(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1操作ワイヤに対して、前記第2操作ワイヤを先端側に相対移動させることによって、前記第2操作ワイヤが外径方向に広がり、前記第2操作ワイヤを更に先端側に相対移動させることによって、前記第2操作ワイヤが、前記複数の骨格線材先端と前記第2操作ワイヤ先端との連結部よりも、先端側に移動するように構成されている請求項1記載の体腔内の異物捕捉具。
前記第2操作ワイヤに対して、前記第1操作ワイヤを先端側に相対移動させることによって、前記骨格線材が広がってバスケットを構成し、前記第1操作ワイヤを先端側に更に相対移動させることによって、前記バスケットの深さが浅くなるように構成されている請求項1記載の体腔内の異物捕捉具。
前記バスケットには、前記複数の骨格線材の先端部と前記第2操作ワイヤの先端部との連結部分から、同バスケットが最大に拡径した部分に、樹脂膜が設けられている請求項4記載の体腔内の異物捕捉具。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1〜13を参照して、本発明に係る体腔内の異物捕捉具の一実施形態について説明する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、この実施形態における体腔内の異物捕捉具10(以下、「異物捕捉具10」という)は、第1操作ワイヤ15と、複数の骨格線材20と、第2操作ワイヤ25とを有している。
【0020】
前記複数の骨格線材20は、それらの基端部が、第1操作ワイヤ15の先端部外周にそれぞれ配置され、その外周に配置した筒状の連結部材16をカシメることにより、第1操作ワイヤ15の先端部外周にそれぞれ連結されている。
【0021】
また、前記第2操作ワイヤ25は、その先端部が複数の骨格線材20の各先端部と束ねられて、その外周に配置した筒状の結束部材22をカシメることにより、複数の骨格線材20の先端部に連結されている。この第2操作ワイヤ25は、前記第1操作ワイヤ15の基端側に向けて、かつ、同第1操作ワイヤ15とは分離して伸びており、第1操作ワイヤ15とは独立して操作可能となっている。
【0022】
そして、この実施形態においては、上記第2操作ワイヤ25に対して、前記第1操作ワイヤ15を先端側に相対移動させることによって、前記複数の骨格線材20が広がって、異物G(
図10参照)を捕捉可能なバスケット30が構成されるようになっている(
図1及び
図2参照)。
【0023】
なお、ここで「第2操作ワイヤ25に対して、第1操作ワイヤ15を先端側に相対移動させる」とは、(1)第2操作ワイヤ25を固定しておいて、第1操作ワイヤ15を先端側に押す、(2)第1操作ワイヤ15を固定しておいて、第2操作ワイヤ25を基端側に引く、(3)第1操作ワイヤ15を先端側に押すと共に、第2操作ワイヤ25を基端側に引くなどの操作を含む意味である。
【0024】
なお、各骨格線材20の基端部と第1操作ワイヤ15の先端部との連結や、骨格線材20の先端部と第2操作ワイヤ25の先端部との連結は、例えば、接着剤や、ロウ付け、はんだ付け、紐状体等によって行ってもよく、特に限定されない。
【0025】
図3及び
図4を併せて参照すると、この実施形態における骨格線材20は、バスケット30が拡径した状態で、その周方向に沿って所定間隔で複数配置されている。この実施形態では、3本の骨格線材20が、周方向に均等な間隔W1(
図4参照)をあけて配置されているが、これに限定されるものではない。バスケット30が拡径した状態での上記間隔W1は、体内における異物捕捉具10を使用する箇所によって異なってくるが、通常は3〜20mmが好ましく、3〜15mmであることがより好ましい。
【0026】
また、各骨格線材20は、第2操作ワイヤ25よりも細い線材で形成されている(
図3及び
図4参照)。具体的には、骨格線材20の外径は、0.02〜0.1mmが好ましく、0.05〜0.1mmであることがより好ましい。
【0027】
なお、骨格線材20は、2〜4本であることが好ましく、2〜3本であることがより好ましい。
【0028】
一方、この実施形態における前記第2操作ワイヤ25は、1本の線材からなっていると共に、バスケット30が拡径した状態で、複数の骨格線材20が配置された部分に対して、周方向に対向した位置となるように配置されている(
図3及び
図4参照)。
【0029】
また、第2操作ワイヤ25と、該第2操作ワイヤ25に最も近接した骨格線材20との間隔W2(
図4参照)は、隣接する骨格線材20,20どうしの間隔W1よりも広くなるように構成されている。バスケット30が拡径した状態での上記間隔W2は、体内における異物捕捉具10を使用する箇所によって異なってくるが、通常は5〜30mmが好ましく、10〜25mmであることがより好ましい。
【0030】
なお、第2操作ワイヤ25は、1本に限定されるものでなく、複数本を束ねて配置してもよく、その配置間隔も上記態様に限定されるものではない。第2操作ワイヤ25が1本で構成される場合、その外径は、0.05〜0.2mmが好ましく、0.05〜0.15mmであることがより好ましい。
【0031】
そして、
図2に示すバスケット30は、第2操作ワイヤ25に対して、第1操作ワイヤ15を先端側に更に相対移動させることで、バスケット30の深さが浅くなるように構成されている(
図6〜9参照)。なお、バスケット30の深さとは、複数の骨格線材20の各先端部と第2操作ワイヤ25の先端部との連結部分から、バスケット30が最大に拡径した部分までの軸方向長さを意味する。
【0032】
上記の第1操作ワイヤ15、第2操作ワイヤ25、及び、骨格線材20は、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、Wや、Ni−Ti系合金、Co−Cr系合金、Co−Cr−Ni系合金、Cu−Zn−X(X=Al,Fe等)合金、Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co等)合金等の形状記憶合金などから形成されている。また、前記連結部材16や結束部材22は、例えば、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、W、及び、これらの合金等からなる放射線不透過性の金属から形成されている。
【0033】
なお、上記バスケット30は、第2操作ワイヤ25と相俟って、
図2に示すように、先端側及び基端側が窄まり、軸方向基端寄りの部分が拡径した略紡錘形状をなすように、前記複数の骨格線材20を予め付形しておくことが好ましい。また、各骨格線材20として上記のような形状記憶合金を用い、上記形状となるように形状記憶処理しておくことがより好ましい。
【0034】
また、上記バスケット30には、複数の骨格線材20の先端部と第2操作ワイヤ25の先端部との連結部分から、バスケット30が最大に拡径した部分に、樹脂膜35が設けられている。この実施形態では、複数の骨格線材20と第2操作ワイヤ25との間をカバーするように樹脂膜35が配設されており、先端部側が閉塞し、基端部側に向けて次第に拡径して、基端部側が開口した袋状をなしており、バスケット30の拡径に伴って拡径するようになっている。この樹脂膜35により、バスケット30の開口部から受け入れた異物Gが、比較的小さなものであっても、複数の骨格線材20及び第2操作ワイヤ25の間から排出されないように捕捉可能となっている。
【0035】
なお、この実施形態の樹脂膜35は、各骨格線材20及び第2操作ワイヤ25の外周を被覆するように構成されている(いわば樹脂膜35に骨格線材20及び第2操作ワイヤ25が埋設した状態)が、この態様には限定されない。また、樹脂膜35に、異物Gが通過しない程度の流体流通用の微小な孔を複数設けてもよい。
【0036】
上記樹脂膜35の材質としては、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリカブロラクトン系ポリウレタン等のポリウレタンや、ポリウレタンエラストマー、ナイロン、ナイロンエラストマー、ポリブタジエン等のオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、シリコーン、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどが採用でき、その中でもポリウレタンが好ましく採用される。
【0037】
なお、上記樹脂膜35は、例えば、複数の骨格線材20を金型に予めセットした状態で、ポリマー溶液をキャスティングしたり、複数の骨格線材20を金型にセットして、ポリマー溶液にディッピングしたりすること等によって形成することができる。
【0038】
また、この実施形態の異物捕捉具10においては、
図2に示すように、第1操作ワイヤ15及び第2操作ワイヤ25の先端部を除く部分の外周に、カテーテル45が配置されている。更にこのカテーテル45の基端側に、第1操作ワイヤ15及び第2操作ワイヤ25を、それぞれ独立して操作するための操作ハンドル40が配置されている。
【0039】
なお、この実施形態におけるカテーテル45は、
図2に示すように、その基端から先端に至るまで一つのルーメンを設けた、いわゆるシングルルーメンとなっているが、複数のルーメンを設けてもよく、特に限定はされない。例えば、2つのルーメンを設けた場合には、所定のルーメンに第1操作ワイヤ15を挿通させ、他のルーメンに第2操作ワイヤ25を挿通させたりして、第1操作ワイヤ15と第2操作ワイヤ25とを絡まないようにすることができ、操作性を向上させることができる。
【0040】
図1及び
図2に示すように、上記操作ハンドル40は、その先端部側にスリット41aを介して、操作ハンドル40の軸方向に沿って前後にスライド可能に第1スライダ41が装着されていると共に、この第1スライダ41に隣接した位置に、スリット42aを介して、操作ハンドル40の軸方向に沿って前後にスライド可能に第2スライダ42が装着されている。前記第1スライダ41には、操作ハンドル40に形成された図示しない挿通孔を介して、前記第1操作ワイヤ15の基端部が接続されており、一方、前記第2スライダ42に、図示しない挿通孔を介して前記第2操作ワイヤ25の基端部が接続されている。
【0041】
また、
図5に示すように、操作ハンドル40の先端側には、やや細い外径の筒部43が伸びており、該筒部43の外周には、同筒部43に対してスライド可能とされた、先細円筒状をなしたスライド部材44が装着されている。このスライド部材44に、前記カテーテル45の基端部が連結されている。そのため、スライド部材44を筒部43の先端側にスライドさせると、カテーテル45が押し出されて、各骨格線材20が直線状に伸ばされて縮径し、カテーテル45の先端部内周にバスケット30が収容されるようになっている(
図5参照)。
【0042】
また、図示はしないが、例えば、スライド部材44に係止ボタンを設け、一方、筒部43の先端に係止ボタンに係止可能な係止凹部を設けておき、スライド部材44を筒部43の基端側にスライドさせたときに、係止凹部に係止ボタンが係止して、スライド部材44のスライド動作を規制するように構成することが好ましい。
【0043】
なお、前記バスケット30が、
図2に示すように拡径した状態では、第1スライダ41はハンドル基端寄りに配置され、第2スライダ42はハンドル先端寄りに配置されている。
【0044】
そして、
図2に示すバスケット30の拡径状態から、第2スライダ42を保持して、第1スライダ41を先端側にスライドさせると、第2操作ワイヤ25に対して、第1操作ワイヤ15が先端側に移動して、バスケット30が拡径し(
図6参照)、その状態で、第1スライダ41を先端側に更にスライドさせると、第2操作ワイヤ25に対して、第1操作ワイヤ15が先端側に更に移動して、バスケット30が更に大きく拡径する(
図7参照)。
【0045】
上記状態で、第1スライダ41を保持して、第2スライダ42を基端側にスライドさせると、第1操作ワイヤ15に対して、第2操作ワイヤ25が基端側に移動して、バスケット30が押されて偏平形状をなすように大きく拡径し(
図8参照)、その状態で、第2スライダ42を基端側に更にスライドさせると、第1操作ワイヤ15に対して、第2操作ワイヤ25が基端側に更に移動して、バスケット30の一部が、先端側に反りかえるようにして更に大きく拡径する(
図9参照)。
【0046】
なお、上記操作ハンドル40の構造や形状は、上記形態に限定されず、第1操作ワイヤ15と、第2操作ワイヤ25とを独立して操作可能であればよい。
【0047】
そして、
図2に示すバスケット30の拡径状態から、操作ハンドル40の筒部43に対して、スライド部材44を先端側にスライドさせると、カテーテル45が押し出されて、バスケット30の外周が押圧されて、各骨格線材20が直線状に伸ばされて縮径し、カテーテル45の先端部内周にバスケット30が収容され、一方、筒部43に対してスライド部材44を基端側にスライドさせることで、カテーテル45の先端部からバスケット30が開放されて拡径するようになっている(
図2参照)。また、このカテーテル45には、ガイドワイヤ1(
図10参照)を挿通可能な図示しないルーメンが設けられている。
【0048】
なお、この実施形態においては、カテーテル45が操作ハンドル40のスライド部材44に連結されて、スライド部材44のスライド操作によって、カテーテル45がスライドするようになっているが、例えば、操作ハンドル40とカテーテル45とを別体にして、カテーテル45を独立してスライド可能としてもよく、また、カテーテル45の外周に、別体のチューブやシース等を配置して、これらのスライド操作によって、バスケット30を収容したり開放したりするようしてもよい。
【0049】
次に上記構成からなる本発明の異物捕捉具10の使用方法の一例について説明する。
【0050】
図10に示すように、この実施形態の異物捕捉具10は、人体の体腔、例えば、胆管や、膵管、尿管、気管、脳内血管、胸部大動脈、腹部大動脈等の血管等の、管状器官V2に生成された胆石等の異物Gを捕捉して、比較的内径の大きな十二指腸等の管状器官V1まで移動させて、排出するために用いることができる。なお、この異物捕捉具10の適用箇所は特に限定されないが、特に、胆管内の胆石や、膵管内の膵石を排出する際に好適に用いることができる。
【0051】
この異物捕捉具10の使用に際しては、まず、
図5に示すように、スライド部材44を筒部43の先端側にスライドさせて、カテーテル45を押し出すことで、各骨格線材20を直線状に伸ばして、カテーテル45の先端部内周にバスケット30を縮径した状態で収容する。
【0052】
そして、周知の方法によって、内視鏡5を、口腔から胃等を通して十二指腸等の大径の管状器官V1まで移動させ、同内視鏡5の先端部を、管状器官V2,V3の分岐部N(乳頭)の近傍に配置する。
【0053】
その後、ルーメンを通して内視鏡5の先端開口からガイドワイヤ1を挿出させて、管状器官V2(胆管)に挿入し、その先端部を、複数の異物Gが存在している部分を、通り越えた位置まで到達させる。その後、ガイドワイヤ1をカテーテル45の図示しないルーメンに挿入し、このガイドワイヤ1に沿って内視鏡5で視認しつつ異物捕捉具10を移動させていき、カテーテル45の先端部を、複数の異物Gが存在している部分を、通り越えた位置まで到達させる。
【0054】
上記状態で、操作ハンドル40の筒部43に対してスライド部材44を基端側にスライドさせると、カテーテル45の先端部からバスケット30が開放されて、複数の骨格線材20及び樹脂膜35が広がってバスケット30が拡径する(
図2及び
図10参照)。
【0055】
そして、操作ハンドル40の第2スライダ42を保持して、第1スライダ41を先端側にスライドさせると、第2操作ワイヤ25に対して、第1操作ワイヤ15が先端側に移動して、バスケット30が拡径し(
図6参照)、この状態で、第1スライダ41を先端側に更にスライドさせると、第2操作ワイヤ25に対して、第1操作ワイヤ15が先端側に更に移動して、バスケット30が更に大きく拡径する(
図7及び
図11参照)。
【0056】
上記状態で異物捕捉具10全体を手元側に引き寄せると、
図11に示すように、バスケット30の開口部から異物Gが入り込み、異物Gを捕捉することができる。
【0057】
このように、この異物捕捉具10においては、第2操作ワイヤ25に対して、第1操作ワイヤ15を先端側に相対移動させることによって、複数の骨格線材20が広がってバスケット30が構成されるので、この状態で、異物捕捉具10全体を手元側に引き寄せることで、
図11に示すように、バスケット30の開口部から異物Gが入り込み、異物Gを捕捉することができる。
【0058】
また、この実施形態においては、複数の骨格線材20は、第2操作ワイヤ25よりも細い線材からなっているので(
図3及び
図4参照)、バスケット30を拡径させやすくすることができる。
【0059】
更に、この実施形態においては、複数の骨格線材20に対して、1本の第2操作ワイヤ25が周方向に対向して配置され、かつ、第2操作ワイヤ25とそれに最も近接した骨格線材20との間隔W2は、骨格線材20,20どうしの間隔W1よりも広いので(
図4参照)、バスケット30を、周方向に沿って広がるように拡径させて、その開口部を大きく確保することができ、大きな異物であっても、より捕捉しやすくすることができる。
【0060】
そして、上記のように、バスケット30によって異物Gを捕捉した後、異物捕捉具10全体を更に手元側に引き戻して、管状器官V2よりも大径の管状器官V1(例えば、十二指腸など)まで、複数の骨格線材20及び樹脂膜35を移動させる(
図12参照)。
【0061】
そして、その位置で、操作ハンドル40の第1スライダ41を保持して、第2スライダ42を基端側にスライドさせると、第1操作ワイヤ15に対して、第2操作ワイヤ25が基端側に移動して、
図8及び
図12に示すように、バスケット30が押されて偏平形状をなすように大きく拡径する。
【0062】
この状態で、操作ハンドル40の第1スライダ41を保持して、第2スライダ42を基端側に更にスライドさせると、第1操作ワイヤ15に対して、第2操作ワイヤ25が基端側に更に移動し、
図9及び
図13に示すように、バスケット30の一部が、先端側に反りかえるようにして更に大きく拡径する。
【0063】
その結果、バスケット30内に捕捉された異物Gが、その開口部からスムーズに押し出され、
図13に示すように、管状器官V1内に排出することができる。なお、上記操作で異物Gを十分に排出できない場合には、操作ハンドル40の第1スライダ41を固定した状態で、第2スライダ42を軸方向に沿って前後に繰り返しスライドさせることにより、バスケット30を拡径したり縮径したりして、異物Gを樹脂膜35内から排出することができる。
【0064】
また、この実施形態においては、バスケット30に樹脂膜35が設けられているので、例えば、異物Gが、破片状の石や、デブリスやプラーク等の、比較的小さなものであって、もれなく捕捉することができる。
【0065】
また、大きな異物Gや多量の異物Gが、バスケット30内に捕捉されていると、管状器官内の内径の小さな箇所(例えば、乳頭)でバスケット30が詰まって取り出せなくなる可能性があるが、その場合には、樹脂膜35が破れて異物Gが排出されるので、バスケット30を安全に取り出すことができる。
【0066】
図14〜22には、本発明に係る体腔内の異物捕捉具の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図14に示すように、この実施形態における体腔内の異物捕捉具10a(以下、「異物捕捉具10a」という)は、第1操作ワイヤ15と、該第1操作ワイヤ15の先端部に連結部材16を介して基端部が連結され、先端部が結束部材22を介して互いに結束された複数の骨格線材20と、複数の骨格線材20の先端部に結束部材22を介して連結され、第1操作ワイヤ15の基端側に向けて、かつ、該第1操作ワイヤ15とは分離して伸びて、第1操作ワイヤ15とは独立して操作可能とされた第2操作ワイヤ26とを有している。
【0068】
また、この実施形態の異物捕捉具10aにおいては、複数の骨格線材20の間に、樹脂膜35が張設されていない構造となっている。なお、この実施形態の操作ハンドル40は、その先端部側に、第2操作ワイヤ26を操作する第2スライダ42が配置され、該第2スライダ42に隣接した位置に、第1操作ワイヤ15を操作する第1スライダ41が配置されている(前記実施形態とは逆である)。
【0069】
そして、この異物捕捉具10aは、第2操作ワイヤ26の先端部側が、所定の湾曲形状にくせ付けされた形状をなしている(
図15参照)。すなわち、
図17(a)に示すように、第2操作ワイヤ25は、同第2操作ワイヤ26を操作していない自由状態(第2スライダ42がハンドル基端寄りに配置された状態)で、軸方向先端側から見たとき、外周に伸びて周方向に広がる湾曲形状にくせ付けされている。
【0070】
図15及び
図17(a)に示すように、この実施形態の第2操作ワイヤ26は、複数の骨格線材20と第2操作ワイヤ26との連結部である結束部材22から外径方向に向けて屈曲した先端部分26aと、該先端部分26aから周方向に沿って広がるように伸びる屈曲部分26bと、該屈曲部分26bを介して所定の骨格線材20の外側を通過して、緩やかに湾曲しつつ伸びて(
図15参照)、第1操作ワイヤ15の基端側に戻る湾曲部分26cとからなる湾曲形状にくせ付されている。なお、第2操作ワイヤ26の形状としては、この態様に限定されるものではなく、例えば、前記湾曲部分26cを、複数のループを有するように螺旋形状にくせ付けしたりしてもよい。ただし、少なくとも、連結部から外径方向に屈曲する先端部分26aと、周方向に沿って広がるように伸びる屈曲部分26bと、第1操作ワイヤ15の基端側に戻る湾曲部分26cとを有することが好ましい。
【0071】
そして、この異物捕捉具10aは、第1操作ワイヤ15に対して、第2操作ワイヤ25を先端側に相対移動させることによって、第2操作ワイヤ26が外径方向に広がり(
図16、
図17(b)、
図18(a),(b)及び
図19(a)参照)、第2操作ワイヤ26を更に先端側に相対移動させることによって、第2操作ワイヤ26が、複数の骨格線材20先端と第2操作ワイヤ26先端との連結部(結束部材22)よりも、先端側に移動するように構成されている(
図19(b)参照)。
【0072】
この実施形態においては、第2操作ワイヤ26は次のように移動する。すなわち、
図14に示す、第2操作ワイヤ26を操作していない自由状態で、胆管等の管状器官V2内に挿入して、第1操作ワイヤ15に対して第2操作ワイヤ25を先端側に移動させると、
図18(a)に示すように、第2操作ワイヤ26が外径方向に広がって、湾曲部分26cが管状器官V2の内壁に当接して湾曲する。更に第2操作ワイヤ26を先端側に移動させると、
図18(b)に示すように、第2操作ワイヤ26の湾曲部分26cが、管状器官V2の内壁に当接して更に湾曲して、管状器官V2の内壁に沿って螺旋状に広がる。更に第2操作ワイヤ26を先端側に移動させると、
図19(a)に示すように、第2操作ワイヤ26が、湾曲部分26cのループ間隔が狭まるように先端側に移動する。更に第2操作ワイヤ26を先端側に移動させると、
図19(b)に示すように、第2操作ワイヤ26の湾曲部分26cが、結束部材22よりも先端側に移動するようになっている。
【0073】
なお、
図18(a),(b)及び
図19(a)においては、便宜上、管状器官V2内に結石K(
図19(b)参照)が存在していない状態となっている。
【0074】
また、この実施形態における第2操作ワイヤ26は、複数本の線材を捩り合わされてなる捩り線から形成されているが、線材が1本の単線であってもよく、特に限定はされない。ただし、第2操作ワイヤ26で、比較的大型の結石等の異物Gの外周に絡みつかせて捕捉する関係上、柔軟で曲がりやすく、かつ、操作力を伝達するためのある程度のコシがある、捩り線からなることが好ましい。
【0075】
更に、この実施形態の第2操作ワイヤ26は、複数本の線材を捩り合わせてなる1本の捩り線からなるが、
図21及び
図22に示すように、複数本であってもよい。
【0076】
図21(a),(b)に示すものは、自由状態で軸方向先端側から見たときに、第1操作ワイヤ15の軸心C(結束部材22の中心)に対して点対称となるように、湾曲形状にくせ付けされた一対の第2操作ワイヤ26,26が設けられている。
図21(a)に示すように、一対の第2操作ワイヤ26,26は、略八の字形状をなすように配置され、
図21(b)に示すように、第2操作ワイヤ26が先端側に移動した場合には、各第2操作ワイヤ26の湾曲部分26cが外径方向に広がって、一対の第2操作ワイヤ26,26全体が円形状を呈するように変形するようになっている。
【0077】
また、
図22(a),(b)に示すものは、自由状態で軸方向先端側から見たときに、第1操作ワイヤ15の軸心C(結束部材22の中心)を通り、かつ、複数の骨格線材20のうち、中央に配置された骨格線材20の拡径方向に沿ったラインLに対して、線対称となるように、湾曲形状にくせ付けされた一対の第2操作ワイヤ26,26が設けられている。
図22(a)に示すように、一対の第2操作ワイヤ26,26は、蝶結びのような形状に配置され、
図22(b)に示すように、第2操作ワイヤ26が先端側に移動した場合には、各第2操作ワイヤ26の湾曲部分26cが外径方向に広がって、一対の第2操作ワイヤ26,26全体がハート形を呈するように変形するようになっている。
【0078】
なお、上記第2操作ワイヤ26としては、前記実施形態の第2操作ワイヤ25と同様に、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、Wや、Ni−Ti系合金、Co−Cr系合金、Co−Cr−Ni系合金、Cu−Zn−X(X=Al,Fe等)合金、Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co等)合金等の形状記憶合金などから形成することができる。この中でも、第2操作ワイヤ26を所定の湾曲形状にくせ付けさせるために、形状記憶合金を用いることが好ましい。また、第2操作ワイヤ26が捩り線からなる場合、捩り線中の1本又は複数本の線材を、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、W、及び、これらの合金等からなる放射線不透過性の金属から形成することで、放射性造影下で第2操作ワイヤ26を視認できるので好ましい。
【0079】
上記構造の異物捕捉具10aは、
図20に示すように、胆管等の管状器官V2の経路に沿って複数の結石Kが並んで生成されたいわゆる積み上げ結石について、結石Kを管状器官V2の手前側から順次捕捉する際に好適に用いることができる。
【0080】
これについて、
図20及び本構造の異物捕捉具10aの実施例(これについては後述する)の写真(
図23〜29)を併せて参照して説明する。なお、
図23〜29においては、体腔として管状器官を模したチューブ(下記説明では「管状器官」として説明する)が配設されており、該チューブ内に結石を模した複数の石(下記説明では「結石」として説明する)が配置されている。
【0081】
まず、カテーテル45の先端部内に複数の骨格線材20や第2操作ワイヤ26を収容した状態で、内視鏡5やガイドワイヤ1を介して、カテーテル45の先端部を、管状器官V2に生成された積み上げ結石の、最も手前側の結石Kの手前側に移動させる。
【0082】
この状態で、カテーテル45の先端開口から、複数の骨格線材20及び第2操作ワイヤ26を突出させた後(
図14参照)、
図23に示すように、その先端の結束部材22を、結石Kと管状器官V2の内壁との間に差し込んで、結束部材22の位置決めする。
【0083】
その後、操作ハンドル40の第1スライダ41を保持して、第2スライダ42をハンドル先端側にスライドさせると、第2操作ワイヤ26が外径方向に広がって、湾曲部分26cが管状器官V2の内壁に当接して湾曲する(
図18(a)参照)。更に第2スライダ42を先端側にスライドさせると、第2操作ワイヤ26の湾曲部分26cが、管状器官V2の内壁に当接して更に湾曲して螺旋状に広がり(
図18(b)参照)、結石Kと管状器官V2の内壁との間に入り込んで、結石Kを囲い込み始める(
図24参照)。このとき、複数の骨格線材20によって、結石Kが支持されるので、結石Kを位置ずれしにくくさせることができる。
【0084】
更に第2スライダ42を先端側にスライドさせると、第2操作ワイヤ26の湾曲部分26cがループ間隔が狭まるように先端側に移動して(
図19(a)参照)、結石Kを更に囲い込む(
図25参照)。更に第2スライダ42を先端側にスライドさせると、第2操作ワイヤ26の湾曲部分26cが、結束部材22よりも先端側に移動して、
図19(b)、
図20及び
図26に示すように、結石Kの外周に絡みつかせるように囲いこんで捕捉することができ、管状器官V2の内壁から剥ぎ取るようにして取出すことができる(
図27参照)。
【0085】
上記状態で異物捕捉具10a全体を手元側に引き寄せて、十二指腸等の大径の管状器官V1まで、複数の骨格線材20及び第2操作ワイヤ26を移動させ、操作ハンドル40の第1スライダ41や第2スライダ42を適宜スライドさせることで、結石Kを管状器官V1内に排出することができる。その後、この作業を複数回繰り返すことにより、管状器官V2内の結石Kを捕捉して排出することができる。
【0086】
このように、この実施形態の異物捕捉具10aによれば、第2操作ワイヤ26は、自由状態で、軸方向先端側から見たとき、湾曲形状にくせ付けされているので、第1操作ワイヤ15に対して第2操作ワイヤ25を先端側に相対移動させると、その湾曲部分が体腔内壁に沿って広がり、異物と体腔内壁との間に入り込んで、異物を囲い込んで捕捉し、体腔内壁から剥ぎ取るようにして取出すことができる。
【0087】
更にこの実施形態においては、第1操作ワイヤ15に対して第2操作ワイヤ26を先端側に相対移動させることによって、第2操作ワイヤ26が外径方向に広がり、該第2操作ワイヤ26を更に先端側に相対移動させることによって、第2操作ワイヤ26が、複数の骨格線材20の先端と第2操作ワイヤ26の先端との連結部(結束部材22)よりも、先端側に移動するように構成されている。
【0088】
そのため、
図20に示すように、体腔内の経路に沿って複数の大きな異物が並んでいて、手前の異物から順次取り出さないと、詰まって取出すことができないような場合であっても、本実施形態の異物捕捉具10aによれば、最も手前の異物の手前に異物捕捉具10aの先端部を配置し、第1操作ワイヤ15に対して、第2操作ワイヤ26を先端側に相対移動させることによって、第2操作ワイヤ26が外径方向に広がると共に、複数の骨格線材20の先端と第2操作ワイヤ26の先端との連結部(結束部材22)よりも先端側に移動するので、前方の異物に第2操作ワイヤ26を絡みつかせて捕捉し、手前の異物から順次取出すことができる。
【実施例】
【0089】
(異物捕捉具の製造)
図14〜20に示す実施形態の異物捕捉具10aと同様の構造の、異物捕捉具を製造した。
【0090】
第1操作ワイヤ15はステンレス鋼からなり、複数の骨格線材20もステンレス鋼からなり、更に第2操作ワイヤ26は、ステンレス鋼で製造された線材を8本捩り合わせてなる、1本の捩り線からなる。
【0091】
(捕捉性能確認試験)
樹脂チューブ内に、複数の異物(石)を配置して、上記異物捕捉具を用いて異物の捕捉を試みた。すると、上述したように、
図23〜26に示すようにして、第2操作ワイヤ26により異物を捕捉して、
図27に示すように異物を取出すことができた。また、
図28及び
図29に示すように、第2操作ワイヤ26によって、異物の外周に絡み付くように囲い込んで、異物を捕捉できることを確認できた。