【実施例】
【0028】
(1)重回帰分析の一例
図7はボイラにおける本発明の省エネルギー効果を、本発明の導入前後を比較して解析した一例である。なお、
図8は、
図7のうち導入前のデータ(三角)のみをプロットしたものである。また、
図9は、
図7のうち導入後のデータ(丸)のみをプロットしたものである。
なお、
図7で使用したボイラは、ボイラ形式は炉筒煙管型、ボイラ容量は3,000kg/h、燃料種別はA重油であった。このボイラに、前記
図4に示す例のような、市販の断熱材を施工して高断熱領域を設けた。高断熱領域の占める面積は、ボイラの燃焼炉の外側面の50%とした。
【0029】
ボイラの燃費は外気温度、湿度、燃料成分のばらつき等制御できない因子も多く含まれるため、少数のデータでは評価が難しく、多くのデータを基にした統計的処理が必要になる。
具体的には重回帰分析の手法を用い、本発明の導入前及び導入後のデータを同一グラフにプロットした。具体的には、横軸(X軸)に蒸発量(t/日)、縦軸(Y軸)に燃料消費量(リットル/日)を取った。
【0030】
重回帰分析の手法では、下記の回帰直線を求める作業になる。
Y=aX+bZ+c
ここで、
X:蒸発量(t/日)
Y:燃料消費量(リットル/日)
Z:本発明の導入前後を変数として扱い、導入前は0、導入後は1
a,b,c:定数
それぞれのデータからX、Zを上記式に代入して求められたYと実際のデータYとの差の2乗の総和が最も小さくなるような定数a、b及びcを定める。
【0031】
図7の例では、
a=67.358,b=−31.6,c=78.979
が得られ、それにより回帰直線は
Y=67.358X−31.6Z+78.979
となった。
【0032】
すなわち、導入前(Z=0)では
Y=67.358X+78.979
となり、導入後(Z=1)は
Y=67.358X+47.379
となった。
【0033】
このY切片の差(78.879−47.379=31.6)が燃料節約量に相当する。
これは、同一の蒸発量(t/日)を得るための燃料消費量(リットル/日)が31.6リットル/日減少することを意味する。
ここで、
図8における導入前のプロットの平均燃料消費量は1,306.9リットル/日である。この平均燃料消費量に対してこの燃料節約量31.6リットル/日は2.42%に相当し、これを平均削減率(あるいは省エネルギー率)と考えることができる。
【0034】
なお、上記で求めた回帰直線と実際のデータの当てはまりの良さを示す「補正R
2」(又は「自由度調整済決定係数」)と呼ばれる指標の数値は0.9602であった。ここで、この補正R
2は0から1の間の数値を取り、1に近い程、データと回帰直線の当てはまりが良いとされている。
また、データと回帰直線との差の2乗の標準偏差(σ)を求めてデータが2σ以上外れる結果が5%以上ある確率を示す「有意F値」は7.10×10
−175であった。すなわち、各データが回帰直線から2σ以上外れる結果が5%以上ある確率は無視できる程小さく、データが信頼でき、よって上記の省エネルギー率が統計的に信頼性が高いことを示している。
【0035】
(2)本発明のボイラへの導入
下記表1は、本発明を前記
図7の例以外のボイラに導入して得られた省エネルギー率を纏めたものである。ボイラの容量や燃料の種別、検証データの数を示した。また、上述した補正R
2及び有意F値も示した。なお、これらのボイラには、前記
図4に示す例のような、市販の断熱材を施工して高断熱領域を設けた。高断熱領域の占める面積は、ボイラの燃焼炉の外側面の50%とした。
【0036】
【表1】
【0037】
以上の結果、補正R
2は実施例8の1例のみで0.8797との値が得られたが、それ以外はすべて0.91を上回り、極めて当てはまりが良好であった。
さらに有意F値はいずれの実施例においても5%以上外れる確率は無視できる程小さく、データが信頼でき、前記
図7の例と同様に求めた省エネルギー率が統計的に信頼性が高いことを示している。
これらの例では、各例の平均燃料消費量に対する省エネルギー率(表中では「省エネ率」と表記)は最低の実施例2でも2.15%であり、最高の実施例4では5.69%であった。
【0038】
(3)本発明の燃焼器への導入
下記表2は、本発明を各種の燃焼器に導入して得られた省エネルギー率を纏めたものである。表1と同様に燃焼器の形式や燃料の種別、検証データの数、補正R
2及び有意F値を示した。なお、これらの燃焼器には、前記
図4に示す例のような、市販の断熱材を施工して高断熱領域を設けた。高断熱領域の占める面積は、燃焼器の燃焼炉の外側面の50%とした。
【0039】
【表2】
【0040】
以上の結果、補正R
2は実施例15及び20でそれぞれ0.7787及び0.7841との値が得られ、実施例12及び19でそれぞれ0.8824及び0.8042との値が得られたが、それ以外はすべて0.92を上回り、極めて当てはまりが良好であった。
さらに有意F値は、上記で補正R
2が0.9を下回った4例を含め、いずれの実施例においても5%以上外れる確率は無視できる程小さく(なお、表2中の数値「0.00」は、計算結果の表示下限を下回ることを示す。)、データが信頼でき、前記
図7の例と同様に求めた省エネルギー率が統計的に信頼性が高いことを示している。
これらの例では、各例の平均燃料消費量に対する省エネルギー率(表中では「省エネ率」と表記)は最低の実施例11でも2.69%であり、最高の実施例15では6.72%であった。