特許第6009541号(P6009541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009541
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】分離膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/04 20060101AFI20161006BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20161006BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20161006BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20161006BHJP
   C01B 31/02 20060101ALN20161006BHJP
【FI】
   B01D69/04
   B01D69/10
   B01D69/12
   B01D71/02
   !C01B31/02 101Z
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-507480(P2014-507480)
(86)(22)【出願日】2013年2月1日
(86)【国際出願番号】JP2013052423
(87)【国際公開番号】WO2013145857
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-78272(P2012-78272)
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】酒井 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀之
(72)【発明者】
【氏名】市川 明昌
(72)【発明者】
【氏名】木下 直人
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−089000(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118252(WO,A1)
【文献】 特開2009−143762(JP,A)
【文献】 特開2010−188223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
B01J 21/00−38/74
B01J 20/00−20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質のモノリス基材に形成されたセルの表面側に、分離膜の前駆体溶液を塗布して、前記セルの表面側に、前記前駆体溶液からなる分離膜前駆体を形成する製膜工程と、
前記分離膜前駆体を製膜した前記モノリス基材の前記セル内に、熱風を通過させる通風乾燥を行って、前記分離膜前駆体を乾燥させる乾燥工程と、を備え、
前記乾燥工程は、前記モノリス基材の、当該モノリス基材内を通過した前記熱風が排出される流出側の端面の温度を測定する工程を含み、
前記乾燥工程の前記通風乾燥において、測定した前記モノリス基材の温度に基づいて、前記分離膜前駆体を製膜した前記モノリス基材を、前記熱風の通過開始から15分以内に、熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度が7℃/min以上となる昇温速度で、90℃まで昇温させる分離膜の製造方法。
【請求項2】
前記製膜工程と前記乾燥工程とを一組の工程として、前記一組の工程を、2回以上繰り返して行う請求項1に記載の分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程によって乾燥させた前記分離膜前駆体を、熱分解して炭化させることにより分離膜を得る炭化工程を更に備えた請求項1又は2に記載の分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記前駆体溶液が、ポリアミド酸溶液である請求項1〜3のいずれか一項に記載の分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥工程において、前記分離膜前駆体を乾燥させるとともにイミド化させる請求項4に記載の分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記セルの表面側への前記前駆体溶液の塗布開始から、60分以内に、前記分離膜前駆体を製膜した前記モノリス基材を90℃まで昇温させる請求項1〜5のいずれか一項に記載の分離膜の製造方法。
【請求項7】
前記モノリス基材の外周面にシールを施した後、前記製膜工程を行う請求項1〜6のいずれか一項に記載の分離膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離膜の製造方法に関する。更に詳しくは、緻密な分離膜を簡便に製造することが可能な分離膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護や廃材の有効利用といった観点から、バイオマス技術を利用したエタノールの生産が注目を集めている。従来、このようなバイオマス技術によって生産されたエタノールを回収する方法として、ゼオライト膜の選択透過性を利用した方法が知られている。これは、木質系バイオマスから得られた水とエタノールとを含有する液体混合物をゼオライト膜に接触させ、水だけを選択的に透過させることで、エタノールと水とを分離するものである。
【0003】
ところで、木質系バイオマスから得られる液体混合物には、水とエタノールの他に、酢酸等の有機酸も混在しているが、一般にゼオライト膜は耐酸性が低いため、有機酸による分離性能の低下や早期劣化が懸念される。
【0004】
そこで、最近では、従来、主に気体混合物からの特定成分の分離に使用されてきた炭素膜を、水とエタノール等の有機溶剤との分離に利用する研究も行われている。炭素膜はゼオライト膜に比べて耐酸性に優れており、有機酸の存在下においても長期に渡って安定した分離性能を発揮する。こうした目的で用いられる炭素膜の代表的な使用形態として、多孔質のモノリス基材に形成されたセルの表面に炭素膜が配設されたものが知られている。
【0005】
このような分離膜の製造方法として、例えば、以下のような炭素膜の製造方法を挙げることができる。まず、多孔質のモノリス基材に形成された複数のセル内に、分離膜の前駆体溶液を通すことにより、セルの表面に分離膜前駆体を製膜する。分離膜前駆体としては、例えば、ポリアミド酸膜を挙げることができる。次に、モノリス基材を乾燥機内に入れて、分離膜前駆体を乾燥させる。その後、乾燥させた分離膜前駆体を、窒素雰囲気等の還元雰囲気下にて熱分解することにより炭化させ、炭素膜とする(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上述した特許文献のよう分離膜の製造方法では、膜全体の均一な乾燥が困難であり、それが最終的に得られる分離膜の分離性能に悪影響を及ぼしていた。このため、分離膜前駆体の乾燥を、セル内に熱風を通過させる通風乾燥によって行う分離膜の製造方法が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。このような従来の分離膜の製造方法においては、分離膜前駆体を製膜する工程と、その分離膜前駆体を乾燥する工程とを、複数回繰り返して行って、所望の分離性能を有する分離膜が製造される。以下、分離膜前駆体を製膜する工程を、「製膜工程」ということがある。分離膜前駆体を乾燥する工程を、「乾燥工程」ということがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−286018号公報
【特許文献2】国際公開第2008/078442号
【特許文献3】特開2010−89000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の分離膜の製造方法によって緻密な分離膜を製造するためには、製膜工程と乾燥工程との繰り返し回数を多く要するという問題があった。換言すれば、従来の分離膜の製造方法においては、製膜工程と乾燥工程との繰り返し回数が少ないと、所望の分離性能を有する緻密な分離膜を得ることができないという問題があった。このように、従来の分離膜の製造方法は、製膜工程と乾燥工程との回数を多く要するため、製造工程が煩雑となり、より簡便な方法によって、緻密な分離膜を得ることが可能な製造方法の開発が要望されていた。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、緻密な分離膜を簡便に製造することが可能な、分離膜の製造方法を提供する。より具体的には、本発明は、製膜工程と乾燥工程とを繰り返す回数が少なくても、緻密な分離膜を製造することが可能な、分離膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下の分離膜の製造方法が提供される。
【0011】
[1] 多孔質のモノリス基材に形成されたセルの表面側に、分離膜の前駆体溶液を塗布して、前記セルの表面側に、前記前駆体溶液からなる分離膜前駆体を形成する製膜工程と、前記分離膜前駆体を製膜した前記モノリス基材の前記セル内に、熱風を通過させる通風乾燥を行って、前記分離膜前駆体を乾燥させる乾燥工程と、を備え、前記乾燥工程は、前記モノリス基材の、当該モノリス基材内を通過した前記熱風が排出される流出側の端面の温度を測定する工程を含み、前記乾燥工程の前記通風乾燥において、測定した前記モノリス基材の温度に基づいて、前記分離膜前駆体を製膜した前記モノリス基材を、前記熱風の通過開始から15分以内に、熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度が7℃/min以上となる昇温速度で、90℃まで昇温させる分離膜の製造方法。
【0012】
[2] 前記製膜工程と前記乾燥工程とを一組の工程として、前記一組の工程を、2回以上繰り返して行う前記[1]に記載の分離膜の製造方法。
【0013】
[3] 前記乾燥工程によって乾燥させた前記分離膜前駆体を、熱分解して炭化させることにより分離膜を得る炭化工程を更に備えた前記[1]又は[2]に記載の分離膜の製造方法。
【0014】
[4] 前記前駆体溶液が、ポリアミド酸溶液である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の分離膜の製造方法。
【0015】
[5] 前記乾燥工程において、前記分離膜前駆体を乾燥させるとともにイミド化させる前記[4]に記載の分離膜の製造方法。
【0016】
[6] 前記セルの表面側への前記前駆体溶液の塗布開始から、60分以内に、前記分離膜前駆体を製膜した前記モノリス基材を90℃まで昇温させる前記[1]〜[5]のいずれかに記載の分離膜の製造方法。
【0017】
[7] 前記モノリス基材の外周面にシールを施した後、前記製膜工程を行う前記[1]〜[6]のいずれかに記載の分離膜の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の分離膜の製造方法によれば、緻密な分離膜を簡便に製造することができる。より具体的には、本発明の分離膜の製造方法においては、乾燥工程の通風乾燥が以下のように行われる。即ち、分離膜前駆体を製膜したモノリス基材を、熱風の通過開始から15分以内に、熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度が7℃/min以上となる昇温速度で、90℃まで昇温させる。このように構成することにより、緻密な分離膜を簡便に得ることができる。例えば、従来の分離膜の製造方法においては、分離膜前駆体の製膜と乾燥とを、多くの回数繰り返して行わなければ、緻密な分離膜を得ることは困難であった。本発明の分離膜の製造方法によれば、従来の分離膜の製造方法に比して、上記製膜と乾燥とを繰り返す回数を少なくしても、緻密な分離膜を得ることができる。また、上述した製膜と乾燥とを繰り返す回数を少なくすることができるため、得られる分離膜の分離性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の分離膜の製造方法の一の実施形態に用いられるモノリス基材を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の分離膜の製造方法の一の実施形態における製膜工程の一例を示す説明図である。
図3】製膜工程によって得られた、分離膜前駆体が製膜されたモノリス基材を模式的に示す斜視図である。
図4】本発明の分離膜の製造方法の一の実施形態における乾燥工程の一例を示す説明図である。
図5】実施例1〜3、比較例1及び2の分離膜の製造方法における乾燥工程の加熱時間と、表面温度とを示すグラフである。
図6】実施例において、水/エタノール分離性能の評価に使用した浸透気化装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0021】
(1)分離膜の製造方法:
本発明の分離膜の製造方法の一の実施形態は、製膜工程と、乾燥工程と、を備えた分離膜の製造方法である。本実施形態の分離膜の製造方法は、図1に示すようなモノリス基材1のセル2の表面に、分離膜を形成する分離膜の製造方法である。図1は、本発明の分離膜の製造方法の一の実施形態に用いられるモノリス基材を模式的に示す斜視図である。
【0022】
本実施形態の分離膜の製造方法における製膜工程は、多孔質のモノリス基材に形成されたセルの表面側に、分離膜の前駆体溶液を塗布して、そのセルの表面側に、前駆体溶液からなる分離膜前駆体を形成する工程である。また、本実施形態の分離膜の製造方法における乾燥工程は、分離膜前駆体を製膜したモノリス基材のセル内に、熱風を通過させる通風乾燥を行って、分離膜前駆体を乾燥させる工程である。
【0023】
本実施形態の分離膜の製造方法においては、上記乾燥工程の通風乾燥が以下のように行われる。即ち、分離膜前駆体を製膜したモノリス基材を、熱風の通過開始から15分以内に、熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度が7℃/min以上となる昇温速度で、90℃まで昇温させる。このように構成することによって、緻密な分離膜を簡便に得ることができる。例えば、従来の分離膜の製造方法においては、分離膜前駆体の製膜と乾燥とを、多くの回数繰り返して行わなければ、緻密な分離膜を得ることは困難であった。なお、従来の分離膜の製造方法においては、分離膜前駆体を乾燥する際の熱風の温度と風速のみによって乾燥状態を管理しており、分離膜前駆体を製膜したモノリス基材の温度については、全く考慮されていなかった。今回、種々の検討を重ねたところ、通風乾燥を行うことによって製造される分離膜については、単に熱風の温度及び風速のみを制御したのでは、緻密な分離膜を再現性よく得ることは極めて困難であるという知見を得た。そして、上述した通風乾燥による乾燥工程においては、分離膜前駆体を製膜したモノリス基材の昇温速度及び昇温時間が、得られる分離膜の緻密性に大きな影響を与えていることが判明した。特に、通風乾燥時における、モノリス基材の90℃に到達するまでの平均昇温速度を、上記のように特定することにより、緻密な分離膜を良好に得ることができる。
【0024】
本実施形態の分離膜の製造方法においては、従来の分離膜の製造方法に比して、上記製膜と乾燥とを繰り返す回数を少なくしても、緻密な分離膜を得ることができる。即ち、本実施形態の分離膜の製造方法においては、分離膜前駆体のモノリス基材への浸透を抑制することで、分離膜前駆体の厚さを維持したまま、通風乾燥を行うことができる。このため、分離膜前駆体を形成するための前駆体溶液のロスを少なくすることができる。また、1回の製膜工程から作製される分離膜の厚さが厚くなるため、製膜と乾燥とを繰り返す回数を少なくしても、緻密な分離膜が得られる。
【0025】
本実施形態の分離膜の製造方法によって、緻密な分離膜を製造することができる理由の1つとして、乾燥工程時において、モノリス基材への分離膜前駆体の浸透が抑制されることが考えられる。即ち、分離膜を製造する際には、上述したように、多孔質のモノリス基材に形成されたセルの表面側に前駆体溶液を塗布して分離膜前駆体を製膜し、得られた分離膜前駆体を乾燥させることによって、分離膜前駆体をセルの表面側に定着させる。但し、モノリス基材は多孔質であるため、分離膜前駆体の乾燥が完了するまでの間、徐々に、分離膜前駆体(別言すれば、分離膜前駆体の製膜に用いた前駆体溶液)が、セルの表面から多孔質の気孔内へと浸透することがある。そのため、分離膜前駆体(別言すれば、前駆体溶液)の、多孔質の気孔内への浸透を抑制することにより、得られる分離膜が緻密なものとなる。そして、乾燥工程における、分離膜前駆体の、多孔質の気孔内への浸透が抑制されるため、製膜工程及び乾燥工程の必要回数を減少させることができる。
【0026】
本明細書において、「緻密な分離膜」とは、その分離膜に要求される分離性能が十分に発現する厚さを有する分離膜のことを意味する。即ち、分離膜を用いて、複数の成分が混在した被分離対象から、特定の成分を分離する際に、上記特定の成分が分離膜を透過し、且つ、上記特定の成分以外の成分が分離膜を透過しないような膜のことを、緻密な分離膜という。
【0027】
本実施形態の分離膜の製造方法においては、上述した製膜工程と乾燥工程とを一組の工程として、この一組の工程を、2回以上繰り返して行ってもよい。例えば、まず、多孔質のモノリス基材に形成されたセルの表面側に、分離膜の前駆体溶液を塗布して、セルの表面側に、前駆体溶液からなる分離膜前駆体を形成する。次に、製膜した分離膜前駆体を、通風乾燥により乾燥させる。そして、乾燥した分離膜前駆体がセルの表面に配設されたモノリス基材を用いて、上記と同様の方法で、セルの表面側に、前駆体溶液を再度塗布して、前駆体溶液からなる分離膜前駆体を更に形成する。2回目の製膜工程においては、乾燥した分離膜前駆体の表面に、前駆体溶液が塗布され、分離膜前駆体が2層積層された状態となる。その後、2層積層された分離膜前駆体を、通風乾燥により再度乾燥させる。製膜工程と乾燥工程とを一組の工程として、この一組の工程を、3回以上繰り返して行う場合には、2回目の乾燥工程が終了したモノリス基材を用いて、3回目の製膜工程と3回目の乾燥工程とを行う。
【0028】
以下、本実施形態の分離膜の製造方法について、工程毎に更に具体的に説明する。
【0029】
(1−1)製膜工程:
本実施形態の分離膜の製造方法においては、まず、図2に示すように、多孔質のモノリス基材1に形成されたセル2の表面側に、分離膜の前駆体溶液31を塗布して、セル2の表面側に、前駆体溶液31からなる分離膜前駆体を形成する。図2は、本発明の分離膜の製造方法の一の実施形態における製膜工程の一例を示す説明図である。
【0030】
図2においては、長手方向の両端が開口した管状の製膜容器32内に、モノリス基材1を収容し、モノリス基材1の第二の端面12側から、前駆体溶液31をセル2内に流入させることによって、製膜工程を行う場合の例を示す。製膜容器32内にモノリス基材1を収容する際には、モノリス基材1の第一の端面11及び第二の端面12において、パッキン等の環状のシール材33を用いて製膜容器32内部で気密に固定することが好ましい。このような製膜工程を、ディップ製膜法を用いた製膜工程ということがある。図2においては、モノリス基材1の第二の端面12側から、前駆体溶液31をセル2内に流入させる場合の例を示しているが、モノリス基材1の第一の端面11から、前駆体溶液31を流入させてもよい。また、本実施形態の分離膜の製造方法における製膜工程は、図2に示すような、ディップ製膜法を用いた製膜工程に限定されることはない。即ち、前駆体溶液をセルの表面側に塗布して、その前駆体溶液からなる分離膜前駆体を形成することが可能な工程であれば、従来公知の分離膜の製造方法における製膜工程を好適に用いることができる。例えば、その他の製膜工程としては、かけ流し法等を用いた製膜工程を挙げることができる。
【0031】
ディップ製膜法を用いた製膜工程においては、例えば、送液ポンプを使用し、前駆体溶液を、モノリス基材の第二の端面から、0.3〜300cm/min程度の速度で、モノリス基材の各セル内に送入することが更に好ましい。
【0032】
また、本実施形態の分離膜の製造方法の製膜工程においては、図2に示すように、モノリス基材1の第一の端面11が第二の端面12の上方となるように、モノリス基材1を製膜容器32内に配置した状態で行うことが好ましい。この製膜工程においては、モノリス基材1のセル2の延びる方向と、鉛直方向とのなす角度が−10°〜10°の範囲にある状態で行われることが更に好ましい。更に、製膜工程においては、モノリス基材1のセル2の延びる方向と鉛直方向とのなす角度が0°に近いほどより好ましい。このような方法により、図3に示すような、モノリス基材1のセル2の表面に、前駆体溶液からなる分離膜前駆体3が製膜されたモノリス基材1が得られる。図3は、製膜工程によって得られた、分離膜前駆体が製膜されたモノリス基材を模式的に示す斜視図である。
【0033】
製膜工程に使用する分離膜の前駆体溶液としては、ポリイミド溶液を用いることが好ましい。ポリイミド溶液は、ポリイミド樹脂を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の適当な有機溶媒に溶解させたものである。ポリイミド溶液中のポリイミドの濃度は、特に制限はないが、前駆体溶液を製膜しやすい粘度とする観点から、1〜15質量%とすることが好ましい。
【0034】
製膜工程に使用する分離膜の前駆体溶液としては、従来、分離膜(炭素膜)の製造に広く使用されているポリアミド酸溶液を用いるのが最も好ましい。ポリアミド酸溶液は、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等の適当な有機溶媒に溶解させたものである。ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸の濃度は、特に制限はないが、溶液を製膜しやすい粘度とする観点から、1〜20質量%とすることが好ましい。ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸の濃度は3〜15質量%であることが更に好ましく、5〜10質量%であることが特に好ましい。
【0035】
本発明における「モノリス基材」とは、第一の端面及び第二の端面を有する柱状の基材に、流体の流路となる、第一の端面から第二の端面まで延びる複数のセルが形成された、レンコン状或いはハニカム状の基材のことを意味する。以下、モノリス基材の第一の端面及び第二の端面を総称して、単に「端面」ということがある。モノリス基材の材質としては、強度や化学的安定性の観点から、アルミナ、シリカ、コージェライト、ムライト、チタニア、ジルコニア、炭化珪素等のセラミックス材料等を好適例として挙げることができる。モノリス基材の気孔率は、多孔質基材の強度と透過性の観点から、25〜55%とすることが好ましい。また、多孔質基材の平均細孔径は、0.005〜5μmとすることが好ましい。多孔質基材の気孔率及び平均細孔径は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0036】
モノリス基材の形状については、例えば、セルの延びる方向に垂直な断面の形状が円形、楕円形、又は多角形の筒形状であることが好ましい。モノリス基材の全体外径は10〜300mmであることが好ましく、20〜250mmであることが更に好ましく、30〜200mmであることが特に好ましい。モノリス基材の全体外径が10mm未満であると、モノリス基材に形成できるセルの数が少なくなることがある。また、モノリス基材の全体外径が300mmを超えると、モノリス基材が大きくなりすぎて、分離膜の製造が困難になることがある。本明細書において、「モノリス基材の全体外径」とは、モノリス基材のセルの延びる方向に垂直な断面の形状が円である場合には、当該断面(即ち、円)の直径のことを意味する。また、「モノリス基材の全体外径」とは、モノリス基材のセルの延びる方向に垂直な断面の形状が円でない場合には、当該断面と断面積が同じ大きさの円の直径のことを意味する。
【0037】
モノリス基材のセルの延びる方向の長さは、30〜2000mmであることが好ましく、100〜1700mmであることが更に好ましく、200〜1500mmであることが特に好ましい。モノリス基材のセルの延びる方向の長さが30mm未満では、分離膜の膜面積が小さくなることがある。モノリス基材のセルの延びる方向の長さが2000mmを超えると、モノリス基材の製造及び取り扱いが困難になることがある。また、体積当たりの膜面積と強度を考慮して、モノリス基材に形成されるセルの数は、1〜10000個であることが好ましく、10〜5000個であることが更に好ましく、30〜2000個であることが特に好ましい。セルの数が10000個を超えると、モノリス基材の製造及び取り扱いが困難になることがある。
【0038】
また、製膜工程においては、モノリス基材の外周面に、シールテープ等を用いてシールを施してから製膜を行うことが好ましい。このように構成することによって、前駆体溶液をセル内に通した際に、セルの表面以外に前駆体溶液が付着するのを防止することができる。
【0039】
(1−2)乾燥工程:
本実施形態の分離膜の製造方法においては、上記製膜工程の後、製膜された分離膜前駆体を乾燥する乾燥工程を行う。具体的には、図4に示すように、分離膜前駆体3を製膜したモノリス基材1のセル2内に、熱風15を通過させる通風乾燥を行って、分離膜前駆体3を乾燥させる。分離膜前駆体3の乾燥を、通風乾燥によって行うことにより、分離膜前駆体3の表面から、分離膜前駆体3全体に均一な熱伝達をもたらしつつ、この分離膜前駆体3を良好に乾燥させることができる。このため、分離膜前駆体3全体をムラ無く均一に乾燥させることができる。ここで、図4は、本発明の分離膜の製造方法の一の実施形態における乾燥工程の一例を示す説明図である。
【0040】
本実施形態の分離膜の製造方法においては、乾燥工程の通風乾燥において、分離膜前駆体を製膜したモノリス基材を、熱風の通過開始から15分以内に、熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度が7℃/min以上となる昇温速度で、90℃まで昇温させる。以下、「熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度」のことを、単に、モノリス基材の「平均昇温速度」ということがある。なお、モノリス基材の平均昇温速度が、7℃/min未満であると、モノリス基材の昇温が速やかに行われず、得られる分離膜の緻密性が低下してしまう。また、モノリス基材の温度が90℃に到達するまでの時間が、15分を超えた場合にも、得られる分離膜の緻密性が低下してしまう。
【0041】
通風乾燥における、熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度が7〜100℃/minであることが好ましい。モノリス基材の平均昇温速度が過剰に速い場合には、通風乾燥時に、分離膜前駆体を構成する原料の分子構造が分解されてしまうことがある。例えば、平均昇温速度が、100℃/min以下であれば、分離膜前駆体を構成する原料の分子構造の分解が起こり難い。40℃/min以下であれば、更に好ましい。
【0042】
本実施形態の分離膜の製造方法において、「モノリス基材の平均昇温速度」とは、熱風の通過開始から90℃に到達するまでにおいて、その温度が最も上昇し難い部位において計測された昇温速度の平均値ことをいう。モノリス基材の平均昇温速度を測定する方法としては、例えば、まず、通風乾燥時において、モノリス基材の温度が最も上昇し難い部位に熱電対を固定する。このモノリス基材に熱風を通過させる通風乾燥を行って、上記熱電対にて温度を測定する。モノリス基材が90℃に到達するまでの時間から、上記「モノリス基材の平均昇温速度」を求めることができる。なお、モノリス基材の温度が最も上昇し難い部位としては、例えば、通風乾燥において、モノリス基材内を通過した熱風が排出される「モノリス基材の流出側の端面」を挙げることができる。例えば、モノリス基材の第二の端面から熱風を流入させて、当該モノリス基材の第一の端面から熱風が排出される場合には、モノリス基材の第一の端面が「モノリス基材の流出側の端面」となる。モノリス基材の平均昇温速度を測定する際には、上記「モノリス基材の流出側の端面」に熱電対を固定して温度を測定することが好ましい。また、モノリス基材の外側表面の上記流出側の端面近傍も、温度が最も上昇し難い部位として挙げることができる。例えば、図4における符号16にて示す「×印」を、モノリス基材の平均昇温速度の測定箇所として挙げることができる。
【0043】
なお、このようなモノリス基材の平均昇温速度の測定においては、熱風の通過開始直後は、ある程度の速度で昇温が行われるが、モノリス基材の内部が前駆体溶液で湿っているため、気化熱により昇温が鈍ることとなる。その後、継続的に通風乾燥を行っていると、前駆体溶液が蒸発して、昇温速度が増加(加速)する。このように、昇温速度が加速する温度が、約90℃である。このため、熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度を求めることにより、通風乾燥における乾燥状態を特定することができる。
【0044】
図4に示す乾燥工程においては、モノリス基材1の第二の端面12側にドライヤー14を配置し、このドライヤー14から、モノリス基材1の第二の端面12に向けて熱風15を送風して通風乾燥を行う場合の例を示す。上述したように熱風15を送風することにより、モノリス基材1の第二の端面12に開口したセル2の開口端より、所定温度に加熱された熱風15が送り込まれる。そして、モノリス基材1の第一の端面11側に開口したセル2の開口端より、セル2内を流通した熱風15が排気される。このようにしてセル2に熱風15(通風気体)を通すことにより、セル2の表面に製膜された分離膜前駆体3が乾燥する。このような通風乾燥においては、ポリアミド酸膜等の分離膜前駆体3の全体が熱風15によって均一に加熱され、乾燥やイミド化が分離膜前駆体3の表面から均一に進行する。図4に示すような乾燥工程においては、ドライヤー14の送風口の口径と、モノリス基材1の第二の端面12の大きさとが、同じであることが好ましい。そして、ドライヤー14の送風口の位置と、モノリス基材1の第二の端面12の位置とが一致するように、モノリス基材1を配置して、そのモノリス基材1の第二の端面12に向けて、ドライヤー14から熱風15を送風することが好ましい。
【0045】
通風乾燥において、セル内を通過させる熱風(即ち、通風気体)の温度は、以下に示すような温度とする。即ち、分離膜前駆体を製膜したモノリス基材が、熱風の通過開始から15分以内に、熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度が7℃/min以上となる昇温速度で、90℃まで昇温されるような温度とする。具体的な熱風の温度については、モノリス基材の熱容量、及び熱風の風速等を考慮して適宜設定することが好ましい。但し、熱風の温度が低すぎると、7℃/min以上の平均昇温速度の実現が困難になることがある。また、熱風の温度が高すぎると、分離膜前駆体を構成する原料の分子構造が分解されてしまうことがある。なお、本実施形態の分離膜の製造方法においては、これまでに説明した「平均昇温速度が7℃/min以上となる昇温速度」を実現することができれば、熱風の温度については特に制限はないが、例えば、熱風の温度が、80℃〜180℃の範囲であることが好ましい。
【0046】
また、熱風の風速については、モノリス基材の熱容量、及び熱風の温度等を考慮して適宜設定することが好ましい。このように、本実施形態の分離膜の製造方法においては、これまでに説明した「平均昇温速度が7℃/min以上となる昇温速度」を実現することができれば、熱風の風速については特に制限はない。例えば、熱風の風速が、4〜12m/sの範囲であることが好ましい。
【0047】
また、本実施形態の分離膜の製造方法においては、セルの表面側への前駆体溶液の塗布開始から、60分以内に、分離膜前駆体を製膜したモノリス基材を90℃まで昇温させることが好ましい。即ち、製膜工程における前駆体溶液の塗布開始から、乾燥工程の通風乾燥において、モノリス基材を90℃まで昇温させるまでに要する時間が、60分以内であることが好ましい。上述した「モノリス基材を90℃まで昇温させるまでに要する時間」には、製膜工程終了後、乾燥工程を開始するまでの時間も含まれる。このように構成することによって、モノリス基材への前駆体溶液の浸透をより抑制することができる。特に、1回目の製膜工程においては、モノリス基材に形成されたセルの表面に、前駆体溶液が直接塗布されるため、モノリス基材への浸透を抑制する効果が極めて大きくなる。
【0048】
製膜工程が終了した時点から、乾燥工程を開始するまでの時間は、可能な限り短いことが好ましい。即ち、製膜工程と乾燥工程との間には、分離膜前駆体が形成されたモノリス基材を一時的に待機させるようなロスタイムを、極力設けないことが好ましい。
【0049】
前駆体溶液が、ポリアミド酸溶液である場合には、この乾燥工程において、分離膜前駆体を乾燥させるとともにイミド化させることが好ましい。分離膜前駆体をイミド化させる場合には、モノリス基材を90℃まで昇温させた後、更に温度を上昇させて、分離膜前駆体をイミド化することが好ましい。
【0050】
また、モノリス基材1の全体外径が100〜200mm、セルの延びる方向の長さが200〜2000mmと大口径長尺である場合には、分離膜前駆体をイミド化させる際に、熱膨張によりモノリス基材にクラックが生じることもある。このため、上述したイミド化は、通風乾燥で行わず、昇温速度を制御可能なイミド化乾燥手段(イミド化炉)を使用してもよい。
【0051】
上述したように、1回の製膜工程及び乾燥工程によって、乾燥後の分離膜前駆体の膜厚が、所望の厚さにならない場合には、所望の膜厚が得られるまで、製膜工程と乾燥工程とを、複数回(例えば、3〜5回)繰り返して行ってもよい。本実施形態の分離膜の製造方法においては、製膜工程と乾燥工程とを繰り返して行う場合において、その繰り返し回数を、従来の製造方法に比して、少なくすることができる。乾燥後の分離膜前駆体の膜厚については、最終的に得られる分離膜の膜厚を考慮して適宜決定される。
【0052】
(1−3)炭化工程:
本実施形態の分離膜の製造方法は、乾燥工程によって乾燥させた分離膜前駆体を、熱分解して炭化させることにより分離膜を得る炭化工程を更に備えたものであってもよい。この炭化工程は、製造する分離膜が、炭素膜である場合に行われる工程である。
【0053】
例えば、前駆体溶液がポリアミド酸溶液である場合には、製膜工程、及び乾燥工程を経て得られた分離膜前駆体をイミド化させて、ポリイミド膜を得、得られたポリイミド膜を、熱分解して炭化させることにより分離膜(炭素膜)を得ることができる。
【0054】
製膜工程と乾燥工程とが複数回繰り返して行われる場合には、必要な回数の製膜工程と乾燥工程とが全て終了し、所望の膜厚の分離膜前駆体が得られた後に、炭化工程を行うことが好ましい。
【0055】
炭化工程を行う際には、真空下、又は、窒素雰囲気やアルゴン雰囲気等の還元雰囲気下にて行うことが好ましい。炭化工程を行う際の温度は、400〜1000℃であることが好ましい。このような温度範囲で、乾燥させた分離膜前駆体(より具体的には、ポリイミド膜)を、熱分解して炭化させることにより分離膜を得ることができる。例えば、400℃未満の温度で炭化を行うと、ポリイミド膜が十分に炭化されず、分子ふるい膜としての選択性や透過速度が低下することがある。一方、1000℃を超える温度で炭化を行うと、分離膜の細孔径が収縮することにより透過速度が減少することがある。
【0056】
最終的に得られる分離膜の膜厚は、0.1〜10μmとすることが好ましく、0.1〜3μmとするとより好ましい。分離膜の膜厚が0.1μm未満では膜厚が不十分で、十分な選択性を得ることが難しくなる場合があり、10μmを超えると膜厚が厚すぎて、透過流速が小さくなりすぎる場合がある。
【0057】
本実施形態の分離膜の製造方法によって製造される分離膜の用途については、特に制限はない。例えば、本実施形態の分離膜の製造方法によって製造される分離膜は、水とエタノールとの分離に使用すると高い分離性能が得られる。このような分離膜は、バイオマスから得られる水とエタノールとを含有する液体混合物からエタノールを回収する際の分離膜として好適に用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
まず、分離膜を製造するための基材となる、多孔質のモノリス基材を用意した。モノリス基材の材質は、アルミナとした。モノリス基材の形状は、第一の端面及び第二の端面を有する円筒状であり、このモノリス基材の第一の端面及び第二の端面の直径が30mmで、セルの延びる方向の長さが160mmであった。このモノリス基材には、第一の端面から第二の端面に延びるセルが、55個形成されている。セルの開口部の形状は、円形とした。1個のセルの開口部の面積は、5mmであった。
【0060】
製膜工程を行う前に、上記モノリス基材の外周面にシールテープを巻いて、モノリス基材のセルの表面以外に前駆体溶液が付着するのを防止した。
【0061】
このようなモノリス基材を、セルの延びる方向が鉛直方向となるように設置し、送液ポンプを使用して、前駆体溶液を各セル内に送入した(製膜工程)。前駆体溶液としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒とするポリアミド酸濃度10質量%のポリアミド酸溶液(宇部興産株式会社のU−ワニス−A(商品名))を用いた。前駆体溶液を送入する際には、それぞれのセルの一方の開口端から、1cm/minの速度で前駆体溶液を送入した。このような製膜工程により、モノリス基材のセル内に、分離膜前駆体としてのポリアミド酸膜を製膜した。
【0062】
次に、ポリアミド酸膜を製膜したモノリス基材のセル内に、熱風を通過させる通風乾燥を行って、ポリアミド酸膜を乾燥させた(乾燥工程)。実施例1においては、この通風乾燥において、熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度が25℃/minとなるように、熱風を送風した。熱風の温度は120℃とした。また、熱風の風速は5m/sとした。モノリス基材が90℃に到達するまでの時間は、4分であった。通風乾燥は、モノリス基材が90℃に到達した後も継続して行った。このような乾燥工程を行って、ポリアミド酸膜の乾燥とイミド化を行った。
【0063】
図5は、実施例1〜3、比較例1及び2の分離膜の製造方法における乾燥工程の加熱時間と、表面温度とを示すグラフである。図5においては、横軸が、加熱時間(min)を示し、縦軸が、表面温度(℃)を示す。なお、図5における、「表面温度(℃)」とは、モノリス基材の外側表面の、熱風が流出する側の端面近傍の温度のことである。
【0064】
実施例1の分離膜の製造方法においては、以上の製膜工程と乾燥工程とを、3回繰り返した。その後、モノリス基材を真空のボックス炉にて、800℃で熱処理し、乾燥工程におけるイミド化により得られたポリイミド膜を炭化して分離膜(炭素膜)を得た。こうしてセル内表面に分離膜が形成されたモノリス基材の第一の端面及び第二の端面のそれぞれをシリコーンにてシールした。
【0065】
表1に、モノリス基材の直径(mm)及び長さ(mm)を示す。また、通風乾燥における、モノリス基材の平均昇温速度(℃/min)、熱風の温度(℃)、熱風の風速(m/s)を表1に示す。また、モノリス基材が90℃に到達する時間を、表1の「90℃到達時間(分)」の欄に示す。また、表1における「製膜回数」は、各実施例及び比較例において行われた製膜工程の回数のことである。別言すれば、表1における「製膜回数」は、各実施例及び比較例において、製膜工程と乾燥工程とを繰り返して行った回数のことである。
【0066】
【表1】
【0067】
また、実施例1にて得られた分離膜の分離性能の評価として、以下の方法で、浸透気化試験を行った。
【0068】
〔浸透気化試験〕
浸透気化試験は、図6に示すような浸透気化装置を使用して行った。図6は、実施例において、水/エタノール分離性能の評価に使用した浸透気化装置の概略図である。図6に示すように、分離膜が形成されたモノリス基材100を筒状の容器55内に収納し、モノリス基材100の両端外周部において、容器55内周面との隙間をシール材56によりシールした。恒温槽57に収容されたビーカー58内で所定温度に温められた供給液59を、循環ポンプ60により循環ライン71〜73に循環させ、循環ライン71〜73の途中に配された容器55内のモノリス基材100のセル内を通過させた。
【0069】
このようにして、モノリス基材100のセルの表面に形成された分離膜に供給液59を接触させながら、透過側であるモノリス基材100の外側を、真空ポンプ64により、浸透気化ライン75、76を通じて、真空引きした。真空制御機70により二次側圧力を減圧調整し、分離膜を透過した透過蒸気を、浸透気化ライン75、76上の液体窒素77に浸された冷却トラップ78により透過液として捕捉した。
【0070】
なお、図6中、符号90は供給液59を撹拌するための撹拌子、符号91はビーカー58上部に取り付けた冷却管である。供給液59には、水/エタノール比(質量比)が10/90である水/エタノール混合液を用い、当該供給液の温度を70℃として、分離膜の水/エタノール分離性能を評価した。この分離性能の評価には、エタノール透過流速(kg/mh)及び水透過流速(kg/mh)を用いた。エタノール透過流速(kg/mh)及び水透過流速(kg/mh)の値を表1に示す。
【0071】
(実施例2及び3)
実施例2及び3においては、モノリス基材として、表1に示すような直径及び長さのモノリス基材を用いて分離膜の製造を行った。実施例2においては、乾燥工程の通風乾燥において、熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度が7℃/minとなるように、熱風を送風した。また、実施例3においては、乾燥工程の通風乾燥において、熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度が10℃/minとなるように、熱風を送風した。平均昇温速度(℃/min)、及び熱風の風速(m/s)を表1に示す。実施例3に使用したモノリス基材の形状は、第一の端面及び第二の端面を有する円筒状であり、このモノリス基材の第一の端面及び第二の端面の直径が180mmで、セルの延びる方向の長さが1000mmであった。このモノリス基材には、第一の端面から第二の端面に延びるセルが、1600個形成されている。セルの開口部の形状は、円形とした。1個のセルの開口部の面積は、5mmであった。
【0072】
表1に、実施例2及び3の分離膜の製造方法において用いたモノリス基材の直径(mm)及び長さ(mm)を示す。また、通風乾燥における、モノリス基材の平均昇温速度(℃/min)、熱風の温度(℃)、熱風の風速(m/s)を表1に示す。また、モノリス基材が90℃に到達する時間を、表1の「90℃到達時間(分)」の欄に示す。
【0073】
また、実施例2及び3の分離膜の製造方法にて得られた分離膜について、実施例1と同様の方法で、エタノール透過流速(kg/mh)と、水透過流速(kg/mh)とを測定した。測定結果を表1に示す。
【0074】
(比較例1〜5)
比較例1〜5においては、モノリス基材として、表1に示すような直径及び長さのモノリス基材を用いて分離膜の製造を行った。比較例1及び3においては、製膜工程と乾燥工程とを5回繰り返して分離膜を製造した。比較例2においては、製膜工程と乾燥工程とを4回繰り返して分離膜を製造した。比較例4及び5においては、製膜工程と乾燥工程とを3回繰り返して分離膜を製造した。また、比較例1〜5においては、乾燥工程の通風乾燥において、熱風の通過開始から90℃に到達するまでの平均昇温速度が表1に示すような値となるように、熱風を送風した。
【0075】
表1に、比較例1〜の分離膜の製造方法において用いたモノリス基材の直径(mm)及び長さ(mm)を示す。また、通風乾燥における、モノリス基材の平均昇温速度(℃/min)、熱風の温度(℃)、熱風の風速(m/s)を表1に示す。また、モノリス基材が90℃に到達する時間を、表1の「90℃到達時間(分)」の欄に示す。
【0076】
また、比較例1〜5の分離膜の製造方法にて得られた分離膜について、実施例1と同様の方法で、エタノール透過流速(kg/mh)と、水透過流速(kg/mh)とを測定した。測定結果を表1に示す。
【0077】
(結果)
表1に示すように、実施例1〜3の分離膜の製造方法においては、製膜回数が3回であっても、分離性能が良好な分離膜を得ることができた。一方、実施例1〜3と製膜回数が同じ回数の比較例4及び5の分離膜の製造方法においては、分離性能の悪い分離膜しか得ることができなかった。即ち、本発明の分離膜の製造方法においては、従来の分離膜の製造方法に比して、製膜回数の削減が可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、バイオマス分野における水とエタノールとの分離のような各種混合物の分離に用いられる分離膜の製造に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1:モノリス基材、2:セル、3:分離膜前駆体、11:第一の端面、12:第二の端面、14:ドライヤー、15:熱風、16:モノリス基材の平均昇温速度の測定箇所、31:前駆体溶液、32:製膜容器、33:シール材、55:容器、56:シール材、57:恒温槽、58:ビーカー、59:供給液、60:循環ポンプ、64:真空ポンプ、70:真空制御機、71,72,73:循環ライン、75,76:浸透気化ライン、77:液体窒素、78:冷却トラップ、90:撹拌子、91:冷却管、100:モノリス基材(分離膜が形成されたモノリス基材)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6