特許第6009086号(P6009086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009086
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 25/02 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   B43K25/00 Z
   B43K25/00 K
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-532375(P2015-532375)
(86)(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公表番号】特表2015-535759(P2015-535759A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】EP2013068927
(87)【国際公開番号】WO2014044596
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】12184917.8
(32)【優先日】2012年9月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィルマン,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】カラパティス,ナキス
(72)【発明者】
【氏名】マルタン,ジャン−クロード
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−045784(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/161077(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0024432(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0041778(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 25/02
B43K 7/12
B43K 24/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−中心軸(C)に沿って長手方向に延在する本体(2);及び
−前記本体の少なくとも一部に固定された弾性要素(10)
を備える筆記具(1)であって、
前記筆記具(1)は、前記弾性要素(10)と前記本体(2)の前記少なくとも一部とが一体であり、かつ完全に非晶質の金属合金で作製されることを特徴とする、筆記具(1)。
【請求項2】
前記金属合金は、金、白金、パラジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウム、銀、イリジウム又はオスミウムを含むリストに含まれる少なくとも1つの貴金属元素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記材料は、コバルト、ベリリウム又はニッケルを含まないことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記弾性要素は、前記本体の前記少なくとも一部に固定された第1の端部から自由端部まで、前記中心軸(C)に略平行に延在する、クリップ(8)であることを特徴とする、
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の筆記具。
【請求項5】
前記弾性要素(10)は、前記本体(2)の前記少なくとも一部の内側において前記中心軸(C)に向かって略径方向に延在する少なくとも1つの要素を備える、ばね(11)であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の筆記具。
【請求項6】
前記本体は前端部に開口部を含み、前記開口部を通してペン先が延伸できることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の筆記具。
【請求項7】
前記本体は前記前端部に円錐形の先端を含み、前記円錐形の先端は前記本体に固定され、また開口部を備え、前記開口部を通して前記ペン先が延伸できることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の筆記具。
【請求項8】
前記本体は、補完用部材を更に含むことを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の筆記具。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の筆記具を作製する方法であって、
本体(2)は:
a)前記本体(2)を形成する材料を準備するステップ;
b)前記材料を鋳型内で鋳造することにより、前記本体を作製するステップ;
c)前記本体を非晶質状態にするために、組立体を冷却するステップ;及び
d)前記本体を取り外すステップ
によって得られることを特徴とする、筆記具を作製する方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の筆記具を作製する方法であって、
本体(2)は:
a)少なくとも部分的に非晶質の材料を用いて予備成形品を作製するステップ;
b)前記材料のガラス転移温度Tgと結晶化温度Txとの間にダイを加熱するステップ;
c)前記予備成形品を前記ダイの間に配置するステップ;
d)前記予備成形品の各表面に前記ダイの形状を複製するために、前記ダイを用いて前記予備成形品に所定の時間に亘って圧力を印加するステップ;及び
e)少なくとも部分的に非晶質の状態を保持できるよう、前記本体(2)を冷却するステップ
によって得られることを特徴とする、筆記具を作製する方法。
【請求項11】
前記ダイ又は前記鋳型は、鋳造又は熱間形成作業中に直接複製できるような表面状態を含むことを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の筆記具を作製する方法。
【請求項12】
前記本体は、鋳造又は熱間形成作業中に直接象嵌される補完用部材をさらに含むことを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の筆記具を作製する方法。
【請求項13】
請求項1〜請求項8に記載の筆記具のペン先のための保護要素であって、
前記保護要素は:
中心軸に沿って長手方向に延在する、前記筆記具の本体上に嵌め込まれるよう配設されたキャップ(20);及び
前記キャップに固定された第1の端部から自由端部まで前記中心軸(C)に対して略平行に延在するクリップ(80)
を備え、
前記保護要素は、前記クリップと前記キャップとが一体であり、完全に非晶質の金属合金で作製されることを特徴とする、保護要素。
【請求項14】
前記金属合金は、金、白金、パラジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウム、銀、イリ
ジウム又はオスミウムを含むリストに含まれる少なくとも1つの貴金属元素を含むことを特徴とする、請求項13に記載の保護要素。
【請求項15】
前記材料は、コバルト、ベリリウム又はニッケルを含まないことを特徴とする、請求項13又は請求項14に記載の保護要素。
【請求項16】
前記キャップ(20)は補完用部材を更に含むことを特徴とする、請求項13又は請求項14に記載の保護要素。
【請求項17】
請求項13〜請求項16に記載の筆記具のペン先のための保護要素を作製する方法であって、
前記方法は、キャップ(20)が以下のステップ、すなわち、
a)前記キャップ(20)を形成する材料を準備するステップ;
b)前記材料を鋳型内で鋳造することにより、前記キャップ(20)を作製するステップ;
c)前記キャップ(20)を非晶質状態にするために、組立体を冷却するステップ;及び
d)前記キャップ(20)を取り外すステップ
によって得られることを特徴とする、筆記具のペン先のための保護要素を作製する方法。
【請求項18】
請求項13〜請求項16に記載の筆記具のペン先のための保護要素を作製する方法であって、
前記方法は、キャップ(20)が以下のステップ、すなわち、
a)少なくとも部分的に非晶質の材料を用いて予備成形品を作製するステップ;
b)前記材料のガラス転移温度Tgと結晶化温度Txとの間にダイを加熱するステップ;
c)前記予備成形品を前記ダイの間に配置するステップ;
d)前記予備成形品の各表面に前記ダイの形状を複製するために、前記ダイを用いて前記予備成形品に所定の時間に亘って圧力を印加するステップ;及び
e)少なくとも部分的に非晶質の状態を保持できるよう、前記キャップ(20)を冷却するステップ
によって得られることを特徴とする、筆記具のペン先のための保護要素を作製する方法。
【請求項19】
前記ダイ又は前記鋳型は、鋳造又は熱間形成作業中に直接複製できるような表面状態を含むことを特徴とする、請求項17又は請求項18に記載の筆記具のペン先のための保護要素を作製する方法。
【請求項20】
前記キャップは、鋳造又は熱間形成作業中に直接象嵌される補完用部材をさらに含むことを特徴とする、請求項17又は請求項18に記載の筆記具のペン先のための保護要素を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中心軸に沿って長手方向に延在する本体と、本体の少なくとも一部に固定された中心軸に対して略平行に、自由端部まで延在するクリップとを備える、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
前端部と後端部との間の中心軸Cに沿って長手方向に延在する本体で形成された筆記具が、従来技術において公知である。前端部は開口部を備え、この開口部を通って、収納されている時には見えないペン先が延伸できる。この筆記具は後端部に、ペン先の出し入れ機構を作動させる押しボタンを備える。本体は2つの部品、即ち円錐形の先端及びこの円錐形の先端が固定される胴体で作製してよい。
【0003】
この筆記具はまた、ユーザが例えばシャツのポケットに筆記具をクリップ留めできるようにするために使用される、クリップを備える。このクリップはアームからなり、このアームはその第1の端部に、筆記具の本体と必ず接触する自由突出部分を備え、また第2の端部に、筆記具の本体に対して上記クリップを固定するための取り付け手段を備える。このような取り付け手段はスナップ嵌合システムであってよく、即ちこのスナップ嵌合システムを本体のオリフィスに挿入して、上記クリップを固定する。取り付け手段は、筆記具の本体を1周する開リングの形態であってもよい。
【0004】
第1の欠点は、この種の筆記具は外観が魅力的でなく、また壊れやすいことである。実際、クリップが追加の部品であるという事実は、扱っている間に上記クリップが抜け落ちてしまうリスクにつながる。
【0005】
更に、この構成の欠点は、本体とクリップとをそれぞれ別個に作製する製造方法が必要となることである。その後補助的な組み立てステップを実施して、各筆記具をクリップに嵌め込む。
【0006】
更に、クリップを形成する材料はいずれの金属である。各材料は、ヤング率E又は弾性係数(一般にGPaで表される)によって特徴づけられ、これは各材料の変形耐性を特徴づけるものである。更に各金属は、弾性限界σe(一般にGPaで表される)によっても特徴づけられ、これは、それを超えると材料が塑性変形してしまう限界の応力を表す。従って、ヤング率に対する弾性限界の比σe/E(この比は各材料の弾性変形の標本となる)を各材料に関して確立することにより、所定の厚さにおいて複数の材料を比較できる。つまりこの比が高いほど、材料の弾性変形は大きくなる。しかしながら、従来技術で使用される材料(例えばヤング率Eが130GPa、典型的な弾性限界σeの値が1GPaである合金Cu−Be)等の結晶質材料は、σe/E比が低く、即ち約0.007である。その結果、これらの結晶質合金部分は弾性変形が制限される。筆記具のクリップの場合、ユーザはこのクリップを頻繁に扱う傾向にあり、最終的にクリップは変形するか又は破損してしまう。
【0007】
同様に、このようなクリップの製造に結晶質貴金属を使用することは、これらの金属の機械的特性が不十分であるため、想定できない。実際、これらの貴金属は特に、従来使用されている結晶質合金の弾性限界約1GPaと比較して低い弾性限界を有しており、Au、Pt、Pd、Agの合金では弾性限界は約0.5GPaである。これら貴金属の弾性係数(約120GPa)を用いると、比σe/Eは約0.004となる。しかしながら上で説明したように、このようなクリップを製造するには高い比σe/Eが必要である。従って当業者は、このようなクリップを製造するためにこれらの貴金属を使用しようとしない。
【0008】
既存の筆記具の別の欠点は、本体の下部に配置され、ペン先の出し入れのための復元力を提供するばねである。実際このばねは別個の部品であり、ペン先の交換時に筆記具の本体から外れてしまう場合があり、これによって筆記具の基本的な機能が失われてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、少なくとも部分的に非晶質の材料を用いて単一部品として作製される筆記具を提案することにより、上述のような従来技術の欠点を克服する筆記具に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明は:
−中心軸に沿って長手方向に延在する本体;及び
−本体の少なくとも一部に固定された弾性要素
を備える筆記具に関し、この筆記具は、弾性要素と本体の上記少なくとも一部とが一体であり、かつ少なくとも部分的に非晶質の金属合金で作製されることを特徴とする。
【0011】
この筆記具の有利な実施形態は、従属請求項の主題を形成する。
【0012】
第1の有利な実施形態では、上記金属合金は、金、白金、パラジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウム、銀、イリジウム又はオスミウムを含むリストからの少なくとも1つの貴金属元素を含む。
【0013】
第2の有利な実施形態では、クリップと、本体の上記少なくとも一部とは、完全に非晶質の材料で作製される。
【0014】
第3の有利な実施形態では、上記材料はコバルト、ベリリウム又はニッケルを含まない。
【0015】
別の有利な実施形態では、上記弾性要素は、本体の少なくとも一部に固定された第1の端部から自由端部まで、中心軸に略平行に延在する、クリップである。
【0016】
別の有利な実施形態では、上記弾性要素は、本体の上記少なくとも一部の内側において中心軸に向かって略径方向に延在する少なくとも1つの要素を備える、ばねである。
【0017】
別の有利な実施形態では、上記本体は前端部に開口部を含み、この開口部を通してペン先が延伸できる。
【0018】
別の有利な実施形態では、上記本体は前端部に円錐形の先端を含み、この円錐形の先端は上記本体に固定され、また開口部を備え、この開口部を通してペン先が延伸できる。
【0019】
別の有利な実施形態では、上記本体は補完用部材を更に含み、これら補完用部材は、鋳造又は熱間形成作業中に上記本体に直接象嵌される。
【0020】
本発明はまた、上述の筆記具を作製する方法にも関し、この方法は、本体が以下のステップから構成される。
a)本体を形成する材料を準備するステップ;
b)上記材料を鋳型内で鋳造することにより、上記本体を作製するステップ;
c)上記本体を非晶質状態にするために、組立体を冷却するステップ;及び
d)上記本体を取り外すステップ
【0021】
筆記具を作製する別の方法は、本体が以下のステップ、すなわち、
a)上記少なくとも部分的に非晶質の材料を用いて予備成形品を作製するステップ;
b)上記材料のガラス転移温度Tgと結晶化温度Txとの間にダイを加熱するステップ;
c)予備成形品をダイの間に配置するステップ;
d)予備成形品の各表面にダイの形状を複製するために、ダイを用いて予備成形品に所定の時間に亘って圧力を印加するステップ;及び
e)少なくとも部分的に非晶質の状態を保持できるよう、上記本体を冷却するステップ
によって得られることを特徴とする。
【0022】
有利には、ダイ又は鋳型は、鋳造又は熱間形成作業中に直接複製できるような表面状態を含む。
【0023】
驚くべきことに、非晶質形態の貴金属材料は高い比σe/Eを有し、これにより、本発明によるクリップ又はばね等の構成部品の製造が可能となる。
【0024】
本発明の第1の利点は、本発明が比較的有利な弾性特性を有することである。実際、非晶質材料の場合、比σe/Eは弾性限界σeを上昇させることによって増大する。従って、それを超えると材料が原形状に復元できなくなる限界の応力が増大する。よって、このような比σe/Eの改善により、より大きな変形が可能となる。これにより、クリップの測定範囲を増大させることが望ましいか、又は同一の測定範囲に関して上記クリップのサイズを低減することが望ましいかに応じて、クリップの寸法を最適化できる。ばねに関しても同様に、上記ばねの寸法を変更することによって復元力を調整できる。
【0025】
これら非晶質材料の別の利点は、これら非晶質金属が、より高い精度で複雑な形状の部品を開発するための新たな成形可能性を提供することである。実際、非晶質金属は、各合金に固有の所定の温度範囲[Tg−Tx](Txは結晶化温度、Tgはガラス転移温度)内において非晶質のまま軟化するという特有の特性を有する。従ってこれらの金属は、比較的低い応力下において低温で成形できる。これは即ち、合金の粘度が大幅に低下することによって合金が鋳型のあらゆる細部に適合するため、微細な幾何学的形状を極めて正確に再現できることを意味している。
【0026】
本発明はまた、本発明による筆記具のペン先のための保護要素にも関し、この保護要素は、中心軸に沿って長手方向に延在する、上記筆記具の本体上に嵌め込まれるよう配設されたキャップを備え、またこの保護要素は、キャップに固定された第1の端部から自由端部まで中心軸に対して略平行に延在するクリップを備える。この保護要素は、クリップとキャップとが一体であり、少なくとも部分的に非晶質の金属合金で作製されることを特徴とする。
【0027】
第1の有利な実施形態では、上記金属合金は、金、白金、パラジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウム、銀、イリジウム又はオスミウムを含むリストからの少なくとも1つの貴金属元素を含む。
【0028】
第2の有利な実施形態では、上記クリップ及び上記キャップは、完全に非晶質の材料で作製される。
【0029】
第3の有利な実施形態では、上記材料はコバルト、ベリリウム又はニッケルを含まない。
【0030】
別の有利な実施形態では、上記キャップは補完用部材を更に含み、これら補完用部材は、鋳造又は熱間形成作業中に上記本体に直接象嵌される。
【0031】
本発明はまた、筆記具のペン先のための保護要素を作製する方法にも関し、この方法は、上記キャップが以下のステップ、すなわち、
a)キャップを形成する材料を準備するステップ;
b)上記材料を鋳型内で鋳造することにより、上記キャップを作製するステップ;
c)上記キャップを非晶質状態にするために、組立体を冷却するステップ;及び
d)上記キャップを取り外すステップ
によって得られることを特徴とする。
【0032】
筆記具のペン先のための保護要素を作製する方法は、キャップが以下のステップ、すなわち、
a)上記少なくとも部分的に非晶質の材料を用いて予備成形品を作製するステップ;
b)上記材料のガラス転移温度Tgと結晶化温度Txとの間にダイを加熱するステップ;
c)予備成形品をダイの間に配置するステップ;
d)予備成形品の各表面にダイの形状を複製するために、ダイを用いて予備成形品に所定の時間に亘って圧力を印加するステップ;及び
e)少なくとも部分的に非晶質の状態を保持できるよう、上記キャップを冷却するステップ
によって得られることを特徴とする。
【0033】
有利には、ダイ又は鋳型は、鋳造又は熱間形成作業中に直接複製できるような表面状態を含む。
【0034】
本発明による筆記具の目的、利点及び特徴は、本発明の少なくとも1つの実施形態に関する以下の詳細な説明においてより明らかとなるであろう。上記少なくとも1つの実施形態は単なる非限定的な例として挙げられており、添付の図面に図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の第1の実施形態による筆記具の概略長手方向断面図である。
図2図2は、本発明による筆記具の変形例の概略側面図である。
図2A図2Aは、本発明による筆記具の変形例の概略径方向断面図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態による筆記具の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1および図2は、第1の実施形態による筆記具1の断面図である。この筆記具1は、前端部3と後端部4との間の中心軸Cに沿って長手方向に延在する本体2を含む。前端部は開口部5を備え、この開口部5を通って、収納されている時には見えないペン先6が延伸できる。このペン先6は、本体2内へと長手方向に延在するカートリッジ(図示せず)の端部に配置された、黒鉛ペン先又はニブ又はボールペン先又はフェルトペン先であってよい。この筆記具は後端部4に、ペン先の出し入れのための機構(図示せず)を作動させることができる押しボタン7を備える。
【0037】
この筆記具はまた、ユーザが例えばシャツのポケットに筆記具をクリップ留めできるようにするために使用される、クリップ8等の弾性要素10を備える。このクリップ8はアーム81からなり、このアーム81はその第1の端部82に、筆記具の本体と必ず接触する突出部分83を備える。このクリップは第2の端部84を介して筆記具の本体2に固定される。
【0038】
ある変形例では、本体2は2つの部品、即ち円錐形の先端9及びこの円錐形の先端が固定される胴体で作製してよい。本体2は3つの部品、即ちクリップが固定される第1の部分、上記筆記具を把持するために使用される第2の部分、第2の部分に固定された円錐形の先端である第3の部分で作製してもよい。
【0039】
本発明によると有利には、本体2の少なくとも第1の部分とクリップ8とは一体であり、かつ完全に非晶質の又は少なくとも部分的に非晶質の材料で作製される。特に金属ガラス、即ち非晶質金属合金が使用される。本体2の少なくとも第1の部分とクリップ8とが一体であるこのような構成は、より高い品質を表すより頑丈な外観を提供する。
【0040】
実際、変形という観点におけるこれら非晶質金属合金の利点は、結晶質材料の場合のように、上記非晶質材料を形成する原子が製造中に特定の構造に配列されることがないという事実に起因するものである。よって、結晶質金属のヤング率Eと非晶質金属のヤング率Eとが同一であっても、弾性限界σeは異なる。実際、非晶質材料は、結晶質材料と比べて略2倍の弾性限界σeaを有するという違いがある。これにより非晶質材料には、弾性限界σeに達する前に比較的高い応力を印加でき、このようにして耐えられる応力は、同等の結晶質材料が耐えられる応力より4〜8倍大きい。
【0041】
まず、この構成により、筆記具上のクリップ8の信頼性を向上させることができる。実際、弾性限界σeaが比較的高いことにより塑性領域が比較的発生しにくくなり、従ってユーザが筆記具を扱う際にクリップ8が塑性変形するリスクを低減できる。
【0042】
更に有利なことに、非晶質材料製のクリップ8を用いると、同一の応力に関して、この同一の応力に耐えるためのクリップの寸法を最適化できることに留意されたい。実際、クリップ8の寸法(厚さ等)はその変形に影響する。有利には、弾性限界が上昇すると、いずれの塑性変形を起こさないままクリップ8に印加できる応力が上昇する。従って、応力に対する同一の耐性を維持したまま、厚さを削減できるようになる。その結果クリップ8は薄くなり、従って目立ちにくくなり、これは美観上の利点となり得る。
【0043】
更に、非晶質材料又は非晶質金属合金は、その結晶質等価物よりも硬いという特徴を有する。その結果、このような材料で作製された本体2はより硬くなり、従ってより高い耐性を有するものとなる。
【0044】
使用できる非晶質材料の例として、以下を挙げることができる:Zr41Ti14Cu12Ni10Be23(ヤング率Eの値105GPa、弾性限界σe=1.9GPa、比σe/E=0.018);Pt57.5Cu14.7Ni5.3P22.3(ヤング率Eの値98GPa、弾性限界σe=1.4GPa、比σe/E=0.014)。米国特許第5288344号、米国特許第5618359号、米国特許第7368022号に挙げられている合金は、参照により本特許出願に援用されることを理解されたい。
【0045】
当然のことながら、合金のアレルゲン性等、有利となり得るその他の特徴が存在する。実際、材料が結晶質であるか非晶質であるかに関わらず、これら材料にはアレルゲンを含む合金が使用される場合がある。例えばこの種の合金として、コバルト、ベリリウム又はニッケルが挙げられる。よって本発明の変形例は、これらのアレルゲンを含有しない合金を用いて作製してよい。アレルゲンが存在しているもののアレルギ反応を引き起こさないという場合も考えられる。
【0046】
本発明の別の変形例によると、本体2の少なくとも第1の部分及びクリップ8は貴金属材料製としてよい。実際、金又は白金等の貴金属材料は結晶質状態では柔らか過ぎ、可撓性を有しかつ堅牢なクリップ8を製造することはできない。しかしながらこれら貴金属材料が金属ガラスの形態、即ち非晶質状態となると、これら貴金属は、高級感のある魅力的な外観を提供しながら、クリップ8の製造に使用できるような特性を備えるものとなる。好ましくは、白金850(Pt850)及び金750(Au750)は、本体2の上記少なくとも第1の部分及びクリップ8で形成された組立体の作製に使用される貴金属である。当然のことながら、パラジウム、レニウム、ルテニウム、ロジウム、銀、オスミウム等の他の貴金属も使用できる。国際公開第2006/045106号、国際公開第2004/059019号に挙げられている合金は、参照により本特許出願に援用されることを理解されたい。
【0047】
また、非晶質金属合金は成形が容易であることにも留意されたい。実際、非晶質金属は、各合金に固有の所定の温度範囲(Tg−Tx)内において非晶質のまま軟化するという特有の特性を有する。従ってこれらの金属は、比較的低い応力下において低温で成形できる。
【0048】
参照により本特許出願に援用される米国公開特許第2003/0047248号に正確に記載されたこの方法は、非晶質予備成形品を熱間形成することからなる。予備成形品は、非晶質合金を形成する金属元素を炉内で溶融させることによって得られる。この溶融は、合金の酸素汚染を可能な限り低くするために、制御された雰囲気下で実施される。これらの元素が溶融したら、これらを半完成製品形態に鋳造し、続いて非晶質状態を保持するために急速冷却する。予備成形品を作製したら、熱間形成を実施して完成部品を得る。この熱間形成は、完全に又は部分的に非晶質の構造又は状態を保持するために、TgとTxとの間の温度範囲内で決定された時間に亘って加圧することによって達成される。これは、非晶質金属固有の性質を保持するために実施される。様々な最終成形ステップとしては、以下のようなものがある:
i.本体2の少なくとも第1の部分及びクリップ8で形成された組立体のメス型を有するダイを、選択した温度まで加熱するステップ;
ii.非晶質金属の予備成形品を高温のダイの間に挿入するステップ;
iii.非晶質金属の予備成形品上に上記ダイの幾何学的形状を複製するために、ダイに閉鎖力を印加するステップ;
iv.選択した最大時間だけ待機するステップ;
v.ダイを開けるステップ;
vi.本体2の少なくとも第1の部分及びクリップ8で形成された組立体を、温度Tg未満まで急速冷却するステップ;並びに
vii.本体2の少なくとも第1の部分及びクリップ8で形成された組立体をダイから取り外すステップ。
【0049】
この成形方法は、合金の粘度が大幅に低下することによって合金が鋳型のあらゆる細部に適合するため、微細な幾何学的形状を極めて正確に再現できる。この方法の利点は、射出成形を超える温度で発生する固化時の収縮がなく、これによってより高精度の構成部品を得ることができることである。更にこれにより、本体2の少なくとも第1の部分とクリップとを同一の単一ステップで製造できるようになる。更に、本体2の少なくとも第1の部分及びクリップ8が一体であるという事実により、クリップ8が抜け落ちるリスクが低下する。
【0050】
当然のことながら、射出成形等の他の種類の成形も可能である。参照により本特許出願に援用される米国特許第5711363号に正確に記載されたこの方法は、金属元素を炉内に溶融させることによって得られた合金を、棒等のいずれの成分(これは結晶質状態であっても非晶質状態であってもよい)の形状に鋳型で成形することからなる。続いてこのいずれの形状の合金成分を再び溶融させ、最終構成部品の形状を有する鋳型内に射出する。鋳型が満たされたら、これをTg未満の温度まで急速冷却することにより合金の結晶化を防止し、こうして、本体2の少なくとも第1の部分及びクリップ8で形成された組立体を、非晶質又は半非晶質金属として得る
【0051】
このように、本体2の少なくとも第1の部分及びクリップ8で形成された組立体を所望の幾何学的形状に成形できる。
【0052】
ある変形例は、本体2の少なくとも第1の部分及びクリップ8で形成された組立体の製造中に、装飾を直接作製することからなる。これを達成するために、「コート・ド・ジュネーヴ」、円形のグレイニング、サテン仕上げ又はロゼット模様といった筆記具1の装飾を、鋳造及び熱間形成それぞれに使用される上記鋳型又は上記ダイのメス型パターンキャビティ内で直接得る。これにより、この変形例は上述の利点に加えて、これら装飾を製造するために現在連続して使用されている重装備の使用を回避することもできる。従って本方法により、装飾付きの筆記具をより迅速に、そしてついでながらより安価に製造できることは明らかである。
【0053】
有利には、真珠インサート又は貴石等の補完用部材を筆記具に象嵌することも考えられる。鋳造又は熱間形成ステップ中に、鋳型内又はダイ上に補完用部材を直接配置して象嵌することも考えられる。このように、この補完用部材は筆記具と一体の部品を形成し、追加の部品ではない。
【0054】
図3に示す第2の実施形態では、筆記具1は、本体2に固定されて前端部3を保護するよう構成された保護要素又はキャップ20を含む。実際、ペン先6はこの前端部3に配設され、ペン先を(特にニブ又はフェルトペン先の場合には)保護する必要が生じる場合がある。このキャップ20は、中心軸(C)に沿って長手方向に延在する構成部品を備える。この構成部品は、上記筆記具の本体2上に嵌め込まれるよう配設される。上記保護要素がクリップ80を含むことも想定できる。このクリップ80は、上記構成部品に固定された第1の端部から自由端部まで、中心軸(C)に対して略平行に延在する。
【0055】
有利には、クリップ80と上記キャップ20とは一体であり、少なくとも部分的に非晶質の金属合金で作製される。当然のことながら、第1の実施形態に関して上述した全ての変形例は、この第2の実施形態に関しても可能である。
【0056】
押しボタンと、収納可能な黒鉛ペン先又はボールペン先とを有する筆記具の場合、本体2は、図2、2Aに示すようなペン先−カートリッジ組立体のための復元ばね11を更に含んでよいことにも留意されたい。有利にはこのばね11は本体2と一体であり、また切断軸Aに沿ったばね11の図である図2Aに示すように、本体2の中心に向かって径方向に延在する、ばね効果を保証する穴あきワッシャの形態であってよい。あるいはこのワッシャを、本体2の中心に向かって延在する複数のタブに置換してもよい。より良好な動作を保証するために、僅かな傾斜があってよい。非晶質金属合金を使用することにより、比較的大きな応力に耐えられ、より高い信頼性を保証するばねを得ることができるようになる。この復元ばね11は、熱間形成又は鋳造作業中に本体2と共に直接作製してもよい。
【0057】
添付の請求項によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上に挙げた本発明の様々な実施形態に対して、当業者には明らかである様々な改変及び/又は改良及び/又は組み合わせを行ってよいことは明らかであろう。
図1
図2
図2A
図3