特許第6009706号(P6009706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6009706
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】燃焼炉
(51)【国際特許分類】
   F23M 5/00 20060101AFI20161006BHJP
   F23M 20/00 20140101ALI20161006BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
   F23M5/00 Z
   F23M20/00
   F27D1/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-30709(P2016-30709)
(22)【出願日】2016年2月22日
【審査請求日】2016年2月24日
(31)【優先権主張番号】特願2015-209543(P2015-209543)
(32)【優先日】2015年10月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505057635
【氏名又は名称】ファイア・アップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118315
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 博道
(74)【代理人】
【識別番号】100120488
【弁理士】
【氏名又は名称】北口 智英
(72)【発明者】
【氏名】大澤 俊博
(72)【発明者】
【氏名】米田 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】伊東 正浩
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−182528(JP,A)
【文献】 特開昭51−151704(JP,A)
【文献】 特開昭63−075405(JP,A)
【文献】 特開昭58−037409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23M 3/00−20/00
F27D 1/00− 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側面に、高断熱領域及び低断熱領域が設けられ
前記高断熱領域には断熱材層が形成されている一方、前記低断熱領域には該断熱材層は形成されていないとともに、
前記低断熱領域における前記外側面には腐食防止塗料が塗布されている一方、前記高断熱領域における前記外側面には該腐食防止塗料が塗布されていないことを特徴とする燃焼炉。
【請求項2】
前記高断熱領域は前記外側面の面積の25%以上かつ75%以下を占めることを特徴とする請求項1記載の燃焼炉。
【請求項3】
前記断熱材層と前記外側面との間に反射材層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の燃焼炉。
【請求項4】
前記反射材層は、輻射率が0.1から0.5の金属片であることを特徴とする請求項記載の燃焼炉。
【請求項5】
前記反射材層はアルミ板又はアルミ箔で形成されていることを特徴とする請求項記載の燃焼炉。
【請求項6】
前記高断熱領域における前記外側面には断熱塗料が塗布されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の燃焼炉。
【請求項7】
前記断熱材層はグラスウールで形成されていることを特徴とする請求項からまでのいずれかに記載の燃焼炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼炉において、外部への熱放散を不均一にすることにより、燃焼を改善し省エネルギーを図るものである。
【背景技術】
【0002】
燃焼を伴う炉、具体的にはボイラ、高炉、転炉、燃焼炉、熱風発生炉、焼成炉、乾燥炉などについては、その燃焼効率の改善は常に必要とされている。
その方法としては、大きくは炉の内部を改善する方法と、外部を改善する方法との2通りが考えられる。
炉の内部を改善する方法としては、たとえば、バーナ等の改善によって燃料と空気との混合促進による燃焼改善が挙げられる。この方法の一環として、出願人は特許文献1〜3に開示の技術を提案している。
【0003】
また、炉の外部を改善する方法としては、たとえば、断熱材の施工などによる燃費の改善が挙げられる。
しかし、既設の炉の燃焼改善は火炎自体の種々の物性値の測定が外部からは難しいこと、また、燃焼に関与する要因の複雑さ、さらに、いかなる炉にいかなる火炎が効率的であるかも不明な点が多く、燃焼の改善の方向性を決定するのは容易ではない。
【0004】
また、燃焼炉のうち、外部構造物を水で冷却する水冷壁構造のボイラでは、断熱性能の高い断熱材を外部へ一様に施工して、外部への熱放散を一様に減少させることが主流になっている。そして、その他の燃焼炉では、炉壁外部の構造材である鉄皮が外部空気により腐食されることを防ぐため、耐久性を考慮して腐食防止塗料(一般に「シルバー」と称される。)のみを塗布し、特に断熱材は施工していないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表2006/088084号公報
【特許文献2】再表2010/035422号公報
【特許文献3】再表2010/035423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な円筒形の燃焼炉においては鏡の位置にバーナが設けられ軸方向(長手方向)に燃料と空気が投入される。この燃料と空気の流れは、原則的に軸方向(長手方向)である。この流れ方向に沿って燃料と空気は混合され燃焼が進む。また、一部のバーナでは空気の投入方向を軸方向から傾けて意図的に円周方向の流れを作り、空気と燃料の混合を促進している。従来、このように燃焼炉の内部においては、燃料と空気の混合を促進させることにより燃焼の促進を図っている。しかしながら、一旦、燃焼炉の目的に応じた負荷が決まると必要な燃料量とそれに相当する必要な空気量も決まり、軸方向及び円周方向の流れの速さは決まってしまい、燃料と空気の混合は一定となり、それ以上の混合効果は期待できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の発明
本発明は、上記の課題を解決すべく、燃焼炉の外部への熱の放散を部位により不均一とすることにより、燃焼炉の内壁の温度をも不均一にし、炉内部に温度勾配を生ぜしめ、これに伴う燃料と空気の新たな流れを生むことで、燃料と空気の混合を加速することによって、燃焼改善による省エネルギーを図った燃焼炉を提供するものである。
具体的には、本願のうち第1の発明に係る燃焼炉は、外側面に、高断熱領域及び低断熱領域が設けられていることを特徴とする。
ここで、「外側面」とは燃焼炉の長手方向(すなわち、火炎の噴出方向)に沿った面をいう。たとえば、円筒形の燃焼炉の場合は、円筒の側面をいい、円筒における円形の底面(いわゆる「鏡」と称される面)は外側面には該当しない。
【0008】
また、「高断熱領域」及び「低断熱領域」については、外側面において断熱性に差が設けられることで、比較的断熱性の高い領域(高断熱領域)と、それよりも断熱性の低い領域(低断熱領域)とが併存していればよい。
具体的には炉壁の外部、円筒形の炉では胴の部分の一部に断熱材又は放熱材を施工し、外部への熱放散を不均一にした燃焼炉とし、これにより、炉壁内部の温度分布に変化を生ぜしめ空気と燃料の混合を促進することによる燃焼改善を図り消費燃料を削減する。
なお、本第1の発明においては、外側面に高断熱領域及び低断熱領域が設けられていることが必須要件なのであって、鏡又はフランジの一部に断熱材又は放熱材を施工して高断熱領域及び低断熱領域を設けても、あるいは設けなくても、いずれでも差し支えない。
【0009】
(2)第2の発明
また、本願のうち第2の発明は、前記第1の発明の特徴に加え、前記高断熱領域は前記外側面の面積の25%以上かつ75%以下を占めることを特徴とする。本願発明は、外部への熱放散をあえて不均一にし、炉壁内部の温度分布に変化を生ぜしめ空気と燃料の混合を促進することを目的としているため、高断熱領域の割合が多すぎても少なすぎても所望の効果は得られない。よって、その割合は上述の通り25%以上かつ75%以下が適切である。
【0010】
(3)第3の発明
さらに、本願のうち第3の発明は、前記第1又は第2の発明の特徴に加え、前記高断熱領域には断熱材層が形成されているとともに、前記低断熱領域には該断熱材層は形成されていないことを特徴とする。すなわち、燃焼炉の外側面において一部に断熱材層を設けており、これが高断熱領域である。一方、断熱材層が設けられない部分、すなわち、燃焼炉の外側面が露出している部分が低断熱領域である。
【0011】
(4)第4の発明
また、本願のうち第4の発明は、前記第3の発明の特徴に加え、前記断熱材層と前記外側面との間に反射材層が設けられていることを特徴とする。すなわち、断熱材層により外部へ放出される熱を少なくする断熱効果に加え、外部へ放出されようとする熱を反射材層により燃焼炉内部に戻す効果も発揮されることとなる。
【0012】
(5)第5の発明
さらに、本願のうち第5の発明は、前記第1又は第2の発明の特徴に加え、前記外側面に断熱材層が形成され、前記高断熱領域には該断熱材層と前記外側面との間に反射材層が位置しているとともに、前記低断熱領域には該反射材層は設けられていないことを特徴とする。本発明においては、燃焼炉の外側面のほぼ全面に断熱材層が形成されているような場合に、その一部においてその断熱材層と外側面との間に反射材層を挿入する等して位置させることとしている。これにより、断熱材層が発揮する断熱効果が、反射材層により増強されることとなる。すなわち、断熱材層のみ形成されている部分が低断熱領域であり、さらに反射材層が位置している部分が高断熱領域ということになる。
【0013】
(6)第6及び第7の発明
また、前記第4及び第5の発明においては、反射材層の材質については特段の限定はないが、第6の発明のように、前記反射材層は、輻射率が0.1から0.5の金属片であることが望ましい。とりわけ、第7の発明のように、前記反射材層はアルミ板又はアルミ箔で形成されていることが望ましい。これは、反射材としての入手容易性及び施工容易性に鑑みてのことである。
【0014】
(7)第8の発明
なお、前記第3、第4、第5、第6及び第7の発明においては、断熱材層の材質については特段の限定はないが、第8の発明のように、前記断熱材層はグラスウールで形成されていることが望ましい。これは、断熱材としての入手容易性及び施工容易性に鑑みてのことである。
【0015】
(8)その他
燃焼炉の外側面には通常、金属の腐食防止を目的として腐食防止塗料が塗布されている。そして、前記低断熱領域における前記外側面には腐食防止塗料が塗布されているとともに、前記高断熱領域における前記外側面には該腐食防止塗料が塗布されていないこととしてもよい。
ここで、「前記高断熱領域における前記外側面には該腐食防止塗料が塗布されていないこと」とは、以下の2通りの意味を有する。
【0016】
第1に、燃焼炉外側面に腐食防止塗料が塗布されている箇所とされていない箇所とがある場合、塗布されていない箇所に断熱材層を形成することで、高断熱領域を設けることとしてもよい。
第2に、しかしながら、燃焼炉の外側面のほぼ全面にあらかじめ腐食防止塗料が塗布されていることが多い。そのような場合にはその塗布されている腐食防止塗料の一部を剥離して、その上に断熱材層を形成して高断熱領域を設けることとする。
【0017】
なお、前記高断熱領域における前記外側面には断熱塗料が塗布されていることが望ましい。すなわち、高断熱領域において腐食防止塗料が塗布されていない外側面に断熱塗料を塗布することで、高断熱領域の断熱効果がより向上することが期待できる。
【発明の効果】
【0018】
(1)第1の発明の効果
本発明は上記のとおり構成されているので、以下に記す効果を奏する。
上記第1の発明の構成によれば、燃焼炉の外側面に高断熱領域及び低断熱領域が設けられているので、低断熱領域からの熱放散は高断熱領域からよりも多くなる。これにより、燃焼炉の外部への熱の放散を部位により不均一とすることにより、燃焼炉の内壁の温度をも不均一にすることができる。そしてそれによって、炉内部に温度勾配を生ぜしめ、これに伴う燃料と空気の新たな流れを生むことで、燃料と空気の混合が加速され、結果としてもたらされる燃焼改善によって省エネルギー効果が発揮されることとなる。
【0019】
(2)第2の発明の効果
上記第2の発明の構成によれば、上記第1の発明の効果に加え、燃焼炉の外側面における高断熱領域の割合を適正なものにすることによって、燃焼炉の外部への熱の放散を部位により不均一とすることを確実なものとすることが可能となる。
(3)第3の発明の効果
上記第3の発明の構成によれば、上記第1又は第2の発明の効果に加え、必要な部位に断熱材層を施工することで高断熱領域を形成することが可能となる。
【0020】
(4)第4の発明の効果
上記第4の発明の構成によれば、上記第3の発明の効果に加え、高断熱領域の断熱性能をさらに高めることが可能となる。
(5)第5の発明の効果
上記第5の発明の構成によれば、上記第1又は第2の発明の効果に加え、既設の断熱材層を利用して必要な位置に反射材層を施工することで高断熱領域を形成することが可能となる。
【0021】
以上の結果として、各種の燃焼炉における燃費の改善、すなわち、目的とする生産量(たとえば、ボイラでは蒸気量、乾燥炉では製品の量等)に必要な燃料量を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る燃焼炉の側面図を模式的に示したものである。
図2図1のA−A断面の例を示す。
図3図1のA−A断面の例を示す。
図4図1のA−A断面の例を示す。
図5図1のA−A断面の例を示す。
図6図1のA−A断面の例を示す。
図7】ボイラの例において、本発明の導入前後の省エネルギー率の変化を示すグラフである。
図8図7のグラフにおいて、導入前のデータのみのプロットを示す。
図9図7のグラフにおいて、導入後のデータのみのプロットを示す。
図10図1のA−A断面の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る燃焼炉の側面図を模式的に示したものである。本実施の形態に係る燃焼炉10は円筒形状を呈しており、その一方の鏡16にバーナ11が設けられ、もう一方の鏡16に排気ダクト12が設けられている。そして、燃焼炉10の長手方向に沿った面である外側面13の一部には高断熱領域14が設けられており、それ以外の部位は低断熱領域15となっている。
【0024】
この図1における高断熱領域14及び低断熱領域15について図2にて例示する。図2は、図1のA−A断面を示すものである。燃焼炉10の側面を形成する鋼鉄製の炉壁17の外側面13には、腐食防止塗料18(シルバー)が全面に塗布されている。そして、外側面13の一部に、腐食防止塗料18の上から、グラスウールが断熱材層20として施工されている。この断熱材層20の施工されている部分が高断熱領域14となり、そして、断熱材層20が施工されていない部分が低断熱領域15である。本実施形態では高断熱領域14が外側面13のおよそ50%を占めることとなっている。なお、腐食防止塗料18は非常に薄い塗膜であり断熱性にはほとんど影響を及ぼさないため、図3の別の例に示すように、高断熱領域14とする部分でこの腐食防止塗料18を剥離してから断熱材層20を施工することとしてもよい。
【0025】
また、図4に示す例のように、高断熱領域14において、断熱材層20としてのグラスウールと、反射材層30としてのアルミ層とが一体となった市販品の断熱材を施工することで、断熱性能がさらに向上することとなる。また、この例においても、図5の別の例に示すように、高断熱領域14とする部分でこの腐食防止塗料18を剥離してから断熱材層20及び反射材層30からなる断熱材を施工することとしてもよい。あるいは、図10の例に示すように、高断熱領域14とする部分でこの腐食防止塗料18を剥離し、この剥離した部分に断熱塗料19を塗布した上で、断熱材層20及び反射材層30からなる断熱材を施工することとしてもよい。
【0026】
さらに、図6に示す例においては、あらかじめ外側面13のほぼ全面にグラスウールが断熱材層20として施工されている。そして、高断熱領域14とする部分において、断熱材層20の下層にアルミ板による反射材層30が事後的に挿入される。すなわち、高断熱領域14においては断熱材層20と反射材層30とが設けられていることで、断熱材層20のみの低断熱領域15よりも断熱性がより向上することとなっている。
【0027】
上記のいずれの例においても、高断熱領域14は低断熱領域15よりも断熱性の高い領域である。よって、燃料炉10の内部で生じた熱の外部への放散は、低断熱領域15でより多く生ずることとなる。すなわち、燃焼炉10の外側面13においては外部への熱の放散が比較的多い領域(低断熱領域15)と、比較的少ない領域(高断熱領域14)とが併存することになる。換言すると、高断熱領域14における外部への熱放散が、低断熱領域15よりも少なくなる。この結果、全体的な外部への熱放散が不均一になる。
【実施例】
【0028】
(1)重回帰分析の一例
図7はボイラにおける本発明の省エネルギー効果を、本発明の導入前後を比較して解析した一例である。なお、図8は、図7のうち導入前のデータ(三角)のみをプロットしたものである。また、図9は、図7のうち導入後のデータ(丸)のみをプロットしたものである。
なお、図7で使用したボイラは、ボイラ形式は炉筒煙管型、ボイラ容量は3,000kg/h、燃料種別はA重油であった。このボイラに、前記図4に示す例のような、市販の断熱材を施工して高断熱領域を設けた。高断熱領域の占める面積は、ボイラの燃焼炉の外側面の50%とした。
【0029】
ボイラの燃費は外気温度、湿度、燃料成分のばらつき等制御できない因子も多く含まれるため、少数のデータでは評価が難しく、多くのデータを基にした統計的処理が必要になる。
具体的には重回帰分析の手法を用い、本発明の導入前及び導入後のデータを同一グラフにプロットした。具体的には、横軸(X軸)に蒸発量(t/日)、縦軸(Y軸)に燃料消費量(リットル/日)を取った。
【0030】
重回帰分析の手法では、下記の回帰直線を求める作業になる。
Y=aX+bZ+c
ここで、
X:蒸発量(t/日)
Y:燃料消費量(リットル/日)
Z:本発明の導入前後を変数として扱い、導入前は0、導入後は1
a,b,c:定数
それぞれのデータからX、Zを上記式に代入して求められたYと実際のデータYとの差の2乗の総和が最も小さくなるような定数a、b及びcを定める。
【0031】
図7の例では、
a=67.358,b=−31.6,c=78.979
が得られ、それにより回帰直線は
Y=67.358X−31.6Z+78.979
となった。
【0032】
すなわち、導入前(Z=0)では
Y=67.358X+78.979
となり、導入後(Z=1)は
Y=67.358X+47.379
となった。
【0033】
このY切片の差(78.879−47.379=31.6)が燃料節約量に相当する。
これは、同一の蒸発量(t/日)を得るための燃料消費量(リットル/日)が31.6リットル/日減少することを意味する。
ここで、図8における導入前のプロットの平均燃料消費量は1,306.9リットル/日である。この平均燃料消費量に対してこの燃料節約量31.6リットル/日は2.42%に相当し、これを平均削減率(あるいは省エネルギー率)と考えることができる。
【0034】
なお、上記で求めた回帰直線と実際のデータの当てはまりの良さを示す「補正R」(又は「自由度調整済決定係数」)と呼ばれる指標の数値は0.9602であった。ここで、この補正Rは0から1の間の数値を取り、1に近い程、データと回帰直線の当てはまりが良いとされている。
また、データと回帰直線との差の2乗の標準偏差(σ)を求めてデータが2σ以上外れる結果が5%以上ある確率を示す「有意F値」は7.10×10−175であった。すなわち、各データが回帰直線から2σ以上外れる結果が5%以上ある確率は無視できる程小さく、データが信頼でき、よって上記の省エネルギー率が統計的に信頼性が高いことを示している。
【0035】
(2)本発明のボイラへの導入
下記表1は、本発明を前記図7の例以外のボイラに導入して得られた省エネルギー率を纏めたものである。ボイラの容量や燃料の種別、検証データの数を示した。また、上述した補正R及び有意F値も示した。なお、これらのボイラには、前記図4に示す例のような、市販の断熱材を施工して高断熱領域を設けた。高断熱領域の占める面積は、ボイラの燃焼炉の外側面の50%とした。
【0036】
【表1】
【0037】
以上の結果、補正Rは実施例8の1例のみで0.8797との値が得られたが、それ以外はすべて0.91を上回り、極めて当てはまりが良好であった。
さらに有意F値はいずれの実施例においても5%以上外れる確率は無視できる程小さく、データが信頼でき、前記図7の例と同様に求めた省エネルギー率が統計的に信頼性が高いことを示している。
これらの例では、各例の平均燃料消費量に対する省エネルギー率(表中では「省エネ率」と表記)は最低の実施例2でも2.15%であり、最高の実施例4では5.69%であった。
【0038】
(3)本発明の燃焼器への導入
下記表2は、本発明を各種の燃焼器に導入して得られた省エネルギー率を纏めたものである。表1と同様に燃焼器の形式や燃料の種別、検証データの数、補正R及び有意F値を示した。なお、これらの燃焼器には、前記図4に示す例のような、市販の断熱材を施工して高断熱領域を設けた。高断熱領域の占める面積は、燃焼器の燃焼炉の外側面の50%とした。
【0039】
【表2】
【0040】
以上の結果、補正Rは実施例15及び20でそれぞれ0.7787及び0.7841との値が得られ、実施例12及び19でそれぞれ0.8824及び0.8042との値が得られたが、それ以外はすべて0.92を上回り、極めて当てはまりが良好であった。
さらに有意F値は、上記で補正Rが0.9を下回った4例を含め、いずれの実施例においても5%以上外れる確率は無視できる程小さく(なお、表2中の数値「0.00」は、計算結果の表示下限を下回ることを示す。)、データが信頼でき、前記図7の例と同様に求めた省エネルギー率が統計的に信頼性が高いことを示している。
これらの例では、各例の平均燃料消費量に対する省エネルギー率(表中では「省エネ率」と表記)は最低の実施例11でも2.69%であり、最高の実施例15では6.72%であった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ボイラ、高炉、転炉、燃焼炉、熱風発生炉、焼成炉、乾燥炉など、燃焼を伴う炉に利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 燃焼炉 11 バーナ 12 排気ダクト
13 外側面 14 高断熱領域 15 低断熱領域
16 鏡 17 炉壁 18 腐食防止塗料(シルバー)
19 断熱塗料
20 断熱材層(グラスウール) 30 反射材層(アルミ板)
【要約】
【課題】燃焼炉において、外部への熱放散を不均一にすることにより、燃焼を改善し省エネルギーを図る。
【解決手段】燃焼の現象は複雑多岐に渡り燃焼の様子の観察が難しいため、燃焼改善の試みはバーナの改善等に限定されていた。そこで、燃焼炉の外部への熱の放散を部位により不均一とすることにより、燃焼炉の内壁の温度をも不均一にし、炉内部に温度勾配を生ぜしめ、これに伴う燃料と空気の新たな流れを生むことで、燃料と空気の混合を加速することによって、燃焼改善による省エネルギーを図った燃焼炉を提供するものである。具体的には、本願に係る燃焼炉は、外側面に、高断熱領域及び低断熱領域が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10