(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0022】
〔特定のキサンテン色素〕
本発明のキサンテン色素は、上記一般式(1)で表されることを特徴とする特定のキサンテン色素である。
【0023】
特定のキサンテン色素を示す上記一般式(1)において、2つのR
1 は、同一のアルキル基またはアリール基である。
当該アルキル基としては、炭素数1〜8のもの、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられ、当該アリール基としては、炭素数6〜8のもの、具体的にはフェニル基、ベンジル基、エチルフェニル基などが挙げられ、これらの中でも、基R
1 はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であることが好ましい。
【0024】
また、特定のキサンテン色素を示す上記一般式(1)において、R
2 およびR
3 は、互いに異なる、アリール基またはヘテロアリール基である。
当該アリール基としては、具体的にはo−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、o−エトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,6−キシリル基、2−メチル−6−エチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、4’−アセトアニリド基、4−安息香酸エチル基、2−安息香酸メチル基などが挙げられ、当該ヘテロアリール基としては、具体的にはイミダゾール基、ベンズイミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基、インダゾール基、インドール基、トリアゾール基などが挙げられ、これらの中でも、R
2 およびR
3 が、互いに異なるアリール基であることが好ましく、R
2 およびR
3 が、それぞれ、o−トリル基、2,6−キシリル基、2−メチル−6−エチルフェニル基から選ばれるものであることが特に好ましい。
なお、o−トリル基とm−トリル基のように、互いに位置異性体であるものも、互いに異なる基であるとする。
【0025】
特定のキサンテン色素を示す上記一般式(1)において、R
1 がアリール基である場合は、当該R
1 はR
2 またはR
3 と同じものであってもよいが、R
2 およびR
3 のいずれとも異なるものであることが好ましい。
【0026】
以上のような特定のキサンテン色素によれば、所望のスペクトルが得られ、かつ、上記一般式(1)におけるR
2 とR
3 とが互いに異なる構造を有する非対称化合物であることによって、分子極性が低下されて所期の有機溶媒への高い溶解性が得られ、さらに、優れた耐熱性が得られる。
【0027】
以上のような特定のキサンテン色素は、透過スペクトルにおける吸収ピークが520〜570nmの範囲にあると共に当該吸収ピークの半値半幅が70nm以下である、吸収ピークがシャープな赤色スペクトルが得られるものであることが好ましい。
【0028】
また、以上のような特定のキサンテン色素は、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドおよび乳酸エチルなどの有機溶媒に対する優れた溶解性を有するものであることが好ましい。具体的には、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドおよび乳酸エチルのいずれにも5質量%以上の濃度で完全に溶解されるものであることが好ましい。
【0029】
〔特定のキサンテン色素の製造方法〕
本発明のキサンテン色素の製造方法は、以上のような本発明のキサンテン色素を製造する方法であって、下記(A)〜(C)の工程を有することを特徴とする方法である。
【0030】
〔(A)工程〕
下記反応式(1)に示すように、上記一般式(2)で表される化合物(以下、「原料キサンテン化合物」ともいう。)と一般式(3):R
2 NH
2 で表される芳香族アミン(以下、「第1の原料芳香族アミン」ともいう)とを反応させることにより、上記一般式(4)で表される化合物(以下、「アミノ基一置換キサンテン化合物」ともいう)を合成する。
【0032】
原料キサンテン化合物を示す上記一般式(2)において、X
1 、X
2 は、各々独立に、ハロゲン原子であり、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であり、好ましくは塩素原子である。
【0033】
第1の原料芳香族アミンを示す上記一般式(3)において、R
2 はアリール基またはヘテロアリール基であり、当該アリール基としては、具体的にはo−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、o−エトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,6−キシリル基、2−メチル−6−エチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、4’−アセトアニリド基、4−安息香酸エチル基、2−安息香酸メチル基などが挙げられ、当該ヘテロアリール基としては、具体的にはイミダゾール基、ベンズイミダゾール基、ピラゾール基、ピロール基、インダゾール基、インドール基、トリアゾール基などが挙げられ、これらの中でも、R
2 およびR
3 が、互いに異なるアリール基であることが好ましく、R
2 およびR
3 が、それぞれ、o−トリル基、2,6−キシリル基、2−メチル−6−エチルフェニル基から選ばれるものであることが特に好ましい。
【0034】
第1の原料芳香族アミンの具体例としては、例えばo−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン、o−フェネチジン、p−フェネチジン、2,3−キシリジン、2,4−キシリジン、2,6−キシリジン、2−メチル−6−エチルアニリン、2,6−ジエチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、3,4−キシリジン、3,5−キシリジン、4’−アミノアセトアニリド、4−アミノ安息香酸エチル、アントラニル酸メチルなどを挙げることができる。
【0035】
アミノ基一置換キサンテン化合物を示す上記一般式(4)において、X
1 は、上記一般式(2)におけるX
1 と同じ原子であり、また、R
2 は上記一般式(3)におけるR
2 と同じ基である。
【0036】
原料キサンテン化合物と第1の原料芳香族アミンとの反応温度は、60〜140℃であることが好ましく、副生成物を抑制する目的から70〜80℃であることがより好ましい。
【0037】
原料キサンテン化合物と第1の原料芳香族アミンとの合成反応は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリジノンなどの極性溶媒、トルエン、ベンゼン、クロロホルムなどの無極性溶媒などの溶媒中で行うことが好ましい。これらの中でも、イソプロパノールを用いることがより好ましい。
【0038】
また、この原料キサンテン化合物と第1の原料芳香族アミンとの合成反応においては、原料キサンテン化合物に対して第1の芳香族アミンを1.2〜2当量使用することが好ましく、1.1〜1.3当量使用することがより好ましい。
【0039】
〔(B)工程〕
下記反応式(2)に示すように、(A)工程において得られたアミノ基一置換キサンテン化合物と一般式(5):R
3 NH
2 で表される芳香族アミン(以下、「第2の原料芳香族アミン」ともいう)とを反応させることにより、上記一般式(6)で表される化合物(以下、「アミノ基二置換キサンテン化合物」ともいう)を合成する。
【0041】
第2の原料芳香族アミンを示す上記一般式(5)において、R
3 は、上述の第1の原料芳香族アミンを示す上記一般式(2)におけるR
2 と異なる、アリール基またはヘテロアリール基であり、具体的には、上述したものと同じ基が挙げられる。
第2の原料芳香族アミンの具体例としては、第1の原料芳香族アミンと同じものを挙げることができる。
【0042】
アミノ基二置換キサンテン化合物を示す上記一般式(6)において、R
2 は上記一般式(3)におけるR
2 と同じ基であり、R
3 は上記一般式(5)におけるR
3 と同じ基である。
【0043】
アミノ基一置換キサンテン化合物と第2の原料芳香族アミンとの反応温度は、100〜160℃であることが好ましく、副生成物を抑制する目的から110〜120℃であることがより好ましい。
【0044】
アミノ基一置換キサンテン化合物と第2の原料芳香族アミンとの合成反応は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリジノンなどの極性溶媒、トルエン、ベンゼン、クロロホルムなどの無極性溶媒などの溶媒中で行うことが好ましい。これらの中でも、エチレングリコールを用いることがより好ましい。
【0045】
また、このアミノ基一置換キサンテン化合物と第2の原料芳香族アミンとの合成反応においては、アミノ基一置換キサンテン化合物に対して第2の芳香族アミンを2〜5当量使用することが好ましく、2.7〜3.3当量使用することがより好ましい。
【0046】
〔(C)工程〕
下記反応式(3)に示すように、(B)工程において得られたアミノ基二置換キサンテン化合物と一般式(7):R
1 X
3 で表されるハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールとを反応させることにより、上記のアミノ基二置換キサンテン化合物の2つのアミノ基のプロトンをアルキル化またはアリール化して、上記一般式(1)で表される本発明のキサンテン色素を合成する。
【0048】
ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールを示す一般式(7)において、R
1 はアルキル基またはアリール基であり、当該アルキル基としては、炭素数1〜8のもの、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられ、当該アリール基としては、炭素数6〜8のもの、具体的にはフェニル基、ベンジル基、エチルフェニル基などが挙げられ、これらの中でも、基R
1 はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基であることが好ましい。
また、X
3 はハロゲン原子であり、具体的には、臭素原子またはヨウ素原子である。
【0049】
ハロゲン化アルキルとしては、例えば臭化エチル、臭化プロピル、臭化イソプロピル、臭化ブチル、臭化イソブチル、2−ブロモブタン、臭化ペンチル、2−ブロモペンタン、1−ブロモ−3−メチルブタン、臭化ヘキシル、2−ブロモヘキサン、3−ブロモヘキサン、1−ブロモ−4−メチルペンタン、ブロモシクロヘキサン、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化イソブチル、2−ヨードブタン、ヨウ化ペンチル、2−ヨードペンタン、1−ヨード−3−メチルブタン、ヨウ化ヘキシル、2−ヨードヘキサン、3−ヨードヘキサン、1−ヨード−4−メチルペンタン、ヨードシクロヘキサン、アセチルブロミド、ブロモ酢酸メチル、ブロモアセトニトリルなどを挙げることができる。
これらは1種を単独で用いる。
【0050】
ハロゲン化アリールとしては、例えばブロモベンゼン、ベンジルブロミド、(2−ブロモエチル)ベンゼン、ヨードベンゼンなどを挙げることができる。
【0051】
アミノ基二置換キサンテン化合物とハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールとの反応温度は、60〜100℃であることが好ましく、副生成物を抑制する目的から70〜80℃であることがより好ましい。
【0052】
アミノ基二置換キサンテン化合物とハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールとの合成反応は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリジノンなどの極性溶媒、トルエン、ベンゼン、クロロホルムなどの無極性溶媒などの溶媒中で行うことが好ましい。これらの中でも、1−メチル−2−ピロリジノンを用いることがより好ましい。
【0053】
また、このアミノ基二置換キサンテン化合物とハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールとの合成反応においては、アミノ基二置換キサンテン化合物に対してハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールを2〜4当量使用することが好ましく、2.7〜3.3当量使用することがより好ましい。
【0054】
また、このアミノ基二置換キサンテン化合物とハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールとの合成反応においては、脱プロトン化を速やかに完結させるため、ジアザビシクロウンデセン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸カリウムなどを使用することが好ましく、特に炭酸カリウムを使用することがより好ましい。具体的にはアミノ基二置換キサンテン化合物に対して1〜3当量使用することが好ましく、2.1〜2.5当量使用することがより好ましい。
【0055】
以上のような特定のキサンテン色素の製造方法によれば、所望のスペクトルが得られ、かつ、所期の有機溶媒への高い溶解性が得られ、さらに、優れた耐熱性が得られる本発明のキサンテン色素を製造することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の実施形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
<実施例1:キサンテン色素の製造方法1>
下記反応式(4)において[a]で示される化合物104.34質量部、イソプロピルアルコール283.56質量部および2,6−キシリジン37.44質量部の混合物を80℃で15時間、撹拌をした。反応終了後、反応溶液を室温まで放冷した後、反応溶液を17.5%塩酸504.61質量部に滴下して室温で1時間、撹拌をした。その後、析出物をろ取して、80℃の純水で洗浄し、残渣を60℃で24時間、乾燥することにより、濃橙色結晶(下記反応式(4)における[b]で示される化合物)101.23質量部を得た(収率80.24%)。この下記反応式(4)において[b]で示される化合物20.00質量部、エチレングリコール99.36質量部およびo−トルイジン13.12質量部の混合物を120℃で18時間、撹拌をした。反応終了後、反応溶液を室温まで放冷した後、反応溶液を17.5%塩酸397.45質量部に滴下して室温で1時間、撹拌をした。その後、析出物をろ取して、80℃の純水で洗浄し、残渣を60℃で24時間、乾燥することにより、濃赤色結晶(下記反応式(4)において[c]で示される化合物)21.18質量部を得た(収率92.55%)。この下記反応式(4)において[c]で示される化合物21.18質量部、1−メチル−2−ピロリジノン135.29質量部、炭酸カリウム7.83質量部およびヨウ化メチル16.09質量部の混合物を80℃で2時間、撹拌をした。反応終了後、反応溶液を室温まで放冷した後、反応溶液を0〜10℃の17.5%塩酸541.17質量部に滴下して1時間、撹拌をした。その後、析出物をろ取して、残渣を60℃で24時間、乾燥することにより、濃赤色結晶17.68質量部を得た(収率79.50%)。MALDI−MS分析(マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析)によって同定したところ、下記反応式(4)において[d]で示される化合物であった。これをキサンテン色素[d]とする。
・MALDI−MS分析の結果:m/z 588(MH+)
【0059】
【化9】
【0060】
最終的に得られたキサンテン色素[d]の純度分析を行うと共に透過スペクトルを測定した。また、耐熱性および有機溶媒に対する溶解性を評価した。結果を下記に示す。
なお、純度分析にはHPLC(高速液体クロマトグラフィー)「LC−10AD」((株)島津製作所製)を用いた。また、透過率は希釈溶媒としてメタノールを用い、紫外可視分光光度計「UV−1800」((株)島津製作所製)によって測定した。
また、耐熱性の評価は、定温乾燥器「VOS−300SD」(東京理化器械(株)製)を用いて、240℃で15分間加熱する耐熱試験を行い、耐熱試験前後の吸収スペクトルを比較することにより、行った。
また、有機溶媒に対する溶解性の評価は、それぞれ、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドおよび乳酸エチルに1質量%〜5質量%の濃度まで、1質量%刻みで濃度を高くしながら、溶解性を観察することにより、行った。
【0061】
[1]純度分析の結果:純度98.72面積%、保持時間10.4分間(メタノール/蒸留水=80/20)
[2]透過スペクトル:最大透過率=97.75%(441nm)、最小透過率=16.99%(544nm)、結果を
図1に「d」で示す。
[3]耐熱性の評価:耐熱試験前後で大きな吸収スペクトルの変化は認められなかった。
[4]有機溶媒に対する溶解性の評価:メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドおよび乳酸エチルのいずれにも5質量%の濃度で完全に溶解された。
【0062】
上記の結果より、本発明のキサンテン色素[d]は、所望のスペクトルが得られ、かつ、所期の有機溶媒に対する溶解性に優れると共に耐熱性に優れていることが確認された。
【0063】
<実施例2:キサンテン色素の製造方法2>
実施例1と同様にして、下記反応式(5)において[c]で示される化合物を得た。この下記反応式(5)において[c]で示される化合物20.00質量部、1−メチル−2−ピロリジノン132.26質量部、炭酸カリウム7.40質量部およびヨウ化エチル16.69質量部の混合物を80℃で2時間、撹拌をした。反応終了後、反応溶液を室温まで放冷した後、反応溶液を0〜10℃の17.5%塩酸529.04質量部に滴下して1時間、撹拌をした。その後、析出物をろ取して、残渣を60℃で24時間、乾燥することにより、濃赤色結晶17.76質量部を得た(収率80.70%)。MALDI−MS分析によって同定したところ、下記反応式(5)において[e]で示される化合物であった。これをキサンテン色素[e]とする。
・MALDI−MS分析の結果:m/z 616(MH+)
【0064】
【化10】
【0065】
最終的に得られたキサンテン色素[e]について、実施例1と同様にして純度分析を行うと共に透過スペクトルを測定した。また、耐熱性および有機溶媒に対する溶解性を評価した。結果を下記に示す。
【0066】
[1]純度分析の結果:純度96.99面積%、保持時間6.4分間(メタノール/蒸留水=90/10)
[2]透過スペクトル:最大透過率=97.52%(441nm)、最小透過率=19.33%(548nm)、結果を
図1に「e」で示す。
[3]耐熱性の評価:耐熱試験前後で大きな吸収スペクトルの変化は認められなかった。
[4]有機溶媒に対する溶解性の評価:メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドおよび乳酸エチルのいずれにも5質量%の濃度で完全に溶解された。
【0067】
上記の結果より、本発明のキサンテン色素[e]は、所望のスペクトルが得られ、かつ、所期の有機溶媒に対する溶解性に優れると共に耐熱性に優れていることが確認された。
【0068】
<実施例3:キサンテン色素の製造方法3>
実施例1と同様にして、下記反応式(6)において[c]で示される化合物を得た。この下記反応式(6)において[c]で示される化合物4.42質量部、1−メチル−2−ピロリジノン31.22質量部、炭酸カリウム1.63質量部およびヨウ化ブチル4.35質量部の混合物を80℃で2時間、撹拌をした。反応終了後、反応溶液を室温まで放冷した後、反応溶液を0〜10℃の17.5%塩酸124.88質量部に滴下して1時間、撹拌をした。その後、析出物をろ取して、残渣を60℃で24時間、乾燥することにより、濃紫色結晶4.96質量部を得た(収率97.72%)。MALDI−MS分析によって同定したところ、下記反応式(6)において[f]で示される化合物であった。これをキサンテン色素[f]とする。
・MALDI−MS分析の結果:m/z 672(MH+)
【0069】
【化11】
【0070】
最終的に得られたキサンテン色素[f]について、実施例1と同様にして純度分析を行うと共に透過スペクトルを測定した。また、耐熱性および有機溶媒に対する溶解性を評価した。結果を下記に示す。
【0071】
[1]純度分析の結果:純度97.72面積%、保持時間10.6分(メタノール/蒸留水=90/10)
[2]透過スペクトル:最大透過率=97.53%(444nm)、最小透過率=19.14%(550nm)、結果を
図1に「f」で示す。
[3]耐熱性の評価:耐熱試験前後で大きな吸収スペクトルの変化は認められなかった。
[4]有機溶媒に対する溶解性の評価:メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドおよび乳酸エチルのいずれにも5質量%の濃度で完全に溶解された。
【0072】
上記の結果より、本発明のキサンテン色素[f]は、所望のスペクトルが得られ、かつ、所期の有機溶媒に対する溶解性に優れると共に耐熱性に優れていることが確認された。
【0073】
<実施例4:キサンテン色素の製造方法4>
実施例1と同様にして、下記反応式(7)において[b]で示される化合物を得た。この下記反応式(7)において[b]で示される化合物20.00質量部、エチレングリコール182.79質量部および2−メチル−6−エチルアニリン16.56質量部の混合物を120℃で18時間、撹拌をした。反応終了後、反応溶液を室温まで放冷した後、反応溶液を17.5%塩酸658.03質量部に滴下して室温で1時間、撹拌をした。その後、析出物をろ取して、80℃の純水で洗浄し、残渣を60℃で24時間、乾燥することにより、濃赤色結晶(下記反応式(7)において[g]で示される化合物)21.60質量部を得た(収率89.88%)。この下記反応式(7)において[g]で示される化合物21.60質量部、1−メチル−2−ピロリジノン134.49質量部、炭酸カリウム7.61質量部およびヨウ化メチル15.62質量部の混合物を80℃で2時間、撹拌をした。反応終了後、反応溶液を室温まで放冷した後、反応溶液を0〜10℃の17.5%塩酸537.95質量部に滴下して1時間、撹拌をした。その後、析出物をろ取して、残渣を60℃で24時間、乾燥することにより、濃赤色結晶19.01質量部を得た(収率84.00%)。MALDI−MS分析によって同定したところ、下記反応式(7)において[h]で示される化合物であった。これをキサンテン色素[h]とする。
・MALDI−MS分析の結果:m/z 616(MH+)
【0074】
【化12】
【0075】
最終的に得られたキサンテン色素[h]について、実施例1と同様にして純度分析を行うと共に透過スペクトルを測定した。また、耐熱性および有機溶媒に対する溶解性を評価した。結果を下記に示す。
【0076】
[1]純度分析の結果:純度98.79面積%、保持時間15.0分間(メタノール/蒸留水=80/20)
[2]透過スペクトル:最大透過率=98.03%(441nm)、最小透過率=17.96%(544nm)、結果を
図1に「h」で示す。
[3]耐熱性の評価:耐熱試験前後で大きな吸収スペクトルの変化は認められなかった。
[4]有機溶媒に対する溶解性の評価:メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドおよび乳酸エチルのいずれにも5質量%の濃度で完全に溶解された。
【0077】
上記の結果より、本発明のキサンテン色素[h]は、所望のスペクトルが得られ、かつ、所期の有機溶媒に対する溶解性に優れると共に耐熱性に優れていることが確認された。
【0078】
<比較例1:キサンテン色素の製造方法5>
下記反応式(8)において[a]で示される化合物20.00質量部、エチレングリコール115.52質量部およびp−トルイジン18.51質量部の混合物を120℃で18時間、撹拌をした。反応終了後、反応溶液を室温まで放冷した後、反応溶液を0〜10℃の17.5%塩酸462.10質量部に滴下して1時間、撹拌をした。その後、析出物をろ取して、80℃の純水で洗浄し、残渣を60℃で24時間、乾燥することにより、濃紫色結晶24.54質量部を得た(収率90.96%)。MALDI−MS分析によって同定したところ、下記反応式(8)において[i]で示される化合物であった。これをキサンテン色素[i]とする。
・MALDI−MS分析の結果:m/z 546(MH+)
【0079】
【化13】
【0080】
最終的に得られたキサンテン色素[i]について、実施例1と同様にして純度分析を行うと共に透過スペクトルを測定した。また、耐熱性および有機溶媒に対する溶解性を評価した。結果を下記に示す。
【0081】
[1]純度分析の結果:純度91.20面積%、保持時間4.4分間(アセトニトリル/蒸留水=80/20)
[2]透過スペクトル:最大透過率=92.50%(392nm)、最小透過率=50.76%(551nm)、結果を
図1に「i」で示す。
[3]耐熱性の評価:耐熱試験前後で大きな吸収スペクトルの変化は認められなかった。
[4]有機溶媒に対する溶解性の評価:メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドおよび乳酸エチルのいずれにも1質量%しか溶解されなかった。
【0082】
上記の結果より、このキサンテン色素[i]は、吸収ピークが小さく、また、最大透過率と最小透過率との差も小さく、所期のスペクトルが得られるとは言えず、また、有機溶媒に対する溶解性が低いことが判明した。