特許第6009062号(P6009062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6009062送信アンテナ部材と受信アンテナ部材とを備えたアンテナモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009062
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】送信アンテナ部材と受信アンテナ部材とを備えたアンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20161006BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20161006BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   H01Q1/22 B
   H01Q1/32 Z
   H01Q1/42
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-512044(P2015-512044)
(86)(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公表番号】特表2015-516786(P2015-516786A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】EP2013059985
(87)【国際公開番号】WO2013171240
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2014年12月15日
(31)【優先権主張番号】102012208303.0
(32)【優先日】2012年5月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(73)【特許権者】
【識別番号】514291288
【氏名又は名称】カトライン−ヴェアケ コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】KATHREIN−WERKE KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ガイ−エイマー チャカム
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト シルマイアー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ミアケ
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート フォークト
【審査官】 岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01863119(EP,A1)
【文献】 独国特許出願公開第04403643(DE,A1)
【文献】 実開昭64−005504(JP,U)
【文献】 特開2004−040166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q1/22−26
H01Q1/32
H01Q1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナモジュールであって、
当該アンテナモジュールは一体型部品であり、かつ、少なくとも1つの外側の受信アンテナ部材および/または送信アンテナ部材(4、5、6、7)を外側カバー(3)の下に有しており、かつ、アンテナボックス(8)を含んでおり、
当該アンテナボックスは電子回路を包囲しており、
当該電子回路は、前記アンテナ部材(4〜7)と協働し、
前記外側カバー(3)は、前記アンテナボックス(8)上に取り外し可能に固定されており、
前記外側カバー(3)は、車両の屋根(10)内の開口部(9)を通って、当該車両の屋根(10)から突出して取り付け可能であり、
前記アンテナボックス(8)は、全面で閉鎖されて、前記車両の屋根(10)の下方に、金属製の上面(11)で以て取り付け可能であり、
前記アンテナボックス(8)の前記金属製の上面(11)は、前記外側のアンテナ部材(4〜7)のために貫通孔(12〜15)を有しており、
前記外側カバー(3)内の前記外側のアンテナ部材(4〜7)は、前記全面が閉鎖されているアンテナボックス(8)内の回路と当該貫通孔(12〜15)を介して電気的に結合されている、
ことを特徴するアンテナモジュール。
【請求項2】
前記アンテナボックス内に、少なくとも1つのアンテナ基板(16)が配置されており、当該アンテナ基板には、前記電子回路が設けられており
当該アンテナ基板には、アンテナ部材(4、5、6、7並びに31および32)がはんだ付けされている、請求項1記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
前記アンテナボックス(8)は、上方部分(17)と下方部分(18)とを有しており、
前記上方部分(17)は前記金属製の上面(11)と側面(19、20)とを有しており、当該上方部分の側面は、前記下方部分(18)の側面(21、22)と部分的に重畳している、請求項1または2記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記外側カバー(3)は、背びれ状に形成されており、かつ、スナップのツメ部(23)とスナップの係止部(24)とを介して、機械的に取り外し可能に前記アンテナボックス(8)と接続されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記上方部分(17)の前記金属製の上面(11)における前記貫通孔(12〜15)は、前記外側カバー(3)内の前記アンテナ部材(4〜7)の給電点(25〜28)のために貫通孔を有している、請求項記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
前記アンテナボックス(8)内の前記アンテナ基板(16)の、車両内部空間(30)に向けて配向されている下面(29)に、少なくとも1つの別のアンテナ部材(31、32)が、車両内通信のために配置されている、請求項記載のアンテナモジュール。
【請求項7】
前記アンテナボックス(8)内の前記アンテナ基板(16)の、車両内部空間(30)に向けて配向されている下面(29)に、シールド板(33)によって包囲されている増幅器回路アンテナ整合回路、トランシーバー、受信器またはチューナーが配置されている、請求項記載のアンテナモジュール。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアンテナ基板(16)は、印刷された電子回路を自身の上面(34)に有しており、
前記アンテナ基板(16)は、間隔保持部(35)を介して、前記アンテナボックス(8)の上方部分(17)に固定されており、
前記アンテナ基板の上面(34)の前記印刷された電子回路は、前記アンテナ基板(16)の、車両内部空間(30)に向けて配向されている前記下面(29)に設けられている増幅器部材、前記トランシーバー、前記チューナーまたは前記受信器と前記アンテナ基板(16)を通るスルーホールを介して電気的に接続されている、請求項7記載のアンテナモジュール。
【請求項9】
CAN(controlled area network)バス給電線、LIN(local interconnect network)接続、MOST(media oriented system transport)端子、USB(universal serial bus)インタフェースまたはイーサーネットアクセスのためのプラグイン接続部(36〜42)が、前記アンテナボックス(8)の下方部分(18)の側面(21、22)から、車両内部空間(30)内に突出し、前記プラグイン接続部を介して、前記車両(50)内の端末機器との通信の少なくとも一部が行われる、請求項1から8までのいずれか1項記載のアンテナモジュール。
【請求項10】
前記アンテナボックス(8)の下方部分(18)は、電気的絶縁性のプラスチック材料を含んでいる、請求項3から9までのいずれか1項記載のアンテナモジュール。
【請求項11】
前記アンテナモジュール(1、2)は、
・電話、
・AM/FM(amplitude modulation system/frequency modulation system)、
・DAB(digital audio broadcastingplayer)、
・SDARS(satellite digital audio radio system)、
・GPS(global positioning system)、
・WLAN(wireless aria network)、
・LTE2×MIMO(long term evolution two times multiple input multiple output)、
・WIMAX(worldwide interoperability for microwave access)、
・DRM(digital radio mondiale)、
・UMTS(universal mobile telecommunication system)、
・Bluetooth(digital wireless data exchange)、
・RKE(remote keyless entry)、
・RSS(remote starting system)、
・PASE(passive start entry)、
・VHS(vehicle heating system)、
・C2C(car to car communication system)、
・ACC(automatic cruise control)、
・TPMS(tire pressure monitoring system)
から成るグループからの、車両内で生じる少なくとも4つの無線サービスの電波送受信する、請求項1から10までのいずれか1項記載のアンテナモジュール。
【請求項12】
電話アンテナおよびRKEアンテナは、前記外側カバー(3)内に突出するプレートを有しており、
当該プレートは、前記アンテナボックス(8)の上面に対して垂直であり、かつ、自身の脚部領域において陥入部を有しており、当該陥入部内には、パッチアンテナであるGPSアンテナが配置されている、請求項11記載のアンテナモジュール。
【請求項13】
GPSパッチアンテナが、前記アンテナボックス(8)の上方部分(17)上の、外側シールドチャンバ(43)上に配置されており、当該シールドチャンバは、増幅器回路および/またはアンテナ整合回路を包囲している、請求項11または12記載のアンテナモジュール。
【請求項14】
パッチアンテナであるSDARSアンテナが、GPSパッチアンテナと間隔を空けて、前記アンテナボックス(8)の上方部分(17)上の、複数の外側シールドチャンバのうちの1つ(44)の上に配置されており、
当該シールドチャンバ(44)は、増幅器および/またはアンテナ整合回路を包囲している、請求項11から13までのいずれか1項記載のアンテナモジュール。
【請求項15】
前記アンテナボックス(8)の前記上面(11)は金属製の発泡材料または導電性の発泡プラスチックから成る結合部材(45、46)を有しており、当該結合部材によって、前記アンテナボックス(8)の上面(11)を、車両の屋根(10)の内側面(47)の湾曲に合わせることができる、請求項1から14までのいずれか1項記載のアンテナモジュール。
【請求項16】
前記アンテナボックスは、金属および/またはプラスチックを含んでいる、請求項1から15までのいずれか1項記載のアンテナモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの送信アンテナ部材と少なくとも1つの受信アンテナ部材とを備えたワンピースのアンテナモジュールに関する。このアンテナモジュールは、外側アンテナ部材用の外側カバーを有している。アンテナボックスは、電子回路を含んでいる。この電子回路は、アンテナ部材と協働する。外側カバーはアンテナボックス上に取り外し可能に固定されている。外側カバーは、車両の屋根内の開口部を通じて、車両の屋根から突出するように取り付けることができる。
【0002】
文献EP1903632B1号から、アンテナモジュール、殊に、複数のアンテナと、複数の送信装置および/または受信装置を有する車両用の、中央の送信モジュールおよび/または受信モジュールとしてのアンテナモジュールが公知である。このために、送信装置および/または受信装置は、中央のトランシーバーボックスの形態で、アンテナモジュール内に組み込まれている。さらに、アンテナモジュールは、上方部分と下方部分とを有しており、これらの部分はそれぞれ、複数のアンテナを有している。これらのアンテナは、車両のボディーの領域によって分断されている。ここでは、上方領域のための基板が、下方領域のための基板から、コネクターまたは間隔保持部によって離されている。
【0003】
公知のアンテナモジュールの有利な実施形態では、トランシーバーボックスは、ボディー部分の下面にねじ止めされている。ここでこのボディー部分は、外側へ、大面積の開口部を有している。この開口部内には、送信アンテナと受信アンテナとを有するアンテナモジュールの上方部分が、特定のサービスのために配置されている。アンテナモジュールのこの実施形態は、以下の欠点を有している。すなわち、
1.2つの基板が使用されており、これによって、高い周波数で使用可能な接続コネクターが、2つの基板に対して必要になる。
2.キャビン空間内への外部アンテナの放射の恐れがある。
3.遮断面を含んだ、HF接続コネクターのための場所が必要なので、大きい基板面積(上面も下面も)が必要になる。
4.2つの基板、接続コネクターおよび取り付けステップが必要となるので、極めて高いコストがかかる。
5.屋根の湾曲を補償することができなくなる。
【0004】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服し、組み込み部分として車両の屋根領域内に低コストかつコンパクトに取り付け可能であり、かつ、上方の外側アンテナ部分と車両の屋根の内面に固定されているトランシーバー部分との間の完全なシールドを提供する、車両用のアンテナモジュールを提供することである。
【0005】
上述の課題は、独立請求項1の特徴部分の構成によって解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明の1つの実施形態では、ワンピースであるアンテナモジュールは、少なくとも1つの外側の受信アンテナ部材および/または送信アンテナ部材を、外側カバーの下に有している。さらに、ワンピースのアンテナモジュールは、アンテナボックスを含んでいる。ここでこのアンテナボックスは、内側の内部アンテナを有していない、または、僅かな、内側の内部アンテナを有しており、さらに電子回路を含んでいる。この電子回路は、アンテナ部材と協働する。外側カバーは、アンテナボックス上に、取り外し可能に取り付けられている。外側カバーは、車両の屋根内の開口部を通って、車両の屋根から突出して取り付け可能である。アンテナボックスは、全面で閉鎖されており、車両屋根の下に、金属製の上面で以て取り付け可能である。アンテナボックスの金属製の、閉鎖された上面は、外側のアンテナ部材のために、貫通孔を有している。この貫通孔を介して、外側カバー内の外側のアンテナ部材が、全面が閉鎖されたアンテナボックス内の回路と、電気的に結合されている。
【0007】
このようなアンテナモジュールは、次のような利点を有している。すなわち、アンテナモジュールが、ワンピースで、車両内への組み込みに対して供給される、ということである。さらに、ワンピースのアンテナモジュールは、次のような利点を有している。すなわち、外側カバーに整合されている大面積の開口部がアンテナ屋根内に設けられており、これによって、容易な手段で、かつ、コンパクトに、アンテナ部材を、車両屋根内の開口部を通じて、外部へ突出させることができる、という利点である。これによって、アンテナボックスの閉鎖された、導電性の金属製の上面は、車両屋根とともにシールドを形成する。これは、アンテナ放射部を伴うアンテナモジュールの外側領域と、内部の閉鎖されたアンテナボックスとの間で、明らかな分断を提供する。
【0008】
外側屋根と、全面で閉鎖されたアンテナボックスの金属製の上面とから形成されたシールドによって、アンテナ部材と、閉鎖されたアンテナボックス内に配置されたアンテナおよび回路の電磁的な分離が保証される。これによって、車両への、ノイズの無い、アンテナモジュールのアース接続が、電子回路に対して、および、アンテナに対して得られる。屋根への、アンテナボックスの屋根と一致した取り付けないしは整合のために、付加的に、結合部材が、アンテナボックスの金属製の上面で用いられる。これは、圧縮可能な、金属被覆された発泡材料から成り、これによって、屋根の湾曲を補償することができる。
【0009】
外部のアンテナ部材と、内側のアンテナおよび種々の回路を備えた、全面で閉鎖されたアンテナボックスとの間の電磁的な分離にも係わらず、このアンテナモジュールは、ワンピースの、容易に取り付け可能なアンテナモジュールである。これは、アンテナモジュールの1つの領域がボディーおよび車両の屋根から突出しており、他の領域が、車両の屋根の下方に、これと接触接続して取り付けられている場合にでもある。これは、金属製の導電性の上面を有する全面で閉鎖されたアンテナボックスによって実現される。この上面には、外側カバーの下方の横断面形状を有する隆起部が位置している。この内部には、外側のアンテナが、車両外部接続とのサービス、例えば衛星サービス、電話サービス等のために配置されている。
【0010】
アンテナボックスは完全にまたは部分的にプラスチックまたは金属から成る。これは、アンテナモジュール内に組み込まれているサービスに依存する。例えば、ボックスの上面は金属から成り、ボックスの4つの縁部、並びに、ボックスの下面が、プラスチックから成り得る。これは例えば、サービス、例えば、車両内部の接続を必要とする受動的な開始およびエントリーシステム(PASEシステム)が必要とされる場合である。
【0011】
アンテナボックスが完全に金属から成る場合には、トランシーバー、チューナーまたは別の電子回路を有するアンテナ基板の確実なシールドを保証するために、ボックスの4つの縁部並びにボックスの下面に、車両内部接続用のアンテナを組み込むまたは取り付けることも可能である。全面で閉鎖されたアンテナボックスの、金属製の上面を設けることによって、車両の屋根から突出するアンテナ部材は、外側カバーの下で、電磁的に、アンテナボックスから分断されている。
【0012】
アンテナボックスが完全に、プラスチックから成る場合には、外部のアンテナ部材が存在しないか、または、必要な電磁的な分断が、主要基板上でも、アンテナボックスの上面上でも実現される。これは、金属被覆された発泡材料またはプラスチックから成る圧縮可能な結合部材が、主要基板上およびアンテナボックスの上面上に、屋根余白部分に沿って取り付けられることによって行われる。
【0013】
外側カバー内に配置されている車両外部サービス用の外側のアンテナ部材は、全面で閉鎖されているアンテナボックス内のアンテナ主要基板と接続されている。これは、車両外部サービスのためのアンテナ部材のフットポイントないしは給電点が、アンテナボックスの金属製上面を通って、アンテナ基板まで接続されており、アンテナ基板にはんだ付けされていることによって行われる。この場合には、多数のアンテナ、例えば、衛星通信用のパッチアンテナを、全面閉鎖されたアンテナボックスの金属上面に載置することができる。
【0014】
アンテナ給電点は、スルーホールを介して、アンテナボックスの金属製上面を通って案内され、ここで、ボックス内でも、同軸の線路を形成する。このような貫通孔は、例えば、プラスチックによって充填され、その陥入部は、金属から成る上面内での最小の陥入部によって実現される。
【0015】
同時に、全面で閉鎖されているアンテナボックスの金属製の上面は、担体部材を形成する。この担体部材は、発生する全ての機械的な力を受容することができる。さらに、全面で閉鎖されているアンテナボックスの上面は圧力ダイカスト部分であり得る、または、打ち抜きされた板から成り得る。さらに、シールドチャンバを組み込むことができる。これは、電磁ビームを防護するために付加的に使用され、ピンを用いて、閉鎖されたアンテナボックス内のアンテナ基板にはんだ付けされている。従ってこのようなシールドチャンバは、アンテナ基板上の各回路の部分領域を遮蔽することができる。これは殊に、車両内部に向かって配向されている下方領域がプラスチックから形成されている場合である。このようにして、アンテナボックスは、屋根の上に取り付けられている今日のアンテナソリューションのシャーシーに匹敵し得る。しかし、このシャーシーは、本発明の1つの実施形態において、屋根の下に取り付けられ、アンテナ基板は、シャーシーの車両内部の面に取り付けられている。
【0016】
有利には、アンテナモジュールに対して、アンテナ基板は1つしか設けられていない。この上には、必要な受信器、トランシーバーおよび整合回路が位置しており、アンテナ給電点がはんだ付けされている。車両屋根内の開口部を通って突出しているアクティブなアンテナ部材は、PCB(printed circuit board)アンテナとして、例えば、FR4プレートから形成され、全面で閉鎖されているアンテナボックス内のアンテナ基板に対して垂直に配置可能である。
【0017】
複数のアンテナ部材の配置は、利得に関する、得られるべき効果、放射ダイアグラムの形状、分離並びにVSWR(standing wave ratio)値に対する相関に依存する。有利には、アンテナ基板は、全面が閉鎖されたアンテナボックス内で、ボックスの金属製上面の内側に、間隔保持部を設けて、または、間隔保持部を設けないで、固定される。これによって、外側アンテナ部材に関して、アンテナ給電点ができるだけ短くなることが保証される。さらに、アンテナ基板のみをアンテナボックス内に配置するのではなく、複数の基板をアンテナボックス内で、例えばプラグ(例えば相応のプラグを備えたフラットケーブル)を介してアンテナ基板と接続させることができる。
【0018】
外側カバーは、一種の防護部を、内部にあるアンテナ部材に対して形成する。このような外側カバーは、アンテナボックスの上面にクリップで留められている別個の部分であり得る。アンテナモジュールの取り付けのために、アンテナモジュールは、車両の内側から、次のように、車両の屋根に取り付けられる。すなわち、アンテナ部材が、屋根内の開口部を通って突出し、これによって、車両外部接続のために設けられている場合には、車両の外側で、自身の作用を実現するように、取り付けられる。車両の屋根から突出している外側カバーを備えた、可視の外部部分は、その形状において、今日の通常の背びれに類似している。車両内部に存在しているアンテナボックスは、これとは異なり、長方形、円形または任意の他の形状を有し得る。ここでこのアンテナボックスは、車両の屋根と屋根被覆部との間にのみ、位置付けされている。
【0019】
さらに、アンテナモジュールが外側カバーの領域において、係留箇所を有していることを提案する。これによって、開口部内への取り付けおよび固定が容易になる。これは、アンテナモジュールが開口部を通ってシフトされ、車両の屋根に係留されることによって行われる。しかし、車両内のアンテナモジュールと、種々のデジタルサービスおよびアナログサービスのための接続プラグブッシュの接続の前に、付加的に、全面が閉鎖されているアンテナボックスを車両の屋根に内部からねじ止めすることができる。これは殊に、接続プラグブッシュに作用する、生じている機械的な力を受け止め、車両のボディーに伝達するためのものである。さらに、アンテナボックスの上面に、水平なスリットまたは水平な溝を設けることができる。これによって、走行方向におけるまたは走行方向とは逆の方向における並進運動によって、アンテナモジュールを車両の屋根に固定することができる。
【0020】
本発明の別の実施形態では、アンテナモジュールは、外部アンテナを1つのみ、サービス、RKE(リモートキーレスエントリー:remote keyless entry)、PASE(パッシブスタートおよびエントリー:passive start entry)およびTPMS(タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム:tire pressure monitoring system)に対して有している。しかし、さらに、内側のアンテナのみを上述のサービスに対して設定し、内側のアンテナと外側のアンテナの組み合わせを、提供することができる。この組み合わせは、次のように実現されている。すなわち、外側カバーの領域内のアンテナの外側部分が、防護部、例えば外側カバーの下に設けられており、アンテナの内側部分がアンテナボックス内に設けられているように実現されている。しかしこれは、全面が閉鎖されているアンテナボックスの下方部分がプラスチックから形成されている場合にのみ有利である。
【0021】
本発明の別の実施形態では、さらに、アンテナボックス自体が、上方部分と下方部分とを有している。ここでこの上方部分は金属製の上面と側面とを含んでおり、下方部分の側面と部分的に重畳している。ここでこの下方部分は、自身の側面で、プラスチックから形成可能である。下方部分と上方部分との間の接続は、側面で、スナップのツメ部とスナップの係止部とを介して、機械的に取り外し可能に設けられている。他方では、このようなスナップのツメ部とスナップの係止部とによって、外側カバーを、アンテナボックスの上面と接続することも可能である。
【0022】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つのアンテナ基板は印刷された電子回路を自身の上面に有している。ここでアンテナ基板は、上述した間隔保持部を介して、アンテナボックスの上面に固定されている。ここで基板上面のプリントされた回路は、アンテナ基板を通るスルーホールを介して、車両内部空間に向けられている、アンテナ基板の下面上の増幅部材、トランシーバー、チューナーまたは受信器と、電気的に接続されている。
【0023】
全面が閉鎖されているアンテナボックスの外側縁部には、CAN(controlled area network:コントロールドエリアネットワーク)バス給電線、LIN(local interconnect network:ローカルインターコネクトネットワーク)接続、MOST(media oriented system transport:メディアオリエンテッドシステムトランスポート)端子、USB(universal serial bus:ユニバーサルシリアルバス)インタフェースまたはイーサーネットアクセスのために、プラグ接続が配置され得る。これは、アンテナボックスの下方部分の側面から突出して、車両の屋根と屋根被覆部との間の車両内部空間内に突出し、これを介して、車両内の端末機器との通信の少なくとも大部分が行われる。
【0024】
さらに、アンテナモジュールは、本発明の別の実施形態において、次のグループ、すなわち、電話、AM/FM(amplitude modulation system/frequency modulation system)、DAB(digital audio broadcasting)、SDARS(satellite digital audio radio system)、GPS(global positioning system)、WLAN(wireless area network)、LTE(long term evolution)、WIMAX(worldwide interoperability for microwave access)、DRM(digital radio mondiale)、UMTS(universal mobile telecommunication system)、Bluetooth(digital wireless data exchange)、RKE(remote keyless entry)、RSS(remote starting system)、PASE(passive start entry)、VHS(vehicle heating system)、C2C(car to car communication system)、ACC(automatic cruise control)、TPMS(tire pressure monitoring system)からの少なくとも4つの、車両内で発生する無線サービスを有している。これらは、アンテナモジュールによって、中央でカバーされ得る。
【0025】
さらに、電話アンテナおよびRKE(remote keyless entry)アンテナは、背びれ状の外側カバー内に突出している基板を有している。これは、アンテナボックスに対して垂直であり、自身の脚部領域内に陥入部を有している。この陥入部内には、例えば、GPSアンテナがパッチアンテナとして、配置可能である。ここでこれらのGPSアンテナは、アンテナボックスの上面にある、外側のシールドチャンバ上に配置可能である。このシールドチャンバ自身は、増幅回路および/またはアンテナ整合回路を、シールドチャンバ内に含んでいる。
【0026】
さらに、SDARSアンテナは、パッチアンテナとして、GPSパッチから間隔を空け、アンテナボックスの上方部分上の外側シールドチャンバに配置される。ここでこのシールドチャンバも、増幅器および/またはアンテナ整合回路を、SDARSアンテナのために含んでいる。
【0027】
導電性の車両屋根との確実な、開口部を囲むコンタクトを製造するために、アンテナボックスの上面に、長手方向において、車両の屋根内の開口部の両側に、または、車両の屋根内の開口部の周りに、金属製の発泡材料から成るまたは導電性の発泡プラスチックから成る結合部材を設けることができる。このような結合部材によって、アンテナボックスの上面を、車両の屋根の内面の湾曲に合わせることができる。
【0028】
本発明をここで、添付の図面に基づいて、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施例に則した、アンテナモジュールの基本図
図2】本発明の第2の実施例に則した、アンテナモジュールの基本図
図3】本発明の第1の実施例または第2の実施例に則した、アンテナモジュールの概略的な斜視図
図4】自動車内に組み込んだ後の、図3に示されたアンテナモジュールの概略的な斜視図
【実施例】
【0030】
図1は、本発明の第1の実施形態に則したアンテナモジュール1の基本図を示している。このアンテナモジュール1は、自動車50用のものであり、車両の屋根10に配置されている。車両の屋根10から、車両の屋根10内の開口部9から、背びれ状の外側カバー3が突出している。この外側カバー3は、同時に、その下に配置されているアンテナ部材4、5、6および7用の保護スリーブである。貫通孔12、13、14および15を介して、アンテナ部材4、5、6および7の給電点25、26、27および28は、電気的に、アンテナ基板16と接続されている。アンテナ基板16は、全面で閉鎖されているアンテナボックス8内に収容されている。ここでこのアンテナボックス8は、車両の屋根10の内側面47と導電性接続されている。
【0031】
さらに、アンテナボックス8は、導電性の上方部分17を有している。この上方部分は、車両の屋根10の内側面47と電気的に接続されている。この導電性の上方部分17は、側面19と20とを有している。これらには、スナップのツメ部23が設けられており、これは、全面閉鎖されたアンテナボックス8のプラスチック下方部分18の側面21および22上のスナップの係止部24と噛み合う。さらに、金属製上方部分17の側面19および20は、プラスチック下方部分18の側面21および22と重畳する。上方部分17は、金属製の上面11を有している。これは、導電性の車両の屋根10と、その内側面47で、電気的に接続されている。従って、屋根10から突出しているアンテナ部材4、5、6および7と、車両内部空間との間の電磁的な分離が保証される。
【0032】
アンテナ基板16の上面34が、アンテナ部材4、5、6および7用の給電点25、26、27および28並びにプリントされた回路の形態の整合回路を有しており、車両内部空間30の方を向いている下面29には、複数のシールド板33が配置されている。このシールド板は、トランシーバー、受信器および/またはチューナーを包囲している。シールド板33は、トランシーバー、受信器および/またはチューナーを、アンテナ基板16の下面29の内側アンテナ31、32から到来する電磁ビームから、および、種々の電子ビーム相互の誘導性または容量性結合の電磁的な結合から保護する。
【0033】
シールド板33の下のトランシーバー、受信器またはチューナーは、アンテナ基板16を通るスルーホールを介して、回路基板16の上面34ひいては、整合回路、ひいてはアンテナ部材4、5、6および7の給電点25、26、27および28と接続されている。アンテナボックス8の金属製かつ導電性の上面11と、アンテナ基板16の上面34との間に、間隔保持部35が配置されている。これは、アンテナ基板16の上面34に配置されている整合回路が、アンテナボックス8の金属製上面によって短絡しないように、または損傷されないように、機能する。間隔保持部は、できるだけ小さい寸法にされており、これによって、同軸上の結合長さが、アンテナ部材4、5、6および7と、アンテナ基板16の給電点25、26、27および28との間で、貫通孔12、13、14および15を介してできるだけ小さく保たれ、貫通孔12、13、14および15での伝送損失を最小化することができる。
【0034】
Bluetooth(R)のような、無線の車両内部の接続を可能にするために、アンテナ部材31と32とが、アンテナ基板16の周辺領域内に、アンテナ基板16の下面29に設けられている。従って、さらに、本発明のこの実施形態では、スナップの係止部24によって、上面17の側面のスナップのツメ部23で固定されている下方部分18が、プラスチックから製造されている。
【0035】
図2は、本発明の第2の実施形態のアンテナモジュール2の基本図を示している。図1と同じ機能を有するコンポーネントには同じ参照番号が付与されており、特別に説明されていない。
【0036】
本発明の第2の実施形態と、図1に示された、本発明の第1の実施形態との間の相違は、アンテナ基板16の下面29にのみ、シールド板33が配置されているのではなく、付加的に、上面34にも、シールドチャンバ43および44が配置されている、ということである。これらは、アンテナ部材4、5、6または7の給電点25、26、27または28と協働する回路を有している。
【0037】
図3は、本発明の上述した実施形態のうちの1つに従った、1つのアンテナモジュール1の概略的な斜視図を示している。ここで、アンテナモジュール1は、3つの領域をまとめて、ワンピースに形成されている。上方の領域は、上述した外側カバー3を有している。これによって、図3に示されたアンテナモジュール1は、車両の屋根から突出することができる。このカバー3は、スナップのツメ部23を介して、全面閉鎖されたアンテナボックス8の上方部分17の金属製上面11と接続されている。ここでこのアンテナボックス8は、車両の屋根と車両屋根被覆部との間で、車両の内部空間30内に完全に配置されている。
【0038】
上方部分17の金属製上面11と噛み合っている外側カバー3のスナップのツメ部23の他に、さらに、固定部材48が設けられている。これによって、アンテナモジュール1を、車両屋根の開口部内に、取り外し可能に固定することができる。さらに、アンテナボックス8の上方部分17の金属導電性上面11は、外側カバー3の両側で、結合部材45と46とを有している。これらによって、車両の屋根の下面との電気的な接続が可能になる。ここでこれらの結合部材45および46は、導電性の発泡材料から製造可能であり、これによって、アンテナボックス8の上面に対する車両の屋根の湾曲を補償することができ、アンテナボックス8の金属製の上面11と車両の屋根の下面との間の良好な電気的な接触接続を形成することができる。
【0039】
アンテナボックス8の縁部領域から、プラグイン接続部36〜42が突出している。ここには、同軸線路が接続可能である。これは、屋根被覆部と車両の屋根との間で、プラグイン接続部36〜42を介して、全面閉鎖されているアンテナボックス8に接続され、車両内の種々の受信機器、表示機器または制御機器に対する電気的な接続が提供される。ここで殊に、プラグイン接続部40は、デジタルインタフェースに対して設けられている。
【0040】
図4は、車両50内への組み込み後の、図3に示されたアンテナモジュール1の概略的な斜視図を示している。このために、車両の屋根10内には、開口部9が設けられている。この開口部を通って、アンテナモジュール1の外側カバー3が突出している。従って、プラスチック材料から成る外側カバー3の下方に配置されているアンテナ部材は、車両の屋根10の上方に位置付けされている。アンテナ部材の一部が車両の屋根10に対して垂直に配向されているので、背びれ状の外側カバー3が生じ、これに対して水平に配置されている、外側カバー3の領域49内には、平らな、ほぼ正方形のアンテナ部材、例えば、GPSまたはSDARS接続用のパッチアンテナが配置可能である。
【0041】
全面閉鎖されているアンテナボックス8は、図4において、破線で示されており、これによって、アンテナボックスが自身の導電性の、金属製の上面で以て、車両の屋根10の下面と、屋根被覆部との間に配置されていることが示されている。車両50の走行方向は、ここで、矢印Fによって示されており、これによって、外側カバー3が、尾びれないしは魚の背びれの一部分のように、車両の屋根10から突出していることが示されている。
【0042】
少なくとも例示的な実施形態が、上述の説明において示されたが、種々の変更および修正を行うことが可能である。上述した実施形態は単なる例であり、有効範囲、用途、または構造をいかようにも制限するものではない。むしろ、上述の説明は、当業者に、少なくとも1つの例示的な実施形態を実行に移すためのプランを提供している。ここでは多数の変更を、添付された特許請求の範囲およびその法的な効力を逸脱せずに、例示的な実施形態に示された部材の機能および配置において、行うことが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 アンテナモジュール(第1の実施形態)、 2 アンテナモジュール(第2の実施形態)、 3 外側カバー、 4 アンテナ部材、 5 アンテナ部材、 6 アンテナ部材、 7 アンテナ部材、 8 アンテナボックス、 9 開口部、 10 車両の屋根、 11 上面、 12 貫通孔、 13 貫通孔、 14 貫通孔、 15 貫通孔、 16 アンテナ基板、 17 上方部分、 18 下方部分、 19 側面、 20 側面、 21 側面、 22 側面、 23 スナップのツメ部、 24 スナップの係止部、 25 給電点、 26 給電点、 27 給電点、 28 給電点、 29 下面、 30 車両内部空間、 31 アンテナ部材、 32 アンテナ部材、 33 シールド板、 34 上面、 35 間隔保持部、 36 プラグイン接続部、 37 プラグイン接続部、 38 プラグイン接続部、 39 プラグイン接続部、 40 プラグイン接続部、 41 プラグイン接続部、 42 プラグイン接続部、 43 シールドチャンバ、 44 シールドチャンバ、 45 結合部材、 46 結合部材、 47 内側面、 48 固定部材、 49 領域、 50 車両、 F 走行方向
図1
図2
図3
図4