(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6009739
(24)【登録日】2016年9月23日
(45)【発行日】2016年10月19日
(54)【発明の名称】後壁を凹形に張出させるフレーム構成を有するバックパック
(51)【国際特許分類】
A45F 3/08 20060101AFI20161006BHJP
【FI】
A45F3/08
【請求項の数】15
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-142678(P2011-142678)
(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公開番号】特開2012-20123(P2012-20123A)
(43)【公開日】2012年2月2日
【審査請求日】2014年6月9日
(31)【優先権主張番号】10 2010 027 412.7
(32)【優先日】2010年7月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】392010854
【氏名又は名称】ドイター・シュポルト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン・ブフィントン
【審査官】
仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3056999(JP,U)
【文献】
米国特許第5823414(US,A)
【文献】
米国特許第4074839(US,A)
【文献】
特開2005−336975(JP,A)
【文献】
実開平7−23431(JP,U)
【文献】
特開2000−93230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45F 3/00−3/12
A45F 4/00−4/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッキングスペース(5)と、バックパック装着者に面する後壁(8)とともに、前記後壁(8)の張出しを凹形にさせるフレーム構成と、凹形に張出した前記後壁(8)にわたって筋肉のように延びるネット部(17)とを有するバックパックにおいて、前記パッキングスペース(5)の底部で開口し前記パッキングスペース(5)の上部で閉鎖されており、二つの略垂直延在フレーム領域(10,11)とともに、前記垂直フレーム部(10,11)の上端部に両端部が接続された横断方向延在のフレーム領域(12)を包含するフレーム部(9)の形状をフレーム構成が有することと、
前記垂直フレーム領域(10,11)の下端部と嵌合する横断方向に相互に離間し上方へ開口する二つの下方ポケット(15,16)が前記後壁(8)の下端部に設けられていることと、
前記パッキングスペース(5)の側から前記後壁(8)と前記ネット部(17)との間に前記フレーム部(9)を上下方向へ移動させて挿入することを可能にする開口部(6)が前記後壁(8)の上部に開口していることと、
前記横断方向延在のフレーム領域(12)と嵌合する上方ポケット(20)が前記後壁(8)に設けられていること
とを特徴とする、バックパック。
【請求項2】
前記開口部(6)が前記後壁(8)の横断方向に延びることを特徴とする、請求項1に記載のバックパック。
【請求項3】
前記開口部(6)が閉鎖具により閉鎖できることを特徴とする、請求項1または2に記載のバックパック。
【請求項4】
前記閉鎖具がジップファスナ(7)の形を有することを特徴とする、請求項3に記載のバックパック。
【請求項5】
前記ネット部(17)の領域と、前記ネット部に付着された前記後壁(8)の領域とで前記上方ポケット(20)が形成されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のバックパック。
【請求項6】
丸い下端部が形成されるように、前記垂直フレーム領域(10,11)の下端領域の各々が180°曲げられることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のバックパック。
【請求項7】
前記ネット部(17)の下端部が、前記後壁(8)の下側に適切に付着されることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のバックパック。
【請求項8】
前記上方フレーム領域(12)のため前記開口部(6)より上に前記上方ポケット(20)が形成されるように、前記ネット部(17)の前記上端部が前記後壁(8)の上側に付着されることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載のバックパック。
【請求項9】
前記下方ポケット(15,16)が、前記ネット部(17)の下端部の領域にあって前記後壁(8)の下端部に付着して設けられていることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載のバックパック。
【請求項10】
前記垂直フレーム領域(10,11)が、前記上方フレーム領域(12)から前記底部の方へ中央部分に向かって集束し、前記中央部分から前記底部の方へ前記垂直フレーム領域(10,11)の前記端部に向かって相互に離間するように、前記フレーム部(9)が成形されることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載のバックパック。
【請求項11】
前記垂直フレーム領域(10,11)が、前記後壁(8)を凹形に張出させるため、各々が前記上方フレーム領域(12)から底部の方へ所定箇所まで前記後壁(8)の方向でアーチ状に延びて、バックパック装着者の腰領域への特に効果的な負荷の伝達を達成するため、各々が前記箇所から前記底部の方へ前記垂直フレーム領域(10,11)の両端部まで前記ネット部(17)の方向でアーチ状に延びるように、前記フレーム部(9)が成形されることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載のバックパック。
【請求項12】
前記箇所が前記中央部分より下に配置されることを特徴とする、請求項11に記載のバックパック。
【請求項13】
前記垂直フレーム部(10,11)の前記中央部分において、固定具(21)により前記フレーム部(9)が前記後壁(8)に着脱可能に固定されることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれかに記載のバックパック。
【請求項14】
前記後壁(8)に付着されるとともに、少なくとも一つの保持タブ(23,24)がそれぞれ配設された補強部材(22)を前記固定具(21)が包含し、前記保持タブ(23,24)が垂直フレーム領域を通って前記補強部材(22)に着脱可能に固定されることを特徴とする、請求項13に記載のバックパック。
【請求項15】
面ファスナにより前記保持タブ(23,24)が前記補強部材(22)に付着可能であることを特徴とする、請求項14に記載のバックパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1の前文に記載の、後壁の張り出しを凹形にさせるフレーム構成を有するバックパックに関連する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプのフレーム構成が知られており、その技術的問題は、バックパック装着者の背中エリアの通気の向上を可能にするため、バックパックの後壁の前のネット部を凹形に張出させることである。例えばドイツ特許公開19735806 B41は、略垂直に凹形をなして延在する二つの弾性フレーム部で実質的に構成されて、横断方向に延びるフレーム部によって弾性フレーム部の上下端部がそれぞれ相互に接続されるフレーム構成を有するバックパックを開示している。垂直延在フレーム部の前には、ネット部が筋肉のように張出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許公開19735806 B4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの技術的問題は、後壁の領域において構造が比較的単純で組立および分解が短時間で容易に行われるようなフレーム構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
パッキングスペースと、バックパック装着者に面する後壁(背面)とともに、後壁の張り出しを凹形にさせるフレーム構成と、凹形の張出しにした後壁にわたって筋肉のように延びるネット部とを有するバックパックにより、この技術的問題が解決される。パッキングスペースの底部で開口してパッキングスペースの上部で閉鎖され、二つの略垂直延在フレーム領域とともに、横断方向に延在して垂直フレーム部の上端部に両端部が接続されたフレーム領域を包含するフレーム部の形状を、フレーム構成は有する。後壁において、横断方向に相互に離間した二つの下方ポケットが、ネット部に面する側でパッキングスペースの底部に設けられ、垂直フレーム領域の下端部がこのポケットに挿入される。垂直フレーム領域の下端部が下方ポケットと嵌合して、横断方向に延在するフレーム領域が、ネット部に面する後壁の側に形成された上方ポケットへ挿入されるように、パッキングスペースの内側から後壁の開口部を通ってフレーム部が案内される。
【0006】
本発明の本質的な長所は、本発明によるバックパックのフレーム構成が、上方領域で閉鎖されて下方領域で開口している単体フレーム部で本質的に構成され、端部領域が下方ポケットへ挿入されるまで、フレーム部が、バックパックのパッキングスペースからネット部に面する後壁の側にある横断方向延在上方開口部を通って、端部領域を先にして上部から底部へ移動可能であるため、横断方向に相互に離間した下端領域が、外側および/またはネット部に面するバックパックの後壁の側に配置されたポケットに容易に配設されることである。
【0007】
本発明の別の実質的な長所は、大きい負荷の支承のため、剛性が維持されながら可撓性が増大するように、バックパックの後壁に配置されたフレーム構成が成形されることである。可撓性の増大は、フレーム構成が底部で開口しているという事実の結果、生じるものである。フレーム構成の固有構造のため、バックパック装着者の背中にバックパックにより印加される負荷が、確実にバックパック装着者の腰へと前方に分散される。
【0008】
開口部が後壁の横断方向に延びることが特に好ましい。閉鎖具により開口部が適切に閉鎖される。本発明の好適な実施形態において、閉鎖具は、開閉が短時間で容易に行われるジップファスナである。
【0009】
ネット部の領域と、これに付着された後壁の領域とによって上方ポケットが形成されることが特に好ましい。
【0010】
丸い下端部が形成されるように、垂直フレーム領域の下端領域がそれぞれ好ましくは180°曲げられる。ポケットの材料の磨耗が回避されると好都合である。
【0011】
ネット部の下端部は、後壁の下側に適切に付着(好ましくは縫い付け)をされる。開口部より上の上方フレーム領域に上方ポケットが形成されるように、ネット部の上端部が後壁の上側に好ましくは付着され(特に縫い付けられ)る。後壁のネット部の下端部の領域に下方ポケットが付着されることが好ましい。
【0012】
発明の好適な実施形態によれば、垂直フレーム領域が、上方フレーム領域から底部の方向に沿って中央部分で最接近するように相互に接近・離間し、中央部分から底部の方へ垂直フレーム領域の端部に向かって相互に離間するように、フレーム部が成形される。さらに、後壁の張出しを凹形にさせるため、垂直フレーム領域の各々が、上方フレーム領域から底部の方へ、後壁の方向にアーチ形状で所定箇所まで延び、バックパック装着者の腰領域への特に効果的な負荷の伝達を達成するため、各々がこの箇所から底部の方へ垂直フレーム領域の端部に向かってネット部の方向にアーチ形状で延びるように、フレーム部が成形される。この箇所が中央部分より下に配置されることが好ましい。
【0013】
垂直フレーム部の中央部分において、固定具によりフレーム部が後壁へ着脱可能に固定されると好都合である。後壁に付着され、好ましくは縫い付けられて少なくとも一つの保持タブがそれぞれ配設されて成る補強部材を、固定具に包含させることが好ましく、この保持タブは、垂直フレーム領域を通って、補強部材に着脱可能に固定され、特に面ファスナによりこれに短時間で容易に付着される。金属またはプラスチックで構成される単体の弾性ロッド部の形状をフレーム部が有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】後壁の上端部と、バックパックのフレーム構成を挿入するための開口部とが見える、本発明によるバックパックの概略図である。
【
図3】本発明によるバックパックの後壁を凹形に張出させるためのフレーム構成の概略図である。
【
図5】ネット部から見た本発明によるバックパックの後壁の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明およびその実施形態を、図に関連して以下で詳細に説明する。
図1において、本発明によるバックパック1は実質的に、特に明記されていない前壁(前面)と、後壁(背面)8と、特に明記されていない底壁とともに、やはり特に明記されていない側壁との間に形成されるパッキングスペース5を包含する。本質的に周知であるが、バックパック1は、パッキングスペース5を閉鎖するためのカバー部2と、肩ベルト3と、腰ベルト4も包含することが好ましい。
【0016】
見て分かるように、好ましくは横断方向に延びる上方の閉鎖可能開口部6が後壁8に設けられている。開口部6を閉鎖するため、ジップファスナ7が設けられることが好ましく、それぞれ開口部6のエッジに沿って延在するその各部は概略的にのみ描かれている。
【0017】
図2から明らかであるように、バックパック1の後壁8の張出しを凹形にさせるフレーム構成9が設けられている。凹形に張出した後壁8の前には、上部および底部で後壁8に付着された(好ましくは、縫い付けられた)ネット部17が筋肉のように延びている。こうして、バックパック1が装着された時にバックパック装着者の背中に平らに位置するネット部17と、後壁8との間に通気スペースが形成され、この通気スペースは、後壁8とバックパック装着者の背中との間の直接的な接触を回避することで、バックパック装着者の背中の通気を可能にする。
【0018】
後壁8を凹形に張出させるため、
図3のように、底部で開口して上部で閉鎖されて特に横断方向にも弾性であるフレーム部9を実質的に包含するフレーム構成が設けられ、取り付け状態においてフレーム部9は、底部から上部まで垂直に延在して横断方向に相互に離間しているフレーム領域10,11とともに、横断方向に延在して垂直フレーム領域10,11を上端部で相互に接続する上方フレーム領域12を実質的に包含する。
【0019】
垂直フレーム領域10,11に対してほぼ平行に延在するように垂直フレーム領域10,11の下端領域が上に折り曲げられた状態に、垂直フレーム領域10,11の下端部が形成されることが好ましい。その結果、アーチ形状および/または丸い下端部が形成されるが、その機能について以下でさらに詳細に説明する。
【0020】
垂直フレーム領域10,11は、相互からの距離18が中央部分で最小となるように、最初は上方フレーム領域12の端部から相互に向かって斜めに延びる。中央部分からは、横断方向に見た時に垂直フレーム領域10,11の上端領域の距離19に相当することが好ましい相互の距離を下端領域が有するように、垂直フレーム領域10,11が再び斜め外向きに延出する。
【0021】
横から見ると、取り付け状態においてフレーム部9がバックパック1の後壁8の張り出しを凹形にするように、垂直フレーム領域10,11の各々が、
図4のようにアーチ状に延びている。腰ベルト4への特に好都合な負荷伝達がほぼ垂直方向に達成されるように、中央部分より下の領域はネット部17に向かって最小距離18でアーチ状に延びている。
【0022】
バックパック1の後壁8の外側でのフレーム部9の取り付けについて、以下でより詳細に説明する。
【0023】
この目的のため、パッキングスペース5の側から後壁8の開口部6を通って、下端部を先にしてフレーム部9が挿入される。後壁8の外側の下端部において横断方向に離間して付着され、好ましくは縫い付けられたポケット15,16と下端部が嵌合するまで、フレーム部9は後壁8の外側に沿って下向きに移動する。
【0024】
横断方向に延在するフレーム部9の上方フレーム領域12を収容するための上方ポケット20が後壁8の上端領域の開口部6より上に存在するように、横断方向に延在する後壁8の開口部6は後壁8の上方エッジから離間していることが好ましい。このポケット20は、外側がネット部17により、内側が後壁8により画定される。
【0025】
垂直フレーム領域10,11をバックパック1の後壁8の規定位置に固定するため、後壁8の外側には、垂直方向に見て垂直フレーム領域10,11の長さのほぼ中央部分に固定具21が配置される。
【0026】
例えばプラスチック製の平坦補強領域22が後壁8の外側に付着され(好ましくは縫い付けられ)るように固定具21が形成されることが好ましく、フレーム部9の中央部分が補強部材22に隣接し、その補強部材22は、垂直フレーム領域10,11の中央部分を越えて外向きに延び、且つ、面ファスナにより補強部材22に付着可能である保持タブ23,24を包含し、垂直フレーム領域10,11の中央部分が規定位置で保持タブ23および/または24と補強領域22との間に固定されるように構成される。
【0027】
上述した本発明によるバックパック1の構造により、開口部6を閉鎖しているジップファスナ7を開口した後に、垂直フレーム領域10,11の端部が下方ポケット15,16と嵌合するまで後壁8の外側とネット部17の内側との間のスペースへフレーム部9が下向きに簡単に移動できるという点で、後壁8の外側へのフレーム部9の付着が特に容易である。弾性フレーム部9を曲げることにより、横断方向に延びるフレーム領域12が次に、開口部6の上に形成された上方ポケット20へ挿入される。同時に、後壁8がネット部17の前で凹形に張出して、バックパック装着者の背中の通気のために必要な後壁8とネット部17との間の距離が形成されるように、垂直フレーム領域10,11が弾性により張出する。次に、垂直フレーム領域10,11の中央部分が、保持タブ23,24により補強領域22に付着される。
【符号の説明】
【0028】
1…バックパック、2…カバー部、3…肩ベルト、4…腰ベルト、5…パッキングスペース、6…開口部、7…ジップファスナ、8…後壁、9…フレーム構成、10,11,12…フレーム領域、15,16…ポケット、17…ネット部、18,19…距離、20…ポケット、21…固定具、22…補強領域、23,24…保持タブ。