【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のコルク床材は、密度が210〜280kg/m
3で且つ含水率が3〜4重量%である中間コルクシートの上面に、密度が480〜510kg/m
3で且つ含水率が2重量%以下である上側コルクシートが積層一体化されていると共に、上記中間コルクシートの下面に密度が290〜340kg/m
3で且つ含水率が3〜4重量%である下側コルクシートが積層一体化されており、上記中間コルクシートの一側面には雌ザネが形成されていると共に、上記中間コルクシートの他側面には上記雌ザネにサネ係合可能な雄ザネが形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のコルク床材を構成しているコルクシートは、コルク粒をバインダーで一体化してなるものが用いられる。
【0012】
コルクシートを構成しているコルク粒としては、特に限定されず、一般にコルク材として用いられるコルク樫の表皮部位を破砕し、それを整粒したものが好適に用いられる。
【0013】
コルクシートに用いられるバインダーとしては、特に限定されず、例えば、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、イソシアネート系樹脂などが挙げられる。
【0014】
又、上記コルクシートにおけるバインダーの含有量は、特に限定されないが、少ないと、後述するコルクブロックを製造するのが困難になることがあり、多いと、コルク床材の遮音性及びクッション性が不十分になり、又は、下側コルクシートの接着剤のアンカー効果が低下することがあるので、コルク粒100重量部に対して5〜7重量部が好ましい。
【0015】
コルク床材Aを構成している中間コルクシート1の密度は、小さいと、コルク床材が柔らかくなり過ぎてコルク床材上を歩行した際の歩行感が悪くなり、中間コルクシートに形成した雄ザネが破損しやすくなり、又は、コルク床材の耐久性が低下することがあり、高いと、コルク床材が硬くなり過ぎてコルク床材上を歩行した際の歩行感が悪くなるので、210〜280kg/m
3に限定され、230〜260kg/m
3が好ましい。
【0016】
又、中間コルクシート1の含水率は3〜4重量%に限定されている。中間コルクシート1の3〜4重量%の含水率は、通常の保管及び使用環境において、コルクシートが通常、含有している水分量であり、中間コルクシートの含水率を3〜4重量%に保持することによって、中間コルクシートが保管中などに空気中の湿気を吸収して中間コルクシートが不測に伸長するのを防止して、保管中などにコルク床材に不測に反りが生じるのを防止することができる。
【0017】
なお、本発明において、コルクシートの含水率は、欧州標準規格 EN12105に準拠して測定された値をいう。本発明のコルク床材における各コルクシートの含水率を測定するには、含水率を測定したいコルクシート(対象コルクシート)をコルク床材から対象コルクシート以外のコルクシートを切除するなどして取り出し、対象コルクシートの含水率を欧州標準規格 EN12105に準拠して測定すればよい。
【0018】
中間コルクシート1を構成しているコルク粒の粒径は、小さいと、コルク粒同士の結合が弱くなって中間コルクシートの強度が低下することがあり、大きいと、中間コルクシートに形成した雄ザネが破損しやすくなるので、0.55〜2.18mmが好ましい。
【0019】
なお、本発明において、コルク粒の粒径は下記の要領で測定された値をいう。先ず、JIS Z8801に規定された標準篩(目開き11.2mm、目開き9.5mm、目開き8.00mm、目開き6.70mm、目開き5.60mm、目開き4.75mm、目開き4.00mm、目開き3.35mm、目開き2.80mm、目開き2.36mm、目開き2.00mm、目開き1.70mm、目開き1.40mm、目開き1.18mm、目開き1.00mm、目開き0.85mm、目開き0.71mm、目開き0.60mm、目開き0.50mm)を用意する。そして、最も目開きの大きい篩を篩振盪機に装着して篩上にコルク粒約100gを載せ、振盪数200回/分で10分間振盪する。そして、振盪後、篩上に残ったコルク粒を回収して、篩振盪機に装着した篩を次に目開きの小さい篩と交換し、篩を通過したコルク粒を篩上に載せて上記条件にて振盪する。このように、篩振盪機に装着する篩を目開きの大きいものから小さいものへと順に交換していき、コルク粒を最も小さい篩を用いて振盪し終わるまでこの作業を続けて行なう。
【0020】
コルク粒の粒径は、このコルク粒が残った篩の目開きと、この篩の一つ上の大きな目開きを有する篩の目開きとの相加平均値とする。例えば、目開き5.60mmの篩上に残ったコルク粒の粒径は、このコルク粒が残った篩の目開き5.60mmと、この篩の一つ上の大きな目開きを有する篩の目開き6.70mmとの相加平均値6.15mmとする。
【0021】
図1に示したように、中間コルクシート1の上面には上側コルクシート2が接着剤層を介して積層一体化されている。この上側コルクシート2の密度は、小さいと、コルク床材の強度が低下して使用中の衝撃などによって傷つき易くなる虞れがあり、大きいと、コルク床材が硬くなり過ぎてコルク床材上を歩行した際の歩行感が低下するので、480〜510kg/m
3に限定され、500〜510kg/m
3が好ましい。
【0022】
上側コルクシート2を構成しているコルク粒の粒径は、小さいと、コルク粒同士の結合が弱くなって上側コルクシートの強度が低下することがあり、大きいと、上側コルクシートのコルク粒の隙間が大きくなってコルク床材の外観が低下することがあるので、2.58〜8.75mmが好ましい。
【0023】
本発明のコルク床材は、通常、その上側コルクシートの表面に紫外線硬化型塗料が塗布されコーティング層が形成されて用いられる。上側コルクシートの表面に塗布された紫外線硬化型塗料を硬化するために紫外線を照射すると、紫外線の照射によって上側コルクシートが加熱されて上側コルクシート中に含まれている水分が蒸発し、紫外線硬化型塗料を硬化させて得られるコーティング層に発泡が生じてコルク床材の外観が損なわれる虞れがある。そこで、本発明のコルク床材は、その上側コルクシートの含水率を2重量%以下に限定し、上側コルクシート中に含まれている水分量を予め低減させており、紫外線硬化型塗料の硬化時に行われる紫外線照射によって上側コルクシートが加熱されたとしても、上側コルクシート上に形成したコーティング層に発泡が生じることはなく、美麗な外観を有するコルク床材を得ることができる。
【0024】
上記中間コルクシート1の下面には下側コルクシート3が積層一体化されている。下側コルクシート3の密度は290〜340kg/m
3に限定され、330〜340kg/m
3が好ましい。下側コルクシート3の密度が小さいと、(1)コルク床材に反りが発生し易くなり、(2)中間コルクシートに形成した雌ザネの補強効果が低下して中間コルクシートの雌ザネが破損し易くなり、又は(3)コルク床材を施工面上に敷設する際に、下側コルクシート中にしみ込む接着剤の量が多くなりすぎて、下側コルクシートに反りが発生し、施工面上にコルク床材を安定的に敷設することできない。
【0025】
下側コルクシート3の密度が大きいと、コルク床材を施工面上に敷設する際に、下側コルクシート中に接着剤を十分に進入させることができず、施工面に対する下側コルクシートの接着性が低下する。即ち、本発明のコルク床材は、下側コルクシートの密度を290〜340kg/m
3に限定することによって、施工面上に塗布した接着剤に起因した反りを発生させることなく、施工面上に接着剤によって安定的に且つ強固に接着、固定することができる。更に、本発明のコルク床材の中間コルクシートに形成された雌ザネが破損するのを防止して、本発明のコルク床材の敷設を容易に且つ正確に行うことができる。
【0026】
下側コルクシート3を構成しているコルク粒の粒径は、小さいと、下側コルクシート中に接着剤を十分にしみ込ませることができず、コルク床材の施工面上への接着性が低下することがあり、大きいと、下側コルクシートの強度が低下することがあるので、2.58〜4.375mmが好ましい。
【0027】
又、下側コルクシート3の含水率は3〜4重量%に限定されている。下側コルクシート3の3〜4重量%の含水率は、通常の保管及び使用環境において、コルクシートが通常、含有している水分量であり、下側コルクシートの含水率を3〜4重量%に保持することによって、下側コルクシートが保管中などに空気中の湿気を吸収して下側コルクシートが不測に伸長するのを防止してコルク床材が保管中に不測に反りを生じるのを防止することができる。
【0028】
中間コルクシート1の厚みは、薄いと、コルク床材の柔軟性が低下することがあり、厚いと、コルク床材の強度が低下して耐久性が低下することがあるので、上側コルクシートの厚みの6〜10倍が好ましい。
【0029】
下側コルクシート3の厚みは、薄いと、コルク床材の接着性が低下し、又は、コルク床材を施工面上に敷設した際に接着剤によって下側コルクシートが変形し、コルク床材に反りが生じる虞れがあり、厚いと、コルク床材の軽量性が損なわれることがあるので、上側コルクシートの厚みの0.8〜1.2倍が好ましい。
【0030】
更に、コルク床材Aの中間コルクシート1の一側面には雌ザネ11が、他側面には雌ザネ11に係合可能な雄ザネ12が形成されている。雌ザネ11及び雄ザネ12の断面形状は、特に限定されず、例えば、三角形状、四角形状、半円形状、半楕円形状などが挙げられる。
【0031】
中間コルクシート1は上述のように210〜280kg/m
3という適度な密度を有していることから、中間コルクシート1に形成された雄ザネ12が施工中に不測に破損し、互いに隣接するコルク床材A、A同士の接続状態が不安定となることはなく、施工時において、コルク床材A、Aの目地合わせを容易に行いながら、コルク床材A、A同士を接続させて、コルク床材Aを施工面上に円滑に敷設することができる。
【0032】
なお、中間コルクシート1、上側コルクシート2及び下側コルクシート3には、コルク床材Aの物性を損ねない範囲内で、顔料や賦型剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0033】
次に、本発明のコルク床材Aの製造方法を説明する。先ず、コルクシートの製造方法について説明する。コルクシートの製造方法としては、特に限定されず、例えば、所望の粒径を有するコルク粒及びバインダーを混合撹拌し、これをスチール製の一定の容積を有するモールに供給して、このモールを140〜160℃に設定した炉の中に投入し、モール内の混合物にプレス機を用いて圧力をかけながら16〜18時間加熱することによってコルクブロックを得る。そして、このコルクブロックを適当な厚さにスライスすることによって、コルクシートを得ることができる。
【0034】
コルクシートの密度は、モール内に供給するコルク粒の量を調整すること、又は、モール内の混合物に加える圧力を調整することによって制御することができる。即ち、一定の容積を有するモール内に供給するコルク粒の量を少なくすることによって、得られるコルクシートの密度を低くすることができる一方、一定の容積を有するモール内に供給するコルク粒の量を多くすることによって、得られるコルクシートの密度を高くすることができる。モール内の混合物に加える圧力を低くすることによって、得られるコルクシートの密度を小さくすることができる一方、モール内の混合物に加える圧力を高くすることによって得られるコルクシートの密度を高くすることができる。
【0035】
上側コルクシート用のコルクシートについては、その含水率を2重量%以下とするために、得られたコルクシートをその両面から必要に応じてネットを介した状態にて160〜180℃の熱板で挟持してコルクシートを加熱し、コルクシート中に含まれている水分を蒸発、除去する。なお、ネットは熱板の熱によって溶融などの変質を生じない材料から形成されている。得られた上側コルクシートは、その両面からの熱板による加熱によって、コルクシートを構成しているコルク粒間の隙間が小さくなっている。コルクシート中の水分はコルク粒間の隙間に保持されるが、上述の通り、コルクシートは、その製造過程において水分量の低減のために加えられる熱によってコルク粒間の隙間が小さくなっており、従って、上側コルクシート用のコルクシートの含水率を2重量%以下とした後、上側コルクシート用のコルクシートは、空気中の湿気を吸収して含水率が2重量%を超えるようなことはない。
【0036】
そして、中間コルクシート1の上面に上側コルクシート2を積層一体化すると共に、中間コルクシート1の下面に下側コルクシート3を積層一体化することによってコルク床材Aを製造するのであるが、中間コルクシート1の上下面のそれぞれに上側コルクシート2又は下側コルクシート3を積層一体化させる方法としては、特に限定されず、例えば、中間コルクシートとなるコルクシートの上下面に後述する接着剤を塗布し、このコルクシートの上下面の接着剤上にそれぞれ上側コルクシートとなるコルクシート又は下側コルクシートとなるコルクシートを積層させることによって、中間コルクシートとなるコルクシートの上面に接着剤を介して上側コルクシートとなるコルクシートが、中間コルクシート1の下面に接着剤を介して下側コルクシートとなるコルクシートが積層された積層体を作製する。続いて、この積層体をその厚み方向にプレス機を用いて4.9〜5.4kPaで25〜30分間加圧することによって、中間コルクシート1の上面に上側コルクシート2が、中間コルクシート1の下面に下側コルクシート3が積層一体化されてなるコルク床材を製造することができる。得られたコルク床材の中間コルクシートの一側面に雌ザネ11を、他側面には雌ザネ11に係合可能な雄ザネ12を汎用の方法で形成すればよい。
【0037】
なお、上記コルク床材Aにおける表裏コルクシート2、3と中間コルクシート1とを積層一体化させるのに用いられる接着剤としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系接着剤、ウレタンアクリレート系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられ、これらの中でもコルク床材の反りが生じ難いウレタン系接着剤が好ましい。
【0038】
本発明のコルク床材Aは、その上側コルクシート2に耐久性を付与するために、上側コルクシート2の表面にコーティング層が形成されていてもよい。このようなコーティング層は、上側コルクシート2の表面に紫外線硬化型塗料を塗布し、紫外線硬化型塗料に紫外線を照射して紫外線硬化型塗料を硬化させることによって形成することができ、このような紫外線硬化型塗料としては、特に限定されず、例えば、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂などが挙げられ、ウレタン系樹脂が好ましい。
【0039】
本発明のコルク床材の施工要領について説明する。先ず、コルク床材を敷設する施工面Bに接着剤を塗布する。なお、接着剤としては、汎用のものが用いられ、例えば、1液湿気硬化型ウレタン接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
【0040】
次に、複数枚のコルク床材Aを施工面Bに順次、敷設する。コルク床材Aを施工面Bに敷設するにあたって、従来のコルク床材のように、コルク床材の下面及び施工面の双方に接着剤を塗布し、双方に塗布した接着剤が乾燥するまで待った後、コルク床材を施工面に敷設する必要はない。
【0041】
よって、本発明のコルク床材Aは施工面Bに接着剤を塗布した後に直ちに施工面Bに敷設することができ、施工時間の短縮を図ることができると共に、コルク床材Aの下面に接着剤を塗布する必要がなく、施工時間の短縮を図ることができ、更に、接着剤を塗布したコルク床材の養生場所を確保する必要もなく作業効率の向上を図ることができる。
【0042】
更に、施工面Bの接着剤は完全に乾燥していていないことから、コルク床材Aを施工面B上に敷設した後もコルク床材Aの位置を調整することができ、コルク床材Aの目地合わせを容易に行うことができ、施工作業を容易に行うことができる。
【0043】
そして、コルク床材Aの下側コルクシート3はその密度が290〜340kg/m
3と適度な密度を有しており、好ましくは、下側コルクシート3を構成しているコルク粒の粒径を2.58〜4.375mmに調整していることから、接着剤によって反りを発生させることなく、下側コルクシート3中に接着剤を適度に含浸させることができ、優れたアンカー効果を発現させて、コルク床材Aを施工面B上に強固に接着剤によって固定させることができる。
【0044】
しかも、コルク床材Aの中間コルクシート2には雌雄ザネが形成されており、コルク床材A、A・・・を施工面B上に順次、敷設するにあたって、互いに隣接するコルク床材A、A間において、一方のコルク床材Aの雌ザネ11に他方のコルク床材Aの雄ザネ12を係合させているので、互いに隣接するコルク床材A、A同士の接続を正確に且つ確実なものとすることができる。
【0045】
上述のように、互いに隣接するコルク床材A、A間において雌雄ザネ11、12同士を係合させているので、接着剤がコルク床材A、A間の隙間からコルク床材Aの上面に滲み出るのを雌雄ザネ11、12によって遮蔽することができ、接着剤が乾燥する前にコルク床材Aを施工面B上に敷設しても、コルク床材Aの表面が接着剤によって汚染されることはない。
【0046】
施工面B上にコルク床材A、A・・・を敷設した後、接着剤を乾燥させ、必要に応じて接着剤を硬化させてコルク床材A、A・・・を施工面B上に固定することによってコルク床材Aによって床面を容易に形成することができる。