(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カウルルーバ本体から縦断面が略三角形状または略コ字状を成すように幅方向に沿って張り出したカウルアッパにエア取入口が形成されており、カウルアッパには、その車両前後方向における両基端が接近することを規制するように橋渡ブラケットが着装されているカウルルーバであって、
橋渡ブラケットの着装は、橋渡ブラケットの一方側に形成の係合爪が、カウルアッパの車両前後方向における一方側の基端に形成の係合孔に係合する係合構造と、橋渡ブラケットの他方側に形成の差込片が、カウルアッパの車両前後方向における他方側の基端に形成の差込孔に差し込まれる差込構造と、から成っており、
橋渡ブラケットの差込片の差し込み方向および引き抜き方向は、カウルアッパに車両上方から外部荷重が作用したときのカウルアッパの車両前後方向における両基端が遠ざかる方向と略一致するように設定されており、
差込片は、差込孔に対して遊びを介して差し込まれており、
差込片の先端には、差込孔に引っ掛け可能な引っ掛け爪が形成されており、
遊びは、橋渡ブラケットを着装したカウルアッパの両基端が遠ざかる方向に弾性変形しても、直ぐに、引っ掛け爪が差込孔に引っ掛かることがないように設定されていることを特徴とするカウルルーバ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1と同様の技術では、例えば、
図11に示すように、カウルアッパ120は、その後縁がフロントガラス(図示しない)の下縁に対して掛け留めされた格好となっている。したがって、洗車時などの手つきによる手つき荷重によって、カウルアッパ120の後側の基端140が前側の基端130(車両前後方向における両基端130、140)に向けて近づくことでフロントガラスの下縁からカウルアッパ120の後縁が脱落することを防止する必要がある。そのために、カウルアッパ120には、その両基端130、140が接近することを規制するように橋渡ブラケット150、150、150が着装されている(
図12参照)。この着装は、橋渡ブラケット150の両端がカウルアッパ120の両基端130、140に対して熱溶着されることで行われている。このように熱溶着されているため、例えば、走行中の車両と接触した歩行者の頭部(いずれも図示しない)がカウルアッパ120に衝突すると、カウルアッパ120の弾性変形と橋渡ブラケット150の熱溶着の脱落とが同時に行われる。したがって、カウルアッパ120の弾性変形により歩行者の頭部がカウルアッパ120から受ける荷重と橋渡ブラケット150の熱溶着の脱落により歩行者の頭部がカウルアッパ120から受ける荷重(橋渡ブラケット150の脱落荷重)とが同時に作用するため、歩行者の頭部がカウルアッパ120から受ける荷重が大きくなっていた。これら荷重と時間との関係を示したものが、
図10の点線で示されている。この
図10の点線におけるピークの荷重をF1とする。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、エア取入口が形成されているカウルアッパの両基端が接近することを規制するように橋渡ブラケットが着装されていても、歩行者保護の性能を高めることができるカウルルーバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、カウルルーバ本体から縦断面が略三角形状または略コ字状を成すように幅方向に沿って張り出したカウルアッパにエア取入口が形成されており、カウルアッパには、その車両前後方向における両基端が接近することを規制するように橋渡ブラケットが着装されているカウルルーバであって、橋渡ブラケットの着装は、橋渡ブラケットの一方側に形成の係合爪が、カウルアッパの車両前後方向における一方側の基端に形成の係合孔に係合する係合構造と、橋渡ブラケットの他方側に形成の差込片が、カウルアッパの車両前後方向における他方側の基端に形成の差込孔に差し込まれる差込構造と、から成っており、橋渡ブラケットの差込片の差し込み方向および引き抜き方向は、カウルアッパに車両上方から外部荷重が作用したときのカウルアッパの車両前後方向における両基端が遠ざかる方向と略一致するように設定されており、差込片は、差込孔に対して遊びを介して差し込まれており、差込片の先端には、差込孔に引っ掛け可能な引っ掛け爪が形成されて
おり、遊びは、橋渡ブラケットを着装したカウルアッパの両基端が遠ざかる方向に弾性変形しても、直ぐに、引っ掛け爪が差込孔に引っ掛かることがないように設定されていることを特徴とする構成である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に係るカウルルーバを適用した車両前側の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のカウルルーバの裏面を前側(フロント側)から見た全体斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2のカウルルーバの裏面を後側(リア側)から見た全体斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4において、橋渡ブラケットを分解した斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6を前側(フロント側)から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、
図2のカウルルーバの縦断面図であり、(A)は、橋渡ブラケットを着装する前の状態、(B)は、橋渡ブラケットを着装している途中の状態、(C)は、橋渡ブラケットの着装が完了した状態を示している。
【
図9】
図9は、
図2のカウルルーバの縦断面図であり、(A)は、カウルアッパに外部荷重が作用する前の状態、(B)は、カウルアッパに外部荷重が作用している途中状態、(C)は、さらに、カウルアッパに外部荷重が作用している状態を示している。
【
図11】
図11は、従来技術に係るカウルルーバの全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜10を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、
図1に示すように、車両4のボデー(図示しない)にカウルルーバ1を組み付けた状態を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0011】
図1〜2に示すように、カウルルーバ1は、従来技術として開示したカウルルーバ101と同様に構成されている。すなわち、このカウルルーバ1は、ボンネット2とフロントガラス3との隙間を塞ぎ可能に形成されているカウルルーバ本体10と、このカウルルーバ本体10と一体的に樹脂成形され車室にエア(いずれも図示しない)を取り入れるために複数のエア取入口22が形成されているカウルアッパ20とから構成されている。このように構成されているカウルルーバ1は、そのカウルルーバ本体10がボンネット2とフロントガラス3との隙間を塞ぐように車両4のボデー(図示しない)に組み付けられている。
【0012】
また、
図3〜4に示すように、このカウルルーバ1は、従来技術として開示したカウルルーバ101と比較すると、カウルアッパ20に対する橋渡ブラケット50の着装の構造のみが相違している。そのため、この実施例では、この着装の構造のみを詳述することとする。以下に、これら着装の構造におけるカウルアッパ20の特徴的な構成と、橋渡ブラケット50の特徴的な構成とを順に説明していく。
【0013】
まず、
図5〜8を参照して、カウルアッパ20の特徴的な構成から説明していく。このカウルアッパ20の車両前後方向における一方側(例えば、前側)の基端30の裏面の適宜位置には、すなわち、従来技術のカウルアッパ120において橋渡ブラケット150の一方側が熱溶着されていた部位には、後述する橋渡ブラケット50の係合爪54を係合可能な係合孔34を有する第1の台座32が形成されている。
【0014】
この第1の台座32には、その幅方向に対を成すリブ36、36が形成されている。このリブ36は、橋渡ブラケット50がカウルアッパ20に着装した状態になると、その2辺の縁(下側の縁と後側の縁)36aが橋渡ブラケット50の橋渡ブラケット本体52の一方側(前側)の縦壁52aと橋渡ブラケット50の一方側(前側)の端部の表面50aとに当接した状態となるように形成されている。また、このカウルアッパ20の車両前後方向における他方側(例えば、後側)の基端40の裏面の適宜位置には、すなわち、従来技術のカウルアッパ120において橋渡ブラケット150の他方側が熱溶着されていた部位には、後述する橋渡ブラケット50の差込片56を差し込み可能な差込孔44を有する第2の台座42が形成されている。
【0015】
なお、この差し込み方向および引き抜き方向(差し込み方向の反対方向)は、カウルアッパ20に歩行者の頭部が衝突したときのカウルアッパ20の両基端30、40が遠ざかる方向と略一致するように設定されている。この差込孔44には、その孔の一部を拡張した拡張部44aが形成されている。これにより、この差込孔44に橋渡ブラケット50の差込片56を差し込むとき、差込片56の引っ掛け爪56aが差込孔44の縁に引っ掛かることなくスムーズに差し込むことができる。
【0016】
この第2の台座42には、その幅方向に対を成すリブ46、46が形成されている。このリブ46は、橋渡ブラケット50がカウルアッパ20に着装した状態になると、その2辺の縁(下側の縁と前側の縁)46aが橋渡ブラケット50の橋渡ブラケット本体52の他方側(後側)の縦壁52bと橋渡ブラケット50の他方側(後側)の端部の表面50bとに当接した状態となるように形成されている。
【0017】
なお、これら第1の台座32の係合孔34と第2の段座42の差込孔44とは、互いが向かい合う位置に形成されている。また、これら第1の台座32の係合孔34と第2の段座42の差込孔44とは、カウルアッパ20の幅方向において、適宜の複数箇所(この例では、3箇所)に形成されている。
【0018】
次に、橋渡ブラケット50の特徴的な構成を説明する。この橋渡ブラケット50は、中空の盛り上がり状に形成された橋渡ブラケット本体52と、この本体52の一方側(前側)の端部に形成された係合爪54と、この本体52の他方側(後側)の端部に形成された差込片56とから構成されている。この差込片56は、3つに分割されており(
図7の一部拡大図参照)、この3つに分割されたもののうち、中央のものには、差込孔44の縁に引っ掛け可能な引っ掛け爪56aが形成されている。
【0019】
次に、
図8を参照して、カウルアッパ20に対する橋渡ブラケット50の着装の手順を説明していく。
図8(A)に示すように着装する前の状態から、
図8(B)に示すように、カウルアッパ20の差込孔44に橋渡ブラケット50の差込片56を差し込んでいく。そして、この差し込み箇所が支点を成すように橋渡ブラケット50を回動させる格好(
図8(B)において、矢印方向に回動させる格好)で、カウルアッパ20の係合孔34に橋渡ブラケット50の係合爪54を係合させていく。この係合が完了すると、
図8(C)に示すように、カウルアッパ20に対する橋渡ブラケット50の着装も完了する。この
図8(C)に示す状態が、橋渡ブラケット50の着装状態である。
【0020】
この着装が完了すると、既に説明したように、第1の台座32のリブ36の2辺の縁(下側の縁と後側の縁)36aが橋渡ブラケット50の橋渡ブラケット本体52の一方側(前側)の縦壁52aと橋渡ブラケット50の一方側(前側)の端部の表面50aとに当接した状態となる。これと同様に、この着装が完了すると、既に説明したように、第2の台座42のリブ46の2辺の縁(下側の縁と前側の縁)46aが橋渡ブラケット50の橋渡ブラケット本体52の他方側(後側)の縦壁52bと橋渡ブラケット50の他方側(後側)の端部の表面50bとに当接した状態となる。
【0021】
続いて、
図9〜10を参照して、上述したように橋渡ブラケット50を着装したカウルアッパ20を有するカウルルーバ1の作用を説明する。この作用として、走行中の車両と接触した歩行者の頭部(いずれも図示しない)がカウルアッパ20に衝突したときを説明する。
【0022】
図9(A)に示すように歩行者の頭部がカウルアッパ20に衝突する前の状態から、
図9(B)に示すように歩行者の頭部がカウルアッパ20に衝突すると、カウルアッパ20は上方から潰される格好を成すように弾性変形していく。このとき、既に説明したように、橋渡ブラケット50の他方側(後側)の着装は、単なる、差し込み構造(カウルアッパ20の差込孔44に橋渡ブラケット50の差込片56を差し込む構造)となっている。したがって、カウルアッパ20の他方の基端40と橋渡ブラケット50の差込片56とは互いが遠ざかる方向に移動可能となっているため、カウルアッパ20は、その両基端30、40が互いに遠ざかるようにも弾性変形していく。
【0023】
このように弾性変形していくと、
図9(B)からも明らかなように、カウルアッパ20の差込孔44の縁に橋渡ブラケット50の差込片56の引っ掛け爪56aが引っ掛かる。この引っ掛かった状態から、さらに、カウルアッパ20に対する歩行者の頭部の衝突が継続されると、
図9(C)に示すように、この引っ掛かりが脱落する。そのため、橋渡ブラケット50の一方側(前側)のみが着装された状態となる。
【0024】
なお、
図10の実線は、この衝突によって、歩行者の頭部がカウルアッパ20から受ける荷重(以下、単に、「衝突荷重」と記す)と時間との関係を示したものである。この
図10の実線から明らかなように、この衝突荷重には、2つのピーク(第1のピーク、第2のピーク)が形成されることとなる。この第1のピークは、カウルアッパ20の弾性変形荷重である。なお、この第1のピーク荷重を、説明の便宜上、F2と記すこととする。また、この第2のピークは、橋渡ブラケット50の脱落荷重である。この第2のピーク荷重を、説明の便宜上、F3と記すこととする。
【0025】
本発明の実施例に係るカウルルーバ1は、上述したように構成されている。この構成によれば、走行中の車両と接触した歩行者の頭部がカウルアッパ20に衝突すると、カウルアッパ20の弾性変形が行われた後に、橋渡ブラケット50の脱落が行われる。そのため、この衝突荷重のピークを2つ(第1のピークと第2のピーク)に分散できる。このように分散できると、ピークの衝突荷重の絶対量を抑える(従来技術でF1であったものをF2に抑える)ことができるため、乗員の頭部への衝撃を抑えることができる。したがって、歩行者保護の性能を高めることができる。
【0026】
また、この構成によれば、橋渡ブラケット50が着装状態にあるとき、橋渡ブラケット50の係合爪54に対してカウルアッパ20の係合孔34を介した上方から外部荷重が作用して、この係合爪54が係合孔34から離脱しても、この橋渡ブラケット50の差込片56の引っ掛け爪56aがカウルアッパ20の差込孔44の縁に引っ掛かるため、この橋渡ブラケット50がカウルアッパ20から脱落してしまうことを防止できる。
【0027】
また、この構成によれば、橋渡ブラケット50が着装状態になると、第1の台座32のリブ36の2辺の縁(下側の縁と後側の縁)36aが橋渡ブラケット50の橋渡ブラケット本体52の一方側(前側)の縦壁52aと橋渡ブラケット50の一方側(前側)の端部の表面50aとに当接した状態となる。これと同様に、第2の台座42のリブ46の2辺の縁(下側の縁と前側の縁)46aが橋渡ブラケット50の橋渡ブラケット本体52の他方側(後側)の縦壁52bと橋渡ブラケット50の他方側(後側)の端部の表面50bとに当接した状態となる。そのため、着装した橋渡ブラケット50のカウルアッパ20の両基端30、40に対する奥行き方向(車両前後方向)と高さ方向(車両高さ方向)とがガタ詰めされた状態となっている。したがって、橋渡ブラケット50の着装の度合いを高めることができる。
【0028】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、カウルアッパ20は、その縦断面が略三角形状を成すようにカウルルーバ本体10から幅方向に沿って略上方に張り出している形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、カウルアッパ20は、その縦断面が略コ字状を成すようにカウルルーバ本体10から幅方向に沿って略上方に張り出している形態でも構わない。
【0029】
また、実施例では、カウルアッパ20の車両前後方向における一方側(例えば、前側)の基端30の裏面の適宜位置には、第1の台座32が形成されており、カウルアッパ20の車両前後方向における他方側(例えば、後側)の基端40の裏面の適宜位置には、第2の台座42が形成されている形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、これと逆に、カウルアッパ20の車両前後方向における一方側(例えば、前側)の基端30の裏面の適宜位置には、第2の台座42が形成されており、カウルアッパ20の車両前後方向における他方側(例えば、後側)の基端40の裏面の適宜位置には、第1の台座32が形成されていても構わない。