーバシステム3>
図3に示すように、サーバシステム3は、少なくとも、制御部30と、記憶部31と、通信部32とを、さらに必要に応じて表示部34と、入力部35を備えている。
【0063】
制御部30はCPU、RAM、ROM、I/O等を有するプロセッサにより構成され、各構成部の制御をおこなう。CPUは、RAM、ROM又は記憶部31から読み出したナビゲーションのための各プログラムを実行し、その実行の際にはRAM、ROM、及び記憶部31から情報を読み出し、RAM及び記憶部31に対して情報の書き込みを行い、通信部32と信号の授受を行う。
詳細については、後述する。
【0064】
記憶部31は半導体メモリやハードディスクドライブ等で構成されており、オペレーティングシステム(OS)やアプリケーションと呼ばれるソフトウェアが保存される等、種々の情報が記憶される。このため、記憶部31には、ユーザ情報エリア311、ナビゲーション情報エリア312、航行履歴情報エリア313、接続履歴情報エリア314、外部情報エリア315、道路情報・海路情報エリア316といった、様々な記憶エリアが確保されている。
【0065】
記憶部31のユーザ情報エリア311には、「車両ID」毎に車両情報、また「船舶ID」毎に船舶情報を管理するとともに、「ユーザID」毎にユーザ情報(例えば、家族構成、年齢構成、現住所等)を管理する加入者情報データベース3111が記憶される。
【0066】
記憶部31のナビゲーション情報エリア312には、ユーザが車両1に乗車中のルート案内で利用されるナビゲーションのための道路地図情報、道路リンク情報等が予め格納されている。道路地図情報には、道路及び道路地図等の背景を表示するための表示用地図データ、ノード(例えば道路の交差点、屈曲点、端点等)の位置情報及びその種別情報、各ノード間を結ぶ経路であるリンクの位置情報及びその種別情報、全てのリンクのコスト情報(例えば距離、所要時間等)に関するリンクコストデータ等を含む道路ネットワークデータ等が含まれる。なお、これらの情報は、情報毎にテーブル、ファイル等を設定し、対応するテーブル、ファイル等に格納することができる。
【0067】
同様に、記憶部31のナビゲーション情報エリア312には、航路情報等を表示するための背景となる表示用地図データ(海図)、浅瀬等の情報等が含まれる。なお、これらの情報は、情報毎にテーブル、ファイル等を設定し、対応するテーブル、ファイル等に格納することができる。
【0068】
記憶部31の航行履歴情報エリア313には、後述する航行履歴作成更新部305により、無線通信端末2が海路案内のモードであったときに、無線通信端末2から収集した過去に通過した時系列の位置情報(以下、「航行軌跡情報」ともいう)が船舶ID及び船舶の種類(排水量)等とともに、記憶される。
より具体的には、船舶の種類(排水量)が近距離無線通信で認証された場合の航行実績と、船舶の種類(排水量)がユーザ手入力で認証された場合の航行実績とで、前者の実績データを「実績が高い」とする重み付けを与えたうえで、記憶することができる。
例えば、船舶の種類(排水量)が近距離無線通信で認証された場合の航行実績の重みづけを1とした場合に、船舶の種類(排水量)がユーザ手入力で認証された場合の航行実績の重みづけを例えば、0.5とすることができる。
【0069】
記憶部31の接続履歴情報エリア314には、無線通信端末2の位置情報更新部202からサーバシステム3に対して定期的に送信される位置情報、時刻情報、目的地情報、及び車両1又は船舶の進行方向等をユーザID、車両ID、船舶ID毎に管理する接続履歴レコードが記憶される。
【0070】
また、記憶部31の外部情報エリア315には、定置網等の漁具設置情報、潮位情報、気象情報、緊急情報(沈没船情報)、ライブカメラ(海上保安庁)、海域ごとの釣り規制情報(撒き餌規制、禁漁)などが記憶されている。これらの情報は、サーバシステム3が、情報提供先から適宜収集して最新の情報にアップデートする。なお、これらの情報は、情報毎にテーブル、ファイル等を設定し、対応するテーブル、ファイル等に格納することができる。
また、サーバシステム3は、情報提供先のサーバシステム等から必要な都度、取得するようにしてもよい。
【0071】
記憶部31の道路情報・海路情報エリア316には、後述するルート算出部306が陸上用のモードにあるときに使用する道路情報、及びルート算出部306が海上用のモードにあるときに使用する、船舶の種類(排水量)に応じた、航行可能な航路情報及び航路の実績レベルなどが記憶される。なお、航路の実績レベルについては後述する。
【0072】
通信部32は、無線通信端末との送受信の場合に、無線通信することができる通信プロトコルを実装する。
【0073】
制御部30はルート案内・海路案内アプリケーションのための各プログラムを実行することによって、サーバシステム3に所定の手段(以下、「ルート案内・海路案内制御部」と総称する)として機能させる。
また、制御部30はルート案内・海路案内のための各プログラムを実行することによって、サーバシステム3に、所定のステップ(以下、「ルート案内・海路案内制御ステップ」と総称する)を実行させる。
【0074】
以下、制御部30の有する機能をルート案内・海路案内制御部の観点から説明する。なお、ルート案内・海路案内制御ステップ(方法)の観点に基づく説明は、「部」を「ステップ」に置き換えることで説明できるため、省略する。
【0075】
図3に示すように、制御部30は、ログイン処理部301と、現在位置情報処理部302と、乗船判定処理部303と、航行履歴作成更新部304と、航路情報作成更新部305と、と、ルート算出部306と、ルート通知部307と、を備える。
【0076】
<ログイン処理部301>
ログイン処理部301は、無線通信端末2からのログイン処理を実行して、無線通信端末2と接続処理を行うとともに、無線通信端末2から送信される位置情報、時刻情報、進行方向、及び目的地情報等を管理するための接続履歴レコードを接続履歴情報エリア314に作成する。
なお、無線通信端末2から受信する情報として、ユーザが車両1に乗車中の場合には、車両情報や車両の状態を、またユーザが船舶4に乗船中の場合には、船舶情報や船舶の状態を含むようにすることができる。
【0077】
<現在位置情報処理部302>
無線通信端末2が携帯電話網の通信圏内にある場合、現在位置情報処理部302は、無線通信端末2の位置情報更新部202から定期的に送信されるユーザID、無線通信端末2の現在位置情報、現在時刻情報、ユーザが車両1に乗車中の場合には車両の状態、またユーザが船舶4に乗船中の場合には船舶の状態等を、それぞれ前述した接続履歴レコードに追加更新する。
なお、無線通信端末2が携帯電話網の通信圏外となってから携帯電話網の通信圏内に復帰した場合、現在位置情報処理部302は、無線通信端末2から、通信圏外中に無線通信端末2が記憶部21のワークエリアに記録した位置情報等をまとめて受信し、接続履歴レコードに追加更新する。
そうすることで、無線通信端末2が携帯電話網の通信圏内又は通信圏外に位置するかどうかに関わらず、船舶4が出航してから帰港するまでの位置情報等を接続履歴レコードに追加更新することができる。
なお、後述する航行履歴作成更新部305は、接続履歴レコードを入力として、無線通信端末2から収集した船舶4の航行軌跡情報を、信頼度情報とともに、作成する。ここで、信頼度情報は、例えば、船舶の種類(排水量)が近距離無線部26による自動取得によるか、又はユーザによる手入力によるか等を示す入力源を利用することができる。
【0078】
<乗船判定処理部303>
乗船判定処理部303は、通信部32を介して受信した、車両1又は船舶4との接続情報に基づいて、無線通信端末2を携行するユーザが車両1に乗車した状態か、船舶4に乗船した状態か、車両1にも船舶4にも乗車(乗船)していない状態(以下「他の状態」ともいう)、車両1を下車し船舶4に乗船した状態か、船舶4から下船して車両1に乗車した状態か、といった乗車/乗船状態を判定する。なお、他の状態としては、例えば歩行状態、他の交通機関(例えば、電車、地下鉄、飛行機等)を利用している状態等が挙げられる。
【0079】
乗船判定処理部303は、無線通信端末2を携行するユーザが車両1を下車し船舶4に乗船した状態と判定した場合、ルート算出部306のルート設定のモードを陸上用ナビゲーションから海上用のナビゲーションに切り替える。後述するように、ルート算出部306は、無線通信端末2の現在位置(船舶4の現在位置)に基づいて、当該船舶情報(特に船舶の排水量)に見合った航路情報を検索し、選択する。
【0080】
逆に、乗船判定処理部303は、無線通信端末2を携行するユーザが船舶4を下船し車両1に乗車した状態と判定した場合、ルート算出部306のルート設定のモードを海上用ナビゲーションから陸上用のナビゲーションに切り替える。後述するように、ルート算出部306は、無線通信端末2の現在位置(車両1の現在位置)に基づいて、ルート情報を算出する。
【0081】
<航行履歴作成更新部304>
航行履歴作成更新部304は、接続履歴レコードを入力として、船舶4の航行軌跡情報を、船舶ID、船舶の種類(排水量)、及び排水量情報の信頼度情報とともに作成して、記憶部31の航行履歴情報エリア313に記憶する。なお、航行履歴作成更新部304は、乗船判定処理部303により、無線通信端末2を携行するユーザが船舶4から下船したと判定した場合(乗船した状態から乗船した状態でない状態に移行した場合)に、バッチ処理により、接続履歴レコードを入力として、航行軌跡情報を作成してもよい。
【0082】
<航路情報作成更新部305>
航路情報作成更新部305は、航行履歴作成更新部304により作成された航行軌跡情報を入力として、記憶部31の道路情報・海路情報エリア316に記憶されている、船舶の種類(排水量)に応じた、航行可能な航路情報をアップデートする。
【0083】
道路用ナビでは、「マップマッチング」技術によってGPSによる測位位置を、地図上の道路位置にプロットすることによって測定誤差を吸収する技術が使用されているが、海上には道路のようなトレース可能な目印は存在しておらず、マップマッチング技術は使用できない。そのため、本発明では表示する海路を航行実績の蓄積によってより太く表示し、海路へのマッチングを行わない技術を採用する。
【0084】
具体的には、航路情報作成更新部305は、予め設定された一定期間における、船舶の種類(排水量)が同じとみなされる船舶4をグルーピングする。
次に、航路情報作成更新部305は、予め設定された一定期間における、同一グループに分類された船舶4の航行軌跡から、同じ航行軌跡とみなされる航行軌跡をグルーピングする。なお、この際、同じIDを有する船舶4が同じとみなされる航行軌跡を複数回航行している場合であっても、それぞれの航行軌跡を独立した軌跡として扱う。
ここで一定期間は、必要に応じて適宜設定することができる。
次に、図4に示すように、航路情報作成更新部305は、排水量が同じとみなされた船舶4の、航行軌跡が同じとみなされた全ての航行軌跡の平均値(例えば複数の航行軌跡の中心点を結ぶところ)を算出して、船舶の種類(排水量)が同じとみなされる船舶4の航行可能な航路として設定する。
【0085】
さらに、航路情報作成更新部305は、船舶の種類(排水量)が同じとみなされる船舶4の航行軌跡のうち、同じ航行軌跡とみなして、グルーピングした航行軌跡の個数に基づいて、航行軌跡の個数が少ないときは航路の実績レベルを小さく設定し、航行軌跡の個数が多い航路ほど実績レベルを大きく設定する。
なお、航行軌跡の個数の絶対値に基づいて、実績レベルを設定してもよい。また、航行軌跡の個数の相対的な大きさに基づいて、実績レベルを設定してもよい。
【0086】
航路情報作成更新部305は、例えば、実績レベルをn段階(n>1)とする場合、実績レベルnから実績レベル1まで実績の大きさを設定することができる。
実績レベルの大きい航路は、航行実績を積み重ねることで、より通りやすい航路であることが推定されることから、実績レベルの大きい航路は、陸上の道路に例えると、幅広い幹線道路と同様の扱いとすることができる。
なお、実績レベルの段階数等については、必要に応じて適宜設定することができる。
そうすることで、図4図5に示すように、無線通信端末2のルート案内部205が、海図を表示して、航路を表示する際に、実績レベルの小さい航路については、航路を細い線で表示し、実績レベルが大きい航路ほど、太い線で表示させることができる。
【0087】
なお、航路情報作成更新部305は、船舶の種類(排水量)が近距離無線通信で認証された場合の航行軌跡の個数のカウントと、船舶の種類(排水量)がユーザ手入力で認証された場合の航行軌跡の個数のカウントとで、それぞれ信頼度による重み付けを与えたうえで蓄積することが好ましい。
より具体的には、例えば、船舶の種類(排水量)が近距離無線通信で認証された場合の航行軌跡の個数に対する信頼度による重み付けを1として、船舶の種類(排水量)がユーザ手入力で認証された場合の航行軌跡の個数に対する信頼度による重み付けを0.5とした場合、グルーピングした航行軌跡の個数をカウントする際に、ユーザ手入力で認証された場合の航行軌跡の個数を0.5としてカウントすることができる。なお、信頼度による重み付けの値は必要に応じて適宜設定することができる。
【0088】
<船舶の種類(排水量)が同じとみなされる船舶について>
予め、排水量を同じとみなすための排水量の範囲(上限値と下限値)を複数設定し、2つの船舶の排水量が同一の範囲に属する場合に、航路情報作成更新部305は、当該2つの船舶の排水量を同じとみなすことができる。
例えば、20トン未満の船舶の排水量を、5トン未満の排水量、5トン以上10トン未満の排水量、10トン以上15トン未満の排水量、及び15トン以上20トン未満の排水量と5トン単位で、排水量範囲を区分けした場合、航路情報作成更新部305は、2つの船舶の排水量が各区分けされた同じ範囲内の排水量である場合に、2つの船舶の排水量を同じとみなすようにすることができる。
また、20トン以上50トン未満の船舶については、例えば20トン以上30トン未満の排水量、30トン以上40トン未満の排水量、40トン以上50トン未満の排水量と10トン単位の幅で排水量範囲を区分けした場合、航路情報作成更新部305は、2つの船舶の排水量が各区分けされた同じ範囲内の排水量である場合に、2つの船舶の排水量を同じとみなすようにすることができる。以下、同様に適宜設定することができる。
なお、航路情報作成更新部305は、2つの船舶の排水量が同一の値の場合にのみ、同じ排水量とみなすようにしてもよい。
排水量を同じとみなすための排水量の範囲(上限値と下限値)については、必要に応じて適宜設定することができる。
【0089】
<同じ航行軌跡とみなされる航行軌跡について>
排水量が同じとみなされる2つの船舶4の航行軌跡が予め設定した許容範囲内に存在する場合に、航路情報作成更新部305は、2つの航行軌跡を同じ航行軌跡とみなすことができる。なお、許容範囲の値は、船舶の排水量の大きさに応じて、例えば、排水量の小さな船舶については100m、排水量の大きな船舶については、200m等のように、必要に応じて適宜設定することができる。
【0090】
<航路の表示について>
航路の実績レベルに応じて、予め海図上に表示する際の航路を示す線の太さを予め設定しておくことができる。なお、線の太さは、海図の縮尺に応じて適宜設定することが好ましい。
そうすることで、無線通信端末2のルート案内部205は、航路を海図上に表示する際に、航路を示す線の太さを当該航路の実績レベルに応じて表示する。
【0091】
<航路情報のアップデートについて>
前述したように、航路情報作成更新部305は、予め設定された一定期間における、船舶の種類(排水量)が同じとみなされる船舶4の航行軌跡に基づいて、航路情報を作成する。
航路情報作成更新部305は、予め定めた期間毎(例えば、1か月ごと)に、航路情報を再作成して、再作成した情報により航路情報をアップデートすることができる。
また、前回算出した際の航行軌跡の個数に今回新たに追加される航行軌跡を追加することで、航行軌跡の個数をアップデートすることができる。この場合、航行軌跡の個数は、毎回増加することから、航路の実績レベルを、航行軌跡の個数の相対的な大きさに基づいて設定することができる。
【0092】
なお、予め定めた期間については、必要に応じて適宜設定することができる。
【0093】
<ルート算出部306>
ユーザが車両1に乗車する場合、ルート算出部306は、車両1の現在位置からユーザにより設定された目的地までのルート情報を算出する。ルート情報の算出に際しては、記憶部31のナビゲーションエリアに記憶されている交通情報や地図情報を用いて、到着時刻や有料道路の使用有無等の各種条件を加味したうえで最適なルートを算出する。
ここで最適なルートとは、例えば最も到着時間が短くなる、距離が最も短い、一般道路を優先する、有料道路を優先する、有料道路等の料金が少ない、CO2排出量が少ない等、ユーザの指定する目的とする条件を最も満たすルートのことである。
【0094】
これに対して、ユーザが船舶4に乗船する場合、ルート算出部306は、次のように航路案内情報を算出する。
以下、ルート算出部306における航路案内情報を算出する処理部分を海路地図情報選択部ともいう。
サーバシステム3のルート算出部306(海路地図情報選択部)は、無線通信端末2の接続情報取得部203から受信した情報に基づいて、例えば乗船中であると判定された場合には船舶情報(特に船舶の排水量)をもとに適切な航路情報を無線通信端末2に送信する。
例えば、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、無線通信端末2の現在位置(船舶4の現在位置)に基づいて、当該船舶情報(特に船舶の排水量)に見合った航路情報を記憶部31の道路情報・海路情報エリア316を検索して、検索して選択された航路情報を当該航路の実績レベルとともに無線通信端末2に送信する。
【0095】
なお、船舶4側に近接無線通信等による船舶の種類(排水量)の自動認識手段が備えられていない場合、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、ユーザの手入力による船舶の種類(排水量)に基づいて、航路情報を選択することになる。この場合、間違った排水量を入力(申告)すると、自身が危険であるとともに、前述したように、航行実績に基いて他の船に誤った情報が送信されるおそれがあるため、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、配信する航路情報を、手入力値よりも大きな排水量を想定して送信することができる。
また、近接無線通信等による船舶の種類(排水量)の自動認識手段も、手入力による船舶の種類(排水量)の入力もなされない場合であって、無線通信端末2から、海上に出ているとの位置情報がサーバシステム3にアップロードされた場合には、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、最も安全な海路地図すなわち大きな排水量の船舶用の航路情報を無線通信端末2に送信することができる。
【0096】
ただし、前述したように、水深は潮の満ち引きによっても変化することから、日時と排水量との条件によって、航行できる海路が変化する。また、魚網上を通過する航路についても、航行ができない可能性がある。また、気象情報例えば、波浪情報から航路として避ける必要が生じる。
【0097】
このため、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、記憶部31の外部情報エリア315に記憶されている、定置網等の漁具設置情報、潮位情報、気象情報、緊急情報(沈没船情報)、ライブカメラ(海上保安庁)、海域ごとの釣り規制情報(撒き餌規制、禁漁)などを参照して、航路情報を提供する。
例えば、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、現時点の潮見情報を参照することで、例えば干潮、満潮の高低差が異なり、干潮時は、暗礁に乗り上げる可能性がある航路については、選択された航路情報から除くか、または警告を行う処理を行う。
また、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、現時点の定置網等の漁具設置情報を参照することで、魚網上を通過する可能性がある航路については、選択された航路情報から除くか、または警告を行う処理を行う。
次にルート算出部306(海路地図情報選択部)は、気象情報例えば、波浪情報を参照することで、危険地帯を通過する可能性がある航路については、選択された航路情報から除くか、または警告を行う処理を行う。
【0098】
また、船舶1や無線通信端末2から例えば、目的地までの航路情報の要求があった場合、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、前述したように、航路情報を選択するとともに、危険な航路を除くか、または警告を行う処理を行うとともに、例えば船舶情報及び船舶の状態から得られる給油量の状態と燃費情報とから目的地あるいは経由地を通過できない、あるいは出発地に戻ってこれないと判断した場合、注意喚起した状態で航路情報を提供することができる。なお、目的地までの航路情報が存在しない場合については、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、船舶の近辺の航路情報を選択するに留めることができる。
【0099】
なお、図示しないが、海上には携帯電話網の基地局が存在しないため、沖に出すぎることで通信圏外となる危険性も高くなる。したがって、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、無線通信端末2に対する最初の航路情報配信時に、安全に航行できる最小限の航路情報をまとめて配信することで、最小限の安全を確保することができる。
なお、無線通信端末2が携帯電話網の通信圏内にあるときは、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、航路情報を常に最新の情報に置き換えて、最新の航路情報を送信することができる。
【0100】
また、ユーザが、車両1を下車し船舶4に乗船した場合、前述したように、乗船判定処理部303は、無線通信端末2を携行するユーザが船舶4に乗船した状態と判定し、ルート算出部306のルート設定のモードを陸上用ナビゲーションから海上用のナビゲーションに切り替える。こうすることで、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、無線通信端末2の現在位置(船舶4の現在位置)に基づいて、当該船舶情報(特に船舶の排水量)に見合った航路情報を検索し、選択することができる。
【0101】
逆に、ユーザが船舶4を下船し車両1に乗車した状態と判定した場合、前述したように、乗船判定処理部303は、無線通信端末2を携行するユーザが車両1に乗車した状態と判定し、ルート算出部306のルート設定のモードを海上用ナビゲーションから陸上用のナビゲーションに切り替える。こうすることで、ルート算出部306は、無線通信端末2の現在位置(車両1の現在位置)に基づいて、ルート情報を算出することができる。
【0102】
<ルート通知部307>
ルート通知部307は、通信部32を介して、ルート算出部306により算出されたルート情報又は航路案内情報を無線通信端末2に送信する。
ユーザは車両1から下車後に、徒歩や公共交通機関を使用した場合でも無線通信端末2により、ルート案内を続けることが可能となる。
また、ユーザが、車両1を下車し船舶4に乗船した場合でも、前述したように、ルート算出部306のルート設定のモードが陸上用ナビゲーションから海上用のナビゲーションに切り替えられることから、ルート算出部306(海路地図情報選択部)は、前述したように、航路案内情報を算出して、ルート通知部307は、通信部32を介して、ルート算出部306により算出された航路案内情報を無線通信端末2に送信する。
このように、ユーザが車両1から下車後に、船舶4に乗船した場合でも無線通信端末2により、ルート案内(航路案内)を続けることが可能となる。
逆に、ユーザが船舶4から下船後に、車両1に乗車した場合でも無線通信端末2により、ルート案内(道路案内)を続けることが可能となる。
【0103】
以上、本発明のナビゲーションシステム100の各機能部の実施形態を、無線通信端末2、サーバシステム3の構成に基づいて説明した。しかしながら、本発明のサーバシステム3の備える各機能部の実施形態は、1台のコンピュータでも、1箇所にある又は数箇所に分散され、通信ネットワークによって相互接続された多数のコンピュータでも分散して実行するように展開できる。また、クラウド上の複数の仮想コンピュータを用いて構成することもできる。
【0104】
サーバシステム3の備える各機能は、どのコンピュータでも実行することが可能である。したがって、サーバシステム3の備える各機能をどのコンピュータに割り振るか、については、当業者が適宜設計できる。
例えば、サーバシステム3を、例えば、Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバと複数のサーバから構成されるサーバシステムとしてもよい。
この場合、例えばログイン処理部301とルート通知部307をWebサーバに、現在位置情報処理部302と、乗船判定処理部303と、航行履歴作成更新部304をアプリケーションサーバに、また航路情報作成更新部305と、ルート算出部306をデータベースサーバで実行するようにしてもよい。
【0105】
(ナビゲーションシステム100の動作)
以上、ナビゲーションシステム100の構成について説明した。続いて、ユーザが船舶4に乗船中におけるナビゲーションシステム100の動作について説明する。図6は、ナビゲーションシステム100の海路案内処理の流れを示すフローチャートである。
【0106】
図6を参照してナビゲーションシステム100の海路案内処理について説明する。
ステップS101において、無線通信端末2(接続処理部101)は、サーバシステム3にログイン要求(接続要求)を送信し、現在位置及び現在時刻等を送信する。
【0107】
ステップS301において、サーバシステム3(ログイン処理部301)は、無線通信端末2と接続処理を行い、無線通信端末2から受信した現在位置及び現在時刻等を管理するための接続履歴レコードを接続履歴情報エリア314に作成する。
【0108】
ステップS102において、無線通信端末2(接続情報取得部203)は、近距離無線部26を介して、当該無線通信端末2を携行するユーザが車両1に乗車中なのか船舶4に乗船中なのか、を示す乗車/乗船状態を取得する。
【0109】
ステップS103において、無線通信端末2(接続情報取得部203)は、近距離無線部26を介して取得した乗車/乗船状態に基づいて、車両情報や車両の状態、又はユーザが船舶4に乗船中の場合には船舶4から取得した船舶情報とその信頼度、及び船舶の状態を、無線部22を介して、サーバシステム3に送信する。ここでは、乗船状態であるとする。
【0110】
ステップS302において、サーバシステム3(乗船判定処理部303)は、無線通信端末2を携行するユーザが船舶4に乗船した状態と判定し、ルート算出部306のルート設定のモードを海上用のナビゲーションに切り替える。
【0111】
ステップS104において、無線通信端末2(位置情報更新部202)は、無線通信端末2の現在位置情報、現在時刻情報、船舶の状態等を、サーバシステム3に送信する。
【0112】
ステップS303において、サーバシステム3(現在位置情報処理部302)は、無線通信端末2(位置情報更新部202)から送信されるユーザID、無線通信端末2の現在位置情報、現在時刻情報、船舶の状態等を、接続履歴レコードに追加更新する。
また、サーバシステム3(現在位置情報処理部302)は、無線通信端末2(位置情報更新部202)から送信される、当該無線通信端末2の通信圏外中に無線通信端末2が記憶部21のワークエリアに記録した位置情報等をまとめて受信し、接続履歴レコードに追加更新する。
【0113】
ステップS304において、サーバシステム3(ルート算出部306)は、無線通信端末2の現在位置(船舶4の現在位置)に基づいて、当該船舶情報(特に船舶の排水量)に見合った航路情報を検索し、選択する。
【0114】
ステップS305において、サーバシステム3(ルート算出部306)は、現時点の潮見情報を参照することで、暗礁に乗り上げる可能性がある航路については、選択された航路情報から除くか、または警告を行う処理を行う。
【0115】
ステップS306において、サーバシステム3(ルート算出部306)は、現時点の定置網等の漁具設置情報を参照することで、魚網上を通過する可能性がある航路については、選択された航路情報から除くか、または警告を行う処理を行う。
【0116】
ステップS307において、サーバシステム3(ルート算出部306)は、気象情報例えば、波浪情報を参照することで、危険地帯を通過する可能性がある航路については、選択された航路情報から除くか、または警告を行う処理を行う。
【0117】
ステップS308において、サーバシステム3(ルート通知部307)は、通信部32を介して、ルート算出部306により算出された航路案内情報(海図及び船舶4の航行可能な航路情報)を無線通信端末2に送信する。
その後、ステップS303に移る。
【0118】
ステップS105において、無線通信端末2(ルート案内部205)は、サーバシステム3から受信した航路案内情報に基づいて、当該船舶の排水量に応じた、現在位置周辺の航行可能な航路情報の案内を行う。
【0119】
ステップS106において、無線通信端末2は、携帯電話網の通信圏内にあるか否かを判定する。無線通信端末2が携帯電話網の通信圏内にある場合(Yes)には、ステップS104へ移る。無線通信端末2が携帯電話網の通信圏外にある場合(No)には、ステップS107へ移る。
【0120】
ステップS107において、無線通信端末2(位置情報更新部202)は、ユーザID、無線通信端末2の現在位置情報、現在時刻情報、船舶の状態等を記憶部21のワークエリアに記録する。
【0121】
ステップS108において、無線通信端末2は、携帯電話網の通信圏内にあるか否かを判定する。無線通信端末2が携帯電話網の通信圏内にある場合(Yes)には、ステップS109へ移る。無線通信端末2が携帯電話網の通信圏外にある場合(No)には、ステップS107へ移る。
【0122】
ステップS109において、無線通信端末2(位置情報更新部202)は、無線通信端末2が携帯電話網の通信圏外中にワークエリアに記録した位置情報等をまとめてサーバシステム3にアップロードする。
【0123】
ステップS303において、サーバシステム3(現在位置情報処理部302)は、無線通信端末2から、通信圏外中に無線通信端末2が記憶部21のワークエリアに記録した位置情報等をまとめて受信し、接続履歴レコードに追加更新する。
その後、ステップS304に移る。
【0124】
以上説明したナビゲーションシステム100によれば、以下のような効果を奏する。
【0125】
(1)上記実施形態のナビゲーションシステム100によれば、無線通信端末2から受信した、船舶4の大きさ及び船舶の航行軌跡に基づいて、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を作成更新することができる。そうすることで、AISが受信できる装置やナビゲーションシステム等の装置を装備する代わりに、スマートフォン等の無線通信端末に実装可能なシステムで、船舶の種類に応じて、過去に実績のある航路情報(海路地図)を提供することができる。無線通信端末2から受信した船舶4の大きさと無線通信端末2の現在位置(船舶4の現在位置)に基づいて、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を更新することができる。
【0126】
(2)上記実施形態のナビゲーションシステム100によれば、船舶の大きさの情報の信頼度を入力として、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報を更新する。
これにより、例えば、ユーザの手入力により、仮に間違った排水量を入力(申告)した場合であっても、情報の信頼度に基づいて、より適切な航路情報を更新することができる。
【0127】
(3)上記実施形態のナビゲーションシステム100によれば、航路情報の過去の航行実績に基づく実績レベルを記憶し、航路情報作成更新部305は、さらに、船舶の大きさごとに航行可能な航路情報の過去の航行実績を更新する。
これにより、例えば、無線通信端末2において、過去の航行実績の大きい実績レベルの高い航路を例えば太い線で表示させることができ、例えば陸上における広い幹線道路と同様に、ユーザに対してより安全な航路を効果的に示すことができる。
【0128】
(4)上記実施形態のナビゲーション方法によれば、(1)のナビゲーションシステム100と同様に、AISが受信できる装置やナビゲーションシステム等の装置を装備する代わりに、スマートフォン等の無線通信端末に実装可能なシステムで、船舶の種類に応じて、過去に実績のある航路情報(海路地図)を提供することができる。
【0129】
(5)上記実施形態のナビゲーション方法によれば、(2)のナビゲーションシステムと同様に、例えば、ユーザの手入力により、仮に間違った排水量を入力(申告)した場合であっても、情報の信頼度に基づいて、より適切な航路情報を更新することができる。
【0130】
(6)上記実施形態のナビゲーション方法によれば、(3)のナビゲーションシステム100と同様に、無線通信端末2において、過去の航行実績の大きい実績レベルの高い航路を例えば太い線で表示させることができ、例えば陸上における広い幹線道路と同様に、ユーザに対してより安全な航路を効果的に示すことができる。
【0131】
本発明のナビゲーションシステムは、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図2及び図3の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、本発明のナビゲーション機能に関する一連の処理を全体として実行できる機能がサーバシステム3に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図2及び図3の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組合せで構成してもよい。
【0132】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータであってもよい。
【0133】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア31により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディア31は、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、ブルーレイディスク、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)、等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている図2の記憶部21、図3の記憶部31に含まれるハードディスク等で構成される。
【符号の説明】
【0134】
100 ナビゲーションシステム
1 車両
2 無線通信端末
20 制御部
201 接続処理部
202 位置情報更新部
203 接続情報取得部
204 ルート設定部
205 ルート案内部
21 記憶部
22 無線部
23 センサ部
24 表示部
25 入力部
26 近距離無線部
3 サーバシステム
30 制御部
301 ログイン処理部
302 現在位置情報処理部
303 乗船判定処理部
304 航行履歴作成更新部
305 航路情報作成更新部
306 ルート算出部
307 ルート通知部
31 記憶部
311 ユーザ情報エリア
312 ナビゲーション情報エリア
313 航行履歴情報エリア
314 接続履歴情報エリア
315 外部情報エリア
316 道路情報・海路情報エリア
32 通信部
4 船舶
図1
図2
図3
図4
図5
図6