(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている誘導シースによれば、挿入部を体腔内で操作している間に、誘導シースの先端部が体腔内から抜け落ちてしまう場合がある。この場合には、新たな挿入部を体腔内に挿入することができないため、誘導シースを再度体腔内に挿入する作業が必要となり、その作業に多くの労力および時間を要するという不都合があった。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、体腔内からの抜け落ちを防止して、安定的に作業を行うことができる誘導シースおよび誘導シースシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明の第1の態様は、体腔内に挿入される医療器具の挿入部を誘導する筒状の誘導シースであって、該誘導シースの基端側に設けられ、前記挿入部が挿入される基端側開口部と、前記誘導シースの先端側に設けられた先端側開口部と、前記誘導シースの先端側に設けられ、湾曲形状に癖付けられた可撓性を有する湾曲部と、該湾曲部の外側側面に設けられ、前記挿入部が導出される導出開口部とを備え
、該導出開口部が、前記湾曲部において前記挿入部の挿入方向に対して交差する方向または基端側に向けて開口している誘導シースである。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、例えば、内視鏡等の医療器具の挿入部を、心膜腔等の体腔内に挿入するには、皮膚表面から穿刺針を心膜に突き刺し、次に、ガイドワイヤを心膜腔内に挿入し、続いて、ガイドワイヤに沿って、誘導シースとダイレータとを一体化して心膜腔内に挿入する。その後、ダイレータを引き抜き、誘導シースの先端部を心膜腔内に配置するとともに、誘導シースの基端部を体腔外に配置する。この状態において、誘導シースの基端側開口部から挿入部を挿入することで、誘導シース内を通って挿入部が導出開口部から導出され、挿入部が心膜腔内に挿入される。
【0008】
この場合において、湾曲形状に癖付けられた湾曲部は、可撓性を有するため、基端側開口部から先端側開口部まで棒状のダイレータを挿入することで、ダイレータに沿って直線状に変形する。これにより、ガイドワイヤに沿って、誘導シースとダイレータとを容易に心膜腔内に挿入することができる。
【0009】
そして、ダイレータを誘導シースから引き抜くことで、湾曲形状に癖付けられた湾曲部は、元の形状(湾曲形状)に変形する。これにより、湾曲部が心膜内側に掛止され、心膜腔内から誘導シースが抜けてしまうことが防止される。この状態において、誘導シースの基端側開口部から挿入部を挿入することで、心膜内側に掛止された誘導シース内を通って挿入部が導出開口部から導出され、挿入部が心膜腔内に挿入される。これにより、誘導シースが心膜から抜け落ちることなく、心膜腔内で内視鏡を操作することができ、安定した状態で心膜腔内の内視鏡観察や治療を行うことができる。
【0010】
また、挿入部が導出される導出開口部を湾曲部の外側側面に形成することで、心膜腔内の観察対象位置へ内視鏡を容易にアプローチさせることができ、心膜腔内における内視鏡の操作性を向上することができる。
【0011】
上記態様
の変形例において、前記導出開口部が、前記湾曲部における前記誘導シースの軸線方向先端側に向けて開口していることとしてもよい。
このようにすることで、湾曲部における誘導シースの軸線方向先端側(例えば、挿入部の挿入方向に対して約0〜15°)に向けて開口する導出開口部から、内視鏡等の医療器具の挿入部を導出することができる。これにより、心膜腔等の体腔内において、誘導シースの挿入方向先端側の観察対象位置に内視鏡の挿入部を容易にアプローチさせることができ、該観察対象位置の観察および治療を容易に行うことができる。
【0012】
上記態様において
、湾曲部にお
いて挿入部の挿入方向に対して交差する方向(例えば、挿入部の挿入方向に対して75〜115°)に向けて開口する導出開口部から、内視鏡等の医療器具の挿入部を導出することができる。これにより、心膜腔等の体腔内において、誘導シースの挿入方向に略直交(交差)する方向の観察対象位置に内視鏡の挿入部を容易にアプローチさせることができ、該観察対象位置の観察および治療を容易に行うことができる。
【0013】
上記態様において
、湾曲部にお
いて挿入部の挿入方向に対して基端側(例えば、挿入部の挿入方向に対して165〜195°)に向けて開口する導出開口部から、内視鏡等の医療器具の挿入部を導出することができる。これにより、心膜腔等の体腔内において、誘導シースの挿入方向基端側の観察対象位置に内視鏡の挿入部を容易にアプローチさせることができ、該観察対象位置の観察および治療を容易に行うことができる。
【0014】
上記態様において、前記誘導シースに設けられ、前記湾曲部を直線形状に変化させる形状変化手段を備えることとしてもよい。
形状変化手段により湾曲部を直線形状に変化させることで、ガイドワイヤを用いることなく、誘導シースとダイレータとを容易に心膜腔等の体腔内に挿入することができる。また、内視鏡等の挿入部を誘導シースから抜いた後には、形状変化手段により湾曲部を直線形状に変化させることで、ダイレータを挿入することなく、湾曲部の心膜内側への掛止を解除することができ、誘導シースを心膜腔等の体腔内から容易に抜き出すことができる。
【0015】
上記態様において、前記形状変化手段が、前記誘導シース内における前記湾曲部の外側に挿通され、前記誘導シースの先端側に接続された牽引ワイヤであることとしてもよい。
このようにすることで、湾曲部の外側に挿通され、誘導シースの先端側に接続された牽引ワイヤを引張ることで、湾曲部を直線形状に変化させることができる。これにより、前述のように、誘導シースを体腔内から容易に抜き出すことができる。また、牽引ワイヤの引張量を調節することで、湾曲部の形状を任意に変化させることができ、心膜腔等の体腔内の様々な観察対象位置に内視鏡を容易にアプローチさせることができ、該観察対象位置の観察および治療を容易に行うことができる。
【0016】
上記態様において、前記誘導シース内において、前記湾曲部の外側と内側とを分割するセパレータが、前記基端側開口部から前記先端側開口部まで軸線方向に設けられていることとしてもよい。
このようにすることで、誘導シースを体腔内へ挿入する場合および体腔内から抜き出す場合には、湾曲部の内側にダイレータを挿入することで、湾曲部を直線形状に変化させることができる。これにより、前述のように、誘導シースの体腔内への挿入および抜き出しを容易に行うことができる。
【0017】
一方、内視鏡等の挿入部を体腔内へ挿入する場合には、湾曲部の外側に挿入部を挿入することで、湾曲部を湾曲させたままの状態、すなわち、湾曲部を心膜内側に掛止させた状態で、挿入部を導出開口部から導出して、挿入部を心膜腔内に挿入することができる。これにより、誘導シースが心膜から抜け落ちることなく、心膜腔内で内視鏡を操作することができ、安定した状態で心膜腔内の内視鏡観察や治療を行うことができる。
【0018】
上記態様において、前記誘導シースの基端側に設けられ、前記誘導シースの半径方向外方に拡張する拡張機構を備えることとしてもよい。
このようにすることで、湾曲部による心膜内側への掛止に加えて、拡張機構を誘導シースの半径方向外方に拡張させることで、体腔内壁に拡張機構を掛止させることができる。これにより、誘導シースの体腔内からの抜け落ちをより確実に防止することができる。
【0019】
上記態様において、前記誘導シースの基端側に設けられ、前記誘導シースを体表面に固定するベルト部を備えることとしてもよい。
このようにすることで、湾曲部による心膜内側への掛止に加えて、ベルト部により誘導シースを体表面に固定することができる。これにより、誘導シースの体腔内からの抜け落ちをより確実に防止することができる。
【0020】
上記態様において、前記誘導シースを
、該誘導シースが挿入された位置から軸線回りに回転させ
、所望の回転角度に維持した状態で保持する回転保持機構を備えることとしてもよい。
誘導シースを軸線回りに回転させることで、湾曲部により心膜を押し上げて心膜腔内に隙間を形成することができる。この状態において、回転保持機構により、誘導シースを保持することで、心膜腔内に隙間を形成した状態で維持することができ、心膜腔内での観察および治療時の作業性を向上することができる。
【0021】
上記態様において、前記誘導シースの基端側に
、前記基端側開口部の開口を密封する気密手段を備えることとしてもよい。
上記態様において、前記誘導シースがX線不透過であることとしてもよい。
上記態様において、前記誘導シースがX線不透過であることとしてもよい。
【0022】
本発明の第2の態様は、上記の第1の態様の誘導シースと、前記誘導シース内に挿入される棒状のダイレータと、前記誘導シース内に挿入され、前記誘導シース内において前記ダイレータを誘導するガイドワイヤとを備える誘導シースシステムである。
このような誘導シースシステムによれば、上記の誘導シースを備えているため、誘導シースが心膜から抜け落ちることなく、心膜腔内で内視鏡を操作することができ、安定した状態で心膜腔内の内視鏡観察や治療を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、体腔内からの抜け落ちを防止して、安定的に作業を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る誘導シースシステムの概略構成図である。
【
図2】
図1の誘導シースからダイレータを引き抜く際の状態を示す図である。
【
図3】
図1の誘導シースに挿入部を挿入する際の状態を示す図である。
【
図4】
図1の誘導シースを心膜腔内に挿入する際の状態を示す図であり、(a)は心膜腔内の状態、(b)は心膜に穿刺針を刺す状態を示す図である。
【
図5】
図1の誘導シースを心膜腔内に挿入する際の状態を示す図であり、(a)は心膜腔内に造影剤を投与した状態、(b)は心膜に穿刺針を貫通させた状態を示す図である。
【
図6】
図1の誘導シースを心膜腔内に挿入する際の状態を示す図であり、(a)は心膜腔内にガイドワイヤを挿入した状態、(b)は心膜から穿刺針を抜いた状態を示す図である。
【
図7】
図1の誘導シースを心膜腔内に挿入する際の状態を示す図であり、(a)は心膜腔内に誘導シースを挿入した状態、(b)は心膜にダイレータを挿入する状態、(c)は心膜に誘導シースを挿入した状態を示す図である。
【
図8】
図1の誘導シースを用いて、心膜腔内に挿入部を基端方向に向けて挿入した状態を示す図である。
【
図9】
図1の誘導シースを用いて、心膜腔内に挿入部を軸線に交差する方向に向けて挿入した状態を示す図である。
【
図10】
図1の誘導シースを用いて、心膜腔内に挿入部を先端方向に向けて挿入した状態を示す図である。
【
図11】
図1の誘導シースを心膜腔内から引き抜く前の状態を示す図である。
【
図12】
図1の誘導シースにダイレータを挿入途中の状態を示す図である。
【
図13】
図1の誘導シースにダイレータを挿入した際の状態を示す図である。
【
図14】第1の変形例において、
図1の誘導シースを心膜腔内から引き抜く前の状態を示す図である。
【
図15】
図14の挿入部により誘導シースを直線形状にした状態を示す図である。
【
図16】第2の変形例において、
図1の誘導シースを心膜腔内から引き抜くためのカテーテルを示す図である。
【
図17】
図16のカテーテルを誘導シースに挿入途中の状態を示す図である。
【
図18】
図16のカテーテルを誘導シースに挿入した際の状態を示す図である。
【
図19】
図16のカテーテルにより誘導シースを直線形状にした状態を示す図である。
【
図20】第3の変形例において、
図1の誘導シースに牽引ワイヤを設けた状態を示す図である。
【
図21】
図20の牽引ワイヤにより誘導シースを直線形状にした状態を示す図である。
【
図22】
図20の誘導シースのD−D断面図である(1本の牽引ワイヤの場合)。
【
図23】
図20の誘導シースのD−D断面図である(複数の牽引ワイヤの場合)。
【
図24】第4の変形例において、
図1の誘導シースに筒状のセパレータを設けた状態を示す図である。
【
図25】
図24の誘導シースを基端方向から見た正面図である。
【
図27】
図24の誘導シースに挿入部を挿入した際の状態を示す図である。
【
図28】
図24の誘導シースにダイレータを挿入した際の状態を示す図である。
【
図29】
図28の誘導シースを基端方向から見た正面図である。
【
図30】第5の変形例において、
図1の誘導シースに膜状のセパレータを設けた状態を示す図である。
【
図31】
図30の誘導シースを基端方向から見た正面図である。
【
図32】
図30の誘導シースに挿入部を挿入した際の状態を示す図である。
【
図33】
図30の誘導シースにダイレータを挿入した際の状態を示す図である。
【
図34】
図33の誘導シースを基端方向から見た正面図である。
【
図35】第6の変形例において、
図1の誘導シースに回転保持機構を設けた状態を示す図である。
【
図38】
図36の回転保持機構の要部を拡大して示した断面図である。
【
図39】
図37の回転保持機構の要部を拡大して示した断面図である。
【
図40】第7の変形例における誘導シースの概略構成図である。
【
図41】
図40の誘導シースの基端部を拡大して示した断面図である。
【
図42】第8の変形例における誘導シースの概略構成図である。
【
図43】
図42の誘導シースからダイレータを引き抜く際の状態を示す図である。
【
図44】
図42の誘導シースに挿入部を挿入した際の状態を示す図である。
【
図45】第9の変形例における誘導シースの概略構成図である。
【
図47】体腔内において
図45の拡張機構を動作させた状態を示す図である。
【
図48】第10の変形例における誘導シースの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係る誘導シース10およびこれを備える誘導シースシステム1について図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る誘導シースシステム1は、
図1に示されるように、体腔内に挿入される医療器具の挿入部等を誘導する筒状の誘導シース10と、誘導シース10内に挿入される棒状のダイレータ23と、誘導シース10内に挿入されるガイドワイヤ25とを備えている。
【0026】
誘導シース10は、
図2に示されるように、誘導シース10の基端側に設けられた基端側開口部11と、誘導シース10の先端側に設けられた先端側開口部12と、誘導シース10の先端側に設けられた湾曲部13と、湾曲部13の外側(半径方向外方)の側面に形成された導出開口部14とを備えている。以降では、本実施形態に係る誘導シース10を用いて、心臓と心膜との間に形成される心膜腔内に内視鏡の挿入部20(
図3参照)を挿入する場合を例に挙げて説明する。
【0027】
誘導シース10は、筒状の形状を有しており、
図3に示されるように、心臓と心膜との間に形成される心膜腔内に、内視鏡の挿入部20を誘導するものである。具体的には、誘導シース10の先端側を心膜腔内に配置するとともに、誘導シース10の基端側を体腔外に配置することで、体腔外から心膜腔内に内視鏡の挿入部20を誘導できるようになっている。
【0028】
基端側開口部11は、誘導シース10の基端側に設けられた開口であり、
図1および
図3に示されるように、内視鏡の挿入部20やダイレータ23やガイドワイヤ25が挿入されるようになっている。
先端側開口部12は、誘導シース10の先端側に設けられた開口であり、
図1に示されるように、ダイレータ23やガイドワイヤ25が導出されるようになっている。
【0029】
誘導シース10の先端側には、
図2に示されるように、湾曲形状に癖付けられ、可撓性を有する湾曲部13が設けられている。
導出開口部14は、湾曲部13の外側(半径方向外方)の側面に形成された開口であり、
図3に示されるように、内視鏡の挿入部20が導出されるようになっている。
【0030】
ダイレータ23は、基端側開口部11から誘導シース10内に挿入される棒状部材である。ダイレータ23は、予め誘導シース10内に留置されているガイドワイヤ25に沿って誘導シース10内に挿入される。ダイレータ23の先端は、テーパ状になっており、心膜の穴を広げながら進入することができるようになっている。なお、ダイレータ23、及び誘導シース10は、体腔内の組織に対する侵襲を抑えるために生体適合性を有する樹脂で形成されていることが望ましい。さらに、ダイレータ23、誘導シース10は少なくとも先端がX線不透過である必要がある。これにより、X線透視画像により誘導シース10及びダイレータ23の位置が確認できるためである。
【0031】
ガイドワイヤ25は、ダイレータ23を誘導シース10の基端側開口部11から先端側開口部12まで誘導するためのワイヤである。ガイドワイヤ25は、誘導シース10内をダイレータ23を誘導しやすいように、誘導シース10の湾曲部13と同様の曲がり癖をつけておいてもよい。
【0032】
上記構成を有する誘導シースシステム1を用いて、誘導シース10を心膜腔内に挿入する際の動作について以下に説明する。
内視鏡の挿入部20を、
図4(a)に示す心膜腔内Cに挿入するには、まず、
図4(b)に示すように、皮膚表面から穿刺針27を心膜Bに突き刺す。
【0033】
次に、
図5(a)に示すように、穿刺針27から心膜腔内Cに造影剤を注入し、該造影剤を心膜腔内Cに拡散させることにより、X線透視画像にて針先が心膜腔内Cに入ったことを確認する。この状態において、
図5(b)に示すように、穿刺針27からガイドワイヤ25を心膜腔内Cに挿入する。
【0034】
次に、
図6(a)に示すように、ガイドワイヤ25を心膜腔内Cにさらに挿入する。そして、
図6(b)に示すように、穿刺針27を心膜Bから抜き取る。
【0035】
次に、
図7(b)および
図7(c)に示すように、ガイドワイヤ25に沿って、誘導シース10とダイレータ23とを一体化して心膜腔内Cに挿入する。この場合において、
図1に示すように、誘導シース10の湾曲形状に癖付けられた可撓性を有する湾曲部13は、基端側開口部11から先端側開口部12まで棒状のダイレータ23を挿入することで、ダイレータ23に沿って直線状に変形させられている。これにより、ガイドワイヤ25に沿って、誘導シース10とダイレータ23とを容易に心膜腔内Cに挿入することができる。このようにすることで、
図7(a)に示すように、誘導シース10およびダイレータ23の先端部が心膜腔内Cに配置される。
【0036】
次に、誘導シース10からダイレータ23を引き抜き、誘導シース10の先端部を心膜腔内Cに配置するとともに、誘導シース10の基端部を体腔外に配置する。
この際、ダイレータ23を誘導シース10から引き抜くことで、
図2に示すように、誘導シース10の湾曲部13は、元の形状(湾曲形状)に変形する。これにより、誘導シース10の湾曲部13が心膜Bの内側に掛止され、心膜腔内Cから誘導シース10が抜けてしまうことが防止される。
【0037】
この状態において、
図3に示すように、誘導シース10の基端側開口部11から内視鏡の挿入部20を挿入することで、心膜Bの内側に掛止された誘導シース10内を通って、内視鏡の挿入部20が導出開口部14から導出され、内視鏡の挿入部20が心膜腔内Cに挿入される。これにより、誘導シース10が心膜Bから抜け落ちることなく、心膜腔内Cで内視鏡を操作することができ、安定した状態で心膜腔内Cの内視鏡観察や治療を行うことができる。
【0038】
また、挿入部20が導出される導出開口部14を湾曲部13の外側側面に形成することで、心膜腔内Cの観察対象位置へ内視鏡の挿入部20を容易にアプローチさせることができ、心膜腔内Cにおける内視鏡の操作性を向上することができる。
【0039】
なお、この場合において、
図8に示すように、誘導シース10の導出開口部14が、湾曲部13における誘導シース10の軸線方向基端側(例えば、挿入部20の挿入方向に対して135〜215°)に向けて開口していることとしてもよい。
【0040】
このようにすることで、湾曲部13における誘導シース10の軸線方向基端側に向けて開口する導出開口部14から、内視鏡の挿入部20を導出することができる。これにより、心膜腔内Cにおいて、誘導シース10の挿入方向基端側の観察対象位置に内視鏡の挿入部20を容易にアプローチさせることができ、該観察対象位置の観察および治療を容易に行うことができる。これは、例えば、複数の誘導シースを心膜腔内Cに挿入する場合において、穿刺針27を心膜腔内Cから観察する場合に有効である。また、心尖部を観察する場合にも有効である。
【0041】
また、
図9に示すように、誘導シース10の導出開口部14が、湾曲部13における誘導シースの軸線に交差する方向(例えば、挿入部20の挿入方向に対して45〜135°)に向けて開口していることとしてもよい。
【0042】
このようにすることで、湾曲部13における誘導シース10の軸線に交差する方向に向けて開口する導出開口部14から、内視鏡の挿入部20を導出することができる。これにより、心膜腔内Cにおいて、誘導シース10の挿入方向に略直交(交差)する方向の観察対象位置に内視鏡の挿入部20を容易にアプローチさせることができ、該観察対象位置の観察および治療を容易に行うことができる。これは、例えば、左心室側壁、左心室後壁、及び心尖部の患部を観察する場合に有効である。
【0043】
また、
図10に示すように、誘導シース10の導出開口部14が、湾曲部13における誘導シース10の軸線方向先端側(例えば、挿入部20の挿入方向に対して約0〜45°)に向けて開口していることとしてもよい。
【0044】
このようにすることで、湾曲部13における誘導シース10の軸線方向先端側に向けて開口する導出開口部14から、内視鏡の挿入部20を導出することができる。これにより、心膜腔内Cにおいて、誘導シース10の挿入方向先端側の観察対象位置に内視鏡の挿入部20を容易にアプローチさせることができ、該観察対象位置の観察および治療を容易に行うことができる。これは、例えば、心耳や心房の患部を観察する場合に有効である。また、心基部を回って挿入部をループさせることにより心臓の裏側や側面にアプローチする場合にも有効である。
【0045】
上記のように、観察対象位置に応じて導出開口部14の位置(向き)が異なる誘導シース10を使い分けることで、心膜腔内Cにおいて、内視鏡の挿入部20を、前後に動かしたり、湾曲させたり、回転させたりすることなく、観察対象位置に容易にアプローチさせることができる。これにより、観察および治療作業の効率化を図るとともに、人体への負担を軽減することができる。
【0046】
また、1つの誘導シース10に複数の導出開口部14を設け、観察対象位置に応じて、いずれの導出開口部14から内視鏡の挿入部20を導出するかを選択することとしてもよい。
【0047】
次に、本実施形態に係る誘導シースシステム1を用いて、誘導シース10を心膜腔内Cから抜き出す際の動作について以下に説明する。
まず、
図11に示すように、誘導シース10内の基端側開口部11から先端側開口部12までガイドワイヤ25を挿通させたままにしておく。あるいは、誘導シース10内に、湾曲部13と同様に湾曲形状に癖付けられたガイドワイヤ25を改めて挿入することとしてもよい。
【0048】
次に、
図12に示すように、ガイドワイヤ25に沿って、誘導シース10内の基端側開口部11から先端側開口部12まで棒状のダイレータ23を挿入する。これにより、
図13に示すように、誘導シース10の湾曲部13は、棒状のダイレータ23に沿って直線状に変形させられる。これにより、誘導シース10とダイレータ23とを容易に心膜腔内Cから抜き出すことができる。このようにすることで、誘導シース10を心膜腔内Cから抜き出す際の作業の効率化を図るとともに、人体(心膜B)への負担を軽減することができる。
【0049】
[第1の変形例]
なお、本実施形態に係る誘導シース10の第1の変形例として、上記の誘導シース10を心膜腔内Cから抜き出す際の動作において、
図14および
図15に示すように、内視鏡の挿入部20の湾曲機構を用いることとしてもよい。
【0050】
具体的には、まず、
図14に示すように、誘導シース10内の基端側開口部11から先端側開口部12まで、誘導シース10の湾曲部13の形状に合わせて、内視鏡の挿入部20を湾曲させながら挿入する。
【0051】
次に、
図15に示すように、内視鏡の挿入部20の湾曲機構を動作させて、誘導シース10の湾曲部13を直線状に変形させる。これにより、誘導シース10と内視鏡の挿入部20とを容易に心膜腔内Cから抜き出すことができる。このようにすることで、誘導シース10を心膜腔内Cから抜き出す際の作業の効率化を図るとともに、人体(心膜B)への負担を軽減することができる。また、上記作業を内視鏡の挿入部20で観察しながら行うことができ、作業をより効率的に行うことができる。
【0052】
[第2の変形例]
また、本実施形態に係る誘導シース10の第2の変形例として、上記の誘導シース10を心膜腔内Cから抜き出す際の動作において、
図16から
図19に示すように、中空のカテーテル29を用いることとしてもよい。
【0053】
具体的には、まず、
図16に示すような誘導シース10の湾曲部13と同様に湾曲形状に癖付けられた中空のカテーテル29を、
図17および
図18に示すように、誘導シース10内の基端側開口部11から先端側開口部12まで挿入する。
【0054】
次に、
図19に示すように、カテーテル29の内部(中空部)に直線形状の針金31を挿入し、カテーテル29および誘導シース10の湾曲部13を直線状に変形させる。これにより、誘導シース10とカテーテル29とを容易に心膜腔内Cから抜き出すことができる。このようにすることで、誘導シース10を心膜腔内Cから抜き出す際の作業の効率化を図るとともに、人体(心膜B)への負担を軽減することができる。
【0055】
[第3の変形例]
また、本実施形態の第3の変形例として、
図20から
図23に示すように、誘導シース10に牽引ワイヤ33を設けることとしてもよい。
本変形例に係る誘導シース10は、
図20に示すように、誘導シース10内の湾曲部13の外側(半径方向外方)において、牽引ワイヤ33が挿通されている。牽引ワイヤ33の一端は、誘導シース10の先端側に接続されており、他端は誘導シース10の基端側まで挿通されている。
【0056】
上記構成を有することで、
図21に示すように、牽引ワイヤ33を基端側に引張ることで、湾曲部13を直線形状に変化させることができる。これにより、誘導シース10を心膜腔内Cから容易に抜き出すことができる。このようにすることで、誘導シース10を心膜腔内Cから抜き出す際の作業の効率化を図るとともに、人体(心膜B)への負担を軽減することができる。
【0057】
また、牽引ワイヤ33の引張量を調節することで、誘導シース10の湾曲部13の形状を任意に変化させることができ、心膜腔内Cの様々な観察対象位置に内視鏡の挿入部20を容易にアプローチさせることができ、目的とする観察対象位置の観察および治療を容易に行うことができる。
【0058】
なお、本変形例に係る誘導シース10において、誘導シース10内に挿通する牽引ワイヤ33は、
図22に示すように1本であっても、
図23に示すように複数であってもよい。
図22に示すように1本の牽引ワイヤ33を挿通する場合には、牽引ワイヤ33を緩ませることで、導出開口部14から内視鏡の挿入部20を容易に導出することができる。
【0059】
また、
図23に示すように誘導シース10内に複数の牽引ワイヤ33を挿通する場合には、導出開口部14の周方向における中心位置(内視鏡の挿入部20の導出位置)から外れた位置に牽引ワイヤ33を挿通することで、導出開口部14から内視鏡の挿入部20を容易に導出することができる。
【0060】
[第4の変形例]
また、本実施形態の第4の変形例として、
図24から
図29に示すように、誘導シース10に筒状のセパレータ35を設けることとしてもよい。
本変形例に係る誘導シース10において、セパレータ35は、
図24に示すように、誘導シース10の基端側開口部11から先端側開口部12まで軸線方向に設けられている。また、セパレータ35は、
図25に示すように、誘導シース10の横断面において、誘導シース10の湾曲部13の外側と内側とを分割するように設けられている。
【0061】
セパレータ35は、例えばゴム等の伸縮性を有する部材で構成されており、筒状の形状を有している。セパレータ35は、初期状態(荷重のかかっていない状態)では、
図25に示すように、横断面において湾曲部13の内側に半円状に折り畳まれるように癖付けられている。
【0062】
本変形例に係る誘導シース10において、誘導シース10を心膜腔内Cに挿入する際には、
図24に示すように、誘導シース10の湾曲部13の外側(誘導シース10内におけるセパレータ35の外側)にダイレータ23をガイドワイヤ25に沿って挿入する。そして、誘導シース10とダイレータ23とを一体化して心膜腔内Cに挿入する。
【0063】
次に、誘導シース10からダイレータ23を引き抜き、誘導シース10の先端部を心膜腔内Cに配置するとともに、誘導シース10の基端部を体腔外に配置する。
この際、ダイレータ23を誘導シース10から引き抜くことで、
図26に示すように、誘導シース10の湾曲形状に癖付けられた湾曲部13は、元の形状(湾曲形状)に変形する。
【0064】
この状態において、
図27に示すように、誘導シース10の基端側開口部11から内視鏡の挿入部20を挿入することで、心膜Bの内側に掛止された誘導シース10内を通って、内視鏡の挿入部20が導出開口部14から導出され、内視鏡の挿入部20が心膜腔内Cに挿入される。これにより、誘導シース10が心膜Bから抜け落ちることなく、心膜腔内Cで内視鏡を操作することができ、安定した状態で心膜腔内Cの内視鏡観察や治療を行うことができる。
【0065】
一方、誘導シース10を心膜腔内Cから抜き出す際には、
図28および
図29に示すように、誘導シース10の湾曲部13の内側(誘導シース10内におけるセパレータ35の内部)にダイレータ23を挿入する。これにより、ダイレータ23が、筒状のセパレータ35の内部を通って、誘導シース10の先端側開口部12まで挿通され、誘導シース10の湾曲部13を直線形状に変化させることができる。これにより、誘導シース10を心膜腔内Cから容易に抜き出すことができ、誘導シース10を心膜腔内Cから抜き出す際の作業の効率化を図るとともに、人体(心膜B)への負担を軽減することができる。
【0066】
[第5の変形例]
また、本実施形態の第5の変形例として、
図30から
図34に示すように、誘導シース10に膜状のセパレータ36を設けることとしてもよい。
本変形例に係る誘導シース10において、セパレータ36は、
図30に示すように、誘導シース10の基端側開口部11から先端側開口部12まで軸線方向に設けられている。また、セパレータ36は、
図31に示すように、誘導シース10の横断面において、誘導シース10の湾曲部13の外側と内側とを分割するように設けられている。
【0067】
セパレータ36は、例えばゴム等の伸縮性を有する部材で構成された膜状の部材である。セパレータ36は、
図31に示すように、誘導シース10の横断面において湾曲部13の内側と外側とを分割するように、誘導シース10内壁に接続されている。
【0068】
本変形例に係る誘導シース10において、誘導シース10を心膜腔内Cに挿入する際には、
図30に示すように、誘導シース10の湾曲部13の外側(
図31においてセパレータ36の上側)にダイレータ23をガイドワイヤ25に沿って挿入する。そして、誘導シース10とダイレータ23とを一体化して心膜腔内Cに挿入する。
【0069】
次に、誘導シース10からダイレータ23を引き抜き、誘導シース10の先端部を心膜腔内Cに配置するとともに、誘導シース10の基端部を体腔外に配置する。
この際、ダイレータ23を誘導シース10から引き抜くことで、
図32に示すように、誘導シース10の湾曲形状に癖付けられた可撓性を有する湾曲部13は、元の形状(湾曲形状)に変形する。
【0070】
この状態において、
図32に示すように、誘導シース10の湾曲部13の外側(
図31においてセパレータ36の上側)に誘導シース10の基端側開口部11から内視鏡の挿入部20を挿入する。これにより、心膜Bの内側に掛止された誘導シース10内を通って、内視鏡の挿入部20が導出開口部14から導出され、内視鏡の挿入部20が心膜腔内Cに挿入される。これにより、誘導シース10が心膜Bから抜け落ちることなく、心膜腔内Cで内視鏡を操作することができ、安定した状態で心膜腔内Cの内視鏡観察や治療を行うことができる。
【0071】
一方、誘導シース10を心膜腔内Cから抜き出す際には、
図33および
図34に示すように、誘導シース10の湾曲部13の内側(
図34においてセパレータ36の下側)にダイレータ23を挿入する。これにより、ダイレータ23が、誘導シース10の湾曲部13の内側を通って、誘導シース10の先端側開口部12まで挿通され、誘導シース10の湾曲部13を直線形状に変化させることができる。これにより、誘導シース10を心膜腔内Cから容易に抜き出すことができ、誘導シース10を心膜腔内Cから抜き出す際の作業の効率化を図るとともに、人体(心膜B)への負担を軽減することができる。
【0072】
また、膜状のセパレータ36を用いることで、筒状のセパレータ35を用いる場合に比べて、セパレータの断面積を小さくすることができ、誘導シース10の内径を小さくすることができる。
【0073】
[第6の変形例]
また、本実施形態の第6の変形例として、
図35から
図39に示すように、誘導シース10を軸線回りに回転させた状態で保持する回転保持機構40を備えることとしてもよい。
本変形例に係る誘導シース10において、誘導シース10の基端側には、
図35に示すように、誘導シース10を軸線回りに回転させた状態で保持する回転保持機構40が設けられている。また、回転保持機構40には、誘導シース10を体表面に固定するベルト部37が設けられている。
【0074】
回転保持機構40は、
図36および
図37に示すように、誘導シース10に一体的に固定された第1部材41および第2部材42と、誘導シース10に対して軸線回りに回転自在に設けられた第3部材43とを備えている。
【0075】
第1部材41の側面には、誘導シース10の回転角度がわかるように、目盛が付されている。
第2部材42は、
図38に示すように、誘導シース10に一体的に固定された筒状部材であり、その外側面(第3部材43との接触面)には雄ネジ(図示略)が形成されている。
第3部材43は、
図38に示すように、誘導シース10の軸線回りに回転自在に設けられた筒状部材であり、その内側面(第2部材42との接触面)には雌ネジ(図示略)が形成されている。
【0076】
第2部材42の外側に第3部材43が配置されており、誘導シース10と第3部材43との間(第2部材42と第3部材43との間)には、例えばゴム等の伸縮性を有するパッキン45が設けられている。第1部材41(誘導シース10)を軸線回りに回転させることで、第2部材42と第3部材43とが嵌合する。この際、パッキン45は、
図39に示すように、第2部材42により誘導シース10の軸線方向に付勢され、誘導シース10の半径方向内方に膨張するように変形する。これにより、パッキン45によって誘導シース10が半径方向内方に付勢され、誘導シース10の回転角度が保持されるようになっている。
【0077】
上記構成を有する回転保持機構40を備える本変形例に係る誘導シース10によれば、
図36に示すように誘導シース10を軸線回りに回転させることで、
図37に示すように湾曲部13により心膜Bを押し上げて心膜腔内Cに隙間を形成することができる。この状態において、回転保持機構40により、誘導シース10を保持することで、心膜腔内Cに隙間を形成した状態で維持することができ、心膜腔内Cでの観察および治療時の作業性を向上することができる。
【0078】
[第7の変形例]
また、本実施形態の第7の変形例として、
図40および
図41に示すように、誘導シース10の基端側開口部11に気密手段、つまり気密性を有するシール45を設けることとしてもよい。
【0079】
シール45は、
図41に示すように、ダイレータ23や内視鏡の挿入部20等を基端側開口部11に挿入できるように、切り込みを有している。または、切りこみではなく、直径1mm程度の円形の孔を有している。シール45は、例えばゴム製の伸縮性を有する部材で構成されており、ダイレータ23や内視鏡の挿入部20等を基端側開口部11に挿入した際に、ゴム部材が伸縮することにより、その隙間を密封するようになっている。
【0080】
このようにすることで、心膜腔内Cへ送気して心膜Bを拡張する場合において、誘導シース10の基端側から空気が漏れることを防止でき、確実な術野確保が可能となる。
また、誘導シース10の基端側開口部11から気圧測定機へ接続すれば、誘導シース10の内圧、すなわち心嚢内圧を測定することが可能となる。心嚢内圧が高すぎると、心タンポナーデ等の合併症を引き起こす可能性があるため、心嚢内圧測定を行うことにより、安全性を向上することが可能となる。
【0081】
また、
図41に示すように、誘導シース10の上側にはポート46が設けられている。このポート46は、一般的な規格であるルアーロックとしても良い。このポート46から、誘導シース10内に流体を流し込んだり、吸引することができる。この操作により、心膜腔内に生食を送液し、心膜腔内で生食を還流させながら治療を行うことができる。また、二酸化炭素などガスを送気することにより心膜腔を膨らませて観察空間の確保を行うことができる。当然、同じポート46から吸引することもできる。また、このポート46から、上述の気圧測定機へ接続しても良い。
【0082】
[第8の変形例]
また、本実施形態の第8の変形例として、
図42から
図44に示すように、誘導シース10の湾曲部13に導出開口部14を設けずに、内視鏡の挿入部20を先端側開口部12から導出することとしてもよい。
【0083】
本変形例に係る誘導シース10において、誘導シース10を心膜腔内Cに挿入する際には、
図42に示すように、誘導シース10内にダイレータ23をガイドワイヤ25に沿って挿入する。そして、誘導シース10とダイレータ23とを一体化して心膜腔内Cに挿入する。
【0084】
次に、誘導シース10からダイレータ23を引き抜き、誘導シース10の先端部を心膜腔内Cに配置するとともに、誘導シース10の基端部を体腔外に配置する。
この際、ダイレータ23を誘導シース10から引き抜くことで、
図43に示すように、誘導シース10の湾曲形状に癖付けられた湾曲部13は、元の形状(湾曲形状)に変形する。
【0085】
この状態において、
図44に示すように、誘導シース10の基端側開口部11から内視鏡の挿入部20を挿入する。これにより、心膜Bの内側に掛止された誘導シース10内を通って、内視鏡の挿入部20が先端側開口部12から導出され、内視鏡の挿入部20が心膜腔内Cに挿入される。これにより、誘導シース10が心膜Bから抜け落ちることなく、心膜腔内Cで内視鏡を操作することができ、安定した状態で心膜腔内Cの内視鏡観察や治療を行うことができる。
【0086】
[第9の変形例]
また、本実施形態の第9の変形例として、
図45から
図47に示すように、誘導シース10の基端側に誘導シース10の半径方向外方に拡張する拡張機構50を備えることとしてもよい。
【0087】
拡張機構50は、
図45および
図46に示すように、誘導シース10の外側面に固定された筒状部材51と、誘導シース10の外側面において軸線方向に移動可能に設けられた筒状部材52と、筒状部材51と筒状部材52との間に設けられた拡張部53とを備えている。
【0088】
筒状部材52は、例えばラチェット機構を有しており、誘導シース10の軸線方向に移動させた際にロックされるようになっている。
拡張部53は、誘導シース10の軸線方向に設けられた切り目と、誘導シース10の周方向に設けられた折り目とを有している。このような構成を有することで、拡張部53は、
図46に示すように、筒状部材52を誘導シース10の軸線方向先端側に移動させた際に、誘導シース10の半径方向外方に拡張するようになっている。
【0089】
このようにすることで、拡張機構50を誘導シース10の半径方向外方に拡張させることで、
図47に示すように、体腔内壁(
図47の符号Eに示す領域)に拡張機構50を掛止させることができる。これにより、誘導シース10の体腔内からの抜け落ちをより確実に防止することができる。
【0090】
[第10の変形例]
また、本実施形態の第10の変形例として、
図48に示すように、誘導シース10の基端側において、誘導シース10を体表面に固定するベルト部55を備えることとしてもよい。
このようにすることで、湾曲部13による心膜B内側への掛止に加えて、ベルト部55により誘導シース10を体表面に固定することができる。これにより、誘導シース10の体腔内からの抜け落ちをより確実に防止することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態および各変形例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよい。
【0092】
なお、前述の実施形態および各変形例から以下の発明が導かれる。
〔付記項1〕
湾曲形状に癖付けられた湾曲部を有し、体腔内に医療機器の挿入部を誘導する誘導シースを体腔内に留置する誘導シースの留置方法であって、
ガイドワイヤの先端を体腔内に挿入するステップと、
前記ガイドワイヤの基端を前記誘導シースおよびダイレータの先端孔に入れるステップと、
前記ガイドワイヤに沿って前記誘導シースおよび前記ダイレータを体腔内に挿入するステップと、
前記誘導シースの前記湾曲部を体腔内に挿入した状態で、前記ダイレータを抜去することにより前記湾曲部を体腔内に掛止するステップとを有する誘導シースの留置方法。
【0093】
〔付記項2〕
湾曲形状に癖付けられた湾曲部を有し、体腔内に医療機器の挿入部を誘導する誘導シースを体腔内から抜去する誘導シースの抜去方法であって、
体腔内に留置された前記誘導シース内に前記挿入部を挿入するステップと、
前記挿入部の湾曲機構を用いて、前記誘導シースの前記湾曲部を直線形状に戻すステップと、
前記誘導シースの前記湾曲部を直線形状に維持した状態で前記誘導シースを体腔外に抜去するステップとを有する誘導シースの抜去方法。
【0094】
〔付記項3〕
湾曲形状に癖付けられた湾曲部を有し、体腔内に医療機器の挿入部を誘導する誘導シースを体腔内から抜去する誘導シースの抜去方法であって、
体腔内に留置された前記誘導シース内に湾曲形状に癖付けられた中空のカテーテルを挿入するステップと、
前記カテーテルを前記誘導シースの先端まで挿入するステップと、
前記カテーテルの中空部に直線形状の芯棒を入れて、前記誘導シースを直線形状に戻すステップと、
前記誘導シースを体腔外に抜去するステップとを有する誘導シースの抜去方法。