(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009726
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】除草性カルボン酸及び水酸化テトラアルキルアンモニウム又は水酸化(アリールアルキル)トリアルキルアンモニウムから誘導される化合物
(51)【国際特許分類】
A01N 37/34 20060101AFI20161006BHJP
A01N 37/40 20060101ALI20161006BHJP
A01N 39/04 20060101ALI20161006BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20161006BHJP
A01N 43/76 20060101ALI20161006BHJP
A01N 57/20 20060101ALI20161006BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20161006BHJP
【FI】
A01N37/34 106
A01N37/40
A01N39/04 A
A01N43/40 101D
A01N43/40 101E
A01N43/40 101H
A01N43/40 101J
A01N43/76 101
A01N57/20 G
A01N57/20 L
A01P13/00
【請求項の数】19
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2009-550940(P2009-550940)
(86)(22)【出願日】2008年2月26日
(65)【公表番号】特表2010-519302(P2010-519302A)
(43)【公表日】2010年6月3日
(86)【国際出願番号】US2008002488
(87)【国際公開番号】WO2008106107
(87)【国際公開日】20080904
【審査請求日】2011年2月22日
【審判番号】不服2014-19013(P2014-19013/J1)
【審判請求日】2014年9月24日
(31)【優先権主張番号】60/903,417
(32)【優先日】2007年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】クラマー,ヴァンソン,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】オウス,デビット,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】パーソン,ノーマン,アール.
(72)【発明者】
【氏名】タンク,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ゼトレー,マーク,ダブリュ.
【合議体】
【審判長】
井上 雅博
【審判官】
佐藤 健史
【審判官】
木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公告第1056235(GB,A)
【文献】
特開昭60−156545(JP,A)
【文献】
特開昭51−106728(JP,A)
【文献】
特表2009−511497(JP,A)
【文献】
国際公開第83/03608(WO,A1)
【文献】
特開昭59−128396(JP,A)
【文献】
特開昭59−206394(JP,A)
【文献】
UGRYUMOV,E.P.et al.,Agrokhimiya,1988年,No.7,p.112〜117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N37/34,39/02,39/04,43/40,43/76,57/20,A01P13/00,C07C65/21,59/135,59/125,255/54,211/62,C07D213/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性の除草性カルボン酸に感受性を有する若しくは影響を受ける作物に隣接する望ましくない植生を防除する方法であって、前記植生又はその場所を、除草性カルボン酸のテトラアルキルアンモニウム塩の除草有効量を含む組成物と接触させること、又は前記組成物を土壌に施用することを含み、前記除草性カルボン酸が、2,4−D、トリクロピル、アミノピラリド、クロピラリド、フルロキシピル、ピクロラム、シハロホップ、フルアジホップ、ハロキシホップ、クロジナホップ、フェノキサプロプまたはジカンバである、方法。
【請求項2】
前記除草性カルボン酸のテトラアルキルアンモニウム塩の除草有効量を含む組成物が、さらに界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が、アルキル硫酸塩類、アルキルアリールスルホン酸塩類、アルキルフェノール−アルキレンオキシド付加物、アルコール−アルキレンオキシド付加物、石鹸類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、スルホコハク酸塩類のジアルキルエステル類、ソルビトールエステル類、第四級アミン類、脂肪酸のポリエチレングリコールエステル類、エチレンオキシドとポリピレンオキシドのブロックコポリマー類、またはモノ及びジアルキルリン酸エステル類の塩類から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記除草性カルボン酸のテトラアルキルアンモニウム塩の除草有効量を含む組成物が、さらに他の除草剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記他の除草剤が、グリホセート、グルホシネート又は2,4−Dである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記揮発性の除草性カルボン酸に感受性を有する若しくは影響を受ける作物が、トマト、綿、ダイズ、ヒマワリ及びブドウから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記望ましくない植生が、前記除草性カルボン酸に耐性、あるいは抵抗性になった作物におけるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記作物が、オーキシン耐性作物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記作物が、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸耐性作物である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記作物が、トウモロコシ、コムギ、イネ、ダイズ、テンサイ、綿、およびキャノーラから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記除草性カルボン酸が、2,4−D、トリクロピル、シハロホップまたはジカンバである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記テトラアルキルアンモニウム塩が、式
【化4】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、独立して(C
1−C
16)アルキルを表すか又はR
1、R
2及びR
3のいずれか2つが、−(CH
2)
n−(式中、nは3〜5の整数である)を表し、R
4は(C
2−C
16)アルキル又はアリールアルキルを表す]で示される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
R1、R2及びR3がCH3であり、R4が−(C2−C16)アルキルである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
R1、R2及びR3がCH3であり、R4がヒドロキシで置換された(C2−C16)アルキルである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記テトラアルキルアンモニウム塩がコリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記除草性カルボン酸のテトラアルキルアンモニウム塩が、2,4−Dのコリン塩である、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記除草性カルボン酸のテトラアルキルアンモニウム塩が、2,4−Dのコリン塩および他の除草剤がグリホセートである、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
前記除草性カルボン酸のテトラアルキルアンモニウム塩が、2,4−Dのコリン塩である、請求項7〜10に記載の方法。
【請求項19】
揮発性の除草性カルボン酸に感受性を有する若しくは影響を受ける作物に隣接する望ましくない植生を防除する方法であって、前記植生又はその場所を、除草性カルボン酸のコリン塩の除草有効量を含む組成物と接触させること、又は前記組成物を土壌に施用することを含み、前記除草性カルボン酸が、2,4−D、トリクロピル、アミノピラリド、クロピラリド、フルロキシピル、ピクロラム、シハロホップ、フルアジホップ、ハロキシホップ、クロジナホップ、フェノキサプロプまたはジカンバである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年2月26日に出願された米国特許出願第60/903,417号の優先権を主張する。本発明は、水酸化テトラアルキルアンモニウム又は水酸化(アリールアルキル)トリアルキルアンモニウムとカルボン酸系除草剤を組み合わせることによって形成される化合物(液体又は固体)に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性除草剤(acid herbicides)、例えば2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)は、不要植生(unwanted vegetation)を防除するために長年使用されてきた。2,4−Dは通常、水溶性の塩又は乳化エステルへの変換によって液体製剤に変換される。エステル製剤は有害植生の防除において酸当量ベースで塩よりも有効であることが認められているが、その揮発性のために隣接する有用な植生に移動して、感受性植物に許容できない被害を生じさせるという望ましくない特徴を有する。
【0003】
水溶性の塩、例えば2,4−Dのジメチルアミン塩の調製を含む、揮発性の問題を解決するための取り組みは必ずしも全面的に成功を収めているわけではない。というのは、アミンの揮発時に除草剤がその最初の酸形態に戻ってしまい、この酸形態は、それ自体ある種の好ましくない条件下で、感受性作物への被害を生じさせるのに足りる揮発性を有するからである。
【0004】
温暖な夏の数か月の間に施用される2,4−Dエステル又は2,4−Dジメチルアミン製剤は、噴霧された表面からの除草剤の蒸発による蒸気ドリフト及びその後の高度感受性作物、例えばトマト、綿、ダイズ、ヒマワリ及びブドウへの被害を導き得る。これは、除草剤の施用後数時間以内に起こり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、商業的に使用されているカルボン酸系除草剤塩と少なくとも同程度に活性であるが、揮発性がより低いために、その使用が近隣の感受性作物に損傷を与えない、除草性カルボン酸誘導体を得ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
今や、カルボン酸系除草剤を水酸化テトラアルキルアンモニウム又は水酸化(アリールアルキル)トリアルキルアンモニウムのいずれかと組み合わせることによって形成される化合物が、酸当量ベースで商業的に使用されるカルボン酸系除草剤塩と少なくとも同等の除草活性を有するが、低い揮発性を備えることが見出された。さらに、前記化合物は、水性濃厚剤又は乳化液体としてより都合良く製剤化できる。本発明は、除草性カルボン酸とN−((C
1−C
16)アルキル又はアリールアルキル)トリ((C
1−C
16)アルキル)アンモニウム水酸化物(式中、アルキル基は同じか又は異なっていてもよい)の反応生成物を含む除草性化合物に関する。本発明は、農業的に許容される補助剤(adjuvant)又は担体(carrier)と混合して、そのような化合物の除草有効量を含有する除草組成物を含む。本発明はまた、植生又は植生の場所、並びに植生の出現前の土壌への、前記化合物の除草有効量の施用によって、望ましくない植生を死滅させる又は防除するための本発明の化合物及びそれらの組成物の使用方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特に他に規定されない限り、「アルキル」という用語、並びに「アリールアルキル」のような派生語は、本明細書中で使用されるとき、直鎖(straight chain)、分枝鎖(branched chain)及び環状部分(cyclic moieties)をそれらの範囲内に含む。特に他に記載されない限り、各々は、置換されていなくてもよく、又はハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ又はアルキルチオから選択されるがこれらに限定されない1又はそれ以上の置換基で置換されていてもよい。但し置換基は立体的に適合性(sterically compatible)であり、化学結合及びひずみエネルギーの法則を満たす。「アリール」という用語は、フェニル基、インダニル基又はナフチル基を指す。アリール基は、置換されていなくてもよく、又はハロゲン、ヒドロキシ、C
1−C
6アルキル又はC
1−C
6アルコキシから選択される1又はそれ以上の置換基で置換されていてもよい。但し置換基は立体的に適合性であり、化学結合及びひずみエネルギーの法則を満たす。「アリールアルキル」という用語は、1個のアリール基で置換されたC
1−C
4アルキル基を指す。
【0008】
除草性カルボン酸は、カルボン酸基を含む除草剤を意味し、安息香酸系除草剤、例えばクロラムベン、ジカンバ、2,3,6−TBA及びトリカンバ;有機リン系除草剤、例えばグルホシネート及びグリホセート;ピリミジニルオキシ安息香酸系除草剤、例えばビスピリバック及びピリミノバック;フタル酸系除草剤、例えばクロルタール;ピリジンカルボン酸系除草剤、例えばアミノピラリド、クロピラリド、フルロキシピル、ピクロラム及びトリクロピル;キノリンカルボン酸系除草剤、例えばキンクロラック及びキンメラック;フェノキシ酢酸系除草剤、例えば4−CPA、2,4−D、3,4−DA及びMCPA;フェノキシ酪酸系除草剤、例えば4−CPB、2,4−DB、3,4−DB及びMCPB;フェノキシプロピオン酸系除草剤、例えばクロプロップ、4−CPP、ジクロルプロップ、3,4−DP、フェノプロップ、メコプロップ及びメコプロップ−P;並びにアリールオキシフェノキシプロピオン酸系除草剤、例えばクロラジホップ、クロジナホップ、クロホップ、シハロホップ、ジクロホップ、フェノキサプロプ、フルアジホップ、ハロキシホップ、イソキサピリホップ、メタミホップ、プロパキザホップ、キザロホップ及びトリホップを包含する。好ましい除草性カルボン酸は、2,4−D、トリクロピル、アミノピラリド、クロピラリド、フルロキシピル、ピクロラム、シハロホップ、フルアジホップ、ハロキシホップ、クロジナホップ、フェノキサプロプ、ジカンバ、グルホシネート及びグリホセートである。
【0009】
N−((C
1−C
16)アルキル又はアリールアルキル)トリ((C
1−C
16)アルキル)アンモニウム水酸化物は、式、
【化1】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、独立して(C
1−C
16)アルキルを表すか又はR
1、R
2及びR
3のいずれか2つが、−(CH
2)
n−(式中、nは3〜5の整数である)を表し、R
4は((C
1−C
16)アルキル又はアリールアルキル)を表す]
の化合物を指す。好ましいN−((C
1−C
16)アルキル又はアリールアルキル)トリ((C
1−C
16)アルキル)アンモニウム水酸化物は、R
1、R
2、R
3及びR
4が同じであるもの、又はR
1、R
2及びR
3がCH
3であり、R
4が(C
2−C
16)アルキル又はアリールアルキルであるものである。
【0010】
本発明の化合物は、適切なN−((C
1−C
16)アルキル又はアリールアルキル)トリ((C
1−C
16)アルキル)アンモニウム水酸化物と除草性カルボン酸の反応によって好都合に調製できる。除草性カルボン酸をメタノールのような溶媒中でN−((C
1−C
16)アルキル又はアリールアルキル)トリ((C
1−C
16)アルキル)アンモニウム水酸化物と混合し、続いて溶媒及び生成された又はN−((C
1−C
16)アルキル又はアリールアルキル)トリ((C
1−C
16)アルキル)アンモニウム水酸化物反応物中に存在する何らかの水分を真空下で除去する。
【0011】
除草剤(herbicide)という用語は、植物を死滅させる、防除する又はさもなければ植物の成長を不利な方向に改変する有効成分を意味するために本明細書中で使用される。除草有効(herbicidally effective)量又は植生防除量(vegetation controlling amount)は、不利な方向への改変作用を生じさせる有効成分の量であり、自然な発育からの逸脱、死滅、調節、乾燥、遅延等を含む。植物(plants)及び植生(vegetation)という用語は、発芽種子、出芽実生及び確立された植生を包含する。
【0012】
いずれかの生育段階で又は定植若しくは出芽の前に、植物又は植物の場所に本発明の化合物が直接施用されると、本発明の化合物によって除草活性が発揮される。認められる効果は、防除される植物種、植物の生育段階、希釈及び噴霧液滴の大きさの施用パラメータ、固体成分の粒径、使用時の環境条件、用いる特定化合物、用いる特定補助剤及び担体、土壌の種類等、並びに施用する化学物質の量に依存する。これらや他の因子は、非選択的又は選択的な除草作用を促進するために当分野で公知のように調整することができる。
【0013】
1〜2,000g/Haの施用量が、出芽後施用及び出芽前施用の両方において一般的に用いられる。より高い施用量を指定すると、一般に広範な望ましくない植生の非選択的な防除が得られる。より低い施用量では、典型的には選択的な防除が得られ、作物の存在する場所において使用できる。
【0014】
本発明の化合物はしばしば、より広範囲の望ましくない植生を防除するために1又はそれ以上の他の除草剤と共に施用される。他の除草剤と併用するとき、特許請求される本化合物は、その他の除草剤(1又は複数)と共に製剤してもよく、その他の除草剤(1又は複数)とタンク内混合してもよく、又はその他の除草剤(1又は複数)と連続的に施用してもよい。本発明の化合物は、さらに、グリホセート耐性作物、グルホシネート耐性作物又は2,4−D耐性作物に関してグリホセート、グルホシネート又は2,4−Dと共に使用することができる。一般に、本発明の化合物を、処理する作物に対して選択的であり、且つ用いる施用量でこれらの化合物によって防除される雑草のスペクトルを補完する除草剤と組み合わせて使用することが好ましい。さらに、本発明の化合物と他の補完的除草剤を、混合製剤又はタンクミックスのいずれかとして同時に施用することが一般的に好ましい。
【0015】
本発明の化合物は、一般に、それらの選択性を高めるために公知の除草剤薬害軽減剤、例えばベノキサコール、ベンチオカルブ、ブラシノライド、クロキントセット(メキシル)、シオメトリニル、ダイムロン、ジクロルミド、ジシクロノン、ジメピペレート、ジスルホトン、フェンクロラゾール−エチル、フェンクロリム、フルラゾール、フルクソフェニム、フリラゾール、イソキサジフェン−エチル、メフェンピル−ジエチル、MG191、MON4660、ナフタル酸無水物(NA)、オキサベトリニル、R29148及びN−フェニルスルホニル安息香酸アミド類と組み合わせて使用できる。本発明の化合物は、遺伝子操作によって又は突然変異と選択によって、それらに対して又は他の除草剤に対して耐性(tolerant)又は抵抗性(resistant)となった多くの作物において望ましくない植生を防除するために付加的に使用できる。例えば、感受性植物におけるアセト乳酸シンターゼ阻害剤である化合物に対して耐性又は抵抗性となったトウモロコシ、コムギ、イネ、ダイズ、テンサイ、綿、キャノーラ、及び他の作物を処理することができる。多くのグリホセート耐性作物及びグルホシネート耐性作物も同様に、単独で又はこれらの化合物と組み合わせて処理することができる。一部の作物(例えば綿)は、オーキシン型除草剤、例えば2,4−ジクロロフェノキシ酢酸に対して耐性となっている。これらの化合物は、そのような抵抗性作物又は他のオーキシン耐性作物を処理するために使用され得る。
【0016】
本発明の化合物を除草剤として直接利用することも可能であるが、除草有効量の化合物を少なくとも1つの農業的に許容される補助剤又は担体と共に含む混合物中で使用することが好ましい。適切な補助剤又は担体は、特に作物の存在下で選択的雑草防除のために組成物を施用するときに用いられる濃度で、有用な作物に対して植物毒性であってはならず、また化合物又は他の組成物生物と化学反応するべきではない。そのような混合物は、直接雑草又は雑草のある場所への施用のために設計され得るか、又は通常は施用の前にさらなる担体及び補助剤で希釈される濃厚剤(concentrates)又は製剤(formulations)であり得る。混合物は、固体、例えば粉剤、粒剤、顆粒水和剤若しくは水和剤(wettable powders)、又は液体、例えば乳剤、溶液、乳濁液若しくは懸濁液であり得る。
【0017】
本発明の除草性混合物を調製する際に有用である適切な農業用補助剤及び担体は、当業者に周知である。
【0018】
使用できる液体担体は、水、トルエン、キシレン、石油ナフサ、作物油、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アミルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等を含む。水は、一般に濃厚剤の希釈のための選択担体である。
【0019】
適切な固体担体は、滑石、パイロフィライトクレー、シリカ、アタパルガスクレー、カオリンクレー、キーゼルグール、チョーク、珪藻土、石灰、炭酸カルシウム、ベントナイトクレー、フラー土、綿実殻、小麦粉、大豆粉、軽石、木粉、クルミ殻粉、リグニン等を含む。
【0020】
通常、1又はそれ以上の界面活性剤を本発明の組成物に組み込むことが望ましい。そのような界面活性剤は、固体組成物及び液体組成物の両方において、特に施用前に担体で希釈するように設計されたものにおいて好都合に使用される。界面活性剤は、陰イオン性、陽イオン性又は非イオン性であり得、乳化剤、湿潤剤、懸濁化剤として、又は他の目的のために使用できる。典型的な界面活性剤は、アルキル硫酸塩類、例えばラウリル硫酸ジエタノールアンモニウム;アルキルアリールスルホン酸塩類、例えばドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム;アルキルフェノール−アルキレンオキシド付加物、例えばノニルフェノール−C
18エトキシレート;アルコール−アルキレンオキシド付加物、例えばトリデシルアルコール−C
16エトキシレート;石鹸類、例えばステアリン酸ナトリウム;アルキルナフタレンスルホン酸塩類、例えばジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム;スルホコハク酸塩類のジアルキルエステル類、例えばジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム;ソルビトールエステル類、例えばオレイン酸ソルビトール;第四級アミン類、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム;脂肪酸のポリエチレングリコールエステル類、例えばステアリン酸ポリエチレングリコール;エチレンオキシドとポリピレンオキシドのブロックコポリマー類;並びにモノ及びジアルキルリン酸エステル類の塩類を含む。
【0021】
農業用組成物において一般的に使用される他の補助剤は、相溶化剤、消泡剤、金属イオン封鎖剤、中和剤及び緩衝剤、腐食防止剤、染料、着臭剤、展着剤、浸透助剤、固着剤、分散剤、増粘剤、凝固点降下剤、抗菌剤等を含む。組成物はまた、他の適合性成分、例えば他の除草剤、植物成長調節剤(plant growth regulants)、殺菌剤(fungicides)、殺虫剤等を含んでもよく、液体肥料又は固体・微粒子状肥料担体、例えば硝酸アンモニウム、尿素等と共に製剤化することができる。
【0022】
本発明の除草組成物中の有効成分の濃度は、一般に0.001〜98重量%である。0.01〜90重量%の濃度がしばしば使用される。濃厚剤として使用されるように設計された組成物では、有効成分は、一般に5〜98重量%、好ましくは10〜90重量%の濃度で存在する。そのような組成物は、典型的には施用前に不活性担体、例えば水で希釈される。雑草又は雑草の場所に通常施用される希釈された組成物は、一般に0.001〜2重量%の有効成分を含み、好ましくは0.01〜1重量%の有効成分を含む。
【0023】
本発明の組成物は、従来の地上又は空中散布機、噴霧機及び散粒機の使用によって、灌漑用水への添加によって、並びに当業者に公知の他の従来の手段によって雑草又は雑草のある場所に施用できる。
【0024】
以下の実施例は、本発明の様々な態様を説明するために提示されるものであり、特許請求の範囲に対する限定と解釈されるべきではない。
【実施例】
【0025】
一般的な調製実施例
カルボン酸除草剤とN−((C
1−C
16)アルキル又はアリールアルキル)トリ((C
1−C
16)アルキル)アンモニウム水酸化物を室温でメタノール中にて等モル量で組み合わせると、カルボン酸のアンモニウム塩の溶液が得られる。次に、室温から50℃でメタノール(及び存在するあらゆる水分)を蒸発除去することによって生成物を単離する。生成物を当分野で公知の方法によって精製し、本発明の化合物を液体又は固体としてもよい。あるいは、本発明の生成物を水溶媒中で調製し、得られたままの状態で使用してもよい。以下の表Iは、このようにして調製された化合物をそれらの物理的状態及び該当する場合は融解範囲(MP)と共に列挙する。
【0026】
あるいは、等モル量のカルボン酸除草剤、N−((C
1−C
16)アルキル又はアリールアルキル)トリ((C
1−C
16)アルキル)アンモニウムハロゲン化物(例えば塩化物又は臭化物)及び金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)を溶媒中、例えばメタノール中で組み合わせることによって試料を調製してもよい。次に、室温から50℃でメタノール(及び存在するあらゆる水分)を蒸発除去し、水中に選択的に溶解して金属ハロゲン化物塩を除去することによって生成物を単離し、本発明の化合物を液体又は固体としてもよい。
【表1】
【0027】
除草剤評価のための発生後施用方法
泥炭ベースの鉢植え用の土、Metro−mix 360をこの試験のための土壌培地として使用した。Metro−mixは、35〜45%の特殊加工されたココピート(Coconut Coir Pith)、10〜20%の園芸グレードのバーミキュライト、15〜25%の加工されたAsh Bark(processed Ash Bark)、20〜30%の選択Canadian Sphagnum Peat Moss(カナダミズゴケピートモス)及び独自栄養素と他の成分から成る生育培地である。各々の腫(species)のいくつかの種子を10cmの正方形の鉢に植え付け、上部に1日2回水を与えた。植物材料を温室(green house)内で26〜28℃の一定温度及び50〜60%の相対湿度で繁殖(propagated)させた。自然光に1000ワットのメタルハライドオーバーヘッドランプを補足し、平均照明500μE m
−2・s
−1光合成有効放射(PAR)とした。日照時間は16時間であった。処理の前に植物材料に上部から水を与え、処理後に再び給水した。Allen Machine Works製のトラック噴霧器で処理を実施した。噴霧器は、187L/Haを散布するために8002E噴霧ノズル、262kPaの噴霧圧及び1.5mph(2.4km/時)の速度、を使用した。ノズルの高さは植物の冠部(plant canopy)から46cm上であった。様々な雑草種(weed species)の生育段階は2葉期から4葉期の範囲であった。処理を3回反復した。処理後に植物を温室に戻し、実験期間中ずっと地下給水した。植物材料にHoagland肥料溶液で週に2回施肥した。視覚による損傷パーセントの評価を、未処置対照植物と比較して0〜100%の尺度で実施した(0は損傷なしに該当し、100は植物の完全な死に該当する)。結果を表IIに列挙する。
【表2】
【0028】
除草剤標準品及びカルボン酸系除草剤を水酸化テトラアルキルアンモニウム又は水酸化(アリールアルキル)トリアルキルアンモニウムのいずれかと組み合わせることから誘導される化合物の揮発性を評価するための方法
4インチの正方形の鉢で生育したコムギ(トリチカム・エスチバム(Triticum aestivum L.))の4つの鉢に、種々の形態の2,4−Dの各々を11200g ae/haで噴霧した。Allen Machine Works製のトラック噴霧器で処理を実施した。噴霧器は、187L/Haを散布するために8002E噴霧ノズル、262kPaの噴霧圧及び1.5mph(2.4km/時)の速度、を使用した。ノズルの高さは植物の冠部から46cm上であった。コムギの生育段階は1葉期から2葉期であった。清浄な鉢用木箱(pot flat)に移すときに、コムギ植物を十分に乾燥させて、確実に噴霧溶液が存在しないようにした。公知の感受性種であるブドウ(ビチス・ラブルスカ(Vitis labrusca L.))を木箱の反対側の端に置いた。すべての鉢をヒューミドーム(humidome)で覆い、コムギを置いた側の端に小さな直径1/2インチ(1.27cm)の穴をあけ、他方の端には、空気が処理したコムギ植物全体とブドウの上部を通って吸引されるようにバッテリーで作動する小型ボックスファンを置いた。植物を、昼間14時間、夜間10時間のサイクルで温度を40℃に設定した生育室に置いた。24時間の暴露期間を使用し、その後感受性植物を取り出して、温室に置き、処理に対する蒸気暴露による損傷に関して評価した。結果を表IIIに列挙する。
【表3】