【実施例2】
【0094】
11個のアンテナおよび5個のトランシーバ
図8〜10に、11個のアンテナに接続された5個のトランシーバを使用し、挿入損失を最小化するように設計されたアンテナ給電部を示す。このアンテナ給電部は、挿入損失を最小化すると同時に所望のセクタに沿った4°3dBビーム幅と一緒に12°の動的ダウンチルト範囲を有する16dBサイドローブ・レベルを達成することが意図されている。この配置は、4dB未満の電力比および3未満の個数の分割器ステージおよびカプラ・ステージを有する電力分割器を有するように制約される。
【0095】
図8に示されているように、トランシーバ[図示せず]からの出力は、電力分割器のバンク60−2の第1のステージ60A−2で供給され、ここで電力分割される。ステージ60A−2の出力は、第2のステージ60B−2に供給される。この例では、電力分割器のバンク60−2は、2つのステージを含む。第1のステージ60A−2は、5つの3ポート・ウィルキンソン分割器を含み、ステージ60B−2は、5つの3ポート分割器を含む。電力分割器のバンク60−2の出力は、位相シフタのバンク70−2に供給される。この例では、Pは15と等しい。
【0096】
図9に、位相シフタのバンク70−2を示す。位相シフタのバンクは、電力分割器のバンク60−2から出力を受け取る。相互接続領域70A−2は、位相シフタ70B−2に供給される信号の順序付けを再分配する。位相シフタ70B−2は、受け取られた信号のそれぞれに対して位相シフトを実行する。通常、位相のそのようなシフトは、所望の位相シフトに対応する線の長さを有する標準マイクロストリップベースの伝送線を使用して達成される。しかし、位相シフタの他の配置を設けることができることを了解されたい。位相シフタのバンク70−2からの出力は、ハイブリッド・カプラのバンク80−2に供給される。
【0097】
ハイブリッド・カプラのバンク80−2は、3つのステージを含む。第1のステージ80A−2では、位相シフタ出力P3およびP4が、ラットレース・カプラ140のポート2および3に入力される。同様に、位相シフト出力P6およびP7、P9およびP10、ならびにP12およびP13は、対応するラットレース・カプラ150、160、および170のポート2および3に入力される。
【0098】
第2のステージ80B−2では、カプラ140の和ポート1およびカプラ170の差ポート4の出力が、第2のステージのラットレース・カプラ180に入力として供給される。同様の入力が、他の第2のステージのラットレース・カプラ190〜210のそれぞれに供給される。
【0099】
第2のステージのラットレース・カプラ180〜210の和ポートおよび差ポートの出力は、その後、第3のステージ80C−2内のウィルキンソン結合器220〜250を用いて結合され、適当なアンテナに接続される。
【0100】
上で述べたように、各ラットレース・カプラは、そのポート4でカプラ内の挿入損失を提供する。挿入損失は、振幅および位相の不一致に起因して発生する。インピーダンスが整合されている配置について、挿入損失は、等しくない位相シフトに起因して発生する。アンテナ給電部の位相進行が線形であることに留意されたい。したがって、差ポート4からの分離信号は、所望のビーム・パターンを達成するためにアンテナ3、5、7、および9で必要な位相補正の尺度を提供する。再循環し、この位相補正をステージ2および3で結び付けることが、挿入損失を減らし、最終的に最適のビーム・パターンをもたらす。
【0101】
図11に、8°の静的ダウンチルトを有する、
図8〜10に示されたアンテナ給電部の性能を示す。アンテナ給電部は、5つのディジタル・ビームフォーマ・タップ[0〜2dB減衰および0〜360°位相シフト]と組み合わせて使用され、8°のダウンチルトで22dBサイドローブ・レベルをもたらす。
【0102】
図12に、2°および14°の動的ダウンチルトでの性能を示す。アンテナ給電部は、変更されず、ディジタル・ビームフォーマの重みは、ビームを特定のセクタに向けてチルトするために変更される。この場合に、19dBサイドローブ・レベルを有する14°のセクタ化動的ダウンチルトが達成される。同様に、2°のダウンチルトでのセクタは、18dBサイドローブ・レベルを達成する。これらのセクタの両方について、4.5°の必要な3dBビーム幅およびメイン・ローブに向かう最大エネルギが達成される。
【0103】
したがって、能動アンテナ・アーキテクチャの能動構成要素のコストおよび個数における2倍以上の削減を達成できることがわかる。この配置は、トランシーバの部分的な故障の下であってもアンテナ・アレイの性能を改善する。包括的な因子分解は、特定のアンテナ給電部要件に関する解の高速生成を可能にする。
【0104】
アンテナ給電部設計
図13から16に、特定のアンテナ給電部設計に達するための全般的な方法ステップを示す。使用される正確な方法論に関するさらなる詳細は、付録Aに見出すことができる。この方法論を動的に実施して、たとえば微細電気機械システム(MEMS)技術を使用することによってその場でのアンテナ給電部の動的再設計を提供できることを了解されたい。
【0105】
図13に、すべての可能なダウンチルトに関する最適アンテナ給電ネットワークを推定する方法ステップを示す。しかし、この手法は、必ずしも挿入損失の最小化に適してはいない。
【0106】
図14および15に、
図13で推定された最適アンテナ給電ネットワークを使用し、挿入損失を最小化するためにアンテナ給電ネットワークを再設計する方法ステップを示す。
【0107】
図16に、ディジタル・ビームフォーマのパラメータを推定するのに再設計されたアンテナ給電ネットワークおよび必要なダウンチルトを利用する方法ステップを示す。
【0108】
付録A 詳細なアンテナ給電部設計
縮小寸法能動無線トランシーバ内のRFフィーダ・ネットワークおよびディジタル・ビームフォーマの同時最適化
ディジタル・ビームフォーミングを用いる複数出力システムは、セルラ通信システムの容量および信号カバレージのかなりの改善につながる可能性がある。通常、これらのシステムは、各アンテナに接続された能動トランシーバを有し、信号を適応的にビームフォーミング/多重化する柔軟性を提供する。しかし、能動トランシーバのセットは、大規模アンテナ・アレイ・システムのスケールおよびコストをも大幅に増やす。我々は、ディジタル・ビームフォーマ(DBF)を有する減らされた個数のトランシーバが、RFアンテナ・フィーダ・ネットワーク(AFN)を介して増やされた個数のアンテナに接続される、部分的に適応式のビームフォーマ・セットアップを提案する。
【0109】
このアーキテクチャを考慮に入れて、我々は、異なるセルラ基地局に必要なトランシーバの最小限の個数を推定する方法論を提示する。我々は、性能制約および動作制約のホストを満足すると同時に関連するビーム・パターンを提供するDBF重みおよびAFN重みを同時設計するアルゴリズムを提案する。その後、我々は、そのようなネットワークの設計における実用的制限を検討し、マイクロ波構成要素を使用するAFNを因子分解する。最後に、我々は、マクロ・セル・シナリオおよび小セルシナリオのためのAFNのインスタンスを提供し、アルゴリズムによって指定される理論的限界とアーキテクチャならびにその実用的インスタンス化によって指定されるシミュレーション結果との間の類似性および相違を強調する。
【0110】
I.序
A.従来の成果および目標
次世代無線ネットワークは、セルラ基地局で複数の能動トランシーバまたは能動アンテナ・アレイ(AAA)を使用して、理論的限界に近い信頼できる通信を達成する[1]。マクロ・セル・アーキテクチャおよび小セル・アーキテクチャと組み合わせて使用されるそのような能動アンテナのアレイは、特定のユーザに向かう信号の適応セクタ化ならびに異なるセルラ基地局の間での高められた協調を可能にし、最終的にエネルギ効率のよい送信をもたらす。しかし、送信器での複数のトランシーバの導入は、ラジオ周波数(RF)フロントエンドのコストを大幅に増やしもする。
【0111】
各アンテナが専用のRFチェーンおよびベースバンド・トランシーバに接続される複数アンテナ送信器セットアップを検討されたい。適応ビームフォーミング技法が、一般に使用されるが[2]、そのようなシステムは、任意の所与のセルラ基地局の資本支出および運営費の大きな出費を引き起こす。受動リモート・ラジオ・ヘッドへのフォールバックは、AAAセットアップを使用することによって見られる達成可能な利益のすべてを放棄することを強制するはずである。この研究では、減らされた個数のトランシーバを増やされた個数のアンテナにマッピングするすべての可能な形を包括的に調査する。我々の基礎になる目標は、資金の何分の1かでAAAによって提供される必要な柔軟性を可能にするアーキテクチャのリストを考え出すことである。
【0112】
我々は、送信信号が、N
pa個のRFチェーン/トランシーバのセットを使用してディジタル領域で適応的にビームフォーミングされ、ベースバンドからRFに変換されるセットアップを検討する。これらのRF信号は、その後、
図A1(b)に示されたN
t×N
pa、N
t≫N
paアンテナ・フィーダ・ネットワーク(AFN)を使用してN
t個のアンテナに接続される。減らされた個数のRFチェーンを用いるアナログ・ビームフォーミング・アーキテクチャが、低電力トランシーバについて以前に提案された[3]。しかし、30dBmを超える放射電力(セルラ基地局で要求される)について、適応RF回路、バラクタ・ダイオードなどを設計することは、不可能である。この基本的な限界は、RFフィーダ・ネットワークをトランシーバ/PAおよびアンテナを接続する固定されたビームフォーミング・ネットワーク/マトリックスの空間に制限する。単一のトランシーバおよび電気チルト配置を有する(N
t=10)のためのフェーズド・アレイ・システムが、[4]、[5]に示されている。そのような手法は、所望の電気機械/電気ビームチルトを達成するために、方向性カプラ、電力分割器、および位相シフタなどのマイクロ波構成要素のネットワークを有する。これらのシステムは、ダウンチルトの範囲、低い性能、ネットワーク内の損失、ならびにセットアップの柔軟性によって、固有に制限されている。
【0113】
本論文での我々の目標は、異なるセルラ・アーキテクチャのための最適フィーダ・ネットワーク重みおよび最適ディジタル・ビームフォーマ(DBF)重みを設計することである。我々の設計の焦点は、さまざまなセルラ・アーキテクチャについて変化する。マクロ・セル・セットアップでは、焦点は、異なるセクタ用のPAのサイドローブ・レベル(SLL)およびダイナミック・レンジを満足すると同時に非常に指向性のビームを提供し、フィーダ・ネットワーク内の損失を最小化することである。小セル・セットアップまたはメトロセル・セットアップでは、焦点は、フィーダ・ネットワーク内の損失を犠牲にして直交ビーム・パターンおよびSLLについて最適化することである。いくつかの設計問題は、(1)ダウンチルト範囲の異なるセットについてN
paを選択すること、(2)SLL制約およびPA制約を満足するAFN構成要素およびDBF重みを選択すること、および(3)AFN内の因子分解ステージを判定することである。
【0114】
B.接続
アレイ信号処理の文献では、複数のタイプのRFプリプロセッサが、受信器チェーンの寸法を減らし、電力消費を最小化するために設計された[6]、[7]。これらの技法は、「ビーム空間処理」の下でグループ化され、所与のコスト関数についてデータ・モデルを最適化するビームフォーマを設計する体系的手法を提供する。しかし、これらは、実用的制限/制約を考慮せず、実際のそのようなネットワークを実現しない。
【0115】
その代わりに、[8]、[9]は、RFビームフォーミングを可能にするマイクロ波構成要素およびネットワークを設計する。これらのネットワークでは、そのようなネットワークの実用的設計に重点が置かれている。[10]などの後続の成果は、フィーディング・ネットワークを設計するための可能な信号処理フレームワークを確立する。この成果は、アンテナ・アレイ設計の理論的側面と実用的側面との間のブリッジとして働く。現在のトランザクションでは、我々は、信号処理/最適化の展望から開始するが、我々は、複数のフィーダ・ネットワーク構成の包括的な合成および分析を考え出すために、性能制約ならびにネットワーク限界を含める。
【0116】
C.貢献および概要
本論文では、我々は、フィーダ・ネットワーク設計のさまざまな態様を漸進的に研究する。セクションIIでは、我々は、データ・モデルを指定し、設計問題を定式化する。セクションIIIでは、我々は、トランシーバの最小個数ならびにダウンチルト範囲およびSLLとの関係の理論的限界を提供する。その後、我々は、性能制約およびPA限界を考慮しながらRF AFNおよびDBFの最適重みを設計するアルゴリズムを提案する。
【0117】
セクションIVでは、我々は、マクロ・セル・シナリオおよび小セル・シナリオを検討し、AFNを電力分割器および方向性カプラのバンクに因子分解する。この因子分解の焦点は、特定のセルラ・シナリオと、ビーム・パターンのリストについてAFNを最適化するのかAFN内の損失を最小化するのかとに依存する。我々は、そのようなアーキテクチャをバトラ様マトリックスに一般化し、アーキテクチャの系列およびビーム・パターンを最適化しフィーダ損失を最小化するのに必要な条件を示す。セクションVでは、我々は、AFNのさまざまなフレイバのシミュレーション結果を提供し、セクションVIでは、そのビーム・パターン、挿入損失、およびSLL性能と共にマクロ・セル・アーキテクチャおよびメトロ・セル・アーキテクチャの回路インスタンス化を提供する。
【0118】
記号 小文字および大文字の太字は、ベクトルおよび行列を表す。
【0119】
【数1】
は、RF信号を表し、(.)および[.]は、それぞれ、アナログ信号およびディジタル信号を表す。(.)
T、(.)
H、(.)
†、および‖.‖は、それぞれ、行列転置演算、エルミート転置演算、擬似逆行列演算、およびフロベニウス・ノルム演算を表す。I
Kは、単位行列を表す、0および1は、それぞれ0および1の行列/ベクトルを表す。
【0120】
II.システム・モデルおよび提案されるアーキテクチャ
A.データ・モデル
アンテナ・アレイから送信されるRF信号
【0121】
【数2】
および時刻tを表すN
t×1ベクトルを検討する。モジュラAAAセットアップでは、
【0122】
【数3】
のディジタル・ベースバンド等価物は、時刻t=kTでのデータ・ストリームs[k]に対してビームフォーマ
【0123】
【数4】
を使用することすなわち、x[k]=u(θ
d)s[k]によって得られる。u(θ
d)が、θ
dに向かうメイン・ローブを作るために設計されたN
t×1ベクトルであることに留意されたい。単純さのために、
図A1(a)に示されているように、
【0124】
【数5】
を作るために、x[k]に作用する「ディジタル−RF」変換ブロック(RF{.}によって表される)をN
tと表す。
【0125】
代替案では、N
t×1RF信号ベクトル
【0126】
【数6】
を、
図A1(b)に示されているように提案される2ステップAFN−DBFアーキテクチャを使用して作ることもできる。
図A1(b)に示された、受動AFNを介してN
t個の放射要素に接続されたN
pa個のトランシーバを有するセットアップを検討されたい(たとえば、N
t=11かつN
pa=5)。AFNインスタンス化の詳細を、セクションIVおよびVで説明する。この場合に、s[k]は、当初にN
pa×1ディジタル・ビームフォーマ
【0127】
【数7】
を使用して
【0128】
【数8】
としてN
pa×1ベクトルy[k]に変換され、その後に、N
pa個のディジタル−RF変換ブロックおよびAFN行列Wによって、
【0129】
【数9】
と変換される。
【0130】
最初にAFNが推定され、固定されたままにされるので、我々は、この手法を部分的適応ビームフォーマと称する。その後に、DBF
【0131】
【数10】
が、ビームチルトごとに適応的に設計される。単純さのために、基地局アレイとモバイル・ユーザとの間の直接見通し線環境を検討されたい。受信器での理想的なRF−ディジタル変換を仮定すると、基地局アンテナ・アレイに関して方向θ
iに存在するモバイル・ユーザで受信される離散時間信号を、
z[k]=p
ia
H(θ
i)x[k]+n[k]
と表すことができ(伝搬遅延を無視して)、ここで、a(θ
i)は、発射角θ
iのN
t×1アンテナ・アレイ応答を表し、p
iは、基地局からモバイル・ユーザへのこうむる伝搬損失を表し、n[k]は、雑音項を表す。等距離要素を有する均一なアレイを仮定すると、アンテナ応答および伝搬損失は、3GPP仕様書[2]に従って、
【0132】
【数11】
とモデル化され、ここで、δは、2つのアンテナの間の間隔であり、λは、メートル単位の波長であり、g(θ
i)は、アンテナ特性である[2]。3GPP伝送標準規格について、g(θ
i)は、マクロ・セル・シナリオおよび小セル・シナリオについて、それぞれ65°および110°の3dBビーム幅を有するように設計されている。
【0133】
B.モジュラAAAアーキテクチャ − 基準
前に述べたように、我々の目標は、トランシーバの個数を減らし、これによってコストおよびアンテナ・アレイ内で消費される電力を減らすことである。s[k]に対して動作するN
pa=N
t個のトランシーバおよびN
t×1ビームフォーミング・ベクトルu(θ
d)を有する参照のためのモジュラAAAセットアップを検討されたい。そのようなセルラ・セットアップの性能は、そのカバレージおよび容量ならびに所望のモバイル・ユーザの位置に依存してセルをセクタ化する能力によって特徴付けられる。各セクタは、メイン・ローブのチルト角θ
dによって区別される。メインビームの方向での利得および指向性ならびにサイドローブ・レベル(SLL)からなるビームフォーマの性能要件は、一般に、空間的なマスクと称し、N
θ×1ベクトル△
dによって表され、N
θは、分解能に対応する。
【0134】
モジュラAAAアーキテクチャでは、目標は、全体的な平均二乗誤差
【0135】
【数12】
を最小化するθ
dの値ごとに適応ビームフォーマ(u(θ
d))を設計することであり、ここで、A(θ)=[a
T(θ
i=−π),…,a
T(θ
i=−π),…,a
T(θ
i=π)]
Tは、アレイ応答ベクトルをスタックすることによって得られるN
θ×N
t行列である。(2)でu(θ
d)を推定する周知の手法は、最小二乗手法を使用する
【0136】
【数13】
である[11]。しかし、この手法は、必ずしも最適解につながらないか、利得およびSLLを考慮しない。
【0137】
本論文では、我々は、オリジナル・コスト関数(2)に所望の利得/ビーム幅、SLL、PA出力レベルなどの性能制約およびアーキテクチャ制約を含め、反復凸最適化技法を使用してビームフォーマ重みを推定する。これらの最適化が、必ず最適性能につながることが広範囲に示されており[11]、類似するビームフォーマが[12]、[13]で設計された。しかし、これらは、その技法を性能制約のセットを包含することのみに制限している。
【0138】
モジュラAAAのビームフォーマ設計の詳細は、このセクションでは省略する(しかし、これらを、W=IおよびN
t=N
paと表すことによって同時AFN−DBF設計から簡単に理解することができる)。このアーキテクチャおよびその結果のビームフォーマ重みは、我々の基準設計として働く。
【0139】
C.AFNアーキテクチャ 問題の定式化
図A1に示されたAFNアーキテクチャおよび対応するデータ・モデル(1)を検討されたい。我々の目標は、スペクトル・マスクの所望のセット(△
d)を満足する最適AFN行列Wおよびビームフォーミング・ベクトル
【0140】
【数14】
を同時設計することである。N
Sが、ビームチルト
【0141】
【数15】
を有する所与のセル内のセクタの個数に対応するものとする。AFNが送信の始めに推定され、固定され、この部分適応AFN−DBF組合せが、N
S個のビームチルトのスペクトル・マスクを満足しなければならないことに留意されたい。
【0142】
【数16】
を同時設計するという問題を、総平均二乗誤差(MSE)
【0143】
【数17】
を最小化するLSあてはめとして表すことができる。
【0144】
我々は、セットアップの総コストを最小化するので、トランシーバの個数を最小化することを望む。この最適化は、複数の側面拘束を仮定する。設計制約は、次の通りである。
[C1] サイドローブ・レベルは、メイン・ローブより少なくとも15dB下になるように制約される。これは、電力のほとんどが所望のセクタに向けられることを保証すると同時に、隣接するセル/セクタへの干渉を制限するためのものである。3dBビーム幅は、マクロ・セル・セットアップについて4°未満、小セル・セットアップについて15°未満になることが要求される。
[C2] ビームフォーミング係数
【0145】
【数18】
での電力変動を0から1dBまでに制限する。これは、電力増幅器(PA)が効率的であり、線形モードで動作することを保証するために必要である[14]。
[C3] AFN因子分解のステージ数を制限する。これは、低い複雑さのネットワークを保証し、ネットワーク内の損失の伝搬を最小にするために行われる。
【0146】
目標は、(1)スペクトル・マスク△
dを満足するビーム・パターンを制約すると同時にPA出力のダイナミック・レンジを制限するためにAFN重みおよびDBF重みを設計し、(2)異なるビームチルトおよび挿入損失を計上すると同時に受動マイクロ波構成要素を使用してAFNをインスタンス化することである。我々は、次の順序で問題を定式化し、解くことによって、解空間を狭める。
[P1−a] 我々は、当初に、マイクロ波回路での損失およびPA効率を緩和する。特定のアーキテクチャ要件および性能要件を考慮して、トランシーバの個数に関する限度は何であるか?
[P1−b] その後、所与のAFNおよびDBFオーダーについて、サイドローブ・レベルおよびPAのダイナミック・レンジを満足する最適重みを設計することが可能であるか?
[P2] 我々は、どのようにしてAFN相互接続を頑健な設計につながるように因子分解するのか?我々は、マイクロ波構成要素のバンクを使用してAFNを表し、その接続、重み、および位相シフトを最適化して、ビームチルトのセットについて挿入損失を最小化することができるのか?
上の2つの問題は本論文の核を成し、それら問題の解を次の3つのセクションで扱う。問題[P2]は、セルラ・アーキテクチャの目標に依存して副分割され、そのようなアーキテクチャおよびインスタンス化の詳細な合成および分析は、セクションIVおよびVで提供される。
【0147】
III.AFN重みおよびDBF重みの同時最適化のアルゴリズム
このセクションでは、我々は、問題[P1 aおよびb]を考慮し、所望の結果のためのAFN重みおよびDBF重みを推定する。
【0148】
A.トランシーバの個数の限界
AFNの導入は、適応ビームフォーマのオーダーをN
paまで減らす。すべてのθ
d∈[−π/2:π/2]
1(
1理想的なアンテナ要素を仮定する)について適応的に設計できるモジュラAAA u(θ
d)とは異なって、AFN配置は、特定の範囲のビームチルト
【0149】
【数19】
を満足することしかできない。AFN重みおよびDBF重みの導出に進む前に、所望のSLLを達成する所与の
【0150】
【数20】
に関するトランシーバの個数N
paの理論的限界を導出することが重要である。
【0151】
MSEコスト関数(3)から開始し、モジュラAAAについて最適ビームフォーマ重みu(θ
d)を入手できると仮定する。後に、セクションIII−Cで、設計手順を説明するが、[12]、[13]をも参照されたい。(2)から、LS近似
△
d≒A(θ)u(θ
d)
が得られる。AFN−DBFコスト(3)を、(2)のLS近似を利用して
【0152】
【数21】
と書き直すことができる。ビームチルト範囲
【0153】
【数22】
についてu(θ
d)をスタックして、N
t×N
S行列
【0154】
【数23】
を得る。次の補助定理は、ビームチルト範囲
【0155】
【数24】
の最適AFN重みの特性を表す。
【0156】
補助定理1 シナリオ[P1−a]を検討されたい。AFNは、理想的で無損失の構成要素から構成され、PAは、無限の範囲を有する。所与のN
paについて、フィーダ・ネットワークの最適重みは、
【0157】
【数25】
の支配的基底ベクトルによって張られる空間内に存在しなければならない。
【0158】
【数26】
【0159】
証明 特異値分解(SVD)
【0160】
【数27】
を計算する。
【0161】
【数28】
ここで、UおよびVは、左特異ベクトルおよび右特異ベクトルであり、Σは、特異値に対応する。N
t≧N
Sについて、任意のu(θ
d)を、Uの線形結合を使用して得ることができる。σ
pa+1≒0である場合には、
【0162】
【数29】
を使用する
【0163】
【数30】
の線形結合が、u(θ
d),
【0164】
【数31】
をもたらす。σ
pa+1>0、W=U(:,1:N
pa)、および所与のN
paについて、Uの支配的基底ベクトルとしてWを選択することが、最良のN
paランク表現を提供する。
【0165】
いくつかの所見がある
・この補助定理は、N
t≧N
Sを仮定する。ビームチルト範囲N
Sを分解能とみなすこともでき、N
t<N
Sの場合には、
【0166】
【数32】
からN
t個の相互に離隔されたθ
dを得、補助定理1に進むことができる。
・この手法を、[15]のブラス・マトリックスの重みを考え出すためのより体系的で頑健な手法とみなすこともできる。
・最適のWに関するこの限界が、フィーダ損失、PAのダイナミック・レンジ、ならびにネットワーク全体の可能な相互接続の個数を考慮しないことに留意されたい。しかし、これは、次のセクションで実用的問題を検討する更新の出発点を提供する。
・マクロAFN内の異なるセクタのビームチルト
【0167】
【数33】
は、お互いから大幅には変化しない。しかし、メトロAFN内の異なるセクタのビームチルトは、大幅に変化し、最終的にフィーダ・ネットワーク内の損失を制限する。
【0168】
シミュレーション結果 各隣接要素が距離0.8λで均等な間隔をおかれ、3dBビーム幅65°を有するように設計された2.6GHzで放射するN
t=11個のアンテナを有するマクロ・セル・セットアップを検討されたい。
図A2に示されたシミュレーション結果は、SLLを達成するのに必要なビームチルト範囲とトランシーバの最小個数との間の関係を提供する。X軸およびY軸は、それぞれ、ダウンチルト範囲およびトランシーバの最小個数を示し、Z軸は、そのような構成のワースト・ケースSLL値をプロットする。各ケースで、ダウンチルト範囲は、
【0169】
【数34】
の任意の2つの要素の間の最大差に対応する。我々は、補助定理1を使用してCFN重みを推定する。これらの結果は、ダウンチルト範囲を有するマクロ・セル・シナリオについて少なくともN
pa=2個のトランシーバが必要であり、18〜20dB SLLが達成されることを示す。実際には、挿入損失、PAの制限されたダイナミック・レンジ、および所望のメインビーム利得を考慮するために、3〜4個のトランシーバが必要である。
【0170】
B.AFNおよびDBFを最適化するアルゴリズム
AFNに必要な最小のN
paを確立した後に、次のステップは、△
dを満足するAFN重みを設計することである。このサブセクションの焦点は、オリジナル・コスト関数(3)に制約を含めることと、重みを推定する内点アルゴリズムを提案することである。我々の焦点は、最適のu(θ
d)の重みを設計することであり、u(θ
dから重みWの設計への進行は、セクションIII−Aに従う。
【0171】
1)AFN制約の導入 特定のビームチルト角に関するビームフォーマ重みを推定する周知の技法は、Capon手法または最小分散無歪応答(minimum variance distortionless response(MVDR))手法[16]である。目標は、メイン・ローブが特定のセクタに向かって焦点を合わされると同時に、他の方向に送信される全体的な分散(すなわち、電力)を最小化するように、u(θ
d)の重みを設計することである。数学的には、上記の2つの条件を組み合わせ、
【0172】
【数35】
と書くことができる。さらに、制約のホストを満足するために、u(θ
d)が必要である。メインビームの幅を定義する1つのそのような制約が、3dBビーム幅であり、これを上記の制約に含めることは、
【0173】
【数36】
につながり、ここで、θ
3dBは、電力半値ビーム幅(half power beam width)をもたらす角度に対応する。θ
SLLが、所望のビーム・パターンのサイドローブを形成する角度のリストに対応するものとする。特定のSLL(たとえば、メイン・ローブよりε
dB=20dB低い)を達成するためには、ビームフォーマは、εによって指定される規定されたSLL制約をも満足しなければならず、
【0174】
【数37】
である。
||u
H(θ
d)A(θ
SLL)||≦ε
ここで、A(θ
SLL)は、サイドローブのリストのアレイ応答を表す。表記の単純さのために、我々は、上SLLと下SLLとの間で区別しない。実際には、我々は、等しくない上サイドローブ・レベルおよび下サイドローブ・レベルを保つ(たとえば、厳密なLSLおよび緩和されたUSL制約を有する)。
表1
u(θ
d)を反復的に推定する内部プログラム
・u
H(θ
d)A
eq=e
T、公差t:=t
(0)、収束パラメータμ>1、および公差τ>0の下で厳密に実現可能なu(θ
d)を与えられる。
・u(θ
d)の更新すなわちu(θ
d)
−t)=▽
2[P(u)
−1]▽[P(u)]を計算する
−ここで、
【0175】
【数38】
である
−かつ、▽は、u(θ
d)に関する偏微分に対応する。
・u(θ
d)=u(θ
d)+u(θ
d)
*t)を更新する
・停止判断基準は、m/t<τの場合に終了である。
・ステップ t:=μt
【0176】
上記のすべての制約を組み合わせて、中心の最適化問題を、次のように定式化することができる。
【0177】
【数39】
|u
H(θ
d)A(θ
SLL)|≦|ε,…,ε| (7)
の下で、
【0178】
【数40】
ここで、(6)は、ビームチルト制約を指定し、(7)は、SLL制約を指定する。上のコスト関数を、通常は等式制約および不等式制約を伴って
g(x)≦0かつh(x)=0の下で
arg min
x f
0(x)
と記述される凸最適化問題[11]の形で計算しなおすことができる。凸の形で問題を表すことの重要性は、解析的解が存在しない可能性があるが、そのような問題を数値的に効率的に解くことができ、そのような問題が必ず最適解につながることが示されることである。1つの一般に使用される制約付き最適関数が、内点アルゴリズム[11]である。ビームフォーマ重みを推定する内点アルゴリズムの詳細については、表1および付録Aを参照されたい。ここで提案されるアルゴリズムが、線形制約ならびに二次制約を組み込むことに留意されたい。
【0179】
C.ディジタル・ビームフォーマ設計
前のサブセクションでは、メインビームおよびSLLを満足する最適AFNの重みを推定するアルゴリズムを提案した。AFNが、所望のビーム・パターンを達成するために必ずディジタル・ビームフォーマと組み合わせて使用されることに留意されたい。言い替えると、ユーザ信号s[k]およびアレイ応答a(θ
d)を与えられて、AFN Wは、
【0180】
【数41】
の関数である。代替案では、送信受信二重性は、DBF−AFNダウンリンク・セットアップを逆転された信号フローを有するAFN−DFBアップリンク・セットアップとして表すことを可能にする[17]。最適AFNがダウンチルトの所与の範囲についてIII−Bに従って設計された後に、DBF重みは、二重セットアップでAFNの関数である。
【0181】
このシナリオでは、目標は、DBF重みを設計し、コスト
【0182】
【数42】
を最小化することであり、ここで、H(θ
d)は、所与のWのビーム空間アレイ応答であり、△(θ
d)は、所望のスペクトル・マスクである。上記コストの単純な解は、LS推定値
【0183】
【数43】
である。
【0184】
PA制約を有するDBF設計 制約されない問題(8)のLS解から得られるDBF重みは、振幅テーパリングの線形動作範囲を考慮に入れていない。この理由から、我々は、各DBF出力が特定の値または特定の範囲に制限される追加の制約
【0185】
【数44】
を導入する。コスト(8)を、
【0186】
【数45】
としてPAあたりの電力制約を含めて表すことができる。さらに、我々は、(5〜7)に似たメイン・ローブ、ビーム幅、およびSLLを導入し、セクションIII−Bならびに[11]、[13]で説明される内点手法を使用して、(9)を最小化することができる。アンテナあたりの電力を制約された最適化が、二次等式制約上で行われる([13]で提案される不等式制約および線形制約ではない)ことに留意されたい。いくつかの形で、AFNを設計し、その後にDBF重みを設計するこの技法は、[18]の同時設計に似ている。
【0187】
IV.AFNのアーキテクチャ的考慮事項
セクションIII−BおよびIII−Cが、AFNの設計に関するいくつかの重要な結論を提供するが、これらがアーキテクチャの制限を考慮しないことに留意されたい。ハードウェアが、自由度に関する重大な制限を課すことを考慮すると、セクションIIIの結果を直接に適用することは不可能である。このセクションでは、特定のアーキテクチャのための設計変更を提案する。
【0188】
A.2ステージ・ビームフォーミング
AFN−DBF配置を、特定のセクタに向かって送信ビームをステアリングする2ステージ変換とみなすことができる。第1のステージすなわちDBFは、ビームチルトごとの適応変換であり、単純な実施態様を有する。しかし、第2のステージのAFNは、マイクロ波構成要素からなり、その実施態様は、特に目標がフィーダ・ネットワーク内の損失を最小化することと、セクタに別個のビーム・パターンを提供することとである時に、些細なものではない。
【0189】
たとえば、
図A4に示されているようにサブマトリックスのバンクに因子分解されたAFN Wを検討されたい。各サブマトリックスは、電力分割器(ウィルキンソン分割器すなわちWDなど)のバンク、ストリップライン/位相シフタ、および方向性カプラからなる[19、Ch.7]。たとえば、我々は、電力分割器D
fbおよび方向性カプラR
fbのフィルタ・バンクを使用してWを表す。
W=D
fb×P
1×R
fb
=(D
w1×D
w1×D
w3)×P
1×(R
c1×R
c2)
上の式では、D
wiは、ステージiの電力分割器のバンクを表し、R
ciは、ステージiのハイブリッド・カプラ/結合器のバンクを表す。分割器およびカプラ・ネットワーク内のステージ数は、AFNとアンテナとの間の出次数に依存する。2ウェイ分割器およびカプラからなるネットワークについて、全体的なステージ数は、必ずlog2[N
t]以下である。
【0190】
カプラ/分割器の既存の実施態様では、通常、0.1〜0.2dBの損失が、各要素で発生する。しかし、フィーダ・ネットワーク内の最も支配的な損失は、通常は各結合器に入る信号の振幅および位相の不一致に起因して生じる挿入損失である。Wが、非0要素を全く有しない場合に、AFN全体を、下記を有する3ポート・ネットワークのバンクを使用して表すことができる。
1)各PAに接続された(N
t−1)個の電力分割器、すなわち、合計N
pa(N
t−1)個の分割器。
2)各アンテナに接続された(N
pa−1)個の結合器、すなわち、合計N
t(N
pa−1)個の結合器。
3)さらに、AFN行列の要素は、所望のビーム・パターンを達成するために位相シフトされる(ストリップラインまたは誘電体を使用して実施される)。
そのような実施態様は、相互接続の多数の層を必要とする複雑なネットワークにつながるはずである。さらに、アンテナで結合される信号が振幅および位相において整合される可能性は低く、これは、かなりの量の挿入損失につながる。言い替えると、効率的な実施態様のために、結合器および電力分割器の個数は、最低限に保たれなければならず、結合器に入力される各信号の振幅および位相が必ず整合されることを保証するために注意を払わなければならない。
【0191】
マクロセル・モジュラAAAセットアップでは、隣接セクタの間のビームチルトの差は、
図A3(a)より少なく(<20°)、モバイル・ユーザと基地局との間の距離は、通常は
図A3(a)より大きい。マクロAFNの強調は、モジュラAAAの範囲と同一の範囲を維持する狭いビームを設計すること、言い替えると、フィーダ・ネットワーク内で発生し得るすべての損失を最小化することである。代替案では、小セルモジュラAAAセットアップで、隣接セクタの間のビームチルトは、大きく(>20°
図A3(b)を参照されたい)、強調は、直交ビーム・パターンのセットを考え出し、フィーダ・ネットワーク内である程度の損失を許容することである。
【0192】
この点で、同時設計問題
【0193】
【数46】
を、次のようにセルラ・アーキテクチャのタイプに依存して再分類することができる。
[D1]Wを再設計し、挿入損失を最小化することに焦点を合わせ、その後、ビーム・パターンについて最適化するために
【0194】
【数47】
を設計すること。
−この手法は、通常、マクロセルの場合に適する。
[D2]Wを再設計し、直交ビーム・パターンの生成に焦点を合わせ、挿入損失を犠牲にする。
−この手法は、通常、小セルの場合に適する。
直観的に、設計[D1]および[D2]は、AFNの別個の因子分解につながるはずである。我々は、このセクションの残りで、Wの設計に焦点を合わせ、
【0195】
【数48】
の設計は、セクションIII−Cに従う。
【0196】
B.[D1]挿入損失を最小化するためのWの再設計
要求1 APNが、
図A4に示されているようにハイブリッド方向性カプラのバンクに因子分解されている、シナリオ[P2]を検討されたい。各バンクは、さらに、ハイブリッド・カプラの多数のステージに分割される。挿入損失を最小化するAFN設計について、各ステージR
c,i内の方向性カプラの個数は、挿入損失を最小化するためにN
paを超えてはならない。
【0197】
証明 挿入損失は、バンクR
c,i内の各カプラでの振幅および位相の不一致に起因して発生する。適応DBF
【0198】
【数49】
が、N
pa個の次元または自由度を有し、θ
dの値ごとに、これらの重みが、挿入損失を最小化しまたはビーム・パターンを最適化するのいずれかのために適応的に変更されることに留意されたい。線形推定理論から、N
pa×1個のベクトル
【0199】
【数50】
は、多くとも、それぞれN
pa個の結合器ノードでの挿入損失を計上することができる。したがって、AFNでの挿入損失を最小化するためには、結合器の個数をN
paまでに制限することが必須である。
【0200】
R
c,iが、通常は、N
paを超える次元を有することを考慮すると、この結果は、挿入損失を最小化するR
c,iが、疎な行列でなければならないことを指定する。
【0201】
要求2 N
t≫N
paである、N
t×N
paセットアップを考慮すると、所与のPAに接続されたアンテナ要素の個数が、必ず1より大きいと仮定することが穏当である。穏当なグレーティング・ローブおよびSLLについて、所与のPAに接続された隣接するアンテナ要素の間の間隔は、λ/2よりはるかに大きくなってはならない。
【0202】
証明 AFNの各列を、各PAに接続された固定されたビームフォーマとみなすことができる。適応DBFは、2ステージ・ビームフォーミングを可能にするためにN
pa個の自由度を使用してAFNからの異なるビームを結合する。グレーティング・ローブおよびサイドローブは、通常、アンテナ間隔がλ/2より大きい任意のアンテナ・アレイ・ビームフォーミング・セットアップで発生する。各PAに接続された隣接するアンテナ要素が、λ/2より大きい間隔を有する場合には、固定ステージ・ビームフォーマは、必ず、サイドローブおよびグレーティング・ローブを作り、減らされた寸法(N
pa)の適応DBFは、ダウンチルトの範囲全体についてすべてのサイドローブおよびグレーティング・ローブを抑制することができない。この理由から、所与のPAに接続されたアンテナ要素の間の間隔を制限することが必要である。
λ/2間隔は、無指向性アンテナ要素に適用可能である。この間隔は、指向性アレイについて実用において多少緩和される。3dBビーム幅≒65°と共に3GPPで一般的に使用されるブロードサイド要素(broadside element)について、アレイ間隔は、0.8λまでに制限される。
【0203】
1)orthogonal matching pursuit 要求1および2は、所与のPAに接続されたアンテナが、一緒にグループ化され、所与のカプラ・ステージR
c,i内で、任意の2つのPAが1つのアンテナでのみ連結されると結論することを可能にする。空間相互接続マップを、N
t×N
pa行列
【0204】
【数51】
と表し、要求1および2を満足するものとする。たとえば、11×3のケースで、s
1=[1
5,0
6]
Tかつs
1=[0
4,1
3,0
4,]
Tである。相互接続Sを満足するAFNは、orthogonal matching pursuitの変更された版[20]、[18]を使用して、次のように再設計される。
・
【0205】
【数52】
であることに留意されたい。
・k∈{1,…,N
pa}に対して
−
【0206】
【数53】
を再計算する。
−空間相互接続を満足するAFN重み
【0207】
【数54】
を抽出する。
−w
kの各列を正規化する。
−W=[w
1,…,w
k]
−直交射影
【0208】
【数55】
を計算する。
・kについて終了。
・最終的なAFNは、
【0209】
【数56】
である。
orthogonal matching pursuitが選択されるのは、低い複雑さの実施態様をもたらすからであり(ブルート・サーチ(brute search)技法と比較した時)、[20]に示されているように、大きいN
paについて最適性能に収束するためである。
【0210】
2)電力分割器バンクD
fbの分解
【0211】
【数57】
であることに留意されたい。w
iの非0要素の大きさは、第i PAからの電力分割器実施態様に対応し、w
iの要素の位相は、適当な位相シフトまたは線長実施態様に対応する。相互接続マップSから、PA出力を、位相シフトされ結合される前に
【0212】
【数58】
回分割することができる。これらの要素をワンショットN
t,div×1ベクトルを使用して表すことは、非実用的な実現につながる可能性がある。この理由から、各PA出力は、連続して3ポートWDに因子分解される。これに関して、WDの連続因子分解は、高次DFTの基数2のFFT表現に似ている。
【0213】
設計実施態様について、WDの最初の2つのステージすなわちD
w,1およびD
w,2は、平衡分割器からなり、非平衡分割器[19]は、通常、最終ステージのために予約される。その後、最終ステージD
w,3の各出力が、
図A4に示されているように位相シフタのバンクPに接続される。我々の実施態様では、Pは、その要素が単位円に沿った任意の位相に対応する対角行列である。Pでの位相シフトが、既に対応する電力比によって変更されていることに留意されたい。
【0214】
3)ハイブリッド・カプラ・バンクR
fbの分解 Pの出力は、R
fbを使用して変換され、N
t個のアンテナに供給される。R
fbの効率的な動作のためには、各方向性カプラへの入力信号が、振幅および位相において整合されることが必須であり、振幅/位相に関するすべての不一致は、挿入損失をもたらす。入力信号が所与のステージ(たとえば、R
c,i)で不一致である場合に、挿入損失は、抑制のために次のステージR
c,i+1に伝搬されなければならない。
【0215】
この理由から、我々は、ラットレース・カプラまたは分岐ハイブリッド(branch hybrid)などのハイブリッド要素を結合器として使用する。ラットレース・カプラでは、ポート2および3すなわち入力ポートと入力の和および差とが、それぞれポート1および4に結合される[19、480頁]。ポート4(分離ポートとも称する)が、位相はずれ挿入損失を抽出することに留意されたい。ハイブリッド要素を使用することの主な理由は、所与のステージR
c,i任意の位相または振幅の不一致が、ハイブリッド・カプラの分離ポートを使用して取り込まれることである。アンテナ・アレイならびにAFNセットアップの線形位相特性を活用して、ポート4出力を、その後、次のステージR
c,i+1への入力として再循環させ、挿入損失を計上することができる。これらのハイブリッド要素を、分岐ハイブリッド(一般に、バトラ・マトリックス実施態様[8]で使用される)またはラットレース・ハイブリッドのいずれかとすることができる。我々のセットアップでは、ラットレース・ハイブリッド要素が使用され、その動機づけは、次の通りである。
・4ポート・ラットレース・カプラを、基数2のDFT実施態様またはFFT実施態様とみなすこともできる。高次DFTを、そのようなカプラの異なる配置を使用して得ることができる。
・アンテナ・アレイ・セットアップと共に使用される2ステージ・ビームフォーマは、中央アンテナ要素に対称な、線形位相特性を有する。これは、直観的に、あるラットレース・カプラの分離ポートの信号が、別のラットレース・カプラの出力ポートの信号と同一の位相を含むことを示唆する。
【0216】
4)線形位相カプラを使用する挿入損失最小化 セクションIIIおよびIVで提案される技法は、我々を、線形位相を有するu(θ
d)(ならびにその後にWおよび
【0217】
【数59】
)すなわち、
【0218】
【数60】
に導く。この線形位相観察を、
【0219】
【数61】
に見ることもできる。
図A6に示された11×5 AFNを検討されたく、
図A6では、R
c,1のカプラRR
LおよびRR
Uの位相入ってくる信号に不一致がある。この不一致は、RR
LおよびRR
Uのポート4に反映される。アーキテクチャの対称性およびAFNの各ステージの信号の線形位相を活用することが、R
c,1の分離ポート(ポート4)をR
c,2の入力ポート(ポート3)にマッピングする。この変更は、
【0220】
【数62】
の対応する再設計と組み合わされて、結合器での位相不一致を等化する。
【0221】
C.[D2] 直交ビームを最適化するためのWの再設計
メトロ/小セル・シナリオでは、目標は、30°離隔されたビームチルトを設計することである。その場合に、AFN設計の焦点は、直交ビーム・パターンの提供により強く向かい、[D1]狭いメイン・ローブの設計および挿入損失の最小化とは根本的に異なる。我々は、セクションIIIと同様にAFN重みおよびDBF重みから始める。
【0222】
1)既存のアーキテクチャ λ/2間隔アンテナ・アレイと共に使用される時にたとえば直交を生成し、ビームチルト{−30,0,+30}を提供するための要件を考慮すると、1つの周知の技法は、バトラ・マトリックスを使用することである[8]。このマトリックスは、N
t個のPAおよびN
t個のアンテナを接続し、低損失を有する分岐ハイブリッドまたはラットレース・ハイブリッドを使用して実施される、N
t個の入力およびN
t個の出力を有する。所与のビーム・パターンを生成するために、1つのPAだけがオンに切り替えられる。{−30,0,+30}で3つのビームを生成するそのような手法の例を、
図A7に示す。この技法に関する主な不利益は、これが、通常はN
t個の入力を必要とし、所与の時に1つのPA(または
図A7に示されているように2つ)だけが動作するので放射電力が低いことである。
【0223】
その一方で、セクションIIIで設計されるようにAFN行列を直接に実施する場合に、その結果は、ブラス・マトリックスおよびノラン・マトリックス(Nolen matrix)を設計するための一般化された手法になる[15]。通常、ブラス・マトリックスは、AFNのQR分解またはグラムシュミット直交化を実行する。著者[15]は、ブラス・マトリックスの無損失版を実施するが、所与の時に動作する1つのPAだけを有する。
【0224】
2)一般化されたバトラ・マトリックス 我々は、我々の小セルAFNを一般化されたバトラ・マトリックスと称する。ハイブリッド要素を使用するバトラ様ビームフォーマのそのような分解は、以下をもたらす。
【0225】
1)ハイブリッド・カプラを使用するAFNの低複雑さ因子分解につながる、FFTを使用する一般化されたバトラ・マトリックスの表現([21]、[10]で説明される)。
【0226】
2)[D1]に似て、挿入損失を抽出し、再循環させる(セクションIV−B.3)。
【0227】
[D1]との我々の決定的な1つの相違は、この場合に、我々の焦点が直交ビーム・パターンの設計にあるならば、要求1を満足することができないことである。このために、セクションIV−Aで提案されたOMP設計技法は、[D2]について有効ではない。要求2が、グレーティング・ローブを防ぐための必要条件であり、この理由から、すべての可能なAFN設計が要求2を満足しなければならないことに留意されたい。
【0228】
図A7(a)および(b)の代替構成は、バトラ・マトリックスの特定のインスタンスである。一般に、我々の目標は、AFNの包括的な因子分解を考え出すことである。前に説明したように、焦点は、減らされた個数の結合器を用いて、メトロAFN行列をより疎にすることである。そのような因子分解は、整合結合器入力を単純化し、その後、所望のビーム・パターンを達成しながら挿入損失を最小化する。
【0229】
N
t×N
paのAFNを与えられて、所与のアンテナに接続された結合器の個数は、行重みによって指定され、分割の個数は、列重みによって指定される。位相シフトは、非0項の行列乗算によって指定される。結合器の個数を減らすことは、行列乗算すなわち位相シフトが支配的動作であるようにAFN行列を編成することを要求する。この変換を達成する1つの周知の手法は、コレスキ分解を介するものである[22、Chap.3]。たとえば、次の下三角行列および上三角行列として分解された4×3AFNを検討されたい。
【0230】
【数63】
ここで、s
22は、シュール補行列として知られていて、s
22=w
22−L
21U
12である。この因子分解は、AFNの全体的な応答を変更しない。言い替えると、
【0231】
【数64】
の変化はなく、対応するビーム・パターンの変化もない。上三角構造および下三角構造は、各係数の数結合器が大幅に減らされ、各ステージでの挿入損失を定量化する簡単な形をもたらすことを提示する。
【0232】
この因子分解を、Lをさらに分解するためにL
21に対して繰り返すことができる。コレスキ分解は、正方行列について好ましいが、そのような手法を、任意の矩形行列(6×3配置および8×3配置など)について変更することができる。AFN設計が、ワンショットであり、その後固定されたままに保たれるので、行列因子分解の複雑さが問題ではないことに留意されたい。
【0233】
V.シミュレーション結果
AFN−DBFアーキテクチャの性能を評価するために、我々は、マクロ・セル複数アンテナ基地局および小セル複数アンテナ基地局に適用した。我々は、セクションIIIおよびセクションIVで提案したAFNアルゴリズムおよびアーキテクチャのシミュレーション結果を提示する。これらの結果は、異なる構成、セクタ、および対応する挿入損失値に関するビーム・パターンの計算を含む。性能インジケータは、通常、
1 θ
dを中心とするセクタに沿い、必要なUSL値およびLSL値を満足する放射エネルギと
2 CFN設計の異なるステージおよびビームチルト値での挿入損失の効果/伝搬と
である。
【0234】
A.[D1] ビーム・パターン最適化および挿入損失計算
AFNアンテナ・アレイを有する基地局は、θ
d∈{0°,…,20°}だけ離隔された特定のセクタに向かって所望の信号をビームフォーミングし、送信する。マクロセットアップでは、アンテナの個数は、通常はN
t=10〜12、θ
3.dB≦5°であり、SLLは、16〜18dB程度に制限される。各PAに接続されたDBF重みの振幅テーパリングは、線形動作モードでのPAを容易にするために範囲0〜1dBになるように制限される。アンテナ要素アンテナは、0.8λだけ離隔される。クリティカル間隔が、0.5λであり、この増やされた間隔すなわちまたは空間サブサンプリングが、広帯域セットアップに向かう遷移を考慮に入れるために必要であることに留意されたい。したがって、我々は、グレーティング・ローブを抑制するという追加の課題を有する。[D1]ケースのAFN設計の焦点は、挿入損失を最小化することである。
【0235】
1)異なるN
paおよびθ
dの垂直セクタ化
図A8(a)に、θ
d=0°、5°、および10°に離隔された3つのセクタを提供する、N
pa=4、N
t=11のビーム・パターンを示す。曲線2は、モジュラAAAセットアップの性能を示し、曲線1、3、および4は、AFN配置の性能を示す。曲線2と3とを比較すると、この結果は、N
pa=12DBF重みを有する完全適応モジュラAAAの結果が、部分適応AFN配置の結果と分離不能であることを示す。これらの手法の両方が、ビームチルト5°に沿った10dBの放射電力について24dB SLLθ
3.dB=5°をもたらす。我々が、セクタθ
d=0°とθ
d=10°に移動する際に、AFN配置のSLL性能は、24dBから18.5dBにわずかに劣化する。しかし、θ
dに沿ったAFNの放射電力は、それでも維持される。
【0236】
図A8(b)に、N
pa={2〜5}およびN
t=11を有するさまざまなAFN配置のビーム・パターンを示す。このAFNは、当初は、セクタθ
d∈{0°,…,10°}のために設計された。その後、曲線1〜4は、θ
d=12°に新しいセクタを導入する時の性能のスナップショットを示す。これらの設計のすべてが、挿入損失について最適化することに留意されたい。曲線1(N
pa=4)および2(N
pa=5)は、それぞれ、θ
3.dB=5°を達成しながらの16dB SLLおよび18dB SLLを示す。期待されるように、性能は、N
pa=2を有し曲線2に示されたAFN配置の時に大幅に劣化する。設計の柔軟性を考慮に入れ、異なるθ
dに対処するためには、N
pa≧3に保つことが必要である。
【0237】
2)異なるAFNアーキテクチャの挿入損失
図A9(a)に、異なるビームチルトθ
d∈0°,…,30°の11×5セットアップの結合器での平均位相不一致を示す。挿入損失が、結合器での位相不一致に比例することに留意されたい(その後に使用されるラットレース・カプラは、平衡カプラである)。曲線1は、セクションIIIのAFN結果を示し、この結果を、損失の大きいブラス・マトリックスのインスタンスとみなすこともできる[15]。曲線2および3は、それぞれ、セクションIV−B.2およびIV−B.3で提案されるAFN配置の性能を示す。曲線1および2を比較すると、この結果は、セクションIV−B.3で説明されたorthogonal matching pursuitを使用するAFNの分解が、挿入損失を大きく最小化することを示す。ビームチルト範囲が増えるにつれて、セクションIV−B.3で説明されるようにハイブリッド・カプラを使用し、挿入損失を補償することが重要になる。しかし、ILMR手法が、θ
d∈{13°…17°}について悪く動作し、これが、結合器でのある振幅不一致に起因することに留意されたい。この理由から、我々は、ビームチルト範囲に従って、セクションIV−B.2で言及された手法またはセクションIV−B.3で言及された手法のいずれかを選択する。
【0238】
B.[D2]小セルの直交ビーム・パターン
AFNアンテナ・アレイを有する基地局は、θ
d∈{−30°,…,+30°}だけ離隔された特定のセクタに向かって所望の信号をビームフォーミングし、送信する。この場合に、PAは、通常、0.5W電力を放射する。基地局アンテナは、0.5λだけ離隔され、選択されるアンテナ要素は、110°の3dB帯域幅を有する。小セルセットアップ、アンテナの個数N
t=4〜6では、3dBビーム幅制約は、持ち上げられ、SLLは、10〜15dB程度に制限される。各PAに接続するDBF重みの振幅テーパリングは、範囲0〜3dBになるように緩和される。この場合の焦点は、挿入損失性能を犠牲にしながら、直交ビーム・パターンを考慮に入れることである。
【0239】
トランシーバの個数N
paおよびダウンチルト範囲θ
dの効果
図A10(a)は、θ
d∈{−30°,0°,+30°}だけ離隔された3つのセクタを提供するN
pa=2、N
t=4のビーム・パターンを示す。θ
dごとのアレイ応答a(θ
d)が、お互いに直交であることに留意されたい。したがって、N
pa=2について、補助定理1は絶対に満足されず、そのようなセットアップは、必ず、曲線1および3によって確認されるように準最適性能につながる。
図A10(b)では、トランシーバの個数N
pa=3に増やし、アンテナの個数N
t=6に増やすことによって、
図A10(b)に示されているように、すべてのPAが一定の電力で動作する状態で、10dB SLL抑制を達成することが可能である。実際には、セクションVIで説明するように、改善されたSLLのためにN
t=6構成を使用する。
【0240】
VI.ネットワーク・インスタンス化
A.メトロAFNインスタンス化
以下では、ブロードサイド方向から−30°から+30°まで離れてメインビームをステアリングすることができる小セル基地局の3対6AFNの1つの可能なインスタンス化を提示する。特定のインスタンス化のブロック図を、
図A11に示す。
【0241】
これは、電力分割/結合および位相シフト・ネットワークの5つの別個のステージからなる。このAFNの入力は、3つの異なるトランシーバによって生成される3つの信号x=(x1,x2,x3)である。このAFNの第1のステージは、各トランシーバの信号を3つの構成要素に分割する3つの1対3電力分割器からなる。これらの分割器は、一般に非平衡であり、したがって、各分割器の出力信号が、位相整合される場合であっても、これらは、大きさにおいては等しくない。このAFNの第2のステージは、9つの1対2電力分割器からなる。これらの分割器のそれぞれが、分割器の第1のステージの9つの出力信号のそれぞれの2つのインスタンスを生成する。第1のステージに似て、この第2のステージの1対2電力分割器のすべてが、非平衡である。このAFNの第3のステージは、AFNの第2のステージの出力のいずれかの位相を正しくセットする18個の静的位相シフト要素からなる。第3のステージの位相シフタのそれぞれによって導入された位相の個々の量および最初の2つのステージの電力分割器の電力分割比は、本論文の以前のセクションで提示された最適化アルゴリズムによって決定される。その結果、一般的な場合に、このAFNの第3のステージの出力信号は、振幅非平衡と位相不整合との両方である。3対6AFNの第4のステージは、第1のトランシーバから発する信号(x1のインスタンス)と残りの2つのトランシーバから発する信号(x2およびx3のインスタンス)とについて異なる。後者について、このステージは、図に示されているように第3のステージの2つの連続する出力信号を合計する6つの2対1電力結合器からなる。第3のステージからの出力信号が、振幅および位相において整合されないことを考慮すると、このステージの電力結合器が、固有に損失が大きいことが予想される。入力信号の所与のセットについてこれらを最小化することは、最適化アルゴリズムの一部として満足されなければならない制約の1つにならなければならない。前者の信号について、第4のステージは、このステージの電力結合器の出力信号とそのような結合器を通過しない信号との間の位相不一致を最小限に抑えなければならない位相シフト構成要素からなる。最後に、このAFNの最後(第5)のステージは、第4のステージの位相シフタからの信号を第4のステージの電力結合器の信号と2対1電力結合器からなる。第4のステージの電力結合器が損失が大きいと示されたことと同一の理由から、第5のステージの電力結合器も、生来的に損失が大キック、その特性(電力組合せ比)は、要求される機能性および全体的な損失の最小化の両方に関して最適化されなければならない。図のAFNは、標準マイクロストリップ技法を使用して実施された。検討されるインスタンス化について、すべての使用される電力組合せ/分割構成要素の比は、0dBから12dBまで変化した。これらの構成要素は、非平衡ウィルキンソン分割器[19](5dBまでの電力比について)または方向性カプラ[19](5dBから12dBまでの電力比について)のいずれかとして実施された。位相シフト構成要素に関する限り、これらは、標準マイクロストリップベースの伝送線を使用して実施された。これらの線のそれぞれの正確な長さは、挿入される必要がある位相シフトによって規定される。
図A12に、セクションV−Bで提案されるシミュレーション結果のビーム・パターンおよびSLL性能と、回路インスタンス化のビーム・パターンおよびSLL性能とを比較する。
【0242】
付録
A.内点アルゴリズム
我々の目標は、等式制約のセットとして(7)の不等式制約を定式化することである。これらの等式制約を、その後、ニュートン法と組み合わせて使用して[11]、u(θ
d)について反復的に解くことができる。|u
H(θ
d)A(θ)|=1であることを考慮すると、
【0243】
【数65】
は、
u
H(θ
d)[a(θ
d)[ε,…,ε]−A(θ
SLL)]≧0またはu
H(θ
d)I(θ
d)≧0
につながる。同様に、我々は、等式制約を
【0244】
【数66】
と書き直すことができる。
【0245】
内点法の基本的な発想は、コスト関数(5)において不等式制約が陰になるようにするために、インジケータ関数I(θ
d)を導入することである。これは、オリジナル・コスト(5)でI(θ
d)を使用し、
u
H(θ
d)A
eq=e
T
の下で
【0246】
【数67】
と書き直すことによって達成され、ここで、tは、ステップ・サイズに対応する。初期推定値を与えられて、これらの内点タイプ手法は、u(θ
d)を反復して更新し、最終的に最適解をもたらす。反復の収束の速度は、通常は、表1で短く言及されているように、t、収束パラメータμ、および公差τに依存する。詳細については、[11]を参照されたい。u(θ
d)の初期推定値は、MVDR解から入手され、反復更新は、表1で説明されるように入手され、ここで、P(u)は、(10)のRHSに対応する。
【0247】
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[22] G.H.Golub and C.F.van Loan.Matrix Computations.Johns Hopkins University Press.1993.
【0248】
当業者は、さまざまな上で説明した方法のステップを、プログラムされたコンピュータによって実行できることをたやすく認めるはずである。本明細書では、いくつかの実施形態が、機械可読またはコンピュータ可読であり、命令の機械実行可能プログラムまたはコンピュータ実行可能プログラムを符号化する、プログラム・ストレージ・デバイス、たとえばディジタル・データ記憶媒体を包含することも意図され、前記命令は、前記上で説明した方法のステップの一部またはすべてを実行する。プログラム・ストレージ・デバイスは、たとえば、ディジタル・メモリ、磁気ディスクおよび磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハード・ドライブ、または光学的に読取可能なディジタル・データ記憶媒体とすることができる。諸実施形態は、上で説明した方法の前記ステップを実行するようにプログラムされたコンピュータを包含することも意図されている。
【0249】
「プロセッサ」または「論理」としてラベルを付けられたすべての機能ブロックを含む、図面に示されたさまざまな要素の機能を、専用ハードウェアならびに適当なソフトウェアに関連してソフトウェアを実行することができるハードウェアの使用を介して提供することができる。プロセッサによって提供される時に、機能を、単一の専用のプロセッサによって、単一の共有されるプロセッサによって、またはそのうちのいくつかを共有できる複数の個々のプロセッサによって提供することができる。さらに、用語「プロセッサ」、「コントローラ」、または「論理」の明示的使用は、ソフトウェアを実行できるハードウェアを排他的に指すと解釈されてはならず、限定なしに、ディジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワーク・プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、ソフトウェアを格納する読取り専用メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、および不揮発性ストレージを暗黙のうちに含むことができる。従来のおよび/またはカスタムの、他のハードウェアを含めることもできる。同様に、図面に示されたすべてのスイッチは、概念的なものにすぎない。その機能を、プログラム論理の動作を介して、専用論理を介して、プログラム制御と専用論理との相互作用を介して、または手動でさえ実行することができ、特定の教示は、文脈からのより具体的な理解として実装者によって選択可能である。
【0250】
当業者は、本明細書のすべてのブロック図が、本発明の原理を実施する例示的回路網の概念的なビューを表すことを了解するであろう。同様に、すべてのフロー・チャート、流れ図、状態遷移図、擬似コード、および類似物は、コンピュータ可読媒体内で実質的に表すことができ、したがって、コンピュータまたはプロセッサが明示的に図示されているか否かに関わりなく、そのようなコンピュータまたはプロセッサによって実行され得るさまざまなプロセスを表すことを了解されたい。
【0251】
この説明および図面は、単に、本発明の原理を例示するものである。したがって、当業者が、本明細書で明示的に説明されず、図示されていないが、本発明の原理を実施し、その趣旨および範囲に含まれる、さまざまな配置を考案できることを了解されたい。さらに、本明細書で列挙されたすべての例は、原理的に、当技術を促成するために発明人(1つまたは複数)が貢献する本発明の原理および概念を読者が理解するのを助ける教育的目的のためのみのものであり、およびそのような具体的に記載された例および条件に限定されないと解釈されることが明確に意図されている。さらに、本発明の原理、諸態様、および諸実施形態を列挙する本明細書のすべての言及ならびにそのすべての特定の例は、その同等物を包含することが意図されている。