特許第6009626号(P6009626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6009626
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】車両構造およびアスファルト施工方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 53/00 20060101AFI20161006BHJP
   E01C 19/08 20060101ALI20161006BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   B62D53/00 H
   E01C19/08
   B60P3/00 K
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-137499(P2015-137499)
(22)【出願日】2015年7月9日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】515188372
【氏名又は名称】有限会社あおい運輸
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 克実
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−055968(JP,U)
【文献】 特開2006−341718(JP,A)
【文献】 実開昭63−087136(JP,U)
【文献】 実開昭58−102303(JP,U)
【文献】 特開2013−014237(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3156146(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 53/00
B60P 3/00
E01C 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクターとダンプトレーラーを連結部にて相対回転可能に連結した車両と、
前記ダンプトレーラーに連結され、前記ダンプトレーラーを後ろから押して前進させるアスファルトフィニッシャーとを含み、
前記アスファルトフィニッシャーによって前記ダンプトレーラーを押す際の前記トラクターとダンプトレーラーの相対回転の防止および前記相対回転の防止状態の解除が可能な回転防止部を前記車両に設けたことを特徴とする車両構造
【請求項2】
前記回転防止部は、ピンと前記ピンを挿入可能な挿入部を含むことを特徴とする請求項1記載の車両構造
【請求項3】
前記回転防止部は、電気磁石と、前記電気磁石に磁着可能な電気磁石を含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両構造
【請求項4】
鉛直面内における前記ダンプトレーラーの荷台の左右方向の傾斜を計測するためのセンサと、
鉛直面内における前記車両の車軸の傾斜を計測するためのセンサと、
設けられ、
コンピュータによって前記荷台の傾斜と前記車軸の傾斜を比較し、傾斜の差を算出することを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の車両構造
【請求項5】
前記荷台は、前部を跳ね上げて傾斜させることが可能であり、
前記荷台のセンサは、前記荷台の前部に設けられることを特徴とする請求項記載の車両構造
【請求項6】
前記ダンプトレーラーの荷台に、障害物を感知するための感知装置を設けたことを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の車両構造
【請求項7】
前記感知装置は、少なくともレーダーまたはカメラのいずれかを含むことを特徴とする請求項記載の車両構造
【請求項8】
前記荷台は、前部を跳ね上げて傾斜させることが可能であり、
前記感知装置は、前記荷台の前部に設けられることを特徴とする請求項または請求項記載の車両構造
【請求項9】
前記ダンプトレーラーの荷台に、前記荷台に振動を与えるための振動発生装置を設けたことを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の車両構造
【請求項10】
前記アスファルトフィニッシャーの操作員から前記トラクターの運転者に与える指示を表示するための表示部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の車両構造
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の車両構造を用いたアスファルト施工方法であって、
前記回転防止部によって前記トラクターとダンプトレーラーの相対回転を防止した状態で、前記アスファルトフィニッシャーによりアスファルトの施工を行いながら前記ダンプトレーラーを後ろから押して前進させることを特徴とするアスファルト施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラクターとダンプトレーラーを連結した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
道路舗装工事では、アスファルト合材をダンプトラックの荷台に載せて施工現場に運搬し、ダンプトラックをアスファルトフィニッシャーに連結してアスファルト合材を荷卸ししつつ、アスファルトフィニッシャーによりアスファルト合材を敷き均してローラーにより転圧する。この際ダンプトラックは駆動せず、アスファルトフィニッシャーでダンプトラックを前に押しながら路面に順次アスファルトを施工してゆく(特許文献1〜3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-097803号公報
【特許文献2】特開2003-184068号公報
【特許文献3】特開2010-202160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダンプトラックでは一度に運搬できるアスファルト合材の量が少なく、運搬に多くの人員や車両を要する。一方、トラクターとダンプトレーラーを連結してトラクターによりダンプトレーラーを牽引し、ダンプトレーラーによりアスファルト合材の運搬を行うと、一度に運搬するアスファルト合材の量を増やすことができ、運搬に要する人員等が少なくて済む。
【0005】
図9(a)に簡単に示すように、一般的にトラクター200とダンプトレーラー300はピンやカプラーなどによる連結部11を用いて平面内で相対回転可能に連結し、運転時の回転半径を小さくして小回りが利くようにしている。
【0006】
しかしながら、道路舗装時には、ダンプトラックの場合と同様、アスファルトフィニッシャーでダンプトレーラーを前に押しつつアスファルトの施工を行うことになる。従って、トラクターとダンプトレーラーを相対回転可能に連結していると、図9(b)の矢印に示すようにダンプトレーラー300が後ろから押された場合、トラクター200が蛇行してその中心線がダンプトレーラー300の中心線と一致しなくなる恐れがあり、安定した施工ができない。場合によっては、蛇行の修正のために、アスファルト合材の荷卸し時に跳ね上げたダンプトレーラー300の荷台を一旦下ろしてトラクター200を運転する必要があり、修正作業に時間がかかってしまう。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、蛇行防止のための構造を有する車両等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するための第1の発明は、トラクターとダンプトレーラーを連結部にて相対回転可能に連結した車両と、前記ダンプトレーラーに連結され、前記ダンプトレーラーを後ろから押して前進させるアスファルトフィニッシャーとを含み、前記アスファルトフィニッシャーによって前記ダンプトレーラーを押す際の前記トラクターとダンプトレーラーの相対回転の防止および前記相対回転の防止状態の解除が可能な回転防止部を前記車両に設けたことを特徴とする車両構造である。
第2の発明は、第1の発明の車両構造を用いたアスファルト施工方法であって、前記回転防止部によって前記トラクターとダンプトレーラーの相対回転を防止した状態で、前記アスファルトフィニッシャーによりアスファルトの施工を行いながら前記ダンプトレーラーを後ろから押して前進させることを特徴とするアスファルト施工方法である。
【0009】
本発明では、トラクターとダンプトレーラーの相対回転を防止する回転防止部を設けたので、上記したようにダンプトレーラーが後ろから押される場合でも蛇行の心配がない。通常の運転時には回転防止部による相対回転の防止状態を解除すればよく、トラクターとダンプトレーラーの相対回転により小回りが利き好適に運転できる。
【0010】
前記回転防止部は、ピンと前記ピンを挿入可能な挿入部を含むことが望ましい。
回転防止部としてピン等を用いることにより、簡易な構成にてトラクターとダンプトレーラーの相対回転を確実に防止できる。
【0011】
前記回転防止部は、電気磁石と、前記電気磁石に磁着可能な電気磁石を含むことが望ましい。
電気磁石を用いた構成によっても、トラクターとダンプトレーラーの相対回転を簡易な構成にて確実に防止できる。
【0012】
前記回転防止部は、前記ダンプトレーラーもしくは前記トラクターのフレームに当接可能なストッパーを含むことが望ましい。
ストッパーをダンプトレーラー等のフレームに当接させることでも、簡易な構成にてトラクターとダンプトレーラーの相対回転を確実に防止できる。
【0013】
鉛直面内における前記ダンプトレーラーの荷台の左右方向の傾斜を計測するためのセンサと、鉛直面内における前記車両の車軸の傾斜を計測するためのセンサと、設けられ、コンピュータによって前記荷台の傾斜と前記車軸の傾斜を比較し、傾斜の差を算出することが望ましい。また前記荷台は、前部を跳ね上げて傾斜させることが可能であり、前記荷台のセンサは、前記荷台の前部に設けられることも望ましい。
これにより、荷台の跳ね上げ時などでセンサから車両の傾斜状態を検知し、車両の横転等の被害を好適に防ぐことができる。
【0014】
前記ダンプトレーラーの荷台に、障害物を感知するための感知装置を設けることが望ましい。例えば、前記感知装置は、少なくともレーダーまたはカメラのいずれかを含む。さらに前記荷台は、前部を跳ね上げて傾斜させることが可能であり、前記感知装置は、前記荷台の前部に設けられることも望ましい。
レーダーやカメラなどの感知装置により、荷台の跳ね上げ時などで周囲に障害物がないかをチェックし、障害物と荷台の衝突を好適に防ぐことができる。
【0015】
前記ダンプトレーラーの荷台に、前記荷台に振動を与えるための振動発生装置を設けることが望ましい。
荷台の跳ね上げ時などに荷台を振動させることにより、運搬物の重力搬送を補助し、荷卸しがスムーズにできるようになる。
【0016】
前記アスファルトフィニッシャーの操作員から前記トラクターの運転者に与える指示を表示するための表示部を設けることが望ましい。
トラクターとダンプトレーラーを連結すると車両の全長が大きくなり、アスファルトフィニッシャーの操作員などからの声、警笛、合図による指示が運転者に伝わりにくくなるが、上記の表示部にて指示を表示することにより、運転者に対し遠い位置からでも確実に指示を伝達することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、蛇行防止のための構造を有する車両等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】車両1を示す図
図2】車両1を示す図
図3】回転防止部12の構成を示す図
図4】アスファルト施工時の車両1の状態を示す図
図5】アスファルト施工時の車両1の状態を示す図
図6】車両1の傾斜状態について示す図
図7】回転防止部12の配置の別の例について示す図
図8】連結構造の別の例について示す図
図9】トラクター200とダンプトレーラー300を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
(1.トラクター2とダンプトレーラー3)
図1図2は本発明の実施形態に係る車両1を示す図である。図1は車両1を側方から見た概略図であり、図2(a)は車両1を上から見た概略図である。図2(b)は車両1の底面における車輪と車軸およびこれらに関連する要素の配置を示す図であり、他の部分の表示は省略している。
【0021】
図1に示すように、車両1はトラクター2とダンプトレーラー3を連結構造10で連結して構成される。
【0022】
トラクター2は、ダンプトレーラー3を牽引して運転するものであり、キャブ21とその後方のフレーム22から構成される。キャブ21の内部は運転席となっている。
【0023】
キャブ21とフレーム22にはそれぞれ車輪23が設けられる。図2(b)に示すように、本実施形態では左右一対の車輪23が車軸24を中心にして回転可能に設けられる。各車軸24には、鉛直面内における車軸24の傾斜を計測するためのセンサ241が取付けられる。なお、左右とは車両1の幅方向を指すものとする。
【0024】
ダンプトレーラー3は運搬物を荷台32に載せて運ぶものであり、フレーム31の上に荷台32を配置して構成される。本実施形態では車両1を道路舗装に用いる例を説明し、運搬物はアスファルト合材であるものとする。
【0025】
フレーム31の前部は連結構造10によってトラクター2のフレーム22の後部に連結され、フレーム31の後部には車輪33が設けられる。
【0026】
図2(b)に示すように、本実施形態では車軸34を中心にして回転可能な左右一対の車輪33が前後3列に設けられる。各車軸34には、前記と同様、鉛直面内における車軸34の傾斜を計測するためのセンサ341が取付けられる。なお、前後とは車両1の長手方向を指すものとする。
【0027】
図2(a)に示すように、ダンプトレーラー3には表示部35が設けられる。表示部35は運転者に与える指示を表示するためのものであり、例えば電光表示板が用いられる。表示部35は、例えば一方の端部をフレーム31の側部にヒンジ接続し、当該端部を中心として矢印Aに示すように回転可能に取り付ける。従って、不要時にはフレーム31側に倒して配置し運転の邪魔にならないようにできる。なお、表示部35の設置位置はこれに限らず、トラクター2に設けてもよい。
【0028】
荷台32は運搬物を載せるものである。荷台32の前部はジャッキ36(図4参照)により跳ね上げることができ、これにより荷台32を傾斜させて運搬物を重力によって後方へと搬送し荷卸しできる。
【0029】
図2(a)に示すように、荷台32の前部のアオリ(荷台32を囲む枠)には、センサ321が設けられる。センサ321は、鉛直面内における当該アオリの左右方向の傾斜を計測するためのものである。
【0030】
このアオリには、障害物を感知するための感知装置322も設けられる。感知装置322は例えばレーダーであり、左右両側に3つ一組で設けられる。3つの感知装置322は、それぞれ前方、後方、上方の障害物を感知するものである。
【0031】
感知装置322としては、レーダーに代えてあるいはレーダーと併用してカメラを設けることも可能であり、カメラで撮影した動画等を運転席で表示して視認したり、あるいはカメラに接続したコンピュータ(不図示)で動画等を画像解析することにより障害物を認識できる。
【0032】
本実施形態では、荷台32の床部に振動発生装置323が設けられる。振動発生装置323は荷台32に振動を与えることで荷卸しをスムーズに行うためのものである。振動発生装置323としては既知の小型起振機等を用いることができる。
【0033】
図2(a)に示すように、本実施形態では振動発生装置323が床部において左右3つ並べて配置され、これが前後4列に設けられる。振動の方向は例えば床面の法線方向とするが、他の方向、例えば左右方向の振動でもよい。また振動発生装置323の数や配置も特に限定されない。
【0034】
また図示は省略したが、上記の他、荷台32では開閉式のカバーを側部のアオリに設けることなどもできる。
【0035】
(2.連結構造10)
図1に示すように、連結構造10は、連結部11と回転防止部12から構成される。
【0036】
連結部11は、トラクター2とダンプトレーラー3を平面内で相対回転可能に連結するものである。連結部11は既知のものでよく、例えばトラクター2のフレーム22に設けたカプラー内にダンプトレーラー3のフレーム31に設けたピンを配置し、当該ピンを軸として図2(a)の矢印Bに示すように相対回転可能にトラクター2とダンプトレーラー3とを連結する。
【0037】
回転防止部12は、上記した相対回転の防止および相対回転の防止状態の解除を可能とする機構である。図3は回転防止部12の構成を示す図である。図3(a)は回転防止部12を側方から見た図であり、図3(b)は回転防止部12を上から見た図である。
【0038】
本実施形態では、トラクター2のフレーム22に配置した受け部122に矢印Cに示すように伸縮可能なピン121を設け、伸長させたピン121をダンプトレーラー3のフレーム31に設けた挿入部123に挿入する。これによりダンプトレーラー3のフレーム31がトラクター2のフレーム22に対して固定され、トラクター2とダンプトレーラー3の相対回転を防止できる。ピン121を収縮させて挿入部123から退避すれば相対回転の防止状態が解除されて相対回転可能となる。
【0039】
ピン121等による回転防止部12は図3(b)に示すように左右一対設けられる。しかしながら、回転防止部12は1つだけでもよく、あるいは3つ以上設けてもよい。その配置も特に限定されない。
【0040】
(3.アスファルトの施工)
図4は道路舗装の際のアスファルト施工時の車両1の状態を示す概略図である。道路舗装時には、ダンプトレーラー3の後部がアスファルトフィニッシャー4に連結される。ダンプトレーラー3では荷台32の前部がジャッキ36により跳ね上げられ、これにより荷台32を傾斜させて重力によりアスファルト合材を搬送しアスファルトフィニッシャー4に荷卸しする。
【0041】
アスファルト合材はアスファルトフィニッシャー4のスクリードにより路面に敷き均される。道路舗装の際は、こうしてアスファルト合材を路面に敷き均しながら、アスファルトフィニッシャー4によってトラクター2およびダンプトレーラー3を矢印Dに示すように後ろから押して前進させる。
【0042】
本実施形態では、この時、図5に示すように回転防止部12のピン121を挿入部123に挿入することで、図9等で説明したようなトラクター2とダンプトレーラー3の相対回転による蛇行を防止でき、安定した施工が可能となる。
【0043】
また本実施形態では、荷台32の前部のアオリのセンサ321と車軸24、34のセンサ241、341(図2(b)参照)にて、荷台32の前部のアオリの左右方向の鉛直面内における傾斜(図6の傾斜α参照)、車軸24の鉛直面内における傾斜、車軸34の鉛直面内における傾斜(図6の傾斜β参照)を計測する。
【0044】
これらの傾斜を各センサに接続されたコンピュータ(不図示)で比較し、例えば荷台32の前部のアオリの傾斜αと車軸34(または車軸24)の傾斜βの差が所定値以上であれば横転の可能性が有り危険として、警報装置(不図示)により警報を発生させることができる。運転者はこれに応じてジャッキ36を収縮させて荷台32を下ろすなど、適切な対応が行える。
【0045】
傾斜の差が所定値以上であれば警報を発することなく即時に荷台32を自動で下ろすようにしたり、警報発生後所定時間荷台32が下されなければ荷台32を自動で下ろすようにしてもよい。また傾斜の差ではなく傾斜の値自体に着目し、荷台32の前部のアオリの傾斜あるいは車軸24、34の傾斜の値が許容範囲を超えていれば危険として警報等を行うことも可能である。
【0046】
さらに、感知装置322にて前後および上方の障害物の感知を行うことで、障害物を感知した場合には同じく警報装置(不図示)により警報を発生させるなどして運転者にこれを知らせることができる。運転者は警報に応じて荷台32を下ろすなど適切な対応をして障害物を避けることができる。
【0047】
また荷台32の上げ下げや静止、あるいはトラクター2の停止や前進後退、左右のハンドル切替、また荷台32に設けたシートの開閉など、車両1の運転者に対する指示はアスファルトフィニッシャー4の操作員などから有線等の通信手段により前記の表示部35に入力し、表示させることができる。これにより、運転者から遠い位置にあるアスファルトフィニッシャー4の操作員からの指示も運転者へと確実に伝達することができる。
【0048】
さらに、荷卸し時には振動発生装置323により荷台32を振動させることで、アスファルト合材などの運搬物を落下させやすくなり、荷台32をジャッキ36でそれほど跳ね上げなくても(例えば45°の傾斜角となるまで跳ね上げなくても)荷卸しがスムーズにできる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、トラクター2とダンプトレーラー3の相対回転を防止する回転防止部12を設けたので、上記したようにダンプトレーラー3が後ろから押される場合でも蛇行の心配がなく安定した施工ができる。通常の運転時には回転防止部12による相対回転の防止状態を解除すればよく、トラクター2とダンプトレーラー3の相対回転により小回りが利き好適に運転できる。
【0050】
また本実施形態では回転防止部12としてピン121等を用いることにより、簡易な構成にてトラクター2とダンプトレーラー3の相対回転を確実に防止できる。
【0051】
さらに、本実施形態ではセンサ241、321、341などにより車両1の傾斜状態を検知でき、荷台32の跳ね上げ時などで車両1の横転等の被害を好適に防ぐことができる。また荷台32に障害物を感知するためのレーダーやカメラによる感知装置322を設けるので、荷台32の跳ね上げ時などで周囲に障害物がないかをチェックし、障害物と荷台32の衝突を好適に防ぐことができる。障害物の感知は勿論通常の運転時にも行うことができる。
【0052】
さらに、本実施形態では振動発生装置323により荷台32を振動させることによって重力搬送を補助し、荷卸しがスムーズにできるようになる。またトラクター2とダンプトレーラー3を連結すると車両1の全長が大きくなり、アスファルトフィニッシャー4の操作員からの声、警笛、合図による指示が運転者に伝わりにくくなるが、表示部35にて指示を表示することにより、運転者に対し遠い位置からでも確実に指示を伝達することができる。
【0053】
しかしながら、本発明はこれに限ることはない。例えば、本実施形態では車両1を道路舗装に用いる例を説明し、運搬物はアスファルト合材としたが、車両1の用途や運搬物がこれに限ることはない。例えば車両1は道路表面の切削時などで切削材の積み込みにも使用でき、切削機の操作員からの指示についても表示部35を用いて運転者に確実に伝達できる。
【0054】
さらに、前記したように回転防止部12の数や配置は限定されず、相対回転の防止と相対回転の防止状態の解除が好適にできるものであればよい。例えば図7図5と同様、アスファルトの施工時を示す図であるが、図7に示すように、トラクター2およびダンプトレーラー3の中心線(鎖線を参照)に対して対称となる位置に回転防止部12を左右一対設けるのに加え、連結部11の後方の当該中心線上の位置に回転防止部12をさらに1つ設けてもよい。
【0055】
また相対回転の防止方法についても上記の実施形態で説明したものに限らない。そこで、本発明の別の例として連結構造の回転防止部が異なる例について第2の実施形態として説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と異なる構成要素について説明し、同様の構成要素については同じ符号を付すなどして説明を省略する。また第1の実施形態で説明した回転防止部12や第2の実施形態で説明する回転防止部は互いに併用することも可能である。
【0056】
[第2の実施形態]
図8(a)の連結構造10aの回転防止部13は、通電した電気磁石131a、132aを相対回転の防止に用いるものである。
【0057】
すなわち、ダンプトレーラー3のフレーム31に配置したホルダー133にピン131を矢印Eに示すように上下動可能に設け、ピン131を下降させてピン下端の電気磁石131aをトラクター2のフレーム22に設けた挿入部132に挿入し、挿入部132の底部に設けた電気磁石132aに接触固定する。これにより、トラクター2とダンプトレーラー3の相対回転を防止する。
【0058】
電気磁石131a、132aの通電を停止しピン131を引き上げて挿入部132から退避させることで、トラクター2とダンプトレーラー3の相対回転の防止状態が解除される。なお、電気磁石132aは挿入部132に設けるのでなく、フレーム22の表面に設けてもよい。この例では、電気磁石131a、132aを用いる簡易な構成により、トラクター2とダンプトレーラー3の相対回転を確実に防止できる。
【0059】
図8(b)の連結構造10bの回転防止部14は、プレート141(ストッパー)をダンプトレーラー3のフレーム31に当接させ、相対回転の防止に用いるものである。
【0060】
すなわち、トラクター2のフレーム22には軸142aを取付けたブラケット142が設けられており、プレート141を軸142aを中心として矢印Fに示すように回転可能に設け、図8(b)に示すようにプレート141を立ち上げた状態とすることにより、プレート141をダンプトレーラー3のフレーム31に当接させてストッパーとして機能させ、トラクター2とダンプトレーラー3の相対回転を防止する。
【0061】
プレート141をフレーム22側に倒すことによりトラクター2とダンプトレーラー3の相対回転の防止状態が解除される。この例でも、簡易な構成にてトラクター2とダンプトレーラー3の相対回転を確実に防止できる。なお同様のプレートをダンプトレーラー3のフレーム31の下面に設け、トラクター2のフレーム22に当接可能にしてもよい。
【0062】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0063】
1;車両
2、200;トラクター
3、300;ダンプトレーラー
4;アスファルトフィニッシャー
10、10a、10b;連結構造
11;連結部
12、13、14;回転防止部
21;キャブ
22、31;フレーム
23、33;車輪
24、34;車軸
32;荷台
35;表示部
36;ジャッキ
241、321、341;センサ
322;感知装置
121、131;ピン
122;受け部
123、132;挿入部
131a、132a;電気磁石
133;ホルダー
141;プレート
142;ブラケット
142a;軸
323;振動発生装置
【要約】
【課題】蛇行防止のための構造を有する車両等を提供する。
【解決手段】トラクターとダンプトレーラーを連結部11にて相対回転可能に連結するとともに、相対回転の防止および相対回転の防止状態の解除が可能な回転防止部12を設ける。回転防止部12では、トラクターのフレーム22の受け部122に設けたピン121をダンプトレーラーのフレーム31に設けた挿入部123に挿入することで、ダンプトレーラーのフレーム31がトラクターのフレーム22に対して固定され、トラクターとダンプトレーラーの相対回転が防止される。ピン121を挿入部123から退避すれば相対回転の防止状態が解除される。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9