(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態における水晶デバイスは、
図1〜
図3に示されているように、基板110と、基板110に接合された水晶素子120と、水晶素子120を覆うようにして設けられた蓋体130とを含んでいる。
【0010】
基板110は、矩形状であり、上面で実装された水晶素子120を支持するための支持部材として機能するものである。基板110は、基板110上面に、水晶素子120を接合するための矩形状の電極パッド111が設けられている。また、基板110の下面の四隅には、外部接続用電極端子Gが設けられている。
【0011】
基板110は、例えばアルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなる。基板110は、絶縁層を1層用いたものであっても、絶縁層を複数層積層したものであってもよい。基板110の表面及び内部には、上面に設けられた電極パッド111と下面の外部接続用電極端子Gとを電気的に接続するための配線パターン及びビア導体が設けられている。電極パッド111は、一対で設けられており、基板110の一辺に沿うように隣接して設けられている。
【0012】
外部接続用電極端子Gは、水晶デバイスをマザーボード上に実装する際に、半田等の導電性接合材を介して電気的に接続するための端子として機能する。外部接続用電極端子Gは、水晶入力端子、水晶出力端子、グランド端子又はノンコネクト端子によって構成されている。
【0013】
ここで基板110を平面視したときの一辺の寸法が、1.0〜2.5mmである。また、基板110の一辺と平行となる電極パッド111の辺の長さは、0.25〜0.40mmとなる。また、基板110の一辺と交わる辺と平行となる電極パッド111の辺の長さは、0.25〜0.40mmとなる。
【0014】
導電性接着剤140は、電極パッド111上に広がって形成され、水晶素子120の励振用電極122と間をあけて配置されている。水晶デバイスは、導電性接着剤140と励振用電極122とが間を空けて配置されていることにより、導電性接着剤140が励振用電極122に付着することで生じる短絡を低減することができる。
【0015】
また、導電性接着剤140の粘度が、35〜45Pa・sのものを使用されている。導電性接着剤140は、電極パッド111上に塗布した際に、電極パッド111上から基板110上へ流れ出ることなく、電極パッド111上に留まり、上下方向の厚みが維持される。
【0016】
また、導電性接着剤140は、電極パッド111上から漏れ拡がりにくいため、導電性接着剤140の上下方向の厚みも確保することができる。導電性接着剤140の上下方向の厚みの長さは、20〜40μmである。このように導電性接着剤140の厚みを確保できることによって、落下試験により加わった衝撃が水晶素子120に対して導電性接着剤140を中心にして上下方向へ加わったとしても、その衝撃を導電性接着剤140で十分に吸収緩和することができる。
【0017】
ここで、基板110の作製方法について説明する。基板110がアルミナセラミックスから成る場合、まず所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得た複数のセラミックグリーンシートを準備する。また、セラミックグリーンシートの表面或いはセラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔内に、従来周知のスクリーン印刷等によって所定の導体ペーストを塗布する。さらに、これらのグリーンシートを積層してプレス成形したものを、高温で焼成する。最後に、導体パターンの所定部位、具体的には、一対の電極パッド111又は外部接続用電極端子Gとなる部位にニッケルメッキ又は金メッキ等を施すことにより作製される。また、導体ペーストは、例えばタングステン、モリブデン、銅、銀又はパラジウム等の金属粉末の焼結体等から構成されている。
【0018】
水晶素子120は、
図2及び
図3(a)に示されているように、導電性接着剤140を介して電極パッド111上に接合されている。水晶素子120は、安定した機械振動と圧電効果により、電子装置等の基準信号を発振する役割を果たしている。
【0019】
水晶素子120は、
図2(a)に示されているように、水晶素板121の上面及び下面のそれぞれに励振用電極122、接続用電極123及び引き出し電極124を被着させた構造を有している。励振用電極122は、水晶素板121の上面及び下面のそれぞれに金属を所定のパターンで被着・形成したものである。引き出し電極124は、励振用電極122から水晶素板121の短辺に向かって延出されている。接続用電極123は、引き出し電極124と接続されており、水晶素板121の長辺又は短辺に沿った形状で設けられている。
【0020】
本実施形態においては、電極パッド111と接続されている水晶素子120の一端を基板110の上面と接続した固定端とし、他端を基板110の上面と間を空けた自由端とした片保持構造にて水晶素子120が基板110上に固定されている。
【0021】
水晶素板121の固定端側の外周縁は、
図3(a)に示されているように、平面視して、基板110の一辺と平行であり、基板110の外周縁に近付くように設けられている。このようにすることにより、水晶素子120の実装位置を視覚的によりわかりやすくすることができるので、水晶デバイスの生産性を向上させることが可能となる。
【0022】
ここで、水晶素子120の動作について説明する。水晶素子120は、外部からの交番電圧が接続用電極123から引き出し電極124及び励振用電極122を介して水晶素板121に印加されると、水晶素板121が所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
【0023】
ここで、水晶素子120の作製方法について説明する。まず、水晶素子120は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し、水晶素板121の外周の厚みを薄くし、水晶素板121の外周部と比べて水晶素板121の中央部が厚くなるように設けるベベル加工を行う。そして、水晶素子120は、水晶素板121の両主面にフォトリソグラフィー技術、蒸着技術又はスパッタリング技術によって、金属膜を被着させることにより、励振用電極122、接続用電極123及び引き出し電極124を形成することにより作製される。
【0024】
水晶素子120の基板110aへの接合方法について説明する。まず、導電性接着剤140は、例えばディスペンサによって電極パッド111上に塗布される。水晶素子120は、導電性接着剤140上に搬送され、導電性接着剤140上に載置される。そして導電性接着剤140は、加熱硬化させることによって、硬化収縮される。水晶素子120は、一対の電極パッド111に接合される。
【0025】
導電性接着剤140は、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケル又は鉄のうちのいずれか、或いはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。また、バインダーとしては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂又はビスマレイミド樹脂が用いられる。
【0026】
蓋体130は、例えば、アルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなる。蓋体130は、
図2に示すように、蓋本体部130aと壁部130bとから構成されている。蓋本体部130aは、矩形状であり、平面視した形状が基板110よりも大きくなるように設けられている。壁部130bは、蓋本体部130aの下面の外周縁部に沿って連続して設けられている。このようにすることによって、大きい水晶素子120を基板に実装することができると共に、水晶素子を安定して気密封止することが可能となる。
【0027】
蓋本体部130aの一辺は、1.05〜2.7mmとなっている。蓋本体部130aの上下方向の厚みは、15〜30μmとなっている。壁部130bの外表面と内表面との間の厚みは、15〜30μmとなっている。壁部130bの上下方向の厚みは、150〜250μmとなっている。よって、収容空間Kの上下方向の間隔は、160〜280μmとなっている。また、蓋本体部130aの一辺と基板110の一辺との差が50〜200μmである。蓋体130と基板110との大きさの関係は、平面視した形状が蓋体130の方が基板110よりも大きくなるように設けられている。
【0028】
また、基板110の電極パッド111が設けられている一辺は、電極パッド111が設けられている一辺に対向する一辺よりも蓋体130の壁部130bに寄って配置されている。このように配置されていることによって、さらに、接合部材150が電極パッド111上面に接触しやすくなるので、蓋体130と基板110との接続強度を向上させることができる。
【0029】
また、蓋体130は、水晶素子120を収容できるように、蓋本体部130aと壁部130bにより収容空間Kが形成されている。このような蓋体130は、真空状態にある収容空間K又は窒素ガスなどが充填された収容空間K内に水晶素子120を配置し、気密的に封止するためのものである。具体的には、蓋体130は、所定雰囲気で、基板110上に載置され、基板110上面の外周縁部と壁部130bの下面との間に設けられた接合部材150を溶融させることによって基板110上面に接合される。
【0030】
接合部材150は、蓋体130の壁部130bの下端から電極パッド111上にかけて、接合部材150の上下方向の厚みが薄くなるように設けられている。また、接合部材150は、蓋体130の壁部130bの下端から基板110の外周縁部にかけて、接合部材150の上下方向の厚みが厚くなるように設けられている。このようにすることによって、水晶デバイスを小型化する場合であっても、基板110に対する接合部材150の被着面積を広く確保することができ、これによって蓋体130を基板110に対し強固に接合させることができる。
【0031】
接合部材150は、例えば、ガラスによって設けられている。ガラスは、350℃〜400℃で溶融する鉛フリーガラスである例えばパナジウム系ガラスから構成されている。これらのガラスは、バインダーと溶剤とが加えられペースト状であり、溶融された後、固化されることで他の部材と接着する。
【0032】
接合部材150の平均の厚みは10〜30μmであり、最大厚みは40〜70μmである。また、接合部材150の最小厚みは10〜20μmに設定される。このようにすることによって、適度な熱エネルギーによって蓋体130の壁部と基板110の外周縁部とが効率良く接合することができ、水晶デバイスの生産性を向上させることが可能となる。
【0033】
接合部材150の熱伝導率は、0.55〜0.75W/m・Kであり、基板110の熱伝導率は、30〜40W/m・Kである。接合部材150及び基板110が、このような熱伝導率を示すことにより、水晶素子120から伝わる熱は、電極パッド111から接合部材150を介して基板110の側面に伝わることで放熱することになる。また、電極パッド111から基板110に伝わった熱も基板110の表面に設けられた接合部材150によって、電極パッド111から基板110の側面に熱が伝わることを助長し、基板110の側面から熱が効率よく放熱することになる。
【0034】
また、接合部材150は、
図3に示されているように、基板110の外周縁部に沿って連続して設けられている。このようにすることによって、蓋体130の収容空間K内を気密封止し、水晶素子120の発振周波数が安定して出力される。
【0035】
本実施形態における水晶デバイスは、基板110の上面の外周縁部は、平面視して壁部130bの下端の外周縁部と壁部130bの下端の内周縁部の間に収まる大きさに形成されており、接合部材150は壁部130bの下端から電極パッド111上にかけて設けられていることによって、水晶素子120から伝わる熱が、電極パッド111から接合部材150を介して基板110の側面に伝わることで放熱することになる。また、電極パッド111から基板110に伝わった熱も基板110の表面に設けられた接合部材150によって、電極パッド111から基板110の側面に熱が伝わることを助長し、基板110の側面から熱が効率よく放熱することになる。よって、水晶デバイスは、水晶素子120の実際の温度と、基板110の周辺の温度との温度差を小さくし、水晶素子120を所望した発振周波数に調整することができる。
【0036】
(第一変形例)
以下、本実施形態の第一変形例における水晶デバイスについて説明する。なお、本実施形態の第一変形例における水晶デバイスのうち、上述した水晶デバイスと同様な部分については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0037】
本実施形態の第一変形例における水晶デバイスは、
図4に示されているように、接合部材150が基板110の側面の上端の一部にまで設けられている点で本実施形態と異なる。
【0038】
本実施形態の第一変形例における水晶デバイスは、接合部材150が基板110の側面の上端の一部にまで設けられていることによって、基板110に対する接合部材150の被着面積をさらに広く確保することができ、これによって蓋体130を基板110に対しての接合強度を向上させることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態の第一変形例における水晶デバイスは、接合部材150が基板110の側面の上端の一部にまで設けられていることによって、電極パッド111から基板110の側面に熱が伝わることをさらに助長し、基板の側面から熱が効率よく放熱することを向上させることができる。よって、水晶素子の実際の温度と、基板の周辺の温度との温度差を小さくし、水晶素子を所望した発振周波数に調整することができる。
【0040】
(第二変形例)
以下、本実施形態の第二変形例における水晶デバイスについて説明する。なお、本実施形態の第二変形例における水晶デバイスのうち、上述した水晶デバイスと同様な部分については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。
【0041】
本実施形態の第二変形例における水晶デバイスは、
図5に示されているように、接合部材150が、導電性接着剤140に接触するように設けられている点で本実施形態と異なる。
【0042】
本実施形態の第二変形例における水晶デバイスは、接合部材150が、導電性接着剤140に接触するように設けられていることによって、導電性接着剤140が接合部材150によって押さえつけられることになり、導電性接着剤140と電極パッド111との接合強度を向上させることができる。よって、水晶デバイスは、落下試験により、導電性接着剤140と電極パッド111との界面が剥がれることを低減し、水晶素子120の発振周波数が安定して出力することができる。
【0043】
尚、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。上記実施形態では、水晶素子は、AT用水晶素子を用いた場合を説明したが、基部と、基部の側面より同一の方向に延びる二本の平板形状の振動腕部とを有する音叉型屈曲水晶素子を用いても構わない。
【0044】
また、水晶素子120のベベル加工方法について説明する。所定の粒度のメディアと砥粒とを備えた研磨材と、所定の大きさに形成された水晶素板121とを用意する。円筒体に用意した研磨材と水晶素板121とを入れ、円筒体の開口した端部をカバーで塞ぐ。研磨材と水晶素板121とを入れた円筒体を、円筒体の中心軸線を回転軸として回転させる水晶素板121が研磨材で研磨されてベベル加工が行われる。
【0045】
上記実施形態では、水晶素子が片保持されている構造の場合を説明したが、両保持構造でも構わない。両保持構造における引き出し電極は、励振用電極から水晶素板のそれぞれの短辺に向かって延出されている。また、接続用電極は、引き出し電極と接続されており、水晶素板の短辺に沿った形状でそれぞれ1つずつ設けられている。
【0046】
また、
図6に示されているように、接合部材150が基板110の側面の上端の一部にまで設けられると共に、接合部材150が、導電性接着剤140に接触するように設けられていても構わない。このようにすることによって、第一変形例及び第二変形例の両方の効果を奏する。