特許第6009263号(P6009263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009263
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】転写装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/325 20060101AFI20161006BHJP
   B41J 2/32 20060101ALI20161006BHJP
   B41J 17/02 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B41J2/325 C
   B41J2/32 Z
   B41J17/02
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-170338(P2012-170338)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-28487(P2014-28487A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231589
【氏名又は名称】ニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】相原 裕一
【審査官】 下村 輝秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−090798(JP,A)
【文献】 特開平01−156090(JP,A)
【文献】 特開平07−164705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J17/00−17/42
B41J27/00−27/22
B41J31/00−35/38
B41J2/315−2/345
B41J2/42−2/425
B41J2/475−2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の印刷幅に対応した所定幅の複数種類のインクパネル面が面順次に配置されたインクリボンを用いて文字及び画像等の転写画像を前記記録媒体に転写印刷する転写装置であって、
サーマルヘッド及びプラテン間に前記インクリボン及び前記記録媒体を狭持した状態で搬送しつつ当該記録媒体に前記転写画像を転写する画像形成部と、
前記インクリボンを搬送するインクリボン搬送手段と、
前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、
前記インクリボン搬送手段と前記記録媒体搬送手段を制御し、前記画像形成部において前記インクパネルにおける転写開始位置と前記記録媒体の転写開始位置との頭出し位置を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記頭出し位置の制御において、前記インクリボンの最初に配置された第1インクパネルを用いて転写する前記転写画像のインクリボン搬送方向におけるセンター位置を、前記転写画像の全てが前記第1インクパネル面内に入る位置であって且つ前記第1インクパネルのセンターよりも次のインクパネルである第2インクパネル側に位置付けるように前記第1インクパネルの転写開始位置を設定し、
前記第2インクパネルを用いて転写する際に、前記第2インクパネルを用いて転写する前記転写画像の転写開始位置を前記第1インクパネルにおける転写開始位置よりも前記インクパネルの先端側の異なる位置となるように設定することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記インクリボンにおける最後に配置された最終インクパネルを用いて転写する前記転写画像のインクリボン搬送方向におけるセンター位置が、前記最終インクパネルのセンター位置よりも前インクパネル側に位置付けるように前記インクリボンの最終インクパネルの転写開始位置を設定することを特徴とする請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1インクパネルと前記最終インクパネルとの間に配置された他の中間インクパネルにおける転写画像の1又は複数の転写開始位置を、前記第1インクパネルの転写終了位置から前記最終インクパネルの転写開始位置間において等間隔になるように設定することを特徴とする請求項2に記載の転写装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1インクパネルにおける前記転写画像の転写終了位置から前記最終インクパネルの転写開始位置までの距離をA、前記中間インクパネルの数をN(1を含む)、前記中間インクパネルで転写される転写データの前記インクリボン搬送方向における転写画像のデータサイズにおける総距離をB、前インクパネルの転写終了位置から次インクパネルの転写開始位置までの距離をCとした場合に、
計算式:C=(A−B)/(N+1)、により求められるCによって前記中間インクパネルの転写開始位置を設定することを特徴とする請求項3に記載の転写装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1インクパネルの転写終了位置を、先ず前記記録媒体の全面に転写処理を行う全面転写時の転写終了位置と同一位置に設定し、次に転写画像のデータサイズに応じて前記第1インクパネルの転写開始位置を設定することを特徴とする請求項1に記載の転写装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記最終インクパネルの転写開始位置を、前記記録媒体の全面に転写処理を行う全面転写時の転写開始位置と同一位置に設定することを特徴とする請求項2に記載の転写装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1インクパネルの先端から前記第1インクパネルの転写開始位置までの距離よりも前記第2インクパネルの先端から前記第2インクパネルの転写開始位置までの距離が短くなるように頭出し位置を制御することを特徴とする請求項1に記載の転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IDカード、身分証明書、各種会員カード等のカード状の記録媒体に文字及びカラー画像を転写印刷する装置に関し、特に、複数種類のインク色が記録媒体の幅と略等間隔に連続して面順次に形成されたインクパネルの各インクをカード状記録媒体に中間転写フィルムを介して間接的に、又はインクパネルのインクをカード状記録媒体に直接転写する転写印刷速度の高速化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カード状記録媒体の印刷装置としては、例えばプラスチック又は防水処理された厚紙のカード記録媒体に、顔写真などの画像データを印刷するための装置が知られている。カード状記録媒体の例としては、運転免許証、各種の会員証、カードを所持する個人の社員証やその他のIDカードであって、顔写真や個人情報をカードに印刷するものであって、大きなデータ量の情報を多数枚印刷するものではない。
【0003】
このため、近年では、オンディマンド印刷としてコンピュータネットワークに組み込まれ、カードを所持する個人の顔写真、発行体とカードの種類等の表示するデータ、個人情報などの電子データ記録を同時に実行するネットワークに接続されたプリンタシステムが知られている。そして、このようなプリンタシステムに利用されるプリンタとしては、昇華型転写装置がある。
【0004】
昇華型転写装置は、カードの印刷幅に対応した所定幅の複数種類のインクパネル面が面順次に配置されたインクリボンを用いて、文字及び画像等の転写画像をカードに転写印刷するものである。カードに転写印刷するには、直接カードに印刷する直接方式と、転写フィルムに一次転写して転写フィルムからカードに二次転写する中間転写方式とがある。しかし、何れの方式であっても、カード若しくはフィルムの転写する面に対して、それぞれインクリボンのイエロー・マゼンタ・シアン・ブラック等の各色が施されたインクパネルが順次重なり合うように通過させて印刷を行う点は変わらない。
【0005】
このとき、カード若しくはフィルムによる記録媒体の転写する面の印刷幅に対して、各インクパネル面を順次正確に重ねるには、各インクパネルにおける転写開始位置と記録媒体の転写開始位置とを頭出し位置で精度良く合わせする必要がある。このため、従来、頭出し制御を行うには、インクリボンの各インクパネルのセンターを基準として、印刷しようとする画像データのセンターと合わせるようにして、各インクパネルの頭出しを行っている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−51142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような、従来の頭出し制御で記録媒体の全面に亘って画像G1の印刷を行う場合は、図10(a)に示すように、インクリボンの各インクパネル間の搬送時間Aは、一つのインクパネルによる印刷終了後に記録媒体を転写開始位置まで戻す搬送時間Bよりも少なく(A<B)、インクリボンの搬送時間Aは全体の印刷時間に影響を及ぼすことはない。
【0008】
しかしながら、図10(b)に示すように、転写画像G2が所定の印刷幅より小さくなると、インクリボンの各インクパネル間の搬送時間Aは、一つのインクパネルによる印刷終了後に記録媒体をその印刷幅分だけ転写開始位置まで戻す時間Bよりも大きく(A>B)なり、この差が全体の印刷時間に影響を及ぼすことになる。すなわち、記録媒体の頭出し位置への移送が完了した後も、インクリボンでは次のインクパネルの頭出し位置への移送が完了しておらず記録媒体はその間は待機することになり、この待機時間が全体の印刷時間が長くする原因となっている。
【0009】
本発明は、上記した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、インクリボンの各インクパネルを頭出し位置へ移送する時間を短縮することにより、印刷時間の高速化を実現する転写装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明は、記録媒体の印刷幅に対応した所定幅の複数種類のインクパネル面が面順次に配置されたインクリボンを用いて文字及び画像等の転写画像を前記記録媒体に転写印刷する転写装置であって、サーマルヘッド及びプラテン間に前記インクリボン及び前記記録媒体を狭持した状態で搬送しつつ当該記録媒体に前記転写画像を転写する画像形成部と、前記インクリボンを搬送するインクリボン搬送手段と、前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段と、前記インクリボン搬送手段と前記記録媒体搬送手段を制御し、前記画像形成部において前記インクパネルにおける転写開始位置と前記記録媒体の転写開始位置との頭出し位置を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記頭出し位置の制御において、前記インクリボンの最初に配置された第1インクパネルを用いて転写する前記転写画像のインクリボン搬送方向におけるセンター位置を、前記転写画像の全てが前記第1インクパネル面内に入る位置であって且つ前記第1インクパネルのセンターよりも次のインクパネルである第2インクパネル側に位置付けるように前記第1インクパネルの転写開始位置を設定し、前記第2インクパネルを用いて転写する際に、前記第2インクパネルを用いて転写する前記転写画像の転写開始位置を前記第1インクパネルにおける転写開始位置よりも前記インクパネルの先端側の異なる位置となるように設定することを特徴とる。
【0011】
そして、前記制御手段は、前記インクリボンにおける最後に配置された最終インクパネルを用いて転写する前記転写画像のインクリボン搬送方向におけるセンター位置が、前記最終インクパネルのセンター位置よりも前インクパネル側に位置付けるように前記インクリボンの最終インクパネルの転写開始位置を設定することを特徴としている。
【0012】
また、前記制御手段は、前記第1インクパネルと前記最終インクパネルとの間に配置された他の中間インクパネルにおける転写画像の1又は複数の転写開始位置を、前記第1インクパネルの転写終了位置から前記最終インクパネルの転写開始位置間において等間隔になるように設定することを特徴としている。
【0013】
このとき、前記制御手段は、前記第1インクパネルにおける前記転写画像の転写終了位置から前記最終インクパネルの転写開始位置までの距離をA、前記中間インクパネルの数をN(1を含む)、前記中間インクパネルで転写される転写データの前記インクリボン搬送方向における転写画像のデータサイズにおける総距離をB、前インクパネルの転写終了位置から次インクパネルの転写開始位置までの距離をCとした場合に、計算式:C=(A−B)/(N+1)、により求められるCによって前記中間インクパネルの転写開始位置を設定することを特徴としている。
【0014】
また、前記制御手段は、前記第1インクパネルの転写終了位置を、先ず前記記録媒体の全面に転写処理を行う全面転写時の転写終了位置と同一位置に設定し、次に転写画像のデータサイズに応じて前記第1インクパネルの転写開始位置を設定することを特徴としている。
【0015】
さらに、前記制御手段は、前記最終インクパネルの転写開始位置を、前記記録媒体の全面に転写処理を行う全面転写時の転写開始位置と同一位置に設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に関わる転写装置によれば、転写処理を行う際に、インクリボンの最初のインクパネルの転写開始位置を従来のセンター基準に比べてインクパネル後端側にシフトすることにより、次のインクパネルまでのインクリボンの頭出し距離が縮まり、インクリボンの頭出しにかかる時間が短縮でき、印刷速度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係わる転写装置の全体構成を示す説明図である。
図2図1の装置における転写フィルムを画像形成部に給送して画像を形成する状態説明図である。
図3図1の装置の制御構成を示すブロック図である。
図4図3の制御構成における制御部Hの制御動作を説明するフローチャートである。
図5】制御部Hによるインクリボン使用位置の最適化制御の動作を説明するフローチャートである。
図6】(a)は制御部HによるサブルーチンSR1での処理を説明するフローチャート、(b)はインクリボンにおける第1インクパネルの転写開始位置を模式的に説明する説明図である。
図7】(a)は制御部HによるサブルーチンSR2での処理を説明するフローチャート、(b)はインクリボンにおける最終インクパネルの転写開始位置を模式的に説明する説明図である。
図8A】制御部HによるサブルーチンSR3での処理を説明するフローチャート、
図8B図8Aでの処理でインクリボンにおける中間のインクパネルの転写開始位置を模式的に説明する説明図である。
図9】各インクパネルの転写開始位置を模式的に説明する説明図である。
図10】従来行われているインクリボンの各インクパネルの位置決め制御を模式的に説明する説明図である。
図11】本発明が適用可能な別の実施形態の画像形成部を模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図示する好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明に係わる転写装置1の全体構成を示すもので、中間転写式の装置の場合で説明する。この転写装置1は、例えば、各種証明用のIDカード、商取引用のクレジットカードなどに磁気情報、IC情報などの「情報記録」と文字、写真、マークなどの「画像形成(印刷)」を行うものである。
【0019】
転写装置1は、装置ハウジング2と、情報記録部Aと、画像転写部Bと、メディア供給部Cと、画像形成部Dとで構成されている。そして中間転写フィルム46に画像形成部Dで画像を形成し、その画像をメディア供給部Cから繰り出した記録媒体に画像転写する。また、この画像転写の前工程として記録媒体に磁気情報、IC情報などの情報を記録する。
【0020】
このように、IC情報を記録するためのICチップを内蔵したカードは表面に凹凸を有しているために、中間転写式印刷方法が適している。また、表面にホログラムなどをコーティングしているカードに画像を転写する場合も中間転写式印刷方法は有効である。
【0021】
図1に従って各構成を説明する。装置ハウジング2には、メディア供給部Cと、このメディア供給部Cから送られた記録媒体(以下「カード」という)の方向を変換する反転ユニット20が配置されている。この反転ユニット20の下流側には第1の方向にカードを移送する第1搬送パスP1と、第2の方向にカードを移送する第2搬送パスP2が配置されている。更に反転ユニット20から第2の搬送パスP2とは別に第3の方向にカードを移送する第3搬送パスP3が配置されている。
【0022】
メディア供給部Cは複数のカードを立位姿勢で前後に整列収納する給紙カセット3で構成され、カードを繰り出す方向(図1矢印X方向)と、第1搬送パスP1のカード搬送方向は、互いに反対方向で略平行する方向に配置されている。そして、給紙カセット3は、図1に示すようにボックス形状のカセット筐体と、この筐体内に設けられたカード収容部4で構成される。このカード収納部4は、複数のカードを立位姿勢で整列して収納可能なカード寸法に適合する収容スペースで構成されている。
【0023】
カード収納部4に収納されている最前列のカードは、ピッカー開口11を通してカード収納部4に突出しているピックアップローラ19の回転により、給紙開口7から繰り出される。
【0024】
上記反転ユニット20は、メディア供給部Cの下方に隣設して設けられ、装置ハウジング2の一端側(図1右端)に配置されている。そしてこの反転ユニット20の下流に第1搬送パスP1が略水平方向に配置され第2搬送パスP2が略鉛直方向に配置されている。この第1第2搬送パスP1,P2は、角度が異なる方向に配置され図示のように90度乃至180度の角度範囲に配置されることが好ましいが経路の集密性を考慮して適宜の角度範囲に設定する。
【0025】
そして、反転ユニット20は、給紙カセット3の給紙開口7の下流側に搬入ローラ22を配置しており、給紙カセット3から繰り出されたカードは搬入ローラ22によって反転ユニット20内に送られる。反転ユニット20は装置フレーム(図示せず)に旋回動可能に軸受け支持されたユニットフレームと、このフレームに支持された一対、或いは複数のローラ対で構成される。
【0026】
図示のものは距離を隔てて前後に配置された2つのローラ対21a、21bをユニットフレームに回転自在に軸支持している。そして、ユニットフレームは、パルスモータなどで構成される旋回モータによって所定角度方向に旋回動し、これに取付けられているローラ対21a、21bは搬送モータによって正逆転方向に回転するように構成されている。この駆動機構は図示しないが、例えば1つのパルスモータでユニットフレームの旋回動と、ローラ対の回転をクラッチで切り換えるように構成する。
【0027】
このように、給紙カセット3に準備されたカードは、ピックアップローラ19によって繰り出され、給紙開口7の分離ギャップで1枚ずつ分離されて下流側の反転ユニット20に送られる。そして、反転ユニット20は、カードをローラ対21a、21bでユニット内に搬入し、ローラ対でニップした状態で所定角度方向に姿勢偏向する。
【0028】
反転ユニット20は、第1搬送パスP1と第2搬送パスP2と第3搬送パスP3との接続点に配置されており、それぞれのパス方向に向けて所定角度で回転するよう配置されている。そして、第2搬送パスP2には磁気記録ユニット24が配置されて、反転ユニット20から送られたカードの磁気ストライプに磁気情報を記録する。図示の磁気記録ユニット24はリードライトヘッドで構成され、磁気情報の記録と同時に、記録した情報を読み取って正誤判別するように構成されている。
【0029】
また、第3搬送パスP3には非接触式IC記録ユニット23が配置されており、カードに内蔵されているICに情報を記録する。また、反転ユニット20の旋回方向外周には、リジェクトスタッカ25と、バーコードリーダ28が配置されている。このバーコードリーダ28は、後に説明する画像転写部Bでバーコードを印刷したとき、このバーコードを読み取って印刷結果の適正を判別(エラー判別)するために設けられる。
【0030】
従って、反転ユニット20が所定の角度方向に姿勢偏向されたカードをローラ対21a、21bで記録ユニット24(または23)に移送すると、カード上に磁気的若しくは電気的にデータを入力することが可能となる。また、これらのデータ入力ユニットで記録ミスが生じた場合にはリジェクトスタッカ25に排出することになる。
【0031】
第1搬送パスP1は、図示しない搬送モータに連結される第1ローラ対29と第2ローラ対30とを搬送手段として画像転写部Bの上流側に配置している。この第1及び第2ローラ対29、30は正逆転切り換え可能に構成され、反転ユニット20から画像転写部Bにカードを搬送するのと同時に、画像転写部Bからカードを反転ユニット20に搬送することも可能なようになっている。なお、第1ローラ対29と第2ローラ対30とによる搬送機構はベルトでも良い。
【0032】
そして、第1搬送パスP1には、メディア待機部Eと画像転写部Bとが配置され、メディア待機部Eは反転ユニット20との間に設けられる。画像転写部Bは、転写プラテン(図示のものはプラテンローラ)31と加熱ローラ33で構成されて、転写プラテン31と加熱ローラ33との間には、カードと転写フィルム46が通過するようになっている。加熱ローラ33は、図示しない昇降機構によって転写プラテン31に圧接する位置と離間した位置との間を昇降する。したがって、転写プラテン31との間で、記録カードと転写フィルム46とを同時に加圧及び加熱することで、転写フィルム46に形成された画像インクが記録カードに加熱溶着されて、カードの表面(図2で下側の面)に画像転写される。
【0033】
また、第1搬送パスP1には、画像転写部Bの上流側にメディア待機部Eが配置されている。このメディア待機部Eは、図2に示すようにカードの搬送方向長さLcより短い間隔Ldで第1ローラ対29と第2ローラ対30が配置されている。この前後に距離を隔てて配置された第1及び第2ローラ対29、30にカードを保持した状態で一時的に待機させる。このため第1及び第2ローラ対29、30と駆動モータとの間には伝動クラッチ(図示せず)を設けて、クラッチをOFF状態にするとカードを停止待機させることが可能としている。この第1及び第2ローラ対29、30は反転ユニット20と画像転写部Bとの間に配置されている。
【0034】
また、転写プラテン31に近接した第2ローラ対30には、カード先端を検出するセンサSe8が配置され、メディア待機部Eにカードが存在するか否かを検出する。このとき、カードを待機させた状態において、カード先端は加熱ローラ33よりも上流側にあり、これにより、待機中のカード先端部分が加熱ローラ33によって加熱されることがないため、カードに転写される画像にムラが発生する虞がなくなる。
【0035】
メディア待機部Eを反転ユニット20と画像転写部Bとの間の第1搬送パスP1に配置することによって、上流側に位置する第2搬送パスP2で磁気情報を記録するジョブ及び第3搬送パスP3でIC情報を記録するジョブと、下流側に位置する第1搬送パスP1で画像形成するジョブとを分離して制御することが出来る。
【0036】
転写フィルム46は、カードに画像を転写(二次転写)するものであるが、この画像の転写フィルム46への転写(一次転写)は画像形成部Dにて行われる。
【0037】
画像形成部Dは、インクリボン41を用いて文字及び画像等の転写画像を記録媒体である転写フィルム46に転写印刷するもので、画像形成プラテン45と、このプラテンに対向配置されたサーマルヘッド40とで構成される。そして、画像形成プラテン45とサーマルヘッド40との間のフィルム移送経路P4には、リボンカセット42から供給される昇華型のインクリボン41と転写フィルム46とが走行する。
【0038】
転写フィルム46は、フィルムカセット50の供給スプール47と巻取スプール48とに巻回され、この供給スプール47と巻取りスプール48との間に前記したフィルム移送経路P4が形成される。そして、供給スプール47は操出モータMr2に、巻取りスプール48は巻取モータMr3にそれぞれ連結される。この両モータは、装置フレームに取付けられカップリング手段を介してスプール軸に連結されており、それぞれステッピングモータで構成されており同一方向に同一送り量で回転する。
【0039】
フィルム移送経路P4には、移送ローラ49とピンチローラ32a、32bが配置されており、転写フィルム46は、移送ローラ49とピンチローラ32a、32bとの圧接によりフィルム移送経路P4上を搬送される。したがって、移送ローラ49とピンチローラ32a、32bは、転写フィルム46の搬送手段を構成している。この移送ローラ49は駆動モータに連結されており、一定の速度にて転写フィルム46を走行させる。このとき、センサSe9は、転写フィルム46に所定間隔毎に形成されたマーカを検出する。移送ローラ49は、転写フィルム46への画像形成時には、インクリボン41と転写フィルム46とが同一速度で、図1にて示すと反時計方向(点線矢印方向)に回転するように構成されている。
【0040】
一方、インクリボン41は、リボンカセット42に収納されている。リボンカセット42には、インクリボン搬送手段を構成する供給スプール43と巻取りスプール44とが回転可能に組み込まれていて、巻取スプール44は、ワインドモータMr1と連結されている。この両スプール43、44間にはフィルム状のインクリボン41が巻装されている。インクリボン41は昇華型リボンで、Y(イエロー)M(マゼンタ)C(シアン)B(ブラック)の各インクパネル面を面順次に帯状に配置して成り、各インクパネル面は、転写フィルム46の印刷幅に対応した所定幅を有している。センサSe10は、巻取りスプール44の駆動により搬送されるインクリボン41の位置を検出する。
【0041】
リボンカセット42は、図1の紙面で表裏方向に装置ハウジング2に着脱可能に装着され、インクリボン41は装置ハウジング2側に装備してある画像形成プラテン(プラテンローラ)45とサーマルヘッド40との間に挿入される。
【0042】
転写フィルム46は、供給スプール47から取り出されて、移送ローラ49の時計方向に回転することで画像転写の頭出し位置に移送される。このとき、インクリボン41も巻取りスプール44が反時計方向に回転することでこの頭出し位置まで移送される。よって、このときの動作では、転写フィルム46とインクリボン41との移送方向は相反している。
【0043】
転写フィルム46とインクリボン41とが頭出し位置で位置合わせされると、画像形成プラテン45が図示しない押し出し機構にてサーマルヘッド40に向けて移動し、転写フィルム46とインクリボン41とを挟みサーマルヘッド40と当接する。
【0044】
サーマルヘッド40には、ヘッドコントロール用IC74x(図6参照)が接続されて、サーマルヘッド40を熱制御するようになっている。ヘッドコントロール用IC74xは、ホストコンピュータ等の上位の装置から印刷指令と共に送られてくる画像データに従ってサーマルヘッド40を加熱制御する。なお、冷却ファンfn1は、サーマルヘッド40を冷却するのに設けられている。
【0045】
よって、サーマルヘッド40の熱制御と同期して巻取スプール44は回転して、インクリボン41を所定速度で巻き取り方向に移動する。このとき、移送ローラ49が反時計方向に回転して、転写フィルム46をインクリボン41と同じ方向に一枚のカードの印刷幅に対応する分だけ移送させることで、この部分に画像が形成される。
【0046】
そして、一つのインクパネルによる画像転写が終了すると、移送ローラ49は再び時計方向に回転して、転写フィルム46を一枚のカードの印刷幅に対応する分だけ頭出し位置にまで引き戻す。このとき、インクリボン41は、継続して巻取り方向に移送されるため、次のインクパネルパネルについて転写フィルム46との頭出し位置での位置合わせが行われる。
【0047】
このような頭出し制御は、Y(イエロー)M(マゼンタ)C(シアン)B(ブラック)の各インクパネルについて、転写フィルム46との頭出し位置での位置合わせが順次行われ、位置合わせ後にサーマルヘッド40と画像形成プラテン45とによる加熱転写を繰り返すことで、カードの表裏面に印刷する顔写真、文字データなどの画像が転写フィルム46に転写される。
【0048】
本発明は、インクリボン41を頭出しに搬送する合計時間の短縮を図るべく、各インクパネル毎にこの頭出し位置をそれぞれ適切に設定するインクリボン使用位置の最適化制御を行っているが、この最適化制御については後に詳述する。
【0049】
画像転写部Bの下流側には、収容スタッカ60に記録カードを移送する搬出パスP5が設けられている。搬出パスP5には記録カードを搬送する搬送ローラ37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。尚、搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはディカールローラ36が配置され、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押圧することによってカール矯正する。
【0050】
収容部Gは、図1に示すように画像転写部Bから送られたカードを収容スタッカ60に収容するように構成されている。この収容スタッカ60は図示しない昇降機構61とレベルセンサで、最上位のカードを検出し、昇降機構61で図1下側に下降移動するように構成されている。
【0051】
また、フィルム移送経路P4には画像転写部Bの上流側にフィルム待機部Fを設けて、待機部Fに転写フィルム46を一時的に停止した状態で待機するように構成している。このフィルム待機部Fと前述のメディア待機部Eとは、下流側の画像転写部Bに対して等距離の位置関係に配置することで、両待機部に先端揃えした状態で待機させた記録カードと転写フィルム46を同一タイミングで画像転写部Bに向けて繰り出すようにしている。
【0052】
フィルムカセット50は、図1に示すように装置ハウジング2とは分離したユニットで構成され、装置ハウジング2に着脱可能に取付けられて、図示しないが、図1の前面側には開閉自在に設けたフロントカバーを開けた状態で、装置フレームにフィルムカセット50を装着するようになっている。尚、画像転写部Bには装置内に発生した熱を外に出す為のファンfn2が設けられている。
【0053】
上記構成の転写装置1を制御する構成について図6で説明する。制御部H(制御手段)は、例えば制御CPU70で構成し、この制御CPU70にはROM71とRAM72が備えられている。図6は、制御CPU70がROM71に記憶されている制御プログラムを実行することにより、データ入力制御部73、画像形成制御部74、フィルム搬送制御部75及びカード搬送制御部77としての制御動作を行うことをブロック図により説明するものである。
【0054】
カード搬送制御部77は、メディア供給部Cから取り出されたカードの収容部6までの搬送経路中に配置される各センサによってカードの搬送位置を検知し、これに応じて、反転ユニット旋回モータ制御回路80、第1搬送パス搬送モータ制御回路81及び第2搬送パス搬送モータ制御回路82へ制御信号をことでカードの搬送を制御する。
【0055】
データ入力制御部73は、磁気記録部に内蔵されているデータR/W用のIC73yに入力データの送受信を制御するコマンド信号を送信し、同様にIC記録部のデータR/W用のIC73xにコマンド信号を送信する。
【0056】
画像形成制御部74は、画像転写部Bで転写フィルム46上にインクリボン41で画像を形成するサーマルヘッド40を制御すると同時に、ワインドモータMr1制御回路83に制御信号を出力することでインクリボン41の搬送を制御する。また、フィルム搬送制御部75は、巻取モータMr2制御回路84、操出モータMr3制御回路85及び移送ローラ駆動モータ制御回路86にそれぞれ制御信号を出力することで転写フィルム46の搬送を制御する。
【0057】
制御部Hは、ホストコンピュータ等の上位の装置からカードに記録する磁気・IC情報及び画像情報が送信されてくると、このデータに応じて、「磁気情報と画像情報の組合せ」或いは「IC情報と画像情報の組合せ」又は「磁気情報及びIC情報と画像情報の組合せ」などにてカードに情報を記録する。
【0058】
制御部Hの制御による上記の転写装置1の動作を、図4のフローチャートに基づき以下に説明する。
【0059】
制御部Hは、ジョブスタート信号を受信する(StA1)と、カードをメディア供給部Cから装置内に繰出す(StA2)。この装置内に供給されたカードの先端を入口センサSe1が検出する(StA3)。入口センサSe1でカード搬入を検出すると制御手段は反転ユニット20を制御してカードを外部装置で指定された搬送パス(第1、第2及び第3搬送パスのいずれか)に搬送する(StA4)。
【0060】
このカードの記録部搬送と並行して制御部Hは、転写フィルム46を画像形成部Dに繰出す(StA5)。このフィルム繰出は、繰出モータMr2と巻取モータMr3の回転制御によって行い、フィルムセンサSe9で操出量を検出する。転写フィルム46には、カードに画像を形成する領域の印刷幅に対応する所定幅のコマ毎にマークが施されており、そのマークをセンサSe9で検出してフィルムの操出量を制御する(図2参照)。
【0061】
次に、制御部Hは、磁気・IC情報のデータ転送(StA6)と画像情報のデータ転送(StA7)を実行する。このデータ転送はデータボリューム、転送手段の状況でそれぞれ時間が異なり、並行して処理する他の後続動作が先行することがある。
【0062】
制御部Hは、磁気・IC情報の取得とカードの記録部への搬送が終了すると磁気・IC情報をカードに記録する(StA8)。この磁気IC情報記録は磁気R/Wユニット24、ICR/Wユニット23で行われ、記録した情報に誤りが発見されたときには、カードをイジェクトスタッカ25に搬出する。カードへのリードライトミスが生じたとき、制御部Hは、次のカード(ブランクカード)をメディア供給部Cから繰り出す。
【0063】
そして、制御部Hは、サーマルヘッド40のヘッド温度を適正値に設定する(StA9)。この温度設定はヘッド温度が過剰高温のときには冷却し、低温度のときには昇温するが、温度が過上昇のときは冷却に時間を要する。よって、制御部Hは、ヘッド温度が適正値に設定されるまで転写フィルム46を待機させる。そして、制御部Hは、ヘッド温度が適正値に設定されるのを待って画像形成を実行する(StA11)。
【0064】
この画像形成においては、制御部Hは、操出モータMr2の駆動を制御して、転写フィルム46を供給スプール47から取り出すと共に、移送ローラ49の時計方向(実線矢印方向)への回転を制御することで画像転写の頭出し位置に移送する。このとき、制御部Hは、ワインドモータMr1の駆動を制御して巻取りスプール44を反時計方向に回転させて、インクリボン41も同じく頭出し位置まで移送させる。これにより、転写フィルム46の転写開始位置とインクリボン41の転写開始位置とが頭出し位置で位置合わせされる。
【0065】
ここで、頭出し位置への移送時でのインクリボン41を搬送する合計時間の短縮を図るために行う、上記したインクリボン使用位置の最適化制御について説明する。図5は、制御部Hによるこの最適化制御のフローチャートを示している。
【0066】
インクリボン使用位置の最適化の制御は、転写フィルム46の転写面への何色目の転写であるかを判別(St100)することから開始される。
【0067】
本例では、転写フィルム46の転写面へはイエロー・マゼンタ・シアン・ブラックの4色で転写しており、一色目のイエローであるとサブルーチンSR1の処理となり、最後の色のブラックであるとサブルーチンSR2の処理となり、二色目のマゼンタ又は三色目のシアンであるとサブルーチンSR3の処理となる。
【0068】
サブルーチンSR1の処理においては、制御部Hは、インクリボン41の最初に配置された第1インクパネルにおけるインクリボン搬送方向におけるセンター位置を、転写画像の全てが第1インクパネル面内に入る位置であって且つ第1インクパネルのセンターよりもインクパネルの後端側(次インクパネルであるマゼンタ側)に位置付けるように前記第1インクパネルの転写開始位置を設定するもので、本実施例においては、第1インクパネル(イエロー)の転写終了位置を、先ず転写フィルム46の全面に転写処理を行う全面転写時の転写終了位置と同一位置に設定し、次に転写画像のデータサイズに応じて第1インクパネルの転写開始位置を設定している。但し、転写終了位置については、実際には、第1インクパネルの転写終了位置から内側に詰めた位置aを転写終了位置としており、こうすることで後段のインクパネルの色と重なることがなく、確実に当該インクパネルの色を転写フィルムに転写することができる。
【0069】
図6(a)のフローチャートはサブルーチンSR1での処理を示しており、制御部Hは、St101で「リボン転写可能範囲の後端位置a」をロードする。そして、制御部Hは、転写画像のデータサイズに応じて第1インクパネルの転写開始位置を設定する。このとき、制御部Hは、第1インクパネルのイエローを印刷する搬送方向での寸法b1をロードする(St102)。続いて、制御部Hは、位置a及び寸法b1とから第1色目のインクパネルの転写開始位置(頭出し位置)を算出する(St103)。よって、位置aから距離b1だけマイナス方向に移動した[a−b1]が頭出し位置となる。
【0070】
サブルーチンSR1において、第1インクパネルの頭出し位置を[a−b1]に定めることで、第1インクパネルの転写終了位置が全面転写時の転写終了位置(内側に詰めた位置a)と同一位置となり、次に第2インクパネルを頭出し位置への移送するときは、第1インクパネルにより画像を転写した部分の後端部から移送すればよく、第2インクパネルの頭出しにかかる時間が短縮できる。
【0071】
次に順番では、二色目のマゼンタ及び三色目のシアンのサブルーチンSR3の処理となるが、説明の便宜上、最後の色のブラックでのサブルーチンSR2の処理を先に説明する。
【0072】
サブルーチンSR1の処理においては、制御部Hは、インクリボン41における最後に配置された最終インクパネルを用いて転写する転写画像のインクリボン搬送方向におけるセンター位置が、最終インクパネルのセンター位置よりもインクパネル先端側(前インクパネルであるシアン側)に位置付けるようにインクリボン41の最終インクパネルの転写開始位置を設定するもので、本実施例においては、最終インクパネルの転写開始位置を、転写フィルム46の印刷幅に対応した所定幅の全面に転写処理を行う全面転写時の転写開始位置と同一の位置に設定している。但し、この転写開始位置について、実際には、図7(b)で示すように、転写終了位置から内側に詰めた位置a´をリボン転写開始位置としている。
【0073】
図7(a)のフローチャートはサブルーチンSR2での処理を示しており、制御部Hは、St111で「リボン転写可能範囲の先端位置a´」をロードし、この位置a´を頭出し位置[a´]とする(St112)。
【0074】
サブルーチンSR1において、最終インクパネルの頭出し位置を[a´]に定めることで、最終インクパネルの頭出し位置が先端位置(内側に詰めた位置a´)となり、最終インクパネルを頭出し位置へ移送するときは、前段のインクパネル(シアン)により画像を転写した部分の後端部からこの位置a´まで移送すればよく、最終インクパネルの頭出し時間が短縮される。
【0075】
次に、イエローとブラックとの間での二色目のサブルーチンSR3の処理について説明する。
【0076】
このように、第1インクパネルと最終インクパネルのそれぞれの頭出しが最短となるそれぞれの位置[a−b1]及び[a´]が決まると、他のマゼンタ及びシアンの中間インクパネルにおける転写画像の1又は複数の転写開始位置を、第1インクパネルの転写終了位置から最終インクパネルの転写開始位置間の距離で等間隔に設定すればよいことになる。中間の各インクパネルの転写データ間の間隔を等間隔とすることにより、各インクパネルにおける頭出し時間が短縮される。
【0077】
図8AのフローチャートはサブルーチンSR3での処理を示しており、制御部Hは、一色目のイエローでの「リボン転写可能範囲の後端位置a」をロードし(St121)、最後の色のブラックでの「リボン転写可能範囲の先端位置a´」をロードする(St122)。そして、前記画像データから二色目のマゼンタを印刷する搬送方向での寸法b2及び三色目のシアンを印刷する搬送方向での寸法b3をロードする(St123)。続いて、制御部Hは、これらロードしたデータを演算して、この二色の場合の頭出し位置を均等割り付けする(St124)。
【0078】
この均等割り付けは、図8Bで示すように、位置aから位置a´までの距離Aを求めて、距離Aからマゼンタ及びシアンで印刷する画像のデータサイズによる総距離B(=b2+b3)を引いた距離を等分することにより等分搬送距離Cを演算して行う。これにより、各色のインクパネルの頭出しを行うのにインクリボンを搬送する距離を均等に割り付けることができ、これを数式で示すと、((a´−a)−(b2+b3))/3となる。ここで、((a´−a)−(b2+b3))を3で割り算するのは、最後のブラックのインクパネルも位置a´への頭出しを行うために、除数に含めるからである。
【0079】
そして、制御部Hは、頭出しのための搬送距離を均等に定めると、マゼンタ及びシアンの各色に応じて(St125)、各インクパネルの頭出し位置を演算する。マゼンタの場合であると、位置aから等分搬送距離Cだけ移動した[a+C]を頭出し位置としている(St126)。そして、シアンの場合であると、マゼンタの頭出し位置[a+C]から距離b2と等分搬送距離Cだけ移動した[a+C+b2+C]を頭出し位置としている(St127)。
【0080】
このようにして設定される各インクパネルの頭出し位置は、図9にて示すようにそれぞれ異なっており、印刷色を違える毎に各インクパネルの長手方向に相当する距離Lを移送する必要がなく、各インクパネルの搬送は最短で済むことになる。よって、印刷において、インクリボン41を搬送する合計時間の短縮が図れる。
【0081】
図4のフローチャートに戻って、StA11の画像形成では、制御部Hは、先に述べたように、転写フィルム46を供給スプール47から取り出して、移送ローラ49の時計方向への回転により画像転写の頭出し位置に移送する。このとき、インクリボン41については、制御部Hは、イエローのインクパネルの[a−b1]の位置が頭出し位置となるよう、前の印刷でのブラックのインクパネルの後端から距離(L−b1)だけ移動するようワインドモータMr1の駆動を制御して巻取りスプール44を反時計方向に回転させる。これにより、転写フィルム46とインクリボン41とが頭出し位置で位置合わせされる。
【0082】
そして、制御部Hは、転写フィルム46とインクリボン41との頭出し位置での位置合わせ後、図示しない押し出し機構を駆動して、画像形成プラテン45をサーマルヘッド40に向けて移動させて、転写フィルム46とインクリボン41とを挟みサーマルヘッド40と当接させる。同時に、制御部Hは、移送ローラ49を反時計方向(点線矢印方向)への回転を制御すると共に、ワインドモータMr1の駆動を制御して巻取りスプール44を反時計方向への回転を制御することで、転写フィルム46とインクリボン41とを転写フィルム46の印刷幅に対応した所定幅分だけ距離を移動させる。そして、この移動の間に、転写フィルム46には、インクリボン41の最初のインクパネルでありイエローによる画像転写が行われる。
【0083】
そして、イエローのインクパネルによる画像転写が終了すると、制御部Hは、移送ローラ49を再び時計方向に回転するよう制御して、転写フィルム46を一枚のカードの印刷幅に対応する分だけ頭出し位置にまで引き戻す。そして、制御部Hは、インクリボン41が前記等分搬送距離Cだけ移動するようにワインドモータMr1の駆動を制御する。これにより、次のマゼンタのインクパネルパネルと転写フィルム46との頭出し位置での位置合わせが行われることになる。
【0084】
イエローの場合と同様に位置合わせ後、制御部Hは、画像形成プラテン45とサーマルヘッド40による転写フィルム46とインクリボン41との挟持と、転写フィルム46とインクリボン41とを巻取りスプール44の方向へカードの印刷幅に対応した所定幅分だけ距離を移動させることで、マゼンタによる画像転写が行われる。
【0085】
そして、制御部Hは、次のシアンおよびブラックも同様に、転写フィルム46の巻き戻しとインクリボン41の等分搬送距離Cの移動とによる頭出し位置での位置合わせを行い、転写フィルム46とインクリボン41とを巻取りスプール44の方向へカードの印刷幅に対応した所定幅分だけ距離を移動させることで熱転写を行っていく。これにより、転写フィルム46のカードの印刷幅に対応した同じ部分に4通りの色による熱転写が繰り返されて画像が形成される。
【0086】
転写フィルム46に画像形成した後、制御部Hは、転写フィルム46をフィルム待機部Fに移動させる(StA12)。このフィルム移動は、繰出モータMr2と巻取りモータMr3の回転とマーカ検出で行う。この状態でカードはメディア待機部E(StA10)に、転写フィルム46はフィルム待機部Fに、それぞれ頭出し待機することとなる。このような頭出しにより、この位置から両者を同時に同一速度で画像転写部Bに送り出すことによって互いの位置ズレを少なくすることができる。
【0087】
そして、制御部Hは、カードと転写フィルム46が待機部E、Fに待機した段階で、加熱ローラ33の温度が適正値か否か判断する(StA13)。このとき制御部Hは、カードと転写フィルム46の一方が待機部E,Fに準備されていない(到達していない)とき、および加熱ローラ33が適正値でないときには各条件が整うまで待機する。
【0088】
次いで制御部Hは、加熱ローラ33が適正温度に達したときカードと転写フィルム46を待機部E、Fから画像転写部Bに向けて繰出す。このカードと転写フィルム46の繰出しは、同一タイミングで、且つ同一速度で実行し、両者が同時に画像転写部46に到達するように制御する(StA14)。制御部Hは、カードとフィルムが転写プラテン31に到達したタイミングで、このプラテンから離間した待機位置の加熱ローラ33をプラテンと圧接する位置に上昇させる(St15)。この状態を図3に待機状態として、図5に転写状態として示す。
【0089】
図5の状態でカード先端と転写フィルム46を同時に移動すると転写フィルムの画像はカードに加熱圧着され、転写される(二次転写;StA16)。次いで制御部Hは、カードの収容スタッカ60への搬出と、転写終了後の転写フィルム46の巻取りスプール48への巻取りを制御する(StA17)。制御部Hは、巻取モータMr3の駆動を制御して転写フィルム46の巻取りを制御する。
【0090】
上記の如く、本発明の実施態様の転写装置は、インクリボンにおいてイエロー・マゼンタ・シアン・ブラックの各インクパネルを転写フィルム46と位置合わせするための頭出し位置がそれぞれ異なるために、転写フィルムの転写する面に対して、各インクパネルが順次重なり合うように搬送する従来技術と比べてインクリボンの搬送時間の短縮化により転写印刷速度の高速化が図れる。
【0091】
なお、本実施形態においては、転写フィルム46とインクリボン41の頭出し動作における移送方向が相反している態様を示したが、転写フィルム46をサーマルヘッド40よりも転写時の転写フィルム搬送方向上流側に一度搬送し、その後インクリボン41の搬送方向と同一方向に転写フィルム46を搬送して転写フィルム46を頭出し位置に移送させてもよい。こうすることで、頭出し位置への搬送の後に画像転写を開始する際の、転写フィルム46を搬送する駆動モータ等のバックラッシュの影響が少なくなる。
【0092】
また、本実施形態においては、転写開始位置と頭出し位置が同一である構成を開示したが、頭出し位置をサーマルヘッド40よりも転写時の転写フィルム搬送方向上流側に設定してもよい(図11参照)。この場合、転写フィルム46とインクリボン41における転写開始位置がサーマルヘッド40よりも上流側にある状態で、サーマルヘッド40と画像形成プラテン45が転写フィルム46とインクリボン41とを狭持し、その状態で移送ローラ49及び巻取りスプール44を回転させる。
【0093】
このとき、転写フィルム46に形成されたマーク46aをセンサSe11で検出し、転写フィルム46及びインクリボン41の転写開始位置がサーマルヘッド40直下に到達した時点でサーマルヘッド40を駆動して転写を開始する。
【0094】
こうすることで、頭出し後に転写フィルム46及びインクリボン41の走行パスが変動することなく、さらに転写動作中は転写フィルム46及びインクリボン41は一定の速度で搬送されるため、転写品位が向上する。
【0095】
なお、本実施形態では、中間転写フィルム46を用いた中間転写方式のプリンタの態様を示したが、カード等の記録媒体に直接転写する直接方式のプリンタにも適用可能である。
【0096】
また、一色目インクパネル(イエロー)の転写開始位置を次インクパネル(マゼンタ)側にシフトすることで、一色目インクパネルの頭出し時間は多くなってしまうが、例えば転写フィルム46の場合は二次転写が終了した位置から一次転写のための頭出し位置までの搬送距離が長く、その時間内に一色目インクパネルの頭出しをすることができるので問題ない。また、直接方式の場合も、カードを供給部から転写部まで供給するまでの時間内に一色目インクパネルの頭出しをすることができるので問題ない。
【0097】
なお、本実施形態のインクリボンのインクパネルはイエロー・マゼンタ・シアン・ブラックで構成された態様を示したが、インクパネルの順番は適宜変更可能であり、また、ブラックが複数設けられていてもよく、ヒートシールパネル、ピールオフパネル、UVパネルやオーバーコートパネル等も組み合わせることは可能である。これらのインクを含まないパネルもインクリボンのパネル構成の中に含まれることからインクパネルとして定義する。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本願発明は、IDカード、身分証明書、各種会員カード等のカード状の記録媒体に文字及びカラー画像を転写印刷する装置において転写印刷時間の高速化技術に関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0099】
40 サーマルヘッド
41 インクリボン
42 リボンカセット
43 インクリボン供給スプール
44 インクリボン巻取スプール(インクリボン搬送手段)
45 画像形成プラテン
46 中間転写フィルム(記録媒体)
47 転写フィルム巻取スプール
48 転写フィルム供給スプール
49 移送ローラ(記録媒体搬送手段)
50 フィルムカセット
D 画像形成部
H 制御部(制御手段)
Mr1 インクリボン巻取モータ
Mr2 転写フィルム巻取モータ
Mr3 転写フィルム繰出モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11