(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009493
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】レゾルバ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/52 20060101AFI20161006BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20161006BHJP
H02K 24/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
H02K3/52 E
H02K15/04 E
H02K24/00
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-105326(P2014-105326)
(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公開番号】特開2015-220957(P2015-220957A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 一輝
【審査官】
小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−120873(JP,A)
【文献】
実公昭63−009250(JP,Y2)
【文献】
実公平06−024965(JP,Y2)
【文献】
特開2006−180618(JP,A)
【文献】
特開平07−298535(JP,A)
【文献】
実開昭61−002754(JP,U)
【文献】
特開2004−056903(JP,A)
【文献】
特開2005−033919(JP,A)
【文献】
特開2005−033920(JP,A)
【文献】
実開平04−010575(JP,U)
【文献】
実開昭61−070901(JP,U)
【文献】
特許第2876236(JP,B2)
【文献】
特開2012−080602(JP,A)
【文献】
実開昭62−202050(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
H02K 3/52
H02K 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
半径方向に延在する複数の突極を備えたステータコアと、
前記ステータコアの前記突極を覆うインシュレータと、
前記突極に前記インシュレータを介して巻回された巻線と、
前記巻線の終端から先のリード線が取り付けられる複数の端子と、
前記複数の端子を支持する端子保持部とを備え、
前記端子保持部は、前記インシュレータに対して移動可能に設けられることにより、前記リード線が前記端子に張った状態で取り付けられる第1の位置と、張った状態の前記リード線を前記端子保持部に対して前記ステータコア側にたるませる第2の位置とに配置可能とされ、
前記端子保持部を前記第2の位置で固定する固定手段を備え、
前記第2の位置は、前記端子保持部が前記ステータコアまたは前記インシュレータに固定される位置であることを特徴とするレゾルバ。
【請求項2】
前記端子保持部は、前記インシュレータに対して半径方向または軸線方向のいずれかの方向に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレゾルバ。
【請求項3】
前記端子保持部は前記インシュレータに対して軸線方向に移動可能に設けられており、
前記ステータコアは軸線方向を向く面に開口する穴を備え、前記端子保持部は、前記穴に進退自在に嵌合していることを特徴とする請求項2に記載のレゾルバ。
【請求項4】
前記固定手段は、前記インシュレータに立設したピンと、前記端子保持部に設けられ前記ピンが嵌合する孔とを備え、前記端子保持部が前記第2の位置に配置されたときに前記ピンが前記孔に挿入され、前記ピンの端部を前記孔に固着させることで前記端子保持部が前記第2の位置で固定されていることを特徴とする請求項2または3に記載のレゾルバ。
【請求項5】
前記固定手段は、前記端子保持部に設けたピンと、前記ステータコアに設けられ前記ピンが嵌合する孔とを備え、前記端子保持部が前記第2の位置に位置するときに前記ピンが前記孔に圧入されることで前記端子保持部が前記第2の位置で固定されていることを特徴とする請求項2または3に記載のレゾルバ。
【請求項6】
前記端子保持部は前記インシュレータに対して半径方向に移動可能に設けられており、
前記インシュレータに前記ステータコアの半径方向外方に突出するガイドを設け、前記端子保持部に前記ガイドを案内するレールを設け、前記端子保持部が前記第2の位置に配置されたときに前記ガイドと前記レールとが互いに固着されることで前記端子保持部が前記第2の位置で固定されていることを特徴とする請求項2に記載のレゾルバ。
【請求項7】
(1)半径方向に延在する複数の突極を備えたステータコアに該ステータコアの前記突極を覆って絶縁するインシュレータを設ける工程と、
(2)前記突極に前記インシュレータを介して巻線を巻回する工程と、
(3)複数の端子を備えた端子保持部を前記インシュレータおよび/または前記ステータコアに装着する工程と、
(4)前記巻線の終端から先のリード線を張った状態で前記端子に取り付ける工程と、
(5)前記端子保持部を移動させて張った状態の前記リード線を前記端子保持部に対して前記ステータコア側にたるませる工程と、
(6)前記リード線がたるんだ状態で前記端子保持部を前記インシュレータおよび/または前記ステータコアに固定する工程と
を備えたことを特徴とするレゾルバの製造方法。
【請求項8】
前記(1)および(3)の工程が終了した後で前記ステータコアを巻線装置に装着して前記(2)の工程を行い、前記巻線装置によって前記端子保持部を支持した状態で前記巻線装置によって前記(4)の工程を行うとともに前記リード線を前記端子に固着し、次いで、前記巻線装置が前記(5)および(6)の工程を行うことを特徴とする請求項7に記載のレゾルバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバに係り、たとえばVR型レゾルバ(バリアブルリラクタンス型レゾルバ)において、ステータコイルの巻線の終端から伸びるリード線を端子ピンに接続した後にリード線をたるませる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
回転位置の検出などに用いられるVR型レゾルバは、円環状のステータコアから磁極となる複数の突極を半径方向外方または内方に突出させ、これらの突極に巻線を巻回したステータの内側または外周側に磁性材料により構成されたロータを配置した構造を有している。
【0003】
ここで、ステータには複数の端子ピンが取り付けられた端子保持部が設けられ、端子ピンにはステータの突極に巻回した巻線の終端から伸びるリード線が絡げられている。このような構成では、ステータから端子ピンに至るリード線が張った状態であると、温度変化等に起因して断線するおそれがある。そこで、特許文献1に記載の技術では、ステータの外周部に端子ピンを支持する端子保持部を設けたインナーロータ型のレゾルバにおいて、端子保持部に設けた穴から治具を突出させ、リード線を治具に掛けて端子ピンに絡げた後、治具を端子保持部から取り外すようにしている。この技術によれば、治具によって突き上げられていたリード線が治具を除去した後にたるむので、断線を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−64821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ステータの外周側にロータを配置するアウターロータ型のレゾルバのように外周側にスペースの余裕のない場合や、特許文献1に記載のようなインナーロータ型のレゾルバであっても巻線の終端から端子ピンまでの距離を確保できない場合には、治具を設けることが困難である。本発明は、特許文献1に記載のような特別な治具を必要とせず、巻線の終端から端子ピンまでの距離を確保できない構造であってもリード線にたるみを設けることができるレゾルバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレゾルバは、ロータと、
半径方向に延在する複数の突極を備えたステータコアと、前記ステータコアの前記突極を
覆うインシュレータと、前記突極に
前記インシュレータを介して巻回された巻線と、前記巻線の終端から先のリード線が取り付けられる複数の端子と、前記複数の端子を支持する端子保持部とを備え、前記端子保持部は、前記インシュレータに対して移動可能に設けられることにより、前記リード線が前記端子に張った状態で取り付けられる第1の位置と、張った状態の前記リード線を
前記端子保持部に対して前記ステータコア側にたるませる第2の位置とに配置可能とされ、前記端子保持部を前記第2の位置で固定する固定手段
を備え、前記第2の位置は、前記端子保持部が前記ステータコアまたは前記インシュレータに固定される位置であることを特徴とする。
【0007】
上記構成のレゾルバにあっては、リード線を端子に取り付けた後に端子保持部を移動させてリード線をたるませることができるので、特許文献1に記載されたような治具を必要とせず、巻線の終端から端子ピンまでの距離を確保できない構造であってもリード線にたるみを設けることができる。また、端子保持部がインシュレータに対して移動可能であるため、移動方向を適宜選択することができ、インシュレータに端子を直接設ける構成と比較して設計の自由度が増え顧客のニーズに広く対応することができる。
【0008】
ここで、端子保持部は、ステータコアの厚さ方向(軸線方向)に移動可能に設けられていることが望ましい。このように構成することにより、端子保持部をインシュレータの外周側に突出させる必要がなく、レゾルバを小型化することができる。この態様は、ステータコアの外周側にロータを配置するアウターロータ型のレゾルバのみならず、ステータコアの内側にロータを配置するインナーロータ型のレゾルバにも適用可能である。なお、端子保持部は、インシュレータまたはステータコアに支持させることができ、あるいは両者によって支持させることができる。
【0009】
上記の態様において、ステータコアはその軸線方向を向く面に開口する穴を備え、端子保持部は、穴に進退自在に嵌合していることが望ましい。この態様では、端子保持部の一部が穴に没しているので、レゾルバの軸線方向の寸法を抑えることができる。
【0010】
固定手段は、インシュレータに立設したピンと、端子保持部に設けられピンが嵌合する孔とを備えることができる。そして、端子保持部が第2の位置に配置されたときにピンが孔に挿入され、ピンの端部を孔に固着させることで端子保持部が第2の位置で固定される。ピンの材質がプラスチックであれば、ピンを熱溶融させる。あるいは、ピンの材質が金属であれば、半田付けや溶接によって孔に固着することができる。なお、接着剤を用いて両者を固着することもできる。
【0011】
固定手段は、端子保持部に設けたピンと、ステータコアに設けられてピンが嵌合する孔とを備えることができる。そして、端子保持部が第2の位置に位置するときにピンが孔に圧入されることで端子保持部が第2の位置で固定される。この態様では、端子保持部を第2の位置まで移動させることでピンが孔に圧入されるので、工程が少なく作業が簡略化されるとともに、ピンがステータコアに固定されるので、端子保持部を強固に固定することができる。
【0012】
端子保持部は、インシュレータにステータコアの半径方向に移動可能に設けることもできる。アウターロータ型のレゾルバの場合には、ステータコアの半径方向外方に突極が突出しているので、端子保持部は、ステータコアの内側に配置する。逆に、インナーロータ型のレゾルバの場合には、ステータコアの半径方向内方に突極が突出しているので、端子保持部は、ステータコアの外周側に配置する。このような態様では、端子保持部をステータコア側へ近付けることでリード線にたるみを設けるので、端子保持部の半径方向への突出量を少なくすることができ、レゾルバを小型化することができる。
【0013】
端子保持部を半径方向に移動可能にする構成は任意であり、端子保持部とインシュレータとを公知のガイド機構を介して接続すればよい。たとえば、インシュレータにステータコアの半径方向外方に突出するガイドを設け、端子保持部にガイドを案内するレールを設ける。そして、端子保持部が第2の位置に配置されたときにガイドとレールとが互いに固着されることで端子保持部が第2の位置で固定される。ガイドとレールとを互いに固着する手段は任意であり、両者の材質がプラスチックであれば熱溶融させる。あるいは、両者の材質が金属であれば、半田付けや溶接によって互いに固着することができる。なお、接着剤を用いて両者を固着することもできる。
【0014】
次に、本発明は、(1)
半径方向に延在する複数の突極を備えたステータコアに該ステータコアの前記突極を覆って絶縁するインシュレータを設ける工程と、(2)前記突極に
前記インシュレータを介して巻線を巻回する工程と、(3)複数の端子を備えた端子保持部を前記インシュレータおよび/または前記ステータコアに装着する工程と、(4)前記巻線の終端から先のリード線を張った状態で前記端子に取り付ける工程と、(5)前記端子保持部を移動させて張った状態の前記リード線を
前記端子保持部に対して前記ステータコア側にたるませる工程と、(6)前記リード線がたるんだ状態で前記端子保持部を前記インシュレータおよび/または前記ステータコアに固定する工程とを備えたことを特徴とするレゾルバの製造方法である。このようなレゾルバの製造方法においても、特許文献1に記載されたような治具を必要とせず、巻線の終端から端子までの距離を確保できない構造であってもリード線にたるみを設けることができる。
【0015】
ここで、上記工程の殆どを公知の巻線装置によって行うことができる。すなわち、(1)および(3)の工程が終了した後でステータコアを巻線装置に装着して(2)の工程を行い、巻線装置によって端子保持部を支持した状態で巻線装置によって(4)の工程を行うとともに巻線を端子に固着し、次いで、巻線装置が(5)および(6)の工程を行う。なお、巻線を端子に固着する方法としては、溶接、半田付け、ロウ付けなど公知の方法を行うことができる。
【0016】
複数の突極を備えたステータコアに突極を覆って絶縁するインシュレータを設ける(1)の工程としては、たとえば珪素鋼板等の磁性材料からなる薄板を積層したステータコアを金型に配置し、金型のキャビティ内に絶縁性の合成樹脂を射出成形するインサート成形や、射出成形により製造したインシュレータをステータコアの表裏面に装着する方法など公知の技術を採用することができる。
【0017】
また、複数の端子ピンを備えた端子保持部をインシュレータおよび/またはステータコアに装着する(3)の工程では、ステータコアに対して位置決めされた端子保持部をロボットハンドや人手によってインシュレータやステータコアに装着することができる。なお、そのような機能を巻線装置に設けることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リード線を端子に取り付けた後に端子保持部を移動させてリード線をたるませるので、特別な治具を必要とせず、巻線の終端から端子までの距離を確保できない構造であってもリード線にたるみを設けることができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るVR型レゾルバにおけるステータの分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るステータの斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係るステータの斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係るステータの断面図である。
【
図5】第1実施形態に係るステータの断面図である。
【
図6】第1実施形態の変更例に係るステータの斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るVR型レゾルバにおけるステータの分解斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係るステータの斜視図である。
【
図9】第2実施形態に係るステータの斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係るステータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.実施形態の構成
図1は第1実施形態のVR型レゾルバのステータ100を軸線方向で分解した状態を示す分解斜視図である。ステータ100は、略環状の形状を有している。ステータ100の外側には、軟磁性材料により構成されるロータがステータ100に対して回転自在な状態で保持される。なお、ロータに係る構造は、通常のVR型レゾルバにおけるものと同じであるので、図示およびその説明は省略する。
【0021】
ステータ100は、ステータコア200を備えている。ステータコア200は、軟磁性材料(例えば、珪素鋼板)を
図1に示す略環状に打抜き加工したものを軸線方向で複数積層した構造を有している。ステータコア200には、半径方向外方に延在する複数の突極201が形成されている。突極201は、磁極として機能する部分であり、後述するインシュレータを介して、その周囲に巻線が巻回されステータコイル(巻線)500が形成されている。
図1に、仮想的に突極201から取り外した状態のステータコイル500を示す。突極201の先端の部分には、平たく周方向に延在する突極先端部202が形成されている。突極先端部202の外周側の面には、図示しないロータに対向する突極面203が形成されている。また、ステータコア200には、その中心の孔に沿う内周側の部分に略円弧状をなして周方向に延在する孔(穴)204が形成されている。
【0022】
ステータコア200は、その軸線方向の上下から第1のインシュレータ300と第2のインシュレータ400とによって挟まれている。すなわち、ステータコア200に装着されるインシュレータは、第1のインシュレータ300と第2のインシュレータ400に分離された構造を有している。第1のインシュレータ300および第2のインシュレータ400は、電気絶縁性を有する樹脂材料を用いた射出成形により構成されている。第1のインシュレータ300および第2のインシュレータ400は、ステータコイル500を構成する巻線と、ステータコア200および取り付け時の周辺部材との電気絶縁を確保するための部材である。
【0023】
第1のインシュレータ300には、半径方向外方に延在する複数の凸部301が形成されている。凸部301の位置と大きさは、突極201の位置と大きさに一致している。凸部301の先端部には、平たく周方向および軸線方向に延在する鍔部302が形成されている。第2のインシュレータ400にも同様の凸部401と鍔部402が形成されている。これら鍔部302,402は、コイルを突極201に巻回する際に、ステータコイル500の形状が乱れないように巻形状を規制する。
【0024】
第1のインシュレータ300には、軸線方向に延在する枠体303が形成されている。枠体303は、矩形の一辺の外周側中央部が欠けた形状をなし、その形状はステータコア200の突極201どうしの間の空間205の形状に一致している。また、枠体303は、軸線方向の寸法が長いものと短いものが交互に形成されている。一方、第2のインシュレータ400にも同様に軸線方向の寸法が長い枠体403と軸線方向の寸法が短い枠体403が枠体303と逆の位置関係となるように交互に形成されている。このため、第1のインシュレータ300および第2のインシュレータ400をステータコア200に取り付けると、枠体303および枠体403が空間205に嵌合し、枠体303および枠体403の先端縁どうしが突き合わされ、空間205を構成するステータコア200の面を絶縁する。このようにして、第1、第2のインシュレータ300,400は、突極201の全周とその周囲を絶縁し、ステータコイル500がステータコア200に接触しないようにしている。
【0025】
図1において符号404は台座であり、台座404には軸線方向に延在するピン405が形成されている。台座404は、ステータコア200の孔204に嵌合し、ピン405は他の機器に対する位置決めに用いられる。
【0026】
図2〜
図5は、
図1に示す構成において、ステータコア200に第1のインシュレータ300と第2のインシュレータ400を装着し、第1のインシュレータ300と第2のインシュレータ400で覆われた突極201にワイヤを巻回してステータコイル500を形成した状態を示すものである。この状態において、ステータコイル500は、突極201のそれぞれに巻回されている。
【0027】
図1において符号600は端子台(端子保持部)である。
図3に示すように、端子台600は、略矩形状をなす端子台本体601と、端子台本体601の下面から突出した嵌合部602とから概略構成されている。
図3に示すように、嵌合部602は、ステータコア200の孔204と同じ平面形状をなして孔204に嵌合する。端子台本体601においては、複数の端子ピン(端子)603が軸線方向に突出し、端子ピン603と接続された出力端子604が軸線方向に突出している。
【0028】
端子台本体601の両側部には、ブラケット605が形成され、ブラケット605には孔606が形成されている。一方、第1のインシュレータ300の内周縁部には、内側へ突出するブラケット305が形成され、ブラケット305には軸線方向に突出するピン306が形成されている。
【0029】
2.組み立て手順
上記構成のVR型レゾルバのステータ100を組み立てる手順の一例を説明する。まず、珪素鋼板を
図1に示す形状にプレス加工した薄板状のものを複数用意する。そして、それを積層し、ステータコア200を得る。次に、第1のインシュレータ300と第2のインシュレータ400とでステータコア200を挟んだ状態とする。この状態において、端子台600の嵌合部602をステータコア200の孔204に嵌合させる。そのとき、端子台600の孔606に第1のインシュレータ300のピン306を挿入する。
【0030】
そして、
図4に示すように、端子台600をステータコア200の上面から浮かせた状態(第1の位置)で保持し、ステータコア200の突極201にワイヤを巻回し、ステータコイル500を形成する。また、ステータコイル500のリード線501を端子ピン603に張った状態で絡げ、その絡げた部分を半田または溶接により固定する。次いで、
図5に示すように、端子台600をステータコア200側へ移動させ、端子台本体601の下面をステータコア200の上面に当接させる(第2の位置)。これにより、リード線501にたるみが生じる。そして、第1のインシュレータ300のピン306の端部を溶融させて潰し端子台600を固定する。こうして、
図2および
図5に示す状態を得る。なお、突極201へのワイヤの巻回以降の作業は、巻線装置により自動的に行う。
【0031】
上記構成のVR型レゾルバのステータ100にあっては、リード線501を端子ピン603に絡げて固定した後に端子台600をステータコア200側へ移動させてリード線501をたるませるので、特別な治具を必要とせず、ステータコイル500の終端から端子ピン603までの距離を確保できない構造であってもリード線501にたるみを設けることができる。したがって、温度変化等によるリード線501の断線を抑制することができる。また、端子台600が第1のインシュレータ300に対して移動可能であるため、移動方向を適宜選択することができ、インシュレータに端子を直接設ける構成と比較して設計の自由度が増え顧客のニーズに広く対応することができる。
【0032】
特に、上記実施形態では、端子台600を軸線方向に移動可能に設けているので、端子台600を第1のインシュレータ300の外周側に突出させる必要がなく、VR型レゾルバを小型化することができる。また、上記実施形態では、端子台600の嵌合部602がステータコア200の孔204に没しているので、VR型レゾルバの軸線方向の寸法を抑えることができる。
【0033】
3.変更例
図6は上記第1実施形態の変更例を示すものである。
図6に示すように、ステータコア200には、軸線方向に貫通する孔206が形成されている。一方、端子台600のブラケット607には、軸線方向に突出し上記孔206に挿入されるピン608が形成されている。ピン608と孔206との嵌め合い公差は締まり嵌めとされている。したがって、ピン608は孔206に圧入される。
【0034】
上記構成のVR型レゾルバのステータ100においては、端子台600をステータ100に装着するにあたって、ピン608の長さの中程までが孔206に圧入される。そして、端子台600をステータコア200の上面から浮かせた状態で保持し、その状態で、ステータコア200の突極201にワイヤを巻回し、ステータコイル500を形成する。また、ステータコイル500のリード線501を端子ピン603に絡げ、その絡げた部分を半田または溶接により固定する。次いで、端子台600をステータコア200側へ移動させ、端子台本体601の下面をステータコア200の上面に当接させる。これにより、リード線501にたるみが生じる。また、ピン608が孔206に完全に没し、ピン608と孔206の間の摩擦抵抗によって端子台600がステータコア200に固定される。
【0035】
上記構成のVR型レゾルバのステータ100においては、前記第1実施形態と同等の作用、効果が得られることは勿論のこと、端子台600をステータコア200側へ移動させることでピン608が孔206に圧入されるので、工程が少なく作業が簡略化されるとともに、ピン608がステータコア200に固定されるので、端子台600を強固に固定することができる。
【0036】
4.第2実施形態
図7〜
図10を参照して本発明の第2実施形態について説明する。
図7は第1実施形態のVR型レゾルバのステータ100Aを軸線方向で分解した状態を示す分解斜視図である。ステータ100Aは、略環状の形状を有している。ステータ100Aの内側には、軟磁性材料により構成されるロータがステータ100Aに対して回転自在な状態で保持される。なお、ロータに係る構造は、通常のVR型レゾルバにおけるものと同じであるので、図示およびその説明は省略する。
【0037】
ステータ100Aは、ステータコア200Aを備えている。ステータコア200Aは、軟磁性材料(例えば、珪素鋼板)を
図7に示す略環状に打抜き加工したものを軸線方向で複数積層した構造を有している。ステータコア200Aには、半径方向内方に延在する複数の突極201Aが形成されている。突極201Aは、磁極として機能する部分であり、後述するインシュレータを介して、その周囲に巻線が巻回されてステータコイル(巻線)500Aが形成されている。
図7に、仮想的に突極201Aから取り外した状態のステータコイル500Aを示す。突極201Aの先端の部分には、平たく周方向に延在する突極先端部202Aが形成されている。突極先端部202Aの内周側の面には、図示しないロータに対向する突極面203Aが形成されている。
【0038】
ステータコア200Aは、その軸線方向の上下から第1のインシュレータ300Aと第2のインシュレータ400Aとによって挟まれている。すなわち、ステータコア200Aに装着されるインシュレータは、第1のインシュレータ300Aと第2のインシュレータ400Aに分離された構造を有している。第1のインシュレータ300Aおよび第2のインシュレータ400Aは、電気絶縁性を有する樹脂材料を用いた射出成形により構成されている。第1のインシュレータ300Aおよび第2のインシュレータ400Aは、ステータコイル500Aを構成する巻線と、ステータコア200Aおよび取り付け時の周辺部材との電気絶縁を確保するための部材である。
【0039】
第1のインシュレータ300Aには、半径方向内方に延在する複数の凸部301Aが形成されている。凸部301Aの位置と大きさは、突極201Aの位置と大きさに一致している。凸部301Aの先端部には、平たく周方向および軸線方向に延在する鍔部302Aが形成されている。第2のインシュレータ400Aにも同様の凸部401Aと鍔部402Aが形成されている。これら鍔部302A,402Aは、コイルを突極201Aに巻回する際に、ステータコイル500Aの形状が乱れないように巻形状を規制する。
【0040】
第1のインシュレータ300Aには、軸線方向に延在する複数の枠体303Aが形成されている。枠体303Aは、矩形の一辺の内周側中央部が欠けた形状をなし、その断面形状はステータコア200Aの突極201Aどうしの間の空間205Aの断面形状に一致している。また、枠体303Aの先端縁は、
図7における時計回りの方向で周方向へ向かうに従って軸線方向の長さが長くなるように傾斜している。
【0041】
一方、第2のインシュレータ400Aにも軸線方向に延在する枠体403Aが形成されている。枠体403Aは、矩形の一辺の内周側中央部が欠けた形状をなし、その断面形状はステータコア200Aの突極201Aどうしの間の空間205Aの断面形状に一致している。また、枠体403Aの先端縁は、
図7における時計回りの方向で周方向へ向かうに従って軸線方向の長さが短くなるように傾斜している。
【0042】
このため、第1のインシュレータ300Aおよび第2のインシュレータ400Aをステータコア200Aに取り付けると、枠体303Aおよび枠体403Aが空間205Aに嵌合し、枠体303Aおよび枠体403Aの先端縁どうしが突き合わされ、空間205Aを構成するステータコア200Aの面を絶縁する。このようにして、第1、第2のインシュレータ300A,400Aは、突極201Aの全周とその周囲を絶縁し、ステータコイル500Aがステータコア200Aに接触しないようにしている。
【0043】
図8〜
図10は、
図7に示す構成において、ステータコア200Aに第1のインシュレータ300Aと第2のインシュレータ400Aを装着し、第1のインシュレータ300Aと第2のインシュレータ400Aで覆われた突極201Aにワイヤを巻回してステータコイル500Aを形成した状態を示すものである。この状態において、ステータコイル500Aは、突極201Aのそれぞれに巻回されている。
【0044】
図7において符号600Aは端子台(端子保持部)である。端子台600Aは、略矩形状をなし、その一側面は、第1のインシュレータ300Aの外周面に沿う円弧状をなしている。端子台600Aの一側の両側面には、レール601Aが形成されている。端子台600Aには、複数の端子ピン603Aが軸線方向に突出して取り付けられている。端子台600Aの他側には、端子ピン603と接続される出力端子(図示略)が取り付けられる凹部604Aが形成されている。一方、第1のインシュレータ300Aの外周縁部には、外側へ突出するガイド305Aが形成されている。
【0045】
5.組み立て手順
上記構成のVR型レゾルバのステータ100Aを組み立てる手順の一例を説明する。まず、珪素鋼板を
図7に示す形状にプレス加工した薄板状のものを複数用意する。そして、それを積層し、ステータコア200Aを得る。次に、
図9に示すように、第1のインシュレータ300Aと第2のインシュレータ400Aとでステータコア200Aを挟んだ状態とする。そして、端子台600Aのレール601Aに第1のインシュレータ300Aのガイド305Aを挿入し、端子台600Aを第1のインシュレータ300Aに接近させる。
【0046】
図10に示すように、端子台600Aを第1のインシュレータ300Aから所定距離離間させた状態(第1の位置)で保持し、ステータコア200Aの突極201Aにワイヤを巻回し、ステータコイル500Aを形成する。また、ステータコイル500Aのリード線501Aを端子ピン603Aに張った状態で絡げ、その絡げた部分を半田または溶接により固定する。次いで、
図8に示すように、端子台600Aを第1のインシュレータ300A側へ移動させ、端子台600Aの円弧状の側面を第1のインシュレータ300Aに当接させる(第2の位置)。これにより、リード線501Aにたるみが生じる。そして、レール601Aとガイド305Aとの境界を溶融し、端子台600Aを固定する。こうして、
図8に示す状態を得る。なお、突極201Aへのワイヤの巻回以降の作業は、巻線装置により自動的に行う。
【0047】
上記構成のVR型レゾルバのステータ100にあっては、前記第1実施形態と同等の作用、効果が得られることは勿論のこと、端子台600Aをステータコア200A側へ近付けることでリード線501Aにたるみを設けるので、端子台600Aの半径方向への突出量を少なくすることができ、VR型レゾルバを小型化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、VR型レゾルバ等のレゾルバに利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
100,100A…VR型レゾルバのステータ、200,200A…ステータコア、201,201A…突極、202,202A…突極先端部、203,203A…突極面、204…孔(穴)、300,300A…第1のインシュレータ、305…ブラケット、306…ピン、305A…ガイド、306…ピン、400,400A…第2のインシュレータ、500,500A…ステータコイル、501,501A…リード線、600,600A…端子台(端子保持部)、601A…レール、603,603A…端子ピン(端子)、605…ブラケット、606…ピン、606…孔、608…ピン。