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特許6009718ミルにおける平坦性制御を調整するための方法および制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009718
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】ミルにおける平坦性制御を調整するための方法および制御システム
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/30 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
   B21B37/30 ABBN
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-504545(P2016-504545)
(86)(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公表番号】特表2016-517801(P2016-517801A)
(43)【公表日】2016年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2014054258
(87)【国際公開番号】WO2014154456
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年12月15日
(31)【優先権主張番号】13160822.6
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508254509
【氏名又は名称】エービービー テクノロジー エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】モデン, ペル−エリク
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−543566(JP,A)
【文献】 特開2012−206170(JP,A)
【文献】 特開2007−144492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 37/00−37/78
B21B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクチュエータによって制御できるロール(9−1,9−2)を備えるミル(2)内でストリップ(7)を圧延する際の平坦性制御に対する調整を、前記ミル(2)ミル行列としてモデリングして行う方法であって、
a)クチュエータごとに等価動作範囲を決定するステップであって前記等価動作範囲はアクチュエータが等価であるとみなされる動作範囲を画定し、前記複数のアクチュエータに係る複数の等価動作範囲は前記ミルによって相等しく受け入れられている、等価動作範囲決定ステップと、
b)前記等価動作範囲に基づいて前記ミル行列をスケーリングすることによってスケーリング済みミル行列を決定するステップと、
c)前記アクチュエータを用いて前記ストリップ(7)の平坦性制御を行うべく、前記スケーリング済みミル行列の特異値分解を取得するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
等価動作範囲がベクトルの要素である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記等価動作範囲に基づいてスケーリングファクタを決定するステップを備え、前記スケーリング済みミル行列決定ステップb)は、前記スケーリングファクタを用いて前記ミル行列をスケーリングすることを含む請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スケーリングファクタは、対角行列であって、その対角線の対角要素によって前記等価動作範囲を表した対角行列である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記等価動作範囲決定ステップa)において、前記各アクチュエータのための前記等価動作範囲は、前記各等価動作範囲のユーザ入力を介して得られる請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
d)前記スケーリング済みミル行列の最大特異値と所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値との比率を決定するステップと、最小比率が得られるまで前記ステップa)〜d)を繰り返すステップとを備える請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記最大特異値が前記比率の分子であり、所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値が前記比率の分母である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
制御システム(3)の処理システム(3a)に読み込まれるときに請求項1から7のいずれか一項に記載のステップを行うコンピュータ実行可能要素を備えるコンピュータプログラム。
【請求項9】
複数のアクチュエータによって制御できるロール(9−1,9−2)を備えるミル(2)内でストリップ(7)を圧延する際の平坦性制御を、前記ミル(2)をミル行列としてモデリングして行う、制御システム(3)であって、
クチュエータごとに等価動作範囲を決定する手段であって前記等価動作範囲はアクチュエータが等価であるとみなされる動作範囲を画定し、前記複数のアクチュエータに係る複数の等価動作範囲は前記ミルによって相等しく受け入れられている、等価動作範囲決定手段と、
前記等価動作範囲に基づいて前記ミル行列をスケーリングすることによってスケーリング済みミル行列を決定する手段と
前記アクチュエータを用いて前記ストリップの平坦性制御を行うために前記スケーリング済みミル行列の特異値分解を得る手段と
有する処理システム(3b)を備える制御システム(3)。
【請求項10】
前記各等価動作範囲がベクトルの要素である請求項9に記載の制御システム(3)。
【請求項11】
前記処理システム(3b)は、前記等価動作範囲に基づいてスケーリングファクタを決定するとともに、前記スケーリングファクタを用いて前記ミル行列をスケーリングするように構成されている請求項9または請求項10に記載の制御システム(3)。
【請求項12】
前記スケーリングファクタは、前記等価動作範囲をその対角要素として有する対角行列である請求項11に記載の制御システム(3)。
【請求項13】
前記処理システム(3b)は、前記各等価動作範囲をユーザ入力から得るように構成されている、請求項9から12のいずれか一項に記載の制御システム(3)。
【請求項14】
前記処理システム(3b)は、最大特異値と所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値との比率を決定するように構成されており、前記処理システム(3b)は、
クチュエータごとに前記等価動作範囲を決定すること、
前記等価動作範囲に基づいて前記ミル行列をスケーリングすることによってスケーリング済みミル行列を決定すること、前記アクチュエータを用いて前記ストリップの平坦性制御を行うために前記スケーリング済みミル行列の特異値分解を得ること、および、
最小比率が得られるまで最大特異値と所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値との比率を決定すること
を繰り返すように構成されている請求項9から12のいずれか一項に記載の制御システム(3)。
【請求項15】
前記最大特異値が前記比率の分子であり、所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値が前記比率の分母である請求項14に記載の制御システム(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ミル内でストリップを圧延する制御に関し、特に、ストリップを圧延するための平坦性制御を調整する方法、および、該方法を実行するための制御システムおよびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スチールストリップなどのストリップ、または、他の金属から形成されるストリップは、ミル内で例えば冷間圧延または熱間圧延によって薄化プロセスに晒され得る。被加工物、すなわち、ストリップは、アンコイラから繰り出されて、ミル内で処理され、コイラ上へ巻き取られる。
【0003】
ミルは、ストリップがミルを通過するときにストリップよりも上側に配置されるロールの一方の組とストリップよりも下側に配置されるロールの他方の組とを伴うロールを備える。ミルは、ロール隙間を形成する2つのワークロール間でストリップを受けるようになっている。残りのロールは、ワークロールに対して更なる制御および圧力を与え、それにより、ロール隙間プロファイルを制御し、したがって、ストリップがロール隙間を通過して移動する際にストリップの平坦性を制御する。
【0004】
クラスターミルは、例えば、ワークロールの上下に層状に積み重ねられる複数のロールを備える。バックアップロール、すなわち、ロール隙間よりも上側に配置されるロールの最上部ロールとロール隙間よりも下側に配置されるロールの最下部ロールとがセグメント化されてもよい。各ロールセグメントは、クラウンアクチュエータを用いてミルの内外へ移動されてもよい。セグメント化されたロールの移動は、ロール隙間を通じて移動するストリップを形成するためにワークロールへ向けてロール群を通り抜ける。クラスターミルの残りのロールは、それらのそれぞれのアクチュエータを用いて作動されてもよい。曲げアクチュエータは、例えば、それらが割り当てられるロールに対して曲げ効果をもたらし、それにより、ロール隙間のプロファイルを変える。サイドシフトロールは、サイドシフトアクチュエータを介したサイドシフトロールの軸方向変位によってロール隙間プロファイルを変える非円柱形状を有してもよい。
【0005】
ストリップの幅全体にわたる均一な平坦性が一般に望ましい。これは、不均一な平坦性が、例えば、ほぼ均一な平坦性プロファイルを有するストリップよりも低い品質を有するストリップの製造をもたらす場合があるからである。不均一な平坦性を有するストリップは、例えば、座屈するあるいは部分的に波形になる場合がある。不均一な平坦性は、局所的に増大される張力に起因して、ストリップ破壊を引き起こす場合もある。したがって、ストリップの平坦性プロファイルは、ストリップがコイラ上に巻き取られる前に、例えばストリップにより測定ロールに加えられる力を測定することによって測定される。この場合、測定された平坦性データは、ストリップの均一な平坦性を得ることができるようにミルのロール隙間を制御するためにミルのアクチュエータを制御する制御システムに与えられる。アクチュエータを制御するために、ミルは、一般に、ミルのアクチュエータのそれぞれのための平坦性応答関数を用いてモデリングされる。これらは、例えば、時としてミル行列Gと称される行列における列として収集され得る。
【0006】
複数のアクチュエータを有するミル、例えばクラスターミルにおいては、該ミルが平坦性応答間で線形の依存性を有する場合がある。このことは、複数のアクチュエータによって与えられる組み合わされた平坦性応答がそれぞれの個々のアクチュエータにより与えられる平坦性効果を打ち消すことからストリップの平坦性に影響を及ぼさないアクチュエータ位置組み合わせが存在し得ることを意味する。前述した状況が生じ得るミルにおいては、対応するミル行列が特異であると言われている。数学的な表現では、特異ミル行列が最大階数を有さない。すなわち、ミル行列零空間がゼロよりも大きい寸法を有する。
【0007】
伝統的な制御手法は、アクチュエータごとに1つの制御ループを伴い、この場合、制御ループごとに平坦性エラーベクトルが1つの値に対して投影される。特異ミル行列を有するミルにおいて、これは、エラー投影が全ての想定し得るアクチュエータ位置組み合わせを可能にするため、幾つかのケースでストリップの平坦性が影響されないようなアクチュエータの動作をもたらす。これは、ミル行列の零空間内のアクチュエータ動作に対応する。繰り返し起こる障害により、アクチュエータは、平坦性に直接に影響を及ぼさない方向に沿って移動する。また、これらのアクチュエータ動作が大きくなりすぎるリスクもある。望ましくない挙動のこれら2つのケースは、アクチュエータを飽和させる場合があるが、不必要なアクチュエータ負荷および摩耗を引き起こす場合もある。
【0008】
この問題を扱うために、ミル行列Gがその特異値分解の形態G=UΣVで表すことができる。特異値分解から得られるΣの対角線を成すGの特異値は、直交行列Uの列によって規定される平坦性形状に対する直交行列Vの列ベクトルによって規定されるアクチュエータ位置組み合わせのそれぞれによって与えられる平坦性応答の大きさの情報を与える。また、特異値分解は、ロール隙間の平坦性プロファイルに直接に影響を与えないアクチュエータ位置、すなわち、零空間に関する情報を与える。
【0009】
平坦性に影響を与える方向で平坦性応答を使用して平坦性エラーをパラメータ化することにより、また、平坦性に影響を与える方向のみを利用して制御器出力をマッピングすることにより、平坦性に影響を与えない方向でのアクチュエータの動作を妨げることができる。したがって、ロール隙間の平坦性プロファイルに影響を及ぼさないアクチュエータ位置組み合わせが避けられる。ストリップの平坦性に影響を及ぼさないアクチュエータ位置の組み合わせを避けるべく特異値分解を利用することにより、アクチュエータ位置の幾つかの組み合わせが許容されないという意味で、全ての制御自由度を制御のために利用できるとは限らない。したがって、制御性能が損なわれる場合がある。また、別個の制御ループを満足に調整することが難しい場合もある。これは、各制御ループが、幾つかのアクチュエータを伴い、したがって、より複雑な動態を有するからである。EP2505276は、測定された平坦性エラーに基づく調整された平坦性エラーと閾値を下回る平坦性効果を与えるアクチュエータ位置に関する重みとを決定することによってこれらの問題を扱う。そのため、幾つかの状況では、モデルの零空間内のベクトルに対応するアクチュエータ位置組み合わせが許容される場合がある。それにより、全ての想定し得るアクチュエータ位置組み合わせ、すなわち、方法を実施する制御システムの全ての自由度が利用され得る。
【0010】
平坦性制御に基づく特異値分解が効率的であることが分かってきたが、良好な平坦性制御を得るためにはプロセスを正確に調整することが重要である。
【発明の概要】
【0011】
本開示の一般的な目的は、ミル内でストリップを圧延するときの平坦性制御を向上させることである。特に、平坦性制御を調整するための方法および制御システムを提供することが望ましい。
【0012】
したがって、本開示の第1の態様によれば、複数のアクチュエータによって制御できるロールを備えるミル内でストリップを圧延するための平坦性制御を調整する方法であって、ミルがミル行列を用いてモデリングされる方法において、
a)各アクチュエータのための等価動作範囲を得るステップと、
b)等価動作範囲に基づいてミル行列をスケーリングすることによってスケーリング済みミル行列を決定するステップと、
c)アクチュエータを用いてストリップの平坦性制御を行うためにスケーリング済みミル行列の特異値分解を得るステップと、
を備える方法が提供される。
【0013】
アクチュエータとは、一般に、1つのロール、または、バックアップロールなどのセグメント化されたロールのロールセグメントを制御する一組のアクチュエータを意味する。
【0014】
スケーリングは、ユーザ調整可能なパラメータ、すなわち、調整に関与するコミッショニングエンジニアが満足であると感じるアクチュエータ動作のサイズである等価動作範囲に基づく。また、この動作サイズは平坦性に影響を与えてもよく、これは、サイズが他のアクチュエータのそれとほぼ同程度である。各アクチュエータの等価動作範囲は、ある意味、一般にそれらの動作範囲が同じ平坦性効果を与えるという意味ではなく、むしろ、それらの動作範囲がミルによって等しく受け入れられるという点において、アクチュエータのどの程度大きい動作が等価であると見なされるのかを特徴付ける。等価動作範囲は、おおよそ、異なるアクチュエータがそれらの通常の制御動作をカバーすることが見込まれる範囲を示し、したがって、等価動作範囲は好ましい制御範囲と見なされてもよい。
【0015】
スケーリング済みミル行列の特異値分解は、当初のミル行列とは異なる特異値、特に、個々の特異値間の異なる比率を与える。これは、非特異部分の条件数、すなわち、所定の閾値を上回る特異値と関連付けられる方向に影響を与えるとともに、制御がうまくいく可能性に影響を及ぼす。スケーリングが変更され、したがって特異値分解も変更されると、特異値が影響されるだけでなく、分解G=UΣVにおける行列U、Vのそれぞれの列によって形成される2組の基底ベクトルも影響される。このことは、例えば第1の方向のためにアクチュエータ動作の異なる組み合わせが使用され、また、対応する平坦性エラーも異なることを意味する。各アクチュエータがどれほど多く使用されるかに対する影響は、実際に、等価動作範囲が調整パラメータとして使用されるときの調整の対象である。
【0016】
したがって、本開示を用いて、ミル行列のスケーリングを合理的に選択することによって、特異値分解を利用する平坦性制御のための良好な基準を得ることができる。また、調整手続きは、把握するのがユーザにとって容易であるとともに、作動時および保守点検時に迅速で効率的な調整をもたらす。
【0017】
アクチュエータスケーリングは、ミル行列の特異値分解と共に、モデル予測制御を伴う制御解決策に対して、および、アクチュエータごとの1つの制御器に対する平坦性エラーの分配が最適化条件に基づく制御解決策に対して実際に適用できる。
【0018】
1つの実施形態によれば、各等価動作範囲がベクトルの要素である。
【0019】
1つの実施形態は、等価動作範囲に基づいてスケーリングファクタを決定するステップを備え、ステップb)は、スケーリングファクタを用いてミル行列をスケーリングすることを含む。
【0020】
1つの実施形態によれば、スケーリングファクタが対角行列であり、この場合、対角行列によって形成されるその対角線は、等価動作範囲をその対角要素として有する。
【0021】
1つの実施形態によれば、ステップa)において、各アクチュエータのための等価動作範囲は、各等価動作範囲のユーザ入力を介して得られる。
【0022】
1つの実施形態は、d)スケーリング済みミル行列の最大特異値と所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値との比率を決定するステップと、最小比率が得られるまでステップa)〜d)を繰り返すステップとを備える。したがって、非特異部分の条件数を最小化でき、それにより、ロバスト性がより高い制御を得ることができる。例えば目標がn個の異なる方向をうまく制御することである場合には、特異値の比率σ/σが大きすぎてはならない。
【0023】
1つの実施形態によれば、最大特異値が比率の分子であり、所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値が比率の分母である。
【0024】
第2の態様によれば、制御システムの処理システムに読み込まれるときに第1の態様のステップを行うコンピュータ実行可能要素を備えるコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、例えば、メモリまたは他のコンピュータ可読手段にソフトウェアとして記憶されてもよい。
【0025】
本開示の第3の態様によれば、複数のアクチュエータによって制御できるロールを備えるミル内でストリップを圧延するための平坦性制御を行う制御システムであって、制御システムがミル行列を利用してミルをモデリングする、制御システムが提供され、該制御システムは、各アクチュエータのための等価動作範囲を得る、等価動作範囲に基づいてミル行列をスケーリングすることによってスケーリング済みミル行列を決定する、および、アクチュエータを用いてストリップの平坦性制御を行うためにスケーリング済みミル行列の特異値分解を得るようになっている処理システムを備える。
【0026】
1つの実施形態によれば、各等価動作範囲がベクトルの要素である。
【0027】
1つの実施形態によれば、処理システムは、等価動作範囲に基づいてスケーリングファクタを決定するとともに、スケーリングファクタを用いてミル行列をスケーリングするようになっている。
【0028】
1つの実施形態によれば、スケーリングファクタは、等価動作範囲をその対角要素として有する対角行列である。
【0029】
1つの実施形態によれば、処理システムは、各等価動作範囲をユーザ入力から得るようになっている。
【0030】
1つの実施形態によれば、処理システムは、スケーリング済みミル行列の最大特異値と所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値との比率を決定するようになっており、処理システムは、各アクチュエータのための等価動作範囲を得ること、等価動作範囲に基づいてミル行列をスケーリングすることによってスケーリング済みミル行列を決定して、アクチュエータを用いてストリップの平坦性制御を行うべくスケーリング済みミル行列の特異値分解を得ること、および、最小比率が得られるまで最大特異値と所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値との比率を決定することを繰り返すようになっている。
【0031】
1つの実施形態によれば、最大特異値が比率の分子であり、所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値が前記比率の分母である。
【0032】
更なる特徴および利点が以下に開示される。
【0033】
ここで、添付図面を参照して、本発明およびその特徴を非限定的な例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】クラスターミルの一例の斜視図である。
図2】制御システムのブロック図である。
図3A】クラスターミルにおける平坦性制御を調整するためのユーザインタフェースの一例である。
図3B】アクチュエータ動作範囲を選択するための図3aにおけるユーザインタフェースの等価動作範囲ウインドウの一例である。
図4】アクチュエータによって制御できる複数のロールを備えるミルにおいてストリップを圧延するための平坦性制御を調整するための方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、ロール装置1の一例の斜視図を示す。例示されたロール装置1は、クラスターミル2、アンコイラ3、およびコイラ5を備える。以下でミル2と称されるクラスターミル2は、硬質材料を圧延するため、例えば金属ストリップを冷間圧延するために使用されてもよい。
【0036】
ストリップ7は、アンコイラ3から繰り出されてコイラ5上に巻き取られてもよい。ストリップ7は、該ストリップ7がアンコイラ3からコイラ5へ移動する際に、ミル2による薄化プロセスに晒される。
【0037】
ミル2は、ワークロール19−1、19−2をそれぞれ含む複数のロール9−1、9−2を備える。ロール9−1は、ストリップ7の上方に上側ロール群を形成する。ロール9−2は、ストリップ7の下方に下側ロール群を形成する。例示されたミル2は、ロール9−1、9−2がストリップ7の上下にそれぞれ1−2−3−4形態を成して配置される20ハイミルである。しかしながら、本発明が6ハイミルおよび4ハイミルなどの他のタイプのミルにも同様に適用できることに留意すべきである。
【0038】
各ロールは、ワークロール19−1、19−2を変形させることによりワークロール19−1、19−2間に形成されるロール隙間21を調整するためにアクチュエータ(図示せず)によって作動されてもよい。ストリップ7の厚さ減少プロセスは、ストリップがロール隙間21を通過するときに得られる。そのため、ワークロール19−1、19−2は、ストリップ7がミル2を通じて移動するときにストリップ7と接触する。
【0039】
複数のロール9−1、9−2のそれぞれは、ミル2のロールの外側の組を形成するバックアップロール11−1、11−2、11−3、11−4などのバックアップロールを備える。各バックアップロールは複数のセグメント13に分割される。各セグメント13がアクチュエータによって制御されてもよい。セグメント13は、アクチュエータにより、ワークロール19−1、19−2へ向けて移動されあるいはワークロール19−1、19−2から離れるように移動されてもよい。回転セグメント13の移動は、ロール隙間21を通じて移動するストリップ7を形成するためにワークロール19−1および/またはワークロール19−2へ向けてロール群を通り抜ける。
【0040】
ストリップ7の厚さ減少プロセスの更なる制御を行うために、ロール9−1、9−2は、ワークロール19−1、19−2とバックアップロール11−1、11−2、11−3、11−4との間に配置される中間ロール15、17を更に備える。中間ロール15、17は、例えば、曲げアクチュエータおよび/またはサイドシフトアクチュエータをそれぞれ有してもよい。
【0041】
ロール装置1は、ここでは測定ロールによって例示される測定デバイス23を更に備える。測定デバイス23は、ストリップ7の幅に沿う力測定を可能にするためにストリップ7の幅よりも幅広い軸方向延在部を有する。
【0042】
測定デバイス23は複数のセンサを備える。センサは、例えば、ストリップによって測定デバイスに加えられる力を検出するために測定デバイスの外周面にある開口内に分配されてもよい。ストリップ7が測定デバイス23上にわたって移動するにつれて、ストリップ張力プロファイルがセンサによって得られてもよい。一様な力分布を有するストリップ張力プロファイルは、ストリップがその幅に沿って均一な平坦性を有することを示す。不均一であるストリップ張力プロファイルは、ストリップの関連する測定位置でストリップがその幅に沿って不均一な平坦性を有することを示す。
【0043】
測定されたストリップ張力プロファイルは、推定平坦性プロファイルへと変換されて、測定デバイス23によって測定データとして制御システム3へ与えられる。
【0044】
測定データは、ミル2のアクチュエータを用いてロール9−1、9−2を制御するために制御システム3によって処理され、それにより、ストリップ7の幅に沿って均一な平坦性または目標平坦性がもたらされる。
【0045】
図2は、制御システム3の概略的なブロック図を描く。制御システム3は例えば多変量モデル予測制御器であってもよく、または、制御システムは、それぞれのPI制御器によって実現される各アクチュエータのための1つの制御ループを備えてもよい。
【0046】
制御システム3は、入力/出力ユニット(I/O)3a、処理システム3b、および、メモリ3cを備える。I/Oユニット3aは、それが制御するべきロール装置に接続されるようになっている。制御システム3は、測定デバイスからI/Oユニット3aを介して測定データを受けるとともに、I/Oユニット3aを介してアクチュエータを制御するようになっている。メモリ3cは、制御システム3が制御するようになっているミル装置のモデルと、平坦性制御を調整するための他のコンピュータ実行可能要素とを記憶するようになっている。モデルはミル行列Gを備える。I/Oユニット3aは、制御システム3を用いてアクチュエータの調整を行うことができるように、マウスまたはキーボードなどの入力デバイスに接続されるとともに、コミッショニングエンジニアなどのユーザに対してユーザインタフェースを表示するようになっているディスプレイデバイスに接続されるようになっていてもよい。
【0047】
ここで、以下、図3a、3bおよび図4を参照して、平坦性制御を調整するための方法について更に詳しく説明する。図3aはユーザインタフェース4の一例を示し、このユーザインタフェースにおいて、第1のウインドウ4aは、測定デバイスのセンサによって測定されるそれぞれの制御前平坦性エラーE1と、アクチュエータ制御が開始されて応答が落ち着いた後に測定されるそれぞれの制御後平坦性エラーE2とを表示する。この例によれば、第2のウインドウ4bは、制御後平坦性エラーE2を得るためにクラウンアクチュエータのアクチュエータ動作を表示する。第3のウインドウ4cは、制御後平坦性エラーE2を得るために曲げアクチュエータのアクチュエータ動作を表示する。第4のウインドウ4dは、制御後平坦性エラーE2を得るためにサイドシフトアクチュエータおよびスキューアクチュエータのアクチュエータ動作を表示する。更に、ユーザインタフェース4にはアクチュエータ調整ウインドウ4eが表示される。この例によれば、ユーザは、図3bに示されるような等価動作範囲ウインドウ4fを開くべくアクチュエータ調整ウインドウ4eを選択してもよい。等価動作範囲ウインドウ4fは、ユーザがアクチュエータの等価動作範囲を変えることができるようにする。第1の列C1は、この例によれば11個のアクチュエータを有するミルのアクチュエータを示す。第2の列C2は、アクチュエータの等価動作範囲を示す。各等価動作範囲における値がユーザによって選択されてもよい。したがって、制御システムは、第2の列C2内での入力によって等価動作範囲のユーザ入力を受けてもよい。第3の列C3は、例えばミリメートルで表される、または、液圧アクチュエータの場合にはMPaで表される各等価動作範囲の単位を示してもよい。この例によれば、第4の列C4は、全動作範囲のうちのどの程度の割合の大きさが等価動作範囲として各アクチュエータに与えられるのかを示す。等価動作範囲は、例えば、望ましいアクチュエータ動作範囲の100%、すなわち、許容できるアクチュエータ動作の望ましい範囲の大きさの100%に対応してもよく、あるいは等価動作範囲は、望ましいアクチュエータ動作範囲の例えば2%または1%に対応してもよい。
【0048】
各アクチュエータの等価動作範囲は、ある意味、一般にそれらの動作範囲が同じ平坦性効果を与えるという意味ではなく、むしろ、それらの動作範囲がミルによって等しく受け入れられるという点において、アクチュエータのどの程度大きい動作が等価であると見なされるのかを特徴付ける。等価動作範囲は、おおよそ、異なるアクチュエータがそれらの通常の制御動作をカバーすることが見込まれる範囲を示し、したがって、等価動作範囲は好ましい制御範囲と見なされてもよい。しかしながら、実際に重要なことは、異なるアクチュエータに与えられる等価動作範囲間の関係だけである。アクチュエータの等価動作範囲は、そのアクチュエータの許容される動作の実際の物理的範囲に基づく数値であってもよい。等価動作範囲ウインドウ4eを用いて、ユーザは、アクチュエータのための等価動作範囲を選択してもよい。ユーザは、アクチュエータのための選択された等価動作範囲が受け入れ可能であり且つミルにおける平坦性制御のために利用されるべきかどうかを決定する前に、選択された等価動作範囲に基づいて、ウインドウ4a−4d内で平坦性エラー制御のシミュレーションを観察してもよい。
【0049】
図4は、平坦性制御調整方法を更に詳しく示すフローチャートを描く。ステップa)では、処理システム3bによって各アクチュエータのための等価動作範囲が得られる。各アクチュエータのための等価動作範囲は、例えば、ユーザインタフェース4を介したユーザ入力によって得られてもよい。そのようなユーザ入力は、例えば、等価動作範囲ウインドウ4eを介して行われてもよい。
【0050】
それぞれの得られた等価動作範囲はベクトルpの要素である。そのため、ベクトルpの各要素がそれぞれのアクチュエータと関連付けられ、したがって、アクチュエータとベクトルの座標との間に1対1の対応が存在する。
【0051】
ステップb)では、制御システム3の処理システム2bによってメモリ3cから得られるミル行列Gをスケーリングすることによりスケーリング済みミル行列Gが決定される。スケーリングは等価動作範囲に基づく。ステップb)におけるミル行列Gのスケーリングは、等価動作範囲pに基づいてスケーリングファクタg−1を決定するとともにスケーリングファクタg−1を用いてミル行列Gをスケーリングすることによって得られてもよい。一般に、ミル行列Gのスケーリングは、スケーリングファクタg−1とミル行列Gとを乗じることによって得られる。1つの変形によれば、スケーリングは、ミル行列Gに右からスケーリングファクタg−1を乗じることを伴う。すなわち、G=G×g−1である。スケーリングファクタg−1は、以下の方程式(1)に示されるように、その対角線が各アクチュエータの等価動作範囲をその対角要素として有する対角行列であってもよい。
【0052】
スケーリングファクタg−1は、g=(diag(pa))-1の逆数であり、以下のように導き出すことができる。uが当初の単位で表されるアクチュエータ位置を示すものとする。このとき、等価動作範囲pによってスケーリングされたアクチュエータをu=g×uで表すことができる。このとき、以下の関係が成り立つ。
ここで、G=G×g−1である。すなわち、ミル行列Gがg−1によってスケーリングされる。
【0053】
ステップc)では、スケーリング済みミル行列Gの特異値分解が処理システム3bによって得られる。スケーリング済みミル行列Gは、アクチュエータを用いてストリップの平坦性制御を行うために利用されてもよい。特に、前述した調整は、多変量モデル予測制御器またはPI制御器を備える制御システムで利用され得る。
【0054】
スケーリング済みミル行列Gの特異値分解形式は以下のように表されてもよい。
【0055】
行列Σは、Gの特異値がその対角線を成す対角行列であり、この場合、最も大きい特異値が最初にあり、それから徐々に減少する順序で配置される。行列Uは、特定のアクチュエータ位置組み合わせによって与えられる平坦性効果、すなわち、平坦性効果をロール隙間に与えるとともに行列Vの行ベクトルによって規定されるアクチュエータ形態と関連付けられる。したがって、行列Vの各方向、すなわち、各行ベクトルは、特定のアクチュエータ位置組み合わせを表す。行列Σの対角線を形成する特異値は、行列Vのアクチュエータ位置組み合わせのための平坦性効果の大きさを表す。
【0056】
行列Vは、平坦性効果を何ら与えないアクチュエータ位置組み合わせと関連付けられ、また、行列Σの対角線を形成する特異値はゼロに近いあるいはゼロである。特に、行列Vの列ベクトルはミル行列Gの零空間にまたがる。実際には、制御目的のためにゼロであると見なされる特異値は、所定の平坦性効果閾値を下回る特異値であってもよい。一例として、最も大きい特異値よりも10−3倍小さい特異値がゼロに設定されてもよい。したがって、これらの特異値に対応するVの列ベクトルは、ミル行列Gの零空間にまたがるように規定される。
【0057】
調整プロセスの1つの変形によれば、ステップd)において、スケーリング済みミル行列の最大特異値と所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値との比率が処理システム3bによって決定される。比率が最小にされるまでステップa)〜d)が繰り返されてもよい。したがって、最大特異値が比率の分子であり、また、所定の平坦性効果閾値を有する特異値が比率の分母である。この比率は、特異の方向と関連付けられず且つ最も小さいそのような特異値に等しくあるいはそれよりも大きくてもよい特異値と最大特異値との間の比率である有効条件数を決定する。したがって、所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値は、例えば、行列Σの非特異部分の最小特異値であってもよい。しかしながら、最大特異値と最小特異値との間の比率をとる行列Σの条件数は、しばしば、かなり高い。このことは、スケーリング済みミル行列の階数に対応する数よりも少ない方向を制御するという結果に甘んじなければならない場合があることを意味する。そのため、所定の平坦性効果値よりも大きい特異値は、行列Σの非特異部分の最小特異値でない特異値であってもよい。所定の平坦性効果値よりも大きい特異値は、ユーザ、例えばコミッショニングエンジニアによって選択されてもよい。
【0058】
一例として、ミル装置が11個のアクチュエータを有するが階数8のミル行列しか有さない場合には、理論的に8個の方向を制御することができる。しかしながら、最大特異値と8番目の特異値との間の比率をとる実際の条件数は恐らくかなり高い。このことは、代わりに例えばたった5つの方向のみを制御するという結果に甘んじなければならない場合があることを意味する。しかしながら、1番目の特異値と5番目の特異値との間の比率は、スケーリング済みミル行列G、すなわち、アクチュエータスケーリングに依存する。比率を最小にすることにより、スケーリング済みミル行列Gの非特異部分のための最小条件数が得られてもよく、それにより、よりロバスト性が高い制御がもたらされてもよい。したがって、有効条件数を最小にする等価動作範囲に基づくスケーリング済みミル行列Gが平坦性制御のために使用されてもよい。あるいは、最小条件数に基づくスケーリング済みミル行列Gが、特定のケースに対する選好にしたがって例えば等価動作範囲ウインドウ4eを介して調整されてもよい最初の選択肢として使用されてもよい。
【0059】
ステップd)に代わる手段として、ステップd’)では、最大特異値とユーザ選択された特異値との比率が決定されてもよい。比率が最小化されるまでステップa)〜d’)が繰り返されてもよい。ユーザ選択された特異値は、必ずしも所定の平坦性効果閾値より大きい必要はない。代わりに、ユーザ選択された特異値は、ユーザ、例えばコミッショニングエンジニアが効率的な平坦性制御にとって役立つと信じる特異値方向の数に対応する特異値数順位の特異値であってもよい。
【0060】
最大特異値と所定の平坦性効果閾値よりも大きい特異値との間の比率または最大特異値とユーザ選択された特異値との間の比率を最小にすることによるおよび/またはスケーリングファクタのユーザ選択による最適化によって得られるスケーリング済みミル行列Gは、平坦性制御のためにメモリ3cに記憶されてもよい。
【0061】
前述したように、本明細書中で与えられる調整プロセスは、PI制御システムのため、および、ソフトウェア、ハードウェア、または、これらの組み合わせで実施されてもよい多変量モデル予測制御のための両方で利用されてもよい。前者の場合には、処理システムを用いてストリップの基準平坦性と測定データとの間の差によって平坦性エラーeが決定され得る。平坦性エラーeは、調整済み平坦性エラーeを得るべく調整される。調整済み平坦性エラーeは、パラメータ化された平坦性エラーとして解釈されなければならない。すなわち、調整済み平坦性エラーeは平坦性エラーeのパラメータ化である。調整済み平坦性エラーeは、例えば以下の方程式(4)(5)のうち一方の最小化に基づいて決定される。調整済み平坦性エラーeの決定は、調整済み平坦性エラーと制御ユニット出力uとに対するコスト、すなわち重みを加味しつつ、また、制御ユニット出力に対する制約に留意しつつ、スケーリング済みミル行列Gを用いた調整済み平坦性エラーeのマッピングと平坦性エラーeとの間の差に基づく。そのような制約は、例えば、末端制約、すなわち、アクチュエータの最小および最大の許容位置または可能位置であってもよい。また、制約は、比率制約、すなわち、どの程度速くアクチュエータが移動できるようにされるかあるいは移動できるかにも関連し得る。更に、制約がアクチュエータ位置間の差に関連してもよい。
【0062】
エラーパラメータ化は、通常はかなり低い数であるアクチュエータごとの正に1つの測定値への多くの当初の測定値の投影と見なされてもよい。
【0063】
方程式(4)中の変数tは、平坦性エラーe、調整済み平坦性エラーe、および、制御ユニット出力uの時間依存性を示す。EP2505276には最適化が更に詳しく記載される。
【0064】
PI制御器の代わりに多変量モデル予測制御器(MPC)が使用される場合、MPC制御器は、基準も適用するが、その場合、アクチュエータへ送られるべき操作変数u(t)の全てのサンプリング瞬間における直接的な決定のために基準を適用する。この基準は以下のように定式化され得る。
ここで、Hは水平であり、また、
は、サンプリング瞬間kにおける予測平坦性エラーである。また、MPC解決策が使用されるときでも、制御の調整においてスケーリング済みミル行列Gの特異値分解を使用できる。小さい特異値に結び付けられる方向でのアクチュエータ動作が望ましくないため、対角行列の標準的な選択ではなく、特異値分解の助けを伴って重み行列Qが選択されるべきである。
という選択と対角行列Qとを用いると、別個の特異値方向と関連付けられる調整パラメータが得られる。Qの要素における大きい値が小さい特異値と関連付けられるように選択されることが有益である。同様に、特異値にしたがって平坦性エラーの異なる形態に関して重みを設定できるようにQが以下のように選択されてもよい。
この場合、対角行列Qを用いると、大きい特異値と関連付けられる要素のための大きい値を有利に選択できる。これは、これらが一般に排除されることが望まれるエラー形態だからである。また、対角行列Qを用いると、小さい特異値と関連付けられる要素のための低い値を有利に選択できる。これは、これらが打ち消すのが非常に難しいと見なされるからである。
【0065】
当業者は、本発明が前述した実施例に決して限定されないことを認識する。それどころか、添付の特許請求の範囲内で多くの改変および変形が可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図4