(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のシリコン材及び前記第2のシリコン材の両方又は一方は、ボロン又はリンがドープされたシリコン材であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄液生成装置。
前記電圧印加部は、前記第1のシリコン材及び前記第2のシリコン材に流れる電流値を検出する電流計を具備することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の洗浄液生成装置。
前記電流計により検出された前記電流値を用いて、前記第1のシリコン材の表面の酸化及び前記第2のシリコン材の表面の酸化を抑えるように前記電圧印加部を制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の洗浄液生成装置。
前記電圧印加部は、前記第1のシリコン材と前記第2のシリコン材との互いの電位の正負を入れ替えることを繰り返すことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の洗浄液生成装置。
【背景技術】
【0002】
基板洗浄装置は、半導体装置や液晶表示装置などの電子部品の製造工程において広く用いられている。この基板洗浄装置としては、半導体装置の一例である半導体デバイスの製造工程において、半導体基板上の窒化膜と酸化膜に対して選択的にエッチングを行う基板処理装置がある。
【0003】
ここで、半導体デバイスを製造する工程において、半導体基板上にはエッチング対象膜の窒化膜(例えば、Si
3N
4膜)と、エッチングストップ膜の酸化膜(例えば、SiO
2膜)とが積層されている。ところが、半導体デバイスが微細化すると、膜そのものが薄膜となるため、エッチング対象膜とエッチングストップ膜との選択比を高める必要がある。この選択比を十分に取れないと、エッチング工程においてエッチングストップ膜が無くなり、これはデバイス製造に支障をきたすことになる。
【0004】
エッチング対象膜である窒化膜のエッチングには、高温のリン酸(H
3PO
4)水溶液が用いられるが、エッチング対象膜の窒化膜とエッチングストップ膜の酸化膜との選択比は低い。このとき、リン酸水溶液中のシリコン濃度が高くなると、窒化膜と酸化膜との選択比が高くなることが知られており、一般的に、リン酸水溶液中のシリコン濃度が高くされている。通常、リン酸水溶液中のシリコン濃度を高くする方法としては、窒化膜をエッチングし、そのエッチング液を再利用する方法が用いられている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、実施形態に係る基板洗浄装置1は、洗浄液を生成する洗浄液生成装置2と、その洗浄液生成装置2により生成された洗浄液を循環させる洗浄液循環部3と、その洗浄液循環部3から供給される洗浄液により基板Wを洗浄する洗浄部4と、各部を制御する制御部5とにより構成されている。
【0016】
洗浄液生成装置2は、
図2に示すように、リン酸水溶液を貯留する貯留部11と、その貯留部11内のリン酸水溶液を加熱する加熱部12と、貯留部11内のリン酸水溶液に浸漬されている第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14と、それらの第1のシリコン材13と第2のシリコン材14との間に電位差を生じさせる電圧印加部15とを備えている。
【0017】
貯留部11は、リン酸水溶液を貯留する上部開放のタンクである。この貯留部11は例えば、フッ素系の樹脂又は石英などの材料により形成されている。貯留部11の内部には、その内部に貯留されたリン酸水溶液の温度を検出する温度検出部11aが設けられている。この温度検出部11aは制御部5に接続されており、検出したリン酸水溶液の温度を制御部5に出力する(
図1参照)。また、貯留部11には、その内部につながる供給配管16が接続されている。その供給配管16の途中には、供給駆動源となるポンプ16aが設けられている(
図1参照)。このポンプ16aは制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて、貯留部11内のリン酸水溶液を供給配管16に流す。なお、ポンプ16aの駆動停止後、貯留部11内のリン酸水溶液の量は減少するが、常温のリン酸水溶液が貯留部11内にその上部開口部から供給され、貯留部11内のリン酸水溶液の量は一定に保たれる。
【0018】
加熱部12は、貯留部11を支持する支持台としてその貯留部11の下部に設けられており、貯留部11を加熱可能に形成されている。この加熱部12は制御部5に電気的に接続されており(
図1参照)、その制御部5による制御に応じて貯留部11と共にその貯留部11内のリン酸水溶液を加熱する。加熱部12としては、例えば、ヒータを用いることが可能である。液の温度は、例えば150℃〜160℃の範囲内(150℃以上160℃以下の範囲内)で設定されている。このとき、制御部5は、温度検出部11aにより検出された貯留部11内のリン酸水溶液の温度を用いて、シリコン溶解中のリン酸水溶液の温度を一定に維持するように加熱部12、すなわちヒータパワーを制御する。なお、加熱部12をインラインヒータを用いて、貯留部11内に設置しても構わない。
【0019】
第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14は、貯留部11内のリン酸水溶液に浸漬可能にさらに互いに離間するように貯留部11内に設けられている。これらの第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14は、一対の電極として機能する。本実施形態では、第1のシリコン材13が正極(陽極)となり、第2のシリコン材14が負極(陰極)となる。
【0020】
なお、第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14としては、例えば、電気伝導性を向上させるためにボロン又はリンがドープされた低抵抗(一例として、1Ω・cm以下の低抵抗)のシリコン材を用いることが望ましい。ボロン及びリンは半導体で良く用いられる元素であり、半導体装置の製造プロセスへの影響が少ないため使用されているが、これに限るものではなく、シリコン材を低抵抗とすることが可能であれば他の元素が用いられても良い。また、第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14の両方に同じ元素が用いられても異なる元素が用いられても良い。なお、液中での電子の授受反応を考慮すると(直流の場合)、正極としてはリンをドープしたシリコン材を使用し、負極としてはボロンをドープしたシリコン材を使用することが望ましい。
【0021】
電圧印加部15は、
図2に示すように、第1のシリコン材13と第2のシリコン材14との間に電圧をかける直流の電源15aと、第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14に流れる電流を計測する電流計15bと、第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14に供給された電圧を計測する電圧計15cとを具備している。この電圧印加部15は制御部5に電気的に接続されており(
図1参照)、その制御部5による制御に応じて電圧を印加する。また、電圧印加部15は、電流計15bにより計測した電流値や電圧計15cにより計測した電圧値を制御部5に出力する(
図1参照)。
【0022】
この電圧印加部15は、加熱部12により加熱された貯留部11内のリン酸水溶液の温度が所定の温度になった場合、第1のシリコン材13と第2のシリコン材14との間に電圧をかけて電流を流す。詳述すると、制御部5は、温度検出部11aにより検出されたリン酸水溶液の温度に基づき、加熱部12により加熱された貯留部11内のリン酸水溶液の温度が所定の温度になったか否かを判断し、そのリン酸水溶液の温度が所定の温度になったと判断した場合に、電圧印加部15に対して電圧印加を実行する旨の指示を出力する。この指示を受け、電圧印加部15は第1のシリコン材13と第2のシリコン材14との間に電圧を印加することになる。
【0023】
なお、第1のシリコン材13と第2のシリコン材14との電極間にかける電圧は0.3V〜5.0Vの範囲内(0.3V以上5.0V以下の範囲内)で設定されることが望ましい。これは、電圧(電位)が0.3Vより小さくなると、第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14からのシリコン溶解が困難となり、5.0Vより大きくなると、第1のシリコン材13又は第2のシリコン材14の両表面が酸化しやすくなるためである。ただし、第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14の各抵抗値により、印加する電圧の最適値は異なるものである。
【0024】
このような電圧印加部15により第1のシリコン材13と第2のシリコン材14に電位差が生じると、電気分解によりシリコンはイオンとなり、リン酸水溶液中に溶解する。このとき、電流計15bを用いて第1のシリコン材13に流れる電流値を常に検出(モニタ)することで、ファラデーの電気分解の法則(電気分解において、流れた電気量と生成物質の質量に関する法則)からリン酸水溶液中のシリコン濃度(シリコン溶解濃度)を把握することができる。なお、ファラデーの電気分解の法則は、電気分解において、析出する物質の量は流れた電気量に比例し、同じ電気量によって析出する物質の量は物質の化学当量に比例するという法則である。
【0025】
したがって、制御部5は、電流計15bにより計測された電流値を用いてリン酸水溶液中のシリコン濃度を算出する。このリン酸水溶液中のシリコン濃度が所定の濃度になった場合、ポンプ16aを駆動して貯留部11内のリン酸水溶液を洗浄液循環部3に供給配管16を介して供給する。なお、所定のシリコン濃度は、例えば、20ppm〜150ppmの範囲内(20ppm以上150ppm以下の範囲内)で設定されているが、特に、30ppm〜100ppmの範囲内(30ppm以上100ppm以下の範囲内)で設定されることが望ましい。
【0026】
図1に戻り、洗浄液循環部3は、洗浄液生成装置2から供給された所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を貯留するバッファタンクなどのタンク21と、そのタンク21につながる循環配管22と、その循環配管22につながり所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を吐出する吐出配管23と、洗浄後のリン酸水溶液をタンク21に戻す接続配管24とを備えている。
【0027】
タンク21は、洗浄液生成装置2から供給配管16を介して供給された所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を貯留するタンクである。このタンク21には、その内部に貯留されたリン酸水溶液の量とシリコン濃度を検出する検出部21aが設けられている。この検出部21aは制御部5に接続されており、検出したリン酸水溶液の量及びシリコン濃度を制御部5に出力する。なお、タンク21には、洗浄液生成装置2の供給配管16、循環配管22及び接続配管24が接続されている。
【0028】
循環配管22は、タンク21内のリン酸水溶液が循環配管22を流れて再びタンク21内に戻ってくるように接続されている。この循環配管22の途中には、循環駆動源となるポンプ22aと、循環配管22を流れるリン酸水溶液を加熱するヒータ22bと、循環配管22を流れるリン酸水溶液から異物を除去するフィルタ22cと、循環配管22を開閉する開閉弁V1とが設けられている。
【0029】
ポンプ22aは制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて、タンク21内のリン酸水溶液を循環配管22に流す。また、ヒータ22bは制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて循環配管22を流れるリン酸水溶液を一定温度で加熱する。ヒータ温度は、例えば150℃〜160℃の範囲内(150℃以上160℃以下の範囲内)で設定されている。開閉弁V1は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて循環配管22を開閉する。
【0030】
吐出配管23は、循環配管22におけるフィルタ22cと開閉弁V1との間に接続され、所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を吐出する配管であり、その吐出側の先端部が基板Wの表面に向けて設けられている。この吐出配管23の途中には、吐出配管23を開閉する開閉弁V2が設けられている。この開閉弁V2は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて吐出配管23を開閉する。制御部5は、検出部21aにより検出されたシリコン濃度が所定の濃度である場合に洗浄開始の指示を受けると、循環配管22途中の開閉弁V1を閉状態にして吐出配管23途中の開閉弁V2を開状態にし、循環配管22から吐出配管23に所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を流す。
【0031】
接続配管24は、洗浄部4とタンク21とを接続するように設けられている。この接続配管24の途中には、駆動源となるポンプ24aと、接続配管24を開閉する開閉弁V3とが設けられている。ポンプ24aは制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて、洗浄部4内の使用後の洗浄液を接続配管24に流す。開閉弁V3は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて接続配管24を開閉する。また、接続配管24の途中の開閉弁V3より下流側には、洗浄液排出用の排出配管24bが接続されている。この排出配管24bの途中にも、その排出配管24bを開閉する開閉弁V4が設けられている。開閉弁V4は制御部5に電気的に接続されており、その制御部5による制御に応じて排出配管24bを開閉する。
【0032】
洗浄部4は、所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を用いて半導体基板などの基板Wの表面上の窒化膜を酸化膜に対して選択的にエッチングして除去する洗浄装置である。この洗浄部4は、基板Wを回転させる回転機構4aと、その回転機構4aにより回転する基板W上に所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を供給するノズル4bとを備えている。このノズル4bは吐出配管23の一端部であり、そのノズル4bから所定のシリコン濃度のリン酸水溶液が洗浄液として吐出されることになる。すなわち、洗浄部4は、回転する基板Wの表面に向けて所定のシリコン濃度のリン酸水溶液をノズル4bから洗浄液として供給することによって、基板Wの表面上の窒化膜を選択的に除去する。なお、基板W上には、エッチング対象膜の窒化膜(例えば、Si
3N
4膜)と、エッチングストップ膜の酸化膜(例えば、SiO
2膜)とが積層されている。
【0033】
ここで、基板Wの表面から洗浄部4の底面に流れた洗浄液は、その底面に接続された接続配管24を流れてポンプ24aの駆動によりタンク21に回収される。このとき、開閉弁V3は開状態であり、開閉弁V4が閉状態である。ただし、基板W上の窒化膜がエッチングされて、シリコン濃度が所定の範囲を超えると、洗浄液はタンク21に回収されずに排出配管24bから排出される。このとき、開閉弁V3は閉状態であり、開閉弁V4が開状態である。
【0034】
制御部5は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータ、さらに、洗浄液生成及び基板洗浄に関する各種処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部を備えている。この制御部5は、各種処理情報や各種プログラムに基づいて、洗浄液生成装置2により洗浄液として所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を生成し、生成した所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を循環させて加熱することでその温度を所定温度に維持し、その後、洗浄開始の指示に応じて所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を用いて洗浄部4により基板Wを洗浄するという全体の制御を行う。
【0035】
次に、前述の基板洗浄装置1が行う基板洗浄工程(洗浄液を生成する洗浄液生成工程も含む)について
図3を参照して説明する。
【0036】
図3に示すように、実施形態に係る基板洗浄工程は、電極間に電圧をかけて所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を生成する工程(ステップS1)、タンク21内のリン酸水溶液の量、リン酸水溶液の温度及びシリコン濃度を維持する工程(ステップS2)、所定のシリコン濃度のリン酸水溶液により基板を洗浄する工程(ステップS3)、最後に、基板を水洗して乾燥する工程(ステップS4)を有している。
【0037】
詳述すると、ステップS1では、加熱部12により貯留部11内のリン酸水溶液が加熱され、温度検出部11aにより検出されたリン酸水溶液の温度が所定の温度(例えば、150℃〜160℃)になると、貯留部11内の第1のシリコン材13と第2のシリコン材14との間に電圧が電圧印加部15により印加される。これにより、第1のシリコン材13と第2のシリコン材14との間に電位差が生じるため、電気分解によりシリコンはイオンとなってリン酸水溶液中に溶解する。
【0038】
このとき、貯留部11内のリン酸水溶液中のシリコン濃度は、電流計15bにより検出された電流値が用いられ制御部5により算出される。このリン酸水溶液中のシリコン濃度が所定の濃度になると、ポンプ16aが制御部5により駆動されて貯留部11内の所定のシリコン濃度を有するリン酸水溶液が供給配管16を介してタンク21に供給される。その後、検出部21aにより検出されるタンク21内のリン酸水溶液の量が所定量となると、ポンプ16aの駆動が制御部5により停止される。
【0039】
ステップS2では、洗浄液循環部3のポンプ22aが制御部5により駆動され、タンク21内のリン酸水溶液は循環配管22を循環する。このとき、循環配管22途中の開閉弁V1は開状態であり、吐出配管23途中の開閉弁V2は閉状態である。循環配管22を流れるリン酸水溶液はヒータ22bにより一定温度(例えば、150℃〜160℃)に加熱され、さらに、循環配管22を流れるリン酸水溶液から異物(不純物)がフィルタ22cにより取り除かれる。このリン酸水溶液の循環は、洗浄部4による洗浄が開始されるまで行われることになる。
【0040】
ステップS3では、洗浄の開始が指示され、検出部21aにより検出されたシリコン濃度が所定の濃度であると、循環配管22途中の開閉弁V1が閉状態にされ、吐出配管23途中の開閉弁V2が開状態にされ、循環配管22から吐出配管23に所定のシリコン濃度のリン酸水溶液が流れる。このリン酸水溶液が吐出配管23を進み、その吐出配管23の先端部であるノズル4bから基板Wの表面に向けて吐出され、所定のシリコン濃度のリン酸水溶液により基板W上の窒化膜が選択的に除去される。この洗浄時、基板Wは回転機構4aにより平面内で一定の回転数で回転している。所定の処理時間後、循環配管22途中の開閉弁V1が開状態にされ、吐出配管23途中の開閉弁V2が閉状態にされる。これにより、吐出配管23からのリン酸水溶液の吐出が停止され、循環配管22を循環するリン酸水溶液の循環が再開される。
【0041】
洗浄中、基板Wの表面から洗浄部4の底面に流れ落ちたリン酸水溶液は、ポンプ24aの駆動により接続配管24を流れてタンク21に回収される。このとき、検出部21aにより検出されたタンク21内のリン酸水溶液のシリコン濃度が低下すると、ポンプ16aが制御部5により駆動されて貯留部11内の所定のシリコン濃度を有するリン酸水溶液が供給配管16を介してタンク21に供給される。その後、検出部21aにより検出されたタンク21内のリン酸水溶液中のシリコン濃度が所定の濃度になると、ポンプ16aの駆動が制御部5により停止される。
【0042】
ステップS4では、前述のリン酸水溶液の吐出停止後(洗浄完了後)、超純水又は加熱された超純水を吐出するノズル(図示せず)が用いられ、超純水又は加熱された超純水により基板Wが水洗され、その水洗後に乾燥されて次の製造工程に運ばれる。なお、乾燥では、洗浄部4の回転機構4aにより基板Wを回転させてその遠心力により基板W上の水を振り切る乾燥方法や、速乾性を有する有機溶剤(例えば、IPA:イソプロピルアルコール)を塗布してから前述と同様に基板W上の有機溶剤を振り切る乾燥方法などを用いることが可能である。
【0043】
以上説明したように、実施形態によれば、貯留部11内のリン酸水溶液を加熱し、貯留部11内のリン酸水溶液に浸漬された第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14との間に電位差を生じさせる。これにより、第1のシリコン材13と第2のシリコン材14に電位差が生じ、電気分解によりシリコンがイオンとなってリン酸水溶液中に溶解する。このため、所望のシリコン濃度のリン酸水溶液を得ることが容易となり、十分な選択比を得ることが可能となるので、半導体装置の製造に支障をきたして製品品質が低下することを防止し、製品品質を向上させることができる。
【0044】
また、第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14の両方又は一方は、ボロン又はリンがドープされたシリコン材であることから、第1のシリコン材13又は第2のシリコン材14を低抵抗としてその電気伝導性を向上させることができる。また、ボロン又はリンは半導体で良く用いられる元素であるため、半導体装置の製造プロセスへの影響を抑えることができる。
【0045】
また、第1のシリコン材13と第2のシリコン材14との間に0.3V以上5.0V以下の範囲内で電位差を生じさせることによって、第1のシリコン材13と第2のシリコン材14からのシリコン溶解が容易となり、さらに、第1のシリコン材13又は第2のシリコン材14の両表面の酸化膜(絶縁性を有する)形成を防止することが可能となる。このため、所望のシリコン濃度のリン酸水溶液を確実に得ることができる。
【0046】
また、第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14に流れる電流値を電流計15bにより検出することによって、その電流からファラデーの電気分解の法則に従って貯留部11内のリン酸水溶液のシリコン濃度を容易にまた正確に得ることができる。
【0047】
なお、前述の実施形態においては、電流計15bにより検出した電流値を用いて、貯留部11内のリン酸水溶液中のシリコン濃度を算出しているが、この電流値の使用としては、これ以外にも、例えば、電流計15bにより検出した電流値を用いて、第1のシリコン材13の表面の酸化及び第2のシリコン材14の表面の酸化を抑えるように電圧印加部15、すなわち第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14に流す電流値を制御するようにしても良い。この場合には、第1のシリコン材13又は第2のシリコン材14の両表面の酸化膜形成を防止することが可能となるので、所望のシリコン濃度のリン酸水溶液を確実に得ることができる。また、第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14に流す電流値を制御することによって、貯留部11内のリン酸水溶液に対するシリコンの溶解量を制御することも可能となるので、所望のシリコン濃度のリン酸水溶液をより確実に得ることができる。
【0048】
また、前述の実施形態においては、第1のシリコン材13の電位を正の電位とし、第2のシリコン材14の電位を負の電位として、各電位の正負を固定しているが、これに限るものではなく、第1のシリコン材13と第2のシリコン材14との互いの電位の正負を入れ替えることを繰り返すようにしても良い。この場合には、第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14の両表面の酸化膜形成を防止することが可能となるので、所望のシリコン濃度のリン酸水溶液を確実に得ることができる。なお、電位の正負の入れ替え方法としては、電源15aとして直流電源にかえて交流電源を用いることが可能であり、あるいは、電圧用パルスの正負を入れ替える方法を用いることも可能である。
【0049】
また、前述の実施形態においては、貯留部11は上部開放のタンクであるが、これに限るものではなく、例えば、貯留部11の内部を加圧しないように排気を行うトラップ構造を有する蓋を設け、リン酸水溶液の水分蒸発を抑えるような構造を用いるようにしても良い。
【0050】
また、前述の実施形態においては、貯留部11内のリン酸水溶液を加熱部12により加熱するようにしているが、これに限るものではなく、例えば、その加熱部12を設けずに、リン酸水溶液を供給する供給元で他の加熱部によりリン酸水溶液を加熱してから貯留部11内に供給し、第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14に接するリン酸水溶液の温度を常温より高い温度にするようにしても良い。すなわち、リン酸水溶液を貯留部11にためてから加熱しても、リン酸水溶液を加熱してから貯留部11にためてもどちらでも良い。ただし、貯留部11内のリン酸水溶液を加熱する方がリン酸水溶液の温度を一定に維持することが可能であり、特に、第1のシリコン材13及び第2のシリコン材14からのシリコン溶解中にもリン酸水溶液の温度を調整することができる。
【0051】
また、前述の実施形態においては、吐出配管23の途中にポンプを設けていないが、これに限るものではなく、例えば、吐出配管23から一定の流量でリン酸水溶液を吐出するため、吐出配管23の途中に定量ポンプを設け、その定量ポンプの駆動によりリン酸水溶液を吐出するようにしても良い。
【0052】
また、前述の実施形態においては、吐出配管23のノズル4bを固定状態としているが、これに限るものではなく、例えば、回転機構4aにより回転している基板Wの表面に(例えば、円板状の基板Wの半径方向に)沿って吐出配管23のノズル4bを往復移動させるようにしても良い。
【0053】
また、前述の実施形態においては、基板Wを一枚ごとに処理する枚葉式洗浄方法を用いているが、これに限るものではなく、例えば、処理槽に複数枚の基板Wを同時に浸漬して処理するバッチ式洗浄方法を用いるようにしても良い。このバッチ式洗浄方法では、所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を吐出する吐出配管23をバッチ式の処理槽に接続し、その処理槽内に所定のシリコン濃度のリン酸水溶液を供給する。リン酸水溶液を所定量処理槽に供給した後、処理槽内のリン酸水溶液をその処理槽につながる循環系統配管に流して循環させ、ヒータにより一定温度に保つ。その後、この処理槽内のリン酸水溶液に複数枚の基板Wをロボットにより一度に浸漬し、それらの基板W上の各窒化膜を選択的に除去する。所定の処理時間後、ロボットにより処理槽内のリン酸水溶液から全ての基板Wを引き上げ、すぐに隣の超純水槽又は温超純水槽に浸漬し、流水により十分水洗してから乾燥を行う。
【0054】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。