特許第6009110号(P6009110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6009110-木質建材およびポリオレフィン系塗料 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6009110
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】木質建材およびポリオレフィン系塗料
(51)【国際特許分類】
   B27K 5/00 20060101AFI20161006BHJP
   C09D 123/26 20060101ALI20161006BHJP
   C09D 123/30 20060101ALI20161006BHJP
   C09D 123/28 20060101ALI20161006BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B27K5/00 G
   C09D123/26
   C09D123/30
   C09D123/28
   C09D7/12
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-30118(P2016-30118)
(22)【出願日】2016年2月19日
【審査請求日】2016年2月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】大島 純治
(72)【発明者】
【氏名】片谷 昌寛
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−271309(JP,A)
【文献】 特開2004−182896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 1/00 − 9/00
C09D 1/00 − 10/00
C09D 101/00 −201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性木質改質剤が注入された木材と、
前記木材を被覆するポリオレフィン層と
を備え、
前記ポリオレフィン層が、変性ポリオレフィンを含有し、
前記変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素および無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素変性ポリオレフィン、アクリル変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ならびに、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、木質建材。
【請求項2】
前記変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素および無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素変性ポリオレフィン、ならびに、アクリル変性ポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の木質建材。
【請求項3】
前記変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素および無水マレイン酸変性ポリオレフィン、ならびに、塩素変性ポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の木質建材。
【請求項4】
前記変性ポリオレフィンの変性率が、30質量%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の木質建材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の木質建材を製造するための塗料であって、
変性ポリオレフィンおよび有機溶媒を含有することを特徴とする、ポリオレフィン系塗料。
【請求項6】
前記有機溶媒が、パラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項5に記載のポリオレフィン系塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質建材およびポリオレフィン系塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物の土台や柱、壁板、天井などに用いられる木質建材には、防腐性や難燃性などの諸機能を付与するために、防腐剤や難燃剤などの改質剤が注入されている。このような改質剤が注入された木質建材では、長時間経過すると、改質剤が表面に溶脱して、外観を損なう不具合が生じる。また、改質剤が溶脱することにより木質建材の機能が低下する場合も生じる。
【0003】
そのため、改質剤が注入された木質建材の表面を塗膜で被覆することにより、改質剤の溶脱を防止することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1には、木材の表面に、基剤と硬化剤との混合による架橋反応によって生成される難燃性ポリウレタンの塗膜を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−271309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、シックハウス症候群の低減、作業環境の向上などの観点から、改質剤は、水溶性のもの(すなわち、水溶性木質改質剤)が使用されている。例えば、銅・第四級アンモニウム化合物(ACQ)などの水溶性防腐剤を水に溶解させたACQ水溶液を木材に所定時間浸漬させている。
【0007】
しかし、上記したポリウレタンの塗膜では、水溶性木質改質剤の木材表面への溶脱の抑制が不十分であり、さらなる向上が求められている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、水溶性木質改質剤の木材表面への溶脱を抑制することができる木質建材およびそれに用いられる塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らは、水溶性木質改質剤の木材表面への溶脱を抑制することについて鋭意検討したところ、変性ポリオレフィンが水溶性木質改質剤の溶脱に優れた効果を発現し得る知見を見い出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)水溶性木質改質剤が注入された木材と、前記木材を被覆するポリオレフィン層とを備え、前記ポリオレフィン層が、変性ポリオレフィンを含有する木質建材、
(2)前記変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素および無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素変性ポリオレフィン、ならびに、アクリル変性ポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種である(1)に記載の木質建材、
(3)前記変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素および無水マレイン酸変性ポリオレフィン、ならびに、塩素変性ポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種である(1)に記載の木質建材、
(4)前記変性ポリオレフィンの変性率が、30質量%以下である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の木質建材、
(5)前記変性ポリオレフィンは、少なくとも無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンである(1)に記載の木質建材、
(6)前記変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、ならびに、塩素および無水マレイン酸変性ポリオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種である(5)に記載の木質建材、
(7)無水マレイン酸の変性率が、5.0質量%以下である(5)または(6)に記載の木質建材、
(8)(1)〜(7)のいずれか一項に記載の木質建材を製造するための塗料であって、変性ポリオレフィンおよび有機溶媒を含有するポリオレフィン系塗料、
(9)前記有機溶媒が、パラフィン系炭化水素およびナフテン系炭化水素からなる群から選択される少なくとも1種である(8)に記載のポリオレフィン系塗料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の木質建材およびポリオレフィン系塗料によれば、木材の表面から水溶性木質改質剤が溶脱することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態である木質建材の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリオレフィン系塗料(以下、単に塗料とも称する。)は、変性ポリオレフィンおよび有機溶媒を含有する。
【0014】
変性ポリオレフィンは、ポリオレフィンを変性したポリマーであって、例えば、ポリオレフィンを所望の化合物(変性剤)で変性した変性ポリオレフィン(第1の変性ポリオレフィン)、ポリオレフィンを構成するモノマーと、ポリオレフィンを変性するための変性モノマーとを共重合した変性ポリオレフィン(第2の変性ポリオレフィン)などが挙げられる。変性ポリオレフィンは、1種単独で使用してもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0015】
好ましくは、有機溶媒に容易に溶解して塗料とすることができる観点、水溶性木質改質剤の溶脱をより確実に抑制する観点から、第1の変性ポリオレフィンが挙げられる。
【0016】
第1の変性ポリオレフィンにおいて、ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−ブテン共重合樹脂、プロピレン−ブテン共重合樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合樹脂などが挙げられる。好ましくは、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合樹脂、プロピレン−ブテン共重合樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合樹脂などのポリプロピレン系ポリオオレフィンが挙げられ、より好ましくは、ポリプロピレン、プロピレン−ブテン共重合樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合樹脂が挙げられ、さらに好ましくは、プロピレン−ブテン共重合樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合樹脂が挙げられる。
【0017】
変性剤としては、例えば、無水マレイン酸、アクリル系モノマー類((メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなど)などのエチレン性不飽和結合含有化合物;例えば、塩素などが挙げられる。これら変性剤は、1種単独で使用してもよく、また、2種以上併用してもよい。エチレン不飽和性結合含有化合物を変性剤に用いる場合、特に、ポリプロピレン系ポリオレフィンに対して、変性が容易である。すなわち、ポリプロピレン系ポリオレフィンに対して、モノマーユニットのグラフト、および、グラフト重合が容易である。
【0018】
変性剤としては、好ましくは、無水マレイン酸、塩素が挙げられ、より好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。
【0019】
第1の変性ポリオレフィンの具体例としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素および無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素変性ポリオレフィン、アクリル変性ポリオレフィンなどが挙げられる。好ましくは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素および無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素変性ポリオレフィンが挙げられ、より好ましくは、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素および無水マレイン酸変性ポリオレフィンが挙げられ、さらに好ましくは、無水マレイン酸変性ポリオレフィンが挙げられる。これにより、木材建材の表面に溶脱される水溶性木質改質剤の量をより確実に低減させることができる。
【0020】
第2の変性ポリオレフィンにおいて、ポリオレフィンを構成するモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエンなどの炭化水素類などが挙げられる。
【0021】
変性モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどが挙げられる。
【0022】
第2の変性ポリオレフィンの具体例としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂などが挙げられる。好ましくは、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂が挙げられる。
【0023】
変性ポリオレフィンの変性率は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、また、例えば、70質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、30質量%以下である。
【0024】
変性率を上記下限以上とすることにより、有機溶媒に溶解して塗料とすることができ、かつ、塗膜として、木質建材の表面に確実に被覆することができる。特に、変性率を0.1質量%以上とすれば、変性剤または変性モノマーがポリオレフィンに電荷の偏りを生じさせて、極性を発現できるため、ポリオレフィンに密着性および溶解性を十分に付与させることができる。一方、変性率を上記上限以下とすることにより、水溶性木質改質剤の溶脱をより確実に抑制することができる。
【0025】
特に、変性ポリオレフィンが、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、塩素および無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどの、少なくとも無水マレイン酸で変性されたポリオレフィンである場合、無水マレイン酸の変性率は、上記変性率の範囲に加えて、さらに好ましくは、5.0質量%以下、とりわけ好ましくは、2.0質量%以下である。
【0026】
変性率は、第1の変性ポリオレフィンでは、変性剤の質量を変性ポリオレフィンの質量で除すること([(変性剤の質量)/(変性ポリオレフィンの質量)]×100%)により求められる。第2の変性ポリオレフィンでは、変性モノマーの仕込み換算(質量)を、第2の変性ポリオレフィンを構成するモノマー全量で除すること([(変性モノマーの質量)/(全モノマーの質量)]×100%)により求められる。
【0027】
変性ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、例えば、10000以上、好ましくは、30000以上、より好ましくは、50000以上であり、また、例えば、1000000以下、好ましくは、200000以下、より好ましくは、150000以下、さらに好ましくは、85000以下である。重量平均分子量を上記下限以上とすることにより、水溶性木質改質剤の溶脱をより確実に抑制することができる。また、重量平均分子量を上記上限以下とすることにより、変性ポリオレフィンの有機溶媒に対する溶解性をより一層向上させて、容易に塗料とすることができる。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算にて測定することができる。
【0028】
塗料における変性ポリオレフィンの含有割合は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
【0029】
有機溶媒としては、例えば、変性ポリオレフィンを溶解させることができる非水系溶媒であればよく、主溶媒として、例えば、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素などが挙げられる。
【0030】
パラフィン系炭化水素は、直鎖構造または分岐構造を有する鎖状飽和炭化水素類であって、例えば、IPソルベント1016、IPソルベント1620(いずれも出光興産社の商品名)などが挙げられる。
【0031】
ナフテン系炭化水素は、環状構造を有する飽和炭化水素類であって、例えば、スーパゾルCA25(出光興産社の商品名)、エクソールD30(東燃ゼネラル石油社の商品名)、エクソールD40(東燃ゼネラル石油社の商品名)などの石油系飽和炭化水素、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、シクロヘキサノンなどのシクロヘキサン類(シクロヘキサンとその置換物)などが挙げられる。
【0032】
芳香族系炭化水素は、芳香族環を有する炭化水素類であって、例えば、T−SOL150(東燃ゼネラル石油社の商品名)などの石油系芳香族系炭化水素、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどが挙げられる。
【0033】
主溶媒は、1種単独で使用してもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0034】
溶解性の観点から、好ましくは、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素が挙げられ、より好ましくは、ナフテン系炭化水素が挙げられ、さらに好ましくは、シクロヘキサン類が挙げられる。
【0035】
塗料における主溶媒の含有割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0036】
塗料には、上記有機溶媒に加えて、好ましくは、低温時の溶解性が高い溶媒(低温溶解性溶媒)を含有することもできる。これにより、変性ポリオレフィンの低温時(例えば、5℃)の溶解性を安定化させて、塗料における変性ポリオレフィンの溶脱を抑制することができる。
【0037】
低温溶解性溶媒としては、例えば、エステル類、アルコール類、ケトン類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。
【0038】
エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
【0039】
アルコール類としては、例えば、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、1−ヘキサノールなどのモノアルコールなどが挙げられる。
【0040】
ケトン類としては、例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0041】
ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどが挙げられる。
【0042】
低温溶解性溶媒は、1種単独で使用してもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0043】
好ましくは、エステル類、アルコール類が挙げられ、より好ましくは、エステル類およびアルコール類の組み合わせが挙げられる。
【0044】
塗料における低温溶解性溶媒の含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。また、主溶媒100質量部に対して、低温溶解性溶媒の含有割合は、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
【0045】
また、低温溶解性溶媒において、アルコール類の含有割合は、エステル類100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0046】
塗料には、必要に応じて、増粘剤、充填材、揺変剤、顔料、染料、分散剤、懸濁助剤、消泡剤、可塑剤、老化防止剤、表面調整剤などの添加剤を含有することもできる。
【0047】
本発明のポリオレフィン系塗料は、好ましくは、非水系塗料であって、例えば、上記成分を上記の割合で配合することにより調製することができる。
【0048】
このようなポリオレフィン系塗料は、例えば、水溶性木質改質剤が注入された木材に対して用いられる。
【0049】
水溶性木質改質剤としては、木材に所望の機能(防腐性、難燃性など)を付与するための水溶性の化合物であって、例えば、水溶性防腐剤、水溶性難燃剤などが挙げられる。
【0050】
水溶性防腐剤としては、例えば、ACQ(銅・第四級アンモニウム化合物)、CUAZ(銅・アゾール化合物)、AAQ(第4級アンモニウム化合物)、ホウ酸系化合物などが挙げられる。
【0051】
水溶性難燃剤としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸グアニジンなどのリン酸系化合物、例えば、ホウ酸などのホウ酸系化合物、例えば、臭化アンモニウムなどの臭化物系化合物、例えば、ケイ酸ナトリウムなどのケイ酸系化合物などが挙げられる。
【0052】
木材としては、例えば、住宅などの建築物に用いられる建材材料や、家具などに用いられる一般工業材料などが挙げられる。
【0053】
木材に水溶性木質改質剤を注入するには、例えば、水溶性木質改質剤を水に溶解させた改質剤水溶液に、木材を常圧あるいは加圧下で一定時間浸漬し、その後、乾燥する。このような水溶性木質改質剤が注入された木材は、公知または市販のものを用いることができる。
【0054】
塗料は、例えば、水溶性木質改質剤が注入された木材の表面に、塗布および乾燥する。
【0055】
これにより、図1に示すように、水溶性木質改質剤が注入された木材1と、木材を被覆するポリオレフィン層2とを備える木質建材3が得られる。すなわち、ポリオレフィン層2は、塗料の塗膜から形成される。
【0056】
塗料の塗布量は、固形分量で、例えば、5g/m以上、好ましくは、10g/m以上であり、また、例えば、200g/m以下、好ましくは、100g/m以下である。
【0057】
乾燥温度は、例えば、0℃以上、好ましくは、10℃以上であり、また、例えば、60℃以下、好ましくは、40℃以下である。
【0058】
ポリオレフィン層からなる塗膜の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0059】
また、変性ポリオレフィンが上記有機溶媒に溶解しない化合物である場合は、例えば、変性ポリオレフィンを融解して、その融解物を塗布することにより、本発明の木質建材を得ることもできる。
【0060】
本発明の木質建材によれば、木材の表面から水溶性木質改質剤が溶脱することを効果的に抑制することができる。そのため、木質建材の外観の低下を抑制することができ、また、木質建材に注入された改質剤の機能の低下を抑制することができる。
【0061】
これは、木質建材の表面に設けられているポリオレフィン層の変性ポリオレフィンが、疎水性であるため、ポリオレフィン層と、木材の表面内に存在する水溶性木質改質剤との親和性が低く、水溶性木質改質剤が木材表面に移動することを抑制しているものと推察される。また、ポリオレフィン層のポリオレフィンが変性されているため、木材との密着性が向上し、塗膜として木材表面に安定して固定しているものと推察される。なお、本発明は、上記推察に限定されない。
【0062】
本発明の木質建材は、例えば、建築物などの建材材料や、家具などの一般工業材料として用いることができる。具体的には、例えば、住宅などの土台や柱、壁板、天井板、床板、例えば、家具などの板材などが挙げられる。
【0063】
本発明のポリオレフィン系塗料は、水溶性木質改質剤が注入された木材に対して好適に使用することができる。このような木材としては、上記した建築物などの建材材料や、家具などの一般工業材料などが挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0065】
実施例1
変性ポリオレフィンとして無水マレイン酸変性プロピレン−ブテン共重合樹脂(「トーヨータックPMA−L」、東洋紡社製、無水マレイン酸変性率1.5wt%、Mw65000)20質量部に、メチルシクロヘキサン72質量部、酢酸ブチル7質量部およびブタノール1質量部を加えて均一になるように撹拌して、塗料を製造した。
【0066】
実施例2〜12
変性ポリオレフィンを表1および表2に記載の樹脂に変更した以外は、実施例1と同様にして、塗料を製造した。
【0067】
実施例13
変性ポリオレフィンであるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(「エバフレックスV5773W」は、三井デュポンポリケミカル社製)を、塗料として用いた。なお、この樹脂は、メチルシクロヘキサン72質量部、酢酸ブチル7質量部およびブタノール1質量部からなる混合有機溶媒に溶解しなかった。
【0068】
比較例1
ポリエチレン(「コウベポリシートEL」、新神戸電機社製)を塗料として用いた。なお、この樹脂は、上記の混合有機溶媒に溶解しなかった。
【0069】
比較例2
エチレン−プロピレン共重合樹脂(「コウベポリシートPP」、新神戸電機社製)を塗料として用いた。なお、この樹脂は、上記の混合有機溶媒に溶解しなかった。
【0070】
比較例3
変性ポリオレフィンとして塩素および無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン−ブテン共重合樹脂(「ハードレンEW−5515」、東洋紡社製)を水性エマルジョン塗料として用いた。
【0071】
比較例4
変性ポリオレフィンとして塩素および無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン−ブテン共重合樹脂(「ハードレンEW−5303」、東洋紡社製)を水性エマルジョン塗料として用いた。
【0072】
比較例5〜7
表1および表2に記載の商品(ポリウレタン系塗料)を塗料として用いた。
【0073】
(水溶性防腐剤の溶脱評価)
木材としてACQ処理木材(ランバーテック社製、150mm×70mm)の平板を用意した。
【0074】
この表面に、各実施例および各比較例の塗料を、固形分が24g/mとなるようになるように刷毛塗りし、常温で7日間乾燥させて、水溶性木質改質剤(防腐剤)が注入された木材と、その木材を被覆するポリオレフィン層とを備える木質建材を得た。
【0075】
次いで、木質建材を、80℃に加熱した水からの水蒸気に接触する条件下で、保存した。その後の木質建材の表面状態を目視観察した。
【0076】
ACQ薬剤による表面汚染が観察されなかった場合を○と評価し、ACQ薬剤による表面汚染がごくわずか観察された場合を△と評価し、ACQ薬剤による表面汚染が多量に観察された場合を×と評価した。これらの結果を表1に示す。
【0077】
なお、実施例13および比較例1〜2については、有機溶媒に溶解しなかったため、
60℃にて加熱して融解させて、ACQ処理木材の平板に直接塗布した。
【0078】
(水溶性難燃剤の溶脱評価)
木材として、リン酸系難燃剤処理木材の平板(ヨコタニ社製、「エフネン65S」、150mm×70mm)を用意した。
【0079】
この表面に、各実施例および各比較例の塗料を、固形分が24g/mとなるように刷毛塗りし、常温で7日間乾燥させて、水溶性木質改質剤(難燃剤)が注入された木材と、その木材を被覆するポリオレフィン層と備える木質建材を得た。
【0080】
次いで、木質建材を気温40℃湿度95%の条件で24時間保存した後に気温60℃で24時間送風乾燥する工程を1サイクルとして、この工程を10サイクル実施した。その後、木質建材の表面に溶脱したリン酸系難燃剤を取り出し、秤量した。
【0081】
このときの難燃剤の溶脱量が、0.01g以下である場合を5と評価し、0.01gを超過し0.20g以下である場合を4と評価し、0.20gを超過し1.00g以下である場合を3と評価し、1.00gを超過し2.00g以下である場合を2と評価し、2.00gを超過する場合を1と評価した。これらの結果を表2に示す。
【0082】
なお、実施例13および比較例1〜2については、有機溶媒に溶解しなかったため、
60℃にて加熱して融解させて、リン酸系難燃剤処理木材の平板に直接塗布した。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
表1および表2中、「トーヨータックPMA−L」「トーヨータックPMA−KH」(いずれも東洋紡社製)は、無水マレイン酸変性のプロピレン−ブテン共重合樹脂である。
【0086】
「ハードレンF−2P」「ハードレンF−6P」「ハードレンF−7P」「ハードレンF−225P」「ハードレンEW−5515」「ハードレンEW−5303」(いずれも東洋紡社製)は、塩素および無水マレイン酸変性のエチレン−プロピレン−ブテン共重合樹脂である。
【0087】
「ハードレンDX523P」「ハードレンDX526P」「ハードレン14LWP」「ハードレンDX530P」「ハードレンNS3002」(いずれも東洋紡社製)は、塩素変性ポリプロピレンである。「スーパークロン814HS」(日本製紙ケミカル社製)は、塩素変性ポリプロピレンである。
【0088】
「ハードレンNS3002」(東洋紡社製)は、アクリル変性ポリプロピレンである。
【0089】
「エバフレックスV5773W」(三井デュポンポリケミカル社製)は、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(酢酸ビニル含有率33wt%)である。
【0090】
「コウベポリシートEL」(新神戸電機社製)は、ポリエチレンである。
【0091】
「コウベポリシートPP」(新神戸電機社製)は、エチレン−プロピレン共重合樹脂である。
【0092】
「ワルツニューレスキューコート」(大谷塗料社製)、「NTXウルトラック」(大阪塗料工業社製)は、2液型ウレタン塗料である。
【0093】
「アクリディック52−666−BA」(DIC社製)は、ポリオール、「バーノックDN955」(DIC社製)は、イソシアネートである。
【0094】
なお、表中のベース樹脂において、PP/PBは、プロピレン−ブテン共重合樹脂を示し、PE/PP/PBは、エチレン−プロピレン−ブテン共重合樹脂を示し、PPは、ポリプロピレンを示し、PEは、ポリエチレンを示し、PE/PPは、エチレン−プロピレン共重合樹脂を示す。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の木質建材は、例えば、建築物などの建材材料や、家具などの一般工業材料として用いることができる。また、発明の塗料は、建築物などの建材材料や、家具などの一般工業材料に対して用いることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 木材
2 ポリオレフィン層
3 木質建材
【要約】
【課題】木材の表面から水溶性木質改質剤を溶脱することを抑制することができる木質建材および塗料を提供すること。
【解決手段】
本発明の木質建材3は、水溶性木質改質剤が注入された木材1と、木材を被覆するポリオレフィン層2を備え、ポリオレフィン層2が、変性ポリオレフィンを含有する。
【選択図】図1
図1